| 【発明の名称】 |
水稲のカドミウム吸収を抑制するための圃場処理法 |
| 【発明者】 |
【氏名】大森 博昭 【住所又は居所】新潟県西頸城郡青海町大字青海2209番地 電気化学工業株式会社青海工場内
【氏名】直川 拓司 【住所又は居所】新潟県西頸城郡青海町大字青海2209番地 電気化学工業株式会社青海工場内
|
| 【要約】 |
【課題】水稲栽培時には慣行の栽培管理としても、水稲のカドミウムの吸収量を減少させること。
【解決手段】水稲収穫後、石灰窒素および/または石灰窒素を含む資材を、石灰窒素として1ヘクタール当たり100〜400kgと、有機物を1ヘクタール当たり3〜30トン施用し、圃場に鋤き込み、その後速やかに、土壌が露出しない程度に圃場に水を張り、最低1ヶ月間湛水状態を保つことことを特徴とする水稲のカドミウム吸収を抑制する圃場処理法。特に、この圃場処理法において、有機物として、未熟有機物を使用することが好ましい。上記の圃場処理法を実施後、水稲栽培時にも、石灰窒素および/または石灰窒素を含む肥料を施用することが更に好ましい。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水稲収穫後、石灰窒素および/または石灰窒素を含む資材を、石灰窒素として1ヘクタール当たり100〜400kgと、有機物を1ヘクタール当たり3〜30トン施用し、圃場に鋤き込み、その後速やかに、土壌が露出しない程度に圃場に水を張り、最低1ヶ月間湛水状態を保つことを特徴とする水稲のカドミウム吸収を抑制する圃場処理法。 【請求項2】 有機物が、未熟有機物であることを特徴とする請求項1記載の圃場処理法。 【請求項3】 水稲栽培時に、石灰窒素および/または石灰窒素を含む肥料を更に施用することを特徴とする、請求項1又は2記載の圃場処理法を用いた水稲栽培法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、水稲のカドミウム吸収を抑制するための圃場処理法に関する。 【0002】 【従来の技術】 水稲栽培にあっては、土壌中の重金属、特にカドミウムの水稲への吸収防止が、米の汚染防止の観点から切に望まれており、種々の方法が試みられている。その一例として、汚染された表層土壌を取り除き、非汚染土壌を客土する方法がある。しかし、客土には莫大な費用がかかるうえ、多くの場合、表層25〜30cmまでを入れ替えるが、それよりも下層が汚染されている場合があり効果は一時的であり、除去した汚染土壌の処分も問題となる。あるいは、ようりんやケイカル等のアルカリ資材を多量に投入し、カドミウム吸収を抑制する方法がある。しかし、通常ケイ酸資材として投入される量である、1ヘクタール当り2〜3トン程度では顕著な効果が見られず、効果を発現させるためには1ヘクタール当り5〜50トンと、非常に多量に投入する必要があるため、作業が大がかりとなる。また、アルカリ資材の多投によるアルカリ効果のため、土壌中の有機態窒素が無機化しやすくなり、水稲の倒伏に繋がる可能性がある。さらには、資材中の重金属の影響が無視できなくなることによる二次汚染の危険性もはらんでいる。 【0003】 そこで、当発明者らは、窒素成分の溶出量が選ばれた石灰窒素の特定量を施用することにより、上記のような処理をすることなく、通常の栽培管理の範囲内で、水稲のカドミウムの吸収量を確実に減少させることを見いだした(特許文献1)。しかし、この方法を用いるためには、基肥として所定量の石灰窒素が入っている肥料を用いるか、基肥にわざわざ石灰窒素を調合する必要があり、作業が繁雑となる。また、石灰窒素の肥効の関係で、水稲の生育パターンが慣行とずれてくるため、栽培管理に気を配る必要があり、使用する側にも工夫が必要であった。 【0004】 【特許文献1】 特願2002−201325号明細書 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、上記のような手間を加えることなく、水稲栽培時には慣行の栽培管理としても、水稲のカドミウムの吸収量を確実に減少させ、米のカドミウム含有量を低減することにある。本発明の目的は、水稲収穫後、石灰窒素および有機物を施用し鋤き込み、その後速やかに、圃場に水を張ることで達成することができる。 【0006】 【課題を解決するための手段】 すなわち、本発明は、水稲収穫後、石灰窒素および/または石灰窒素を含む資材を、石灰窒素として1ヘクタール当たり100〜400kgと、有機物を1ヘクタール当たり3〜30トン施用し、圃場に鋤き込み、その後速やかに、土壌が露出しない程度に圃場に水を張り、最低1ヶ月間湛水状態を保つことを特徴とする水稲のカドミウム吸収を抑制する圃場処理法である。特に、この圃場処理法において、有機物として、未熟有機物を使用することが好ましい。さらに、上記の圃場処理法を実施後、水稲栽培時にも、石灰窒素および/または石灰窒素を含む肥料を更に施用することが好ましい。 【0007】 【発明の実施の形態】 以下、更に詳しく本発明について説明する。 【0008】 本発明で使用される石灰窒素および/または石灰窒素を含む資材としては、石灰窒素そのものを用いることができるし、石灰窒素に、ようりん、ケイカル等の土壌改良材を混合したもの、および、石灰窒素、ようりん、ケイカル等の混合物を、一般に知られた方法により造粒したものを用いることもできる。 【0009】 石灰窒素および/または石灰窒素を含む資材の施用量は、石灰窒素として1ヘクタール当たり100〜400kgとする。1ヘクタール当たり400kgをこえると、次作までに残存する窒素が無視できない量となるため、基肥の窒素量を抑えないと、水稲に対して窒素過剰となり倒伏しやすくなる。また、1ヘクタール当たり100kg未満であると、カドミウム吸収抑制効果は認められない。好ましい施用量は、1ヘクタール当たり200〜300kgである。 【0010】 また、本発明の圃場処理法において、鋤き込み後速やかに、土壌が露出しない程度に圃場に水を張り、最低1ヶ月間湛水状態を保つことによって、土壌を還元状態に置き、カドミウム等重金属の溶解度を低下させることができ、しかも石灰窒素のカドミウム吸収抑制効果の源であるシアナミドを圃場全体に行き渡らせることができる。湛水期間が1ヶ月未満だと、本発明の効果が不十分となる。湛水期間の上限については特に制限はないが、次作荒起こし作業時には一度水を落とす必要があるため、それまでの期間に規定される。実質最長で6ヶ月程度である。圃場に水を張る時期は、鋤き込み後できるだけ早いことが望ましく、またその方法としては、排水門を閉じて水を入れてためる、水を掛け流しとする、等を用いることができる。 【0011】 本発明における有機物としては、稲ワラ、籾殻、米ぬか、ふすま、刈草、落葉、牧草、畜糞、厩肥、堆肥等、通常田畑に施用される有機物なら全て用いることができる。特に、稲ワラ、籾殻、刈草、落葉等の未熟有機物を用いた方が、石灰窒素の有機物腐熟促進効果と相まって、土壌の還元化を促進し、カドミウムの吸収抑制効果をさらに高めることができるため好ましい。 【0012】 有機物の施用量は、1ヘクタール当たり3〜30トンとすることが好ましい。1ヘクタール当たり30トンをこえると、作業が煩雑となり、そのうえ、有機物の腐熟が不充分となり、次作において窒素飢餓を引き起こす可能性がある。1ヘクタール当たり3トン未満であると、カドミウム吸収抑制の促進効果は認められない。好ましい施用量は、1ヘクタール当たり5〜20トンである。 【0013】 以上の圃場処理法に加えて、水稲栽培時にも、石灰窒素および/または石灰窒素を含む肥料を施用することにより、基肥に石灰窒素を調合する必要がある、栽培管理が慣行とずれる等、留意する点はあるが、カドミウム吸収抑制効果を一段と高めることができる。石灰窒素および/または石灰窒素を含む肥料の施用量は、肥料成分として慣行の施用量に合わせればよい。 【0014】 【実施例】 以下、実施例、比較例をあげて更に具体的に本発明を説明する。 【0015】 実施例1〜4 比較例1〜7 プランター水稲栽培試験 プランター(18cm×60cm×16cm)に、水田土壌(細粒グライ台地土、全カドミウム含量0.29mg/kg)を入れ、秋施用、基肥を表1のとおりとし、その他は一般的に実施される栽培管理によって水稲栽培をした。栽培終了後の、玄米収量、精粒歩合、および玄米中のカドミウム含量を表1に示す。 【0016】 【表1】
【0017】 以上のとおり、秋施用を全くしなかった比較例1はもとより、比較例2〜4のように、石灰窒素施用、有機物(堆肥)施用、圃場湛水のどれか単独だけ、また、比較例5のように、石灰窒素と有機物(堆肥)を併用しただけとするよりも、実施例1のように、石灰窒素および有機物(堆肥)を施用し、1ヶ月間湛水状態とすると、玄米収量、精粒歩合が高まり、玄米中のカドミウム含量は減少した。圃場の湛水管理については、比較例6のように半月だと、湛水を行わない比較例5と同程度の成績となり、効果の向上は認められなかったが、実施例1,2のように1ヶ月以上湛水状態に保つと、玄米中のカドミウム含量が減少した。また、実施例3のように、有機物として未熟有機物である稲わらを用いたほうが、腐熟が進んだ堆肥を用いるよりも効果が高かった。さらに、実施例4のように、石灰窒素を基肥とすると、玄米収量がさらに高まり、玄米中のカドミウム含量はさらに減少した。また、比較例7の石灰窒素基肥のみの場合と比べても、玄米中のカドミウム含量は同程度以下となり、玄米収量は上昇した。 【0018】 【発明の効果】 本発明によれば、水稲栽培時には慣行の栽培管理としても、水稲のカドミウムの吸収量を確実に減少し、米のカドミウム含有量を低減することができる。また、副次的効果として、玄米収量および精粒歩合を高めることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000003296 【氏名又は名称】電気化学工業株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区有楽町1丁目4番1号
|
| 【出願日】 |
平成15年1月24日(2003.1.24) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2004−222622(P2004−222622A) |
| 【公開日】 |
平成16年8月12日(2004.8.12) |
| 【出願番号】 |
特願2003−15684(P2003−15684) |
|