| 【発明の名称】 |
ミカン科の倍数性合成キメラ植物及びその生産方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】稲田 絵理子 【住所又は居所】愛媛県松山市安城寺町478番地 株式会社愛媛柑橘資源開発研究所第一研究部内
【氏名】西山 聡 【住所又は居所】愛媛県松山市安城寺町478番地 株式会社愛媛柑橘資源開発研究所第一研究部内
【氏名】菅原 邦明 【住所又は居所】愛媛県松山市安城寺町478番地 株式会社愛媛柑橘資源開発研究所第一研究部内
【氏名】脇塚 巧 【住所又は居所】愛媛県松山市安城寺町478番地 株式会社愛媛柑橘資源開発研究所第一研究部内
【氏名】大和田 厚 【住所又は居所】愛媛県松山市安城寺町478番地 株式会社愛媛柑橘資源開発研究所内
|
| 【要約】 |
【課題】ミカン科の倍数性合成キメラ植物及びその生産方法を提供する。
【解決手段】優良な可食部を持ち、無核果実を形成するミカン科の合成周縁キメラ植物を生産する方法であって、3倍体の個体とそれとは別の個体を接ぎ木し、接ぎ木接合部から発生する不定芽のうち、植物体が倍数性の異なる組織で構成されているものを、細胞の倍数性分析により確認し、選抜することを特徴とするミカン科の合成周縁キメラ植物の生産方法、及び該方法により生産されるミカン科植物の合成周縁キメラ植物の植物体。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 優良な可食部を持ち、無核果実を形成するミカン科の合成周縁キメラ植物を生産する方法であって、3倍体の個体とそれとは別の個体を接ぎ木し、接ぎ木接合部から発生する不定芽のうち、植物体が倍数性の異なる組織で構成されているものを、細胞の倍数性分析により確認し、選抜することを特徴とするミカン科の合成周縁キメラ植物の生産方法。 【請求項2】 接ぎ木接合部から発生する不定芽のうち、茎頂起原層第2、3層が3倍性細胞で構成されているものを、細胞の倍数性分析により確認し、選抜することを特徴とする請求項1記載のミカン科の合成周縁キメラ植物の生産方法。 【請求項3】 請求項1又は2記載の方法により生産されたミカン科の合成周縁キメラ植物であって、植物体に3倍性組織と、それとは異なる倍数性組織あるいは遺伝的に異なる組織の両方が組み込まれていることを特徴とするミカン科植物の合成周縁キメラ植物の植物体。 【請求項4】 2倍体と3倍体の2種のかんきつ類の接ぎ木により作出された倍数性合成周縁キメラ植物であって、茎頂起原層第1層がレモンで、茎頂起原層第2、3層がタヒチライムで構成されていることを特徴とする請求項3記載のミカン科植物の合成周縁キメラ植物の植物体。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ミカン科の合成周縁キメラ植物の生産方法及びその植物体に関するものであり、更に詳しくは、優良な可食部を持ち、しかも無核果実を形成することが可能なミカン科の合成周縁キメラ植物の生産方法、及び該方法により生産される新規合成周縁キメラ植物の植物体に関するものである。 本発明は、3倍体の個体とそれとは別の個体を用いて、例えば、種子の形成を支配する茎頂起原層第2層が3倍体である周縁キメラ植物を作出することで、食味が良くて、種子のない果実を得ることを可能とするミカン科植物の合成周縁キメラ植物の生産方法及びその植物体を提供するものとして有用である。 【0002】 【従来の技術】 一般に、植物体が倍数性の異なる組織で構成されたキメラは、理論的には、コルヒチン等で処理することによって組織の一部の細胞を倍加する方法によって得られると予想される。すなわち、この方法は、茎頂あるいは腋芽等にコルヒチン処理を行い、芽全体ではなくその一部の細胞のみが倍加した状態の芽をその成長後に選抜することを特徴とする方法である。しかしながら、この方法では、一部の細胞の染色体数を偶数倍にすることは可能であるが、奇数倍にすることはできない。更に、この方法では、種や品種が異なる組織を組み入れることは不可能である。 【0003】 また、種なし果実を得る方法として、以下に示すとおり、いくつかの方法がある。一つは、人為的には4倍体と2倍体の交雑、つまり2倍性配偶子と半数性配偶子との接合、によって得られる3倍体を利用する方法である。このためには、まず4倍体を作る必要があり、その方法はいくつかある。例えば、コルヒチンなどの倍数体誘発剤を使って植物の組織又は器官、例えば、種子や地下茎、あるいはカルス等の培養細胞を倍数体誘発剤を含む培地に一定時間浸漬する方法などがある。コルヒチンの最適処理濃度は、植物の種類、器官、処理時間などによって異なるが、一般に、0.1〜0.2%の水溶液を外部から分裂組織に吸収させる。対象が種子であるならば播種直前のものを溶液に2〜3日浸漬処理する。発芽直後の芽生を処理するときは溶液を滴下したり、溶液を含ませた脱脂綿で数日間覆っておく。栄養繁殖植物の場合は側芽を芽生の生長点処理と同様に行う。 【0004】 材料の分裂能力や処理法によって成功率は異なるが、普通コルヒチン処理によって5%内外の倍加個体が得られる(非特許文献1参照)。このようにして選抜された4倍体と、2倍体とを交雑させて3倍体を得る。これらの一連の交雑と選抜の行程に要する時間は、ミカン科植物のように開花結実までの幼齢期が数年にわたる植物では特に長く、その上、得られる3倍体の特性のうち、種なし性以外の特性をあらかじめ予見することは困難である。 【0005】 また、2倍性品種でも、自然環境下において、低頻度ではあるが、2倍性と思われる大型の花粉粒が観察される。同様な現象は、雌性配偶子側にもあるものと推測される。もし、これら2倍性配偶子相互間で受精が行われると4倍性の個体が、また、これらと半数性の正常配偶子とが受精すれば3倍性の個体が得られる可能性がある(非特許文献2参照)。その他、かんきつの2倍体の単胚性品種を母親にした交雑において、通常種子の1/2〜1/6の重さの小粒種子を播種し、3倍体を得る方法がある。 【0006】 イヨカンには約6%の小粒種子があり、その種子から生じる植物体のほとんど全部が3倍体である。クレメンティン、ハッサク、日向夏などでも、1〜2%の3倍体の小粒種子を含んでいる。3倍体種子は、小粒だが充実しているので、発芽率はよい。ただ、幼い時分に小さすぎて弱いため、十分注意して育てなければならないが、本葉が7〜8葉展開した後の生育は一般に旺盛で、1年後には2倍体実生をしのぐようになる(非特許文献3参照)。しかしながら、このような3倍体が得られるのは、偶然の要素が大きく関与し、計画的に作出することは容易ではない。 【0007】 かんきつの合成周縁キメラにおいて、果皮の特性は、茎頂起原層第2及び第3層の種で特徴づけられ、果皮組織は茎頂起原層第1層の種が大きく関与する。このような果実の組織構造とそれらが由来した茎頂起原層の関係は、すでに知られている(非特許文献4参照)。 更に、その関係は、幼植物の葉の表皮組織と葉肉組織を分別して種を確認することにより、果実を用いて確認するのと同等の効果が得られることが明らかとなっている。一番最近の文献としては、本出願者らが発表した論文がある(非特許文献5参照)。 【0008】 【非特許文献1】 農学大事典、1194頁、養賢堂(1994) 【非特許文献2】 果樹園芸大事典、105頁、養賢堂(1991) 【非特許文献3】 岩政正男、柑橘の品種、92−93頁、静岡県柑橘農業協同組合連合会発行(1976) 【非特許文献4】 J.W.Cameron and H.B.Frost.Genetics,Breeding,and Nucellar Embryony,W.Reuther 他編,The Citrus Industry 第2巻,344−347頁,University of California発行(1968) 【非特許文献5】 K.Sugawara他,Histogenic identification by RAPD analysis of leaves and fruit of newly synthesized chimeric Citrus,Journal of The American Societyfor Horticultural Science,127巻,104−107頁(2002) 【0009】 経済栽培されている3倍体の種なしかんきつの例はわずかである。それらには、カリフォルニア大学で交雑育成されたブンタンとグレープフルーツの雑種「オロブランコ」と「メロゴールド」があり、また、古くから偶発の3倍体として知られ、利用されているタヒチライムがある。更に、雌性不稔あるいは雄性不稔等による遺伝的な種なし品種が知られているが、これらの不稔性の遺伝メカニズムの解明が、現在、研究途上にあり、新たな種なしかんきつを育成するためには、交雑及び選抜に長い年月を必要とする。 【0010】 植物体の特性ではなく、栽培技術により種なしにする方法が、ブドウ等で知られている。この方法は、子房又は未熟果実へのジベレリン等成長調整物質を処理して種なし果実を得る技術であるが、ミカン科植物に適用された例はない。種なしの性質をもたらす不稔性発現のために、3倍体等の奇数倍体を利用する場合、既存の奇数倍体の種なし性を有効に活用することが考えられる。しかし、従来の技術の項で示したように、種なし果実を得る方法は、いくつか知られているが、いずれも、かんきつでは、開花結実するまでの幼齢期(栄養成長期)が数年と長いため、交雑及び選抜に長い年月が必要である。このように、従来の方法では、計画的に種なし果実を得るためには、かなりの時間と労力を必要とし、種なし品種を作ることは容易ではない。また、種なし性を含み果実の特性は、交雑による偶然の結果による部分が含まれる。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】 このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、食味が良くて、種子のない果実を得ることが可能な新しい植物体の生産方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、茎頂起原層第1層が2倍体の組織で、茎頂起原層第2、3層が3倍体の組織で構成されている個体が、外観は3倍体の種の特徴を受け継ぎ、種子が入らず、果肉は2倍体の種の特徴を持つとの知見を得て、更に、種なしミカン科植物を作出する方法の確立を目標として、検討を試みる中で、以下に記述する新しい方法を見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、優良な可食部を持ち、しかも無核果実を形成するミカン科植物の合成周縁キメラ植物の生産方法を提供することを目的とするものである。 また、本発明は、3倍体の個体とそれとは別の個体を用いて、外観は3倍体の種子の特徴を受け継ぎ、種子が入らず、果肉は2倍体の種の特徴を持つミカン科植物の新規合成周縁キメラ植物の植物体を提供することを目的とするものである。 【0012】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。 (1)優良な可食部を持ち、無核果実を形成するミカン科の合成周縁キメラ植物を生産する方法であって、3倍体の個体とそれとは別の個体を接ぎ木し、接ぎ木接合部から発生する不定芽のうち、植物体が倍数性の異なる組織で構成されているものを、細胞の倍数性分析により確認し、選抜することを特徴とするミカン科の合成周縁キメラ植物の生産方法。 (2)接ぎ木接合部から発生する不定芽のうち、茎頂起原層第2、3層が3倍性細胞で構成されているものを、細胞の倍数性分析により確認し、選抜することを特徴とする前記(1)記載のミカン科の合成周縁キメラ植物の生産方法。 (3)前記(1)又は(2)記載の方法により生産されたミカン科の合成周縁キメラ植物であって、植物体に3倍性組織と、それとは異なる倍数性組織あるいは遺伝的に異なる組織の両方が組み込まれていることを特徴とするミカン科植物の合成周縁キメラ植物の植物体。 (4)2倍体と3倍体の2種のかんきつ類の接ぎ木により作出された倍数性合成周縁キメラ植物であって、茎頂起原層第1層がレモンで、茎頂起原層第2、3層がタヒチライムで構成されていることを特徴とする前記(3)記載のミカン科植物の合成周縁キメラ植物の植物体。 【0013】 【発明の実施の形態】 次に、本発明について更に詳細に説明する。 本発明は、既存の3倍体個体と別の個体の組織を材料として、接ぎ木を行い、活着後、接ぎ木部分から発生する不定芽を育成し、キメラを効率的に作出/育成選抜し、次いで、茎頂起原層第2、3層が3倍体で、茎頂起原層第1層が2倍体の組織で構成されている個体を効率的に選抜する方法及びその植物体に係るものである。本発明の方法を用いると、比較的簡単で短期間に、予見できる特性を持ち、かつ、種子のない果実が得られる。更に、本発明は、3倍体で種なし果実について、実用上、更に優れた形質の可食部にする方法及びその新植物を提供することを特徴とするものである。 【0014】 本発明では、3倍体の個体とそれとは別の個体(珠心胚実生)を接ぎ木する。ここでいう珠心胚実生とは、食味や形質が良い果肉を持つ2倍体の個体を意味するが、本来は2倍体に限らない。食味等が良くその形質を受け継ぎたい個体であれば、倍数性は問わない。また、ここでは2倍体の珠心胚実生の胚軸組織を、3倍体のミカン科植物材料については新梢組織を供試するが、これらの組織に限らず、不定芽が発生する組織を用いれば、どんな組織でも供試可能である。また、接ぎ木の方法も、好適には、水平上下接ぎ木が例示されるが、水平上下接ぎ木に限定されるものではなく、両方の材料の細胞が混在する不定芽が発生することを可能とする方法であればいずれの方法も適用できる。次いで、接ぎ木接合部から不定芽を発生させる。このようにして発生させたすべての不定芽について、細胞の倍数性分析法により倍数性の分析を行う。この分析では、DNA量を測定し、対比することで細胞の倍数性が分析される。分析方法については、倍数性分析法に限定されず、汎用のDNA量測定装置を用いたフローサイトメトリー法や顕微鏡によって確認する方法等などを例示できるが、これらに限らず、好適の方法を用いて、3倍体と、組み合わせた別の個体の両方の細胞が入った個体を確認し、選抜する。上記方法により選抜されたキメラ個体について、葉肉組織と表皮組織のそれぞれについて倍数性を調べ、葉肉細胞が3倍体、表皮細胞が2倍体の周縁キメラ個体を、目的の植物体として育成する。 【0015】 本発明により、種なし性等の有用な特性をもたらす倍数性合成周縁キメラを果樹産業に提供することができる。果実において、種子は、主に茎頂起原層第2層から発達する。また、3倍体は、還元分裂の過程において、染色体の配分が均等に行われず、異数性配偶子となって不稔性を示す。このため、3倍体では種なし果実となることが知られている。したがって、茎頂起原層第2層が3倍性細胞であれば、不稔性となり、種なし果実となることが予測される。しかし、3倍体は、種なしという実用上有利な特徴を持つが、実際には、ミカン科植物において、実用的な種なし植物を作出することは困難とされており、実用的な3倍体かんきつは、タヒチライム、オロブランコなどわずかの例に限られている。そのため、例えば、果肉の形成に関与する茎頂起原層第1層が食味など形質の優れた品種の細胞で、種子の形成を支配する茎頂起原層第2層が3倍体である周縁キメラ植物を作出することができれば、食味が良くて、種子のない果実を生産し、提供することが可能となる。本発明は、果肉の優良な形質と3倍体の種なしの形質を組み合わせることで、今まで作出困難であった実用的な種なしかんきつを比較的簡単に作出することを可能とするものである。 【0016】 レモン及びライムは、両者とも香酸柑橘である。世界中で経済栽培されているレモンは2倍体であり、一般に、果実は、数個の種子を含んでいる。一方、タヒチライムは、3倍体で種子はない。したがって、配偶子形成を支配する茎頂起原層第2層にタヒチライムの細胞を組み込んだ合成周縁キメラを作出することにより、タヒチライムの無核性をレモンに組み込むことができる。その結果、無核でレモンに似た味の新規のかんきつが提供できることになる。本発明の技術を適用できる植物としては、経済栽培されるミカン科植物という観点からは、主にカンキツ属に属する植物であるが、植物体の組織形成の観点からは、同様の構造を持つミカン科植物全体、例えば、キンカン属、カラタチ属に属する植物等が含まれ、本発明は、ミカン科植物に適用できるものである。 【0017】 【実施例】 次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。 実施例 以下、周縁キメラ個体の作出方法、新植物の育成過程及びその特性について説明する。 1)タヒチライムとレモンのキメラ候補体の作出 3倍体であるタヒチライムの新梢と2倍体であるレモンの珠心胚実生胚軸を用いて、水平上下接ぎを行い、接ぎ木部分からキメラ不定芽を発生させた。すなわち、キメラ作出のための接ぎ木方法は、本発明者らが開発した「合成キメラ植物の作出方法」(特開2001−218527号公報)を採用し、180本の水平上下接ぎを実施し、キメラ候補体として75個の不定芽を得た。以下に、それを詳しく説明する。 【0018】 タヒチライムの新梢の採取は、新梢先端の成長が停止した時期に行った。新梢採取後、適当な長さに切断し、この植物材料を植物成長調整物質を含む処理液に浸漬し、冷暗所で1日静置した。植物成長調整物質を含む処理液の組成は、ベンジルアミノプリン20μM、α−ナフタレン酢酸10μM、ジベレリン酸(GA3 )100μM、L−プロリン10mM、MES−カリウム塩5.0mMとし、pH6.4に調整したものを用いた。処理後、あらかじめ鹿沼土入りのプラスティック容器に播種し、育成したユズ実生上胚軸に楔形に切りだしたタヒチライムの新梢組織を切り接ぎした。活着後、新梢組織の楔形の約半分の位置を水平に切断し、切断した新梢組織の上部に、レモンの珠心胚実生の胚軸組織を密着させ、接合部を固定した後、接ぎ木苗を透明のプラスティック容器で覆った。この接ぎ木苗を恒温恒湿室(26℃、湿度70%、蛍光灯14時間日長)で16日間育成し、接ぎ木部の活着を完了した。 【0019】 活着後、上部の実生上胚軸組織をわずかに残して、水平に切断し、切断面にパスツールピペットで蒸留水を滴下し、透明プラスティック容器をシュート部全体に被せ、切断面が乾燥しないようにした。この切断した苗を暗黒下(26℃、湿度70%)で数日間暗処理を行った。暗処理を行った後、通常の育成条件(26℃、湿度70%、蛍光灯14時間日長)で育成した。水平上下接ぎ木苗の水平切断面の上部全面から発生するすべての不定芽は、キメラ候補として育成し、一方、ユズの台木から発生した不定芽については切除した。 【0020】 2)フローサイトメーターによるキメラ個体の確認 育成した各幼苗から、それぞれの下位節の葉(展開して硬化したもの)の中央部分を採取し、倍数性分析試料とした。4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(4′, 6−diamidino−2−phenylindole;DAPI)により蛍光染色し、フローサイトメーターにより数千個の細胞についてDNA量を測定した。そのうち、2倍体と3倍体の両方の位置に細胞数のピークを示した2個体が倍数性キメラであることを確認した(図3のa及び図4のa)。 【0021】 3)茎頂起原層構成の確認と倍数性合成周縁キメラの判定 次に、葉が十分に展開した倍数性キメラ個体について、葉部組織の分析により茎頂起原層構成の確認を行い、得られたキメラ個体が茎頂起原層第1層と茎頂起原層第2,3層とが互いに異なる倍数性の周縁キメラかどうかの確認を行った。葉部分析による茎頂起原層構成の確定方法は、本発明者らが開発した「キメラ個体の葉部分析による茎頂起原構成の確定および新植物の作出方法」(特開平11−103706号公報の実施例1に記載した方法)と同様の手順で行った。以下、それを詳細に説明する。キメラ個体の葉部試料として、比較的柔らかく大きい展開葉を採取し、その背軸面の表皮組織を削除した。酵素溶液はマセロチームR−10とセルラーゼオノズカR−10(ヤクルト薬品工業(株)社製)を使用し、それぞれ3%及び5%を含む混合酵素溶液を調製した(pH5.7)。まず、ファルコン社製60mmφディッシュに酵素溶液10mlを分注し、これに葉部組織を入れ、40℃、50回/分のシーソー振とう下で60分間処理し、これを2回繰り返した。このとき、酵素溶液中に葉肉細胞が浮遊しているので、酵素溶液ごと葉肉細胞を回収し、洗浄後、遠心して精製を行い、得られた葉肉細胞をフローサイトメーターによりDNA量を測定した。 【0022】 一方、表皮細胞は、前項の葉部分析により60分間の酵素処理を2回行った後、0.24MCaCl2 溶液で2回洗浄した。次に、マセロチームR−10を3%、あるいはセルラーゼオノズカR−10を5%含む酵素溶液(pH5.7)10mlに浸し、40℃、50回/分のシーソー振とう下で40分間処理した後、表皮細胞を回収し、フローサイトメーターによりDNA量を測定した。 【0023】 葉部の組織別に抽出を行い、フローサイトメーターで分析を行った結果、酵素処理により得られた表皮組織では、2倍体の位置にピークが検出された。すなわち、茎頂起原層第1層がレモンで構成されていることを確認した(図3のb及び図4のb)。一方、酵素処理により得られたキメラ個体の葉肉組織では、3倍体の位置にピークが検出された。すなわち、茎頂起原層第2、3層がライムで構成されていることを確認した(図3のc及び図4のc)。よって、茎頂起原層第1層がレモン、茎頂起原層第2,3層がタヒチライムで構成される周縁キメラの新植物を作出したことを確認した。この植物体2個体を図1及び図2に示す。 【0024】 【発明の効果】 以上詳述したように、本発明は、ミカン科の倍数性合成キメラ植物及びその生産方法に係るものであり、本発明により、(1)配偶子は茎頂起原層第2層から形成されるので、茎頂起原層第2層が3倍体であれば、不稔性の配偶子を形成し、その結果、種なし果実を得ることができる、(2)また、かんきつの果肉は茎頂起原層第1層から発達した細胞が大きく関与することから、該植物体は、外観がタヒチライムライムに近く、果肉はレモンの性質とタヒチライムの性質を併せ持ち、かつ種なし果実になる、(3)果実が種なしであることは、食用に供するかんきつのきわめて有用な条件であり、非常に食べやすいことから、種子がない本発明の果実はその条件を満たし、消費者に好まれ、生産者にもより多くの利益をもたらす、(4)また、既に特性が明らかな2倍体と3倍体のそれぞれの組織を使用し、無核の倍数性周縁キメラを作出する本発明の方法は、計画的に、かつ効率的に無核果実を作出することを可能とする、(5)既存の3倍体かんきつと、既に経済栽培されている優良な2倍体かんきつを周縁キメラとして組み合わせることにより、優良な可食部を持ち、かつ、種なし果実を提供することができる、という効果が得られる。 【図面の簡単な説明】 【図1】倍数性の異なる合成周縁キメラ(系統No.1)の植物体の写真を示す。 【図2】倍数性の異なる合成周縁キメラ(系統No.2)の植物体の写真を示す。 【図3】系統No.1のタヒチライム(3倍体)とレモン(2倍体)の合成周縁キメラで、茎頂起原層第1層が2倍体、茎頂起原層第2,3層が3倍体である個体の葉をフローサイトメーターによって分析した結果を示す。 【図4】系統No.2のタヒチライム(3倍体)とレモン(2倍体)の合成周縁キメラで、茎頂起原層第1層が2倍体、茎頂起原層第2,3層が3倍体である個体の葉をフローサイトメーターによって分析した結果を示す。 【符号の説明】 (図3の符号の説明) a:全葉(茎頂起原層第1,2,3層) b:葉の表皮細胞(茎頂起原層第1層) c:葉の葉肉細胞(茎頂起原層第2,3層) (図4の符号の説明) a:全葉(茎頂起原層第1,2,3層) b:葉の表皮細胞(茎頂起原層第1層) c:葉の葉肉細胞(茎頂起原層第2,3層)
|
| 【出願人】 |
【識別番号】596135755 【氏名又は名称】株式会社愛媛柑橘資源開発研究所 【住所又は居所】愛媛県松山市南堀端町2番地3
|
| 【出願日】 |
平成15年3月31日(2003.3.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100102004 【弁理士】 【氏名又は名称】須藤 政彦
|
| 【公開番号】 |
特開2004−298097(P2004−298097A) |
| 【公開日】 |
平成16年10月28日(2004.10.28) |
| 【出願番号】 |
特願2003−95607(P2003−95607) |
|