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【発明の名称】 レバードラグリールの逆転防止装置
【発明者】 【氏名】中川 勝二
【住所又は居所】大阪府堺市老松町3丁77番地 株式会社シマノ内

【要約】 【課題】2種のワンウェイクラッチを有するレバードラグリールの逆転防止装置において、スプール軸方向の寸法の増加を抑えかつ取付構造を簡素化できるようにする。

【解決手段】レバードラグリールの逆転防止機構9は、レバードラグリールに装着され、摩擦ディスク36の糸繰り出し方向の回転を禁止するための装置であって、ローラ型の第1ワンウェイクラッチ50と爪式の第2ワンウェイクラッチ51とを備えている。第1ワンウェイクラッチ50は、摩擦ディスク36とリール本体1との間に装着され、摩擦ディスク36の糸繰り出し方向の回転を禁止するものである。第2ワンウェイクラッチ51は、リール本体1とハンドル軸5との間に装着され、ハンドル軸5の糸繰り出し方向の回転を禁止するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に回転自在に装着されハンドルの回転により糸巻取方向に回転するスプールに連動して回転する第1制動部と、前記第1制動部に接触可能に配置された第2制動部とを有する制動装置の制動力を前記スプールの回転軸回りに揺動自在に装着されたレバーの操作により調整可能なレバードラグリールに装着され、前記第2制動部の糸繰り出し方向の逆転を防止するためのレバードラグリールの逆転防止装置であって、
前記第2制動部と前記リール本体との間に装着され、前記第2制動部の糸繰り出し方向の回転を禁止する第1ワンウェイクラッチと、
前記リール本体と前記第2制動部と連動する前記ハンドルの回転軸との間に装着され、前記回転軸の糸繰り出し方向の回転を禁止する第2ワンウェイクラッチとを備え、
前記第1及び第2ワンウェイクラッチのうち、一方はローラ型のワンウェイクラッチであり、他方は爪式のワンウェイクラッチであるレバードラグリールの逆転防止装置。
【請求項2】
前記第1ワンウェイクラッチは、前記ローラ型のワンウェイクラッチであり、
前記第2制動部に回転不能に装着された内輪と、
前記内輪の外周側に配置され前記リール本体に回転不能に装着された外輪と、
前記内輪と外輪との間に両者に接触可能に配置されたローラとを有し、
前記第2ワンウェイクラッチは、前記爪式のワンウェイクラッチであり、
前記ハンドルの回転軸に回転不能に装着され、外周部に周方向に間隔を隔てて複数の歯部が形成された回転部材と、
前記回転部材の歯部に先端が接触する接触姿勢と前記歯部から離反する離反姿勢とに揺動自在に前記リール本体に装着され、前記接触姿勢に配置されると前記回転部材の糸繰り出し方向の回転を禁止する爪部材とを有する、請求項1に記載のレバードラグリールの逆転防止装置。
【請求項3】
前記第1ワンウェイクラッチは、前記爪式のワンウェイクラッチであり、
前記第2制動部に回転不能に装着され、外周部に周方向に間隔を隔てて複数の歯部が形成された回転部材と、
前記回転部材の歯部に先端が接触する接触姿勢と前記歯部から離反する離反姿勢とに揺動自在に前記リール本体に装着され、前記接触姿勢に配置されると前記回転部材の糸繰り出し方向の回転を禁止する爪部材とを有し、
前記第2ワンウェイクラッチは、前記ローラ型のワンウェイクラッチであり、
前記ハンドルの回転軸に回転不能に装着された内輪と、
前記内輪の外周側に配置され前記リール本体に回転不能に装着された外輪と、前記内輪と外輪との間に両者に接触可能に配置されたローラとを有する、請求項1に記載のレバードラグリールの逆転防止装置。
【請求項4】
前記回転部材が糸巻取方向に回転したとき前記爪部材を離反姿勢側に付勢し、糸繰り出し方向に回転したとき接触姿勢側に付勢する付勢手段をさらに備える、請求項2又は3に記載のレバードラグリールの逆転防止装置。
【請求項5】
前記付勢手段は、前記爪部材に設けられ、前記回転部材の両側面を弾性的に挟持する挟持部材を有する、請求項4に記載のレバードラグリールの逆転防止装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、逆転防止装置、特に、リール本体に回転自在に装着されハンドルの回転により糸巻取方向に回転するスプールに連動して回転する第1制動部と、第1制動部に接触可能に配置された第2制動部とを有する制動装置の制動力をレバーの操作により調整可能なレバードラグリールに装着され、第2制動部の糸繰り出し方向の回転を防止するためのレバードラグリールの逆転防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レバードラグリールは、一般に、スプールに連動して回転する第1制動部と、第1制動部に接触可能に配置された第2制動部とを有する制動装置を備えている。第2制動部は、ワンウェイクラッチにより糸繰り出し方向の回転が禁止されている。また両制動部のいずれか一方は、スプール軸と軸方向移動不能に連結されている。この両制動部の圧接状態を調整することによりスプールの糸繰り出し方向の回転に対する制動力を調整できる。制動力の調整は、リール本体に揺動自在に装着されたブレーキレバーを揺動させることによりスプール又はスプール軸を軸方向に移動させて行っている。
【0003】
この種のレバードラグリールの制動装置に使用されるワンウェイクラッチには、一般に爪式のワンウェイクラッチが使用されている(たとえば、特許文献1)。爪式のワンウェイクラッチは、外周部に周方向に間隔を隔てて歯部が形成され、第2制動部に連動して回転する回転部材と、回転部材の歯部に接触する接触姿勢と離反する離反姿勢との間で揺動自在にリール本体に装着された爪部材と、爪部材を接触姿勢側に付勢する付勢部材とを有している。爪部材は、先端が揺動中心より糸巻取方向下流側に配置されている。
【0004】
このように構成された爪式のワンウェイクラッチでは、糸巻取方向にスプールが回転すると、爪部材は、回転部材の歯部によって離反姿勢側に押されて回転部材の糸巻取方向の回転、つまりスプールの糸巻取方向の回転が許可される。糸繰り出し方向に回転すると、爪部材は付勢部材に付勢されて接触姿勢で歯部に当接して回転部材の糸繰り出し方向の回転を阻止し、スプールの糸繰り出し方向の回転を禁止する。このように、第2制動部は常に糸繰り出し方向の回転が禁止されているので、両制動部材が接触した状態では、両制動部の接触状態に応じてスプールの糸繰り出し方向の回転が制動され、両制動部が離反した状態では、スプールが自由回転可能な状態になる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−204322号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
爪式のワンウェイクラッチでは、糸巻取方向にスプールが回転したときに、爪部材が回転部材の歯部に噛み合うまでに、歯部のピッチ分の糸繰り出し方向の回転が生じることがある。このため、魚の引きによりスプールが糸繰り出し方向に逆転するときに僅かながたが発生する。
【0007】
そこで、スタードラグ型の両軸受リールのように、内輪と外輪と両輪の間に配置されたローラとを有する比較的がたが少ないローラ型のワンウェイクラッチを用いることが考えられる。しかし、ローラ型のワンウェイクラッチは、許容伝達トルクが小さいため、大型のリールの場合単独での使用は難しい。このため、スタードラグ型の大型の両軸受リールで、ローラ型と爪式の2種のワンウェイクラッチをハンドル軸に並設したものが知られている。
【0008】
レバードラグ式の両軸受リールでこのように2種のワンウェイクラッチをハンドル軸に並設すると、ハンドル軸の長さが長くなり、スプール軸方向の寸法が大きくなる。また、第2制動部に2種のワンウェイクラッチを並設しても同様にスプール軸方向の寸法が長くなる。しかも、2種のワンウェイクラッチを並設すると、リール本体に爪部材や外輪を近接した位置に装着しなければならないのでその取付構造が複雑になる。
【0009】
本発明の課題は、2種のワンウェイクラッチを有するレバードラグリールの逆転防止装置において、スプール軸方向の寸法の増加を抑えかつ取付構造を簡素化できるようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明1に係るレバードラグリールの逆転防止装置は、リール本体に回転自在に装着されハンドルの回転により糸巻取方向に回転するスプールに連動して回転する第1制動部と、第1制動部に接触可能に配置された第2制動部とを有する制動装置の制動力をスプールの回転軸回りに揺動自在に装着されたレバーの操作により調整可能なレバードラグリールに装着され、第2制動部の糸繰り出し方向の回転を禁止するための装置であって、第1ワンウェイクラッチと第2ワンウェイクラッチとを備えている。第1ワンウェイクラッチは、第2制動部とリール本体との間に装着され、第2制動部の糸繰り出し方向の回転を禁止するものである。第2ワンウェイクラッチは、リール本体と第2制動部と連動するハンドルの回転軸との間に装着され、回転軸の糸繰り出し方向の回転を禁止するものである。この第1及び第2ワンウェイクラッチのうち、一方はローラ型のワンウェイクラッチであり、他方は爪式のワンウェイクラッチである。
【0011】
この逆転防止装置では、両制動部が接触した状態でスプールが糸繰り出し方向に逆転すると、第2制動部が逆転しようとする。しかし、両ワンウェイクラッチのうちローラ型のワンウェイクラッチが作動して瞬時に第2制動部の逆転が阻止される。この結果、両制動部間の摩擦によりスプールが制動されドラグ力が発生する。このとき、ローラ型のワンウェイクラッチの許容伝達トルク以上のトルクが作用しようとすると、爪式のワンウェイクラッチにより逆転が阻止されローラ型のワンウェイクラッチが保護される。ここでは、2種のワンウェイクラッチを並設するのではなく別々の場所に配置しているので、スプール軸方向の寸法の増加を抑えることができる。また、2つのワンウェイクラッチを近接して配置する必要がないので、取付構造を簡素化できるようになる。
【0012】
発明2に係るレバードラグリールの逆転防止装置は、発明1に記載の装置において、第1ワンウェイクラッチは、ローラ型のワンウェイクラッチであり、第2制動部に回転不能に装着された内輪と、内輪の外周側に配置されリール本体に回転不能に装着された外輪と、内輪と外輪との間に両者に接触可能に配置されたローラとを有し、第2ワンウェイクラッチは、爪式のワンウェイクラッチであり、ハンドルの回転軸に回転不能に装着され、外周部に周方向に間隔を隔てて複数の歯部が形成された回転部材と、回転部材の歯部に先端が接触する接触姿勢と歯部から離反する離反姿勢とに揺動自在にリール本体に装着され、接触姿勢に配置されると回転部材の糸繰り出し方向の回転を禁止する爪部材とを有する。この場合には、第2制動部にローラ型のワンウェイクラッチが直接装着されているので、回転伝達系のがたつきの影響を受けることなく第2制動部の糸繰り出し方向の逆転を瞬時に阻止することができる。
【0013】
発明3に係るレバードラグリールの逆転防止装置は、発明1に記載の装置において、第1ワンウェイクラッチは、爪式のワンウェイクラッチであり、第2制動部に回転不能に装着され、外周部に周方向に間隔を隔てて複数の歯部が形成された回転部材と、回転部材の歯部に先端が接触する接触姿勢と歯部から離反する離反姿勢とに揺動自在にリール本体に装着され、接触姿勢に配置されると回転部材の糸繰り出し方向の回転を禁止する爪部材とを有し、第2ワンウェイクラッチは、ローラ型のワンウェイクラッチであり、ハンドルの回転軸に回転不能に装着された内輪と、内輪の外周側に配置されリール本体に回転不能に装着された外輪と、内輪と外輪との間に両者に接触可能に配置されたローラとを有する。この場合には、第2制動部に爪式のワンウェイクラッチが装着された従来品に僅かな改造を加えるだけで2種のワンウェイクラッチをスプール軸方向の寸法の増加を抑えかつ簡素な構造で取り付けできる。
【0014】
発明4に係るレバードラグリールの逆転防止装置は、発明2又は3に記載の装置において、回転部材が糸巻取方向に回転したとき爪部材を離反姿勢側に付勢し、糸繰り出し方向に回転したとき接触姿勢側に付勢する付勢手段をさらに備える。この場合には、スプールが糸巻取方向に回転しても、爪部材の回転部材への衝突によるクリック音が発生しなくなり、しかも、ローラ型のワンウェイクラッチもほとんど騒音を発生しないので、糸巻取時の騒音の発生を抑えることができる。また、爪部材が回転部材の歯部に接触しないので、回転部材の回転抵抗も増加せず巻取効率の低下も抑えることができる
発明5に係るレバードラグリールの逆転防止装置は、発明4に記載の装置において、付勢手段は、前記爪部材に設けられ、前記回転部材の両側面を弾性的に挟持する挟持部材を有する。この場合には、挟持部材によって回転部材の両側面を弾性的に挟持することにより、回転部材との間の摩擦によって回転部材が糸巻取方向に回転するときには離反姿勢側に爪部材を付勢し、糸繰り出し方向に回転するときには接触姿勢側に付勢することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
〔全体構成〕
図1において、本発明の一実施形態を採用した両軸受リールは、レバードラグリールであり、筒状のリール本体1と、リール本体1の中心部に回転自在に装着されたスプール軸2と、スプール軸2に回転自在かつ軸方向移動不能に支持されたスプール3と、リール本体1の側方に配置されたハンドル4とを備えている。また、レバードラグリールは、ハンドル4の回転をスプール3に伝達する回転伝達機構6と、スプール3の糸繰り出し方向の回転を制動するレバードラグ機構7と、レバードラグ機構7をスプール軸2方向に移動させてドラグ力(制動力)を調整するためのドラグ調整機構8と、レバードラグ機構7の糸繰り出し方向の回転を規制する逆転防止機構9とをリール本体1の内部に備えている。
【0016】
〔リール本体の構成〕
リール本体1は、金属製の左右1対の皿状の側板10,11と、側板10,11が両端にいんろう結合により同芯に結合され複数本の固定ボルト13により固定された金属製の孔あき筒状のリールボディ12とを有している。側板10,11とリールボディ12との間には、リールを体で支えるために使用する1対のハーネスラグ14が装着されている。側板10,11は、そのほぼ中心部で回動自在にスプール軸2の両端を支持する。左側の側板10の中心部内側面には内方に突出する筒状の軸受収納部10aが形成されている。右側(ハンドル4側)の側板11の中心部には、スプール軸2を支持するために軸方向外方に突出するボス部11aが形成されており、ボス部11aの周囲には、ハンドル4のハンドル軸5を装着するための厚肉円板状の軸受ブロック15がねじ止めされている。リールボディ12の下部にはリールを釣り竿に装着するための竿取付部19が設けられている。
【0017】
スプール軸2は、両端に配置された左右1対の軸受31a,31bによりリール本体1の側板10,11に回転自在に支持されている。またその内側で軸方向に間隔を隔ててスプール3の両端に配置された2つの軸受32a,32bによりスプール3を回転自在に支持する。左側の軸受31aは、左側の側板10の軸受収納部10aに収納されている。右側の軸受31bは、右側の側板11のボス部11aに装着されている。図3に示すように、スプール軸2の右端の軸受31bの外輪の右側にはドラグ調整機構8の構成部品が当接している。また内輪の左側には回転伝達機構6のピニオンギア17(後述)がワッシャ20を介して当接している。図1に示すように、スプール軸2の左端の軸受31aの内輪の右側には逆転防止機構9の第1ワンウェイクラッチ50(後述)が当接している。また外輪の左端には、側板10の内側面が当接している。図3に示すように、スプール3を支持する右側の軸受32bの外輪の左側にはスプール3が当接している。また内輪の右側にはワッシャ21を介して4枚の皿ばね34が当接している。この皿ばね34は、ドラグ操作レバー41(後述)の揺動に対してドラグ力を急激に上昇させることなく広範囲でドラグ力を微妙に調整可能にするために設けられている。スプール3を支持する左側の軸受32aの内輪の左側にはレバードラグ機構7の後述する摩擦ディスク36がドラグ調整機構8を構成するリターンばね45を介して当接している。外輪の右側はスプール3に当接している。
【0018】
スプール3は、糸巻胴部3aと糸巻胴部3aの両端に一体形成されたフランジ部3bとを有している。図1の左側のフランジ部3bの外方には、レバードラグ機構7の制動ディスク35が装着されている。
ハンドル4は、図1及び図2に示すように、スプール軸2の下方にスプール軸2と平行に配置された筒状のハンドル軸5の突出端に固定ボルト25により固定されている。固定ボルト25には、鍔部25aが形成されている。鍔部25aには、円弧状の12の凹部25bが周方向に間隔を隔てて形成されており、凹部25bに頭部が係合するビス26により回り止めされている。ハンドル軸5は、ボス部11aの前下方で軸受ブロック15にはめ込まれた筒状部材15aに回転自在に装着されている。ハンドル軸5の先端には、メインギア16が回転不能に装着されている。
【0019】
回転伝達機構6は、図1に示すように、ハンドル4のハンドル軸5に回転自在に支持されたメインギア16及びスプール軸2に一体形成されたピニオンギア17とを有している。ハンドル4の回転は、ハンドル軸5、メインギア16、ピニオンギア17を介してスプール軸2に伝達される。
〔レバードラグ機構の構成〕
レバードラグ機構7は、図1に示すように、スプール3の図1左側のフランジ部3bの外側面に装着された制動ディスク35(第1制動部の一例)と、制動ディスク35に接触可能に配置された摩擦ディスク36(第2制動部の一例)とを有している。レバードラグ機構7は、スプール3及び摩擦ディスク36をスプール軸方向に往復移動させるためのドラグ調整機構8によりドラグ力がドラグ解除状態と最大ドラグ状態との間で調整される。ここで、ドラグ解除状態は、ドラグ力がスプール3に全く作動しない状態であり、スプール3は自由回転可能状態になる。また、最大ドラグ状態はスプール3に最大ドラグ力が作用する状態である。
【0020】
制動ディスク35は、たとえばステンレス製のワッシャ状の円板部材であり、径方向内方の側面に周方向に間隔を隔てて配置された複数本の取付ねじ40により、スプール3の左側のフランジ部3bの外側面にスプール3に対して回転不能に装着されている。制動ディスク35の取付ねじ40の取付部35aは、径方向外方部分より環状に凹んでいる。これにより、ドラグ面積、特に径方向外方のドラグ面積が制限されにくくなり、スプール3の外径に応じた最大径の制動ディスク35を使用可能になる。
【0021】
摩擦ディスク36は、制動ディスク35と対向して配置されている。摩擦ディスク36の制動ディスク35に対向する面には、たとえばカーボングラファイトや繊維強化樹脂などの耐摩耗素材製のリング状の摩擦板36aがビス等の適宜の固定手段により固定されている。摩擦ディスク36は、中心部に軸方向外方に突出する筒状のボス部36bを有しており、このボス部36bにスプール軸2の径方向に沿って貫通してスプール軸2に装着されたピン2aが係止されている。これにより摩擦ディスク36は、スプール軸2に回転不能に装着されており、スプール軸2とともに回転する。また、摩擦ディスク36のボス部36bの図1左端面には逆転防止機構9の第1ワンウェイクラッチ50の内輪55が回転不能かつ軸方向移動自在に装着されている。
【0022】
〔ドラグ調整機構の構成〕
ドラグ調整機構8は、図1に示すように、スプール軸2に対して揺動するドラグ操作レバー41と、ドラグ操作レバー41の揺動をレバードラグ機構7のスプール軸方向への移動に変換する変換機構42とを有している。
ドラグ操作レバー41は、図2に実線で示す制動解除位置と2点鎖線で示す最大制動位置(ドラグロック位置)との間でリール本体1のボス部11aに揺動自在に装着されている。ドラグ操作レバー41は、揺動によりレバードラグ機構7のドラグ力を調整可能なものであり、スプール軸2と同芯に揺動する。ドラグ操作レバー41は、ボス部11aに揺動自在に装着されるレバー部41aと、レバー部41aの先端に固定されたつまみ部41bとを有している。レバー部41aの基端部は、変換機構42に回転不能に係止されている。
【0023】
変換機構42は、ドラグ操作レバー41の揺動をレバードラグ機構7のスプール軸方向への移動に変換する。変換機構42は、図3に示すように、ドラグ操作レバー41の基端に回転不能に係止された第1カム部43と、レバードラグ機構7を図1左方の第1軸方向に押圧可能に設けられ第1カム部43に係合する第2カム部44と、レバードラグ機構7を第1軸方向と逆の図1右方の第2軸方向に付勢するリターンばね45(図1)と、ドラグ操作レバー41の所定の揺動位置でのドラグ力を微調整可能なドラグ微調整部47とを有している。
【0024】
第2カム部44は、第1カム部43の回動によりスプール軸方向に移動するものであり、軸受31bの外輪に接触してスプール軸2を介してレバードラグ機構7を第1軸方向(図1左方)に押圧する。第2カム部44は、軸受31bを押圧可能な押圧部材48と、押圧部材48と螺合するカム部材49とを有している。押圧部材48は、大径の鍔部48aと小径の筒部48bとを有する鍔付き円筒状の部材であり、鍔部48aの外周面でボス部11aの内周面にスプール軸方向に移動自在かつ回転自在に設けられている。鍔部48aの外周側には、軸受31bの外輪に接触可能なリング状の押圧部48cが形成されている。また、筒部48bの外周面には、カム部材49に螺合する雄ねじ部48dが形成されている。押圧部材48の内周部には、ドラグ微調整部47の調整ピン52aの先端が回転不能に係止される断面が小判型の係止穴48eが形成されている。押圧部材48は、ドラグ微調整部47により回動されると、回動しないカム部材49に対するスプール軸方向の位置が変動し、同じドラグ操作レバー41の揺動位置であってもドラグ力を僅かに調整することができる。
【0025】
カム部材49は、大径部49aと小径部49bとを有する段付き筒状の部材である。カム部材49の大径部49aと小径部49bとの境界部分には、傾斜カム46に係合する1対のカムピン49cが径方向に沿って外方に突出して立設されている。各カムピン49cの先端は球状に丸められており、ボス部11aの内周面にスプール軸方向に沿って対向して形成された1対の係止溝11bに係止されている。また、カムピン49cの側面は傾斜カム46に接触可能である。カム部材49の内周面には、雄ねじ部48dに螺合する雌ねじ部49dが形成されている。これにより、カム部材49は、ボス部11aに回転不能かつ軸方向移動自在に装着されている。カム部材49は、傾斜カム46に接触してドラグ操作レバー41の揺動によりスプール軸方向に移動する。
【0026】
リターンばね45は、図1に示すように、摩擦ディスク36と軸受32aとの間においてスプール軸2の外周側に圧縮状態で装着され、摩擦ディスク36は制動ディスク35(スプール3)を離反する方向に付勢しかつ制動ディスク35(スプール3)を図4右方に付勢する。
ドラグ微調整部47は、スプール軸芯と同芯にリール本体1に回転自在かつ軸方向移動不能に装着された調節つまみ52を有している。調整つまみ52の中心には、第2カム部44に先端が係合する調整ピン52aが一体的に設けられている。調整ピン52aの先端には、押圧部材48の係止穴48eに回転不能に係止される互いに平行な面取り部52bが形成されている。このような構成のドラグ微調整部47では、調節つまみ52を回動させると押圧部材48が回動し、押圧部材48に螺合するカム部材49に対する押圧部材48のスプール軸方向の位置が変化する。これにより、押圧部材48の押圧力が変化し、ドラグ操作レバー41が同じ揺動位置であってもドラグ力を細かく調整できる。
【0027】
〔逆転防止機構の構成〕
逆転防止機構9は、図1に示すように、摩擦ディスク36の糸繰り出し方向の回転を禁止する第1ワンウェイクラッチ50と、リール本体1とハンドル軸5との間に装着され、ハンドル軸5の糸繰り出し方向の回転を禁止する第2ワンウェイクラッチ51とを備えている。
【0028】
第1ワンウェイクラッチ50は、図4及び図5に示すように、ローラ型のワンウェイクラッチであり、摩擦ディスク36とリール本体1との間に装着されている。第1ワンウェイクラッチ50は、摩擦ディスク36に回転不能に装着された内輪55と、内輪55の外周側に配置されリール本体の軸受収納部10aに回転不能に装着された外輪56と、内輪55と外輪56との間に両者に接触可能に配置された複数のローラ57とを有している。また、第1ワンウェイクラッチ50は、各ローラ57を一方向に付勢する板ばね58と、各ローラ57を保持する保持部材59とを備えている。
【0029】
内輪55は、内周面に矩形の係止孔55aが形成された金属製の部材である。内輪55は、摩擦ディスク36に回転不能に装着されている。外輪56は、厚肉有底円筒状のたとえばステンレス焼結金属製の部材である。外輪56はリール本体1の軸受収納部10aに回転不能に装着されている。外輪56の内周面には、ローラ57が装着されるローラ溝56aが周方向に間隔を隔てて形成されており、ローラ溝56aには、ローラ57が遊転可能な遊転部56bと、内輪55の外周面との隙間が徐々に小さくなる食い込み部56cとが形成されている。外輪56の外周面には、周方向に間隔を隔てて複数の係止凸部56dが形成されている。軸受収納部10aには、この係止凸部56dが係合する係止凹部10bが形成されており、これにより外輪56は、リール本体1に回転不能に装着される。なお、係止凸部56d及び係止凹部10bはそれぞれ6箇所に設けられている。外輪56の内周側には、図5に示すように、合成樹脂製の保持部材59が固定されている。この保持部材59は、ローラ57を保持するために設けられている。
【0030】
各ローラ57は、両端が略半球状に形成された丸棒状の金属製の部材であり、保持部材59に保持されている。ローラ57の直径は、遊転部56bと内輪55の外周面との最大隙間より小さく、食い込み部56cと内輪55の外周面との最小隙間より大きい。このため、内輪55の回転によりローラ57が食い込み部56cに食い込むことができ、内輪55と外輪56とをロックして摩擦ディスク36の逆転を禁止できる。
【0031】
板ばね58は、金属製の弾性部材であり、ローラ57を食い込み部56cに食い込む方向に付勢するようにローラ57及び保持部材59の内周側の壁面に接触して配置されている。
第2ワンウェイクラッチ51は、リール本体1とハンドル軸5との間に装着されている。第2ワンウェイクラッチ51は、爪式のワンウェイクラッチであり、外周面に鋸歯60aが形成されたラチェットホイール60と、ラチェットホイール60の外周側に配置され先端が鋸歯60aを係止する1対のラチェット爪61とを有している。
【0032】
ラチェットホイール60は、ハンドル軸5の外周面にたとえばセレーションなどの適宜の係止手段により回転不能に装着されている。ラチェットホイール60は、ワッシャ63を介してメインギア16に当接している。
ラチェット爪61は、図6に示すように、側板11の内側面に鋸歯60aに接触する接触姿勢と鋸歯60aから離反する離反姿勢とに揺動自在に装着されている。ラチェット爪61の先端は、揺動軸芯よりラチェットホイール60の糸巻取方向Rの下流側に配置されている。
【0033】
ラチェット爪61の中間部には、C字状に折り曲げられた挟持部材62がはめ込み固定されている。側板11のラチェット爪61の離反姿勢側には、挟持部材62がラチェットホイール60から外れないように揺動範囲を規制するための規制ピン65が立設されている。挟持部材62の1対の先端62aは、ラチェットホイール60の両側面に弾性的に接触してラチェットホイール60を挟持している。この挟持部材62は、ラチェットホイール60が糸巻取方向Rに回転すると、ラチェットホイール60との摩擦によりラチェット爪61を離反姿勢側に付勢する。付勢されたラチェット爪61は、規制ピン65に当接して図6に二点鎖線で示す離反姿勢に維持される。また、ラチェットホイール60が逆に糸繰り出し方向に回転すると、ラチェットホイール60との摩擦によりラチェット爪61を接触姿勢側に付勢する。これにより、糸巻取時にラチェット爪61がラチェットホイール60の鋸歯60aに接触しなくなり、騒音を抑えることができる。しかも、回転抵抗の増加を抑え、スプール3の巻取効率の低下を抑えることもできる。
【0034】
ここで、制動解除状態にあるとき、図1のスプール軸芯の下側に示すように、摩擦ディスク36の摩擦板36aと制動ディスク35との間に隙間があき、制動状態にあるときには、図1のスプール軸芯の上側に示すように、両者が密着する。この密着度合いを調整することによりドラグ力が変化する。
次にレバードラグ機構7の制動動作について説明する。
【0035】
レバードラグ機構7では、ドラグ操作レバー41を図2に実線で示す制動解除位置から2点鎖線で示す最大ドラグ位置に向けて揺動させると、図1のスプール軸芯の下側に示す状態から上側に示す状態に変化する。まず、ドラグ操作レバー41の揺動により変換機構42の第1カム部43が回動し、第2カム部44が第1軸方向に移動してレバードラグ機構7の制動ディスク35がスプール軸方向左方に移動する。これにより軸受31bの外輪が押圧されて移動し、ピニオンギア17、皿ばね34及び軸受32bを介してスプール3が押圧されスプール軸方向左方(図1左方)に移動するとともに、制動ディスク35も第1軸方向に移動する。この結果、制動ディスク35が摩擦ディスク36に接近する。そして、制動ディスク35が、軸方向に移動不能でかつ糸繰り出し方向に回転不能な摩擦ディスク36に接触すると、ドラグ力がスプール3に作用する。そして、ドラグ操作レバー41をドラグロック位置まで揺動させると、押圧力が最大になり、制動ディスク35が摩擦ディスク36により押圧されて最大ドラグ力が得られる。
【0036】
ドラグ操作レバー41を図2に2点鎖線で示すドラグロック位置から実線で示すドラグ解除位置に揺動させると、図1のスプール軸芯の上側に示すドラグロック状態から下側に示すドラグ解除状態に変化する。まず、リターンばね45の付勢力によりスプール3が押圧されて図1右側に移動する。これにより、制動ディスク35と摩擦ディスク36との間に隙間ができる。さらに軸受32aを介してスプール3が押圧され右側に移動する。これによりスプール3の制動が解除される。一方、スプール3が移動すると、軸受32b、皿ばね34、ピニオンギア17及び軸受31bを介して第2カム部44が押圧されて図1右側に後退する。そして、ドラグ操作レバー41がドラグ解除位置に揺動すると図1のスプール軸芯の下側の状態に移動する。
【0037】
この状態でハンドル4を巻取方向に回転させてスプール3が糸巻取方向に回転させると、ハンドル軸5を介してラチェットホイール60も糸巻取方向R(図6)に回転する。すると、挟持部材62は、ラチェットホイール60との摩擦により、糸巻取方向Rに引っ張られる。この結果、ラチェット爪61は挟持部材62によって離反姿勢側に付勢され、離反姿勢に揺動して規制ピン65に当接する。このため、スプール3が糸巻取方向に回転する時には、ラチェットホイール60とラチェット爪61との衝突によるクリック音は発生しない。
【0038】
また,ハンドル軸5の回転はメインギア16ピニオンギア17を介してスプール軸2に伝達され、摩擦ディスク36に伝達される。このとき、第1ワンウェイクラッチ50では、ローラ57が遊転部56b側に移動して回転許容状態になる。この結果、摩擦ディスク36は糸巻取方向に回転する。
一方、仕掛けに魚がかかってスプール3が糸繰り出し方向に回転すると、摩擦ディスク36も糸繰り出し方向に回転しようとする。しかし、第1ワンウェイクラッチ50のローラ57が食い込み部56c側に移動して内輪55と外輪56とをロックする。このため、摩擦ディスク36の逆転が禁止される。これにより、制動ディスク35との間で滑りが生じてスプール3に設定されたドラグ力が作用する。このとき、第1ワンウェイクラッチの許容伝達トルク以上のトルクが作用しようとすると、爪式の第2ワンウェイクラッチ51により逆転が阻止されローラ型の第1ワンウェイクラッチ50が保護される。ここでは、2種のワンウェイクラッチ50,51を並設するのではなく別々の場所に配置しているので、スプール軸方向の寸法の増加を抑えることができる。また、2つのワンウェイクラッチ50,51を近接して配置する必要がないので、取付構造を簡素化できるようになる。
【0039】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、摩擦ディスク36に装着される第1ワンウェイクラッチ50にローラ型のワンウェイクラッチを用い、ハンドル軸5に装着される第2ワンウェイクラッチ51に爪式のワンウェイクラッチを用いたが、図7に示すように、逆でもよい。
【0040】
図7において、爪式の第1ワンウェイクラッチ150は、摩擦ディスク36のボス部36bに回転不能に装着されたラチェットホイール160と、側板10に揺動自在に装着されたラチェット爪161とを有している。また、ローラ型の第2ワンウェイクラッチ151は、ハンドル軸5に回転不能に装着された内輪と、内輪に回転不能に装着された外輪と、両輪に接触可能に配置されたローラとを有している。なお、この実施形態では、摩擦ディスク36を覆うカバー部材39と、カバー部材39の内周側とボス部36bとの隙間をシールするシール部材39aとが設けられている。カバー部材39は、外周側でスプール3のフランジ部3bの外周側にビス止めされている。このような構成でも前記実施形態と同様な効果を奏する。
【0041】
(b) 前記実施形態では、スプール3のハンドル装着側と逆側にレバードラグ機構を設けたが、ハンドル装着側にレバードラグ機構を設けてもよい。この場合、スプール軸をハンドル側(図1右側)に引っ張ったときにドラグ力が最大になるようにしてもよい。また、スプール軸を介さずにハンドルの回転力をドラグ機構からスプールに直接伝達してもよい。
【0042】
(c) 前記実施形態では、爪式のワンウェイクラッチに2つのラチェット爪を配置したが、1つでもよい。また、複数のラチェット爪を配置する場合に、それらの取付位相をラチェットホイールの歯部の間隔の半分となるように配置してもよい。これにより、ラチェットホイールを係止可能な位相が倍増する。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、2種のワンウェイクラッチを並設するのではなく別々の場所に配置しているので、スプール軸方向の寸法の増加を抑えることができる。また、2つのワンウェイクラッチを近接して配置する必要がないので、取付構造を簡素化できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるレバードラグリールの断面図。
【図2】その側面図。
【図3】ドラグ調整機構の断面図。
【図4】第1ワンウェイクラッチの横断面図。
【図5】第1ワンウェイクラッチの縦断面図。
【図6】第2ワンウェイクラッチの正面図。
【図7】他の実施形態の図1に相当する図
【符号の説明】
1 リール本体
3 スプール
4 ハンドル
5 ハンドル軸
7 レバードラグ機構
9 逆転防止機構
41 ドラグ操作レバー
50,150 第1ワンウェイクラッチ
51,151 第2ワンウェイクラッチ
55,155 内輪
56,156 外輪
57,157 ローラ
60,160 ラチェットホイール
61,161 ラチェット爪
62 挟持部材
【出願人】 【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
【住所又は居所】大阪府堺市老松町3丁77番地
【出願日】 平成14年10月15日(2002.10.15)
【代理人】 【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男

【識別番号】100109450
【弁理士】
【氏名又は名称】關 健一

【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠

【公開番号】 特開2004−135513(P2004−135513A)
【公開日】 平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願番号】 特願2002−300934(P2002−300934)