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【発明の名称】 マルチング材及びそのマルチング材を用いたマルチング方法
【発明者】 【氏名】中 俊介
【住所又は居所】兵庫県神戸市東灘区本山南町6丁目1番6号 株式会社ナカコー内

【要約】 【課題】地球環境の保全を考慮しつつ、安価で作業性が良く、しかも作物の収量を増大させることができるマルチング材及びそのマルチング材を用いたマルチング方法の提供。

【解決手段】農業用のマルチングに使用されるマルチング材として、MgOとFeとを2:1乃至12:1(重量比)の範囲内で含有するひる石焼成体(バーミキュライト)からなるものを用いる。この場合に、そのひる石焼成体の平均粒度を1乃至3mm程度の範囲内とする。このマルチング材を用いて、農薬消毒若しくは熱水消毒が施された土壌、又は葉菜類の栽培後の土壌等に定植された苗の株元を被覆する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgOとFeとを2:1乃至12:1(重量比)の範囲内で含有するひる石焼成体からなることを特徴とするマルチング材。
【請求項2】
前記ひる石焼成体の平均粒度が1乃至3mm程度の範囲内にある請求項1に記載のマルチング材。
【請求項3】
農薬消毒が施された土壌に定植された苗の株元をMgOとFeとを2:1乃至12:1(重量比)の範囲内で含有するひる石焼成体からなるマルチング材で被覆することを特徴とするマルチング方法。
【請求項4】
前記農薬はクロルピクリンである、請求項3に記載のマルチング方法。
【請求項5】
熱水消毒が施された土壌に定植された苗の株元をMgOとFeとを2:1乃至12:1(重量比)の範囲内で含有するひる石焼成体からなるマルチング材で被覆することを特徴とするマルチング方法。
【請求項6】
葉菜類の栽培後の土壌に定植された苗の株元をMgOとFeとを2:1乃至12:1(重量比)の範囲内で含有するひる石焼成体からなるマルチング材で被覆することを特徴とするマルチング方法。
【請求項7】
前記ひる石焼成体の平均粒度が1乃至3mm程度の範囲内にある、請求項3乃至請求項6の何れかに記載のマルチング方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、農業用のマルチングに使用されるマルチング材に関し、特にひる石焼成体(バーミキュライト)からなるマルチング材及びそのマルチング材を用いたマルチング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、農業分野においては、環境保全型の農業が推進されている。具体的には、土壌消毒および除草などのために従来から使用されていた臭化メチルの全廃、ならびに改正JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)に適合した有機農業などが推進されている。これに伴って、除草、保温、および遮光などを目的とした畝マルチ栽培などを行う農家が急増している。このような畝マルチ栽培において利用されるマルチング材としては、ビニールまたはポリエチレンなどからなる合成フィルムが一般的である。また、一部では、稲ワラ、バーク、またはトウモロコシカスなどの有機資材がマルチング材として使用されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−313049号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のマルチング材は次のような課題を有していた。まず、前述したビニールなどの合成資材をマルチング材として使用した場合、使用後に廃棄する必要があるのでその作業に相当な費用を要し、しかもその廃棄処理が環境汚染につながるおそれがあるという問題があった。また、作毎に被覆作業を行う必要があるため、その作業に要する労働力および経費が膨大になるという問題があった。さらに、近年行われている太陽熱消毒および熱水消毒などにおいては、土壌の表面に塩類が蓄積されることによる塩類障害の発生のおそれがあるなどの問題もあった。
【0005】
一方、前述した稲ワラなどの有機資材をマルチング材として使用した場合、有機物であるために分解を伴うという問題があった。また、病害虫の栄養源として利用される場合があるため、作物の発病を促すおそれがあるという問題があった。さらに、有機資材の入手先によっては、土壌に汚染源が持ち込まれるおそれがあるという問題もあった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、地球環境の保全に考慮しつつ、安価で作業性が良く、しかもマルチ効果が高いマルチング材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述したように、従来ではマルチング材として合成資材および有機資材が利用されているが、無機物からなるものはほとんど利用されていなかった。本発明者は、マルチング材として無機系資材を利用することが可能であると考えた。そして、本発明者は、マルチの効果を高めるとともに環境汚染を防止するために、そのような無機系資材として、土壌改良材、または播種および育苗の際に覆土材として利用されているものに着目した。
【0008】
このように、土壌改良材および覆土材の両用途として従来から利用されている無機系資材としては、パーライト、ゼオライト、バーミキュライトなどがある。これらの無機系資材の目的および機能はそれぞれ異なるが、何れもマルチング材に必要な保水性に優れている。そのため、これらの多くがマルチング材として利用可能であると考えられる。
【0009】
ところで、前述したような無機系資材は、その保水性により覆土材として広く利用されている。覆土材の場合、その使用が育苗の初期に限定される。そのため、資材の生物汚染およびpHに関する点を除けば、長期にわたってその資材が作物に与える影響が問題になることはほとんどない。
【0010】
しかしながら、マルチング材は覆土材と比べてより長期にわたって使用されるために、マルチング材として無機系資材を採用した場合、長期にわたってその資材が作物に与える影響を十分に考慮する必要がある。
【0011】
前述した事情に留意しつつ本発明者が鋭意検討した結果、ひる石焼成体であるバーミキュライトがマルチング材として適しているとの知見を得た。その理由は以下のとおりである。
【0012】
まず、バーミキュライトは断熱性が高いために地温保持力に優れており、軽量であるために作業性が良い。また、バーミキュライトは窒素成分の吸着能を有しており、塩基置換容量が比較的大きいために、土壌の保肥力を高めることができる。さらに、バーミキュライトは土壌改良材として優れているため、マルチング材として使用した後は、そのまま土にすきこませることができる。そのため、廃棄処理が不要であるという利点も有している。
【0013】
このように、バーミキュライトはマルチング材として優れていると考えられるが、次のような問題点もある。すなわち、バーミキュライトには成分比がさまざまなものが存在するが、特定のバーミキュライトをマルチング材として採用した場合、生育不良を起こすおそれがある。
【0014】
そこで、本発明者はさらなる検討を行った。ひる石は原産地によってFeとMgOとの成分比が異なる。例えば、中国産のひる石とジンバブエ産のひる石とを比較すると、中国産の方がFeの成分比が高く、ジンバブエ産の方がMgOの成分比が高い。
【0015】
中国産のひる石の焼成体のようにFeの成分比が高いバーミキュライト(赤褐色)は、農業における土壌改良資材として広く利用されている。また、一部では播種時の覆土材としても用いられている。これに対して、ジンバブエ産のひる石の焼成体のようにMgOの成分比が高いバーミキュライト(白色)は、軽量であって、しかも断熱性が高いことから、建材業における軽量コンクリートなどの製造原料として用いられている。
【0016】
以上のようなバーミキュライトの従来の使われ方に鑑みると、Feの成分比が高いバーミキュライトの方が、MgOの成分比が高いバーミキュライトよりも、マルチング材として適しているように思われる。しかしながら、本発明者が繰り返し実験を行った結果、MgOの成分比が高いバーミキュライトの方がマルチング材として適していることが分かった。具体的には、MgOの成分比が高いバーミキュライトをマルチング材として被覆を行った場合の方が、Feの成分比が高いバーミキュライトをマルチング材として被覆を行った場合と比べて、作物の収量が多いなどの結果が得られた。
【0017】
このような実験結果はひる石の焼成時の発泡性の違いによるところが大きいものと考えられる。ひる石は、層状鉱物であり、高温で焼成されるときに層間がアコーディオン状に開く(発泡)という性質を有している。この場合、核として層間にFeおよびMgが存在する。Feの成分比が高いバーミキュライトとMgOの成分比が高いバーミキュライトとでは、塩基の置換容量は理論的には同一である。しかしながら、ひる石の焼成時の発泡は、MgOの成分比が高いバーミキュライトの方がFeの成分比が高いバーミキュライトよりも大きい。すなわち、MgOの成分比が高いバーミキュライトの方が層間の開きが大きい。この違いから、MgOの成分比が高いバーミキュライトの方がFeの成分比が高いバーミキュライトよりも比表面積が広く、塩基置換容量が大きい。そのため、MgOの成分比が高いバーミキュライトの方が断熱効果に優れ、水分保持力が高く、しかも土壌の保肥力を高めることができる。
【0018】
また、Feの成分比が高いバーミキュライトの場合、前述したように層間の開きが小さいため、夾雑物が残っていることがある。この夾雑物が苗の生育の初期段階において悪影響を及ぼし、その結果前述したような生育不良を招くことになると考えられる。一方、MgOの成分比が高いバーミキュライトの場合は層間の開きが大きいために夾雑物が残らず、そのような生育不良を招くことはない。
【0019】
本発明者は、このようなMgOの成分比が高いバーミキュライトとFeの成分比が高いバーミキュライトとの違いに基づいて、以下の発明をなすに至った。
【0020】
本発明に係るマルチング材は、MgOとFeとを2:1乃至12:1(重量比)の範囲内で含有するひる石焼成体からなることを特徴とする。
【0021】
このように、MgOの成分比が高いひる石焼成体からなるマルチング材の場合、Feの成分比が高いひる石焼成体からなるマルチング材と比べて、比表面積が広く、塩基置換容量が大きいため、優れたマルチ効果を奏する。また、ひる石焼成体の場合、土壌改良材として利用できるため、マルチング材としての使用が終了した後は、そのまま土にすきこませることが可能である。
【0022】
また、前記発明に係るマルチング材において、前記ひる石焼成体の平均粒度が1乃至3mm程度の範囲内にあることが好ましい。これにより、潅水による流亡を防止することができ、しかも作業性を向上させることができる。したがって、マルチ効果をより確実に奏することが期待できる。
【0023】
また、本発明に係るマルチング方法は、農薬消毒が施された土壌に定植された苗の株元をMgOとFeとを2:1乃至12:1(重量比)の範囲内で含有するひる石焼成体からなるマルチング材で被覆することを特徴とする。この場合、前記農薬としてはクロルピクリンが挙げられる。
【0024】
また、本発明に係るマルチング方法は、熱水消毒が施された土壌に定植された苗の株元をMgOとFeとを2:1乃至12:1(重量比)の範囲内で含有するひる石焼成体からなるマルチング材で被覆することを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係るマルチング方法は、葉菜類の栽培後の土壌に定植された苗の株元をMgOとFeとを2:1乃至12:1(重量比)の範囲内で含有するひる石焼成体からなるマルチング材で被覆することを特徴とする。
【0026】
以上のように、農薬消毒若しくは熱水消毒が施された土壌、又は葉菜類の栽培後の土壌などにおいては、硝酸体窒素が多く残留している。そこで、このような土壌において、Feの成分比が高いひる石焼成体からなるマルチング材と比べて、比表面積が広く、塩基置換容量が大きい、MgOの成分比が高いひる石焼成体からなるマルチング材によりマルチングを行うことにより、塩類障害の影響を抑えることができる。
【0027】
さらに、前記発明に係るマルチング方法において、前記ひる石焼成体の平均粒度が1乃至3mm程度の範囲内にあることが好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るマルチング材の実施の形態について説明する。
【0029】
本発明に係るマルチング材は、例えばジンバブエ産、南アフリカ産などのMgOの成分比が高いひる石焼成体からなる。以下ではこのようなMgOの成分比が高いひる石焼成体をMg型バーミキュライトと称する。これに対し、中国産などのFeの成分比が高いひる石焼成体をFe型バーミキュライトと称する。
【0030】
現在得られるMg型バーミキュライトは、MgOを20〜36重量%程度、Feを3〜10重量%程度含有している。換言すると、Mg型バーミキュライトは、MgOとFeとは重量比で2:1乃至12:1程度含有している。このようなMg型バーミキュライトをマルチング材として各種の作物栽培に使用した実施例を比較例と併せて以下に説明する。
【0031】
[ウリ科作物の収量比較]
(実施例1)
8月定植のキュウリ栽培において、Mg型バーミキュライトにより苗の株元への被覆、および畝の全面被覆を行った。本実施例において、Mg型バーミキュライトは、MgOを22.6重量%、Feを7.5重量%含有している。したがって、この場合のMgOとFeとの重量比は約3:1である。
【0032】
(比較例1)
同じくキュウリ栽培において、Fe型バーミキュライトにより苗の株元への被覆、および全面被覆を行った。ここで、このFe型バーミキュライトは、MgOを11.8重量%、Feを20.1重量%含有している。
【0033】
(比較例2)
同じくキュウリ栽培において、定植前および定植後に、黒色、グリーン、シルバーの各色の市販マルチフィルム(積水フィルム株式会社製)により全面被覆を行った。この比較例3の場合において、定植前に被覆を行うときには、定植のためのポット穴を形成してから被覆を行った。一方、定植後に被覆を行うときには、資材を苗の株元で張り合わせることにより被覆を行った。
【0034】
以上の実施例1、比較例1および比較例2において、キュウリの収量は以下の表1のとおりであった。なお、表1においては、+++が極めて多い、++が多い、+が普通、±が少ない、−が極めて少ないをそれぞれ示している。
【0035】
【表1】


【0036】
表1に示すとおり、実施例1の場合、株元被覆および全面被覆の何れにおいても収量は多く、特に全面被覆の場合は極めて多い収量を得ることができた。また、実施例1と実施例2とでは収量に明確な差が生じており、Mg型バーミキュライトの方がFe型バーミキュライトよりもマルチング材として適していることが分かる。なお、比較例2の定植後全面被覆の場合、苗の株元で湿害が生じたために収量が大きく低下した。
【0037】
実施例1において、栽培終了後はMg型バーミキュライトを土壌に混和させることによって、マルチング材として利用したMg型バーミキュライトをそのまま土壌改良資材として利用することができる。すなわち、バーミキュライトをマルチング材に利用した場合は廃棄処理を行う必要がない。一方、比較例2の場合では栽培終了後に廃棄処理を行う必要があり、その分高コスト化を招くことになるばかりか、環境汚染を引き起こすおそれが生じることになる。
【0038】
なお、バーミキュライトは高温焼成品であるため、微生物などの汚染を受けていない。そのため、苗の株元に使用しても問題が生ずることはない。
【0039】
[イチゴ稚苗の成苗率比較]
(実施例2)
収穫終了後のイチゴ(宝交早生)の中から親株を選定し、その親株以外の他の株を引き抜いた後に、Mg型バーミキュライトにより全面被覆を行った。本実施例において、Mg型バーミキュライトは、MgOを24.3重量%、Feを5.0重量%含有している。したがって、この場合のMgOとFeとの重量比は約4.9:1である。また、その平均粒度は約2mmである。
【0040】
(比較例3)
実施例2と同様にして親株以外の他の株を引き抜いた後に、Fe型バーミキュライトにより全面被覆を行った。本比較例において、Fe型バーミキュライトは、MgOを17.3重量%、Feを19.0重量%含有している。
【0041】
イチゴ稚苗の成苗率において、実施例2は比較例3を大きく上回った。これにより、Mg型バーミキュライトの方がFe型バーミキュライトよりもマルチング材として適していることが分かる。
【0042】
[トマトの収量比較]
セル成型育苗トマト苗を直接本圃に定植させる際に、平均粒度が1mm以上3mm以下のMg型バーミキュライトにより、苗の株元への被覆を行った。また、同様にして平均粒度が1mmより小さいMg型バーミキュライト、および平均粒度が3mmより大きいMg型バーミキュライトにより、苗の株元への被覆を行った。ここで、Mg型バーミキュライトは、MgOを27.9重量%、Feを6.1重量%含有している。したがって、この場合のMgOとFeとの重量比は約4.6:1である。なお、この場合では表面潅水を行った。
【0043】
平均粒度が1mm以上3mm以下のMg型バーミキュライトをマルチング材として利用した場合、定植後の活着率およびトマトの収量の何れにおいても無被覆の場合と比べて上回った。これに対して、平均粒度が1mmより小さい場合では、定植後の活着率およびトマトの収量の何れにおいても無被覆の場合よりも上回ったものの、平均粒度が1mm以上3mm以下の場合と比べると何れも下回った。これは平均粒度が小さいために潅水の際に流亡してしまい、被覆面の一部が消失したことによるものと考えられる。
【0044】
また、平均粒度が3mmより大きい場合も、平均粒度が1mmより小さい場合と同様に、定植後の活着率およびトマトの収量の何れにおいても無被覆の場合よりも上回ったものの、平均粒度が1mm以上3mm以下の場合と比べると何れも下回った。これは平均粒度が大きいために株元に圧密させることが困難であり、容易に飛散してしまうことによるものと考えられる。
【0045】
以上を考慮すると、マルチング材として利用する場合、Mg型バーミキュライトの平均粒度を1mm乃至3mmの範囲内とすることが好ましい。平均粒度をこの範囲内とすることによって、潅水などによる流亡を防止することができるとともに、苗の株元を確実に被覆することができる。
【0046】
[農薬消毒が施された土壌での適用例]
茨城県のトマト施設栽培圃場(養液土耕方式)において、7月にトマト(ハウス桃太郎)を播種し、セル成型育苗を行った。この例においては、規定量のクロルピクリン(Cl−C−NO)で隔離床を消毒した後、株元に直径15cm程度の穴をあけ、シルバーのフィルムでマルチングを行った。そして、この状態で35日間育苗した後、10アール当たり2200株を定植した。この2200株のうち600株の株元を100mlのMg型バーミキュライト(MgOを27.5重量%、Feを5.8重量%含有)で被覆した(実施例3)。この場合、MgOとFeとの重量比は約4.7:1である。また、同じく600株の株元を100mlのFe型バーミキュライト(MgOを14.7重量%、Feを21.0重量%含有)で被覆した(比較例4)。さらに、残りの1000株に対してはシルバーのフィルムのマルチングのみで栽培を行った(比較例5)。
【0047】
以上のようにして定植した後、1ヶ月以内に補植した苗数を調査し、以下の表2のとおりの結果を得た。
【0048】
【表2】


【0049】
表2に示すとおり、実施例3、比較例4、比較例5の順に植替率が低くなっている。比較例5において植替率が高くなっているのは、クロルピクリンを用いて土壌の消毒を行った場合、土壌中に硝酸体窒素が残留するので、フィルムによるマルチングによって急激な塩類障害が発生したからであると考えられる。
【0050】
また、実施例3の方が比較例4よりも植替率が高くなっているのは、前述したように、Mg型バーミキュライトの方がFe型バーミキュライトよりも比表面積が広く、塩基置換容量が大きいので、塩類障害の影響を抑えることができたからであると考えられる。
【0051】
[熱水消毒が施された土壌での適用例]
宮崎県のニガウリの施設栽培圃場(土耕方式)において、本圃を1m当たり80℃の熱水200mlで消毒した後、12月に苗を定植した。この定植の際、苗の株元を100mlのMg型バーミキュライト(MgOを26.8重量%、Feを6.3重量%含有)で被覆した(実施例4)。この場合、MgOとFeとの重量比は約3.7:1である。また、同じく苗の株元を100mlのFe型バーミキュライト(MgOを12.9重量%、Feを18.0重量%含有)で被覆した(比較例6)。
【0052】
以上のようにして定植した後、3月中旬から4月中旬における各200株の収量を比較した。以下の表3には、実施例4及び比較例6における市場出荷が可能な品質の収量を、マルチングを行わなかった場合に対する指数で示している。
【0053】
【表3】


【0054】
土壌が熱水消毒された場合、土壌表面に水溶性の硝酸体窒素及び塩類集積による障害が発生する。表3に示すとおり、実施例4の方が比較例6よりも収量が多いのは、前述したように、Mg型バーミキュライトの方がFe型バーミキュライトよりも比表面積が広く、塩基置換容量が大きいので、塩類障害の影響を抑えることができたからであると考えられる。
【0055】
なお、熱水消毒に限らず、太陽熱消毒、堪水消毒、及び堪水還元消毒などの場合も同様の結果が得られるものと考えられる。したがって、これらの方法によって消毒された土壌においても、Mg型バーミキュライトでマルチングすることが望ましい。
【0056】
[葉菜類の栽培後の土壌での適用例]
岩手県のホウレンソウ施設栽培圃場(土耕方式)において、後作としてトマト(桃太郎8)の購入苗を3月下旬にそのまま10アール当たり2000株定植した。この例においては、株元に直径15cm程度の穴をあけ、黒色のフィルムで本圃の畝のマルチングを行った。2000株のうちの500株の株元を150mlのMg型バーミキュライト(MgOを25.1重量%、Feを7.3重量%含有)で被覆した(実施例5)。この場合、MgOとFeとの重量比は約3.4:1である。また、同じく500株の株元を150mlのFe型バーミキュライト(MgOを11.5重量%、Feを17.3重量%含有)で被覆した(比較例7)。さらに、残りの1000株に対しては黒色のフィルムのマルチングのみで栽培を行った(比較例8)。
【0057】
以上のようにして定植した後、ハウス内の温度を14℃以上で管理し、10月上旬まで栽培して市場出荷が可能な品質の収量を比較した。その比較の結果は以下の表4のとおりである。
【0058】
【表4】


【0059】
ホウレンソウ等の葉菜類を栽培した後の土壌中には硝酸体窒素の残留が顕著であり、後作の生育に大きな影響を与える。表4に示すとおり、比較例8の収量が少ないのは、フィルムによるマルチングによって急激な塩類障害が発生したからであると考えられる。また、実施例5の方が比較例7よりも収量が多いのは、前述したように、Mg型バーミキュライトの方がFe型バーミキュライトよりも比表面積が広く、塩基置換容量が大きいので、塩類障害の影響を抑えることができたからであると考えられる。
【0060】
なお、ホウレンソウに限らず、キャベツ、 ハクサイ、 ブロッコリー、レタス、タマネギなどの葉菜類を栽培した後の土壌で後作を行った場合には同様の結果が得られるものと考えられる。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のマルチング材及びそのマルチング材を用いたマルチング方法によれば、地球環境の保全を考慮した上で、作業性が良く、しかも作物の収量を増大させることができるなど優れた効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】503074245
【氏名又は名称】株式会社ナカコー
【住所又は居所】兵庫県神戸市東灘区本山南町6丁目1番6号
【出願日】 平成15年4月8日(2003.4.8)
【代理人】 【識別番号】100065868
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 嘉宏

【識別番号】100106242
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 安航

【識別番号】100110951
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 俊男

【識別番号】100114834
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 慶司

【識別番号】100122264
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 泉

【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介

【公開番号】 特開2004−305117(P2004−305117A)
【公開日】 平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願番号】 特願2003−104162(P2003−104162)