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【発明の名称】 植物病予防剤または除草剤、並びに植物病予防方法もしくは除草方法
【発明者】 【氏名】樋口 俊男
【住所又は居所】大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東電工株式会社内

【要約】 【課題】植物病に対して殺菌作用を有する微生物を利用し、これを安定に保存して、使用時に微生物分散液を容易に得ることができる植物病予防剤または除草剤、並びに植物病予防方法若しくは除草方法を提供する。

【解決手段】植物病に対して殺菌作用を有する微生物を、担体を用いて固体培養して得られる培養物を、メッシュ部分を有する容器内に包み込んでなることを特徴とする植物病予防剤または除草剤である。メッシュの孔径は、0.005〜1mmが好ましく、微生物としては糸状菌を用いることが好ましい。さらに界面活性剤を含有させることによって、水中への分散性を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物病に対して殺菌作用を有する微生物を、担体を用いて固体培養して得られる培養物を、メッシュ部分を有する容器内に包み込んでなることを特徴とする植物病予防剤または除草剤。
【請求項2】
メッシュの孔径が、0.005〜1mmである請求項1記載の植物病予防剤または除草剤。
【請求項3】
微生物が、糸状菌である請求項1記載の植物病予防剤または除草剤。
【請求項4】
糸状菌が、ベルチシリウム属(Verticillium sp.)、トリコデルマ属(Trichoderma.sp.)、グリオクロディウム属(Glioclodium sp.)、ケトミウム属(Chaetomium sp.)、非病原性フサリウム属(Fusarium sp.)、放線菌ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)、ドレクスレラ属(Drechslera sp.)、エクセロヒラム属(Exserohilum sp.)からなる群より選ばれる一種以上の糸状菌である請求項3記載の植物病予防剤または除草剤。
【請求項5】
さらに、界面活性剤を含有してなる請求項1記載の植物病予防剤または除草剤。
【請求項6】
界面活性剤が、リグニンスルホン酸塩、ジアルキルエステルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩からなる群より選ばれる一種以上を含む粉状の界面活性剤である請求項5記載の植物病予防剤または除草剤。
【請求項7】
水中に入れた時に担体が容器内に閉じ込められ、微生物が容器外の水中に分散される請求項1記載の植物病予防剤または除草剤。
【請求項8】
請求項1記載の植物病予防剤または除草剤を、水中に入れて微生物を分散させ、得られる微生物分散液を散布することを特徴とする植物病予防方法もしくは除草方法。
【請求項9】
界面活性剤を含む水中で微生物を分散させる請求項8記載の植物病予防方法もしくは除草方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は植物病予防剤または除草剤、並びに植物病予防方法もしくは除草方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、農園芸分野において害虫を防除するには、化学農薬を使用する場合が多いが、化学農薬を使用する場合には、害虫ばかりでなく人畜などの他の生物にも何らかの害を与える場合がある。害虫を殺虫するには、従来、有機リン系殺虫剤や、ピレスロイド系殺虫剤の油剤、乳剤を木材や土壌に散布したり、木材部に注入する方法が多く採用されてきた。しかしながら、近年、これらの薬剤の人畜に及ぼす影響、またはこれらの薬剤による環境汚染などが問題視されてきている。さらに、これらの薬剤には、作業者自身の健康に対して悪影響を与える可能性があるといった問題点がある。
【0003】
そこで、微生物を利用した害虫防除製剤が開発され、一部で使用されている。微生物を使用した害虫防除製剤は、微生物が生きた状態で活性を示す場合がほとんどであるが、特に、糸状菌の場合は自然環境中における安定性は極めて悪く、その安定性の悪さから、糸状菌を用いた害虫防除製剤は、保存時および輸送時にも注意を払う必要がある。
【0004】
例えば、保存時および輸送時の糸状菌ならびにその分生子の安定性を高めるべく、包装材を用いて保存する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、糸状菌の培養物として、ウレタン発泡体や不織布に菌を培養して、カミキリムシなどの成虫を防除するために被害木に巻きつけやすいようにシート状にしたものも提案されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照。)。これは、菌糸上に分生子を生育させたまま製剤にしたため、安定性も良く、5℃以下であれば1年以上、−20℃以下であれば2年以上安定で、25℃でも2ヶ月は安定であることから、野外における残効性の長い製剤として認められている。
【0006】
【特許文献1】
特表平7−508645号公報
【特許文献2】
特開昭63−190807号公報
【特許文献3】
特開平3−98567号公報
【0007】
また、一般に農園芸のおける植物病の被害は害虫被害と同様に大きく、これらの被害を防止するための植物病予防剤や除草剤は、作業の簡便性の点から、散布しやすい水和剤タイプが求められている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、植物病に対して殺菌作用を有する微生物を利用し、これを安定に保存して、使用時に微生物分散液を容易に得ることが可能な植物病予防剤または除草剤、並びに植物病予防方法もしくは除草方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、植物病や雑草に対して防除、駆除作用を有する微生物を担体を用いて固体培養して得られる培養物をメッシュ部分を有する容器内に包み込ませて予防剤や除草剤とすることにより、使用するまでは微生物を傷つけることなく安定化させ、使用時は、それを水中に入れるだけで微生物が水中に分散し、担体は容器内に残存することで、担体が混入することなく微生物分散液を容易に調製することができることを見い出した。
【0010】
また、微生物分散液を予防や除草する箇所に散布することで、オイルなどによる薬害なく植物病からの防除や雑草の除去をすることが可能となることを見い出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、植物病に対して殺菌作用を有する微生物を、担体を用いて固体培養して得られる培養物を、メッシュ部分を有する容器内に包み込んでなることを特徴とする植物病予防剤または除草剤を提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、上記植物病予防剤または除草剤を、水中に入れて微生物を分散させ、得られる微生物分散液を散布することを特徴とする植物病予防方法もしくは除草方法を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の植物病予防剤や除草剤を用いる植物病や雑草については、特に限定はない。
【0014】
植物病としては、例えば、タバコの白絹病や腰折病、多くの作物で見られる根頭かんしゅ病、軟腐病、灰色かび病などが挙げられ、雑草としては、例えば、スズメノカタビラや、ノビエなどが挙げられる。
【0015】
本発明において用いられる殺菌作用を有する微生物としては、特に限定されるものではないが、具体的には、ベルチシリウム属(Verticillium sp.)、トリコデルマ属(Trichoderma.sp.)、グリオクロディウム属(Glioclodium sp.)、シャエトミウム属(Chaetomiumu sp.),ドレクスレラ属(Drechslera sp.)、およびエクセロヒラム属(Exserohilum sp.)などの糸状菌、植物病原菌や雑草に対して予防や殺菌、除草効果を示すバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)およびエルウィニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)、キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)、ケトミウム属(Chaetomium sp.)、非病原性フサリウム属(Fusarium sp.)、放線菌ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)などの細菌が挙げられる。これらの微生物は野外において本菌に寄生された植物や死亡虫体から分離することができる。
【0016】
本発明に用いる上記微生物が糸状菌である場合、担体上で菌糸を伸ばし、分生子柄を形成して、そこに約10μm前後の分生子を生育し得る。上記糸状菌が植物病を予防する作用機序は、この糸状菌が拮抗微生物として働くようであり、病原菌が植物体を汚染する前にこの糸状菌が植物体に着生して、病原菌の着生密度を減少させたり、着生した病原菌や有害微生物の活動を抑制する物質を産生するなどして植物体の病害を軽減すると考えられる。なお、糸状菌が除草剤としての作用機構は、特異的に生じるものであり、その作用機序は明確ではない。
【0017】
本発明において、微生物を固体培養する担体としては、通常用いられる公知の担体を使用することができ、例えば、植物質粉末(木粉、米穀、大豆粉、小麦フスマ、タバコ粉、でんぷん、セルロースなど)、シクロデキストリンなどの包接化合物などが挙げられる。これらは粒剤、錠剤、ペレット状剤などの剤型に加工して使用することができる。また、合成繊維(ポリエチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリプロピレン、ビニロンなど)、動植物繊維または無機質繊維(セルロース、樹脂、絹、綿、羊毛、紙、布、不織布、織布、皮革、アルミニウムなど)なども担体として使用できる。これらはバンド剤、シート剤などの剤型に加工して使用することができる。これらのうち、担体としての汎用性と、培地成分としても利用できる観点から、小麦フスマ、米穀および大豆粉が好ましい。
【0018】
本発明に用いる微生物を、担体を用いて固体培養する方法としては、例えば、グルコースを炭素源として液体培養した培養液を、小麦フスマと同重量の水を加えてオートクレーブ滅菌した担体に散布し、無菌的に攪拌して、25℃で90%R.H.以上の条件で7日間程度静置培養する方法が挙げられる。
【0019】
また、培養物における微生物の菌密度(単位重量当たりの生菌数)については、特に限定されないが、10個/g以上が好ましく、10〜1011個/gがより好ましい。なお、菌密度は希釈平板法によって測定することができる。
【0020】
また、本発明の植物病予防剤や除草剤に、さらに界面活性剤を含有させると、本発明の製剤を水中に入れて微生物を容器外の水中に分散させる際に、界面活性剤により容器外への移行が促進されて、水中での微生物濃度が高くなり好ましい。界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。なかでも、培養物を腐敗劣化させることなく容器内に長期に保持することが可能であり、また、水中に入れた時に泡立ちがなく、微生物を死滅させずにその分散を促進させることができるという観点から、リグニンスルホン酸塩、ジアルキルエステルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレートおよびポリカルボン酸塩からなる群より選ばれる一種以上を含む粉状の界面活性剤が好ましい。
【0021】
使用される培養物の量としては、散布剤として、有効成分である微生物が10〜10個/mlとなるように調製することが好ましく、例えば5〜10l/アール散布分としては、容器内に0.5〜100gが好ましく、約1010個/gの培養物で約10/mlの微生物量に調製するためには5〜10gが好ましい。
【0022】
使用される界面活性剤の量としては、培養物の1/100〜2倍量が好ましく、1/10〜同量がより好ましい。
【0023】
本発明で用いる容器は、メッシュ部分を有するものであれば特に限定されず、メッシュ部分は容器全体にわたるものであっても容器の一部であってもよい。容器のメッシュ部分の材質は、水に不溶であれば、特に限定されるものではなく、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリエチレン、布および紙などが挙げられ、これらの材質からなる織布や不織布を用いることができる。メッシュの孔径は、特に限定されないが、本発明における製剤を水中に入れた時に、メッシュ内の微生物が容易に容器外の水中に分散されるという観点から、0.005mm以上が好ましく、0.01mm以上がより好ましい。一方、担体を容器内に閉じ込めるという観点から、1mm以下が好ましく、0.1mm以下がより好ましい。
【0024】
メッシュ部分が容器の一部である場合、容器のメッシュ部分以外の材質は、水に不溶であれば、特に限定されるものではなく、プラスチックや金属などでもよいが、使用後に土壌に廃棄されたときに自然崩壊するという観点から、綿布やパルプ不織布を用いることが好ましい。
【0025】
容器の大きさとしては、培養物を包み込むことができれば特に限定されず、その形状も限定されない。例えば、袋状、筒状、角状などの形状が挙げられる。
【0026】
本発明の植物病予防剤や除草剤は、水中に入れるまでは微生物が傷つけられることなく培養物中の担体に保持されるため、安定に保存することができる。
【0027】
また、本発明の植物病予防剤や除草剤を水中に入れて微生物を容器外の水中に分散させ、得られる微生物分散液を被害箇所や被害の生じる可能性のある場所に散布することにより、植物病の防除や雑草の繁殖被害の予防を行なうことができる。
【0028】
この場合、界面活性剤を含む水中で微生物を分散させてもよい。例えば、▲1▼界面活性剤を含む水中に本発明の製剤を入れて微生物を分散させる、▲2▼水中に製剤と共に界面活性剤を投入する、あるいは▲3▼水中に製剤を投入した後に界面活性剤を入れるなどの種々の方法により、界面活性剤を含む水中で微生物を分散させることができる。これにより、微生物の容器外への移行が促進されて、水中での微生物濃度が高くなり好ましい。界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、本発明の製剤にさらに含有させる界面活性剤と同様のものを用いることができる。
【0029】
本発明の植物病予防剤や除草剤を投入する水の量としては、適切な濃度の微生物分散液を得ることができ、分散性の観点から、培養物1g当たり0.1〜10Lが好ましく、0.5〜2Lがより好ましい。微生物分散液中の微生物の菌数は、10〜10個/mlが好ましい。
【0030】
得られた微生物分散液の散布は、一般農薬の散布器などを使用して行なうことができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0032】
実施例1
微生物としてバチルス・サブチリスを米殻に固体培養して得られた培養物20gをナイロンメッシュ(孔径約0.1mm)の20×14cmの袋に入れ、ヒートシールすることにより植物病予防剤を多数調製した。培養物における微生物の菌密度は、3.6×10個/gであった。なお、菌密度の測定には希釈平板法を使用した。以下、同様である。
【0033】
得られた植物病予防剤を、600m1、2L、10Lの水中に入れて3時間放置して、微生物を袋の外の水中に分散させ、微生物分散液を得た。得られた微生物分散液の菌濃度を測定して菌数を求めた。微生物分散液に分散した微生物の割合は、それぞれ水中に入れる前の培養物における微生物の26%、21%、28%であり、水の容量に影響されないことが判明した。なお、培養物の担体が異物として袋の外に漏出することはなかった。
【0034】
実施例2
界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)20gを袋内に更に含有させた以外は、実施例1と同様にして植物病予防剤を調製した。
【0035】
得られた予防剤を、600mlの水中に入れて3時間放置して、微生物を袋の外の水中に分散させ、微生物分散液を得た。得られた微生物分散液の菌濃度を測定して菌数を求めた結果、微生物分散液に分散した微生物の割合は、水中に入れる前の培養物における微生物の略100%であった。
【0036】
実施例1の結果と比較すると、界面活性剤をさらに含有させることによって、微生物分散液に分散する微生物の割合を増加できることが判明した。なお、培養物の担体が異物として漏出することはなかった。
【0037】
実施例3
微生物としてエルウィニア・カロトボーラを小麦フスマに固体培養して得られた培養物2gおよびリグニンスルホン酸塩を主成分とする粉末の界面活性剤2gをナイロンメッシュ(孔径約0.1mm)の4×7cmの袋に入れ、ヒートシールすることにより本発明の製剤を調製した。培養物における微生物の菌密度は、1.6×1010個/gであった。
【0038】
得られた製剤を、10Lの水中に入れて3時間放置して、微生物を袋の外の水中に分散させ、微生物分散液を得た。その後、袋の中から培養物を取り出し、ミキサーで粉砕して残っている菌数を測定した結果、微生物を水中に分散させた後の培養物における微生物の菌密度は、0.1×1010個/gであった。つまり、微生物分散液に分散した微生物の割合は、水中に入れる前の培養物における微生物の約94%であった。なお、培養物の担体が異物として漏出することはなかった。
【0039】
実施例4
微生物としてバチルス・サブチリルスを小麦フスマに固体培養して得られた培養物20gおよびリグニンスルホン酸塩を主成分とする粉末の界面活性剤それぞれ0〜20gをナイロンメッシュ(孔径約0.1mm)の20×14cmの袋に入れ、ヒートシールすることにより、本発明の製剤を調製した。培養物における微生物の菌密度は、3.2×10個/gであった。
【0040】
得られた製剤を、10Lの水中に入れて、1〜3時間放置して、微生物を袋の外の水中に分散させ、微生物分散液を得た。得られた微生物分散液の菌濃度を測定して菌数を求めた結果、微生物分散液に分散した微生物の割合は、水中に入れる前の培養物における微生物の80%以上であった。
【0041】
つまり、界面活性剤を5g添加することにより、80%以上の微生物が微生物分散液に分散され、界面活性剤を本発明の製剤に含有させることにより、より多くの微生物を微生物分散液に分散させることができることが判った。
【0042】
【発明の効果】
本発明の植物病予防剤および除草剤は、植物病に対して殺菌作用を有する微生物を安定に保存して、使用時に微生物分散液を容易に得ることが可能である。また、本発明の製剤を使用することにより、有効に植物病の予防や雑草の除草を行なうことができる。
【出願人】 【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
【住所又は居所】大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号
【出願日】 平成15年5月23日(2003.5.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−346021(P2004−346021A)
【公開日】 平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願番号】 特願2003−145557(P2003−145557)