| 【発明の名称】 |
無農薬桜桃の栽培方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】大塚 博美
|
| 【要約】 |
【課題】完全無農薬で安全な食品としてのサクランボを得ることを可能にする栽培方法を提供する。
【解決手段】桜桃の樹体に年間を通じ、適宜時期に農薬散布を行うことにより、樹体保持を図るとともに商品価値の高い果実を収穫することを可能とする桜桃の栽培方法であって、各々の桜桃生産地の自然環境が低温で、露地において病害虫が越冬している時期に桜桃が開花して結実するよう、休眠積算時間を計ってハウスにより桜桃の木を被覆し、ハウスを被覆する前および/または被覆した後に、ハウス内の落ち葉、枯れ枝、古樹皮、草等の菌類や越冬中の害虫等の病害虫の発生源となるものをハウス外に処分し、ハウスを被覆した後、萌芽前の葉のない桜桃の木に農薬を散布して病害虫を駆除し、萌芽以後、サクランボの収穫が完了するまでは、果実や木には農薬を一度も散布せずにサクランボを収穫することにより、残留農薬のまったくないサクランボを収穫することを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 桜桃の樹体に年間を通じ、適宜時期に農薬散布を行うことにより、樹体保持を図るとともに商品価値の高い果実を収穫することを可能とする桜桃の栽培方法であって、 各々の桜桃生産地の自然環境が低温で、露地において病害虫が越冬している時期に桜桃が開花して結実するよう、休眠積算時間を計ってハウスにより桜桃の木を被覆し、 ハウスを被覆する前および/または被覆した後に、ハウス内の落ち葉、枯れ枝、古樹皮、草等の菌類や越冬中の害虫等の病害虫の発生源となるものをハウス外に処分し、 ハウスを被覆した後、萌芽前の葉のない桜桃の木に農薬を散布して病害虫を駆除し、 萌芽以後、サクランボの収穫が完了するまでは、果実や木には農薬を一度も散布せずにサクランボを収穫することにより、残留農薬のまったくないサクランボを収穫することを特徴とする無農薬桜桃の栽培方法。 【請求項2】 桜桃の木をコンテナに植え、コンテナごと桜桃の木を冷蔵庫に収容し、一定期間、桜桃の木を冷蔵して休眠積算温度が経過した後、ハウス内にコンテナごと桜桃の木を移し、開花、結実させることによりサクランボを収穫するコンテナ栽培による桜桃の栽培方法であって、 コンテナごと桜桃の木を冷蔵庫から出した後、コンテナに植えられた桜桃の木を消毒するとともに、コンテナおよび桜桃の木に付着する落ち葉、枯れ枝、古樹皮等の病害虫の発生源となるものを処分して栽培することを特徴とする請求項1記載の無農薬桜桃の栽培方法。 【請求項3】 コンテナごと桜桃の木を冷蔵庫に収容して休眠を開始する時期を、長野県の気候で11月から 3月までの間に開花する時期に設定し、 桜桃の果実の収穫時期を1月から5月までとすることを特徴とする請求項2記載の無農薬桜桃の栽培方法。 【請求項4】 休眠期間を経過した地植えの桜桃の木にハウスを被覆し、露地栽培よりも早い時期にサクランボを収穫する桜桃の栽培方法であって、 桜桃の木をハウスにより被覆する時期を、長野県の気候で1月から3月までの間に開花する時期に設定し、 桜桃の果実の収穫時期を3月から5月までとすることを特徴とする請求項1記載の無農薬桜桃の栽培方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は無農薬桜桃の栽培方法に関し、より詳細には残留農薬がない安全な桜桃の果実を収穫することを可能にする無農薬桜桃の栽培方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 果樹栽培においては、病害虫の防除を目的として農薬を散布することは常法であり、年間に何度も農薬を散布して栽培されている。果樹は野菜等のように生育途中で収穫する作物とは異なり、永年作物であるために、樹体の保持が重要であり、消毒しないで放置しておくと、樹体が枯死してしまったり、商品価値の高い果実が得られなくなったりするからである。 長野県においては葡萄、桃等の防除基準として、年間に、葡萄では9回、桃では13回、リンゴでは14回、梨では15回、桜桃では8回の農薬散布を行うことが指導されている。表1は長野県における桜桃の露地栽培での農薬散布の基準を示す。 【0003】 【表1】
【0004】 表1に示す防除基準は、長野県の気候に合わせて決められているものであり、地域によって農薬散布時期は異なり、病害虫の種類もさまざまであることから使用する農薬も異なってくる。たとえば、サクランボの害虫には、オウトウショウジョウバエといったきわめて小さな害虫がある。この害虫はサクランボに卵を産み付けて繁殖するもので、オウトウショウジョウバエが活発に活動して繁殖しはじめるとサクランボに被害が発生するから、病害虫が発生しはじめたら農薬を散布してサクランボに被害が発生しないようにする。現在の果樹栽培では、このように病害虫の防除・駆除を前提として農薬を散布することが常法として定着している。前述した防除基準も、病害虫が発生することを前提とし、これに備えることを目的として示されているものである。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 桜桃栽培では開花後、結実して収穫するまでに最低6回程度は農薬散布が必要である。このように何回も農薬を散布するのは、外気温が高くなるとともに病原菌や害虫類が発生して活発に活動しはじめるから、その発生を未然に防止するため、あるいは発生状態に応じて適宜駆除する必要があるからである。もちろん、サクランボの見栄え等を問題にしない場合には農薬散布を控えても構わないが、商品として提供する場合には、病害虫による被害を抑えて商品価値のあるサクランボを一定量収穫するために、従来の栽培方法では農薬散布が必須の作業となっている。 【0006】 ところで、露地栽培ではなくハウス栽培による場合は、年間をとおして農薬散布する回数が露地栽培よりも多くなる。ハウス栽培の場合はハウス内の温度が必然的に高温になるから、ハウス内に存在しているダニ類や灰星菌といった菌類、オウトウショウジョウバエ等の害虫が発生しやすくなること、ハウス栽培の場合は、露地栽培よりも早くサクランボを収穫するから、収穫後、翌年までの期間が長くなり、この期間には外気温が高温になってダニ類(乾燥、高温を好む)が発生しやすくなるといったことから、何回も農薬散布をしなければならなくなるからである。 したがって、ハウス栽培においては露地栽培における病害虫防除基準よりもさらに多数回の農薬散布を行っているのが現状である。 【0007】 桜桃栽培に限らず果樹栽培では、このように多数回の農薬散布を行って果実を収穫することがあたりまえの方法として行われている。このため、収穫した果実には必然的に農薬が残留することとなる。このため、残留農薬によって健康が害されることがないよう、安全基準として使用できる農薬が制限されている。しかしながら、使用されている農薬は安全基準を満たすものであるとしても、食品に農薬が残留していることは無農薬食品とくらべると安全性の点で差があり、商品価値の点においても大きな相違がある。 【0008】 近年は、多くの外国産の食品が提供されるようになっていることから、食品の安全性について消費者の注意が払われるようになってきており、無農薬食品は商品価値、安全性の点からも消費者の要望がきわめて高いものとなっている。 りんご、梨、桃等では皮をむいて食することが普通であるが、サクランボは表皮ごと実を食するから、無農薬とする価値が高い商品となる。 本発明者は、これら無農薬食品に対する要望の高さに鑑みて本発明をなしたものであり、本発明は、残留農薬のない安全な桜桃の果実(サクランボ)を収穫することを可能とする桜桃の栽培方法を提供することを目的とするものである。 【0009】 【課題を解決するための手段】 本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。 すなわち、桜桃の樹体に年間を通じ、適宜時期に農薬散布を行うことにより、樹体保持を図るとともに商品価値の高い果実を収穫することを可能とする桜桃の栽培方法であって、各々の桜桃生産地の自然環境が低温で、露地において病害虫が越冬している時期に桜桃が開花して結実するよう、休眠積算時間を計ってハウスにより桜桃の木を被覆し、ハウスを被覆する前および/または被覆した後に、ハウス内の落ち葉、枯れ枝、古樹皮、草等の菌類や越冬中の害虫等の病害虫の発生源となるものをハウス外に処分し、ハウスを被覆した後、萌芽前の葉のない桜桃の木に農薬を散布して病害虫を駆除し、萌芽以後、サクランボの収穫が完了するまでは、果実や木には農薬を一度も散布せずにサクランボを収穫することにより、残留農薬のまったくないサクランボを収穫することを特徴とする。 【0010】 また、桜桃の木をコンテナに植え、コンテナごと桜桃の木を冷蔵庫に収容し、一定期間、桜桃の木を冷蔵して休眠積算温度が経過した後、ハウス内にコンテナごと桜桃の木を移し、開花、結実させることによりサクランボを収穫するコンテナ栽培による桜桃の栽培方法であって、コンテナごと桜桃の木を冷蔵庫から出した後、コンテナに植えられた桜桃の木を消毒するとともに、コンテナおよび桜桃の木に付着する落ち葉、枯れ枝、古樹皮等の病害虫の発生源となるものを処分して栽培することを特徴とする。 また、前記コンテナ栽培において、コンテナごと桜桃の木を冷蔵庫に収容して休眠を開始する時期を、長野県の気候で11月から3月までの間に開花する時期に設定し、桜桃の果実の収穫時期を1月から5月までとすることを特徴とする。 また、休眠期間を経過した地植えの桜桃の木にハウスを被覆し、露地栽培よりも早い時期にサクランボを収穫する桜桃の栽培方法であって、桜桃の木をハウスにより被覆する時期を、長野県の気候で1月から3月までの間に開花する時期に設定し、桜桃の果実の収穫時期を3月から5月までとすることを特徴とする。 【0011】 【発明の概要】 本発明に係る桜桃の栽培方法は、地植え加温栽培ハウスあるいはコンテナ栽培を利用し、露地において病害虫が越冬している時期に桜桃が開花して結実するように桜桃の木の開花、結実時期を調節することにより、萌芽後、サクランボを収穫するまでの期間において農薬を散布せずにサクランボを収穫するという考え方に基づく。 すなわち、地植え加温栽培ハウスやコンテナ栽培においては、戸外が低温でもハウス内は温められて季節が進んだ状態にあり、露地よりも早く開花してサクランボが結実するようにハウス内の環境が制御される。 ここで、ハウスは換気等によって戸外と連絡しているから、戸外からハウス内に病害虫が侵入してくることは可能である。しかしながら、産地の自然環境が低温で病害虫が越冬している時期であれば、病害虫は活発に活動できないから、ハウス内に病害虫が侵入することが抑制されるし、仮にハウス内に病害虫が侵入するとしても、侵入する病害虫の数は少ないから、ハウス内で世代交代して繁殖したとしても被害を十分に抑制することができる。したがって、このような時期に開花させ結実させれば、病害虫による被害が受けにくくなり、農薬を散布等することなくサクランボを収穫することが可能になる。本発明に係る桜桃の栽培方法は、このような桜桃生産地の自然環境を考慮して開花時期を調節し、結実させることで残留農薬のないサクランボを収穫するものである。 【0012】 たとえば、長野県の気候を基準にすると、桜桃の開花時期が11月から3月までで、サクランボの収穫時期が1月から5月のものであれば、サクランボを病害虫から護ることができ、萌芽後、サクランボを収穫する時期までの間に、一切、病害虫を防除する農薬を散布することなくサクランボを収穫することが可能である。これによって残留農薬がまったくないサクランボを収穫することができる。 長野県以外で栽培する場合は、その桜桃生産地での気候条件(自然環境)に合わせて開花時期を設定する。暖地では病害虫は11月といった遅い時期まで活動していることがあり、また年初の早い時期から活動が活発化するから、本発明の栽培方法によるサクランボの収穫期は2月〜3月の期間といったように、寒冷地にくらべて短くなる。 【0013】 桜桃栽培ではサクランボの傷みといったことが品質上、最も問題となるのであるが、収穫されたサクランボの品質が問題になるのは、ハウス内でダニが大量発生したり、害虫が活動に活発して繁殖を繰り返す状態になるといった場合である。すなわち、商品としてのサクランボに被害が発生するのは、ダニが大量発生したり、害虫が短い期間で世代交代して繁殖数が増大してきた場合である。このような状態になった場合には、サクランボの品質に大きな影響が及ぶから、農薬を散布して病害虫を駆除することになる。桜桃栽培に限らず、従来の果樹栽培においては、このような病害虫の被害が発生することを予測して農薬を散布し、病害虫の防除・駆除を行うことをその栽培方法の前提としている。したがって、その年の気候や作物の生長度合いに応じて、適時に農薬を散布している。 【0014】 本発明に係る桜桃栽培方法において、農薬がまったく残留しないサクランボが収穫できるのは、病害虫による影響がサクランボに及ばない期間、すなわち病害虫の活動が抑制される越冬期に桜桃を開花させ、結実させるようにするからである。このため、本栽培方法では露地栽培よりも早い時期に桜桃を開花させる必要がある。地植え加温栽培ハウスあるいはコンテナ栽培を利用するのはそのためである。 病害虫は気温が上昇するとともに一気に活動が活発化する一方、夜間気温が低い日があったりすると、活動をまったく停止するという性質がある。すなわち、病害虫は繁殖できて子孫が残せる自然条件にならないと活動を活発化しない。したがって、病害虫が活発に活動しない時期に開花・結実させれば病害虫を駆除するための農薬散布を行う必要はなくなる。前述したように、ハウスは外部(露地)と連絡しているから、ハウス内に病害虫が侵入することはあり得るが、病害虫の活動が活発化していない時期であれば、繁殖にいたる前にサクランボを収穫することができ、その間に農薬を散布する必要はない。 【0015】 なお、ハウス内は露地より気温が高い状態になってくるから、ハウス内の気温が上昇するとともに、ハウス内は戸外と違って病害虫が繁殖しやすい環境になっていく。したがって、事前にハウス内を病害虫が発生しにくい環境に整備しておくことは重要である。 本発明において、ハウスを被覆する前および/または被覆した後に、ハウス内の落ち葉、枯れ枝、古樹皮、草等の菌類の病気や越冬中の害虫等の病害虫の発生源となるものをハウス外に処分するようにしているのは、ハウス内の環境をハウス内からできるだけ病害虫が発生しない環境とするためである。ハウス内の消毒をしっかり行うこと、桜桃の木を植えたコンテナ等にも病害虫が付着してハウス内に運び込まれないように十分注意してハウス内を清浄な環境にする必要がある。このように、ハウス内の環境を少なくともハウス内からは病害虫が発生しにくい環境とすることで、はじめて無農薬のサクランボを収穫することが可能となる。 【0016】 本発明において、萌芽後、サクランボを収穫するまでの間に農薬を一切散布せずに良品のサクランボを収穫することが可能であるのは、桜桃が開花から収穫までの期間が約2か月と短い作物であることもその理由である。開花後収穫までに半年以上といった長期間を要する作物の場合には、いくら早く開花させたとしても、収穫時期までには、害虫が活発に活動する期間と重なってくるから、開花後収穫までの期間に農薬を使用しない、といったことは実際上、不可能である。 本発明に係る桜桃の栽培方法では、開花後、病害虫の被害をなるべく受けないようにするため、開花後短期間のうちに収穫できる品種、たとえば、ハウスでの加温栽培に適し、開花から収穫までの期間が2ヶ月程度である「高砂」(品種名)が適している。 【0017】 (地植え加温栽培ハウスによる栽培方法) 地植え加温栽培ハウスとは、休眠期間を経過した地植えの桜桃の木にハウスをかけ、露地栽培よりも早くサクランボを収穫して出荷する栽培方法である。 桜桃が開花して結実するためには、桜桃の木が一定の温度以下に冷却されて休眠する必要があり、結実に必要な一定の休眠期間を経過する必要がある。休眠積算温度とは、桜桃の木が休眠している温度とその期間(時間)とを積算したもので、結実するためにはこの休眠積算温度が一定以上になる必要がある。休眠積算温度は温度と期間(時間)との積であるから、気温が大きく下がる寒冷地であれば、早く休眠期間があけることになる。したがって、その年の天候等によって早く休眠期間があければ、ハウスを早く被覆することができて早く収穫することができる。 【0018】 長野県の気候を基準とした場合、地植え加温栽培ハウスによる場合は、3月から5月までであれば無農薬のサクランボを収穫することが可能である。地植え加温栽培ハウスによる栽培方法は、上述したように、自然条件で桜桃の木が休眠あけをした時期をみてハウスを被覆するから、コンテナ栽培による桜桃の栽培方法にくらべてサクランボの出荷時期は遅くなる。 【0019】 地植え加温栽培ハウスによる場合は、休眠期間が経過した後、ハウスをかける前に、まず、病害虫の発生源となる園地の枯れ枝、落ち葉、草をきれいに処分し、次いで、桜桃の木に農薬(石灰硫黄合剤)を散布する。この期間における農薬の散布は、落葉している間(休眠期)に、木に付着している病原菌の消毒、害虫(卵やさなぎなど)の駆除を目的とするものである。ダニおよび菌類は、圃場から発生することがほとんどであるから、これらの発生を極力抑えるように、前年度のうちから圃場をできるだけきれいに管理することが重要である。また、木等にさなぎなどの状態で付着している害虫も、ハウスをかけて加温されると害虫として発生してくるから圃場外に処分する。 【0020】 ハウスを被覆した後、2、3週間経過してハウス内が徐々に暖かくなって(20℃程度)きた時期に、害虫の防除を目的として殺虫剤(たとえば、マシン油)を散布する。この時期は、害虫は動き出すが、桜桃の芽はまだ動かない時期にあたっている。 次いで、萌芽直前に殺ダニ剤と殺菌剤と殺虫剤を散布する。萌芽直前に農薬を散布した後は、サクランボの収穫が終了するまでは一切、農薬を散布しない。開花後、2か月程度で結実してサクランボの実がなるから、収穫して出荷する。萌芽後、収穫までの期間内には農薬を散布しないから、完全に無農薬の状態のサクランボを収穫することができる。 【0021】 サクランボを収穫した後は、随時、殺ダニ剤や殺虫剤等の農薬を散布して病害虫が発生しないようにする。 なお、ハウス栽培では、ダニ類の世代交代を遅くするため、ハウス内の温度を栽培ステージにおける基準温度よりも絶対に高くしないで、低い温度で栽培管理することが重要である。とくにハウス内の上部には高温になるとダニが大量に発生するから、ダニの大量発生には十分に気を付けて、換気を十分に行う必要がある。 【0022】 (コンテナによる栽培方法) コンテナ栽培とは、桜桃の木をコンテナに植えておき、コンテナごと桜桃の木を冷蔵庫に収容して、一定期間、木を冷蔵し、所要の休眠積算温度が経過したところで、加温用のハウスにコンテナごと桜桃の木を移し、加温して、開花、結実させ、サクランボを収穫する方法である。 このコンテナ栽培では、まず、桜桃の木が植えられているコンテナを冷蔵庫に収容する際に、コンテナおよび桜桃の木に殺菌剤、殺虫剤を散布して、コンテナおよび木ともに病害虫がない状態として冷蔵庫に収容する。 【0023】 冷蔵庫内でコンテナと桜桃の木を冷蔵して、所要の休眠積算温度が得られた後、冷蔵庫からコンテナごと桜桃の木を取り出し、ハウスに収容する前に、コンテナおよび木に病害虫を駆除する農薬(石灰硫黄合剤)を散布する。また、ハウスに収容する前に、コンテナ内および木に付いている落ち葉、枯れ枝、古樹皮等の病害虫の発生源となるものを取り除く。 次いで、コンテナごと木をハウスに入れ、萌芽前に害虫駆除の農薬(マシン油)を散布し、次いで、萌芽直前に殺ダニ剤と殺菌剤と殺虫剤を散布する。 なお、コンテナを収容するハウス内は、病害虫の発生源となる枯れ枝、落ち葉、草を事前にきれいに処分しておき、ダニや病害虫がいない状態として、コンテナを収容する。 この後、開花、結実させるが、開花後、サクランボを収穫するまでは一切、農薬を散布せずに経過させる。こうして、完全に無農薬のサクランボを収穫することができる。なお、収穫時期までに青虫などの害虫が発見されたときは、人手でつかまえて処分する。 【0024】 このコンテナ栽培の場合は、冷蔵庫にコンテナごと桜桃の木を収容する際に、事前にコンテナおよび桜桃の木を消毒して、病害虫を冷蔵庫内に持ち込まないようにすること、冷蔵庫からコンテナごと桜桃の木を取り出してハウスに収容する際にも、病害虫がコンテナや桜桃の木に付着していないように注意して処分し、消毒しておくことによって、地植え加温栽培ハウスによる場合よりも病害虫の発生を確実に防止することができる。これによって、より確実な無農薬桜桃の栽培が可能となる。 桜桃の木を矮化樹としておくと、農薬散布や害虫の駆除が容易にでき、コンテナによる管理が容易にできるという利点がある。 なお、長野県の気候を基準とした場合、コンテナ栽培の方法であれば、1月から5月まで無農薬桜桃の栽培が可能である。 【0025】 (菌類の防除について) 菌類の病気を予防するには、地植え加温栽培ハウスの場合もコンテナ栽培の場合も、ハウス内の湿度を下げる方法が最も有効である。冬の期間は換気が非常に重要で、1日1回以上の換気をするようにする。 また、ハウスの被覆フィルムやカーテンは、新品で流滴性の良い製品を使用する。これは、ハウスの内側に付着した水滴がじかにサクランボの上に落下しないようにするためである。フィルムの内側に付着した水滴は病気の発生源となり、じかにサクランボの上に落下すると、その部位から傷んでしまう。湿度を下げるために、地面にカーテンフィルムの古いものを敷き詰めると、地温の上昇にも効果があり良い方法である。カーテンも勾配の強い傾斜張りとし、水滴が木の上に落ちないように管理するのがよい。 【0026】 (ダニ類の防除について) ダニ類は土の中で越冬する種類もあるので、コンテナ栽培の場合には、発生源となるコンテナの周辺や木にダニが棲息していないように、冷蔵庫にコンテナを収容する前から、完全に防除するようにするのがよい。 地植え加温栽培ハウスの場合は、前年度の栽培時にダニが大量発生しないように管理しておく必要がある。 【0027】 (栽培の適地について) コンテナ栽培は、長野県よりも南の太平洋側の暖地で、冬の時期に天気の良い乾燥地帯であって、地植え栽培では冬期の温度が高く休眠積算温度が不足で結実を確保することが難しい地方が栽培適地である。たとえば、愛媛、高知、和歌山、静岡等の地方がこのコンテナ栽培に適する。なお、コンテナ栽培方法については、桜桃周年栽培方法(特許2710259号)の技術を利用することができる。 地植え加温栽培ハウスによる栽培方法は、長野県の中部のように、冬の寒さがあり、休眠あけが早く、冬季の日照時間が長い地域が適している。 【0028】 【実施例】 (コンテナ栽培による無農薬桜桃の栽培方法) コンテナ栽培によってサクランボを無農薬で収穫する場合の栽培例について説明する。 サクランボを3月に出荷した後、7月まで養成した桜桃の木を8月から冷蔵庫に入れて休眠操作を行う。コンテナごと桜桃の木を冷蔵庫に収容する際には、前述したように、コンテナや桜桃の木にダニや菌が付着していないように消毒して冷蔵庫に収容する。休眠操作は、徐々に冷蔵庫の庫内温度を下げていきながら、所要の休眠積算温度が得られるようにする。 【0029】 12月にコンテナごと冷蔵庫から出し、すぐに石灰硫黄合剤10倍液を散布して、ハウスに配置する。ハウスに配置した後、約二週間経過した頃にマシン油100倍液を散布する。ハウス内にコンテナを配置した後、20日前後で萌芽直前になる。この時期に殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤の混合液の1000〜2000倍液を散布する。これ以後、サクランボを収穫するまでは一切、消毒を行わない。 【0030】 1月の上旬になると開花がはじまるので、人工授粉を行い、1月下旬から摘果をはじめて2月中旬に葉切り仕上げ摘果する。これによって、3月の初めからサクランボの収穫がはじまる。 なお、栽培基準温度よりも高い温度で管理すること、冷蔵庫の休眠操作温度が異なると、サクランボの収穫時期が若干違ってくる。サクランボの収穫が完了した後は、園地の木の状態を良く見て、必要な農薬を適宜散布する。 上記栽培例は3月にサクランボを出荷する例であるが、2月出荷、1月出荷の場合は、それぞれ、冷蔵庫に入れる時期を1か月ずつ早め、休眠開始時期を早めるようにする。 【0031】 (地植え加温栽培ハウスによる無農薬桜桃の栽培方法) 地植え加温栽培ハウスによる無農薬桜桃の栽培方法により、サクランボを無農薬で収穫する栽培例について説明する。 桜桃の木にハウスを被覆する前に、石灰硫黄合剤10倍液を散布し、1月の上旬にハウスをかける。ハウスを被覆した後、3週間程度経過した時期にマシン油50倍液を散布する。萌芽直前になったら、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤の混合液1000〜2000倍液を散布する。前年にダニが多く発生した園地の場合は、ダニ剤のみの散布を1回余計にする。 【0032】 2月の中旬になると、開花がはじまるので、人工授粉を行い、3月の中旬から摘果をはじめ、4月上旬に葉切り仕上げ摘果をする。これによって4月の中旬頃からサクランボの収穫がはじまる。なお、栽培基準温度よりも高い温度で管理したり、その年の休眠積算時間が異なると、サクランボの収穫時期が若干違ってくる。地植え加温栽培ハウスによる栽培の場合は、ダニ類の農薬散布が非常に大切で、サクランボを収穫した後、すぐに殺ダニ剤を散布する。また、園地の木の状態を良く見て、必要な農薬を適宜散布する。 【0033】 【発明の効果】 本発明に係る無農薬桜桃の栽培方法によれば、上述したように、残留農薬の無いサクランボを収穫することが可能となり、これによってきわめて商品価値が高いとともに、安全な食品としてのサクランボを提供することが可能となる。とくに、本発明に係る無農薬桜桃の栽培方法は、開花後、サクランボを収穫するまでの期間内においてはまったく農薬を使用しないことから、完全無農薬であることが特徴である。また、本栽培方法によれば、露地栽培品にくらべて収穫・出荷時期が早く、この点においても商品価値の高いサクランボとして提供することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】392008079 【氏名又は名称】大塚 博美
|
| 【出願日】 |
平成15年1月21日(2003.1.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077621 【弁理士】 【氏名又は名称】綿貫 隆夫
【識別番号】100092819 【弁理士】 【氏名又は名称】堀米 和春
|
| 【公開番号】 |
特開2004−222553(P2004−222553A) |
| 【公開日】 |
平成16年8月12日(2004.8.12) |
| 【出願番号】 |
特願2003−12121(P2003−12121) |
|