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【発明の名称】 植物育成貯蔵装置
【発明者】 【氏名】安部 慎一
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株式会社内

【氏名】石渡 正紀
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株式会社内

【氏名】工藤 章英
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株式会社内

【要約】 【課題】空調装置を備える閉鎖空間内で、植物を配設し、植物育成貯蔵用光源を有する植物育成貯蔵装置において、殺虫剤等の薬剤を散布すること無く、害虫を駆除することのできる植物育成貯蔵装置を提供する。

【解決手段】閉鎖空間の内部に設置した植物育成貯蔵装置の各棚3の下面に、誘虫用光源11と植物育成貯蔵用光源10を設ける。植物育成貯蔵用光源10は、380nmから760nmの波長の光に変換するものである。そして、誘虫用光源11は、植物育成貯蔵用光源10と形状、電気特性が略等しく、照明装置8の点灯回路と照明器具9に適合するものであり、ランプ内部の水銀から放出された254nmの波長の光を、365nmをピークとする波長の光に変換する直管型の蛍光ランプである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置を備える閉鎖空間内で、植物を配設し、植物育成貯蔵用光源を有する植物育成貯蔵装置において、害虫を誘引する波長領域の光を放射する誘虫用光源と、誘虫用光源の近傍に設けて誘引した害虫を捕獲する補虫部と、を備えることを特徴とする植物育成貯蔵装置。
【請求項2】
前記誘虫用光源は、植物育成貯蔵用光源と形状及び電気特性が同等であることを特徴とする請求項1記載の植物育成貯蔵装置。
【請求項3】
前記誘虫用光源は、前記植物育成貯蔵用光源が消灯中に点灯することを特徴とする請求項1乃至2記載の植物育成貯蔵装置。
【請求項4】
前記誘虫用光源は、前記植物育成貯蔵用光源が消灯した後、ただちに点灯し、所定の時間点灯した後に消灯することを特徴とする請求項3記載の植物育成貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物育成貯蔵装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、農業従事者の高齢化や労働力の不足を背景として、農業における工業化が進んでいる。具体的には、環境条件の調節が可能となることにより農作物の生産性が高くなる閉鎖型の植物育成貯蔵装置が導入され始めている。この閉鎖型の植物育成貯蔵装置は、農作物の生産性が高くなるとともに、害虫が植物育成貯蔵装置の内部に浸入しにくい構造を取っており、植物が害虫の被害を受けにくい。
【0003】
この種の装置としては、たとえば特開2001−346450に示されるものがある。このものは、閉鎖空間内に前述の植物育成用光源に相当する人工照明と、前述の植物育成貯蔵装置に相当する多段式育苗装置、空調装置、灌水装置などを備えるものである。このものにおいては、閉鎖空間内で苗を生育するので、屋外の気候、天候に影響されることなく苗質の一定したものが得られるというメリットがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例に示したような装置においては、前述のように害虫が植物育成貯蔵装置の内部に浸入しにくい構造を取っている。しかしながら、植物を運搬する際や作業者の出入りの際に、害虫が植物育成貯蔵装置の内部に侵入するといった可能性が懸念される。また一方で、閉鎖型の植物育成貯蔵装置は、無農薬栽培であるので、装置内で殺虫剤等の薬剤を散布することは好ましくない。
【0005】
本発明は、かかる事由に鑑みてなしたものであり、その目的とするところは、殺虫剤等の薬剤を散布すること無く、害虫を駆除することのできる植物育成貯蔵装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、空調装置を備える閉鎖空間内で、植物を配設し、植物育成貯蔵用光源を有する植物育成貯蔵装置において、害虫を誘引する波長領域の光を放射する誘虫用光源と、誘虫用光源の近傍に設けて誘引した害虫を捕獲する補虫部と、を備えることを特徴とする
請求項2に係る発明は、請求項1記載の光源装置において、前記誘虫用光源は、植物育成貯蔵用光源と形状及び電気特性が同等であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1乃至2記載の光源装置において、前記誘虫用光源は、前記植物育成貯蔵用光源が消灯中に点灯することを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の植物育成貯蔵装置において、前記誘虫用光源は、前記植物育成貯蔵用光源が消灯した後、ただちに点灯し、所定の時間点灯した後に消灯することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態である閉鎖空間及び植物育成貯蔵装置の斜視図である。また、図2は植物育成貯蔵装置の棚近傍の斜視図である。1は閉鎖空間であり、鉄骨、鉄板及び断熱材等を組み合わせることにより、幅約5m、高さ3m、奥行き2mの6面体の外気を遮断する閉鎖空間を形成している。また、図示はしないが、閉鎖空間1には内部で作業をする作業者の出入りや、植物運搬のためのドア部が設けられている。閉鎖空間1には、植物の種類、育成状況に応じて、閉鎖空間1内部の温度、湿度を調整できる空調装置14が備え付けられている。
【0010】
さらに、閉鎖空間1の内部には、高さ約200cm、幅約120cm、奥行き60cmの植物育成貯蔵装置2がある。そして、植物育成貯蔵装置2には、それぞれ上方向又は下方向に30から50cmの間隔を開けて全部で5段の棚3が配設されている。この棚3の1側面には、植物に水を供給するための給水パイプ4が設けられている。この給水パイプ4には、後述する植物トレイ5に水を供給できるように複数の小さい穴が設けられている。そして、給水パイプ4に対向する棚3の側面には、植物トレイ5からの排水を処理する排水溝6が設けられている。この棚3の上面には、幅30cm、奥行き60cmであり長手方向に所定の隙間を有して、合成樹脂等の材料によって形成される植物用トレイ5が1つの棚につき4個設けられている。この植物トレイ5の内部には、植物が配設され、栄養や水分を保持する培地と、給水パイプ4が供給した水を吸収し、それぞれの植物7に均一に与えるための吸水シートが収納されている。さらに、植物用トレイ5の上面には、複数の穴が設けられており、この穴に育成若しくは貯蔵する植物7が挿入される。この植物7は、主に野菜類であり、たとえばトマト、キュウリ、ナス、ピーマン等である。
【0011】
図3は、植物育成貯蔵装置2の断面の一部を示した図である。図3に示すように、植物用トレイ5の上方の棚3には、照明装置8がネジ止め等の手段により固定されている。照明装置8は、図示はしない点灯回路と照明器具9及び植物育成貯蔵用光源10と誘虫用光源11から構成されている。植物育成貯蔵用光源10は、直管型の蛍光ランプであり、ランプ内部の水銀から放出された254nmの波長の光を、380nmから760nmの波長範囲の光に変換するもの、たとえば3波長型の蛍光ランプである。
【0012】
そして、ここで重要なことは、誘虫用光源11を植物育成貯蔵装置2の各棚3の下面に設けたことである。この誘虫用光源11は、植物育成貯蔵用光源10と形状、電気特性が略等しく、照明装置8の点灯回路と照明器具9に適合するものであり、ランプ内部の水銀から放出された254nmの波長の光を、別の種類の蛍光体によって365nmをピークとする波長の光に変換する直管型の蛍光ランプである。小ハエ等の害虫15は、波長が300nmから450nmの光の刺激に対して、光の方向へ移動するいわゆる走光性を有するので、誘虫用光源11からの365nmをピークとする波長の光を受け、誘虫用光源11の近傍に誘引される。なお、植物育成貯蔵用光源10、誘虫用光源11は、同一平面に並列に設置されており、植物育成貯蔵用光源10は全部で6個、誘虫用光源11は1個のみ設置されている。そしてさらに、誘虫用光源11の下部には、補虫部12が設けられている。補虫部12は、植物育成貯蔵用光源10、誘虫用光源11と同程度の長さを持つ略板状のもので、棚3に固定されている。この補虫部12は誘虫用光源11と対向する面に粘着シートを有している。なお、補虫部12は、誘虫用光源11からの光を遮光する遮光板としての機能も有している。
【0013】
つぎに、植物育成貯蔵装置を植物育成として使用する場合について説明する。植物トレイ5の上面に設けた小穴に植物7を配設し、棚3に設置する。そして、空調装置14を、湿度70から100%、温度20から30℃の範囲で所定の湿度及び温度に設定し、動作させる。そして、給水パイプ4には閉鎖空間1の室外から必要量の水を供給し、給水パイプ4に施された小さい穴を介して、植物トレイ5に供給する。植物トレイ5に供給された水の一部は、植物7が吸収し、残りの水は、植物トレイ5内の吸水シートを介して排水溝6に排出される。
【0014】
また、植物育成貯蔵用光源10は、照明装置8から電力の供給を受け、植物の育成に必要な時間、植物に植物の育成に必要な波長の光、たとえば光合成有効光量子束密度(PPFD)を200から400μmol/m/sの範囲で照射する。そして、植物育成貯蔵用光源10を1日16時間点灯した後、8時間消灯する。この植物育成貯蔵用光源10を点灯する時間は、いわゆる光周期の明期に相当し、消灯する時間はいわゆる光周期の暗期に相当する。これらは、植物の生理上必要なものである。そして、暗期となった後にただちに約30minの間、誘虫用光源11を点灯し、ピーク波長365nmの紫外線を放射する。ここで、植物育成貯蔵用光源10を消灯させた状態で誘虫用光源11を点灯させると、植物育成貯蔵用光源10から放射される光は無く、誘虫用光源11の光のみが放射されるので、効率良く害虫15を誘引、捕獲することができる。一方、この状態では、誘虫用光源11は可視光領域の光を若干含むため、厳密には暗期にならない。暗期途中で、このような状態になると植物の生理面への影響が懸念されるが、明期終了直後であれば誘虫用光源11を点灯してもその影響は小さい。この理由から、明期直後に一定時間、誘虫用光源11の点灯を行う。誘虫用光源11が点灯すると、前述のように、小ハエ等の害虫15は、波長が300nmから450nmの光の刺激に対して、光の方向へ移動するいわゆる走光性を有するので、誘虫用光源11からの365nmをピークとする波長の光を受け、誘虫用光源11の近傍に誘引される。そして、誘虫用光源11の近傍には、粘着シートを有する補虫部12が設置されているので、誘引された害虫15は補虫部12に捕獲され、駆除される。
【0015】
また、貯蔵の場合には、温度を0から15℃の範囲で所定の温度に設定する。また、貯蔵の場合に必要な光合成有効光量子束密度(PPFD)を0から50μmol/m/sの範囲で所定の光合成有効光量子束密度(PPFD)に設定する。
【0016】
以上のように、閉鎖空間1内に設置された誘虫用光源11からのピーク波長365nmの紫外線によって、害虫が誘引されて補虫部12によって捕獲され、駆除される。これにより、殺虫剤等の薬剤を散布すること無く、害虫を駆除することが可能となる。また、前記誘虫用光源11は、植物育成貯蔵用光源10と形状及び電気特性が同等であるようにしたので、複数の植物育成貯蔵用光源10の一部を誘虫用光源11に代えて使用することができる。これにより、既存の植物育成貯蔵用光源10が取りつけられている点灯回路を交換することなく、誘虫用光源11を使用することができるのである。また、暗期中に誘虫用光源11を点灯することにより、植物育成貯蔵用光源10から放射される光の影響を受けることなく、害虫15を誘引することができる。
【0017】
なお、上記の実施形態においては、棚3の下面に誘虫用光源11を設置するようにしたが、図4のように、棚3の近傍に、丸管形状の第2の誘虫用光源11a、第2の補虫部12aを備えた第2の照明器具9aを有する照明装置8aを設けてもよい。この場合は、図中の矢印に示すように照明装置8aを閉鎖空間1の天井部から吊り下げて、モータ等の駆動装置により上下させて使用する。そしてまた、図5に示すように、棚3の周縁部に誘虫用光源11、第3の補虫部12bを備えた第3の照明器具9bを有する第3の照明装置8bを配設してもよい。また、閉鎖空間1は、閉鎖空間1の内部と外部とを遮断するものであれば良く、このものを構成する構成材は透光性を有するものであってもよい。構成材として透光性のものを用いた場合には、植物育成貯蔵用光源10又は外光を必要に応じて使い分けることもできる。そしてまた、誘虫用光源11として蛍光ランプを使用したが、たとえばLED等であっても、害虫15が刺激を受ける波長の光を放射するものであれよい。また、害虫15を捕獲するものとして粘着シートを用いたが、高電圧を印加した導体に害虫15を接触させて駆除する方法等、誘引した害虫を捕獲できるものであればよい。また、植物育成貯蔵装置として、吸水シート及び培地を有する植物トレイ5、給水パイプ4を有するタイプのものを示したが、植物トレイや培地を用いないで、穴の開いた板の各苗を固定して植物の下部に水を流す水耕栽培タイプや、植物の下部から噴射する形で灌水するタイプのものであってもよい。
【0018】
【発明の効果】
請求項1に係る発明は、空調装置を備える閉鎖空間内で、植物を配設し、植物に光を照射する光源を有する植物育成貯蔵装置において、害虫を誘引する波長領域の光を放射する誘虫用光源と、誘虫用光源の近傍に設けて誘引した害虫を捕獲する補虫部と、を備えるようにしたので、閉鎖空間内に設置された誘虫用光源からのピーク波長365nmの紫外線によって、害虫が誘引されて補虫部によって捕獲され、駆除される。これにより、殺虫剤等の薬剤を散布すること無く、害虫を駆除することが可能となる。
【0019】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の光源装置において、前記誘虫用光源は、植物育成貯蔵用光源と形状及び電気特性が同等であるようにしたので、複数の植物育成貯蔵用光源の一部を誘虫用光源に代えることができ、これにより、誘虫用光源用に新たに照明装置を設けることなく、誘虫用光源を点灯させることができる。
【0020】
請求項3に係る発明は、請求項1乃至2記載の光源装置において、前記誘虫用光源は、前記植物育成貯蔵用光源が消灯中に点灯するようにしたので、害虫は照明装置に設置された植物育成貯蔵用光源からの光の影響を受けることなく、誘虫用光源に誘引されるので、誘虫用光源による誘虫の効果を高めることができる。
【0021】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の植物育成貯蔵装置において、前記誘虫用光源は、前記植物育成貯蔵用光源が消灯した後、ただちに点灯し、所定の時間点灯した後に消灯するようにしたので、植物の光周期への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】閉鎖空間及び植物育成貯蔵装置の斜視図である。
【図2】植物育成貯蔵装置の棚近傍の斜視図である。
【図3】植物育成貯蔵装置の断面の一部を示した図である。
【図4】丸管形状の誘虫用光源を有する照明器具と植物育成貯蔵装置の断面の一部を示した図である。
【図5】棚の周縁部に配設した照明装置と植物育成貯蔵装置の断面の一部を示した図である。
【符号の説明】
1 閉鎖空間
2 植物育成貯蔵装置
3 棚
4 給水パイプ
5 植物トレイ
6 排水溝
7 植物
8 照明装置
8a 第2の照明装置
8b 第3の照明装置
9 照明器具
9a 第2の照明器具
9b 第3の照明器具
10 植物育成貯蔵用光源
11 誘虫用光源
11a 第2の誘虫用光源
12 補虫部
12a 第2の補虫部
12b 第3の補虫部
14 空調装置
15 害虫
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地
【出願日】 平成14年8月27日(2002.8.27)
【代理人】 【識別番号】100111556
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 淳二

【公開番号】 特開2004−81100(P2004−81100A)
【公開日】 平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願番号】 特願2002−246896(P2002−246896)