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【発明の名称】 農業用マルチフィルム
【発明者】 【氏名】飛鳥 政宏
【住所又は居所】滋賀県犬上郡多賀町四手諏訪510−5 積水フィルム株式会社内

【要約】 【課題】本発明は、熱種子を蒔いた土壌の畝表面を被覆することにより、地熱温度の上昇を図り、雑草の発育を抑制して作物の育成を促進することができ、発芽位置とスリットの位置がずれた場合でも、発芽した芽がフィルムのスリットの一部を押し開けて好適に発育しうる農業用マルチフィルムを提供する。

【解決手段】密度が0.80〜0.928g/cmであり、ASTM D822に準拠して測定したスティフネスが180〜240MPaであるポリエチレン系樹脂よりなる、厚みが10〜29μmの長尺ポリエチレン系樹脂フィルムに、略平行な多数の直線状スリットが形成されてなる農業用マルチフィルムであって、上記スリットの長さが50〜180mmであり、スリットの角度が長尺ポリエチレン系樹脂フィルムの長手方向に対し45〜90度であり、スリットとスリットの間隔が5〜25mmであることを特徴とする農業用マルチフィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.80〜0.928g/cmであり、ASTMD822に準拠して測定したスティフネスが180〜240MPaであるポリエチレン系樹脂よりなる、厚みが10〜29μmの長尺ポリエチレン系樹脂フィルムに、略平行な多数の直線状スリットが形成されてなる農業用マルチフィルムであって、上記スリットの長さが50〜180mmであり、スリットの角度が長尺ポリエチレン系樹脂フィルムの長手方向に対し45〜90度であり、スリットとスリットの間隔が5〜25mmであることを特徴とする農業用マルチフィルム。
【請求項2】
直線状スリットが、長尺ポリエチレン系樹脂フィルムの長手方向に対し複数列平行に形成されていることを特徴とする請求項1記載の農業用マルチフィルム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、種子を蒔いた土壌の表面を被覆し、地熱温度の上昇を図り、作物の育成を促進する農業用マルチフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
農業用マルチフィルムはポリエチレン樹脂、ポリピロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂フィルムからなり、種子を蒔いた土壌表面を被覆し、土壌の保温若しくは土壌温度の上昇を図り、且つ雑草の発育を抑制して作物の育成を促進する目的で広く使用されている。
【0003】
従来、栽培密度が高く、播種様式が条播による作物の栽培に際し、予め作物の栽培密度に適した間隔で多数の孔を開けた合成樹脂フィルムを畝面に被覆固定した後、孔の位置に種子を蒔いたり、苗を植える方法がとられてきていた。
【0004】
しかし、この方法では作業が極めて多くの労力を必要とするため、昨今の農作業者の高齢化による小労力化に対応できず、大規模な栽培も困難であった。
【0005】
これらの問題点を解決するため、所定間隔に丸孔を開けた農業用マルチフィルム、所定間隔にスリット(切り目)を設けた農業用マルチフィルム(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、放射状のスリット群を設けた農業用マルチフィルム(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
実公昭48−3784号公報
【特許文献2】
実開昭47−25340号公報
【特許文献3】
特開昭49−54129号公報
【0007】
又、フィルムの幅方向に山部と谷部を交互に形成したジグザグ状のスリット群を設けた農業用マルチフィルム(例えば、特許文献4参照)も提案されている。
【0008】
【特許文献4】
特開平9−121693号公報
【0009】
しかし、上記所定間隔にスリット(切り目)を設けた農業用マルチフィルムは、土壌の畝を覆い、端部が土壌等で固定されると、蒔いた種子の位置とスリットの位置、即ち発芽位置とスリットの位置がずれた場合には発芽しなかったり、発芽した芽がマルチフィルムの下面を這って近くのスリットから発芽し、茎が曲がってしまうという欠点があった。
【0010】
又、上記放射状のスリット群を設けた農業用マルチフィルムは、苗を植える時に放射状のスリットの連結部を切断して交叉片をめくり、その開口部に苗を植え付け、植え付け後交叉片を苗の根元にかぶせ、更に土盛りして固定するものであり、スリットとスリットの間隔が広いところと狭いところがあるので、畝に種子を蒔いた後、畝を被覆する農業用マルチフィルムとしては使用できなかった。
【0011】
更に、上記フィルムの幅方向に山部と谷部を交互に形成したジグザグ状のスリット群を設けた農業用マルチフィルムは、畝を被覆し固定すると、ジグザグ状のスリット部分がカールしたり、風に吹かれてまくれたりして、地熱温度を保持できなくなったり、雑草の発育を抑制できなくなる等の欠点があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記欠点に鑑み、種子を蒔いた土壌の畝表面を被覆することにより、地熱温度の上昇を図り、雑草の発育を抑制して作物の育成を促進することができ、発芽位置とスリットの位置がずれた場合でも、発芽した芽がフィルムのスリットの一部を押し開けて好適に発育しうる農業用マルチフィルムを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の農業用マルチフィルムは、密度が0.80〜0.928g/cmであり、ASTM D822に準拠して測定したスティフネスが180〜240MPaであるポリエチレン系樹脂よりなる、厚みが10〜29μmの長尺ポリエチレン系樹脂フィルムに、略平行な多数の直線状スリットが形成されてなる農業用マルチフィルムであって、上記スリットの長さが50〜180mmであり、スリットの角度が長尺ポリエチレン系樹脂フィルムの長手方向に対し45〜90度であり、スリットとスリットの間隔が5〜25mmであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明で使用されるポリエチレン系樹脂は、エチレンを主体とする樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、メタロセン系線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0015】
尚、上記αオレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン、4−メチルー1−ペンテン、ヘキセン、オクテン等が挙げられる。
【0016】
又、上記ポリエチレン系樹脂には、ポリエチレン系樹脂の特性を損なわない範囲内で、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂等のオレフィン系樹脂やエチレン系ゴム等のエラストマーが添加されてもよい。
【0017】
上記ポリエチレン系樹脂の密度は、低くなると機械的強度が不足し、使用中に破れたり裂けたりするようになり、高くなると発芽した芽がフィルムにより押さえ込まれて発芽不良になったり、茎が屈曲したりするようになるので、0.80〜0.928g/cmである。
【0018】
又、上記ポリエチレン系樹脂のスティフネスは、小さくなると柔らかくなりすぎて、使用中に破れたり裂けたりするようになり、高くなると硬くなって、発芽した芽がフィルムにより押さえ込まれて発芽不良になったり、茎が屈曲したりするようになるので、ASTM D822に準拠して測定したスティフネスが180〜240MPaである。
【0019】
上記ポリエチレン系樹脂からなる長尺ポリエチレン系樹脂フィルムは、薄くなりすぎると取り扱いにくく、保温効果が低下し、厚くなりすぎると発芽した芽がフィルムにより押さえ込まれて発芽不良になったり、茎が屈曲したりするようになるので、その厚みは10〜29μmである。
【0020】
本発明の農業用マルチフィルムは、上記長尺ポリエチレン系樹脂フィルムに、略平行な多数の直線状スリットが形成されてなる農業用マルチフィルムであって、スリットは一列であってもよいし、複数列平行に形成されていてもよい。複数列形成すれば発芽有効面積が広くなり好ましい。
【0021】
上記スリットの長さは、短くなると発芽位置と適合しにくくなり、長くなると取り扱いにくくなり、被覆した際にスリットが開口して土壌の保温効果が低下し、地熱温度を保持できなくなったり、雑草の発育を抑制できなくなることがある。
【0022】
上記スリットとスリットの間隔は、狭くなりすぎると取り扱いにくくなり、被覆した際にスリットが開口して土壌の保温効果が低下し、地熱温度を保持できなくなったり、雑草の発育を抑制できなくなり、広くなると発芽位置と適合しにくくなる。
【0023】
又、スリットの角度は、長尺ポリエチレン系樹脂フィルムの長手方向に対し90度に近い場合は、被覆しておくと、次第にスリットが開口して発芽した芽が出やすくなるが、小さくなると大きな開口部ができ土壌の保温効果が低下し地熱温度を保持できなくなったり、雑草の発育を抑制できなくなる。
【0024】
従って、上記スリットの長さは50〜180mmであり、スリットの角度は長尺ポリエチレン系樹脂フィルムの長手方向に対し45〜90度であり、スリットとスリットの間隔は5〜25mmである。
【0025】
上記スリットの長さ、角度及び間隔は被覆する作物の種類により、上記範囲内で適宜決定されればよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0027】
(実施例1、2)
密度が0.921g/cmであり、ASTM D822に準拠して測定したスティフネスが220MPaであるポリエチレン樹脂(日本ユニカ社製、商品名NUCG5511)をインフレーション成形して得られた、幅1000mm、厚み20μmの長尺ポリエチレン樹脂フィルムに、カッターにより、表1に示した長さ及びフィルムの長さ方向に対する角度を有するスリットを表1に示した間隔で1列形成して農業用マルチフィルムを得た。
【0028】
幅90cmの畝の略中央にジャガイモを25cm間隔に一列に植え、その上に得られた農業用マルチフィルムを被覆し、端部を土壌で押さえ、20日後に発芽率を測定し、結果を表1に示した。尚、茎が曲がった場合は発芽しなっかたものとした。
【0029】
(実施例3、4、比較例3〜7)
実施例1で用いた長尺ポリエチレン樹脂フィルムに、カッターにより、表1に示した長さ及びフィルムの長さ方向に対する角度を有するスリットを表1に示した間隔、列数で形成して農業用マルチフィルムを得た。
【0030】
幅90cmの畝の略中央にゴボウの種子を20cm間隔に一列に植え、その上に得られた農業用マルチフィルムを被覆し、端部を土壌で押さえ、2ヶ月後に発芽率を測定し、結果を表1に示した。尚、茎が曲がった場合は発芽しなっかたものとした。
【0031】
(比較例1)
密度が0.921g/cmであり、ASTM D822に準拠して測定したスティフネスが220MPaであるポリエチレン樹脂(日本ユニカ社製、商品名NUCG5511)をインフレーション成形して得られた、幅1000mm、厚み500μmの長尺ポリエチレン樹脂フィルムに、カッターにより、長さ80mm、フィルムの長さ方向に対する角度1度のスリットを15mm間隔で1列形成して農業用マルチフィルムを得た。
【0032】
得られた農業用マルチフィルムを用い、実施例3で行ったと同様にしてゴボウの発芽率を測定し、結果を表1に示した。
【0033】
(比較例2)
密度が0.936g/cmであり、ASTM D822に準拠して測定したスティフネスが330MPaであるポリエチレン樹脂(日本ユニカ社製、商品名G5511)をインフレーション成形して得られた、幅1000mm、厚み20μmの長尺ポリエチレン樹脂フィルムに、カッターにより、長さ80mm、フィルムの長さ方向に対する角度1度のスリットを15mm間隔で1列形成して農業用マルチフィルムを得た。
【0034】
得られた農業用マルチフィルムを用い、実施例3で行ったと同様にしてゴボウの発芽率を測定し、結果を表1に示した。
【0035】
(比較例8)
20×50mmの楕円形状の貫通孔が縦横35mm間隔に穿孔されている、幅950mm、厚み0.02mmの市販の有孔マルチフィルム(大倉工業社製、商品名FC50)を用い実施例3で行ったと同様にしてゴボウの発芽率を測定し、結果を表1に示した。
【0036】
【表1】


【0037】
【発明の効果】
本発明の農業用マルチフィルムの構成は、上述の通りであるから、種子を蒔いた土壌或いは作物を植えた土壌の表面に被覆すると、保温性が優れており、地熱温度が上昇し、雑草の発育が抑制され作物の生長が促進される。
【0038】
又、農業用マルチフィルムの端部を土壌等で固定しておくと、被覆後しばらくするとスリットが引っ張られて少しまくれた状態になり、発芽した芽の上に農業用マルチフィルムがある場合でも、作物の芽がフィルムを押しのけて生育でき発芽率が高い。
【0039】
従って、予め作物の栽培密度に適した間隔で多数の貫通孔をあけた農業用マルチフィルムのように、種子の蒔く位置と貫通孔の位置を合わせながら被覆する必要がなく、作業が容易であり、省労力化できる。
【出願人】 【識別番号】596111276
【氏名又は名称】積水フイルム株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市淀川区宮原4−1−4
【出願日】 平成14年11月7日(2002.11.7)
【代理人】 【識別番号】100102956
【弁理士】
【氏名又は名称】九十九 高秋

【公開番号】 特開2004−154077(P2004−154077A)
【公開日】 平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願番号】 特願2002−324291(P2002−324291)