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【発明の名称】 栽培環境の制御による健康機能性を付与した野菜の栽培方法及びその栽培施設
【発明者】 【氏名】東尾 久雄

【氏名】一法師 克成

【氏名】伊藤 秀和

【氏名】東 敬子

【氏名】増田 和成

【氏名】鈴木 真世

【氏名】黒田 哲生

【氏名】関 和幸

【氏名】大塚 秀光

【要約】 【課題】ビタミンC、トコフェロール等の機能性成分含量を増大し、調節することができる野菜の栽培方法及びその施設を提供する。

【解決手段】光線透過性板又はシートによって覆われ、かつ栽培床で栽培する野菜の栽培方法において、栽培に際して供給する液体肥料として園芸試験場標準培養液処方の0.25〜0.75倍、あるいは1.5〜2.0倍の濃度の液体肥料を用いることにより葉菜中の機能性成分含量を増大させる野菜の栽培方法。また、前記の栽培方法において、野菜に対し人工紫外線照射を行うことにより野菜中の機能性成分含量を増大させることを特徴とする健康機能性を付与した野菜の栽培方法。及びその施設。それに使用する移動型紫外線照射装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線透過性板又はシートによって覆われ、かつ栽培床で栽培する野菜の栽培方法において、栽培に際して供給する液体肥料として園芸試験場標準培養液処方の0.25〜0.75倍、あるいは1.5〜2.0倍の濃度の液体肥料を用いることにより葉菜中の機能性成分含量を増大させることを特徴とする野菜の栽培方法。
【請求項2】
光線透過性板又はシートによって覆われ、かつ栽培床で栽培する野菜の栽培方法において、野菜に対し人工紫外線照射を行うことにより野菜中の機能性成分含量を増大させることを特徴とする健康機能性を付与した野菜の栽培方法。
【請求項3】
人工紫外線照射が健康線用健康ランプからの波長が315μmにピークを有し、波長250〜400μmに主分布を有する紫外線で行うことを特徴とする請求項2記載の野菜の栽培方法。
【請求項4】
前記野菜がコマツナであることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の野菜の栽培方法。
【請求項5】
野菜の頂部から10cm〜20cm上部に野菜に対する人工紫外線照射装置を配置したことを特徴とする栽培施設。
【請求項6】
野菜に紫外線を間欠的に当てて育てるシステムにおいて、紫外線照射ランプを移動させながら照射することを特徴とする移動型紫外線照射装置。
【請求項7】
野菜を植え付けた一定幅の栽培列の両端に設置したレール上を走行する台車に紫外線照射ランプを取り付けたことを特徴とする請求項6記載の移動型紫外線照射装置。
【請求項8】
野菜を植え付けた一定幅の栽培列の上部空間にレールを敷設し、そのレールから紫外線照射ランプを懸垂させると共に移動させながら照射することを特徴とする請求項6記載の移動型紫外線照射装置。
【請求項9】
野菜の育成が養液栽培によるものであり、野菜の栽培列が養液栽培の栽培ベッドであることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の移動型紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コマツナなどの野菜を栽培する野菜の栽培方法及び栽培施設に関し、特に、野菜のビタミンC、トコフェロール、ポリフェノール等の栄養、成分の機能性成分含量を調節することができる栽培方法及び栽培施設、並びにそれに用いる紫外線照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
温室やビニールハウスなどを用いる施設栽培においては、作物の生育環境を整えるために、光線透過性板又はシートであるガラス板やシート状又は板状のビニール樹脂材で覆うことで作物を栽培する栽培施設を作り、その施設内の温度を適正に維持したり、降雨や風の影響をなくしているが、一般的には冬季の低温による植物の被害を防いだり、生育の阻害をなくすために、その栽培室内を加温するようにしている。
さらに、高級な作物の施設栽培では、施設内の温度を常時適正に保つため、加熱ヒーターのほかに冷却装置を備えているものもある。
【0003】
施設内の温度の調整手段としては、石油又はガスを燃焼して、その高温の排ガスを直接施設内へ導入するものや、施設の内壁に沿って放熱器を設けるものが一般的であった。
また、栽培施設では、作物の栽培のために必要な日照については、施設の周囲の隔壁を前記したような透明なガラス板やビニルシートを用いて、それを太陽光が透過することを確保している。さらに、必要な水の供給については培地に対する注水装置を設けている。
このような施設栽培は、自然の栽培環境に比べて栽培環境をその作物の成長に最も適した条件に維持しやすく、季節を問わず希望する作物を栽培し、収穫できることから、日本のように四季があり、周年の気象変動の大きな地域では、安定した野菜類の供給手段として優れ、露地栽培からの作物の供給が減少する端境期に出荷できるために、収穫した野菜の単価も高く、また栽培環境が適正に保たれていることから生産性も高い(非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】
農林水産技術研究ジャーナル、第25巻第9号(2002)第18〜22頁
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の施設栽培においては、作物の生育環境を整えるための適正な温度の維持や、降雨や風の影響をなくするなど、栽培環境を適正に保つことができる。
しかしながら、温室やビニールハウスなどを用いる施設栽培においては、作物、例えば野菜の栄養成分の生成に不可欠な太陽光線中に含まれる紫外線等の短波長域の光線を、ガラス板やシート状又は板状のビニール樹脂が吸収してしまい、その結果、野菜中の栄養成分や機能性成分含量が低下してしまうという問題点があった。特に、光量の低下する冬期や夏場でも光量の少ない地域では、野菜収量の低下とともに品質の悪化は深刻な問題となっている。
【0006】
一方、現在の野菜生産の傾向を見ると、野菜の生産は、一定規格以上のものを多量に生産することが一般的に行われている。すなわち、工業製品の生産に似た大量生産指向が強くなっている。そして、野菜の規格は、通常、色や形、つや、まがり具合(きゅうりや、なすなど)の画一化が中心である。
すなわち、生産物としては、傾向として、重量の大きいものほど高規格品として流通販売されることが保証されているため、結果として、水分含量が高い野菜が多くなり、これは栄養成分含量の低下をもたらし、成分含量については軽視されがちである。換言すれば、生産者や流通小売業者のメリットを重視して野菜を栽培しているのが現状である。
【0007】
しかし、近年の健康指向で、注目を集めているビタミンC、トコフェロール、ポリフェノール等の健康上の機能性成分を十分に含有している野菜が求められるようになっている。
例えば、現在も死因において一番多いがんを予防するためには、その栄養成分の有する効果から、野菜を多く摂取することが推奨されている。
しかし、野菜の取り過ぎは、場合によって有害なことがある。一例として、多肥栽培等によって野菜中の硝酸イオン含量が多い場合、体内で、硝酸イオンが亜硝酸イオンとなり、他の食品中のタンパク質の分解物と反応し、発がん性物質ニトロソアミンを生成することが報告されている。
この場合、量的には従来と同程度の野菜の摂取で、機能性成分含量の多いものが得られれば健康維持、疾病予防に大変役立つことになる。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、栽培して得られる野菜について、機能性成分含量を調節することができる栽培方法及び施設、並びにそれに使用する紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意検討を行い、野菜を栽培する施設栽培において、野菜について野菜中の健康上の機能性成分量を増大させる手段を種々研究したところ、培養液の組成を特定の範囲に設定したものを用いるとき、あるいは人工紫外線を照射して栽培する手段を採用したときには、野菜中の機能性成分量が増大することを見出した。そして、これらの手段をその機能性成分量が所定の範囲にあるように調整するときには、上記の課題を解消できることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、従来の施設栽培に比べて野菜中の機能性成分量を調節することができるものであり、次の構成からなるものである。
(1)光線透過性板又はシートによって覆われ、かつ栽培床で栽培する野菜の栽培方法において、栽培に際して供給する液体肥料として園芸試験場標準培養液処方の0.25〜0.75倍、あるいは1.5〜2.0倍の濃度の液体肥料を用いることにより葉菜中の機能性成分含量を増大させることを特徴とする野菜の栽培方法。
(2)光線透過性板又はシートによって覆われ、かつ栽培床で栽培する野菜の栽培方法において、野菜に対し人工紫外線照射を行うことにより野菜中の機能性成分含量を増大させることを特徴とする健康機能性を付与した野菜の栽培方法。
(3)人工紫外線照射が健康線用健康ランプからの波長が315μmにピークを有し、波長250〜400μmに主分布を有する紫外線で行うことを特徴とする前記(2)記載の野菜の栽培方法。
(4)前記野菜がコマツナであることを特徴とする前記(2)又は(3)記載の野菜の栽培方法。
【0011】
(5)野菜の頂部から10cm〜20cm上部に野菜に対する人工紫外線照射装置を配置したことを特徴とする栽培施設。
(6)野菜に紫外線を間欠的に当てて育てるシステムにおいて、紫外線照射ランプを移動させながら照射することを特徴とする移動型紫外線照射装置。
(7)野菜を植え付けた一定幅の栽培列の両端に設置したレール上を走行する台車に紫外線照射ランプを取り付けたことを特徴とする前記(6)記載の移動型紫外線照射装置。
(8)野菜を植え付けた一定幅の栽培列の上部空間にレールを敷設し、そのレールから紫外線照射ランプを懸垂させると共に移動させながら照射することを特徴とする前記(6)記載の移動型紫外線照射装置。
(9)野菜の育成が養液栽培によるものであり、野菜の栽培列が養液栽培の栽培ベッドであることを特徴とする前記(7)又は(8)記載の移動型紫外線照射装置。
【0012】
本発明では、野菜の栽培においてその栽培環境を制御して、野菜の健康への機能性成分を増大し、あるいはその量を好ましい範囲に調節しようとするものである。ところで、その栽培環境の制御因子は沢山あるが、野菜の健康への機能性成分を調整するに適した因子はそう多くはない。
実際上、栽培環境制御因子の制御の難易性も大きな要因の1つでる。検討した土耕栽培、ハウス土耕栽培及びハウス養液・水耕栽培における環境制御因子を第1表に示す。
【0013】
【表1】


【0014】
【発明の実施の形態】
本発明においては、栽培する野菜について、ビタミンC、トコフェロール等の機能性成分含量を調節することができる栽培手段としては、前記したように、基本的には培養液調整手段と紫外線照射手段とがあるので、まず最初に培養液調整手段に関して説明する。
【0015】
本発明では、その養液栽培に使用する培養液の組成がその野菜の成分の割合に大きく影響を与えるものである。養液栽培に使用する培養液としては、通常園芸試験場標準培養液(以下、「園試処方」という)が標準的に使用されている。従来は、培養液としてはこのような公の機関で発表された培養液を使用することが栽培に最も適していると考えられてきた。これは、このような培養液が多くの栽培試験結果を経てきているからであるが、本発明者らの研究によれば、野菜の施設栽培においては、機能性成分を調整できるような栽培に関しては、意外にも園試処方の培養液でなく、その組成が園試処方から外れた組成の培養液を用いると良い結果が得られることを見いだしたのである。
【0016】
すなわち、本発明は、培養液として、その園芸試験場標準培養液でなく、その濃度がより低い或る範囲の濃度のもの、またその濃度がより高い或る範囲の濃度のものを培養液として使用すると、機能性成分の含有量がより大きい葉菜を得ることができるのである。
その培養液の濃度の範囲は、具体的には、園芸試験場標準培養液処方の0.25〜0.75倍、あるいは1.5〜2.0倍の濃度である。具体的には、コマツナの栽培において、前記の成分範囲においてその成分変動がみられた。園試処方は、N:16meq/リットル、P:4meq/リットル、K:8meq/リットル、Ca:8meq/リットル、Mg:4meq/リットルであるが、本発明で用いる培養液の濃度の範囲を、各肥料成分についてその濃度で示すと、第2表に示すとおりである。
【0017】
【表2】


【0018】
従来においても、培養液として各種の組成を有するものがあるが、野菜類の栽培に関して園試処方についてこのようにしたものはない。園試処方自体もその植物の生育段階により、その濃度を調節して用いるのが通例であるが、収穫までの培養液としてこのような標準処方を変えたものはない。また、ホウレンソウのような代表的な野菜について、園試処方以外に山崎処方とか愛知農総試処方が知られているが、本発明で採用する園試処方の何倍という範囲の中に直接入るものはない。
【0019】
また、紫外線照射手段の基本的なところは、栽培において野菜の頂部から10cm〜20cmより上方から、一般的には15cm上方から紫外線を照射することにより、野菜中に含まれる栄養成分、特にビタミンC、トコフェロール等の含量を調節することができるようにしたものである。その実施に当たっては、前記機能性成分の含量が所定の範囲の量になるように、紫外線の照射量や照射時間を調整するものである。この手段は野菜の中でも葉菜類に対して有効である。
実際の栽培方法及び栽培施設においては、栽培施設内に紫外線照射装置を、野菜の頂部から10cm〜20cm上部に、一般的には15cm上部に野菜の成長にあわせて調節可能に設置することにより行うものである。これは、野菜の頂部と人工紫外線源との間隔が10cm以下では、光源の放射熱により野菜の品質が低下し、一方20cm以上では、紫外線照射効果が小さくなるからである。
【0020】
なお、本発明における人工紫外線照射は、従来栽培施設において用いられてきた、空気の殺菌や殺虫のために用いられている殺菌灯や殺虫灯で出る紫外線照射とは異なるものであり、葉菜に対して行なわれるものである。また、水耕栽培など、水媒法の養液において、紫外線による殺菌が行なわれているものとは異なるものである。本発明における人工紫外線照射による栽培方法は、コマツナに対して効果があるが、その他の野菜についても有効である。
【0021】
本発明では、その具体化手段の一つとしては、健康線用蛍光ランプを使用することが好ましい。健康線用蛍光ランブの分光分布は、図1に示す通り、315μmにピークを有し、波長250〜400μmに主分布を有するものである。紫外線源としては、この外に高圧又は低圧水銀灯、炭素アーク灯、石英水銀灯などが挙げられるが、費用と効果の関係から、経済的には前記の健康線用蛍光ランブが格別に優れている。
【0022】
次に、本発明を実施するのに用いる移動型紫外線照射装置の具体例を説明する。
第1の例は、レール上を移動する台車の下に紫外線照射ランプを取り付けた形式の紫外線照射装置である。これは、図8に示すように、内部に培地2を収容し、植物3を植えた細長い栽培ベッド1の両側にレール4を敷設し、栽培ベッド1を跨いで紫外線照射台車5をその脚部に設けた車輪7を前記レール4に載せて移動可能にしたものである。紫外線照射ランプ6を紫外線照射台車5の下面に設けて、植物3に直接紫外線を照射できるようになっている。紫外線照射台車5は、レール4に沿って張られたケーブル移動用ワイヤー12に支持されたケーブル11から集電装置10に受けた電力を制御盤9で制御して駆動用モータ8を回転させて車輪7を動かすことにより、移動させることができる。
【0023】
第2の例は、上方に設けたレールに移動できる支持体に紫外線照射ランプを吊り下げた形式の紫外線照射装置である。これは、図9に示すように、内部に培地2を収容し、植物3を植えた細長い栽培ベッド1の上方に、栽培ベッド1に沿ってレール4を設け、前記レール4上に移動できる支持体15を載せ、前記支持体15はその車輪7が前記レール4に乗っており、前記支持体15から吊り金具14で紫外線照射装置13が吊り下げられている。そして、紫外線照射装置13の下面には紫外線照射ランプ6が設けられて、植物3に直接紫外線を照射できるようになっている。前記支持体15にはケーブル11からの給電により動く駆動用モータ8が設けられ、駆動用モータ8の駆動により車輪7が回転して、レール4上を移動することにより、紫外線照射装置13が栽培ベッド1の上を移動できるようになっている。
【0024】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明は、使用培地も含めこの実施例のみに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
昼間温度25℃、夜間温度20℃、昼間時間12時間、炭酸ガス1000ppm施用の人工気象室内に、栽培床の培地として軽石を使用し、培養液として園試処方を基準にした液体肥料を底面給水方式で施肥した。
その際、液体肥料としては、液肥濃度が園試処方の0.25倍、0.5倍、0.75倍、1.0倍、1.5倍、2.0倍の6種の液体肥料を調製し、播種後のコマツナ15株ずつを1群として、それぞれに濃度の異なった液体肥料をそれぞれを施肥することによりコマツナを栽培した。
【0026】
(実験結果)
栽培日数30日目に収穫し、各群のコマツナについて最大葉長、ビタミンCの量、α−トコフェロールの量をそれぞれ測定した。最大葉長はコマツナ1株中の葉で最大の長さをもつ葉の長さであって、15株の平均値である。また、ビタミンCの量及びα−トコフェロールの量はコマツナ100g中の含有量(単位mg)である。
これらの栽培結果について液肥濃度との関係を図1〜3に示す。図1は、コマツナの最大葉長を示すグラフであり、図2は、コマツナのビタミンCの含量を示すグラフであり、図3は、コマツナのα−トコフェロール含量を示すグラフである。
【0027】
(実験結果の評価)
(1)最大葉長への影響
コマツナの最大葉長は、液肥濃度によってはさほど影響を受けず、0.5倍、0.75倍、1.5倍は1.0倍の場合とほとんど変らない。しかし、0.25倍及び2.0倍ではかなり小さくなった。
(2)ビタミンC含量への影響
しかしながら、ビタミンCの含量については、液肥濃度が0.75倍の場合には50mg/100gと、1.0倍の場合の40mg/100gよりも20%程度の増加であるが、0.5倍の場合には80mg/100gと100%増大し、0.25倍の場合には約70mg/100gと75%増大した。また、液肥濃度を濃くする方向でも、1.5倍の場合には約55mg/100gと、2.0倍の場合には約53mg/100gと増大しているので、液肥濃度は有意差があるといえる。
【0028】
(3)α−トコフェロール含量への影響
また、α−トコフェロール含量については、液肥濃度が0.75倍の場合には0.2mg/100gと、1.0倍の場合と同程度であるが、0.5倍の場合には0.9mg/100gと増大し、0.25倍の場合には2.0mg/100gと非常に増大した。また、液肥濃度を濃くする方向でも、1.5倍の場合には0.2mg/100gと、1.0倍の場合と同程度であるが、2.0倍の場合には1.1mg/100gと増大したので、液肥濃度は有意差があるといえる。
【0029】
以上の試験結果に示すように、液肥濃度がコマツナの成長及び成分含量に影響を及ぼすことが明らかになった。生育は園試処方の0・5倍程度から1.5倍程度で良好である。ビタミンC、α−トコフェロールについては液肥濃度の調整によりその含量を大きく高めることが可能であることが分かった。
このことから、栽培条件の一つとして液肥濃度を調整することにより、野菜中の機能性成分などの含量をコントロールすることが可能であるといえる。
【0030】
実施例2及び比較例1
昼間温度25℃、夜間温度20℃、昼間時間12時間、炭酸ガス1000ppm施用の人工気象室内に、栽培床の培地として軽石を使用し、養液として大塚化学の液体肥料の大塚A処方の1/2濃度の希釈液肥を底面給水方式で施肥し、播種後20日のコマツナに、1日5分間午前中にコマツナの頂部から15cm距離をあけた位置から収穫日(播種後30日)まで健康線用蛍光ランプを用いて紫外線照射を行った(実施例2)。前記健康線用蛍光ランプは、310nmに最大吸収をもつUV−B波を照射するもので、出力は20wのものを4本使用した。
紫外線照射を行わなかった以外は、上記と全く同一条件で栽培を行ったものを比較例1とした。
収穫したコマツナのビタミンC含量を各5個について比較したところ、紫外線無照射の比較例1で110mg/100gであったのに比べて、実施例2のコマツナでは最大約1.4倍(155mg/100g)に増加していた。
【0031】
実施例3
実施例2と同様の栽培施設で、かつ同様な栽培条件で播種後のコマツナ15株ずつを1群として、それぞれに照射時間、照射距離等を変えて人工紫外線照射を行なった。栽培期間はすべて同じ30日とした。
照射開始日から収穫日まで毎日照射するので、照射開始日が15日目であれば15日照射、25日目であれば5日照射ということになる。紫外線照射条件としては、距離としてはコマツナの頂点から紫外線ランプまでの距離で決めることとし、コマツナの成長を阻害するので、15cmと20cmとの2種類とした。
これに、対照として、同じコマツナ15株を同様に栽培し、これには人工紫外線照射をしなかった。
【0032】
(実験結果)
栽培日数30日目に収穫し、各群のコマツナについて新鮮重、最大葉長、α−トコフェロールの量をそれぞれ測定した。新鮮重は、収穫直後のコマツナ1株当たりの重量であり、最大葉長はコマツナ1株中の葉で最大の長さをもつ葉の長さであって、いずれも15株の平均値である。またα−トコフェロールの量はコマツナ100g中の含有量(単位mg)である。
これらの栽培結果を図5〜7に示す。図5は、紫外線処理したコマツナの新鮮重を示すグラフであり、図6は、紫外線処理したコマツナの最大葉長を示すグラフであり、図7は、紫外線処理したコマツナのα−トコフェロール含量を示すグラフである。
【0033】
(実験結果の評価)
(1)新鮮重への影響
紫外線照射により、新鮮重は若干抑えられる傾向がみられた。但し、生育後期から照射を行なった場合には、非照射(対照)の場合との差が小さくなる。
(2)最大葉長への影響
同様の条件において、最大葉長も同じく抑えられる傾向が見られた。
(3)α−トコフェロール含量への影響
しかしながら、α−トコフェロール含量については、20cmの距離から15日間照射した場合に、非照射(対照)の場合に比して30%程度増加する結果が得られた。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、野菜の施設栽培において、野菜中に含まれる栄養成分、特に健康維持、疾病の症状改善、疾病予防に効果のあるビタミンC、トコフェロール等の機能性成分の含量の変化(増加)を促すことができる。
特に、本発明によれば、コマツナの施設栽培において、それが含有する機能性成分の含量の増大を図り、或いは必要な含量をもつものを栽培により得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液肥濃度がコマツナの生育に及ぼす影響を表すグラフを示す。
【図2】液肥濃度がコマツナのビタミンC成分含量に及ぼす影響を表すグラフを示す。
【図3】液肥濃度がコマツナのα−トコフェロール含量に及ぼす影響を表すグラフを示す。
【図4】本発明に使用した健康線用蛍光ランプの分光分布グラフである。
【図5】実施例3における紫外線処理したコマツナの新鮮重を示すグラフである。
【図6】実施例3における紫外線処理したコマツナの最大葉長を示すグラフである。
【図7】実施例3における紫外線処理したコマツナのα−トコフェロール含量を示すグラフである。
【図8】本発明を実施するのに用いる、レール上を移動する台車を用いる移動型紫外線照射装置の斜視図を示す。
【図9】本発明を実施するのに用いる、上のレールから吊り下げた紫外線照射装置を栽培ベッド上を移動させる移動型紫外線照射装置の斜視図を示す。
【符号の説明】
1 栽培ベッド
2 培地
3 植物
4 レール
5 紫外線照射台車
6 紫外線照射ランプ
7 車輪
8 駆動用モータ
9 制御盤
10 集電装置
11 ケーブル
12 ケーブル移動用ワイヤー
13 紫外線照射装置
14 吊り金具
15 支持体
【出願人】 【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
【出願日】 平成15年4月3日(2003.4.3)
【代理人】 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平

【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳

【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光

【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛

【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子

【識別番号】100093573
【弁理士】
【氏名又は名称】添田 全一

【公開番号】 特開2004−305040(P2004−305040A)
【公開日】 平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願番号】 特願2003−100367(P2003−100367)