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【発明の名称】 和種雌牛の肥育方法
【発明者】 【氏名】大久保 幸弘
【住所又は居所】埼玉県入間郡大井町鶴ヶ岡5丁目3番1号 日清飼料株式会社検査センター内

【要約】 【課題】雌牛の種類にかかわらず、卵巣摘出による肥育効果を充分に発揮することを可能とする。

【解決手段】和種牛の雌牛の卵巣を摘出して肥育する和種雌牛の肥育方法において、和種牛が純粋種の場合には、前記摘出を生後約9〜11ケ月齢の間に行い、純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の場合には、前記摘出を生後約6〜約8ケ月齢の間に行うようにしたので、卵巣摘出による肥育効果を充分に発揮させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
和種牛の雌牛の卵巣を摘出して肥育する和種雌牛の肥育方法において、
前記和種牛が純粋種の場合には、前記摘出を生後約9〜11ケ月齢の間に行うこと、
を特徴とする和種雌牛の肥育方法。
【請求項2】
和種牛の雌牛の卵巣を摘出して肥育する和種雌牛の肥育方法において、
前記和種牛が純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の場合には、前記摘出を生後約6〜8ケ月齢の間に行うこと、
を特徴とする和種雌牛の肥育方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、純粋種の和種牛や、純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の和種牛などの和種雌牛の肥育方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の和種雌牛の肥育方法として、例えば、純粋種の和種牛または純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の和種牛のいずれかの雌牛の卵巣を摘出して肥育を行うことが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−168326号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の技術では、卵巣を摘出したにもかかわらず、雌牛の種類によっては、予想した枝肉重量が得られない、という問題があった。
本発明の課題は、雌牛の種類にかかわらず、卵巣摘出による肥育効果を充分に発揮することができる和種雌牛の肥育方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、和種牛の雌牛の卵巣を摘出して肥育する和種雌牛の肥育方法において、前記和種牛が純粋種の場合には、前記摘出を生後約9〜11ケ月齢の間に行うこと、を特徴とする和種雌牛の肥育方法である。
【0006】
請求項2の発明は、和種牛の雌牛の卵巣を摘出して肥育する和種雌牛の肥育方法において、前記和種牛が純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の場合には、前記摘出を生後約6〜8ケ月齢の間に行うこと、を特徴とする和種雌牛の肥育方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の肥育方法は、純粋種の和種牛又は純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の和種牛のいずれかの雌牛に対して行われる。
ここで、本明細書中で、単に「和種牛」という場合は、純粋種の和種牛、及び、純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の和種牛の両方を包含し、また、単に「和種雌牛」という場合は純粋種の和種牛の雌牛、及び、純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である和種牛の雌牛の両方を包含する。
【0008】
そして、本発明でいう純粋種の和種牛としては、黒毛和種、褐毛和種、日本短角種及び無角和種のいずれかを意味し、また、純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の和種牛としては、前述した純粋種の和種牛のうちの1種又は2種以上に由来する遺伝子比率が50%以上である交雑種の和種牛を意味する。
【0009】
限定されるものではないが、本発明の肥育方法を行うのに用いる、純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の和種牛の雌牛の代表例としては、(1)純粋種の和種牛と他の種の牛から得られる、純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%である交雑種の和種牛(雑種第1代;F1 )の雌牛;
(2)純粋種の和種牛と上記した(1)の交雑種の和種牛(雑種第1代;F1 )から得られる、純粋種の和種牛の遺伝子比率が75%である交雑種の和種牛(雑種第2代;F2 )の雌牛;などを挙げることができる。
なお、上記(2)において純粋種の和種牛の遺伝子比率が75%である交雑種の和種牛(雑種第2代;F2 )を得るに当たっては、親牛として用いる純粋種の和種牛の品種が、雑種第1代(F1 )の交雑種の和種牛(上記(1)の交雑種の和種牛)を得るのに用いられた和種牛の品種と、同じであっても(いわゆる「戻し交配」)、又は、異なる品種であってもよい。
そして、前記した(1)及び(2)の交雑種の和種牛の雌牛を得るに当たっては、通常の交配、人工授精、又は、雌牛の卵巣より取り出した卵子への人工的な受精(いわゆる体外受精)等のいずれによって行われたものであってもよい。
【0010】
上述した和種雌牛のうちでも、本発明の肥育方法は、純粋種の黒毛和種牛の雌牛、又は、純粋種の黒毛和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の和種牛の雌牛に対して特に有効であって、肉質が一層改善されたそれらの黒毛和種牛の雌牛を、個体間の差を低く保ちつつ、大きな増体重を達成しながら、集団肥育などによって生産性よく得ることができる。
【0011】
そして、本発明において、卵巣の摘出を行う和種雌牛は、子牛を産む前の未経産雌牛であっても、又は、子牛を産んだことのある経産雌牛であってもよい。
【0012】
卵巣の摘出時期は、肥育の前又は肥育期間の途中に行うことができるが、卵巣の摘出によって和種雌牛の成長が阻害されないようにし、しかも、卵巣摘出による肥育効果を充分に発揮させるために、和種牛が純粋種の場合には、摘出を生後約9〜11ケ月齢の間に行うことが好ましく、和種牛が純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の場合には、摘出を生後約6〜約8ケ月齢の間に行うことが好ましい。
【0013】
和種雌牛からの卵巣の摘出方法は、雌牛本体(母体)に大きなダメージを与えたり、その成長の妨げにならない方法であればいずれでもよく特に制限されない。特に、卵巣の摘出に当たって、卵巣摘出具として、卵巣と子宮をつなぐ血管などの生体連結管類を一時的に締め付けて卵巣への血管を挫滅させたままの状態で、卵巣組織部を切断して卵巣を摘出することができ、場合によって、卵巣切除後に薬液を腹腔内などへ投与することのできる卵巣摘出具を使用するのが特に好ましく、したがって、本発明はかかる卵巣摘出具を使用して和種雌牛の卵巣を摘出して肥育する方法をその好ましい態様として包含する。
【0014】
上記した機能を有する卵巣摘出具としては、本出願人が先に出願した特開平8−80310号の卵巣摘出具などが好ましく用いられる。
特開平8−80310号に記載されている卵巣摘出具は、先端が開口し且つ側面に開口を持つ外管、先端に旋孔具を有し且つ前記外管と同形の開口を側面に持つ前記外管の内部に摺動自在に挿入された内管、及び、前記内管の摺動によって連通孔が閉孔したときに内管の内部で摺動されて卵巣外組織部を切断する前記内管の内部に摺動自在に挿入された卵巣切除具を備えている。
【0015】
より具体的には、上記した卵巣摘出具は、図1に示すように、先端に開口部11を有し且つ側面に卵巣採取口12及び支持ハンドル13を有する外管10、先端に膣壁穿孔具21を固定し、該膣壁穿孔具21の後部に卵巣収容部22を有し、側面に卵巣採取口23と血管挫滅作業用ハンドル24を有し且つ前記外管10の支持ハンドル13よりも後方に膣壁穿孔作業用ハンドル25を固定した内管20、並びに、先端に卵巣切除刃物31を固定し且つ前記内管20から後方に突出した後端に卵巣切除押圧板32を取り付けてある卵巣切除管30を備え、更に、好ましくは、卵巣切除後に薬液を腹腔内などへ投与することのできる手段(薬液注入口34及び薬液流出口35)を有していて、そして、前記支持ハンドル13と前記膣壁穿孔作業用ハンドル25との間隔及び前記支持ハンドル13と前記血管挫滅作業用ハンドル24との間隔がそれぞれ手術者の片手の親指とその他の指との間で把持できる距離に設定してあるという構造上の特徴を有している。
【0016】
そして、上記の卵巣摘出具を用いて卵巣の摘出を行うに当たっては、支持ハンドル13と膣壁穿孔作業用ハンドル25とを片手の指で把持して接近させることにより、内管20の先端の膣壁穿孔具21が外管10の先端開口部11から突出して膣壁を穿孔し、その孔から卵巣摘出具を腹腔内に突出させ、外管10と内管20の卵巣採取口12,23を腹腔内に入れ、支持ハンドル13と血管挫滅作業用ハンドル24との間隔を片手の指で把持して接近させることにより、内管20が外管10内を摺動して外管10の卵巣採取口12と内管20の卵巣採取口23とが相対的に移動し、両方の卵巣採取口12,23の連通孔が徐々に閉孔して、内管20の中に収納された卵巣に接続している血管などの卵巣外組織部を両方の巣採取口12,23の縁部で締め付けて、卵巣への血管を挫滅させ、その状態で卵巣切除押圧板32を手術者の腹部などにあてて押圧することにより卵巣切除管30が内管20内を前進し、卵巣への血管を押さえたまま、卵巣切除刃物31を前進させて、卵巣組織部を切断して卵巣を摘出する。
そのより詳細な構造及び操作方法などについては、特開平8−80310号公報に記載されている。
【0017】
本発明の実施に当たって、本出願人の出願した特開平8−80310号におけるような卵巣摘出具を用いて、和種雌牛の卵巣の摘出を行った場合には、切断装置(切断刃)を回転させて生体組織を卵巣の付近で切断して卵巣を切除するようになっている、「家畜診療」第323号第34〜37頁( 1990年5月) に記載の方法で用いている従来の卵巣摘出具(KIMBERLING−RUPPSPAY DEVICE)並びに特開平3−247331号公報に記載されている従来の卵巣摘出具を用いた場合に比べて、
(i)卵巣の摘出が短時間ですみ、しかも、卵巣の摘出作業中に生体組織の損傷が少なく、出血や痛みが少ないので、雌牛に対してストレスがかからず、その肉質及び増体重が一層良好になる、
(ii)また、卵巣の摘出を簡単に且つ確実に行うことができることにより、卵巣の摘出時の失敗がなく完全に卵巣を摘出することができ、卵巣の不完全摘出(摘出失敗)に伴い、卵巣の一部が生体内に残存して、再生してしまう危険が生じず、その肉質や増体重が一層良好となる、
という極めて優れた効果が奏される。
【0018】
そして、本発明では、卵巣を摘出する前及び摘出した後の和種雌牛の肥育を1頭ずつ隔離して行っても(単独飼肥育)よいが、本発明の目的を充分に達成するためには、卵巣を摘出した後の和種雌牛のみを数頭〜数十頭まとめて柵などで囲って集団で肥育する(群飼)のが好ましい。
そして、群飼を行う場合は、純粋種の和種雌牛のみをまとめて肥育しても、純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の和種牛の雌牛のみをまとめて肥育しても、又は、純粋種の和種雌牛と純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の和種牛の雌牛とを一緒にして肥育してもよい。
特に、本発明による場合は、群飼を行っても発情による他の牛への乗駕等の心配がなくなり、そのため、事故やストレスなどが少なくなって群飼に適した状態となるので、生産性が向上する。
【0019】
卵巣を摘出した後の和種雌牛の肥育方法、肥育に用いる飼料などは、和種雌牛に対して従来から行われている公知の肥育方法、飼料のいずれもが使用できる。そして、本発明の方法で肥育した和種雌牛は、従来法で肥育した和種雌牛と同様にして出荷することができるが、本発明の方法による場合は、従来よりも増体重が大きく、短期間で従来と同様の体重にまで肥育することができるので、場合によっては、従来よりも早めに肉牛として出荷してもよい。
【0020】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら制限されない。
【0021】
(肥育例1)
純粋種の黒毛和種牛の未経産雌牛であって、表1に示すように、9〜15ケ月齢で、左右の卵巣を、前述した図1に示す卵巣摘出器具を用いて摘出した後、黒毛和種雌牛の肥育で用いる通常の飼料を給与して生後30ケ月齢まで肥育を行って出荷した(出荷時の雌牛の平均体重625.8kg)。
なお、上記卵巣摘出器具で卵巣を摘出するためには、肛門から手を入れる必要があるが、純粋種の黒毛和種牛は、小型であるため、6〜8ケ月齢では、摘出できない。
出荷した上記黒毛和種牛の未経産雌牛について、その枝肉の重量を下記のようにして測定しところ、下記表1に示すとおりの結果であった。
【0022】
[枝肉の重量]
屠殺した雌牛を解体(はく皮、頭部切断、内臓割去、前肢切断、後肢切断、尾切断、枝肉の切断)して得られた枝肉の重量をそのまま測定する。
なお、評価方法として、肉質に関する評価と、重量に関する評価が可能であるが、前者は、餌の種類、飼育環境などにより左右されるファクターがあるので、本発明では、重量に関する評価法を採用した。
【0023】
【表1】


【0024】
図2は、黒毛和種牛の卵巣摘出月齢と枝肉重量平均の関係を示した図である。図2から明らかなように、和種牛が純粋種の場合には、摘出は、生後約9〜約11ケ月齢の間に行うことが好ましいことがわかる。
【0025】
(肥育例2)
Aグループ
純粋種の黒毛和種牛とホルスタイン種牛とを交配させて産まれた純粋種の黒毛和種牛の遺伝子比率が50%である交雑種の未経産雌牛(33頭)であって、表2に示すように、6、9、12ケ月齢で、左右の卵巣を、前述した図1に示す卵巣摘出器具を用いて摘出した後、交雑種の雌牛の肥育で用いる通常の飼料を給与して生後25ケ月齢まで肥育を行って出荷した(出荷時の雌牛の平均体重678.7kg)。
出荷した上記交雑種の未経産雌牛について、その枝肉の重量を測定しところ、下記の表2に示すとおりの結果であった。
【0026】
【表2】


【0027】
Bグループ
純粋種の黒毛和種牛とホルスタイン種牛とを交配させて産まれた純粋種の黒毛和種牛の遺伝子比率が50%である交雑種の未経産雌牛(6頭)であって、表3に示すように、6、7ケ月齢で、左右の卵巣を、前述した図1に示す卵巣摘出具を用いて摘出した後、交雑種の雌牛の肥育で用いる通常の飼料を給与して生後25ケ月齢まで肥育を行って出荷した(出荷時の雌牛の平均体重782.5kg)。
出荷した上記交雑種の未経産雌牛について、その枝肉の重量を測定しところ、下記の表3に示すとおりの結果であった。
【0028】
【表3】


【0029】
図3は、交雑種の和種牛(A,Bグループ)の摘出月齢と枝肉重量平均の関係を示した図である。
図3から明らかなように、和種牛が純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の場合には、摘出は、生後約6〜約8ケ月齢の間に行うことが好ましいことがわかる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、和種牛が純粋種の場合には、卵巣の摘出を生後約9〜11ケ月齢の間に行い、和種牛が純粋種の和種牛の遺伝子比率が50%以上である交雑種の場合には、卵巣の摘出を生後約6〜8ケ月齢の間に行うようにしたので、卵巣摘出による肥育効果を充分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による肥育方法に適した卵巣摘出器具の一例を示す図である。
【図2】黒毛和種牛の卵巣摘出月齢と枝肉重量平均の関係を示した図である。
【図3】交雑種の和種牛(A,Bグループ)の卵巣摘出月齢と枝肉重量平均の関係を示した図である。
【符号の説明】
1 卵巣摘出器具
【出願人】 【識別番号】591059571
【氏名又は名称】日清飼料株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本町一丁目10番5号
【出願日】 平成14年10月10日(2002.10.10)
【代理人】 【識別番号】100092576
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 久男

【公開番号】 特開2004−129564(P2004−129564A)
【公開日】 平成16年4月30日(2004.4.30)
【出願番号】 特願2002−297155(P2002−297155)