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【発明の名称】 水中種子植物の造成基盤及びその敷設方法
【発明者】 【氏名】前川 行幸

【要約】 【課題】自然に分解する部材からなり、水中種子植物の種子又は苗を備えた小型軽量かつ簡単な構造で、水中種子植物が効率よく繁茂することのできる水中種子植物の造成基盤及びその敷設方法を提供する。

【解決手段】自然に分解する材料からなり発芽した草体が通り抜けできる穴を有する第1、第2の基材2,3と、自然に分解する材料からなり発芽した根や地下茎が通り抜けできる穴を有するフエルト状の第1のマット4と、自然に分解する材料からなり発芽した草体が通り抜けできる穴を有する第2のマット5とを有し、第1の基材2上に載置した第1のマット4の上に種子を混入した砂泥等6を伸展し、この第1のマット4上に第2のマット5及び第2の基材3を順次載置し、第1、第2の基材2,3の周縁部を自然に分解する材料からなる複数の固定具により固定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然に分解する材料からなり発芽した草体が通り抜けできる穴を有する第1、第2の基材と、自然に分解する材料からなり発芽した根や地下茎が通り抜けできる穴を有するフエルト状の第1のマットと、自然に分解する材料からなり発芽した草体が通り抜けできる穴を有する第2のマットとを有し、
前記第1の基材上に載置した第1のマットの上に種子を混入した砂泥等を伸展し、前記第1のマット上に第2のマット及び第2の基材を順次載置し、前記第1、第2の基材の周縁部を自然に分解する材料からなる複数の固定具により固定したことを特徴とする水中種子植物の造成基盤。
【請求項2】
前記造成基盤を、縦500mm、横500mm程度に形成したことを特徴とする請求項1記載の水中種子植物の造成基盤。
【請求項3】
請求項1又は2に係る複数の造成基盤を自然に分解する材料からなるロープで連結し、敷設水域において順次水中に降して水底に敷設することを特徴とする水中種子植物の造成基盤の敷設方法。
【請求項4】
前記造成基盤を造成基盤運搬容器内に収容し、常時湿潤状態に維持して敷設水域へ運搬することを特徴とする請求項3記載の水中種子植物の造成基盤の敷設方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水生種子植物の造成基盤及びその敷設方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、沿岸地域の開発などにより、例えばアマモの如き水生種子植物の生息適地が著しく減少しており、このため、人工的に水生種子植物場の造成が試みられている。
このアマモ造成のための播種シート及び播種方法として、生分解性樹脂からなる網状シート部材にアマモの種子を所定の播種密度となるように固定させてロール状に巻いた播種シートを製造し、この播種シートをアマモを造成する水底に敷設装置により回転させながら拡げて敷設するようにした発明がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、アマモ草体が潜り抜け可能な孔を穿孔した網状体で、堆積した漂砂が面上に若干被る程度の高さに形成した底抜箱状の上部工の下に、堆積した砂の重量を受け止めると共に地下茎が絡み付き可能な孔を穿設した網状体の下部工を配する。そして、上部工と下部工の間に、波浪に正対して漂砂を捕えるに適した流速減衰機能を備えた壁体を立設させた中部工を介設すると共に、一部にアマモ種子を内蔵させた播種袋を配設し、周囲に端部の洗堀を防止する板状の安定工を配設した発明がある。なお、上部工と中部工は海水中で自発的に腐食消失する金属素材で形成されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−42626号公報
【特許文献2】
特開2002−171852号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載された発明は、回転体にロール状に巻かれた播種シートを積載した台船を目的地に移動し、回転体を吊り具にセットしてクレーンにより海中に降し、播種シートを拡げながら海底に敷設するようにしているため、敷設設備がきわめて大がかりになり、高額の敷設費用がかかるという問題がある。
さらに、播種シートは拡げると長大になるため、凹凸や岩石等が存在する海底にはなじまず、敷設後に移動することもできないため、場所によっては根及び地下茎が海底に伸展できず、アマモが十分繁茂できないおそれがある。
【0006】
特許文献2に記載された発明は、上部工、中部工、安定工、下部工等多くの部材からなるため構造が複雑であり、工全体の外形が900×900×50(mm)に達する大きさのため、陸上での運搬には支障がないサイズであるが、水中では水の抵抗が大きく、移動させることが困難である。また、アマモの種子は袋に入れられているため発芽しにくく、発芽しても根が張りにくいため定着性が悪いという問題がある。
さらに、アマモの種子及び苗は乾燥すると枯死してしまうため、常に湿潤状態に保つことが必要である。しかし、特許文献1には、アマモの種子をカプセル内に封入したり、種子の表面を被覆することにより乾燥を防止するとの記載はあるが、具体的手段については記載されておらず、特許文献2には乾燥防止の対策については記載されていない。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、自然に分解する材料からなり、水中種子植物の種子又は苗を備えた小型軽量かつ簡単な構造で、水中種子植物が効率より繁茂することのできる水中種子植物の造成基盤を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、簡単な設備及び手段により季節を問わず水中に敷設することのできる水中種子植物の造成基盤の敷設方法を提供することを目的としたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明に係る水中種子植物の造成基盤は、自然に分解する材料からなり発芽した草体が通り抜けできる穴を有する第1、第2の基材と、自然に分解する材料からなり発芽した根や地下茎が通り抜けできる穴を有するフエルト状の第1のマットと、自然に分解する材料からなり発芽した草体が通り抜けできる穴を有する第2のマットとを有し、前記第1の基材上に載置した第1のマットの上に種子を混入した砂泥等を伸展し、前記第1のマット上に第2のマット及び第2の基材を順次載置し、前記第1、第2の基材の周縁部を自然に分解する材料からなる複数の固定具により固定したものである。
【0009】
(2)上記(1)の造成基盤を、縦500mm、横500mm程度に形成した。
【0010】
(3)また、本発明に係る水中種子植物の造成基盤の敷設方法は、上記(1)又は(2)に係る複数の造成基盤を自然に分解するロープで連結し、敷設水域において順次水中に降して水底に敷設するようにしたものである。
【0011】
(4)上記(3)の造成基盤を造成基盤運搬容器内に収容して常時湿潤状態で敷設水域へ運搬するようにした。
【0012】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る水中種子植物の造成基盤の一部を断面で示した模式図、図2はその分解斜視図である。なお、以下の説明では、水中種子植物としてアマモを造成する場合について説明する。
両図において、1はアマモの造成基盤である。2は例えば鋼材からなる金網のように海中で自然に腐食して分解する金属材料からなる第1の基材で、発芽したアマモの草体が通り抜けることのできる大きさの多数の穴(網目)が設けられている。3は第1の基材2と同じ材料、同じ構造の第2の基材で、両基材2,3は縦横の長さが500mm程度のものである。なお、第1、第2の基材2,3の外周縁には、自然に腐食して分解する金属材料からなる額縁状の枠を設けてもよい。また、第1、第2の基材2,3は、金網に代えて鋼製のエキスバントメタルやパンチングメタル等を用いてもよい。
【0013】
4は天然繊維や生分解性繊維などの自然に分解する材料からなり、発芽したアマモの根や地下茎が通り抜けることのできる大きさの多数の小さい穴を有するフエルト状の第1のマット、5は天然繊維や生分解性繊維などの自然に分解する材料からなり、発芽したアマモの草体が通り抜けることのできる大きさの多数の穴(網目)を有する第2のマットで、これら第1、第2のマット4,5は、第1、第2の基材2,3とほぼ同じ大きさか又は若干小さく形成されている。6はアマモの種子を混入した砂泥又は砂泥状のもの(以下、砂泥等という)である。
【0014】
上記のような部材からなる造成基盤1を組立てるにあたっては、先ず、第1の基材2の上に第1のマット4を載置し、ついで、第1のマット4の上にアマモの種子を混入した砂泥等6を盛上げて、第1のマット4のほぼ全面にわたって種子が所定の密度でほぼ均等に分布するように均らし、平坦にする。なお、このとき、砂泥等6に肥料を混入してもよい。
次に、第1のマット4の上に第2のマット5を載置し、さらに、その上に第2の基材3を載置する。そして、上下に設けられた第1、第2の基材2,3の周縁部を、自然に腐食して分解する材料からなる例えば鋼製のクリップの如き複数の固定具(図示せず)で挟んで、一体に固定する。
【0015】
これにより、アマモの種子を混入した砂泥等6は、第1、第2のマット4,5の間に挟まれて確実に保持される。
このように、本発明に係る造成基盤1は、特殊な材料を使用することなく構造も簡単なので、容易かつ安価に製造することができる。なお、造成基盤1は、例えば、縦500mm、横500mm、厚み(高さ)10〜15mm程度の大きさであり、基盤本体の重量は3kg程度、アマモの種子を混入した砂泥等6を第1、第2のマット4,5間に配設した場合の全重量は5kg程度である。
【0016】
上記のような造成基盤1はあらかじめ工場等で製造され、水槽等の中に浸漬して保管される。このため、季節によってはアマモの種子が発芽し、草体が第2のマット5、第2の基材3の穴から伸び出すことがあり、また、根が第1のマット4に絡み付き、一部の根は第1のマット4の穴から伸展することがあるが、根があまり長くならなければ海底への敷設には支障がない。
【0017】
次に、上記のように構成した造成基盤1の海底への敷設手順の一例について説明する。
先ず、複数の造成基盤1を、図3に示すように、天然素材からなり自然に分解する材料からなる所定長さの2本のロープ10で連結し、小型船11に積込んで敷設海域へ運搬する。なお、ロープ10の長さは、敷設場所、敷設密度、その他の条件により適宜設定する。
【0018】
ところで、前述のようにアマモの種子及び苗は、乾燥すると枯死してしまうため常に湿潤状態にしておくことが必要である。このため、敷設にあたっては、工場等の保管場所(例えば、水槽内)から敷設海域に移動する間、図4に示すような造成基盤運搬容器20(以下、運搬容器という)内に収容し、湿潤状態を保ちながら運搬するようにした。
【0019】
図4において、21は運搬容器20を構成する前面が開口した箱状の容器本体で、両側板の内壁には上下方向に適宜間隔で棚板22が対向して設けられており、天板には容器本体1内に海水を散布するための例えば金網の如き散布部材23が設けられている。なお、図には容器本体21の前面を開口した場合を示したが、湿潤状態をより確定に維持するためには、前面の開口部を扉等で閉じることが望ましい。
この容器本体21内に造成基盤1を挿入し、棚板22上に順次載置して敷設海域へ運搬する。この間例えばバケツ24により適宜散布部材23の上から海水を流し込んで容器本体1内に散布すれば、海水は各造成基盤1を経て順次流下し、下部から容器本体21外に流出する。これにより、造成基盤1、したがって、アマモの種子や苗は常に湿潤状態を保つことができ、遠隔地で播種又は育苗されたアマモを安全に運搬することができる。なお、バケツにより海水を給水する場合を示したが、例えばポンプにより海水を汲上げて自動的に給水するなど、海水の給水には適宜の手段を用いることができる。
【0020】
敷設船11が敷設海域に到達したときは、図3に示すように、運搬容器20から取出した造成基盤1をロープ10で連結して順次船尾から繰出して海中に降し、先端部の造成基盤1を杭12などにより海底に固定する。海中に降された造成基盤1は自重により沈下し、所定の間隔(ロープ10の長さに対応)で海底に敷設される。なお、本発明に係る造成基盤1は、厚み(高さ)が薄い(例えば、10〜15mm程度)ため波浪等の影響を受けにくいが、海象条件が厳しく安定しにくい場合は、各造成基盤1ごとに又は適宜間隔で杭などにより海底に固定すればよい。
【0021】
造成基盤1の敷設にあたっては、敷設船が小型なので、アマモが繁茂するに適する浅い海域(例えば、水深2m程度)にも進入することができ、これにより造成基盤1の敷設海域を大幅に拡大することができる。
また、複数の造成基盤1をロープ10で連結して順次海中に投下するようにしたので、敷設作業が容易であり作業効率を大幅に向上することができる。さらに、複数の小型の造成基盤1をロープ10で連結することにより、造成基盤1の間隔及び数量を敷設海域の状態に合わせて調整できるので、複雑な海底地形にも対応することができる。
【0022】
また、敷設海底の状態によっては一部の造成基盤1を移動させたい場合があるが、本発明に係る造成基盤1は小型軽量で水の抵抗も小さいため、1人の潜水士13により好ましい場所に移動させることができる。
さらに、敷設の際に重機等を使用しないので、例えば、干潮時などに浅い海域に造成基盤1を敷設する場合は、潜水士13を必要とすることなく、アマモ場造成を必要とする漁業者などでも敷設作業を行うことができる。
【0023】
また、造成基盤1は小型でロープ10により連結することができるので、大規模のアマモ場の造成を容易に行うことができると共に、小規模のアマモ場の造成も効率よく行うことができる。さらに、必要に応じて、大規模のアマモ場の造成を行う前に、小規模の適地選定試験を行うこともできる。
【0024】
このようにして海底に敷設された造成基盤1は、アマモの種子が発芽し、あるいは苗が成長してその根や地下茎が第1のマット4に伸展すると共に、第2のマット5、第2の基材3の穴を通って上方に伸び、繁茂してアマモ群落が形成される。そして、アマモが成長するにつれて海底の天然地盤にもアマモの根や地下茎が伸展し、さらに繁茂する。
このように、本発明においては、アマモの種子を混入した砂泥等6を、下面の穴の小さい第1のマット4と、上面の穴の大きい第2のマット5との間に挟持して保持するようにしたので、アマモの種子の発芽率及び発芽後の根や地下茎の固着率を大幅に向上させることができる。
【0025】
また、造成基盤1は、腐食により自然に分解する材料で形成されているので、時間の経過と共に自然に分解して消失し、アマモ群落だけが残り、アマモの根や地下茎により地盤が安定し、アマモ群落が維持される。
【0026】
[実施の形態2]
実施の形態1では、アマモの種子を混入した砂泥等6を、穴の小さい第1のマット4と、穴の大きい第2のマット5との間に挾持して保持する場合を示したが、第1のマット4に、第2のマット5と同じ大きさの穴を有するマットを用いてもよい。これにより、施工性を向上することができる。
【0027】
上記の説明では、主としてアマモの種子を混入した砂泥等6を第1のマット4と第2のマット5の間に保持させた造成基盤1を海底に敷設する場合を示したが、水槽内等において造成基盤1から発芽したアマモの苗を育苗したのち海中に敷設してもよい。このように、アマモを種子の状態で、又は発芽した苗を育苗した状態の造成基盤1を形成することにより、季節に関係なく、造成基盤1をいつでも海中に敷設することができる。
【0028】
また、上記の説明では、アマモの種子を内蔵した造成基盤1により海中にアマモ場を造成する場合を示したが、本発明はこれに限定するものではなく、海水中又は淡水中で育成され繁茂する他の水中種子植物場の造成にも本発明を実施することができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明は、第1の基材上に載置した第1のマットの上に種子を混入した砂泥を伸展し、この第1のマットの上に第2のマット及び第2の基材を順次載置して第1、第2の基材の周縁部を自然に分解する材料からなる複数の固定具により固定するようにしたので、小型軽量かつ安価で環境にやさしい水中種子植物の造成基盤を得ることができ、またこの造成基盤を水中種子植物場が成立しにくい水域に敷設することにより、水中種子植物群落を成立させることができる。
【0030】
また、本発明は、小型の敷設船に上記の造成基盤をロープで連結して積込み、敷設水域に運搬して順次水中に降して敷設するようにしたので、水中への敷設が容易で浅い水域にも敷設することができるため、敷設船による敷設領域を拡大することができる。また造成基盤は小型軽量なので、投下した造成基盤を移動することにより敷設位置を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る造成基盤の一部を断面で示した模式図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】本発明に係る造成基盤の敷設方法の説明図である。
【図4】造成基盤の運搬に使用する運搬容器の説明図である。
【符号の説明】
1 水中種子植物の造成基盤
2 第1の基材
3 第2の基材
4 第1のマット
5 第2のマット
6 種子を混入した砂泥等
10 ロープ
11 敷設船
20 造成基盤運搬容器
【出願人】 【識別番号】501074054
【氏名又は名称】前川 行幸
【識別番号】593065556
【氏名又は名称】芙蓉海洋開発株式会社
【識別番号】000113193
【氏名又は名称】ベニートヤマ株式会社
【出願日】 平成14年11月11日(2002.11.11)
【代理人】 【識別番号】100061273
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 宗治

【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫

【識別番号】100060737
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 三朗

【識別番号】100070563
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 昇

【公開番号】 特開2004−159512(P2004−159512A)
【公開日】 平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願番号】 特願2002−326303(P2002−326303)