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【発明の名称】 放射線処理多糖類を利用した植物組織培養方法
【発明者】 【氏名】久米 民和

【氏名】吉井 文男

【氏名】レ クアン ルアン

【氏名】長澤 尚胤

【要約】 【課題】バイオ産業分野で、人々の生活に潤いを与え豊かにする花卉生産、又は食糧問題解決のための穀類増産の有力な手段として、植物培養法が活用されおり、又植物の組織培養に要する期間の短縮や、生存率を高めることは、植物生産に重要である。

【解決手段】キトサン、アルギン酸及び/又はカラギーナン等からなる天然高分子である多糖類の水溶液又は粉末に、γ線、X線又は電子線等の放射線を線量1〜1000kGy照射し、得られた分解生成物を植物の培養培地に添加することにより植物の生育促進を図ることからなる、放射線処理多糖類を利用した植物組織培養方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線処理した多糖類を植物の組織培養に利用し、植物の生育促進を図ることを特徴とする放射線処理多糖類を利用した植物組織培養方法。
【請求項2】
多糖類がキトサン、アルギン酸及び/又はカラギーナンからなる天然高分子であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
多糖類の放射線分解が水溶液又は粉末形態での放射線照射によることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
照射する放射線が、γ線、X線又は電子線であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
照射する放射線の線量が1〜1000kGyであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
放射線照射以外の処理により得られた同様の活性を有する多糖類の分解生成物を植物の組織培養に利用し、植物の生育促進を図ることからなる多糖類の分解生成物を利用した植物組織培養方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線分解した多糖類を植物の組織培養培地に添加することにより、植物培養組織の生育を促進する方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、植物の組織培養を行う上で重要な培地に関して種々の検討が行われ、植物の種類、部位、培養目的に適した種々の培地が用いられている。基本培地の成分は、水、無機塩、有機化合物、培養体の床材である。有機化合物には、炭水化物(蔗糖)、植物ホルモン(生長調整物質)、ビタミン類等がある。この他、合成培地での培養が困難な場合に、天然物が効果を発揮することが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、急速な親展を見せているバイオ産業分野で、人々の生活に潤いを与え豊かにする花卉生産、又は21世紀の食糧問題解決のための穀類増産の有力な手段として、植物培養法が活用されている。植物の組織培養に要する期間の短縮や、生存率を高めることは、植物生産を効果的に行う上で重要である。本発明により、植物の組織培養を効果的に行うことが可能であり、本発明はバイオ産業の進展促進に役立つ技術である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、植物の組織培養を行う上で重要な因子である出芽数、生育速度、生存率を向上させることである。組織培養において、培地添加物によって出芽数、生育速度、生存率を向上させ、植物の組織培養に要する期間の短縮や生存率を高めることは、植物生産を行う実用上の意義が大きい。本発明により、照射した多糖類を培地に加えるだけで、組織培養の手法を変えることなく高収率で植物体を育成する方法を提供することが可能となる。
【0005】
即ち、本発明は、キトサン、アルギン酸及び/又はカラギーナン等からなる天然高分子である多糖類の水溶液又は粉末に、γ線、X線又は電子線等の放射線を線量1〜1000kGy照射し、得られた分解生成物を植物の培養培地に添加することにより植物の生育促進を図ることからなる、放射線処理多糖類を利用した植物組織培養方法である。
【0006】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0007】
(実施例1)
ニンジンのカルス生育に対する照射キトサンの添加効果を調べた。キトサンは脱アセチル化度80%の市販品を用い、前照射により分子量を1.5×10とした後、10%溶液を調整し、更に照射を行った。
【0008】
ムラシゲースクーグ(MS)培地に、3%蔗糖、0.5mg/lジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、0.6mg/lカイネチン、50mg/l照射キトサンを添加した培地を用いて、30日間培養した。図1に示すように、キトサンの処理線量の増大と共に、カルス重量が増加した。100〜150kGyの線量で最大となり、200kGyでは多少減少した。この結果から、ニンジンのカルス生育に放射線処理キトサンの添加が効果的であることが明かとなった。
【0009】
(実施例2)
キク、スターチス、トルコキキョウについて、組織培養培地にキトサンを添加したときの出芽数の変化を表1(照射キトサンの添加効果)及び表2(照射キトサンの濃度効果)に示した。培地としては、MS培地に、3%蔗糖、0.8%寒天、50mg/l照射キトサンを添加して基本培地とし、キクの場合、0.1mg/lナフタレン酢酸(NAA)、0.3mg/lベンジルアデニン(BA)を添加し、20日間培養した。スターチス及びトルコキキョウの場合には、0.1mg/lBA、0.01mg/lNAAを添加し、25日間培養した。
【0010】
いずれの場合にも、照射キトサンの添加により出芽数が増えることが明かにで有る。キトサンへの照射線量が10〜100kGyに増大するに従い、出芽数が増大した。しかし、150及び200kGyでは出芽数が減少し、最適線量は100kGyであった。以上のように、花卉類の組織培養培地への照射キトサンの添加は、出芽数の増加に顕著な効果があり、最適な照射線量が認められることがわかった。
【0011】
【表1】


【0012】
【表2】


【0013】
(実施例3)
実施例2で明かになった最適線量100kGy照射したキトサンを、同様に3種類の花卉の組織培養培地に添加した場合の濃度効果について検討した。表2に示すように、キクの場合には70mg/l、スターチス及びトルコキキョウでは100mg/lで出芽数が最も多かった。したがって、70〜100mg/lといった低濃度の照射キトサンの添加が、花卉類の組織培養における出芽率を顕著に増大させる効果のあることが明かとなった。
【0014】
(実施例4)
実施例2に示した発芽培地で培養したスターチスを発根培地に移植後、生存率について照射キトサンの効果を調べた(表3)。発根培地の組成は、MS培地に、3%蔗糖、0.8%寒天、50mg/l照射キトサン、1mg/lインドール酢酸(IBA)を添加した。
【0015】
移植後、10日、20日及び30日の生存率は、50〜150kGy照射キトサンの添加で顕著に増加することが認められた。組織培養した幼植物の移植後の生存率の増大は実用上重要であり、照射キトサンの添加は極めて効果的であることが明かとなった。
【0016】
【表3】


【0017】
(実施例5)
キトサンに代えて、照射アルギン酸の効果を調べた。アルギン酸は、4%溶液として、線量10〜200kGy照射した。実施例2の照射キトサンの場合と同様に、キク、スターチス、トルコキキョウの組織培養における発芽率を調べた結果、18〜41%増大した。また、新鮮重量、根の長さ、芽の長さ、いずれも照射アルギン酸の添加により顕著に増大することが認められた。
【0018】
キク(表4)、トルコキキョウ(表5)、スターチス(表6)、いずれの場合にも75kGyの照射アルギン酸を添加したときに最大の値を示した。また、100〜200kGyを照射した場合にも、多少増加効果は減少したが、顕著な生長促進効果が認められた。これらの結果から、照射アルギン酸は、植物の組織培養においても、顕著な生長促進効果があることが明かとなった。
【0019】
【表4】


【0020】
【表5】


【0021】
【表6】


【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、キトサンやアルギン酸などの多糖類の放射線分解物は、花卉や野菜などの植物の組織培養において、成長を促進し、生存率を高める効果があることが明かとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】ニンジンのカルス生育に対する照射キトサンの効果を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000004097
【氏名又は名称】日本原子力研究所
【出願日】 平成14年7月23日(2002.7.23)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫

【識別番号】100076691
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 忠弐

【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰

【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男

【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行

【識別番号】100092015
【弁理士】
【氏名又は名称】桜井 周矩

【公開番号】 特開2004−49164(P2004−49164A)
【公開日】 平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願番号】 特願2002−213759(P2002−213759)