| 【発明の名称】 |
サツマイモの形質転換方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】山口 健一 【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内
【氏名】宋 国▲康▼ 【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内
【氏名】本田 秀夫 【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内
【氏名】肉丸 誠也 【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、工業原料用や食用、飼料用として利用できるサツマイモの形質転換植物を簡便で且つ高効率に作製する課題を達成する。
【解決手段】茎葉や葉柄などサツマイモの緑色組織切片を開始材料にしたカナマイシンとハイグロマイシンの二段階選抜法によりサツマイモの形質転換を容易にする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 以下の手順を有することを特徴とするサツマイモの形質転換方法、 (1)サツマイモの緑色組織の切片に所望の遺伝子を導入したアグロ菌(Agrobacterium tumefaciens)を感染させ、 (2)アグロ菌を感染させた該切片をカナマイシンを含有する培地で培養してカルスを誘導し、 (3)上記(2)で得られたカルスを更にハイグロマイシンを含有する培地で胚形成能を有するカルスにまで培養する二段階選抜により形質転換体を選抜する。 【請求項2】 サツマイモの品種がベニアズマであることを特徴とする請求項1に記載のサツマイモの形質転換方法。 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の方法によって得られるサツマイモのカルスを植物体再生培地に移植して培養することにより得られた形質転換サツマイモ。 【請求項4】 請求項3に記載の形質転換サツマイモから抽出される澱粉。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、サツマイモに有用な遺伝子を導入する形質転換植物の作製方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 サツマイモ(sweet potato、学名:Ipomoea batatas)は、世界で約1億3千万トン生産される主要作物で、日本においては年間110万トン程の供給がある。その主たる用途は塊根部分で、澱粉、アルコールなどの原料用や野菜などの市販用として産業利用されている。一方、サツマイモの茎葉部分も豚などの家畜飼料としての利用が可能となっている。これらサツマイモの品種特性については、収量、品質に影響する肥料適応性、干ばつ適応性、耐病性などが主要因子とされ、時代の要請に応じた品種の改良を行なうことが重要となっている。しかしながら、サツマイモは交配による育種が困難な作物の一つで、優良品種の早期作出には遺伝子組換え技術などのバイオテクノロジーを生かした手法の活用が望まれている。 【0003】 植物の遺伝子組換え法には、アグロ菌(Agrobacterium tumefaciens)を用いる方法、電気穿孔(エレクトロポレーション)法、粒子銃(パーティクルガン)法が確立されている。サツマイモに外来遺伝子を導入する形質転換法については、粒子銃法(Prakash C.S. et al., Plant Cell Rep.,11, 53−57, 1992)、電気穿孔法(Dhir, S.K. et al., Plant Cell Rep., 17, 665−669, 1998)などの報告が有るが、現在ではアグロ菌を用いる形質転換方法が最も普及している。アグロ菌を用いる形質転換法は、長いDNA断片をも導入することが出来、また、導入された遺伝子も安定して保持されるといった長所を有する。 【0004】 アグロ菌を用いるサツマイモの形質転換の手順として報告されている大谷らの方法(Otani, M. et al., Plant Biotechnol., 15, 11−16, 1998 )の概要を以下に記す。 (1)胚形成能力のあるカルスの誘導と培養 4−フルオロフェノキシ酢酸を含むLS培地(Linsmaier, E.M. et al., Physiol. Plant., 18, 100−127, 1965)上でサツマイモの組織切片を生育させることにより頂芽分裂組織からカルスを誘導する。 (2)形質転換 培養したアグロ菌(Agrobacterium tumefaciens)をアセトシリンゴンと4−フルオロフェノキシ酢酸を含むLS液体培地に接種し、この培養液に上記カルスを浸漬する。カルスを同様の固体培地で共存培養した後、アグロ菌の増殖を抑制する抗生物質を含む滅菌水で洗浄後、カルスを選抜培地上に移す。 (3)形質転換体の選抜 4−フルオロフェノキシ酢酸、ハイグロマイシン、アグロ菌抑制用抗生物質を含むLS培地を選択培地として、カルスを暗所で培養し、2週間毎に新しい選択培地に移植する。60日後にカルスを植物体再生培地(アブシン酸、ジベレリン酸、アグロ菌抑制用抗生物質を含むLS培地)に移し、更に21日間培養を続ける。 (4)形質転換体の再生 植物体を良く再生させるために、ジベレリン酸、ハイグロマイシン、アグロ菌抑制用抗生物質を含むLS培地上に移植し、16時間明期の条件で培養を行なう。 【0005】 上記のようにアグロ菌を用いた従来のサツマイモ形質転換方法では、開始材料として胚形成能力のあるカルスが必要であるため、(1)に示す煩雑な作業と長い準備期間を要する、更には形質転換効率が低い(1.5gの新鮮量カルスから12〜20個の薬剤耐性カルス、8〜9個の植物体再生カルス)という問題点があった。 【0006】 【非特許文献1】Prakash C.S. et al., Plant Cell Rep.,11, 53−57, 1992 【0007】 【非特許文献2】Dhir, S.K. et al., Plant Cell Rep., 17, 665−669, 1998 【0008】 【非特許文献3】Otani, M. et al., Plant Biotechnol., 15, 11−16, 1998 【0009】 【非特許文献4】Linsmaier, E.M. et al., Physiol. Plant., 18, 100−127, 1965 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 上記の問題点に鑑み、本発明の目的は、調製煩雑なカルスを使用せず簡便で、且つ形質転換効率の高いサツマイモの形質転換方法を提供することにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意検討の結果、茎・葉や葉柄などのサツマイモの緑色組織切片を開始材料として使用し、カナマイシンとハイグロマイシンの二段階選抜を行なうことにより、簡便で且つ高効率なサツマイモの形質転換方法を確立するに至った。 【0012】 即ち、本発明は以下のとおりである。 [1] 以下の手順を有することを特徴とするサツマイモの形質転換方法、 (1)サツマイモの緑色組織の切片に所望の遺伝子を導入したアグロ菌(Agrobacterium tumefaciens)を感染させ、 (2)アグロ菌を感染させた該切片をカナマイシンを含有する培地で培養してカルスを誘導し、 (3)上記(2)で得られたカルスを更にハイグロマイシンを含有する培地で胚形成能を有するカルスにまで培養する二段階選抜により形質転換体を選抜する。 [2] サツマイモの品種がベニアズマであることを特徴とする上記[1]に記載のサツマイモの形質転換方法。 [3] 上記[1]又は[2]に記載の方法によって得られるサツマイモのカルスを植物体再生培地に移植して培養することにより得られた形質転換サツマイモ。 [4] 上記[3]に記載の形質転換サツマイモから抽出される澱粉。 【0013】 【発明の実施の形態】 以下に、本発明の詳細を説明する。 茎葉、葉柄などの緑色組織切片を開始材料としたカナマイシン、ハイグロマイシンの二段階選抜によるサツマイモの形質転換植物の作製方法について説明する。 (1)開始材料の準備 サツマイモの茎、葉、あるいは葉柄など緑色組織の切片を形質転換の開始材料として用いる。サツマイモは種種の品種が用いられ、ベニアズマが好適に使用できる。 (2)形質転換 目的とする(所望の)遺伝子たとえば有用遺伝子を保持するアグロ菌(Agrobacterium tumefaciens)を作製し、該アグロ菌を添加した植物細胞培養用培養液に上記(1)で調製したサツマイモの緑色組織切片を浸漬した後、共存培養により感染を促す。 (3)形質転換体の選抜 上記(2)の処理を行った緑色細胞切片をカナマイシンを含む植物細胞培養用の培地で培養し、薬剤耐性カルスを選抜後、選抜されたカルスをハイグロマイシンを含む植物細胞培養用培地に移して更に培養して遺伝子導入カルス(薬剤耐性カルス)を選抜する(二段階選抜)。この際、培養は胚形成能を有するカルスになるまで培養をする。 (4)形質転換体の再生 上記二段階選抜により得られた薬剤耐性カルスをアブシン酸、ジベレリン酸を含む植物体再生培地に移植して、分化したサツマイモ形質転換植物を得る。 【0014】 【実施例】 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0015】 [実施例1] 茎葉を開始材料としたサツマイモ形質転換体の作出 以下に記す(1)から(5)の手順により、マーカー遺伝子GUSを発現する形質転換サツマイモを作出した。 (1)開始材料の準備 無菌的に育成したサツマイモ(品種:ベニアズマ)の茎、或いは葉から5mm角程度の切片を作製し、形質転換の開始材料とした。 (2)形質転換 マーカー遺伝子としてGUSを含むアグロ菌(Agrobacterium tumefaciens EHA105)を含むLS液体培地(アセトシリンゴンと4−フルオロフェノキシ酢酸を含む)に茎葉切片を浸漬した。その後、余分な水分を濾紙で取り除いて、同様のLS固体培地に置床して共存培養を行なった。 (3)形質転換体の選抜 形質転換カルスの選抜として、カナマイシン50mg/Lと4−フルオロフェノキシ酢酸を含む含むLS培地を用いて22〜24℃下暗所で培養後、同様にハイグロマイシン30mg/Lを含む培地に移し、26−27℃下暗所で胚形成能力を有するカルスの形成が認められるまで培養した。 (4)形質転換体の再生 胚形成能力を有するカルスをアブシン酸とジベレリン酸を含む植物体再生培地に移し、26−27℃下明所で培養することにより分化したサツマイモ植物を得た。 (5)形質転換体の確認 得られたサツマイモ形質転換植物については、PCR法および染色法(GUS遺伝子の導入のされた植物の組織が青色に染色される)によりマーカー遺伝子であるGUSの導入と活性発現の有無を調べた。 上記の手順(1)〜(5)で作製したサツマイモの形質転換の状況を表1に示す。 【0016】 【表1】
【0017】 表1に示すように、形質転換の開始材料として茎葉などから簡便に作製できる緑色組織切片を用いて、カナマイシンとハイグロマイシンの二段階選抜を行なうことにより、35%を超える高い効率でサツマイモの形質転換植物が得られた。 【0018】 次に、PCR法によりGUS遺伝子の導入を確認した形質転換サツマイモの遺伝子の活性発現を染色法により確認した(図1)。 【0019】 【発明の効果】 本発明により、工業原料用や食用、飼料用として利用できるサツマイモに有用な遺伝子を導入して品種の改良を行なうに際して、簡便で且つ高効率なサツマイモの形質転換方法が提供される。 また、本発明の方法を用いて、例えば、昨今に相次いで単離されている有用遺伝子をサツマイモに導入することにより病傷害や環境ストレスに強いサツマイモの育種が可能となり、栽培地域の拡大や時代のニーズに合致した品質の向上が望める. 【図面の簡単な説明】 【図1】実施例1で作製した形質転換サツマイモのGUS遺伝子の活性発現を確認するための葉の染色結果を示す写真である。 写真左側(CUB−GUS):本発明の形質転換方法を用いて光誘導発現型CabプロモーターによりGUS遺伝子を導入したサツマイモの葉の染色結果を表す。葉が青色に発色していることから遺伝子の導入が確認できる。 写真中央(CK):対照とした非形質転換サツマイモの葉を染色した結果を表す。発色していないことから遺伝子の導入がないことがわかる。 写真右側(35S−GUS):本発明の形質転換方法を用いて恒常発現型35SプロモーターによりGUS遺伝子を導入したサツマイモの葉の染色結果を表す。青色に発色していることから遺伝子が導入されていることがわかる)。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005887 【氏名又は名称】三井化学株式会社 【住所又は居所】東京都港区東新橋一丁目5番2号
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| 【出願日】 |
平成14年10月30日(2002.10.30) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2004−147538(P2004−147538A) |
| 【公開日】 |
平成16年5月27日(2004.5.27) |
| 【出願番号】 |
特願2002−315205(P2002−315205) |
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