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【発明の名称】 緑化工法
【発明者】 【氏名】岡田 美穂
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 大成建設株式会社内

【要約】 【課題】従来の造成工事等に用いる作業スペース及び建設機械を使用して、在来植生に適した生育環境を作り出すことによって、速やかな自然植生を促す緑化工法を提案するものである。

【解決手段】根株を含む土壌を採取する処理土採取工程S1と、前記処理土を土壌と根株とに分別するふるい分け工程S2と、前記根株を施工領域に敷設する根株の敷設工程S3と、前記土壌を前記根株が敷設された前記施工領域に吹き付ける土壌吹付け工程S4と、前記根株を敷設し前記土壌を吹き付けた前記施工領域表面をネット材により覆って養生するネット養生工程S5の手順により、前記施工領域の自然植生復元を促す緑化工法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
根株を含む処理土を用い、前記処理土を土壌と根株とに分別するふるい分け工程と、前記根株を施工領域に敷設する根株の敷設工程と、前記土壌を前記根株が敷設された前記施工領域に吹き付ける土壌吹付け工程と、を含み、前記施工領域の植生復元を促すことを特徴とする緑化工法。
【請求項2】
前記処理土として埋土種子を含むものを用い、前記ふるい分け工程により前記根株と前記埋土種子を含んだ前記土壌とに分別し、前記土壌吹付け工程において前記施工領域に前記埋土種子を含んだ前記土壌を吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の緑化工法。
【請求項3】
前記根株を敷設し、前記土壌を吹き付けた前記施工領域を、所望の生育条件となるようにネット材により覆って、養生するネット養生工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の緑化工法。
【請求項4】
前記ネット材が自然分解性材料から形成されていることを特徴とする請求項3に記載の緑化工法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、法面等の施工領域を現地周辺の在来植生により緑化する、緑化工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
種子吹付けや張芝等による法面の緑化工法は、公知の技術であり、法面を早期に緑化することで、地盤の安定と景観の修復を図るものである。しかしながら、その緑化による植物は、外来種が多く、現地の生態系に影響をきたすことが懸念されている。
一方、在来種の実生の植栽、現地表土の撒きだし、現地表土の吹付け等により自然植生を行い、景観の修復を行う工法も採用されている。しかし、実生の植栽は、一株一株の手作業となるため、広大法面への実施は難しい。また、表土の撒きだしも、広大法面において実施する場合は、手作業による運搬により施工されることが一般的であり、水分を含む表土が重いため、実施は困難である。また、表土の吹付けは、ふるいにかけた土壌のみを利用するため、土壌に混入した小さい種子の発芽しか期待できない上、部分的に法面での生育や自然植生の復元に適さない種子のみが混入することがあるために植生復元が進まない場合があり、また、火入れ等によって発芽が促進されるいわゆる「先駆種」のみの出現が著しい場合があるなど、安定した植生は期待できない。
【0003】
従来、現地の在来植生を直接的で短期間に復元させて現地の生態系を乱さない緑化工法として、目視可能な石礫や根株を除外して処理土を採取し、採取した処理土を粉砕、圧縮あるいは磨潰し等により埋土種子を刺激し、植生基盤材に混合して地盤に客土あるいは吹き付ける法面緑化工法が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−237606号公報([0006]〜[0020]、図3)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来の法面緑化工法には、下記に示すような問題点がある。
(1)処理土を破砕し埋土種子に刺激をあたえる際、特殊な機械とその作業スペースが新たに必要となり、広大な敷地を有する大規模な工事でのみ有効である。
(2)裸地への客土あるいは吹き付けのため、採取した処理土の既存地の光条件や温度条件と違うために予定通り発芽しない場合がある。
(3)発生土を利用しているが、根株などを廃棄処分するため、依然として廃棄物が多い。
(4)種子発芽の難しい樹木の植生が期待できない。
(5)自然植生による発芽までの間に、雑草や外来種等の種子が進入する恐れがある。
【0006】
一方、近年、大規模開発などで発生する建設残土の処分が問題となっているが、この建設残土には根株や埋土種子を含む資源的価値が高いものがあることから、その有効活用が望まれている。
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、従来の造成工事等に用いる作業スペース及び建設機械を使用して、在来植生に適した生育環境を作り出すことによって、速やかな自然植生を促す緑化工法を提案するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、請求項1に係る発明は、根株を含む処理土を用い、前記処理土を土壌と根株とに分別するふるい分け工程と、前記根株を施工領域に敷設する根株の敷設工程と、前記土壌を前記根株が敷設された前記施工領域に吹き付ける土壌吹付け工程とを含み、前記施工領域の植生復元を促すことを特徴とする緑化工法である。
【0009】
かかる緑化工法は、在来植物の根株を含んだ処理土を用いることで、これらの根株からの発芽により在来植生による自然植生復元を期待するものであり、各工程を採用することで以下の利点がある。なお、使用する処理土として建設残土を利用すれば、搬出土量を削減することができ、好適である。
【0010】
まず、ふるい分け工程により、人力の手作業により行う必要がある根株の敷設に関して、根株から土壌を除去することで軽量化し、作業をより安全で容易に行うことができる。
【0011】
また、根株の敷設工程において、根株を施工領域全体に敷設することにより、発芽の難しい樹木等を含め、発芽に時間を要する植物も、根株からの発芽により早期の自然植生への復元が期待できる。また、従来、廃棄物として処分されていた根株を再利用することで、廃棄物量を大幅に削減することが可能となり、環境に配慮した工法とすることができる。
【0012】
また、土壌吹付け工程において、土壌内に含まれている埋土種子からの発芽により、施工領域の自然植生を促すことができる。施工領域に敷設された根株の上に土壌の吹付けを行うことで、根株により形成された施工領域表面の凹凸面に土壌が定着するため、降雨などによる土壌の流出を少なくすることが可能となる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の緑化工法であり、前記処理土として埋土種子を含むものを用い、前記ふるい分け工程において、前記根株と前記埋土種子を含んだ前記土壌とに分別し、前記土壌吹付け工程により前記施工領域に前記埋土種子を含んだ前記土壌を吹き付けることを特徴とする。
【0014】
かかる緑化工法により、埋土種子が含まれている処理土を用いることで、根株から発芽する樹木による植生のみでなく、土壌に含まれる埋土種子から発芽する在来植物の野草による植生により、自然植生復元を促すことができる。このような在来植物の植生により、外来種の種子の侵入を防ぐことが可能となる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の緑化工法であり、前記根株を敷設し、前記土壌を吹き付けた前記施工領域を、所望の生育条件となるようにネット材により覆って、養生するネット養生工程を含むことを特徴とする。
【0016】
所望の生育条件とは、処理土を採取した土地が本来有している既存の光条件や温度・湿度条件であり、既存の生育条件を再現することにより在来植物の植生を促し、採取した処理土に含まれる埋土種子や根株が、環境の変化により発芽しないことを避けるものである。
つまり、ネット養生工程による、遮光ネットや寒冷紗のようなネット類で施工領域の表面を覆うことで、このネットの編み目から採光される光量と同編み目により調節される暖気や湿気により、既存の光条件や温度・湿度条件を再現することができ、これにより、処理土中の埋土種子や根株の発芽を促進することが可能となる。
また、ネット類で施工領域の表面を覆うことにより、雑草や外来種等の種子の侵入を防ぐことが可能となり、在来植生に適した生育環境を作り出すことができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の緑化工法であり、前記ネット材が自然分解性材料から形成されていることを特徴とする。
【0018】
かかる緑化工法は、施工領域を覆うネット材に自然分解性材料から形成されているネット材を使用することにより、植生復元とともにネット材が分解するため、ネット撤去に要する作業を行う必要を無くすことが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、本発明による法面緑化工法の作業手順を示したフローチャートであり、林を有する山地において切土工を行う造成工事を施工することにより形成された所定の斜度を有する法面に、当該切土工において発生する掘削土から採取した処理土を再利用して法面の緑化を行うものである。図1に示すように、当法面緑化工法は、処理土採取工程S1、ふるい分け工程S2、根株の敷設工程S3、土壌吹付け工程S4及びネット養生工程S5の手順に従い行う。
【0020】
(1)処理土採取工程S1
処理土10の採取は、切土法面の施工時に発生する掘削土のうち、根株や埋土種子を含む土壌である表土を主に採取する(図2(a))。なお、処理土10が不足する場合や、処理土10から良質の埋土種子、根株21、土壌30が期待できない場合においては、緑化を行う法面近傍の山林等から採取したものを使用してもよい。
まず、立木20は切り取り、ダンプトラック51などにより搬出する(図2(b))。次に、大きな根株22や転石等は除去して廃棄物処分として(図2(c))、計画した法面の形状となるようにバックホウ50などにより比較的小さな根株21(以下単に「根株」という)や野草23等とともに掘削を行い、処理土10を保管する(図2(d))。なお、この処理土10は既存の山地から採取されたものであるため、埋土種子が含まれている。
【0021】
(2)ふるい分け工程S2
採取した処理土10をふるいにかけ、埋土種子を含む土壌30と根株21とに分別する。ここで、不要な礫等は除去する。この際、ふるいには公知のものを用いることができ、バックホウ50のバケットを回転式ふるいに交換したものや、ドラム型の回転式ふるい、コンベア式ふるい等を用いることができる。
【0022】
(3)根株の敷設工程S3
ふるい分け工程S2において、土壌30が除去された根株21を法面上に運搬し、人力等により法面全体に均等になるように敷設する(図3参照)。ここで、法面が急勾配であるため、根株の落下を防止するために固定が必要となる場合は、目の粗い自然分解性のネット(図示せず)で根株21の上面を局所的に覆い、ネットをアンカー等で固定する。これにより、根株21から発芽し、根が張るとともにネットが分解するため、撤去の必要がなく、また、植生の妨げにもならない。
【0023】
(4)土壌吹付け工程S4
ふるい分け工程S2において分別した土壌30を、根株21が敷設された法面に、公知の吹付け機を使用して、所定の厚さで吹き付ける(図4参照)。ここで、土壌30には、必要に応じて肥料などを混合して植生の促進を図るものとする。また、法面が急勾配のため法面に土壌30が定着しにくい場合は、土壌30にセメント、石灰、高分子系樹脂等の公知の結合材を植生に影響を及ぼさない範囲で混合しても良い。なお、これらの肥料や結合材の土壌への混合方法は、バックホウ50により行うことが好適である。
【0024】
(5)ネット養生工程S5
法面を自然分解性材料で形成されているネット40で覆い、このネット40の編み目から採光される光量と同編み目により調節される暖気や湿気により造成工事前の既存林の光条件や温度・湿度条件に合せた生育環境を作り出し、土壌30と埋土種子及び根株21を養生する(図5参照)。
【0025】
このように、本発明によれば、処理土採取工程S1により、埋土種子、野草23、根株21等を含んだ状態で採取した処理土により、埋土種子や野草23からの発芽とともに、埋土種子からの発芽に時間を要する植物の根株21からの発芽や、種子発芽の難しい樹木等の根株21からの発芽による自然植生の復元が期待できる。
【0026】
また、ふるい分け工程S2による、採取した処理土10を土壌30と根株21とに分別することにより、土壌30が取り除かれ、根株21が軽量となり、根株21の法面上部への運搬及び敷設が簡単になる。
【0027】
また、根株の敷設工程S3は、根株21を直接法面全体に均等に敷設することにより、法面での生育や自然植生の復元に適さない埋土種子のみが混入することより植生復元が進まない部分が現れることを回避することが可能となる。さらに、従来廃棄物となっていた根株21を再利用することにより、造成工事において発生する廃棄物を削減することが可能となる。
【0028】
また、土壌吹付け工程S4により、土壌30に含まれた既存の埋土種子も法面に吹き付けられるため、根株の敷設工程S3にて敷設された根株21とともに埋土種子から発芽することにより、法面の既存植生が可能となる。
【0029】
また、ネット養生工程S5は、遮光ネットや、寒冷紗のようなネット類からなるネット40で施工領域の表面を覆うことにより、ネット40の編み目による光量と暖気や湿気の調節が可能となり、既存林の光条件や温度・湿度条件を作り出すことで、処理土10中の埋土種子や根株21の発芽を促進することが可能となる。また、ネット40として自然分解性材料から形成されるネット40を使用することにより、植生復元とともにネット40が分解するため、撤去の手間がかからないメンテナンスフリーの法面緑化が可能となる。また、これらのネット類で法面を覆うことにより、外来種の種子などの侵入を防ぎ、自然環境に配慮した法面緑化が可能となる。
【0030】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、前述の実施の形態では、施工領域を切土法面としたが、これに限定されるものではなく、緑化が必要な裸地のすべてに採用可能である。
また、急勾配法面における根株の固定を、自然分解性材料から形成されるネットとアンカーにて行うものとしたが、これに限定されるものではなく、根株の固定ができ、生育の妨げにならなければ、その固定方法は限定されない。
また、埋土種子を含んだ土壌を、根株が敷設された法面に吹き付けるものとしたが、これに限定されるものではなく、人力やバックホウなどによる撒きだしなど、その施工方法は限定されない。
また、土壌に肥料や結合材を混合する際、バックホウにて行うものとしたが、これに限定されるものではなく、ミキサー混合等、その混合方法は限定されない。
また、ネットによる養生は、自然分解性材料から形成されるネットを使用することとしたが、これに限定されるものではなく、既存林の光条件や温度条件に合せた生育環境を作り出すことができ、外来種子に侵入や土壌の流出を抑えることができるものであれば、その材質は限定されない。
【0031】
【発明の効果】
本発明の緑化工法によれば、根株を含む処理土を利用することにより、処理土に含まれる根株を利用し、これらに適した生育環境を作り出すことによって速やかな自然植生への復元を促すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による法面緑化工法の作業手順を示したフローチャートである。
【図2】処理土採取工程を示した側面図であり、(a)は施工領域の現況を示す側面図、(b)は、施工領域の立木の切断後を示す側面図、(c)は、大きめの根株の除去した施工領域を示す側面図、(d)は、施工領域の法面掘削状況を示す側面図である。
【図3】根株の敷設工程を示す側面図である。
【図4】土壌吹付け工程を示す側面図である。
【図5】ネット養生工程を示す側面図である。
【符号の説明】
10 処理土
20 立木
21 根株
22 大きな根株
23 野草
30 土壌
40 ネット
50 バックホウ
【出願人】 【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿一丁目25番1号
【出願日】 平成15年4月9日(2003.4.9)
【代理人】 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造

【公開番号】 特開2004−305138(P2004−305138A)
【公開日】 平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願番号】 特願2003−104927(P2003−104927)