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【発明の名称】 養液栽培方法及び養液栽培装置
【発明者】 【氏名】岡本 裕行

【氏名】田中 昌樹

【氏名】柏葉 慶治

【氏名】佐藤 和代

【氏名】城田 昌之

【氏名】石田 清治

【氏名】井上 雅夫

【氏名】山崎 秀一

【氏名】樫山 博章

【要約】 【課題】養液供給配管の閉塞を抑制するとともに、栽培する作物種、栽培周辺の環境に応じて栄養分の割合や供給量を随時変更可能な養液栽培方法及び養液栽培装置を安価で提供する。

【解決手段】無機物が含有された無機養液タンク2Aと、有機物が含有された有機養液タンク2Bとを具備し、無機養液タンク2Aから供給される無機養液と有機養液タンク2Bから供給される有機養液とを混合した無機・有機混合養液を培地1に供給した後、無機養液タンク2Aから供給される無機養液のみを培地1に供給する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地に養液を供給し、前記培地で作物の栽培を行う養液栽培方法であって、
前記養液として、無機物が含有された無機養液と、有機物が含有された有機養液とを具備し、前記無機養液と前記有機養液との供給を別々に行うことを特徴とする養液栽培方法。
【請求項2】
前記培地に前記有機養液を供給した後、前記無機養液を供給することを特徴とする請求項1に記載の養液栽培方法。
【請求項3】
作物を栽培する培地と、当該培地に供給する無機養液を貯留する無機養液タンクと、前記培地に供給する有機養液を貯留する有機養液タンクと、前記無機養液及び前記有機養液を前記培地へ供給可能とする養液供給配管と、を備えたことを特徴とする養液栽培装置。
【請求項4】
前記有機養液タンクから前記有機養液が供給された前記養液供給配管に、前記無機養液タンクから前記無機養液を供給するようになっていることを特徴とする請求項3に記載の養液栽培装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、培地に養液を供給して作物を栽培する養液栽培方法及び養液栽培装置に関し、特に、培地に有機養液を供給するために有効な技術に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、養液栽培装置の一例として、図2に示すように、複数の栽培ベット(培地)11と、この栽培ベット11に供給する養液を合成する養液タンク12と、この養液タンク12に原液を供給する複数の原液タンク12a〜12eと、養液タンク12及び原液タンク12a〜12eの動作を制御する制御装置13と、栽培ベット11からの廃液を回収する廃液タンク14と、から構成されているものが公知となっている(特開平8−172947号公報参照)。
【0003】
この養液栽培装置は、原液タンク12a〜12eから養液タンク12への供給量を、栽培する作物種、作物の生育状況及び栽培周辺の環境に応じて栽培ベット1毎に随時変更することができ、常に最適な養液を培地へ供給することが可能となっている。
近年、養液栽培が盛んになるにつれ、栽培する作物の生育及び収量をさらに向上させるための様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、特開2001−247393号公報においては、N(窒素)、P(リン酸)、K(カリウム)などの無機物を水に溶解・分散させた無機養液に、炭素数2〜11のカルボン酸及びその塩から選ばれる有機物を配合した無機・有機混合養液が開示されている。この手段によれば、養液中に有機養液を混合させることで、作物の収穫量、品質、食味などを向上させることが可能となった。
【0005】
【発明の解決しようとする課題】
ところで、上述の特開2001−247393号公報に開示された無機・有機混合養液を図2に示すような従来の養液栽培装置を用いて供給する場合、養液タンク12内に無機・有機混合養液を貯留し、この養液タンク12から栽培ベット1に養液を供給するようにする。
【0006】
しかしながら、無機・有機混合養液中には有機物が存在するため、この無機・有機混合養液を貯留する養液タンク周辺や、無機・有機混合養液を培地へ供給する養液供給配管内部にはカビなどの微生物が繁殖してしまうという不具合があった。特に、この微生物が養液供給配管の培地への供給口で繁殖すると、この供給口が閉塞し、全ての培地に均等に養液を供給できなくなってしまうという不具合があった。
【0007】
また、特開2001−247393号公報に開示された無機・有機混合養液は、既に所定割合で混合されているため、栽培する作物種、作物の生育状況及び栽培周辺の環境に応じて、必要とされる栄養分の割合や供給量を変化させることは困難であった。よって、作物が必要とする最低限の栄養分を全て含んだ養液を供給するようにするため、状況に応じては不必要な栄養分を供給することになるとともに、養液にかかるコストを増大させてしまうという不具合があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、養液供給配管の閉塞を抑制するとともに、栽培する作物種、作物の生育状況及び栽培周辺の環境に応じて栄養分の割合や供給量を随時変更可能な養液栽培方法及び養液栽培装置を安価で提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、本発明の養液栽培方法は、培地に養液を供給し、前記培地で作物の栽培を行う養液栽培方法であって、前記養液として、無機物が含有された無機養液と、有機物が含有された有機養液とを具備し、前記無機養液と前記有機養液との供給を別々に行うことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の養液栽培方法は、前記培地に前記有機養液を供給した後、前記無機養液を供給することが好ましい。例えば、培地に、有機養液を無機養液供給開始時とともに規定量供給した後、無機養液の供給を継続することが特に好ましい。
本発明の養液栽培装置は、作物を栽培する培地と、当該培地に供給する無機養液を貯留する無機養液タンクと、前記培地に供給する有機養液を貯留する有機養液タンクと、前記無機養液及び前記有機養液を前記培地へ供給可能とする養液供給配管と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の養液栽培装置は、前記有機養液タンクから前記有機養液が供給された前記養液供給配管に、前記無機養液タンクから前記無機養液を供給するようになっていることが好ましい。このとき、無機養液が流れず、有機養液のみが流れるようになっている養液供給配管は、極力短く形成することが好ましい。
本発明の養液栽培方法によれば、無機養液と有機養液とを具備し、無機養液と有機養液の供給量を別々に制御することによって、栽培する作物種、作物の生育状況、及び栽培周辺の環境に応じて、無機養液と有機養液との配合割合を随時調整することが可能となる。このため、作物に対して常に最適な養液を供給することができるため、作物を効率よく生育することができるとともに、養液にかかるコストを削減することが可能となる。
【0012】
特に、培地に有機養液の供給を終了した後、無機養液を継続して供給することによって、有機養液が通過した養液供給配管を無機養液で洗浄できるため、有機養液中に含有される有機物に起因する微生物の繁殖を抑制でき、養液供給配管の閉塞を防止することが可能となる。
本発明の養液栽培装置によれば、本発明の養液栽培方法を容易に実現することが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の養液栽培装置の一例を示す模式図である。
本実施形態の養液栽培装置は、図1に示すように、作物を栽培する複数の培地(栽培ベット)1と、培地1へ供給する無機養液を貯留する無機養液タンク2Aと、培地1へ供給する有機養液を貯留する有機養液タンク2Bと、培地1からの廃液を回収・貯留する廃液タンク3と、無機養液タンク2A及び有機養液タンク2Bから培地1へ無機養液及び有機養液を供給可能とする養液供給配管4と、培地1から廃液の回収を可能とする廃液回収配管5と、廃液タンク3から廃液を無機養液タンク2Aに供給する廃液供給配管6と、から構成されている。
【0014】
ここで、無機養液タンク2Aは、各無機物毎に無機原液タンク2a、2b、2cに貯留されている無機原液と、水タンク(図示しない)に貯留されている水とを、それぞれポンプP2a、P2b、P2c、Pw で供給し、無機養液タンク2A内部に設置されたポンプP2Aによって混合・合成するようになっている。そして、混合・合成した無機養液を、必要に応じてポンプP2Aを用いて培地1へ供給するようになっている。
【0015】
また、有機養液タンク2Bは、必要とされる有機物が含有された有機養液が貯留されており、必要に応じてポンプP2Bを用いて、単独又は無機養液と混合して培地1へ供給するようになっている。
廃液タンク3は、培地1から回収された廃液を貯留するとともに、この廃液の一部は養液として再利用するために養液タンク2に供給するようになっている。
【0016】
養液供給配管4は、無機養液タンク2Aと培地1とを接続する第一の養液供給配管4Aと、この第一の養液供給配管4Aと有機養液タンク2Bとを接続部4Cを介して接続する第二の養液供給配管4Bと、から構成されている。
ここで、第一の養液供給配管4Aにおいて、無機養液タンク2Aと接続部4Cとの間は無機養液のみが通過し、第二の養液供給配管4Bは有機養液のみが通過するようになっている。また、第一の養液供給配管4Aにおいて、接続部4Cと培地1との間は、無機養液タンク2Aから供給される無機養液と、第二の養液供給配管4Bを介して有機養液タンク2Bから供給される有機養液との両方又は混合した状態のものが通過可能となっている。さらに、第一の養液供給配管4Aと第二の養液供給配管4Bとの接続部4Cでは、無機養液と有機養液とが混合可能となっている。
【0017】
廃液回収配管5は、培地1と廃液タンク3とを接続し、培地1から排出される廃液を廃液タンク3に供給可能となっている。
廃液供給配管6は、廃液タンク3と無機養液タンク2Aとを接続し、廃液タンク3に回収・貯留された廃液の一部をポンプP3 を用いて無機養液タンク2Aに供給するようになっている。このとき、養液として再利用しない廃液は、排水として排水処理装置(図示しない)に供給するようになっている。
【0018】
ここで、無機養液タンク2Aに貯留される無機養液は、特に限定されないが、例えばN(窒素質)肥料、P(リン酸質)肥料、及びK(カリウム質)肥料などが水に分散・合成された液状肥料などが挙げられる。
N肥料としては、特に限定されないが、例えば硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸石灰、硝酸苦土などの硝酸態窒素含有肥料や、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸アンモニウムナトリウムなどのアンモニア態窒素含有肥料や、尿素などの尿素態窒素含有肥料などから選択される一種或いは二種以上の混合物が挙げられる。
【0019】
P肥料としては、特に限定されないが、例えばリン酸第一アンモニウム、リン酸第二アンモニウム、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、焼成リン肥、腐食酸リン肥、リン酸苦土、副産リン酸などが挙げられる。
K肥料としては、特に限定されないが、例えば硫酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム苦土、重炭酸カリウム、腐食酸カリウム、粗製カリウム塩、被覆カリウム塩、 液体珪酸カリウム、副産カリウム、混合カリウムなどが挙げられる。
【0020】
また、無機養液を構成する無機物はこれに限らず、例えば石灰質肥料、珪酸質肥料、苦土質肥料、マンガン質肥料、ホウ素質肥料などの肥料成分が含有されていてもよい。
石灰質肥料としては、特に限定されないが、例えば生石灰、消石灰、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウムなどが挙げられる。
【0021】
珪酸質肥料としては、特に限定されないが、例えば珪酸カルシウムなどの珪酸アルカリを主成分とし、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、鉄、アルミニウム、マンガンなどを含むものが挙げられる。
苦土質肥料としては、特に限定されないが、例えば硫酸苦土、水酸化苦土、腐食酸苦土、酢酸苦土、加工苦土肥料、リグニン苦土肥料、混合苦土肥料、硝酸苦土、苦土石灰などが挙げられる。また、リン酸質肥料としてあげた熔成リン肥などは苦土質肥料としても適用できる。
【0022】
マンガン質肥料としては、特に限定されないが、例えば硝酸マンガンなどのマンガン化合物を主成分とするものが挙げられる。
ホウ素質肥料としては、特に限定されないが、例えばホウ酸肥料、ホウ酸塩肥料などの水溶性ホウ素を含有するものなどが挙げられる。
このN肥料、P肥料、及びK肥料の配合割合は、特に限定されず、養液栽培形態、栽培する作物種、栽培周辺の環境などの各種条件に応じて随時変更可能である。
【0023】
有機養液タンク2Bに貯留される有機養液は、特に限定されないが、例えば炭素数2〜11のカルボン酸およびその塩などが挙げられる。具体的には、例えば、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、バリン、ヒスチジン、アルギニン、アラニン、アルパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トリプトファンなどのアミノ酸及びその塩や、クエン酸、グルタル酸、リンゴ酸などの有機カルボン酸及びその塩等から選択される一種或いは二種以上の混合物が挙げられる。特に、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリンなどのアミノ酸及びその塩、クエン酸、グルタル酸、リンゴ酸などの有機カルボン酸及びその塩などが好適である。
【0024】
次に、本実施形態の養液栽培装置を用いた養液栽培方法について説明する。
まず、それぞれの培地1で栽培する作物種、作物の生育状況、或いは栽培周辺の環境に応じて必要とされる無機養液を作製しておく。具体的には、各無機原料タンク2a、2b、2cから所定割合の無機原料を無機養液タンク2Aに供給し、この無機養液タンク2A内のポンプP2Aで水とともに混合することで、無機養液を作製しておく。
【0025】
一方、それぞれの培地で栽培する作物種、作物の生育状況、或いは栽培周辺の環境に応じて、必要とされる有機養液を作製し、有機養液タンク2Bに貯留しておく。
そして、無機養液を、無機養液タンク2AからポンプP2Aを用いて第一の養液供給配管4Aに供給すると同時に、有機養液を、有機養液タンク2BからポンプP2Bを用いて第二の養液供給配管4Bに供給する。すると、養液供給配管4の接続部4Cで無機養液と有機養液とが混合され、無機・有機混合養液の状態で培地1に供給することができる。
【0026】
次いで、所定時間経過後、有機養液タンク2Bからの有機養液の供給を停止し、無機養液タンク2Aから無機養液を供給しつづけることで、培地1には、無機養液のみを供給するようにする。
このように、本実施形態における養液栽培方法によれば、無機養液と有機養液とを別のタンクに貯留し、必要に応じて混合して培地に供給するようにしたことによって、栽培する作物種、作物の生育状況、及び栽培周辺の環境に応じて随時養液の配合割合を調整することが可能となる。このため、栽培する作物に対して常に最適な養液を供給することができるため、作物を効率的に生育することができるとともに、養液にかかるコストを削減することが可能となる。
【0027】
また、無機養液と有機養液とを混合した無機・有機混合養液を培地に供給した後、無機養液のみを培地に供給することによって、有機養液が通過した養液供給配管が無機養液によって洗浄されるため、有機養液に起因する微生物の繁殖を抑制し、養液供給配管の閉塞を防止することが可能となる。
なお、無機養液と有機養液との供給方法は、これに限らず、栽培する作物種、作物の生育状況、或いは栽培周辺の環境に応じて、随時変更可能である。例えば、有機養液のみを供給した後、無機養液のみを供給するようにしてもよい。或いは、有機養液のみを供給した後、無機・有機混合養液を供給し、その後無機養液のみを供給するようにしてもよい。さらには、無機養液を供給しつづけておき、所定間隔で有機養液を供給するようにすることで、無機養液と、無機・有機混合養液との供給を交互に行うようにしてもよい。特に、養液供給配管の微生物による閉塞を抑制するために、有機養液或いは無機・有機混合養液を供給した後に、無機養液のみを供給するようにすることが好ましい。
【0028】
また、本実施形態においては、有機養液タンク2Bを一つのタンクから構成したが、これに限らず、例えば、各有機物毎に複数の有機原液タンクを具備し、この有機原液タンクに貯留されている有機原液を混合・合成した有機養液を培地1に供給するようにしてもかまわない。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の養液栽培方法によれば、無機養液と有機養液とを具備し、培地への無機養液と有機養液との供給を別々に行うことによって、栽培する作物種、作物の生育状況、及び栽培周辺の環境に応じて、無機養液と有機養液との配合割合を随時変更することが可能となる。よって、作物に最適な養液を随時供給できるため、作物を効率的に生育することができるとともに、養液にかかるコストを低減させることが可能となる。
【0030】
特に、培地に有機養液を供給した後、無機養液を供給することによって、有機養液が通過した養液供給配管が無機養液で洗浄されるため、有機養液中に含まれる有機物に起因する養液供給配管の閉塞を抑制することが可能となる。
本発明の養液栽培装置によれば、本発明の養液栽培方法を容易に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における養液栽培装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】従来の養液栽培装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1、11         培地
2、12         養液タンク
2A           無機養液タンク
2B           有機養液タンク
2a、2b、2c     無機原液タンク
3、14         廃液タンク
4            養液供給配管
4A           第一の養液供給配管
4B           第二の養液供給配管
4C           接続部
5            廃液回収配管
6            廃液供給配管
12           養液タンク
13           制御装置
【出願人】 【識別番号】000000055
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
【識別番号】390018474
【氏名又は名称】新日本空調株式会社
【出願日】 平成14年7月5日(2002.7.5)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也

【識別番号】100075579
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 嘉昭

【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 秀▲てつ▼

【公開番号】 特開2004−33151(P2004−33151A)
【公開日】 平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願番号】 特願2002−197371(P2002−197371)