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【発明の名称】 緑色が変色しにくい枝豆
【発明者】 【氏名】小坂 方人
【住所又は居所】東京都八王子市北野町559−6 日本水産株式会社中央研究所内

【氏名】郡山 剛
【住所又は居所】東京都八王子市北野町559−6 日本水産株式会社中央研究所内

【要約】 【課題】緑色が濃く且つ変色が防止される、冷凍あるいはチルド流通に対応する加熱後冷凍品である枝豆を提供すること。

【解決手段】緑色が変色しにくい枝豆。加熱後冷凍品である。光照射下で保持しても緑色が維持される。クロロフィルaを3.8g/新鮮重100g以上含有する。クロロフィルの分解を抑制する物質、好ましくは抗酸化物質、具体的にはβ−カロテンを組織内に蓄積させた枝豆である。β−カロテンを750μg/新鮮重100g以上蓄積させた枝豆。上記の枝豆の冷凍品の解凍品。チルド流通対応品である、上記の冷凍品の解凍品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑色が変色しにくい枝豆。
【請求項2】
加熱後冷凍品である、請求項1記載の枝豆。
【請求項3】
光照射下で保持しても緑色が維持される、請求項1または2記載の枝豆。
【請求項4】
クロロフィルaを3.8g/新鮮重100g以上含有する、請求項1、2または3記載の枝豆。
【請求項5】
クロロフィルの分解を抑制する物質を組織内に蓄積させた、請求項1ないし4記載のいずれかの枝豆。
【請求項6】
クロロフィルの分解を抑制する物質が抗酸化物質である、請求項5記載の枝豆。
【請求項7】
抗酸化物質がβ−カロテンである、請求項6記載の枝豆。
【請求項8】
β−カロテンを750μg/新鮮重100g以上蓄積させた、請求項7記載の枝豆。
【請求項9】
請求項2ないし8記載の冷凍品の解凍品。
【請求項10】
チルド流通対応品である、請求項9の冷凍品の解凍品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業の属する技術分野】
本発明は、緑色が変色しにくい枝豆およびその加熱後冷凍品に関する。詳しくは、光照射下で保持しても緑色が維持される枝豆、緑色が濃く、具体的にはクロロフィルaを3.8g/新鮮重100g以上含有する枝豆、および/または、クロロフィルの分解を抑制する物質を組織内に有する枝豆であり、特に莢部位にβ−カロテン等の抗酸化物質をより多く含有する枝豆に関する。また、これらのチルド流通対応品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、加熱済み枝豆は冷凍品およびその解凍品の形態で流通されており、その簡便性から生産量が増加している。しかし、その緑色成分であるクロロフィルは様々に不安定であり、外的要因により分解されやすい状況にある。流通温度域別に考えた場合、冷凍品は暗所下で−20℃に維持すれば、基本的に緑色の変色は問題にならないが、光照射下であればその緑色は退色する問題がある。一方、加熱処理品の緑色野菜の冷凍品を解凍し、常温以下のチルド温度域および光照射下で保管した場合、その緑色は経時および経日的に退色し、加熱緑色野菜は商品価値が著しく低下するため、製造上および流通上の大きな問題となっている。緑色を変色させる主な要因が光であることは従来より知られており、特にチルド温度域で緑色を保持させるには困難を極める。また、遮光すればある程度の緑色保持は実現するが、そうすると内部を確認できなくなり、品質判断の基準が失われるものである。しかし、遮光せずに店頭で陳列する場合は終日照明下に置かれることになり、緑色の変色は著しい。
【0003】
また、緑色保持については温度と水分の影響が大きいとされている(「機能性食品包装技術ハンドブック」より)。冷凍温度域における緑色保持防止については、真空包装またはガス置換による方法(特開昭56−1846号)が開発されている。暗所、−20℃以下の冷凍条件では反応温度が低いため実際には緑色の変色が問題になっていないが、ショーケースなど光照射下、さらに−20℃以上の場合はその緑色保持に効果が認められている。
特に変化が著しいチルド温度域における加熱野菜の変色防止には、これまでプロタミン水溶液を用いる方法(特開平6−7083号)、コウジ酸等を添加する方法(特開平8−56610号)、カルシウム塩を用いる方法などが発明されているが、いずれも効果は充分でなく、更なる技術開発が求められている。また、真空包装またはガス置換包装による方法(特開平10−304820号)が開発され、その効果は比較的顕著なものであったが、この方法は特殊な設備が必要となり、コスト的な問題が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の状況に鑑み本発明者らは鋭意探索の結果、加熱されても緑色が変色しにくい緑色野菜を見いだすに至った。したがって本発明は、加熱調理、凍結、照明下の冷凍流通は勿論のこと、その後の加熱調理、あるいは照明下のチルド流通での保存において緑色が変色しにくい枝豆およびその加熱後冷凍品の提供を課題とする。すなわち、緑色が濃く且つ変色が防止される、冷凍あるいはチルド流通に対応する加熱後冷凍品である枝豆を提供することを課題とする。
詳しくは、光照射下で保持しても緑色が維持される枝豆、緑色が濃く、具体的にはクロロフィルaを3.8g/新鮮重100g以上含有する枝豆、および/または、クロロフィルの分解を抑制する物質を組織内に有する枝豆であり、特に莢部位にβ−カロテン等の抗酸化物質を含有する枝豆を提供することを課題とする。また、これらの解凍品、およびチルド流通対応品を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、緑色が変色しにくい枝豆を要旨としている。
加熱後冷凍品であるものを包含しており、その場合、本発明は、緑色が変色しにくい加熱後冷凍品である枝豆である。
光照射下で保持しても緑色が維持されるものを包含しており、その場合、本発明は、光照射下で保持しても緑色が維持される、緑色が変色しにくい枝豆、必要に応じ加熱後冷凍品である枝豆である。本発明により、加熱後冷凍し、解凍して光照射下に保持されても緑色が維持される、優れた美観を有する枝豆が提供される。
【0006】
また、本発明は、該枝豆において、緑色が濃い、具体的にはクロロフィルを3.8g/新鮮重100g以上含有する枝豆である。すなわち、本発明は、緑色が濃い、具体的にはクロロフィルaを3.8g/新鮮重100g以上含有し、かつ緑色が変色しにくい、枝豆を要旨としている。
加熱後冷凍したものを包含しており、その場合、本発明は、緑色が濃い、具体的にはクロロフィルaを3.8g/新鮮重100g以上含有し、かつ緑色が変色しにくい加熱後冷凍品である枝豆である。
光照射下で保持しても緑色が維持されるものを包含しており、その場合、本発明は、光照射下で保持しても緑色が維持される、緑色が濃い、具体的にはクロロフィルaを3.8g/新鮮重100g以上含有し、かつ緑色が変色しにくい枝豆、必要に応じ加熱後冷凍したものである枝豆である。
【0007】
また、本発明は、該枝豆において、クロロフィルの分解を抑制する物質、具体的には抗酸化物質、より具体的にはβ−カロテン、好ましくは750μg/新鮮重100g以上蓄積させたβ−カロテン、を組織内に有する、好ましくは莢内に有する、枝豆である。
すなわち、本発明は、クロロフィルの分解を抑制する物質、具体的には抗酸化物質、より具体的にはβ−カロテン、好ましくは750μg/新鮮重100g以上蓄積させたβ−カロテン、を組織内に有する、好ましくは莢内に有する、緑色が変色しにくい枝豆を要旨としている。
加熱後冷凍品を包含しており、その場合、本発明は、クロロフィルの分解を抑制する物質、具体的には抗酸化物質、より具体的にはβ−カロテン、好ましくは750μg/新鮮重100g以上蓄積させたβ−カロテン、を組織内に有する、好ましくは表皮内に有する、緑色が変色しにくい加熱後冷凍品である枝豆である。
光照射下で保持しても緑色が維持されるものを包含しており、その場合、本発明は、クロロフィルの分解を抑制する物質、具体的には抗酸化物質、より具体的にはβ−カロテン、好ましくは750μg/新鮮重100g以上蓄積させたβ−カロテン、を組織内に有する、好ましくは莢内に有する、光照射下で保持しても緑色が維持される、緑色が変色しにくい枝豆、必要に応じ加熱後冷凍品である枝豆である。
緑色が濃い、具体的にはクロロフィルを3.8g/新鮮重100g以上含有する枝豆であり、その場合、本発明は、クロロフィルの分解を抑制する物質、具体的には抗酸化物質、より具体的にはβ−カロテン、好ましくは750μg/新鮮重100g以上蓄積させたβ−カロテン、を組織内に有する、好ましくは莢内に有する、緑色が濃い、具体的にはクロロフィルを3.8g/新鮮重100g以上含有し、かつ緑色が変色しにくい、好ましくは光照射下で保持しても緑色が維持され緑色が変色しにくい、枝豆、必要に応じ加熱後冷凍品である枝豆である。
【0008】
また、本発明は、該加熱後冷凍品である枝豆において、その解凍品、またそのチルド流通対応品である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、緑色が変色しにくい枝豆およびその加熱後冷凍品に関する。加熱は、常法により実施されるものであればその装置、加熱方法、温度等の条件は特に限定されない。例えば加熱調理としてブランチングを行う場合、ブランチングに用いるボイル液は、好ましくは水また食塩水が用いられる。本発明はこれらの加熱方法により加熱された後にもその緑色が変色しにくい枝豆である。また、ブランチング後に凍結される冷凍枝豆も対象とする。
【0010】
本発明の枝豆は、光照射下で保持しても緑色が維持される。緑色保持の指標は、光照射下において一定レベルの緑が保持される時間(以下、「シェルフライフ」ということがある。)であり、冷凍した加熱済みえだ豆を自然解凍した後、10℃、1600 lx の光照射下において黄化指数が150に到達するまでの保存時間を指す。本発明により得られた光照射下で変色しにくい枝豆は、シェルフライフが26時間以上である。
【0011】
本発明の枝豆は、クロロフィルaを新鮮重100gあたり3.8g以上、特に好ましくは4.0g以上含有する。クロロフィル含量の測定法は、常法であれば特に限定されない。本発明ではPlant Physiol.,77,483−485(1985)に基づいて行っている。すなわち、測定対象とする組織片をDD−ジメチルホルムアミドに浸漬し、冷蔵、暗所下にて1日静置してクロロフィルを抽出し、分光光度計にて抽出液の647nmおよび664.5nmの吸光度を測定し、クロロフィルa(Chl.a)およびクロロフィルb(Chl.b)含量を次の計算式により算出する。
【0012】
【数1】
クロロフィルaの含量(mg/ml)=
20.7×(647nmでの吸光度)−4.62×(664.5nmでの吸光度)
【0013】
【数2】
クロロフィルbの含量(mg/ml)=
12.7×(664.5nmでの吸光度)−2.79×(647nmでの吸光度)
【0014】
本発明の枝豆は、クロロフィルの分解を抑制する物質を組織内に有する。クロロフィルの分解を抑制する物質は特に限定されないが、好ましくは抗酸化物質であり、特に好ましくはβ−カロテン等が挙げられる。β−カロテンにおいては、750μg/新鮮重100g以上、特に好ましくは860μg以上含有されている。本発明を達成するにあたり、その効果を効率的かつ有効にするために、β−カロテン等の抗酸化物質を蓄積させる部位が重要となる。すなわち、クロロフィルの分解を抑制する物質を莢(表皮)に有するものが、本発明の特徴となる。枝豆においては、豆に比べ莢は直接光にあたるため、莢中のクロロフィルは光による分解を著しく受けやすい。つまり、緑色保持効果の付与するために抗酸化物質を蓄積させる部位は枝豆の豆ではなく、莢であることが必要となる。
β−カロテン含量の測定方法は、常法であれば特に限定されない。本発明においては、五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説(中央法規出版社、p131−138)に記載された方法に基づき測定している。すなわち、試料をピロガロールを含むヘキサン/エタノール/アセトン/トルエン混合溶液中で振とうし、その後超音波で処理し、暗所で一晩静置してβ−カロテンを抽出する。この抽出液を60%水酸化カリウム溶液にてけん化、ヘキサン/酢酸エチルの混合溶液で再度抽出し溶媒を除去した後、エタノールに溶解してHPLCにて定量すればよい。
【0015】
次に、一般に緑色植物において、葉のような光感受性が強く生長しつつある組織、その中でもクロロフィルが局在する葉緑体にβ−カロテンは多く含まれる(日本食品工業学会誌 Vol.36, No.11,927−933(1989)、日本栄養・食糧学会誌Vol.39 No.6 485−493(1986))。そこで本発明者は生育段階で栽培管理により抗酸化作用が強いβ−カロテンを生成させれば、葉緑体内でクロロフィルの分解に直接影響を及ぼし、緑色保持に充分な効果が得られるとの仮説を立て、β−カロテンを蓄積させる栽培方法を開発し、緑色が濃くかつ長時間の緑色保持を可能とする本発明を完成させた。
本発明が対象とする枝豆は、緑色が濃く、かつ変色しにくい食品を生産するため、一定範囲の栽培条件により栽培されたものである。枝豆を例に挙げると肥培および播種方法に特徴を持つ。
枝豆を栽培するに際し、一般的な全施肥量のNPK比(窒素、リン、カリウム比)は、土壌・気候によりさまざまであるが、おおよそ1:4:3(5:20:15kg/10a)であると言われている。本発明においては、NPK比は、一般のNPK比に比べリンが低く、カリウムおよび窒素含量が高いことを特徴とし、特に好ましくはNPK=17:6.5:22kg/10aである。施肥方法は、常法であれば特に限定されないが、全層が好ましい。
【0016】
【作用】
本発明の緑色が変色しにくい枝豆における、クロロフィルの分解へのβ−カロテンの作用について考察する。
まず、β−カロテンとクロロフィルの関係について説明する。
組織中にクロロフィルが多く含まれる場合、光合成速度も増すことから、生体内に通常より多くの酸素が生じる。その濃度が増すと生体内の酸素は活性酸素に変化しやすく、活性酸素から誘発されるラジカルにより組織中、特に葉緑体の代謝物質(脂溶性物質)が連鎖反応的に酸化されるため、クロロフィルの増加に伴う酸素濃度の増加は植物にとって毒性の高い存在となる。つまり、この状況は酸素による一種のストレスと考えることができる。そこで、生体中での酸素的障害を回避するための生体防御反応として、葉緑体中にβ−カロテンを始めとする種々の抗酸化物質が生成され、活性酸素由来のラジカル除去などの生体防御機能を果たす(重岡成:蛋白質 核酸 酵素,43,634−648(1998))。つまり、クロロフィルを組織中に多く蓄積させた場合、必然的にβ−カロテンも多く蓄積されると言える。
【0017】
一定レベルの緑の指標には、さや表面のL*×b*/a*値(以下、「黄化指数」と表記する。)を用いることができ、黄化指数が低いほどクロロフィル含量が多いこと示す。それは、各種えだ豆のさや表面の黄化指数とクロロフィル含量を測定した結果得られた相関において、裏付けすることができる。
本発明で測定する黄化指数とは、色彩色差計(MINOLTA CR−200)によりさや表面のL*・b*・a*値を測定した値から算出したものを指す。
【0018】
本発明はクロロフィルの光及び酸化分解の連鎖反応を誘発するラジカルを捕捉することでクロロフィル分解の防止が可能となることが考えられる。クロロフィルの分解は油脂分子からラジカルが誘発される酸素を必要としないタイプと酸素と反応してハイドロパーオキサイドが誘発する酸素を必要とするタイプに別れるが、いずれのタイプもラジカル連鎖反応が関与するため、ラジカルを捕捉する手段は高い効果が見込まれる。
【0019】
光と酸素及びクロロフィルの関係を説明すると、光とクロロフィルの反応は化1で示されるType−1の経路、化2で示されるType−2の経路がある。ただし、化1、化2中、Pはクロロフィル(ポルフェリン環含有物質)、RHは脂質、R・は脂質ラジカル、ROOHはハイドロパーオキサイドを表している。
【0020】
【化1】


【0021】
【化2】


【0022】
クロロフィル(P)は光(hν)によって励起(P*)し、励起三重項増感物質(P *)になる。Type−1では、この増感物質が脂質分子(RH)から水素ラジカル(H・)を引き抜き、脂質にラジカル(R・)が生成され、クロロフィルを含む他の物質の自動酸化を開始する。一方Type−2では増感物質が酸素(O)と反応し、励起一重項酸素(O*)が生成され、これが脂質分子と反応してハイドロパーオキサイド(ROOH)ができる。ハイドロパーオキサイドによりラジカルの連鎖反応が誘発され、クロロフィルを含む他の物質の自動酸化を開始する。枝豆を例にした場合、そのさやの光によるクロロフィル分解機序はType−1とType−2の両方が考えられるが、両方ともクロロフィルの分解を促進するラジカルをβ−カロテンによって捕捉あるいは消去することによりクロロフィルの分解が抑制できると考えられる。
【0023】
【実施例】
以下の実施例をもって本発明をより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例1
(枝豆の緑色変性抑制試験)
枝豆を抗酸化物質の水溶液へ浸漬し、組織中にアスコルビン酸、トコフェロール、カロテノイド類などの抗酸化物質を減圧下にて浸透させ、クロロフィル分解の要因となるラジカルを捕捉することによる緑色の変色抑制を試みた。しかし、それら抗酸化物質の効果はほとんど認められなかった。
【0025】
次に、抗酸化物質が生体内の組織中特に葉緑体へ浸透された場合の効果を調べるため、クロロフィルを含有したクロロフィル/エタノール溶液を調製し、それに各種抗酸化物質を溶解、光照射保存下での緑色の変色抑制を試みた。すなわち、エタノール1ml中クロロフィル25μgを添加したクロロフィル/エタノール溶液4mlに、抗酸化物質として0.01Mアスコルビン酸(水溶液)、0.01M α−トコフェロール(エタノール溶液)、0.01M β−カロテン(エタノール溶液)をそれぞれ溶解し、密閉後、10℃、1600Luxに17時間保存した。この保存前後における640nm吸光度の変化を測定した。結果を表1に示す。なお、640nm吸光度が高い場合は、クロロフィル含有量が多いことを示す。対照区は水を添加し、光保存後における対照区のクロロフィル減少量を100とした場合の各試験区の減少率を抑制効果として示した。
【0026】
【表1】


【0027】
この結果、α−トコフェロールあるいはβ−カロテンの添加により、光に対する明らかな緑色保持効果が認められた。すなわち、緑色保持効果を付与する最適な手段は、クロロフィルと抗酸化物質が共存するようカロテノイド類などの抗酸化物質を組織中に蓄積させることが最も重要となることが確認された。
【0028】
実施例2
(栽培条件による枝豆の緑色保持効果)
栽植密度の効果を得るため、えだ豆の栽培条件を慣行である株間6〜8cmから11〜13cmに拡大した。すなわち、枝豆の品種に緑光種を用いて、株間を6〜〜8cm(対象群)と11〜13cm(本発明群)に分けて栽培を行った。栽植密度は対照群で1820株/10a、本発明群で2860株/10aである。これらの条件で栽培された枝豆の、莢のβ−カロテン含量、クロロフィルa含量、黄化指数、およびシェルフライフを測定した。β−カロテンについては、五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説(中央法規出版社、p131−138)に記載された方法に基づき測定した。すなわち、新鮮重100gの試料をピロガロールを含むヘキサン/エタノール/アセトン/トルエン混合溶液中で振とうし、その後超音波で処理し、暗所で一晩静置してβ−カロテンを抽出し、この抽出液を60%水酸化カリウム溶液にてけん化、ヘキサン/酢酸エチルの混合溶液で再度抽出し溶媒を除去した後、エタノールに溶解してHPLCにて定量した。クロロフィルa含量の測定法は、Plant Physiol.,77,483−485(1985)に基づいて行った。すなわち、新鮮重100gの組織片をDD−ジメチルホルムアミドに浸漬し、冷蔵、暗所下にて1日静置してクロロフィルを抽出し、分光光度計にて抽出液の647nmおよび664.5nmの吸光度を測定し、クロロフィルa(Chl.a)およびクロロフィルb(Chl.b)含量を前記数1及び数2の計算式により算出した。黄化指数は、色彩色差計(CR−200、ミノルタ社製)によりさや表面のL*・b*・a*値を測定した値を用い、L*×b*/a*により算出した。シェルフライフは、10℃、1600 lx の光照射下において黄化指数が150に到達するまでの保存時間を測定した。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】


【0030】
この結果、株間を広げることにより、β−カロテン含量が増加し、緑が強くかつ緑色が保持されていることを確認できた。これは、株間は光の照度と関連性が高いため、株間が広がることにより光の照度が上昇し、光合成速度の上昇に伴い葉緑体が発達し、クロロフィルおよびβ−カロテン含量の増加を誘発した結果、枝豆さやの緑色が比較的保持されることによると考えられる。
又、茶豆種についても同様に試験を行い、β−カロテン及びクロロフィルa含量が増加していることが確認された。
【0031】
実施例3
(施肥条件による枝豆の緑色保持効果)
実施例1と同様に、肥培管理のみNPK=5:20:15kg/10a(対照群)とNPK=17:6.5:22kg/10a(本発明群)に設定して試験を行った。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】


【0033】
この結果、試験群においてβ−カロテン含量が増加し、緑が強く、かつ変色しにくい枝豆が得ることができた。これは、組織中の鉄の増加によるクロロフィル生合成の中間代謝物が誘発され、その結果クロロフィル生合成が活性化されβ−カロテンの蓄積を誘導することが推測される。一般的に鉄は土壌中に4%近く含くまれ、リン濃度の減少により鉄が吸収されやすい環境に併せ、窒素濃度の増加によりクロロフィルの生合成が活性化されたと考えられる。
又、茶豆種についても同様に試験を行い、β−カロテン及びクロロフィルa含量が増加していることが確認された。
【0034】
実施例4
(従来品との比較)
実施例2の方法により得られた本発明品(緑光種及び茶豆種)、及び22種類の市販品(緑光種及び茶豆種)について、実施例2の方法と同様にβ−カロテン含量、クロロフィルa含量、黄化指数、及びシェルフライフを測定した。尚、用いた試料は全て加熱後冷凍品であり、これを解凍した後測定に供した。結果を表4、図1及び図2に示す。
【0035】
【表4】


【0036】
この結果、本発明品は、従来品と比較してよりβ−カロテン、クロロフィルの含量が高いことが確認された(表4)。又、クロロフィル含量とβ−カロテン(図1)、及びクロロフィル含量と黄化指数(図2)の相関についても確認された。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、加熱調理、凍結、照明下の冷凍流通は勿論のこと、加熱調理、凍結、解凍、照明下のチルド流通での保存において緑色が変色しにくい緑色野菜を提供することができる。すなわち、緑色が濃く且つ変色が防止される、冷凍あるいはチルド流通に対応する、優れた美観を有する枝豆およびその加熱後冷凍品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】β−カロテン含量とクロロフィルaの相関図を示す。
【図2】クロロフィル含量と黄化指数の相関図を示す。
【出願人】 【識別番号】000004189
【氏名又は名称】日本水産株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番2号
【出願日】 平成14年8月6日(2002.8.6)
【代理人】 【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子

【公開番号】 特開2004−65085(P2004−65085A)
【公開日】 平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願番号】 特願2002−228111(P2002−228111)