トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 コケ育成シート及びそれを用いた構造物緑化方法
【発明者】 【氏名】兵藤 勲
【住所又は居所】岐阜県中津川市手賀野690番地15 三野道路株式会社内

【要約】 【課題】育成されるコケが、耐乾燥に優れ、且つコケの育成期間において容易に群落を形成するコケ育成シートと、それを用いた構造物緑化方法を提供する。

【解決手段】本発明のコケ育成シートでは、コケ類がシート内に含有されてなるコケ育成シートであって、シート基材の主体をなす親水性の繊維の集合体中にコケ類が保持されており、該コケ類は第一コケ及び第二コケを含む複数種類のコケからなり、第一コケは第二コケよりも耐乾性に優れたコケ類からなるコケであり、第二コケは第一コケよりも群落を形成し易いコケ類からなるコケであることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コケ類がシート内に含有されてなるコケ育成シートであって、シート基材の主体をなす親水性の繊維の集合体中にコケ類が保持されていることを特徴とするコケ育成シート。
【請求項2】
前記親水性の繊維は、パルプからなることを特徴とする請求項1記載のコケ育成シート。
【請求項3】
前記パルプは、前記コケ類の育成期間において経年変化により徐々に漸滅していくことを特徴とする請求項2記載のコケ育成シート。
【請求項4】
前記パルプのうち一部または全部は、古紙を溶解した古紙パルプからなることを特徴とする請求項2または3に記載のコケ育成シート。
【請求項5】
前記コケ類は、複数種類のコケからなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコケ育成シート。
【請求項6】
前記パルプ中には、短い繊維片又は短い糸状物が所定量混入される請求項2ないし4のいずれか1項に記載のコケ育成シート。
【請求項7】
前記パルプ中には、古着等の布を破砕ないし粉砕した短い繊維片又は短い糸状物が所定量混入される請求項6に記載のコケ育成シート。
【請求項8】
前記パルプは、シート状の布をシート基材の一部としてその両面又は片面に付着した形態とされる請求項2ないし4のいずれか1項に記載のコケ育成シート。
【請求項9】
前記シート状の布は、前記パルプ中に埋設される芯材として機能し、その芯材としての布を前記パルプが取り巻いて前記シート基材を構成している請求項2ないし4のいずれか1項に記載のコケ育成シート。
【請求項10】
前記複数種類のコケは、第一コケ及び第二コケを含み、第一コケは第二コケよりも耐乾性に優れた種類のコケであり、第二コケは第一コケよりも群落を形成し易い種類のコケであることを特徴とする請求項5記載のコケ育成シート。
【請求項11】
前記第一コケは、ギボウシゴケ科のコケからなることを特徴とする請求項10記載のコケ育成シート。
【請求項12】
前記第二コケは、ハイゴケ科のコケからなることを特徴とする請求項10または11に記載のコケ育成シート。
【請求項13】
前記シート基材には、前記コケ類の肥料となる肥料材が含まれていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載のコケ育成シート。
【請求項14】
前記肥料材は、土、粘土、砂、ワラ屑及び微生物のうち1種以上からなることを特徴とする請求項13記載のコケ育成シート。
【請求項15】
前記シート基材には、前記親水性の繊維に対するバインダとしての結合剤が含まれていることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載のコケ育成シート。
【請求項16】
前記コケ育成シートには、前記コケ類が20〜60重量%の割合で含まれていることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載のコケ育成シート。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載の前記コケ育成シートを構造物表面上に貼り付け、前記コケ類を育成することにより前記構造物表面を緑化することを特徴とする構造物緑化方法。
【請求項18】
前記第一コケは、ギボウシゴケ科シモフリゴケ属のコケからなることを特徴とする請求項10記載のコケ育成シート。
【請求項19】
前記第二コケは、ハイゴケ科ハイゴケ属のコケからなることを特徴とする請求項10に記載のコケ育成シート。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、コケ類を繁殖させるためのコケ育成シート及びそれを用いた構造物緑化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大都市圏を中心として、気温が上昇するヒートアイランド現象が大きな問題になっている。これは緑地や水面が減り、コンクリートやアスファルト等からなる構造物が増えたことにより、構造物から発生した熱を、植物が吸収しきれなくなってきたことが要因である。そこで、コンクリート等の構造物の表面上に植物を育成させる試みがなされている。
【0003】
植物の中でも、コケ類は、他の植物と違い根と呼ばれる通導組織がほとんどなく、空気中から水分、養分を吸収して生育することができるため、土壌を必要せず、また乾燥に非常に強い。そのため他の植物では生物層形成が困難なコンクリート等の構造物の表面上で育成するのに適している。
【0004】
コケ類をコンクリート等の構造物の表面上で人為的に繁殖させる方法としては、例えば、紙片及びコケ類等からなるシート(例えば、特許文献1)を、コンクリート等の構造物表面上に貼り付けて、構造物表面上でコケを繁殖させる方法などがある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−58335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、緑化の試みがなされる構造物というのは、雨天の場合を除くと常に乾燥状態に近いものが多く、上記のようなコケの繁殖方法ではコケが乾燥に耐えられず、生育させることが不可能な場合があるといった問題が生じる。また、コケは群落を形成することにより保水性が向上するので、上記のようなシートでは、コケが群落を形成し難く、形成するまでに乾燥に耐えられずに育成が不可能な場合があったり、さらに見た目においてもコケが疎らにあるため、逆に景観を損ねてしまうといった問題も生じていた。
【0007】
そこで、本発明における課題は、育成されるコケが、耐乾燥に優れ、且つコケの育成期間において容易に群落を形成するコケ育成シートと、それを用いた構造物緑化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び作用・発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のコケ育成シートでは、コケ類がシート内に含有されてなるコケ育成シートであって、シート基材の主体をなす親水性の繊維の集合体中にコケ類が保持されていることを特徴とする。このシートの一方の面が構造物表面に貼り付けられる貼り付け面とされてなる。コケ類の育成には水分が必要不可欠であるが、上記のように親水性の繊維によりコケ類を取り囲むことで、親水性の繊維は、雨水等の水分をコケ類の周囲に一定期間保持し、コケ類に育成のための水分を与えることになるので、コケ類の生長を促すことができる。なお、親水性の繊維はシート基材の主体となるが、ここでいう主体とは、シート基材の重量のうち70重量%以上を親水性の繊維が占めているということであり、またシート基材の全てが親水性の繊維からなっていてもよい。
【0009】
一般にコケ類と呼ばれるものには、様々な種類のコケが存在し、それぞれの種類のコケは、乾燥に強い等の特有の性質を有する。また、異なる種類のコケが混ざり合った状態でも群落を形成することから、複数種類のコケからコケ育成シートを構成した場合、育成するコケの群落は、含まれるそれぞれのコケの性質を併せ持つこととなる。そこで、複数種類のコケは第一コケ及び第二コケを含み、第一コケは第二コケよりも耐乾性に優れた種類のコケ、第二コケは第一コケよりも群落を形成し易い種類のコケとした場合、第二コケの群落中に乾燥に強い第一コケを保持させるといった形態でのコケの育成が可能となり、これによりコケの育成において、優れた耐乾性、及び群落を形成し易いといったそれぞれの長所を持ち合わせたコケ育成シートを得ることが可能となる。
なお、この明細書で「コケ類」とは、狭義のコケを含めることはもちろん、蘚類、苔類、ツノゴケ類を包含する蘚苔植物の意味である。
【0010】
耐乾燥性に優れた特徴をもつ第一コケとしては、具体的には、ギボウシゴケ科シモフリゴケ属のコケが適用可能である。ギボウシゴケ科シモフリゴケ属(Racomitrium Brid.)のコケは、通称スナゴケ(砂ゴケ)と呼ばれ、エゾスナゴケ(Racomitrium japonicum Dozy et Molk.)やコバノスナゴケ(Racomitrium barbuloides Card.)をはじめとし多数の種類が存在する。このスナゴケは、自重の約20倍もの水を保つことができ、また大気の乾燥に対しては体内の水分を蒸散することで生命を守るので、強い光や急激な乾燥に耐えることが可能である。またスナゴケは、その名の示すように、砂等の無機質で乾燥した土壌でも生長するなど、太陽光と雨水のみでどんな環境でも順応し育つため、コンクリート等の構造物表面に生育させるのに非常に適したコケである。
【0011】
群落を形成し易いという特徴をもつ第二コケとしては、具体的には、ハイゴケ科ハイゴケ属のコケが適用可能である。ハイゴケ科ハイゴケ属(Hypnum Hedw.,nom.cons.)のコケは、通称ハイゴケ(這いゴケ)と呼ばれ、ハイゴケ(Hypnum plumaeforme Wils.)をはじめとし多数の種類が存在する。このハイゴケは、その名の示すように、地を這うように重なり合って厚い群落をつくり生育するコケであり、構造物表面で育成を行った場合、表面に沿って生育し、表面上に群落を形成し易い。また、前述のスナゴケ程ではないが、強い光や急激な乾燥に耐えることができるので、耐乾燥に優れ、群落を形成し易いコケ育成シートの材料として適している。
【0012】
以上のような種類のコケを用いることで、育成されるコケが、耐乾燥に優れ、且つコケの育成期間において容易に群落を形成するコケ育成シートを得ることが可能となる。また、このようなコケ育成シートにおいては、コケの育成を促すため等の目的で以下に記述するように形成することができる。
【0013】
本発明のコケ育成シートでは、シート基材の主体をなす親水性の繊維をパルプで構成することができる。これにより、パルプは育成期間においてコケ類の周囲の水分を保持し、コケ類の生育を促す。また、シート基材は、シートの保存、運搬時、またはコケ類の育成期間中において、シート中にコケ類を固定する目的でも用いられるが、育成期間を経て、コケ類が厚い群落を形成した場合、シート基材は不必要なものとなる。そこで、シート基材の主体をなす親水性の繊維をパルプで構成すれば、パルプは育成期間においてコケ類の周囲の水分を保持し、コケ類の生育を促すとともに、雨水等により洗い流され徐々に漸滅して、コケ類が厚い群落を形成する頃にはシート基材が消滅し、構造物表面にはコケ類のみが存在することとなる。さらに、パルプのうち一部または全部を、古紙を溶解した古紙パルプにより構成すれば、コケ育成シートのコストを大幅に下げることが可能となるうえ、無駄な環境破壊をせずとも済むこととなる。
なお、前記パルプ中に、古着等の布を破砕ないし粉砕した短い繊維片又は短い糸状物を所定量混入することにより、これが古紙等のパルプの結合強度を物理的に高める機械的結合子の役割を果たし、その結果、古紙等のパルプひいてはコケ育成シートの一体性が増大し、その強度が高まる。
さらに、シート状の布を芯材にしてそれを取り巻くように古紙パルプその他のパルプを該布に付着させ、そのシート状の布が例えば上記パルプ中に埋設された形態とすることができる。このようにすることにより、内部に芯材としてシート状の布(織布又は不織布)が存在するため、古紙等のパルプ層はその布により補強され、コケ育成シート全体の破断強度、引張り強度等が増大し、製造時の取り扱いがしやすくなり、施工も破断しにくいから容易に行うことができる。また古紙等のパルプ層の形成においても、シート状の布を核としてこれに流動状のパルプを付着させればよいので、そのパルプ性層を容易に形成することができる。
【0014】
また、コケ類の生長を促すため、シート基材には、コケ類の肥料となる肥料材が含ませることができる。肥料材としては、土、粘土、砂、ワラ屑及び微生物のうち1種以上からなるものを適宜使用可能である。このような肥料材を用いれば、化学合成材を使わず、自然な状態でコケ類を育成することが可能となる。
【0015】
さらに、シート基材は親水性の繊維の集合体からなるため、シートが型崩れ等を起こし、損傷してしまう可能性がある。そこで、シート基材には、親水性の繊維に対するバインダとしての結合剤を含ませることにより、親水性の繊維間に結合剤を介在させて、親水性の繊維間の結合を向上させることができるので、シートの損傷を防ぐことができる。これにより、シートの保存、運搬及び構造物表面への取り付けが行い易くなることになる。
【0016】
なお、本発明のコケ育成シートは、コケ類が20〜60重量%の割合で含まれていることを特徴としている。コケ類が20重量%未満であれば、シート内にコケ類が不足し、育成することが困難となる場合が生じ、60重量%を超えれば、コケ類が過剰なため、シートに亀裂等が生じやすくなり、強度を保てなくなる不具合が生じる。また、好ましくは35〜45重量%、さらに好ましくは38〜42重量%とするのがよい。
【0017】
本発明の構造物緑化方法では、上述したコケ育成シートを構造物表面上に貼り付け、コケ類を育成することにより前記構造物表面を緑化する。該シートは、ほぼ親水性の繊維とコケ類からなるので軽量であり、また該シートは親水性の繊維とコケ類がシート状に一体化しているため、該シートを貼り付けたコンクリート等の構造物に負担が少なく、貼り付け工程も容易となる。これにより、初期費用を軽減できるうえ、貼り付け後は、コケ類は潅水、施肥、刈り込み等の維持管理を行わなくても育成を続けるため、ランニングコストもかからず、緑化に必要な
コストを著しく軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のコケ育成シート及びそれを用いた構造物緑化方法の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係るコケ育成シート1の断面模式図である。該コケ育成シート1では、シート基材3中に多数のコケ類2が分散しており、コケ類2はシート基材3に取り囲まれ固定されている。また、コケ類2は、耐乾性に優れたギボウシゴケ科の例えばシモフリゴケ属(Racomitrium Brid.)であるエゾスナゴケ(Racomitrium japonicum Dozy et Molk.)、コバノスナゴケ(Racomitrium barbuloides Card.)、及び群落を形成し易く、また耐乾性も有するハイゴケ科の例えばハイゴケ属(Hypnum Hedw.,nom.cons.であるハイゴケ(Hypnum plumaeforme Wils.)からなる。
【0019】
図2は、図1に示したコケ育成シート1のシート基材3部分における拡大図である。シート基材3は、主にパルプ31からなり、また他にも土質細物32及びワラ屑35がコケ類2の肥料となる肥料材として混入されている。肥料材としては、他にも粘土や砂を用いることが可能であり、またこれらの肥料材にはコケ類2の肥料となる微生物を添加することもできる(土、粘土、砂、ワラ屑などには初めから微生物が存在しているので、あえて添加せずともよい場合も考えられる)。なお、パルプとは詳しくは植物体の繊維を分断したものであるが、ここではそれらの集合体についてもパルプ31としている。また、図示しないが、そのような集合体を形成させるバインダとしての結合剤もパルプ31には含まれている。
【0020】
以上のようなコケ育成シート1の製造方法を、図3を参照して説明する。まず、図3(a)において、古新聞及び古ダンボール等の古紙を、水4を加えてミキサーにより粉砕(パルプ31に分解する)、ゲル状にしたもののなかに、上述した種類のコケ類2、土質細物32及びワラ屑35を混入させた後、よく混練して混練物8(図3(b)に示す)を生成する。なおここでは、コケ類2は、自然に生息しているコケを採取し、水洗いをしてから乾燥させて、粗く粉砕したものを用いているが、粉砕していないものを用いることも可能である。
また、古着等の布を破砕ないし粉砕した短い繊維片や短い糸状物を、上記古紙に所定量(例えば体積比で50%以下、中でも20%以下、例えば0.1〜10%程度)混入することができる。この繊維片や糸状物は、天然繊維、合成繊維(ガラス繊維含む)のいずれでもよく、ゲル状の古紙内にコケとともに混入させるか、または古紙の粉砕の際に古布も併せて粉砕してゲル状の古紙に混入させることができる。このような短い繊維片や糸状物の混入により、古紙の結合力を高める機能(成形後のコケ育成シート(シート基材)の一体強度を増大させる機能)を生じさせることが可能である。
【0021】
次に、得られた混練物8を、底面に貫通孔61を有する型枠6に入れ(図3(b))、型枠6の形状に対応し、且つ貫通孔71を有する押し板7により混練物8を押圧し(図3(c))、貫通孔61、71から余分な水4を抜き、混練物8をシート状に成形する。なお、押し板7により混練物8を押圧する圧力は、おおよそ2〜6kg/cm2、例えば4kg/cm2程度である。その後、押し板7を抜き、シート状に成形された混練物8を型枠6に入れたまま、乾燥させる(図3(d))。混練物8が乾燥したら型枠6から取り出す。そして、このように乾燥した混練物8が本発明のコケ育成シート1となる(図3(e))。
【0022】
このようにして得られるコケ育成シート1は、図4に示すようなシート状になっており、その大きさは、例えば縦Lが27.5cm、横Wが57.0cmである(型枠6の形状に対応する)。また、厚さHは、例えば3mm、5mm、8mmの3種類が用意されるが、これは型枠6に入れられる混練物8の量により決定される。なお、コケ育成シート1には、パルプ31を主体とするシート基材3が50〜70重量%、例えば60重量%程度、コケ類2が30〜50重量%、例えば40重量%程度の割合で含まれ、またシート基材3に対するパルプ31の割合は80重量%程度である。
【0023】
このようなコケ育成シート1は、パルプ31及び少量の土質細物32、ワラ屑35からなるシート基材3とコケ類2からなるため、非常に軽量であり(例えば、厚さ3mmの場合に80g程度)、またシート状に一体化しているため、後述する構造物緑化方法において、コケ育成シート1を貼り付けたコンクリート等の構造物に負担が少なく、また貼り付け工程も容易となる。
【0024】
以下に、本発明の構造物緑化方法の実施の形態を記述する。本実施形態では、上述ようにして得られるコケ育成シート1を用いて構造物の緑化を行う。図5に示すように、緑化を行いたいコンクリート等の構造物9の表面を、多数のコケ育成シート1を敷き詰めることにより覆う。このとき、コケ育成シート1は、図5(b)に示すように、構造物9の表面に所定の接着剤10、例えばシリコン樹脂系接着剤、により接着される。この接着剤10は施工時から育成期間においてコケ育成シート1を構造物9の表面に固定する役割を果たすが、年月の経過とともに風化し、またコケ類2の根のように見える仮根(主に体の固着機能を果たす)が接着剤を侵食して構造物表面に張り付く状況も生じやすいことから、最終的に接着剤10はほとんど消滅し、またシート基材3も風化して消滅し、コケ類2の仮根が構造物の表面に張り付いてコケ類2のみが存在するような状態となる。
【0025】
コケ育成シート1の貼り付け後は、コケ類2は潅水、施肥、刈り込み等の維持管理を行わなくても育成を続ける。さらに、シート基材3は育成期間においてコケ類2の周囲の水分を保持し、コケ類2の生育を促すとともに、雨水等により徐々に洗い流され、コケ類2が厚い群落を形成する頃には、図5(c)に示すように、シート基材3が消滅し、構造物9の表面にはコケ類2が群落を形成した状態となる。
【0026】
以上に記述した本実施形態により、育成されるコケが、耐乾燥に優れ、且つコケの育成期間において容易に群落を形成するコケ育成シート及びそれを用いた構造物緑化方法が実現する。なお、以上の説明では、シート基材に、ギボウシゴケ科シモフリゴケ属のエゾスナゴケとコバノスナゴケ、及びハイゴケ科ハイゴケ属のハイゴケの2種3品目のコケを含有させる場合を説明したが、これを3種以上とすることもできるし、更には施工地の気候系に合った1種のコケを選定することもできる。またはそれぞれの種について1品目もしくは2品目以上のコケを選定することもできる。
【0027】
また、コケ育成シート1の構造物の表面へ貼り付ける貼り付け面に予め接着剤を塗布して接着層を形成し、その表面をさらに剥離紙で覆っておき、コンクリート壁等の構造物壁面への貼り付け施工のときにその剥離紙を剥がし貼り付ける方式とすることもできる。あるいは、その接着剤層を例えば水性で乾燥タイプのものとし、剥離紙なしで保管・運搬等し、貼り付け施工の際に構造物表面とその接着剤層との少なくとも一方を水で濡らして、粘着性を付与させることにより貼り付け、乾燥固化後は雨等に当たっても接着剤を保持する構成の接着剤層とすることもできる。
【0028】
図6,7は別の実施例を示している。この実施例のシート基材3では、図6に示すように、パルプ31を主体として、ワラ屑35、土質細物32の他、短い繊維片又は短い糸状物(以下、短繊維片36という)が所定量混入されている。この短繊維片36は、例えば古布(あるいは品質が不適格品とされた布製品等)を破砕や裁断により細かい繊維片や糸状物にしたものを使用することができる。この短繊維片36は、パルプ31にからみついて、パルプ31の結合強度を物理的に高め、最終的に得られるコケシートの引張り強度や破断強度を高めることになる。
【0029】
図7は、水4でゲル状にしたパルプ31に、コケ類2、土質細物32、ワラ屑35に加え、短繊維片36を混入させる状態を模式的に示している。この短繊維片36は、図7(a)に示す前述のように古布等を破砕ないし裁断して予め用意したものであり、これが図7(a)に示すように、パルプ31に混入され、コケ類2、土質才物32、ワラ屑35等と共に攪拌される。以後は、図3(b)〜(e)に示した工程と同じようにして、最終的にコケ育成シート100が得られ、その中の短繊維片36はパルプ31をつなぐ補強材と言うことができる。
【0030】
図8〜10は更に別の実施例を示している。この例では、図8に示すように、シート基材の一部ないし芯材として布40(例えば古布、古タオル、あるいは古着をコケ育成シートに対応する大きさに切断したもの、若しくはコケ育成シートの専用布として製作されたもの)が使用される。布40は、親水性があれば織布のほか不織布でもよい。また布の材質は天然繊維のほか、合成繊維のものでもよいが、経年変化で分解するものが好ましい。
【0031】
図9(a)に示すように、布40の両面に、前述のコケ類2、土質細物32、ワラ屑35等が混合されたパルプ31(さらに前記短繊維片36を混入したものでもよい)が付着されることにより、布40を芯材としてその周りをパルプ31で取り巻いたコケ育成シート120とすることができる。言い換えば、芯材としての布40がパルプ31中に埋設された形態であり、この例ではパルプ31と布40とが協働してシート基材を構成する。
【0032】
あるいは、図9(b)にように、布40をベース(補強材)として、その片面にコケ類2、土質細物32、ワラ屑35、更に必要に応じて短繊維片36等が混合されたパルプ31を付着させたコケ育成シート130とすることもできる。この場合でも、通常、パルプ分が布40の繊維間に浸透した形態となり、パルプ31と布40がシート基材となる。
【0033】
図10は、上記布40を含むコケ育成シートの製造方法の一例を示している。
同図(a)に示すように、コケ育成シートとほぼ同じ大きさに調整された布40が用意される。そして、前述のようにパルプを水4と溶いてゲル状にし、これにコケ類2、土質細物32、ワラ屑35、更に必要に応じて短繊維片36等が混合される。その混合されたゲル状のパルプ31に、同図(b)に示すように、上記布40が浸漬される。
【0034】
さらに同図(c)のように、ゲル状のパルプ31及びその中に入れられた布40を、プレス手段としての押し板7でプレスして、水分を減少させるとともに、シート形態に押圧成形する、その後同図(d)に示すように、プレス後の布入りパルプ31(コケ類2、土質細物32、ワラ屑35等が混合されている)が、型枠6内で乾燥され、その後、同図(e)にように、型枠6から乾燥シート状物として取り出され、コケ育成シート140となる。
【0035】
このようなコケ育成シート140は、内部に芯材として布40が存在するため、破断強度、引張り強度が高く、取り扱いが容易で、壁面等への施工がしやすい利点がある。なお、布40は補強材として機能するが、経年劣化により最終的には原形をとどめないものとなるのが普通である。
【0036】
以上のような布は、例えばタオルのようなものでもよく、また布に古紙パルプとコケ類を付着させる方法として、古紙等のゲル状パルプに布を浸漬する以外に、ゲル状パルプを布に吹き付ける、塗りつける、まぶす等により付着させることもできる。その場合に、ゲル状パルプに予めコケ類等を混入させておくこともできるし、予め混入はしないで、まずゲル状パルプを布に付着させた後、さらにコケ類等を付着させる方法も採りうる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】コケ育成シートの断面模式図。
【図2】図1のコケ育成シートのシート基材部の拡大図。
【図3】コケ育成シートの製造方法を示す図。
【図4】コケ育成シートの斜視図。
【図5】コケ育成シートを用いた構造物緑化方法の例を示す図。
【図6】本発明の別の実施例のシート基材を模式的に示す図。
【図7】その別の実施例の製造方法の一例を示す工程図。
【図8】本発明の更に別の実施例に使用する布の一例を示す斜視図。
【図9】その布の両面又は片面にパルプを付着させた例を示す断面図。
【図10】その布を使用したコケ育成シートの製造方法の一例を示す工程図。
【符号の説明】
【0038】
1 コケ育成シート
2 コケ類
3 シート基材
31 パルプ
32 土質細物
35 ワラ屑
4 水
6 型枠
7 押し板
8 混練物
9 構造物
10 シリコン樹脂系接着剤
【出願人】 【識別番号】592217967
【氏名又は名称】三野道路株式会社
【住所又は居所】岐阜県中津川市手賀野690番地の15
【識別番号】503324346
【氏名又は名称】通化美能建材制造有限公司
【住所又は居所】中華人民共和国吉林省通化市東昌区環通郷西昌村
【出願日】 平成15年10月1日(2003.10.1)
【代理人】 【識別番号】100095751
【弁理士】
【氏名又は名称】菅原 正倫

【公開番号】 特開2004−154133(P2004−154133A)
【公開日】 平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願番号】 特願2003−342954(P2003−342954)