| 【発明の名称】 |
既存のものと花色の異なる花を咲かせる植物の製造法 |
| 【発明者】 |
【氏名】渡部 由香
【氏名】宮内 信文
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| 【要約】 |
【課題】本発明の目的は、通常は、橙色、ピンク色、赤色、赤紫色等の花を咲かせるアントシアニン系色素含有植物に青色の花を咲かせるための栽培方法と、青色の花を咲かせる(或いは、咲かせた)、アントシアニン系色素を含有する植物を提供することにある。
【解決手段】本発明は、有効量のモリブデン化合物を使用して栽培することを特徴とする、青色の花を咲かせる、アントシアニン系色素を含有する植物の製造法、及び該製造法により得られた、青色の花を咲かせる(或いは、咲かせた)、アントシアニン系色素を含有する植物に関する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有効量のモリブデン化合物を使用して栽培することを特徴とする、青色の花を咲かせる、アントシアニン系色素を含有する植物の製造法。 【請求項2】 モリブデン化合物がモリブデン酸の塩類である請求項1に記載の製造法。 【請求項3】 モリブデン酸の塩類が、モリブデン酸アンモニウム又はモリブデン酸のアルカリ金属塩類である請求項2に記載の製造法。 【請求項4】 モリブデン化合物の使用量が、モリブデン濃度として0.1mM〜10mMの範囲である、請求項1〜3の何れかに記載の製造法。 【請求項5】 モリブデン化合物の使用時期が、予想開花前2週間以内である請求項1〜4の何れかに記載の製造法。 【請求項6】 栽培方法が、水耕栽培、鉢植え又は露地栽培である、請求項1〜5の何れかに記載の製造法。 【請求項7】 アントシアニン系色素を含有する植物が、トルコキキョウ(ユーストマ)、チューリップ、キク、アスター、ユリ、アルストロメリア、グラジオラス、スイトピー、カーネーション、アネモネ、ストック、キンギョソウ、ラナンキュラス又はカラーである請求項1〜6の何れかに記載の製造法。 【請求項8】 請求項1〜6の何れかに記載の製造法により得られた、青色の花を咲かせる(或いは、咲かせた)、アントシアニン系色素を含有する植物。 【請求項9】 アントシアニン系色素を含有する植物が、トルコキキョウ(ユーストマ)、チューリップ、キク、アスター、ユリ、アルストロメリア、グラジオラス、スイトピー、カーネーション、アネモネ、ストック、キンギョソウ、ラナンキュラス又はカラーである請求項8に記載の植物。 【請求項10】 対象とする植物の花弁切片を0.1mM以上の水溶性モリブデン酸塩類水溶液に接触させて、花弁の色の変化を観察することにより判定を行う、花の色を青色化出来る植物のスクリーニング方法。 【請求項11】 花弁切片を0.1mM以上の水溶性モリブデン酸塩類水溶液に1日以上接触させる請求項10に記載のスクリーニング方法。 【請求項12】 水溶性モリブデン酸塩類水溶液がモリブデン酸アンモニウム水溶液である請求項10又は11に記載のスクリーニング方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、既存のものとは花色の異なる花を咲かせる植物の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、アントシアニン系色素を含有する植物であって、通常は、橙色、ピンク色、赤色、赤紫色等の花を咲かせる植物に、青色の花を咲かせるための栽培方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 園芸統計平成13年版によれば、花卉産業では、平成12年産花卉類が約70億本以上出荷されており、その卸売価額は切り花と鉢物合わせて4,897億円となっている。また花卉(植木を含む)小売業者の商店数は昭和57年では23,000店舗ほどであったのが平成11年には28,000店舗以上となっており、年間販売額は昭和57年では3,500億円程度であったものが平成11年には9,000億円に達している。 業界では、商品の需要が観賞目的である性質上、従来の品種とは異なった色や形の花に対する評価が非常に高く、毎年多くの品種が育成、紹介されている。新色の切り花や鉢物の小売価格は従来の品種の2倍以上であることも少なくない。このようなことから、従来にない花色の花を提供することは、消費者の購買意欲と選択肢を増やし、新たな消費を促すことになると思われる。 全国的に花を日常生活に取り入れる風潮が高まっており、今後の家庭用の切り花や鉢花の需要の伸びが期待される。 植物の自然な発色については天然植物色素が貢献しているが、その主な物質としてクロロフィル類、カロチノイド系色素、アントシアニン系色素が挙げられる。 クロロフィルは緑色の色素で主に葉や茎の発色に寄与している。力ロチノイドは黄色から橙、赤の色をカバーしている。アントシアニン色素の発色は橙色からピンク、赤色、赤紫色が多い。青色の発色もアントシアニン系色素によるものであるが、その発色機構は複雑であり現在も研究が進められている。また、生花店で販売されている主な花卉類において空色に近い青色の花の品種は意外に少ない。 バラでは古来より青いバラの作製が育種家の夢であるが、従来の育種技術では困難と言われており、近年、遺伝子工学を利用して青バラの作製が研究されているが、未だ成功した例はない。 また、花色に関して新色を得る方法としては、最も手軽な方法としては、白色の花弁をもつ花の茎からに青や緑などの人工的な色素液を吸収させ、好みの色に着色する方法があり、現在、種々の色素液が販売されている。しかしながら、この方法では切り花全体が一様に着色され、人工的な印象を受けるため人気がなく、あまり活用されていない。 【0003】 モリブデンイオンとB環に水酸基をもつアントシアニン色素が結合して強酸性条件下で青色になる反応は溶媒で抽出したアントシアニン色素の分析方法の一つとして、古くから知られている。更に、モリブデンイオンを含む溶液を切り花に吸収させる、あるいは花弁にモリブデンイオンを散布し花色を青色化することも過去に試みられている(例えば、非特許文献1参照。)。この論文中ではモリブデン酸ナトリウム溶液を切り花の茎から吸収させる、あるいは花に直接散布処理を行い花色を青色化させる効果について調査しており、5mMのモリブデンイオン溶液を切り花の切り口から吸収させたところキキョウの花において青色化が見られたが、キキョウ以外の花では、青色化が起こり且つ薬害が少なく鑑賞期間が短くならない等の条件を備えたものは極めて少なかったことから、切り花にモリブデン化合物の溶液を吸収させる方法は利用できない場合が多い、と結論づけている。実際に、この現象が論文で発表されてから20年近く経過しているが、一般的な技術としては全く利用されていない。 また、アブラナ属の種子についてモリブデンを含有した寒天培地(モリブデン濃度:60ppm)で発芽させ7日間育てたところ、その茎等が青く変化する現象が観察された旨の報告が昨年なされたが(非特許文献2参照)、これは無菌培養条件下という特殊な実験条件で、発芽時での処理であり、開花まで数ヶ月の栽培期間が必要である園芸作物へは簡単には応用できないと考えられる。芽生えであれば種子の栄養分で発芽できるため、ある程度の初期生育は可能であると思われるが、長期間の栽培には健全な根の発達が必要であるのがその理由である。通常の露地栽培条件において含まれているモリブデンイオン濃度は0.1ppm程度であるから、その600倍の濃度の過剰なモリブデンイオンを吸収しつつ種子から開花まで数ヶ月の生育を健全に続けられるかどうかは全く不明である。 【0004】 【非特許文献1】 園芸学会雑誌,52巻,174-179,1983年 【非特許文献2】 Plant Physiology,Vol.126,1391-1402(2001) 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、通常は、橙色、ピンク色、赤色、赤紫色等の花を咲かせるアントシアニン系色素含有植物に青色の花を咲かせるための栽培方法と、青色の花を咲かせる(或いは、咲かせた)、アントシアニン系色素を含有する植物を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明は、有効量のモリブデン化合物を使用して栽培することを特徴とする、青色の花を咲かせる、アントシアニン系色素を含有する植物の製造法に関する。 【0007】 また、本発明は、上記製造法により得られた、青色の花を咲かせる(或いは、咲かせた)、アントシアニン系色素を含有する植物に関する。 【0008】 更に、本発明は、対象とする植物の花弁切片を0.1mM以上の水溶性モリブデン酸塩類水溶液に接触させて、花弁の色の変化を観察することにより判定を行う、花の色を青色化出来る植物のスクリーニング方法に関する。 【0009】 【発明の実施の形態】 本発明の製造法において用いられるモリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸の塩類等が挙げられる。 モリブデン酸の塩類の好ましい例としては、例えば、モリブデン酸アンモニウム、例えばモリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸リチウム等のモリブデン酸のアルカリ金属塩類等、水溶性のモリブデン酸塩類が挙げられる。 本発明で用いられるモリブデン化合物の使用量は、モリブデン濃度として、通常0.1〜10mM、好ましくは0.5〜5mM、より好ましくは0.5〜1mMである。 モリブデン化合物の使用量が少なすぎると効果が無いし、多すぎると植物の組織が破壊されるので好ましくない。 【0010】 モリブデン化合物の使用(添加)時期は、予想開花前2週間以内であることが望ましく、予想開花前2週間〜1週間の間に添加するのがより好ましい。 本発明に係る栽培方法としては、例えば、水耕栽培、鉢植え、露地栽培等が挙げられる。 【0011】 本発明に係るアントシアニン系色素を含有する植物としては、例えば、トルコキキョウ(ユーストマ)、チューリップ、キク、アスター、ユリ、アルストロメリア、グラジオラス、スイトピー、カーネーション、アネモネ、ストック、キンギョソウ、ラナンキュラス、カラー等の観賞用花卉類が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、上記の植物以外でもアントシアニン系色素を含む植物であれば、大部分のものが本発明の方法により青色化可能である。 なお、アントシアニン系色素を含有する同じ植物でも、品種により青色化出来るものと出来ないものとがあるが、その理由については未だ解明されていない。 【0012】 アントシアニン系色素は殆どの植物に見いだされる一般的な色素であり、その種類も多数あり観賞用の品種は年々新らしいものが出ているため、青色化可能な植物の全てを確認して列記することはできないが、少なくとも、後述する、花の色を青色化出来る植物のスクリーニング方法によりテストを行って、青色化する品種であれば、本発明の方法により青色化可能であることはほぼ間違いがなく、今後出現するであろう新しい品種についてもこの技術、即ち、本発明のスクリーニング方法及び製造法は適用可能である。 更に、本発明のスクリーニング方法及び製造法は、上記花卉類ばかりでなく、アントシアニン系色素を含む観賞用の葉物類にも適用可能である。 【0013】 本発明のスクリーニング方法、即ち、花の色を青色化出来る、アントシアニン系色素を含有する植物のスクリーニング方法は、通常、以下のようにして行われる。 対象とする植物の花弁切片を0.1mM以上、好ましくは0.5〜10mM程度の水溶性モリブデン酸塩類水溶液、好ましくはモリブデン酸アンモニウム水溶液に接触させ、一定時間放置後、花弁切片が青色化するか否かを目視により観察する。青色化すれば、その品種は本発明の製造法が適用可能であると言うことが出来る。 花弁切片を水溶性モリブデン酸塩類水溶液と接触させる方法としては、通常、水溶性モリブデン酸塩類水溶液を例えばシャーレ等の平たく口の広い容器に入れ、これに花弁切片を浮かべるか或いは浸すことにより行われる。 放置時間は、花弁の厚さや硬さ等により水溶性モリブデン酸塩類水溶液が花弁に充分浸透するまでに要する時間が異なるので、通常1日以上、好ましくは1〜3日間位放置する。 この方法により、これまでトルコキキョウ(ユーストマ)、チューリップ(品種:パープルフラッグ)、ユリ、アスター、キク、アルストロメリアに関し青色化が可能なことを確認済みである。 【0014】 本発明は植物に含まれる赤紫系の色素、アントシアニンと結合して青色を発色するモリブデンイオンに注目し、花卉類の収穫前にモリブデン施肥を行うことによってアントシアニン色素を含む花卉類の青色化を行い、新しい花色を作り出すことにより園芸産業分野に貢献するものである。 具体的には、養液栽培装置を利用した花卉栽培において、開花前にモリブデン酸アンモニウム等のモリブデン化合物を通常使用している液肥にモリブデン濃度として上記した如き濃度、例えばlmM程度の濃度になるように加えて栽培を続ける。栽培期間後期に青色化に必要な最少期間のみモリブデンイオンを吸収させることにより薬害を出さずに、花弁にモリブデンを蓄積させることができる。 添加時期は上記した如く開花前2週間から1週間ほどである。この間に根からモリブデンイオンが吸収され、花弁に移行し、花弁中のアントシアニン色素と結合して青く発色する。 花の収穫前に花弁の青色化が終了するので、生花店において入荷後すでに販売することができ、また、通常の切り花に比べて棚持ちの程度も遜色がない。 この方法は鉢花や露地栽培でも利用可能である。即ち、開花の2週間〜1週間ほど前から開花までにモリブデン化合物の溶液を数回施肥してやればよい。 本発明のモリブデン処理方法は、開花直前まで健全な発育をした園芸作物に行うものであって、植物の生育に害を与えることが少ない。 【0015】 人工的な色素液を切り花に吸収させる従来の方法と本発明の方法を比較すると、色素液を吸収する方法は、切り花全体に一様に着色させる方法なので、着色状態は一律的、人工的な印象を受ける。しかしながら、本発明で使用するモリブデン化合物を溶解した液は無色であり、植物に吸収させた場合、アントシアニン色素のない部位は着色しない。アントシアニン色素の存在する部分にのみモリブデンが反応するため、花弁等のアントシアニン色素が存在する部分のみが青く変化することになる。さらに、青色化はアントシアニン色素の濃淡に依存するため、アントシアニン色素の濃い部分は濃く、薄い部分は薄く青色化し、自然に近い感覚の発色が得られる。これは人工的に色素液で着色される花に比べ、鑑賞的な品質において大きく優っている。 【0016】 モリブデンイオンはアントシアニン色素と結合して青色化を起こす物質であり、一定濃度以上で効果がある。薬害が起こらなければ、与えすぎの問題はそれほどないが、あまり多すぎると植物の組織が破壊されるので好ましくない。 また、5mMと10mMのモリブデンイオンを花弁に吸収させた場合、両処理区で色相角度の差が少なく、10mM以上では青色化効果はほぼ頭打ちになると思われる。 モリブデン化合物は比較的安価であり、施用方法もこれを規定の水溶液にして施肥するだけですむため簡便に作製、利用でき、従来なかった花色の花を安価に且つ大量に市場に提供できる。 【0017】 【実施例】 以下、比較例、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。 【0018】 比較例1 切り花の茎からモリブデンイオンを吸収させる方法(従来の方法)による花弁の色変化実験 モリブデン濃度としてlmMと5mMの2つのモリブデン区を作製し、切り花の茎から吸収させた。対照区は水道水とした。材料の切り花はトルコキキョウ(ユーストマ)を用い、生花店において市場から入荷直後のものを使用した(60cm丈)。水揚げをよくするためにすべての花について水切りを行った。処理温度は10℃と室温を設定した。 モリブデン化合物溶液使用によるトルコキキョウ花弁の色相変化等について測定した結果を表1(10℃)及び表2(室温)に示す。 なお、表中の花弁の色相角度であるが、マイナス方向に変化すると青みを帯び、プラス方向への変化は赤から黄色へ色が変化したことを示す。視覚的な色の目安としては、+60°は黄色、0°は赤、−60°は紫、−120°は青である。 【0019】 【表1】
【0020】 【表2】
【0021】 表1から明らかなように、生花店等での低温貯蔵を考慮した10℃の温度条件下では、キキョウを青色化したと報告された5mM濃度のモリブデン化合物溶液でも花弁の色相角度に変化がなく、花の色の青色化が起こらなかった。また、モリブデン区ではlmMでも5mMでも2日目から花茎の折れが見られ、5日目にはlmM区で30%、5mM区で45%となり、品質の低下が見られた。このことは10℃ではモリブデンが花弁部位までは吸収されず、品質の低下のみを招くことを示している。 また、表2から明らかなように、室温においてはlmM濃度のモリブデン区では青色化の効果が見られなかった。5mM区においては処理2日目に処理前と比べ花弁の色相角度が4°低下し、若干の花の青色化は見られたが、顕著な変化ではなく、従来の花の色に比べ特筆すべき花色の変化とは言えなかった。更に、この処理条件では花の下部に首折れ現象が20%以上も見られ、また花の劣化も9%出現し、商品としての価値は甚だしく低いものと言わざるを得ない。また、わずかな青色化も一度開花した花には起こらず、咲きかけの蕾が開花するにしたがって見られた。このことにより多少青色化した花と本来の花色の花が混在する状態となり、外観上きわめてアンバランスな印象となりこれも品質を落とす結果となった。また、室温条件では、処理5日目では5mM溶液では花の色も褐色化(色相角度が大きくプラスに転じた)し、首折れ現象はすべての花にみられ、殆どの花が枯れる結果となった。切り花では収穫直後から老化が始まるが、モリブデンイオンを与えることにより老化の進行が早まったと考えられる。切り花にモリブデンイオンを吸収させる方法は花の棚持ちを悪くし、品質の劣化をまねき青色化の効果も殆ど期待できない。 【0022】 比較例2 花弁にモリブデン養液を散布した場合の花弁の変化 モリブデン濃度は切り花への浸漬と同様にlmMと5mMとし、噴霧器で花弁に散布した後、20℃で保存し、24時間後に色の変化した部分の面積を測定した。 結果を表3に示す。 【0023】 【表3】
【0024】 表3に示すように、花弁にモリブデン化合物の養液を直接散布した場合、花弁の青色化は見られるが、その面積は10%程度であり、花弁全てが青色化するまでには到らない。また、色が変化する部分にむらが生じる。 【0025】 以上のことから、収穫後の切り花については茎からモリブデンイオンを吸収させる方法も花弁にモリブデン化合物の養液を散布する方法も花色の青色化技術としては利用できないことが判る。 【0026】 実施例1 トルコキキョウ(品種:エクローサブルーフラッシュ)を養液栽培し、つぼみが見えた時点で、モリブデンイオンがlmMになるようモリブデン酸アンモニウムを養液に加えた。栽培開始は平成14年5月24日、モリブデン処理開始は7月16日で、一週間後の7月23日と10日後の7月26日に花の調査を行った。青色化の結果を以下の表4に示す。なお、表中の花弁の色相角度については、比較例1において記載した通りであり、マイナス方向に変化すると青みを帯び、プラス方向への変化は赤から黄色へ色が変化したことを示す。視覚的な色の目安としては、+60°は黄色、0°は赤、−60°は紫、−120°は青である。 【0027】 【表4】
【0028】 この実験では、7日後に開花した花は花弁が全て対照区に比べて色相角度が10°以上マイナス方向に変化し、青色味を帯びる結果となった。また、10日後には色相角度が20°以上マイナス方向に変化し−70°程度となり、青色化が進んだ。対照区の花弁の色相角度は−45°前後であるが、これは赤紫色を示す。 この実験により赤紫色の花弁が紫を経てさらに青色方向に変化したことが判る。 処理後10日目の時点で、生育障害は見出せず、花弁数や花弁の直径など、対照区と遜色ない品質のものが得られた(図1)。 以上のように、栽培後期に低濃度のモリブデンイオンを一定期間与えることで、花の青色化を確実に行うことにより新しい価値を付加して市場に出荷することができる。 上述した如く、収穫後の切り花については茎からモリブデンイオンを吸収させる方法も花弁にモリブデン化合物の養液を散布する方法も花色の青色化技術としては利用できないが、本発明の方法によれば、切り花の茎からモリブデンを吸収させる方法では青色化効果が見られなかった低濃度(lmM)のモリブデン濃度で、栽培期間中比較的長期間にわたって少しずつ吸収させることにより花弁の青色化が行え、薬害をださずに品質の良い花を収穫することができる。 【0029】 実施例2 花の色を青色化出来る植物のスクリーニング モリブデン濃度0.1、0.5、1、5及び10mMのモリブデン酸アンモニウム水溶液をそれぞれシャーレに入れ、この各々に対象とする種々の植物の花弁切片を浮かべて、3日間放置した。また、対照としてモリブデン酸アンモニウム水溶液の代りに蒸留水を入れたものと、希塩酸(pH≒3)を入れたものを用意し、同様に花弁切片を浮かべて、3日間放置した。なお、希塩酸の区を用いた理由は、モリブデン酸アンモニウムを水に溶かした際のpHが3〜4まで低下してしまうので、pHの影響も調べる必要があると考えたためである。 3日後の花弁の色を数値化したデータ(モリブデン濃度1mMの場合及び蒸留水対照区について)を表5に示す。 対照区に比べMo処理の値が大幅に低い場合、青色化効果があると認められる。 【0030】 【表5】
【0031】 また、チューリップ(品種:パープルフラッグ)、トルコキキョウ(品種:エクローサブルー)及びトルコキキョウ(品種:リネーションレッド)について、3日後の花弁の色を写真撮影した結果を図2〜図4に示す。 【0032】 【発明の効果】 本発明はモリブデン酸アンモニウムやモリブデン酸ナトリウム等、モリブデンを含む化合物を水溶液としてアントシアニン色素を含む花の栽培期間中に与え、花の色を青色化させるものである。特に水耕装置を使用した花卉栽培においては、通常の液肥にモリブデンイオンを規定濃度になるように添加するだけで良いため、簡便に利用することができる。 本発明で使用するモリブデン化合物を溶解した液は無色であり、植物においてアントシアニン色素のない部位は着色しない。アントシアニン色素の存在する部分にのみモリブデンが反応するため、緑色の葉や茎等の部位が青く染まることなく、花弁等のアントシアニン色素が存在する部分のみが青く変化する。更に、青色化はアントシアニン色素の濃淡に依存するため、アントシアニン色素の濃い部分は濃く、薄い部分は薄く青色化し、自然に近い感覚の発色が得られる。 またモリブデン化合物は比較的安価であり、施用方法もこれを規定の水溶液にして施肥するだけですむため、簡便に作製、利用でき、従来なかった花色の花を安価にかつ大量に花卉園芸市場に提供できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】図1は、実施例1で得られた、トルコキキョウ青色化の実験結果を示す図面に代わる写真である。図1中、左側は対照区の花弁、右側は処理後10日目の花弁である。 【図2】図2の(a)は実施例2の、花の色を青色化出来る植物のスクリーニングにおける、各種モリブデン濃度のモリブデン酸アンモニウム水溶液区と蒸留水対照区及び希塩酸区の各シャーレの配置図を示す。 図2の(b)は、実施例2の、花の色を青色化出来る植物のスクリーニングの結果を示すもので、チューリップ(品種:パープルフラッグ)について、3日後の花弁の色を撮影した、図面に代わる写真である。 【図3】図3は、実施例2の、花の色を青色化出来る植物のスクリーニングの結果を示すもので、トルコキキョウ(品種:エクローサブルー)について、3日後の花弁の色を撮影した、図面に代わる写真である。 【図4】図4は、実施例2の、花の色を青色化出来る植物のスクリーニングの結果を示すもので、トルコキキョウ(品種:リネーションレッド)について、3日後の花弁の色を撮影した、図面に代わる写真である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】503360115 【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
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| 【出願日】 |
平成14年12月16日(2002.12.16) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2004−194523(P2004−194523A) |
| 【公開日】 |
平成16年7月15日(2004.7.15) |
| 【出願番号】 |
特願2002−364296(P2002−364296) |
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