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【発明の名称】 生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法
【発明者】 【氏名】近野 広行

【氏名】荒澤 直樹

【氏名】駒林 和夫

【氏名】高橋 和博

【要約】 【課題】オウトウの収穫期を遅らせる人工抑制栽培法に関し、特に、この技術導入1年目から、その年の年末から2月頃に掛けての収穫や通常の露地栽培による収穫期を終え、品薄状態となる7月末から8月中旬に掛けての収穫が可能となり、しかも同一の果樹を用い、毎年同時期の収穫を繰り返して実現できるようにする新規な構成からなるオウトウの休眠延長方法を提供する。

【解決手段】休眠期に入ったオウトウを用い、自発休眠を覚醒した時期から1年以内の、休眠状態を延長しようとする所望の期間に応じて温・湿度を所定条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理し、休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられる期間を調節するようにした後、冷蔵施設から出庫して露地条件もしくは果樹の生育に適した加温環境の下に置いて開花・結実期を迎えさせる、生育時期調節のために施すオウトウの休眠延長方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
休眠期に入ったオウトウを用い、自発休眠を覚醒した時期から1年以内の、休眠状態を延長しようとする所望の期間に応じて温・湿度を所定条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理し、休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられる期間を調節するようにした後、冷蔵施設から出庫して露地条件もしくは果樹の生育に適した加温環境の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにしたことを特徴とする生育時期調節のために施すオウトウの休眠延長方法。
【請求項2】
休眠期に入ったオウトウを用い、自発休眠を覚醒した時期から1年以内の、休眠状態を延長しようとする所望の期間に応じて温・湿度を所定条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理し、休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられる期間を調節するようにした後、冷蔵施設から出庫して露地条件もしくは果樹の生育に適した加温環境の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにし、冷蔵施設内管理をして少なくとも自発休眠覚醒後の期間を延長調節した分だけ、開花・結実期が露地栽培によるものからずれるようにしたことを特徴とする生育時期調節のために施すオウトウの休眠延長方法。
【請求項3】
休眠期に入ったオウトウを用い、自発休眠を覚醒した時期から1年以内の、延長しようとする所望の期間に応じて、温度を−10ないし5℃の範囲、湿度を85%以上の条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理し、所望する期間に渡って果樹が休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられるようにした上、その所望期間内の適期には、当該冷蔵施設内から出庫させて果樹の生育に適した加温環境もしくは露地条件の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにし、冷蔵施設内管理をして少なくとも自発休眠覚醒後の期間を延長調節した分だけ、開花・結実期が露地栽培によるものからずれるようにしたことを特徴とする生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法。
【請求項4】
休眠期に入ったオウトウであって、自発休眠覚醒後で発芽前の果樹を用い、自発休眠を覚醒した時期から6か月以上1年以内の、延長しようとする所望の期間に渡って、温度を−10ないし5℃の範囲、湿度を85%以上の条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理し続ける中で、出庫する前の1ないし2週間を除く期間は−10ないし0℃で、出庫する前の1ないし2週間は0ないし5℃とする条件の下に管理、継続して所望する期間に渡って果樹が休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられるようにした上、その所望期間内の適期には、当該冷蔵施設内から出庫させて果樹の生育に適した加温環境もしくは露地条件の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにし、冷蔵施設内管理をして少なくとも自発休眠覚醒後の期間を延長調節した分だけ、開花・結実期が露地栽培によるものからずれるようにしたことを特徴とする生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法。
【請求項5】
生育時期のずれは、年末から2月頃に掛けての収穫ができるように調整してなるものとした、請求項4項記載の生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法。
【請求項6】
休眠期に入ったオウトウであって、自発休眠覚醒後で発芽前の果樹を用い、その自発休眠を覚醒した時期から6か月以内の、延長しようとする所望の期間に渡って、温度を−10ないし5℃の範囲、湿度を85%以上の条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理し、所望する期間に渡って果樹が休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられるようにした上、その所望期間内の適期には、当該冷蔵施設内から出庫させて果樹の生育に適した加温環境もしくは露地条件の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにし、冷蔵施設内管理をして少なくとも自発休眠覚醒後の期間を延長調節した分だけ、開花・結実期が露地栽培によるものからずれるようにしたことを特徴とする生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法。
【請求項7】
生育時期のずれは、7月下旬から8月上旬に掛けての収穫ができるように調整してなるものとした、請求項6項記載の生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法。
【請求項8】
年末から順次収穫を終えるよう既に開花・結実期調節済みであり、予定どおり年末、年始に掛けての所望する時期に収穫を終えたオウトウであって、引き続き加温環境下で生育していて休眠期に移行させた果樹を用い、温度を−10ないし5℃の範囲、湿度を85%以上の条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理している中、該冷蔵施設内において自発休眠を覚醒させるようにし、その自発休眠を覚醒した時期から6か月以内の、延長しようとする所望の期間内に渡って果樹が休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられるようにした上、その所望期間内の適期には、当該冷蔵施設内から出庫させて果樹の生育に適した加温環境もしくは露地条件の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにし、冷蔵施設内管理をして少なくとも自発休眠覚醒後の期間を延長調節した分だけ、開花・結実期が露地栽培によるものからずれるようにしたことを特徴とする生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法。
【請求項9】
生育時期のずれは、年末から2月頃に掛けての収穫ができるように調整してなるものとした、請求項8項記載の生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法。
【請求項10】
冷蔵施設は、大型冷蔵庫や冷蔵設備等のような科学的熱変換施設ではなく、天然の雪を活用してなる雪室施設によるものとした、請求項1ないし9項何れか記載の生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の目的】
この発明は、オウトウの生育時期をコントロールして開花、結実期を遅らせる人工抑制栽培法に関し、特に、この技術導入1年目から、その年の年末から2月頃に掛けての収穫が可能となり、しかも同一の果樹を用い、毎年同時期の収穫を繰り返して実現できるようにすると共に、露地栽培で通常の収穫を終えて自発休眠を経過し、自発休眠を覚醒させた後のオウトウであっても、通常の露地栽培による収穫期を終え、品薄状態となる7月末から8月中旬に掛けての収穫が可能となるようにし、適宜収穫期を所望の時期にずらすために生育時期を調整して開花、結実期を遅らせ、果実や鉢物としての出荷のタイミングを整えてオウトウの付加価値が高められるようにする、新規な構成からなるオウトウの休眠延長方法を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
農産物の輸入規制緩和策の影響もあって、国内のオウトウ生産にも変化が現れ始めており、品質の向上ばかりか、オウトウそのものの付加価値を高める必要から、出荷時期を適期に変更するよう、オウトウの収穫後、一定期間生育させた後の落葉前の段階から冷蔵施設に搬入し、徐々に温度を低下させることによって自発休眠への導入を早め、低温に遭遇させて自発休眠を覚醒させた後、加温条件下で開花、結実させる技術等が開発され、この技術を繰り返して実施することにより、年末の御歳暮商品から年始のお正月贈答商品、飾り商品にまで使えるようになってきている。
【0003】
しかし、例えば特許2710259号「桜桃の周年人工促成栽培方法」発明等に代表されるような従来からの技術では、生育期間を数ヶ月程度早める程度に止まっているために、露地条件で管理されてきたオウトウを用いて年末から年始に掛けての出荷を行おうとすると、上記した操作を数年に渡って繰り返さなければならず、目的とする時期の出荷を実現させるのに数年の期間が必要であった。これは、休眠への導入を早める、所謂促成栽培という栽培方法から派生する問題点である。
【0004】
仮に、従来の方法で収穫直後から冷蔑施設に搬入して自発休眠への導入を行うことが可能になったとしても、露地条件で栽培されているオウトウは、晩秋から初冬の時期に自発休眠に入るので、生育を早められる期間は、露地条件における収穫時期から落葉期に相当する約5か月程度が限界である。実際には、オウトウでは、翌年の花芽の形成や充実のための養成期間が必要であり、従来の方法でも収穫から4ないし5か月の生育期間を必要とするため、露地条件で管理されてきたオウトウの生育を早めることができるのは、ほんの2ないし3か月程度にしか過ぎず、このようなことから、従来の方法で年末から年始に掛けての出荷を実施しようとすれば、特別の冷蔵施設を利用して強制的に休眠に導入して生育を早めるようにした操作を何度も繰り返さなければならなかった。
【0005】
そして、この従来のやり方で12月下旬ないし1月中旬頃の収穫、出荷を実現するためには、夏期等の気温の高い時期に休眠状態に誘導する必要が生じることから、休眠への導入を良好に行うために、昼温と夜温を設定した上で徐々に温度を低下させたり、数日おきに冷蔵施設の温度を下げていくというような煩雑な繰作やプログラム機能等を装備した人工的な冷蔵装置が必要となってくる外、一度その時期に調整した樹でも、繰り返して毎年12月下旬ないし1月中旬頃に出荷するためには、複雑な温度設定や徐々に温度を低下させる等の、自然に近い休眠を促すための煩雑な操作や管理が再度必要になってくるといった難点を抱えていた。
【0006】
これに対して、果樹栽培で出荷時期を変えようとする場合、生育を促進させる従来の方法の外に、生育を遅らせる抑制栽培の方法もある。しかし、年末から年始に掛けて収穫、出荷を果たすためには、通常の生育よりも約半年間は生育を遅らせる必要が生じることになり、この休眠状態を維持しようとする期間が長いため、環境条件によっては貯蔵中にもかかわらず生育を開始したり、貯蔵中の乾燥や凍害等による枯死や芽の不発芽等を発生させてしまう等という事故を生じ易く、それらを克服できないこともあって、これまでのところでは、果樹の生育を約半年間遅らせる有効な技術は開発されていないのが実情で、その技術ような開発は実現が不可能と看做されていた。
【0007】
このようなオウトウ栽培の動きの中にあって、オウトウの生産高では国内で群を抜く山形県の場合、極一部の生産者を除いて、最も早い4月下旬頃の出荷に続き、加温ハウス栽培から無加温ハウス栽培、露地栽培(雨よけテント栽培)へと連続していく生産体制に略止まっており、先の従来技術によるもののように、収穫、出荷時期を調節してオウトウの付加価値を高めるような栽培を手掛ける者は極少数に止まっているのが現状である。
【0008】
こうした現象の拠って来る原因としては、山形ブランドだけでも未だオウトウとしての商品価値が得られることから、多くのオウトウ生産農家が今の生産体制で一応のところ満足していることと、その付加価値を高める必要性を感じている人達でも、現在までに確立された収穫期の調節方法では、大型で高度な温度調節機能を有する冷蔵施設や煩雑な温度操作が必要である上、年末、年始のように付加価値が期待できる時期に合わせて出荷できるようになるまでには数年を要するといった技術の難しさを伴ってしまうことから、今一つ乗る気になれないでいること等が考えられる。
【0009】
一方、降雪地帯である山形県の事情から、中山間地域や多雪地帯では、豊富な雪資源の利、活用を図る動きが高まり、雪室の建設が各地で進められ、専ら生産物の貯蔵に利用する試みが開始されてきてはいるものの、果樹の栽培に利用した例は今までのところなかったことから、雪資源を農業へ応用し、より一層の付加価値の高い農産物づくりを目指す研究の必要性が認識され、その一環として、雪資源、特に雪室を冷蔵施設に活用するようしてのオウトウの抑制栽培の適否について取り組むこととなった。
【0010】
既述の如く、既に開発済みとなっている従来の方法では、一定期間の低温に遭遇させて自発休眠覚醒時期を早めるため、高度な温度調節機能を有する冷蔵施設や煩雑な温度調節操作を必要とし、また、この方法によるとしても、収穫時期を1ないし3か月程度しか早めることができないため、年末、年始に掛けての収穫、出荷を実現しようとすれば数年掛かりとなり、技術的な負担だけには止まらず、経済的な負担も大きくなってしまっていて、オウトウの付加価値を高める必要性は認めつつ、その実現手段として疑問を抱えていたところに、丁度、雪資源、特に雪室の特性と果樹の休眠特性に着目し、オウトウの休眠状態を調節して適期での収穫、出荷ができないものかとしてスタートし始めていた政策とが符合したことから、タイミング良く開発、研究に取り組むことができ、以来長年に渡る試験と試行錯誤とを繰り返してきた結果、遂にここに来てその成果を得るに至ったものであり、以下では、その構成を詳細に説示していくこととする。
【0011】
【発明の構成】
この発明のオウトウの休眠延長方法は、基本的に次のとおりの構成から成り立っている。
即ち、休眠期に入ったオウトウを用い、自発休眠を覚醒した時期から1年以内の、休眠状態を延長しようとする所望の期間に応じて温・湿度を所定条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理し、休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられる期間を調節するようにした後、冷蔵施設から出庫して露地条件もしくは果樹の生育に適した加温環境の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにした構成を要旨とするオウトウの休眠延長方法となる。
【0012】
この基本的な構成を、表現を変えて示すならば、休眠期に入ったオウトウを用い、自発休眠を覚醒した時期から1年以内の、休眠状態を延長しようとする所望の期間に応じて温・湿度を所定条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理し、休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられる期間を調節するようにした後、冷蔵施設から出庫して露地条件もしくは果樹の生育に適した加温環境の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにし、冷蔵施設内管理をして少なくとも自発休眠覚醒後の期間を延長調節した分だけ、開花・結実期が露地栽培によるものからずれるようにした構成からなる生育時期調節のために施すオウトウの休眠延長方法ということができる。
【0013】
上記したこれら基本的な構成からなる生育時期調節のために施すオウトウの休眠延長方法は、具体的には、休眠期に入ったオウトウを用い、自発休眠を覚醒した時期から1年以内の、延長しようとする所望の期間に応じて、温度を−10ないし5℃の範囲、湿度を85%以上の条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理し、所望する期間に渡って果樹が休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられるようにした上、その所望期間内の適期には、当該冷蔵施設内から出庫させて果樹の生育に適した加温環境もしくは露地条件の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにし、冷蔵施設内管理をして少なくとも自発休眠覚醒後の期間を延長調節した分だけ、開花・結実期が露地栽培によるものからずれるようにした、生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法ということができる。
【0014】
生育時期調整のために施すこのオウトウの休眠延長方法は、休眠期に入ったオウトウの、特に自発休眠を覚醒した時期から、生育時期調整のために、冷蔵施設内において、生育時期調整に必要となるだけの休眠状態の延長を、その所望する期間に応じて所定条件の環境下、特に温・湿度を所定の範囲に設定、管理するようし、休眠後期で発芽前の生育過程の状態を、強制的に所望期間維持し続けさせる調節を必須とするものである。
【0015】
したがって、休眠への導入を良好に行うために、昼温と夜温を設定した上で徐々に温度を低下させたり、数日おきに冷蔵施設の温度を下げていくというような煩雑な繰作やプログラム機能等を装備した人工的な温度管理し、徐々に生育を速めていく従前の手段とは決定的な違いを有し、また、生育を遅らせることを志向して実施されている従前までの抑制栽培方法とも、調整するための手段を自発休眠覚醒後の時期に着目し、しかも、オウトウの商品価値を高めるという目的を達成可能とするためには、通常の生育よりも約半年間は生育を遅らせる必要があって、それ用に生育時期を6か月以上1年以内に掛けての長期間に渡る期間の調整を可能とするようにする点で根本的に思想を異にしている。
【0016】
即ち、冷蔵施設、特に雪室を利用して、オウトウの休眠状態を強制的に長期間維持することを特徴としており、オウトウの休眠状態を強制的に長期間維持するためには、期間の長短によって温度および湿度等の条件を設定するものであり、自発休眠覚醒後の休眠後期の時期から6か月以上休眠状態を維持して、特に年末から年始に掛けて収穫期を調節する必要のある場合であれば、−10ないし0℃の冷蔵施設内で貯蔵を行い、自発休眠覚醒後の時期から6か月以上1年以内の所望の収穫期に呼応させた適期に冷蔵施設外に出庫するとすれば、その出庫することとなる時期の1ないし2週間前からは0ないし5℃の温度で順化するという調整を必要としている。
【0017】
そして、冷蔵施設内の管理は、上記温度の外に、湿度を85%以上とする設定条件を必須とするものであって、その冷蔵施設として、降雪地帯における雪室は、構造的にも経済的にも最適な条件を達成できて最も適しているものということができるが、勿論、雪室ではなく、大掛かりな施設、設備になる嫌いのある人工な熱変換手段による冷蔵施設とすることもでき、その場合にも、同様に湿度85%以上の条件は必須の条件設定であって、厳密裡にそれが達成されるようにしなければならないのは言うまでもないことである。
【0018】
オウトウとしては、露地栽培で通常の生育過程を経て収穫を終えたものが対象になり、それらを用いて次の年の通常の収穫期の直後にまで収穫期を伸ばしたり、あるいはそれよりも更に遅らせて年末から2月頃に掛けての商品価値が極端に高騰する時期にまで遅らせるように調節できることは勿論のこと、一旦この発明の調節方法を実施し、年末から順次収穫を終えるように調節した後のオウトウ、即ち1年目をこの発明による調節をなした果樹であって、その同じ樹を2年目以降に渡って用いる場合の各年のオウトウについて適用可能とするものであり、オウトウの果樹は、須らく自発休眠覚醒後の期間が、上記したとおりの所定の環境下において所望する期間に渡って生育時期が調整されるようにするものであるが、このオウトウの休眠延長方法には、自発休眠を覚醒した時期から6か月以上1年以内の所望の期間内において生育時期を調整する方法と、自発休眠覚醒後の時期から6か月以内の所望の期間内において生育時期を調整する方法とが包含されている。
【0019】
先ず、その一つが、休眠期に入ったオウトウであって、自発休眠覚醒後で発芽前の果樹を用い、自発休眠を覚醒した時期から6か月以上1年以内の、延長しようとする所望の期間に渡って、温度を−10ないし5℃の範囲、湿度を85%以上の条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理し続ける中で、出庫する前の1ないし2週間を除く期間は−10ないし0℃で、出庫する前の1ないし2週間は0ないし5℃とする条件の下に管理、継続して所望する期間に渡って果樹が休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられるようにした上、その所望期間内の適期には、当該冷蔵施設内から出庫させて果樹の生育に適した加温環境もしくは露地条件の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにし、冷蔵施設内管理をして少なくとも自発休眠覚醒後の期間を延長調節した分だけ、開花・結実期が露地栽培によるものからずれるようにした構成からなる生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法がある。
【0020】
この休眠延長方法は、従来どおり露地栽培によって育成し続けてきた、所謂通常育成のオウトウ果樹であって、主に収穫時期を年末から2月頃に合わせて出荷タイミングが正月やバレンタインデーの贈答品等の対象となるようにして商品価値を高めようとする狙いに適合させるため、年末から2月頃にタイミングを合わせるために逆算して、通常生育の状態から6か月以上1年以内の期間に渡って生育時期を遅延、調整するようにしたものであり、したがって、生育時期調整の対象となる時期(6か月以上1年以内)からすれば、年末から2月頃に収穫できるように生育時期を延長して開花、結実させることだけに限定する訳ではなく、必要があるならば、その前後2ヶ月位の期間に渡る範囲内の所望の時期に合わせることができるだけの調整時期には当然巾がある。
【0021】
そして、もう一つの休眠延長方法が、休眠期に入ったオウトウであって、自発休眠覚醒後で発芽前の果樹を用い、その自発休眠を覚醒した時期から6か月以内の、延長しようとする所望の期間に渡って、温度を−10ないし5℃の範囲、湿度を85%以上の条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理し、所望する期間に渡って果樹が休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられるようにした上、その所望期間内の適期には、当該冷蔵施設内から出庫させて果樹の生育に適した加温環境もしくは露地条件の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにし、冷蔵施設内管理をして少なくとも自発休眠覚醒後の期間を延長調節した分だけ、開花・結実期が露地栽培によるものからずれるようにした、生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法がそれである。
【0022】
この休眠延長方法も、上記したものと同様に露地栽培によるオウトウ果樹を用いるものであって、収穫時期を通常のものよりも1ないし2ヶ月遅らせて、主に7月下旬から8月上旬に掛けての収穫ができるように調整して商品価値を高めようとする狙いに適合するもので、通常生育の状態から6か月以内の所望する最適な期間に渡って生育状態が滞るよう調整することにより、開花・結実期を遅らせて7月下旬から8月上旬に掛けての収穫が可能になるようにするものであり、この生育時期の調整においても、調整期間には当然巾があって、7月下旬から8月上旬に限定されている訳ではなく、その前後の適切な範囲内において生育時期の調整も可能になる。
【0023】
そして、残る最後の一つは、年末から順次収穫を終えるよう既に開花・結実期調節済みであり、予定どおり年末、年始に掛けての所望する時期に収穫を終えたオウトウであって、引き続き加温環境下で生育していて休眠期に移行させた果樹を用い、温度を−10ないし5℃の範囲、湿度を85%以上の条件下に設定してなる冷蔵施設内で管理している中、該冷蔵施設内において自発休眠を覚醒させるようにし、その自発休眠を覚醒した時期から6か月以内の、延長しようとする所望の期間内に渡って果樹が休眠後期で発芽前の生育過程のままに強制的に維持し続けられるようにした上、その所望期間内の適期には、当該冷蔵施設内から出庫させて果樹の生育に適した加温環境もしくは露地条件の下に置いて開花・結実期を迎えさせるようにし、冷蔵施設内管理をして少なくとも自発休眠覚醒後の期間を延長調節した分だけ、開花・結実期が露地栽培によるものからずれるようにする生育時期調整のために施すオウトウの休眠延長方法である。
【0024】
これは、上記二つの場合と対象とするオウトウの果樹が違ってきて、年末から順次収穫を終えるよう既に開花・結実期調節してあって、予定どおりに年末、年始に掛けて一度収穫を終えてしまったオウトウであって、そのまま引き続きハウスない等、加温環境下で生育を続けるようにしていって休眠期を迎えるようにした果樹を用い、再び、通常の露地栽培とは違って、主に年末から2月頃に掛けての収穫ができるように生育時期を調整して、開花・結実期がその収穫期に適合するようにするオウトウの休眠延長方法であって、当然、この休眠延長方法の場合にも、この方法を実施する中で、自発休眠を覚醒した時期から6か月以内の、適切な期間内において生育時期を延長、調整して、年末から2月頃以外の収穫期に適合するよう適切な開花・結実期に調節することができる。
以下、この発明を代表する実施例により、この発明のオウトウの休眠延長方法について、さらに具体的な説明を加えていくことにするが、勿論、この発明は、これらの実施例に限定されているものでないことは言うまでもないことである。
【0025】
【実施例1】
先ず、年末から年始、松の内を過ぎる辺りまででの収穫を実現する必要がある場合のオウトウの休眠延長方法であって、図1には、この実施例で実施するオウトウの休眠延長方法の、冷蔵施設で管理する期間および生育、収穫期間が示されている。
露地条件で管理してきたオウトウは、山形県の自然条件では、1月中下旬頃には既に落葉しており、自発休眠から覚醒した状態であって、その後は休眠後期に入り、環境条件が整えば発芽、生育を開始する状態となっている。この休眠後期のオウトウを、−10ないし0℃の冷蔵施設に直接搬入して氷結しない程度の温度に加温した水を設置し、その回りをビニル等で密閉することによって湿度を85%以上に保つようにする。この場合、冷蔵施設への搬入は、発芽が始まる3月下旬頃までに行えばよく、搬入に際しては順化のための温度操作等は不要である。
【0026】
−10ないし0℃の冷蔵施設で貯蔵したオウトウは、自発休眠覚醒後の時期から6か月以上1年以内に相当する所望の収穫期、即ち年末から年始で収穫する日に合わせて出庫することとなる日から逆算して1ないし2週間前に呼応する適期(9月下旬頃から)に0ないし5℃の温度で順化を行った上で、年末から年始で所望する収穫日に合わせた出庫予定日(10月上旬頃)に冷蔵施設から取り出した後、加温ハウス栽培の方法に準じて管理するようにすれば、希望する年末から年始、松の内を過ぎる辺りでの収穫、出荷ができるようになり、出庫の時期を選べば、2月中の収穫も可能であることを確認済みであり、バレンタインデーに合わせた商品化が現実のものとなる。
【0027】
【実施例2】
この実施例は、上記の年末から年始に掛けて収穫するのとは異なり、収穫時期を露地のものよりも1ないし2ヶ月程度遅らせるような調整を可能にするものであり、この間の、冷蔵施設で管理する期間および生育、収穫期間を、図2に示している。
即ち、上記実施例1同様、通常栽培による露地もので6ないし7月初旬頃に収穫した後も露地で生育していき、露地で休眠前期を迎えて自発休眠に移り、自然に自発休眠が覚醒するようにするもので、その自発休眠覚醒の時期は、1月中・下旬頃になる。
【0028】
こうして休眠後期に入ったオウトウを、発芽する前の3月頃までに、−10〜5℃(実用的には0〜5℃)、湿度85%以上に設定した冷蔵施設に入れるようするもので、この冷蔵施設に入れる時期は、発芽前の休眠後期の状態であればよく、所定の設定環境の冷蔵施設内において、6月上旬から中旬頃まで管理するようのにする。この場合も、温度のみならず、湿度の管理を怠りのないようにした後、6月上旬から中旬頃に掛けての適期に、所定環境とした冷蔵施設からそのまま露地に出し、露地で開花、結実させるように生育を続けると、望みどおり、露地ものから略1ヶ月から2ヶ月遅くなって、露地ものが終わった7月下旬から8月上旬頃に掛けての収穫を可能にするものである。
【0029】
【実施例3】
最後は、2年目以降に実施するこの発明によるオウトウの休眠延長方法について説明すると、実施例1によって通常の収穫期から収穫を調節し、12月下旬ないし1月中旬頃に収穫するように生育時期を調節して開花、結実期を人為的、強制的に遅らせた後のオウトウは、その後も加温ハウスで管理し、花芽が十分に形成される5月上旬頃に、湿度85%以上で0ないし5℃の冷蔵施設に直接搬入して低温に遭遇させる。
【0030】
0ないし5℃の冷蔵施設に搬入する場合、従来の方法では落葉前の状態で冷蔵施設に搬入し、冷蔵施設内の温度を徐々に低下させる等の操作によって自然に近い状態で落葉させて休眠状態に誘導するのに対し、この発明では、順化のための温度操作は不要であり、果樹の状態は、葉が着生した状態でも、落葉した状態でも、または、入庫前に強制的に葉をむしり取っても構わない。この段階におけるオウトウ果樹は、自発休眠には入っていない、所謂休眠前期の状態である。
【0031】
そして、冷蔵施設内で自発休眠に入った後、0ないし5℃に設定した低温環境に一定時間遭遇していると自発休眠から覚醒することになるが、その自発休眠覚醒の時期は、4月下旬から5月上旬頃に掛けて入庫した後の低温に遭遇する時間から計算して7月上・中旬頃になり、この状態で10月上旬頃に、実施例1におけるもののように、順化のための温度操作を行うこともなく、冷蔵施設から直接出して生育に都合のよい環境とした加温ハウスに移し、開花、結実するように生育させることにより、所望どおりに、前年に引き続き、露地ものから大幅に遅れて年末、年始に掛けての収穫をすることができ、出庫の時期をずらすようにすれば、実施例1の場合同様、2月中、適期での収穫も可能となることが判明している。
【0032】
これ以降は、同じ操作の繰り返しにより、毎年、同一のオウトウ果樹を使用して年末から年始に掛けての適期に収穫、出荷することが可能となる。
図1の工程図中、操作2年目、同3年目以降には、上記の実施例によって栽培した場合の、冷蔵施設で管理する期間および生育、収穫期間を表してある。
なお、実施例2のように、生育時期を調節して開花、結実期を人為的、強制的に遅らせ、収穫期を7月下旬から8月上旬頃にずれ込ませたものでも、略同様にして次年度以降の、この実施例における調整をする対象のオウトウ果樹とすることもできる。
【0033】
【発明の作用】
休眠状態を維持するための温度条件は、休眠を維持しようとする期間の長短によって2種類あり、即ち、自発休眠覚醒後の休眠後期の時期から6か月以内の休眠状態の維持を目的とする場合は、−10ないし5℃の温度を使用し、6か月以上の長期間にわたり休眠状態を維持する場合は、−10ないし0℃の温度を使用する。5℃以上では、休眠状態を維持する効果が低く、−10℃を下回る温度では不発芽や樹の枯死等の低温による障害が著しく多くなるからである。
なお、休眠状態におけいて、自発休眠を覚醒させるまでの生育状態は、図3に経時的に表した説明図で示してある。
【0034】
オウトウの乾操を防止する方法としては、0ないし5℃の揚合は、高湿度が維持される雪室を利用すれば特段の装置や操作を必要としないが、湿度が85%を下回るような冷蔵施設を使用しなければならないときは、加湿器等の設置により湿度を85%以上に保つようにする。
なお、0℃以下の温度では、水が氷結してしまって加湿器の利用は難しくなるため、貯蔵施設内をビニル等で密閉し、その内部に水を入れた容器を設置すると共に、容器内の水を電熱線で0℃以下にならない程度に加温したり、定期的に散水を行うようにしてその湿度を保持するようにしなければならない。
【0035】
0℃以上で休眠状態を維持している場合は、冷蔵施設から直接栽培条件に移行しても構わないが、0℃以下で休眠状態を維持している場合には、1ないし2週間程度の期間は、0ないし5℃の温度で順化した後、栽培条件に移行するようにする。
以下の表に、休眠状態を長期間維持するための環境条件を表す。
【0036】
【表1】


【0037】
【発明の効果】
以上のとおりの構成からなるこの発明のオウトウの休眠延長方法は、オウトウを休眠した状態のまま、1年間に渡って維持し続けることができ、その後、通常の加温ハウス栽培に準じた条件下で栽培管理することにより、品質の良好な果実や鉢物を生産できる技術を完成させたものであり この方法によれば、従来の方法に比べて数年も早く、オウトウして付加価値の高い時期の収穫、出荷をすることができるようになる上、同一の果樹を用い、煩雑な温度操作を行わなくとも、次の年の年末、年始やその前後の適期での収穫、出荷も可能とすることから、大幅な省力化や施設費用の低減化を果たしながらのオウトウ栽培によって、オウトウの付加価値を十分に高め、生産農家に通常栽培では得難い経済効果をもたらすことになると共に、消費者にとっては、クリスマスやお正月、バレンタインデー等に相応しい愛らしくて美味しいオウトウを食味することが可能となるという、これまでにはない秀れた特徴がもたらされることになる。
【0038】
特に、従来の方法では、収穫後4ないし5か月間生育させて花芽分化したオウトウを冷蔵施設内に搬入して、徐々に温度を低下させて休眠状態に誘導し、一定期間の低温に遭遇させて自発休眠覚醒時期を早めるため、高度な温度調節機能を有する冷蔵施設や煩雑な温度調節操作を必要とし、しかも、この従来方法の場合には、収穫時期を1ないし3か月程度しか早めることができないため、12月下旬ないし1月中旬頃の出荷を実現しようとすると数年もの期間を要し、技術的な負担だけではなくて経済的な負担も大きかったのに対して、実施例に取り上げたオウトウの休眠延長方法では、簡易な方法により、操作1年目にして年末から2月頃に掛けて確実な収穫、出荷を保証し、以降も同一の果樹で以って毎年継続して同時期での収穫、出荷を実現することができるものとなるから、収益性を大幅に向上させるという先の効果がなお一層確実なものとなる。
【0039】
また、雪室を冷蔵施設に利用する方法では、この発明のオウトウの休眠延長方法において、施設費用の低減化が図り易く、しかも大幅な省力化にも繋がるだけではなく、何よりもエコロジカルな手段によって技術を革新し、経済効果を上げることができ、雪資源の有効活用を目指す山形県の施策にも合致するものとなって、行政機関として大いに地域住民に貢献することになることから、行政効率を高めるという点で大きな効果が期待される。
【0040】
叙述の如く、この発明のオウトウの休眠延長方法は、その新規な構成によって所期の目的を普く達成可能とするものであり、農産物の自由化や産地間競争が激しくなる等、次第に悪化するオウトウ生産農家の生産体制を見直さなければならない時期に格好の対策となって生産者にとってはオウトウの付加価値を高める上で大いに役立つと共に、消費者にとっても、特別な時期にオウトウを賞味することができるという恩恵を享受することとなって、共に高く評価されることとなり、広範に普及、拡大していくものになることが予想される。
【図面の簡単な説明】
図面は、この発明のオウトウの休眠延長方法を説明するための代表的な幾つかの実施例に基づくものである。
【図1】実施例1、および実施例3に対応した冷蔵施設で管理する期間および生育時期調整期間を時系列で表した工程図である。
【図2】実施例2に対応した冷蔵施設で管理する期間および生育時期調整期間を時系列で表した工程図である。
【図3】オウトウの休眠状態における生育状態を経時的に表した説明図である。
【出願人】 【識別番号】593022021
【氏名又は名称】山形県
【出願日】 平成15年1月29日(2003.1.29)
【代理人】 【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實

【公開番号】 特開2004−229549(P2004−229549A)
【公開日】 平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願番号】 特願2003−21227(P2003−21227)