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【発明の名称】 柑橘類の浮き皮防止法及び防止剤
【発明者】 【氏名】山田 靖史
【住所又は居所】東京都狛江市和泉本町1−15−19 ロイヤルインダストリーズ株式会社内

【氏名】山田 拓史
【住所又は居所】東京都狛江市和泉本町1−15−19 ロイヤルインダストリーズ株式会社内

【要約】 【課題】安全性、価格、及び即効性といった面で問題のある従来の浮き皮防止剤に代えて、安全で経済的な浮き皮防止剤、防止法、及び果実生産方法を提供する。

【解決手段】多孔質粉体を含む固形剤及び該固形剤を水で希釈した液剤を果実及び/又は葉面に散布することにより、水分蒸散を促進することができる。その結果、降雨後の過大なじょう嚢の膨張とそれに伴う果皮の肥大成長を抑制し、その後の乾燥による収縮過程でじょう嚢及び果皮が剥離することを防ぐことができる。多孔質粉体として、ゼオライト、モンモリロナイト、珪藻土、及びシリカゲルからなる群より選択される1種以上を用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質粉体を含む柑橘類の浮き皮防止用固形剤。
【請求項2】
多孔質粉体に含有されるSi及びAlの量をそれぞれSiO及びAlの量に換算した場合、
(換算SiO重量+換算Al重量)/(多孔質粉体の重量)
で表される重量比が50%以上である請求項1に記載の剤。
【請求項3】
多孔質粉体が、ゼオライト、モンモリロナイト、珪藻土、シリカゲル、ベントナイト、孔質アルミナ、カオリナイト、タルク、白土、アタパルジャイト、パーミキュライト、セライト、及びハイドロタルサイトからなる群より選択される1種以上である請求項1に記載の剤。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の何れかの剤を水で希釈した液剤。
【請求項5】
柑橘類が温州ミカン、不知火、ポンカン、伊予柑、オレンジ、又ははるみである請求項1乃至4の何れかに記載の剤。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかに記載の剤を柑橘類の果実及び/又は葉面に散布することを含む浮き皮防止法。
【請求項7】
水分の蒸散を促進する剤を柑橘類の果実及び/又は葉面に散布することを含む浮き皮防止法。
【請求項8】
柑橘類が温州ミカン、不知火、ポンカン、伊予柑、オレンジ、又ははるみである請求項6又は7の方法。
【請求項9】
請求項1乃至4の何れかに記載の剤を柑橘類の果実及び/又は葉面に散布することを含む柑橘類果実の生産方法。
【請求項10】
柑橘類が温州ミカン、不知火、ポンカン、伊予柑、オレンジ、又ははるみである請求項9記載の生産方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柑橘類の浮き皮防止用剤、該剤を用いた浮き皮防止法、及び該剤を散布することを含む柑橘類果実の生産方法に関する。具体的には、多孔質粉体を含む固形剤、その固形剤を水で希釈した液剤、これらの剤を用いた浮き皮防止法及び果実生産方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、温州ミカンといった柑橘類の果実では果皮とじょう嚢とが密着しているが、両者が剥離して間隙が生じることがある。この現象は浮き皮と呼ばれ、果実の成熟を妨げるだけでなく果実の商品価値を著しく損なうため、その防止法が求められている。
【0003】
浮き皮が起こる原因は必ずしも明確ではないが、生育期及び収穫期での降雨量が多いと生じやすいため、果実が過剰に摂取した水分が原因の一つに挙げられる。つまり、浮き皮発生の機構として以下のスキームを推定することができる。まず、降雨量が多いと土壌から根を通じた水分吸収量が増大し、幹や枝を経て果実に供給され、じょう嚢の内圧又は膨圧が増大し、それに応じて果皮も肥大生長する。その後、雨が止み乾燥してくると、じょう嚢の内圧又は膨圧は低下して収縮する。その一方、果皮の収縮率はじょう嚢より小さいため、両者の剥離がおきて浮き皮が生じる。
【0004】
従来、浮き皮を防止する方法としては、カルシウム剤を散布する方法が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。この方法は果樹に吸収されたカルシウムがペクチン酸カルシウムとなって細胞壁を構成することを利用しており、細胞間の結合を強化することによって果皮及びじょう嚢間の剥離を防いでいる。
【0005】
しかし、使用されるカルシウム剤は化学的に合成されたものであるため、環境への影響が懸念され、残留して摂取された場合の人体への影響も問題となる。さらにカルシウム剤を散布する方法では、吸収から細胞壁の形成をへて果皮及びじょう嚢間の結合強化に至るまでに時間を要するため、即効性のある効果が得られにくいという問題がある。それに加え、カルシウム剤は価格的に必ずしも経済的なものではないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平7−126090号公報
【0007】
【本発明が解決使用とする課題】
本発明の目的は、上記のように環境や人体への影響、効果発現までの時間、及び価格といった面で問題のあった従来の浮き皮防止剤及び防止法に代え、安全で安価であり迅速な効果が得られる浮き皮防止剤、それを用いた浮き皮防止法、及び果実生産方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記実状に鑑み、本発明者は鋭意研究を進めた結果、多孔質粉体を柑橘類の果実及び/又は葉面に散布して降雨後の水分蒸散を促進することにより浮き皮を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明では果実及び/又は葉面に散布された多孔質粉末が水分の蒸散を促進するため、降雨後にじょう嚢が過剰に水分を吸収して膨張することを抑制し、安全かつ経済的に浮き皮の発生を防止することができる。
【0009】
即ち本発明の要旨は、多孔質粉体を含む柑橘類の浮き皮防止用固形剤にある。多孔質粉体に含有されるSi及びAlの量をそれぞれSiO及びAlの量に換算した場合、
(換算SiO重量+換算Al重量)/(多孔質粉体の重量)
で表される重量比が50%以上にすることができる。多孔質粉体について、ゼオライト、モンモリロナイト、珪藻土、シリカゲル、ベントナイト、孔質アルミナ、カオリナイト、タルク、白土、アタパルジャイト、パーミキュライト、セライト、及びハイドロタルサイトからなる群より選択される1種以上とすることができる。さらに、該固形剤を水で希釈して液剤とすることができる。
【0010】
また本発明の要旨は、上記の剤を柑橘類の果実及び/又は葉面に散布することを含む浮き皮防止法及び果実生産方法にも存する。さらに、水分の蒸散を促進する剤を柑橘類の果実及び/又は葉面に散布することを含む浮き皮防止法にも存する。
【0011】
本発明の対象となる果実としては、温州ミカン、不知火、ポンカン、伊予柑、オレンジ、及びはるみが挙げられる。
【0012】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、果実及び/又は葉面に剤を散布して水分蒸散を促進することにより、浮き皮を防止することができる。
【0013】
本発明において浮き皮を防止できる理由は必ずしも明確ではないが、高比表面積の多孔質粉末が果実及び/又は葉面に付着して水分蒸散を促進する結果、本発明の有利な効果が得られていると推定される。つまり、水分蒸散の促進によって降雨後のじょう嚢の膨張を抑制し、それに伴って果皮の肥大生長をも抑制する結果、その後の乾燥過程でじょう嚢が果皮よりも収縮して剥離することを防いでいると考えられる。
【0014】
散布する剤としては、水分蒸散を促進するという観点から、比表面積の大きい多孔質の粉体が好ましい。使用される粉体の比表面積としては、50m/g以上、好ましくは100m/g、さらに好ましくは150m/gである。また、10000m/g、好ましくは5000m/g、さらに好ましくは2000m/g以下である。比表面積が小さすぎると本発明の効果が得られず、大きすぎると嵩密度が小さくなり取り扱いが難しくなる。なお上記の比表面積は、BET法により窒素吸着を用いて測定される比表面積の値である。
【0015】
該粉末の平均粒径としては、0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であり、また20μm以下、好ましくは10μm以下である。細かすぎると取り扱いに問題が生じ、粗すぎると本発明の効果が得られにくい。
【0016】
使用する多孔質材料としては、安全性及び価格の面からSi及び/又はAlを主成分とする材料を用いることができる。Si及び/又はAlの含有量としては、
(換算SiO重量+換算Al重量)/(多孔質粉体の重量)
で表される割合が20重量%以上、好ましくは50重量%以上である。ここで換算SiO重量とは、多孔質材料中のSiが全てSiOとして存在したと仮定した場合のSiOの重量を指す。換算Al重量とは、多孔質材料中のAlが全てAlとして存在したと仮定した場合のAlの重量を指す。Si/Al比に特に制限はなく、各種の粉体を利用することができる。
【0017】
Si及びAl以外の含有元素としては、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、例えばNa及びKといったアルカリ金属、Mg、Caといったアルカリ土類金属、Tiといった遷移金属、炭素、及びリンが挙げられる。
【0018】
使用できる多孔質材料として特に制限はないが、例えばゼオライト、モンモリロナイト、珪藻土、シリカゲル、ベントナイト、孔質アルミナ、カオリナイト、タルク、白土、アタパルジャイト、パーミキュライト、セライト、及びハイドロタルサイトからなる群から選択される1種以上を用いることができる。これらの中でも、ゼオライト、モンモリロナイト、珪藻土、シリカゲルからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。また、植物性の粉体、例えば木質粉、籾殻、オガクズ等を使用することもできる。
【0019】
ゼオライトを使用する場合、その種類に特に制限はなく、X型、Y型、A型、モルデナイト、ZSM−5等の各種のゼオライトを使用することができ、一部をTiなどの遷移金属で置換することもできる。また、HがNaやKといったカチオンで交換された材料を使用することもできる。さらに、アルミノリン酸塩(ALPO)やシリカアルミノリン酸塩(SAPO)といったゼオライト類縁体も用いることができる。
【0020】
モンモリロナイトとしては各種の置換体及び付加体を使用することができる。例えば、マグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイト、バイデライト、ノントロン石、サポー石、ヘクトライト、及びソーコナイトである。モンモリロナイト中のカチオンとしてはK、Na、及びCa2+が挙げられるが、Caが含有されていると、ペクチン酸カルシウムの生成による浮き皮防止効果も併せて得ることができる。また、モンモリロナイト以外の各種の粘土鉱物も使用することができる。
【0021】
多孔質材料の細孔構造に特に制限はなく、均一な細孔構造を有するマイクロポーラス及びメソポーラス材料であってもよく、シリカゲルといったアモルファス状の材料であってもよい。また、ゼオライトといった1次元、2次元、又は3次元のチャンネルを持つ材料であってもよく、モンモリロナイトといった層状構造の材料であってもよい。
【0022】
本発明の多孔質粉末としては、天然鉱物由来の粉末も合成品由来の粉末も使用することができる。経済的な観点からは、ゼオライト、モンモリロナイト、及び珪藻土については天然鉱物由来が好ましいが、合成ゼオライトを用いることもできる。シリカゲルについては、入手の容易さや性能面から合成品が好ましい。
【0023】
本発明で使用する多孔質粉体は、各種の材料を従来公知の方法で粉砕することによって得ることができる。例えば、乾式粉砕ではボールミルやジェットミルを使用することができ、湿式粉砕ではダイノーミルを使用することができる。また、市販の粉砕粉末を使用することもできる。
【0024】
本発明の固形剤を直接果実及び/又は葉面に散布することもできるが、取り扱いの容易さや散布時の均一性を考慮すると、水で希釈した液剤として散布することが好ましい。多孔質粉末の量は水の0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、3重量%以下、好ましくは0.5重量%以下である。量が多すぎると懸濁させることが難しくなり、少なすぎると本発明の効果が得られにくい。複数の種類の多孔質粉末を併せて使用する場合には、それぞれの種類の多孔質粉末が上記の範囲にあることが好ましい。
【0025】
本発明の固形剤又は液剤を散布する時期及び回数は、該剤の濃度や対象とする柑橘類にも依存するが、温州ミカンでは夏から秋の果実肥大期、具体的には8月下旬から11月下旬に、好ましくは着色初期から着色6分期頃までに2〜3回に分けて散布することができる。特に、降雨後に散布すると効果的である。
【0026】
本発明で散布の対象となる柑橘類としては、浮き皮が起こりやすく被害が重大な温州ミカン、不知火、ポンカン、伊予柑、オレンジ、及びはるみが挙げられるが、その他の柑橘類についても使用することができる。
【0027】
本発明の浮き皮防止剤は、従来の剤とは異なりカルシウムの吸収によって作用するものではなく、果実や葉面に直接付着して効果を奏するものであるため、散布直後から目的の効果が得られるという利点がある。また、その他の農薬や本発明以外の浮き皮防止剤と併用することもできる。
【0028】
【実施例】
以下実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明が以下の実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>
ゼオライト粉末(日東粉化工業社製:粒子径1.92μ、福島県飯坂町産鉱石使用)、モンモリロナイト粉末(ソフトシリカ社製:粒子径2.0μ、秋田県産の鉱石使用)、ケイソウ土粉末(クニミネ工業社製:粒子径2.0μ、福島県産の鉱石使用)、及びシリカゲル粉末(粒子径2.0μ、市販のシリカゲルを粉砕し粒度径2.0μとした)について、各々を水で希釈して浮き皮防止剤4種類を調製した。なお、上記粉末の量は水に対して0.14重量%とした。これらの剤を蛍尻期及び6分着色期の2回に分けて散布した。10aあたりの散布に使用した量は、何れの粉末についても0.7 kg(水500 L)である。結果を以下の表に示す。
【0029】
【表1】


表1より、本発明の剤を散布すると、無処理の場合と比較して浮き皮の発生を有意に抑制できることがわかる。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、多孔質粉体を含む柑橘類の浮き皮防止用固形剤、及び該固形剤を水で希釈した液剤を提供する。該浮き皮防止剤によれば、果実及び/又は葉面からの水分蒸散を促進することにより、浮き皮の発生を安全かつ経済的に防止することができる。
【出願人】 【識別番号】300012826
【氏名又は名称】ロイヤルインダストリーズ株式会社
【住所又は居所】東京都狛江市和泉本町1−15−19
【出願日】 平成15年3月31日(2003.3.31)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫

【識別番号】100076691
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 忠弐

【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰

【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男

【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行

【識別番号】100083747
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 剛志

【公開番号】 特開2004−298046(P2004−298046A)
【公開日】 平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願番号】 特願2003−93628(P2003−93628)