| 【発明の名称】 |
MAIL遺伝子ノックアウトマウス |
| 【発明者】 |
【氏名】森松 正美
【氏名】椎名 貴彦
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| 【要約】 |
【課題】生体におけるMAIL遺伝子の機能を解明すること及びそのための手段を提供すること。
【解決手段】MAIL遺伝子欠損マウス、特に、生後4週目から眼周囲に異常がみられることを特徴とする該欠損マウス、及び生後6週目にアトピー性皮膚炎様のアレルギー性疾患がみられることを特徴とする該欠損マウス。胎生期、特に、胎齢11.5日〜13.5日の間に死亡することを特徴とする、MAIL等のIκBタンパク質ファミリー遺伝子欠損マウス。これらの遺伝子欠損マウスを用いることを特徴とする、NF−κB情報伝達系に作用する物質の検索方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 MAIL遺伝子欠損マウス。 【請求項2】 ヘテロ欠損である、請求項1記載のMAIL遺伝子欠損マウス。 【請求項3】 ホモ欠損である、請求項1記載のMAIL遺伝子欠損マウス。 【請求項4】 生後4週目から眼周囲に異常がみられることを特徴とする、請求項3記載の欠損マウス。 【請求項5】 生後6週目にアトピー性皮膚炎様のアレルギー性疾患がみられることを特徴とする、請求項3又は4記載の欠損マウス。 【請求項6】 胎生期に死亡することを特徴とする、IκBタンパク質ファミリー遺伝子欠損マウス。 【請求項7】 胎齢11.5日〜13.5日の間に死亡することを特徴とする、請求項6記載のIκBタンパク質ファミリー遺伝子欠損マウス。 【請求項8】 肝臓における異常が原因で胎生期に死亡することを特徴とする、請求項7記載のIκBタンパク質ファミリー遺伝子欠損マウス。 【請求項9】 IκBタンパク質ファミリーがMAILであることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の欠損マウス。 【請求項10】 請求項1〜5のいずれか一項に記載のMAIL遺伝子欠損マウスを用いることを特徴とする、NF−κB情報伝達系に作用する物質の検索方法。 【請求項11】 請求項6〜9のいずれか一項に記載のIκBタンパク質ファミリー遺伝子欠損マウスを用いることを特徴とする、NF−κB情報伝達系に作用する物質の検索方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、MAIL(Molecule possessing ankyrin−repeats induced by lipopolysaccharide)遺伝子欠損マウス、及び、胎生期に死亡することを特徴とする、IκBタンパク質ファミリー遺伝子欠損マウス、並びに、これらの遺伝子欠損マウスを用いることを特徴とする、NF−κB情報伝達系に作用する物質の検索方法等に関する。 【0002】 【従来の技術】 本発明者ら岩手大学と北海道大学のグループは、国内外を通じて初めて MAIL(Molecule possessing ankyrin−repeats induced by lipopolysaccharide)を報告した 。MAILは、グラム陰性細菌の細胞壁成分であるLPS(内毒素、エンドトキシン)をマウスに投与すると遺伝子発現が誘導されるタンパク質である。アンキリンリピート(ankyrin‐repeat)というアミノ酸構造上の特徴から、IκBタンパク質ファミリーの新規分子であると考えられる(非特許文献1)。その後、国内で理化学研究所の Haruta らと九州大学の YamazakiらがMAILと同じ分子を独立に発見した(非特許文献2及び非特許文献3)。更に、MAIL遺伝子のエクソン−イントロン構造、染色体上の位置、プロモーター等の構造に関して報告されている(非特許文献4)。 【0003】 【非特許文献1】 Kitamura et al,FEBS Lett.,485 p.53−56 (2000) 【非特許文献2】 J.Biol.Chem.,276,27657(2001), 【非特許文献3】 J.Biol.Chem.,276,12485(2001) 【非特許文献4】 Immunogenetics 53:649−655 (2001) 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 NF‐κBは様々な遺伝子の転写を制御することで、細菌感染症やアレルギーの重要な病態である炎症反応の誘導に関与する。MAILは、核内で活性化したNF−κBを制御することによって、炎症・免疫応答の強弱をコントロールしている、と予想されるが、MAILがNF−κBとどのように相互作用するのか、炎症にどのように関与しているのか、そして個体レベルでどのような役割を果たしているのかは、未だ不明である。 【0005】 従って、本発明の主な目的は、生体におけるMAIL遺伝子の機能を解明すること及びそのための手段を提供すること等である。 【0006】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために、本発明者は、MAIL遺伝子欠損マウスを作製することに成功し、本発明を完成した。 【0007】 即ち、本発明は、MAIL遺伝子欠損(ノックアウト)マウスに係る。MAIL遺伝子欠損の種類によって、ヘテロ欠損(MAIL+/‐)マウス及びホモ欠損(MAIL‐/‐)マウスがある。このうち、誕生したホモ欠損(MAIL‐/‐)マウスには、本明細書の実施例に示されるように、生後4週目から眼周囲に異常がみられ、更に、生後6週目にアトピー性皮膚炎様のアレルギー性疾患が認められる。 更に本発明は、胎生期、特に、胎齢11.5日〜13.5日の間に死亡することを特徴とする、IκBタンパク質ファミリー遺伝子欠損マウスに係る。このような死亡の原因として、肝臓における異常が認められた。IκBタンパク質ファミリーは転写因子NF‐κBの制御因子であって、 MAILの他に、IκB‐α、IκB‐β、IκB‐ε、及びBcl‐3の存在が知られている。 【0008】 又、本発明は、このような遺伝子欠損マウスを用いることを特徴とする、NF−κB情報伝達系に作用する物質の検索方法にも係るものである。 【0009】 【発明の実施の形態】 本発明のMAIL遺伝子欠損(ノックアウト)マウスである、ヘテロ欠損(MAIL+/‐)マウス及びホモ欠損(MAIL‐/‐)マウスは、当業者に公知の方法に従って作製することが可能である。本発明の遺伝子欠損マウス作製に使用するマウスの種類・系統に特に制限はなく、当業者に公知の任意のマウスを使用することが出来る。このようなマウスの例として、C57BL/6マウスや129マウスを挙げることができる。 【0010】 ヘテロ欠損(MAIL+/‐)マウスは、ES細胞を用いて、例えば、Hogan, B., Beddington, R., Costantini, F., and Lacy, E. (1994) Isolation,culture, and manipulation of embryonic stem cells. in Manipulating the Mouse Embryo.A Laboratory Manunal. 2nd Edition. pp253−290. Cold Spring Harbor Laboratorty Press. New York.、又は、相沢慎一 (1995) ジーンターゲティング ES細胞を用いた変異マウスの作製、実験医学別冊、羊土社、東京、に記載の方法に準じて作製することができる。 【0011】 【実施例】 次に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。又、以下の実施例中で具体的な手段・方法が特に記載されていない場合には、該実施例は当業界で標準的なものに準じて実施されたものである。 【0012】 【実施例1】 MAIL遺伝子ホモ欠損マウス(MAIL−/−)の作製 (1)キメラマウスの作製 以下の手順により、MAIL遺伝子が欠損した細胞を有するキメラマウスを作製さした。 ES細胞においてMAIL遺伝子を欠損させるために、まず、ターゲティングベクターを作製した。マウスMAIL遺伝子の構造は本発明者等が非特許文献4に報告したが、この遺伝子のエキソン4からイントロン8までを除去し、かわりにネオマイシン耐性遺伝子を導入するコンストラクトを選択した。すなわち、エキソン4の5’側3kbp、PGK−neo遺伝子、イントロン8の3’側3.5kbpを連結させて挿入したプラスミドベクターを作製した。 次に当業者に公知の方法に従い、エレクトロポレーションでターゲティングベクターをES細胞に導入した。ES細胞は、G418選択(ネオマイシン選択)した後、サザンブロットで解析したところ、2クローンで相同組み換えを確認した。 相同組み換えの認められた陽性クローン(ES細胞)を胚盤胞に導入して仮親に移植することによりキメラマウスを作製した。 (2)ヘテロ欠損(MAIL+/‐)マウスの作製 こうして得られたキメラマウスの交配によってF1マウスを作製した。F1マウスの遺伝型をPCRで解析したところ生殖系列への変異の導入(germ−line化)が確認され、ヘテロ欠損マウス(MAIL+/‐マウス)が作製された。 (3)更に、MAIL+/−マウスどうしを交配させて、MAIL遺伝子ホモ欠損マウスの作製を試みた。計202匹の子マウスが誕生した。うち、MAIL‐/−は5個体だった(表1)。MAIL+/+とMAIL+/‐は、それぞれ69匹と128匹で、ほぼメンデル律に従っていた。尚、マウスの遺伝型の解析は、尻尾からDNAを抽出し、PCRで行った(図1)。 【0013】 以下のプライマーを用いてゲノムDNAを鋳型にPCRを実施すると、野生型遺伝子では520 bpのDNAが、変異型では430 bpのDNAが、それぞれ増幅された。PCRの反応は、94度30秒間、55度30秒間、72度1分間を30回繰り返すことにより実施した。得られたDNA産物は、TAE緩衝液で作製した2%アガロースゲルで電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色することにより検出した。 Primer 1 5’−TTTCTTTCGCCTCTTCACCAGGTTTCTCC−3’ 野生型遺伝子に特異的 Primer 2 5’−TACCGCCACCTGAAAGGCAC−3’ 野生型と変異型の遺伝子に共通 Primer 3 5’−CTTCCATTTGTCACGTCCTGC−3’ 変異型遺伝子に特異的 【0014】 【実施例2】 MAIL‐/‐マウスの表現型解析 MAIL−/−マウスは、生後3週目までは外見上正常であるが、4週目頃から眼の周囲が白くなり、常に眼険を閉じている状態になった(図2)。さらに、6週目には眼周囲の炎症(目脂など)や被毛粗剛が認められ、以後、眼周囲から顔面、さらに下顎、腹部へと脱毛(アトピー性皮膚炎様のアレルギー性疾患)が拡大していった。 【0015】 【実施例3】 胎子の遺伝子型の解析 MAIL+/‐マウスどうしを交配させて妊娠したマウスの10.5、11.5、12.0、12.5、13.5日胎齢の胎子の遺伝子型を調べた。胎齢11.5、12.5日で死亡胎子、倭小胎子にMAIL−/‐が認められた。13.5日胎齢ではMAIL‐/−は死亡していた(表1)。これらの結果から、死亡する胎齢は11.5日から13.5日齢であることが示唆された。 【0016】 【表1】
【0017】 【実施例4】 胎子の組織学的解析 マウス胎仔を摘出し、胎膜からゲノムDNAを抽出して胎仔の遺伝型を判別した。遺伝型の判別は実施例1に記載したものと同様のPCR法により行った。胎齢11.5日および12.5日のMAIL+/+およびMAIL‐/−マウス胎子のHE染色標本を作製し、顕微鏡下で観察した。12.5日では−/‐の肝臓に異常が見られた。一方、11.5日では肝臓に+/+、‐/‐間で大きな差は認められなかった。肝臓の異常が胚死の原因であることが示唆された。 尚、HE組織標本は次の通りに作製した。すなわち、胎仔組織をザンボニ固定液で固定した後、エタノールとキシレンで脱水処理し、パラフィンに包埋してからミクロトームを用いて厚さ5 mmの切片を作製した。これをヘマトキシリンおよびエオジンで染色して光学顕微鏡で観察した。 【0018】 【実施例5】 胎子におけるMAILmRNAの発現 胚・胎子の成長にMAILが関与している可能性を考え、胎子でのMAILの発現を解析した。野生型マウス(C57BL/6)の妊娠マウスから取り出した胎子(9.5日、12.5日、15.5 日)からRNAを抽出し、MAILmRNAの発現をRT−PCRによって調べた(図3)。胎子期にMAILが発現していることが明らかになった。 尚、PCRは胎仔から抽出したRNAを鋳型として逆転写酵素によりcDNAを合成した後、以下のプライマーを用いて実施した。MAIL mRNAの存在は、520 bpのDNAが増幅されることで確認された。PCRの反応は、94度30秒間、55度30秒間、72度1分間を30回繰り返すことにより実施した。得られたDNA産物は、TAE緩衝液で作製した2%アガロースゲルで電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色することにより検出した。 Primer 1 5’−CGCGGATCCAGTTGAGCCCCACATGG−3’ Primer 2 5’−CGCGGATCCGTTTAGTGAAACTGGGTTGC−3’ 【0019】 【発明の効果】 以上の結果から、MAILは胎子の発生、成長にとって重要な役割をしていることが予想された。これまでに知られているIκBタンパク質ファミリーのノックアウトマウスで胎生期に死亡するものは報告されておらず、また、NF‐κBファミリーであるReIAノックアウトマウスやIκBキナーゼβノックアウトマウスの死亡時期よりも早期に死亡する(表2)ことから、MAILは未知の機能、役割を有している可能性が高い。尚、表2は、審良静男著、「サイトカイン情報伝達研究の新しい展開」、実験医学(羊土社)、18巻、第3号(2月号)、320〜324頁(2000)からの引用である。 【0020】 【表2】
【0021】 本発明のMAIL遺伝子欠損マウスは、このようなMAILの生体内、例えば、NF−κB情報伝達系における機能・役割、発生と炎症に関わる生理活性、等を解明する為の実験動物として有用である。 更に、本発明のMAIL遺伝子欠損マウスは、NF−κB情報伝達系に作用する物質の検索、並びに、炎症関連疾患及びアレルギー等に対する治療薬の開発等に利用することが出来る。 【0022】 【配列表】
【図面の簡単な説明】 【図1】図1は、MAIL遺伝子の欠損部分及び各プライマーの位置を示す図、並びにPCRで得られたマウスの遺伝型の解析結果を示す電気泳動の写真である。 【図2】図2は、MAIL+/+マウス及びMAIL−/−マウスの4週目における様子を示す写真である。 【図3】図3は、RT−PCRで得られた野生型マウス(C57BL/6)の胎子におけるMAILmRNAの発現を示す電気泳動の写真である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】503360115 【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
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| 【出願日】 |
平成15年4月25日(2003.4.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100102668 【弁理士】 【氏名又は名称】佐伯 憲生
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| 【公開番号】 |
特開2004−321112(P2004−321112A) |
| 【公開日】 |
平成16年11月18日(2004.11.18) |
| 【出願番号】 |
特願2003−122690(P2003−122690) |
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