| 【発明の名称】 |
農園芸作物栽培方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】中嶋 止
|
| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】防草性、防水性、通気性を有するマルチシート(例えば、明色フィルム層と暗色層を積層した農業用マルチシート)で農園芸用土壌を被覆し、点滴灌水によって灌水するとともに、必要に応じてミネラル剤及び/又は超微量ミネラル剤(例えば、中国産の高セレン含有苦汁(ニガリ))を灌水すること、を特徴とする農園芸作物の栽培方法が提供される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 防草性、防水性及び通気性を有するマルチシートで農園芸用の土壌を被覆し、点滴灌水によって灌水すること、を特徴とする農園芸作物の栽培方法。 【請求項2】 更に、ミネラル及び/又は超微量ミネラルを施用すること、を特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項3】 超微量ミネラルとして苦汁(ニガリ)を使用すること、を特徴とする請求項2に記載の方法。 【請求項4】 マルチシートとして、複数の材料層が積層されてなり、明色フィルム層と暗色層を備えてなる農園芸用マルチシートを使用すること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 【請求項5】 明色フィルム層が通気性を有するプラスチックフィルム層であり、暗色層が合成樹脂繊維を主材料とし暗色を呈する暗色不織布層であること、を特徴とする請求項4に記載の方法。 【請求項6】 マルチシートとして、次のような農園芸用マルチシートを使用すること、を特徴とする請求項4又は5に記載の方法: 園芸用の土壌を覆って使用されるマルチシートであって、 複数の材料層が積層されてなり、 使用時に前記土壌側の表面に配置され、スパンボンド紡糸法により得られ、合成樹脂繊維を主材料とし、暗色を呈する暗色不織布層と、 前記不織布層と反対側の表面に配置され、透湿性を有するポリオレフィンフィルムからなり、明色を呈する明色フィルム層とを備える農園芸用マルチシート。 【請求項7】 前記暗色不織布層が黒色であり、前記明色フィルム層が白色である農園芸用マルチシートを使用すること、を特徴とする請求項5又は6に記載の方法。 【請求項8】 更に、防虫ネットを使用して栽培を実施すること、を特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。 【請求項9】 請求項1〜8の何れか1項において、多量必須要素(窒素、リン酸、カリ)、微量要素(ミネラル)、超微量要素(超微量ミネラル)のバランスが調整されるよう肥培管理を行うことにより、農園芸作物を健全に栽培すること、を特徴とする農薬を使用することなく植物栄養学的方法によって、雑草、病害、虫害の少くともひとつを防除しながら農園芸作物を栽培する方法。 【請求項10】 ミネラル及び/又は超微量ミネラルを必要時に更に葉面散布すること、を特徴とする請求項9に記載の方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、農園芸作物を栽培する方法に関するものであって、本栽培方法によれば、除草剤のほか、殺菌剤や殺虫剤等の農薬を使用することなくあるいはその使用量を大幅に低減し、しかも農園芸作物を健全に栽培して、その収穫量を増加せしめ、且つ収穫物の品質を向上せしめることもでき、農業の省力化も達成可能である。 また、本発明は、植物栄養成分、特に微量要素(ミネラル)及び/又は超微量要素(超微量ミネラル)を施用してこれらのバランスを調整した肥培管理をすることにより、農園芸作物を健全に栽培してその生命力(動物における免疫力)を高め、農薬を使用することなく雑草や病虫害を防除しながら農園芸作物を栽培する新しいシステムを提供するものであって、農薬に依存している現代の農業を根本的に変革せしめ、完全無農薬栽培も視野に入れた新しいシステムを提供するものである。 【0002】 【従来の技術】 農園芸の分野において、マルチシートが多用されるようになり、例えば、作物の周囲の土壌の浸食を防止したり、雑草の繁殖を防止したりする目的で、黒色のポリエチレンフィルムが使用されている。しかしながら、黒色フィルムからなるマルチシートは、太陽光線を吸収してしまうため、果実の下面側に太陽光線が十分に当たらず、色付きや成育が悪くなるという問題がある。そこで白色フィルムを使用すると、雑草の繁殖防止効果が低減してしまうという問題が発生してしまう。 【0003】 これらの問題点を解決するため、防草性、防水性及び通気性を有する新規マルチシートが開発された(例えば、特許文献1参照)。このマルチシートは、園芸用の土壌を覆って使用されるマルチシートであって、複数の材料層が積層されてなり、使用時に前記土壌側の表面に配置され、スパンボンド紡糸法により得られ、合成樹脂繊維を主材料とし、暗色を呈する暗色不織布層と、前記不織布層と反対側の表面に配置され、透湿性を有するポリオレフィンフィルムからなり、明色を呈する明色フィルム層とを備えるものであって、雑草の繁殖を防止し、雨水等は通さないが、空気、ガス、水蒸気等は通す性質(通気性ないし透湿性)を有するという特徴を有する。 【0004】 【特許文献1】 特開2002−119151号公報 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 上記した新規マルチシート(以下、白黒マルチということもある)は、防草性、防水性、通気性にすぐれており、これを用いて作物の周囲の土壌を被覆して作物の栽培を行うと、除草剤を使用することなく(もちろん手作業による雑草取りなど必要なく)作物を栽培できる点ですぐれている。 【0006】 本発明は、上記した白黒マルチの利点を生かし、更に白黒マルチを用いる栽培方法を発展させて、農薬を使用することなくないしはその使用量を低減させて、一層の省力化、栽培効率の向上、作物の成長促進、収穫物の増加と品質向上を達成する目的でなされたものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明者は上記目的を達成するために各方面から鋭意研究、検討を行い、遂に上記目的を達成するのに成功したものであって、本発明は、防草性、防水性、通気性を有するマルチシートで農園芸用の土壌を覆い、点滴灌水によって灌水し、農園芸作物を栽培する方法に関するものである。 以下、本発明について詳述する。 【0008】 本発明を実施するには、防草性、防水性、通気性(透湿性)を有するマルチシートで農園芸用の土壌を覆い、農園芸用作物を栽培するのであるが、その際、マルチシートとして防草性、防水性、通気性を有するマルチシートを使用するとともに、点滴灌水によって灌水することが必要である。 【0009】 通常の散水、スプリンクラーによる散水、雨水等による灌水は、土壌が固化し、通水性、通気性が劣化するため、好ましくない。点滴灌水は、点滴灌水パイプを配置し、マニュアル操作によって弁を開閉して灌水できるほか、自動化した装置によって灌水することも可能であり、市販されている各種自動灌水装置が適宜使用可能である。通常は、水の適量を灌水するだけで充分に作物の栽培が可能であるが、所望に応じて、液体肥料、ミネラル、超微量ミネラルを添加して灌水することもできる。 【0010】 本発明において、マルチシートの使用方法は、通常の農業用マルチシートの場合と同様であるが、防草性、防水性、通気性を有するマルチシートを使用することが必要である。本発明において、マルチシートとしては、少なくとも上記した3種の特質を併有する農業用マルチシートであればすべてのものが使用可能であって、常用される黒色フィルムからなるマルチシートであっても通気性を有するものであれば本発明においても使用可能であるが、黒色シートが太陽光線を吸収して、果実の下面側に太陽光線が充分当たらず、色付き及び/又は成育が悪くなる場合には、その上に明色フィルム層を積層して白黒マルチとすればよい。 【0011】白黒マルチとしては、例えば下記するものの少なくともひとつが使用可能である。 (1)園芸用の土壌を覆って使用されるマルチシートであって、 複数の材料層が積層されてなり、 使用時に前記土壌側の表面に配置され、スパンボンド紡糸法により得られ、合成樹脂繊維を主材料とし、暗色を呈する暗色不織布層と、 前記不織布層と反対側の表面に配置され、透湿性を有するポリオレフィンフィルムからなり、明色を呈する明色フィルム層とを備える農業用マルチシート。 (2)透湿度3000g/m2/24h以上、耐水圧1.47N以上である上記(1)に記載の農業用マルチシート。 (3)引張強さ70N/5cm以上、引裂強さ1.0N以上、伸び率20%以上である上記(1)または(2)の何れかに記載の農業用マルチシート。 (4)前記暗色不織布層が黒色であり、 前記明色フィルム層が白色である上記(1)〜(3)の何れかに記載の農業用マルチシート。 (5)前記合成樹脂繊維が、ポリエステル系繊維およびポリプロピレン系繊維の何れか1種である上記(1)〜(4)の何れかに記載の農業用マルチシート。 【0012】 上記した白黒マルチとしては、例えば明色フィルム層として透湿性ポリエチレンシート(市販品)を用い、暗色不織布層として黒色ポリエステル不織布(商品名「エクーレ」6401AD、東洋紡績社製)を用いた積層体が使用可能であり、製品は既に市販されている。なお、本発明で使用するマルチシートの材料としては、生分解性プラスチックを使用すると更に環境の面からも有利であり、例えばポリ乳酸が好適例のひとつとして挙げられる。 【0013】 本発明にしたがって栽培を実施するには、土壌分析施肥設計に基づき、土壌改良剤、元肥、ミネラル剤を適正量施用し、耕起する。土壌分析施肥設計は次のようにして行う。 【0014】 本発明者は、上記設計を行うに当り、各方面から検討の結果、地力が高く高収穫を持続している田畑や植物が健全に生育している土地では病虫害の発生が少ない点に着目し、これらの土地の土壌に着目して広範な土壌分析を行い、鋭意研究の結果、多量必須要素(窒素、リン酸、カリ)のほかに特定の微量要素(無機成分あるいはミネラルということもある)及び超微量要素(超微量ミネラル)が必要であって、その種類をつきとめただけでなく、その必要量もつきとめ、しかも更に画期的なことに、微量要素には一定のバランス(ミネラルバランスということもある)が必要であるとの新知見を得(図1)、それにしたがってミネラル剤を必要量施用する。 【0015】 ミネラルとしては、鉄、銅、亜鉛、ホウ素、マンガン、モリブデンのほか、ヨウ素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、セレン、バナジウム等が挙げられ、ミネラル剤としては、これらのミネラルを適宜選択して配合したものが使用でき、ミネラル剤としては、例えば次のような金属塩溶液も使用可能である。硝酸第二鉄 0.08%、硝酸銅 0.05%、硝酸亜鉛 0.05%、モリブデン酸アンモニウム 0.07%、硫酸マンガン 0.1%、ホウ素 0.2%、沈澱防止剤 3%、水 96.45%。 【0016】 ミネラル剤は、上記のほか、上記配合を参考にして各種調製することができ、各種市販品も適宜使用可能であって、例えば「メリット」、「ミネパワー」(いずれも、エーザイ生科研(株)製品)等も適宜使用可能である。 【0017】 また、上記ミネラルよりも更に微量な「超微量ミネラル」を施用すると、更にすぐれた効果が奏される。超微量ミネラルは、セレン(好ましくは更にバナジウム)のほか、クローム、コバルトその他超微量ミネラルを指すものであって、これを含有する超微量ミネラル剤として供給される。超微量ミネラル剤としては、苦汁(ニガリ)が好適であって、特に高セレン(好ましくは、更に高バナジウム)含有苦汁が好ましく、例えば、セレンを1.0〜5.0ppm(好適には1.5〜4.0ppm)、及びバナジウムを1.0〜5.0ppmを含有する苦汁が好ましい。 【0018】 超微量ミネラル剤としては、セレン含有ミネラル組成物が好適であって、例えば中国産の高セレン含有天然苦汁(「グリーンセーフ」:エーザイ生科研(株)より市販)が使用可能であり、その成分分析値を下記表1に例示する。 【0019】
【0020】 「グリーンセーフ」には、上記よりもセレン含量の高い高セレン製品も市販されている。その成分分析値を下記表2に示す。上記した製品も、また同じく高セレン製品も本発明においては使用可能である。これらの製品は、天然物を原料として製造されるため、ロットにより、多少の成分上の相違が認められるのはやむを得ない。 【0021】
【0022】 畝立てしたりあるいは作物を播種、定植する前に上記した超微量ミネラル剤を、所望に応じて、10a当たり、地力の弱いところでは4Kgを、地力のあるところでは3Kgを土壌の乾燥しているところでは原液を200〜400倍(好ましくは300倍程度)、砂壌土系では300〜600倍(好ましくは400倍程度)、湿度の高いところでは100〜300(好ましくは200倍程度)に希釈して灌水し、耕起した後、作物に適した畝立てをすればよい。所望するのであれば、灌水前、耕起後、畝立て後その他適宜な時期に、土壌消毒すると更に有効である。土壌消毒としては、例えば70℃以上、好ましくは75℃以上、更に好ましくは80℃以上の熱水を噴霧機等で注入すればよい。土壌消毒は、雑草、病虫害の原因をあらかじめ駆除するために行うものであって、目的に応じて最適温度の熱水を選択し、土壌中にスプレーないし注入すればよい。 【0023】 前記において、施用に供した土壌改良剤、元肥としては、フミン酸、アクリルアミド等の土壌改良剤、窒素、リン酸、カリ、苦汁、石灰、ミネラル(鉄、亜鉛、銅、マンガン、硼素、モリブデン)の配合肥料、堆肥その他市販あるいは自家製の肥料が各種使用できる。なお、この際、多量必須要素(窒素、リン酸、カリ)については、不足分を施肥することとなるが、通常、現在の耕地土壌では過剰状態となっているので、むしろ基準値(図1)になるまでそのレベルを低下せしめるのが好ましい。その場合、例えば、窒素成分は湛水状態にすれば容易に除去することができ、また、リン酸やカリは基準値になるまで施肥を抑制ないし中止すればよい。 【0024】 畝立てして、出来れば数日、例えば4〜5日経過後、畝の上の植え穴の近接位置(5〜8cm、好ましくは5〜6cm)側面に点滴灌水パイプを設置し、止め具にてパイプを固定する。その上を、白黒マルチその他の防草性、防水性、通気性を有する農園芸用マルチシートで被覆、敷設し、シートを固定する。 【0025】 しかる後、農園芸用マルチシートに設けた穴あるいは空隙部から作物を播種又は定植し、点滴灌水を開始して活着、発芽を促進し、栽培を開始する。 【0026】 栽培を継続しても、土壌が完全栄養状態にあるため、作物の成育は順調であって、発芽してくる新葉の表面を観察すると、葉面に光沢が輝き、一方、根の部分を少し堀ってみると、新根がすばらしい勢いで生長しているのが確認される。炭酸ガスの取り込みも増加し、光合成がさかんに行われ、作物は免疫力が旺盛であるため、病虫害をよせつけることがなく、健全に生長し、しかも白黒マルチ等マルチシートの使用によって、雑草の繁殖もなく、したがって雑草取りの作業も必要としない。もちろん、除草剤のほか、殺虫剤、殺菌剤等農薬についても、使用する必要がない。万が一、夜盗虫やコナガの幼虫が発見された時やウドンコ病や灰色カビ病が発生した時は、例えば、グリーンセーフ(エーザイ生科研(株)より市販)を朝200〜400倍液で葉面散布を続けて3日間実施すれば消滅してしまうので、省力化が図られ、環境公害や食品公害の防止、低減にも役立つ。 【0027】 本発明によれば光合成がさかんになるが、例えば、ニガリ、特に高セレン含有ニガリを単用するだけでも光合成作用の増進が確認された。すなわち、グリーンセーフ(エーザイ生科研(株)製品:EGS)の200倍液を1日1回、3日おきに3回、コマツナに葉面散布したところ、葉もしげり、葉面に光沢が輝き、葉の緑色も濃くなり、葉緑素の増加が認められた。更に、グリーンセーフによる光合成作用を目視によって確認しただけでなく、CO2の取り込みを実際に計測したところ、光合成がさかんにおこなわれるため、CO2取り込みが増加するデーータが得られた。 【0028】 すなわち、グリーンセーフの最終回の施用後、1分おきに10分間、CO2吸収量(ppm)を測定し、その結果を図2及び下記表2に示した。なお、EGSはグリーンセーフ施用区を示す。 【0029】
【0030】 上記のように、光合成速度をCO2吸収量によって比較した結果、10分間までの間、対照区とEGS区の間には明確な吸収量の差が確認された。したがって、光合成速度はEGS区の方が早いことが確認され、ニガリは光合成促進剤ないしCO2吸収剤(または吸収促進剤)として使用可能であることも確認された。 【0031】 また、上記したように、ニガリ、特に高セレン含有ニガリ(例えば、グリーンセーフ)は、単独の使用でも、殺虫、殺菌作用を併有することがはじめて見出された。すなわち、キャベツの害虫であるコナガの幼虫やヨトウムシの幼虫は、グリーンセーフ200倍液を午前中に1回、葉面から3日間連続散布したところ、すべて死滅することが確認され、パセリの場合は400倍液でも有効であった。アブラムシやダニ類も、土壌分析で銅、亜鉛の不足をミネラル剤(例えばミネパワー、メリット:いずれもエーザイ生科研(株)製品)で補給し、グリーンセーフを土壌に1500倍希釈液を灌水したところ、すべて死滅することが確認された、また、葉面散布の場合は、グリーンセーフ400倍液単用で午前中に1回、3日間散布することですべて死滅することが確認された。 【0032】 事実、グリーンセーフ200倍液にヨトウムシ幼虫をわずか5秒間浸漬しただけで、ヨトウムシ幼虫はすべて死滅し、一方、水に5秒間浸漬した場合には死滅しないことが確認された(図3:図面代用写真)。同じく、グリーンセーフ200倍液にモンシロチョウ幼虫をわずか5秒間浸漬しただけで、その組織が破壊変形する実態が顕微鏡検査の結果、確認され、一方、水に5秒間浸漬した場合には何の変化も認められなかった(図4:図面代用写真、なお上段は倍率を高めた顕微鏡写真である。)。したがって、ニガリ、特に高セレン含有ニガリ(例えば、グリーンセーフ)は、殺虫剤、殺ダニ剤(すなわち、天然系殺虫、殺ダニ物質)として使用可能である。 【0033】 また更に、上記したように、ニガリ、特に高セレン含有ニガリ(例えば、グリーンセーフ)は、単独の使用でも、殺菌作用を有することもはじめて確認された。すなわち、ウドンコ病や灰色カビ病が、グリーンセーフ200倍液を午前中と夕方、及び、翌日の午前中、の合計3回の連続散布することによって消滅することも確認された。 【0034】 事実、グリーンセーフ200倍液に10秒間浸漬しただけで、ウドンコ病菌糸が無処理に比して大幅に死滅することが顕微鏡検査の結果、確認された(図5:図面代用写真)。したがって、ニガリ、特に高セレン含有ニガリ(例えば、グリーンセーフ)は、殺菌剤(すなわち、天然系殺菌物質)としても使用可能である。 【0035】 本発明者は、主に、植物疫病は多肥と乾燥により特に細根(根毛)損傷で生じる点に着目し、また、上記した新知見も考慮に入れ、一般的には、土壌にグリーンセーフを400〜2000倍液、好ましくは1000〜1800倍液、通常は1500倍液前後で灌水し、必要ある場合には、グリーンセーフ200〜600倍液、通常は400倍液前後で午前中に1回、3日間の連続散布を葉面散布にて実施すればよい。 【0036】 栽培期間中、通常は水の適量を灌水してやれば特に他の作業を行う必要はないが、成り疲れや天候等に左右されて樹勢が弱くなった場合には、混入機等を利用して、ミネラル剤及び/又は超微量ミネラル剤を生育に応じて、前者は600倍程度、後者は1500倍程度灌水してやればよい。 【0037】 特に超微量ミネラル剤を灌水すると、発芽力が旺盛となり、定植時の活着率が高まり、葉が厚くなって光沢も出てくる。また、発根力が促されて選択吸収力が高まり、免疫力が旺盛となるため病虫害に侵されにくくなり、作物が健全に成育する。病虫害の防除が更に必要になった場合には、ミネラル剤、特に超微量ミネラル剤(例えば、グリーンセーフ)を葉面散布してやればよい。 【0038】 作物別の灌水量を以下に示すが、他の作物は、下記の灌水例を参考にして適宜灌水量を決定すればよい。 【0039】 ▲1▼ トマトは水が多いと結実率が悪く、樹体が大きく生長し、玉は裂果し易くなる。畝の高さの上から1/3まで湿っている位から始まって樹高が高くなれば少しずつ水の量を深めてやればよい。 ▲2▼ ピーマン、シシトウは畝の高さの上から1/2まで湿っている位から結果量に応じて少し水の量を深めて行けばよい。これはキュウリやニガウリにも同じくらいである。 ▲3▼ ナスは畝の高さの2/3まで湿っている位から結果量が増加すれば3/3畝全部が何時でも湿っている位でよい。最高の収穫になる。 ▲4▼ 葉菜類(ホウレンソウ・コマツナ・シュンギク・キャベツ・ハクサイ等)は最初は畝の1/2位まで湿らして生長に従って2/3位まで湿らして行けば美味しく生食出来るものが出来、寒い冬の寒波に耐えて収穫出来る。−10℃までは収穫が可能であり、現に熊本県南小国では−15℃でも葉菜の収穫が確認されている。 【0040】 なお、灌水の際、水のほか、必要時に上記したようにミネラル剤や超微量ミネラル剤を混入して灌水してもよいし、所望するのであれば、液肥や農薬類を混入して灌水してもよい。 【0041】 以上本発明を畝立て栽培を例にとって説明したが、本発明は畝立てをすることなく他の栽培法の場合にも広く適用することができ、また、防虫ネットを使用すれば更に効果が高まる。 【0042】 本発明においては、作物の種類、大きさ、植付け方法等に応じて、マルチシートの穴の大きさ、位置、形状を適宜変えることができ、また、点滴パイプの配設数、配設位置、点滴孔の配設数、配設位置、その大きさ等も適宜変えることができるので、1本ずつ独立して栽培する作物のほか、麦やネギ類のように列状に連続的に栽培する作物に対しても本発明に係る栽培方法は自由に適用することができる。 【0043】 したがって、本発明の対象作物としては、果樹、果菜類、穀類その他各種の作物が広く包含され、その非限定例としては次のものが例示される。 【0044】 ミカン、ネーブル、オレンジ、デコポン等の柑橘類;ブドウ、リンゴ、カキ、クリ、キウイ、スモモ、モモ、ウメ、サクランボ、ナシ等の果樹類;シシトウ、ホウレンソウ、コマツナ、シュンギク、キャベツ、ハクサイ、レタス、キュウリ等の葉菜類;ニガウリ、イチゴ、メロン、スイカ、カボチャ、ナス、トマト、ピーマン等の果菜類;ダイコン、ニンジン、ゴボウ等の根菜類;ネギ、ニンニク、ニラ、薬用ニンジン、ウド、バレイショ、サツマイモ、ヤマイモ等;麦類、陸稲、大豆、小豆、ゴマ等の穀類。 【0045】 以下、本発明の実施例について述べる。 【0046】 【実施例1】 トマト(品種:ハナクイーン)をビニールハウス内で栽培した(熊本県玉名市)。先ず、窒素、リン酸、カリを含む市販の元肥や常法にしたがって施すとともに、ミネラル剤(前記した金属塩溶液)の200倍希釈液を10a当り300L施用し、耕起した。畝立てする前に、超微量ミネラル剤(前記した高セレン含有天然苦汁「グリーンセーフ」:エーザイ生科研(株)商品名)を4Kg、300倍に希釈して灌水し、耕起した後にトマト用の畝立てを行った。 【0047】 4日後(2002年4月1日)、畝の上の植え穴の5cm側面に点滴灌水チューブを設置した。その上に、白黒マルチ(前記した黒色ポリエステル不織布に白色の透湿性ポリエチレンシートを積層してなる農業用マルチシート:市販品)を敷設固定した。 【0048】 50cm間隔であけた円形の植え穴にトマトの苗を1本ずつ定植し、市販の自動灌水装置(販売:ISO農業機器)により点滴灌水を行い、活着、発芽を促進せしめた。灌水量は、栽培当初は、畝の高さの上から1/3程度まで湿っている程度に灌水し、栽培が進行してトマトが生長するにつれて、樹高の高さが高くなれば、それに応じて水の量を深めてやった。 【0049】 土壌が完全栄養状態であるので、水の適量を灌水するだけでトマトは順調に生育し、発芽してくる新葉の表面を観察すると、葉面に光沢が輝いているのが確認された。また、根部の土壌部分を少し堀ってみると、新根がすばらしい勢いで生長しているのも確認された。このように、トマトは免疫力が旺盛であるので、病虫害を寄せつけず、健全に生育した。雑草の繁殖も認められなかった。したがって、殺虫剤、殺菌剤、除草剤は使用しなかった。 【0050】 ただ、樹勢が少し弱くなったのが認められたので、4月10日に既述したミネラル剤(「メリット」:エーザイ生科研(株)製品)の600倍希釈液と超微量ミネラル剤(グリーンセーフ)の1500倍希釈液を混入機を利用して自動灌水した。 【0051】 4月17日にトマトを摘果し、直ちにアミノ酸含量を測定した。その結果、点滴灌水及びミネラル剤、超微量ミネラル剤の灌水を除き、他は、全く同様に栽培したトマト(対照)と比較して、本法で栽培したトマトは、ほとんどすべてのアミノ酸含量が増加し、特に、強い旨味をつくるフェニルアラニンとロイシンが増加し、なかでも、ロイシンについては2倍程度も増加した。 【0052】 得られたトマトを生食に供したところ、風味豊かなコクのあるトマトであることが確認された。また、灌水量も適正であったため、結実率も高く、樹体が徒長することもなく、玉の裂果も認められなかった。 【0053】 【発明の効果】 本発明にしたがって、白黒マルチ等の防草、防水、透湿性を保有する農業用マルチシートを用い、点滴灌水することによって、雑草の繁茂を防止ないし大幅に軽減しながら、作物を健全に育生することができ、収穫量の増加、収穫物の糖度、旨味、コク等の増加を達成することができる。 【0054】 しかもその際、除草剤はもとより殺虫剤や殺菌剤の使用も必要ないかあるいはその使用量の大幅軽減が図られ、有機栽培、無農薬ないし減農薬栽培が可能となり、また、農薬散布や雑草取りといった作業も必要なくなりあるいは大幅に軽減され、農業の大幅省力化が図られるとともに、高負担を要することなく、女性や高齢者も農業を行うことが充分に可能となる。しかも、環境にもやさしく、食品公害の防止にもつながる。そして更に、ミネラル剤及び/又は超微量ミネラル剤を使用すると更に本発明の効果が高まる。 【0055】 本発明は、多量必須要素、ミネラル、超微量ミネラルのバランスが調整されるよう肥培管理を行うことにより、具体的には、図1に示した適正域に調整することにより(通常は、特にミネラル、超微量ミネラルが不足してミネラルバランスが崩れることが多いため、これらを灌水によりあるいは所望するのであれば葉面散布によって、補給することにより)、農薬を一切使用することなく、作物を植物病虫害から防除して健全に栽培することをはじめて実現するのに成功したものである。換言すれば、本発明は、農薬を使用することなく植物栄養学的に、生命力(いわば植物自体の免疫力)によって病虫害を防除して作物を健全に栽培するという全く新しい栽培システムを実現するのにはじめて成功したものである。 【0056】 また、既述のように本発明によれば、果実類の品質改良効果が各種奏され、例えばマスカットにおいてはアミノ酸組成の改善による旨味の増強、サクランボにおいては玉の肥大化、洋ナシ(ラ・フランス)においては玉の肥大化(通常1個350g程度→700g)とともに糖度の増加(通常13〜16→20)のほかに日持ちの増加(通常10月収穫したものは12月までしか日持ちしないが、本法によれば3月頃まで日持ちする)ことがいずれも確認された。 【0057】 更に糖度に関しては、本発明によれば、デコポンが16度に、温州ミカンも14度に糖度を上げることが可能となり、サクランボは通常14度のものが20度に上昇し、ブドウ巨峰も通常17度のものが20度に上昇し、また、アールスメロンも17度以上で鮮度が1カ月程度持続することも確認された。 【図面の簡単な説明】 【図1】耕地土壌の可給態養分適正域を示す。 【図2】コマツナにおけるCO2吸収量の変化を示す。 【図3】グリーンセーフ処理したヨトウムシの若令幼虫の実態を示す(図面代用写真)。 【図4】グリーンセーフ処理したモンシロチョウ幼虫の実態顕微鏡写真である(図面代用写真)。 【図5】グリーンセーフ処理したウドンコ病菌糸の実態顕微鏡写真である(図面代用写真)。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】500221194 【氏名又は名称】有限会社 農業科学研究所
|
| 【出願日】 |
平成15年1月10日(2003.1.10) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075775 【弁理士】 【氏名又は名称】戸田 親男
|
| 【公開番号】 |
特開2004−215534(P2004−215534A) |
| 【公開日】 |
平成16年8月5日(2004.8.5) |
| 【出願番号】 |
特願2003−5055(P2003−5055) |
|