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【発明の名称】 土壌緑化工法及び土壌緑化構造
【発明者】 【氏名】武田 伸一
【住所又は居所】新潟県新潟市一番堀通町3番地10 株式会社福田組内

【氏名】小日向 隆
【住所又は居所】新潟県新潟市一番堀通町3番地10 株式会社福田組内

【氏名】酒井 隆
【住所又は居所】新潟県新潟市一番堀通町3番地10 株式会社福田組内

【要約】 【課題】植物を植生できない酸性を呈する土壌層の悪影響を、該土壌層の酸性を中性にする中和材を含んだ中和層により遮断することで、該中和層の表層に形成した植生層で植物を良好に植生して酸性土壌を良好に緑化することができ、しかも、この酸性土壌の緑化を簡単且つ安価に行うことができる極めて実用性に秀れた土壌緑化工法を提供することを目的としている。

【解決手段】酸性を呈する土壌層1の表層に該土壌層1の酸性を中性とする中和材と水溶性高分子バインダーとから成る中和層2を形成し、続いて、この中和層2の表層に植物4を植生する植生層3を形成し、該植生層3に植物4を植生することで土壌を緑化する土壌緑化工法及び土壌緑化構造。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性を呈する土壌層の表層に該土壌層の酸性を中性とする中和材と水溶性高分子バインダーとから成る中和層を形成し、続いて、この中和層の表層に植物を植生する植生層を形成し、該植生層に植物を植生することで土壌を緑化することを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項2】
請求項1記載の土壌緑化工法において、前記土壌層が傾斜している法面であることを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記水溶性高分子バインダーは、前記中和層から前記中和材が流出することを防止する機能を有するものであることを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記中和材として、消石灰,生石灰,炭酸カルシウム,セメントダスト,鉱滓スラグ,貝殻を採用したことを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、中和層は、土壌層の表層に中和材を敷設して中和材層を設け、続いて、この中和材層の表層に水溶性高分子バインダーを吹き付け該水溶性高分子バインダーにより該中和材層を被覆して形成することを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、土壌層の表層に中和層を形成した後、該中和層の表面にネット材を敷設し、続いて、該ネット材の表面に植生層を形成することを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項7】
請求項1〜5いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、土壌層の表層に中和層を形成する前に、該土壌層の表面にネット材を敷設し、続いて、該ネット材の表面に中和層を形成し、続いて、該中和層の表層に植生層を形成することを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項8】
請求項1〜4いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、中和層は、中和材と水溶性高分子バインダーと水とを混合することで所定粘度を有する中和層原料を形成し、この中和層原料を土壌層の表面に吹き付けて該中和層原料を該土壌層の表面に積層して形成することを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項9】
請求項8記載の土壌緑化工法において、前記中和層原料は吹き付け面積1m当たり、中和材が1〜3kg,水溶性高分子バインダーが0.06〜0.18kg,水が水溶性高分子バインダーの10〜50倍となるように調整されていることを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項10】
請求項8,9いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、中和層原料としてファイバー材を混合せしめたものを採用したことを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項11】
請求項8〜10いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記中和層原料を土壌層に吹き付けて該土壌層に中和層を形成した後、該中和層の表面にネット材を敷設し、続いて、該ネット材の表面に植生層を形成することを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項12】
請求項8〜10いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記中和層原料を土壌層に吹き付ける前に、該土壌層にネット材を敷設し、続いて、該ネット材の表面から前記中和層原料を吹き付けることで前記土壌層に前記中和層を形成し、続いて、この中和層の表層に植生層を形成することを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項13】
請求項6,7,11,12いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記ネット材は、前記植生層または前記植生層及び中和層を前記酸性の土壌層に対してずり動落下することなく固定する機能を有するものであることを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項14】
請求項6,7,11〜13いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記ネット材の表面に形成する植生層又は中和層は、該ネット材を含んだ状態で形成されることを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項15】
請求項6,7,11〜14いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記ネット材として、ラス金網又は樹脂ネットを採用したことを特徴とする土壌緑化工法。
【請求項16】
酸性を呈する土壌層の表層に該土壌層の酸性を中性とする中和材と水溶性高分子バインダーとから成る中和層を有し、この中和層の表層に植物を植生する植生層を有することを特徴とする土壌緑化構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸性土壌を緑化する土壌緑化工法及び土壌緑化構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
日本全土には、pHが2.0〜3.0の強酸性を示す強酸性土壌が広く分布している。従って、大規模な造成工事等を行うと強酸性土壌の法面が広範囲に亙って出現してしまう。この強酸性土壌の法面に植物を植生しようとしても、該植物が枯死したりするため、この強酸性土壌の法面の緑化は非常に厄介である。
【0003】
ところで、強酸性土壌を緑化する技術として、例えば強酸性土壌に消石灰や生石灰,炭酸カルシウムといった石灰化合物を散布し、該散布した石灰化合物の上に植物を植生するための植物基盤層を設け、該植物基盤層で植物を植生する工法(以下、第一従来例という。)が提案されている。
【0004】
この第一従来例によれば、強酸性土壌に散布されたアルカリ性の石灰化合物が強酸性土壌の表面部の酸性成分と化学反応(中和反応)する。これにより、強酸性土壌の表面部は中性状態となり、前記石灰化合物の上に設けた植物基盤層が強酸性土壌によって酸性化されず、前記植物基盤層で植物を植生することが可能となる。
【0005】
しかしながら、この第一従来例の場合、強酸性土壌を中性状態とする石灰化合物は、強酸性土壌に単に散布されるだけであり、しかも、該消石灰や生石灰等の石灰化合物は水溶性であるため、降雨等により該石灰化合物に加水されると、該石灰化合物が強酸性土壌から水分と共に該強酸性土壌外へ流出してしまう問題点がある。特に、土壌が傾斜している場合、即ち、例えば法面の場合、この流出は顕著となる。
【0006】
また、この第一従来例の改良案として、降雨時等でも石灰化合物が流出しにくいように石灰化合物と粘性土とで形成した中和層を前記強酸性土壌に設け、この中和層の上に植物基盤層を設けて該植物基盤層で植物を植生する工法が提案されている(以下、第二従来例という。)。
【0007】
この第二従来例は、酸性状態の土壌を中性化する石灰化合物が粘性土によって中和層に保持されているため、該石灰化合物が流出しにくく、法面でも実施することが可能となる。
【0008】
しかしながら、この第二実施例は、粘性土が疎水性であるため、水分を加えて流動性を高めても粘着力が大きく、よって、法面に吹き付ける場合には、吹き付け力が強力なコンクリートポンプを用いる必要がある。そのため、施工が困難となる上、該施工がコスト高となってしまい実用性に劣る。
【0009】
また、この第一従来例や第二従来例以外に、強酸性土壌を緑化する技術として、植生基盤層の施工厚を厚層化する工法が提案されている(第三従来例)。
【0010】
しかしながら、この第三従来例は、強酸性土壌に前記植物基盤層を非常に厚く敷設しなければならないため、手間がかかる上にコスト高である問題点がある。
【0011】
また、貧配合ソイルセメントを用いて強酸性土壌の表面に遮断層を形成し、該遮断層の表面に植物基盤層を設けて該植物基盤層で植物を植生する工法(以下、第四従来例という。)も提案されている。
【0012】
しかしながら、この第四従来例は、強酸性土壌と植物基盤層との間が前記貧配合ソイルセメントによって遮断されているため該植物基盤層が酸性化されることはないが、遮断層の施工に時間がかかると共に、該遮断層が強固であるため、植物の根の成長が阻害されて例えば大きな樹木などは植生できない。更に、法面の場合、大雨等により水分が過剰に供給されると、この供給された水分は遮断層内に浸透されず該遮断層上を流れ落ちることとなるため、前記ソイルセメント上から植物基盤層が滑落しかねない懸念を有する。
【0013】
また、微生物資材を散布して強酸性土壌の土壌改質を図る工法も提案されている(以下、第五従来例という。)。
【0014】
しかしながら、この第五従来例は、微生物資材が高価なために前記土壌の改質にコストがかかり、実用的でないという問題点を有する。
【0015】
更に、シートによる遮断層を形成し、該遮断層に植物基盤層を設けて該植物基盤層で植物を植生する工法も提案されている(以下、第六従来例という。)。
【0016】
しかしながら、この第六従来例の場合においても、強酸性土壌と植物基盤層との間が前記シートによって遮断されてしまうため、植物の根の成長が阻害されたり、法面の場合、大雨により水分が過剰に供給されると、前記シート上から植物基盤層が滑落しかねず、また、該シートが破損した場合には、修理をするのがかなり困難となる問題点がある。
【0017】
本発明は、上記現状に鑑みて発明したもので、酸性土壌の緑化を簡単且つ安価に行うことができる極めて実用性に秀れた土壌緑化工法及び土壌緑化構造を提供するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0019】
酸性を呈する土壌層1の表層に該土壌層1の酸性を中性とする中和材と水溶性高分子バインダーとから成る中和層2を形成し、続いて、この中和層2の表層に植物4を植生する植生層3を形成し、該植生層3に植物4を植生することで土壌を緑化することを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0020】
また、請求項1記載の土壌緑化工法において、前記土壌層1が傾斜している法面であることを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0021】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記水溶性高分子バインダーは、前記中和層2から前記中和材が流出することを防止する機能を有するものであることを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0022】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記中和材として、消石灰,生石灰,炭酸カルシウム,セメントダスト,鉱滓スラグ,貝殻を採用したことを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0023】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、中和層2は、土壌層1の表層に中和材を敷設して中和材層を設け、続いて、この中和材層の表層に水溶性高分子バインダーを吹き付け該水溶性高分子バインダーにより該中和材層を被覆して形成することを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0024】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、土壌層1の表層に中和層2を形成した後、該中和層2の表面にネット材5を敷設し、続いて、該ネット材5の表面に植生層3を形成することを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0025】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、土壌層1の表層に中和層2を形成する前に、該土壌層1の表面にネット材5を敷設し、続いて、該ネット材5の表面に中和層2を形成し、続いて、該中和層2の表層に植生層3を形成することを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0026】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、中和層2は、中和材と水溶性高分子バインダーと水とを混合することで所定粘度を有する中和層原料を形成し、この中和層原料を土壌層1の表面に吹き付けて該中和層原料を該土壌層1の表面に積層して形成することを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0027】
また、請求項8記載の土壌緑化工法において、前記中和層原料は吹き付け面積1m当たり、中和材が1〜3kg,水溶性高分子バインダーが0.06〜0.18kg,水が水溶性高分子バインダーの10〜50倍となるように調整されていることを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0028】
また、請求項8,9いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、中和層原料としてファイバー材を混合せしめたものを採用したことを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0029】
また、請求項8〜10いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記中和層原料を土壌層1に吹き付けて該土壌層1に中和層2を形成した後、該中和層2の表面にネット材5を敷設し、続いて、該ネット材5の表面に植生層3を形成することを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0030】
また、請求項8〜10いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記中和層原料を土壌層1に吹き付ける前に、該土壌層1にネット材5を敷設し、続いて、該ネット材5の表面から前記中和層原料を吹き付けることで前記土壌層1に前記中和層2を形成し、続いて、この中和層2の表層に植生層3を形成することを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0031】
また、請求項6,7,11,12いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記ネット材5は、前記植生層3または前記植生層3及び中和層2を前記酸性の土壌層1に対してずり動落下することなく固定する機能を有するものであることを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0032】
また、請求項6,7,11〜13いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記ネット材5の表面に形成する植生層3又は中和層2は、該ネット材5を含んだ状態で形成されることを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0033】
また、請求項6,7,11〜14いずれか1項に記載の土壌緑化工法において、前記ネット材5として、ラス金網又は樹脂ネットを採用したことを特徴とする土壌緑化工法に係るものである。
【0034】
また、酸性を呈する土壌層1の表層に該土壌層1の酸性を中性とする中和材と水溶性高分子バインダーとから成る中和層2を有し、この中和層2の表層に植物4を植生する植生層3を有することを特徴とする土壌緑化構造に係るものである。
【0035】
【発明の作用及び効果】
土壌層1が酸性の為、植生層3での植物4の生育に悪影響が生じるところ、土壌層1の表層に形成した中和層2に含まれる中和材の中和作用により、該悪影響は遮断され、よって、該中和層2の表層に形成した植生層3は酸性化されることはなく、該植生層3で植物4は良好に生育し、土壌の緑化が良好に行われる。
【0036】
また、前記中和層2に含まれる中和材は、水溶性高分子バインダーによって該中和層2中に確実に保持されるため、例えば降水等によって該中和層2が加水されても、中和材が中和層2から流出することはない。
【0037】
また、前記土壌層1の表層に形成した中和層2は、該中和層2に含まれる水溶性高分子バインダーの接着作用により、該土壌層1に確固に保持され、そのため、上記中和材の中和作用が長期間に亙り発揮されることになる。更にこれにより、従来、降雨等により流出し易いために使用しづらかった例えば消石灰,生石灰,炭酸カルシウム等のアルカリ度の高い石灰化合物も容易に使用できることとなる。
【0038】
従って、本発明によれば、植生層3が酸性を呈する土壌層1の悪影響を受けることはなく、該植生層3で植物4を良好に植生して土壌の緑化を良好に行うことができる。
【0039】
また、請求項8〜12記載の発明の前記中性層2を形成することとなる中和層原料は、前記酸性を呈する土壌層1の表層を中性とする中和材と水溶性高分子バインダーと水とを単に混合するだけで簡単に形成することができ、しかも、この中和層2を形成する中和層原料は、所定粘度を有しているため、酸性の土壌層1の表層にスラリーポンプ等の安価な吹き付け装置によって、単に吹き付けるだけで、簡単に中和層2を形成することができる。
【0040】
また、例えば、請求項6,7,11〜15いずれか1項に記載の発明のように、前記土壌層1と中和層2との間若しくは中和層2と植生層3との間にネット材5を敷設すれば、このネット材5の係止作用により、該土壌層1に対して植生層3や中和層2がずり動落下しないように確実に固定できることになる。
【0041】
本発明は上述のようにしたから、植生層で植物を良好に植生して酸性の土壌を良好に緑化することができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
図面は本発明の実施例を図示したものであり、以下に説明する。
【0043】
図1に図示した第一実施例は、酸性を呈する法面の土壌層1の表面にネット材5を敷設し、該ネット材5の表面に中和層2を形成し、この中和層2の表層に植生層3を形成し、この植生層3に植物4を植生することで該土壌層1を緑化する土壌緑化工法である。
【0044】
尚、酸性とは、植物が良好に生育できない状態を示すものであり、具体的には、pH6未満程度である。これに対し、後述の中性とは、植物が良好に成長することができる土壌の状態を示すものであり、具体的には、pH6〜8程度である。
【0045】
先ず、緑化しようとする酸性を呈するの土壌層1に後述の中和層原料を吹き付けし易いように、土壌層1を予め簡単に整地する。
【0046】
続いて、前記土壌層1の表面にネット材5を敷設する。
【0047】
この際、杭等の係止部材により前記土壌層1にネット材5を固定する。
【0048】
前記ネット材5は、ラス金網(金属線材を粗い格子状に配設したもの)若しくは樹脂ネット(目の粗いもの)を採用すると良い。
【0049】
続いて、前記土壌層1に敷設したネット材5の表面から、後述の中和層原料を吹き付け、該吹き付けた中和層原料を乾燥固化することで中和層2を形成する。
【0050】
この中和層2を形成する中和層原料は、土壌層1の酸性を中性とする中和材と水溶性高分子バインダーと水とから成るものを採用する。
【0051】
具体的には、中和材は、消石灰,生石灰,炭酸カルシウム,セメントダスト,鉱滓スラグ,貝殻等のアルカリ性無機質材料を採用する。
【0052】
また、水溶性高分子バインダーは、中和層2から中和材が流出することを防止する機能を有する水溶性高分子バインダー、具体的にはクリコートC−402(商品名)等を採用する。尚、水溶性高分子バインダーは、中和層2から中和材が流出することを防止する機能を有する水溶性高分子バインダーであれば良く、例えば植物性バインダーを採用しても良い。
【0053】
前記中和層原料は、吹き付け面積1m当たり中和材が1〜3kg,水溶性高分子バインダーが0.06〜0.18kg,水が水溶性高分子バインダーの10〜50倍となるように調整されている。
【0054】
前記のように調整された中和層原料は所定粘度を有するスラリー状物質となる。
【0055】
また、中和層原料には、ファイバー材、具体的には木質系繊維材(ウッドチップ等)を混入すると良い。この木質系繊維材は、吹き付け面積1m当たり0.05〜0.40kgとなるように前記中和層原料に混合すると良い。
【0056】
この木質系繊維材を前記中和層原料に混入すると、該中和層原料を土壌層1の表層に吹き付けた際、木質系繊維材が中和層原料中の水分を吸収するため、中和層原料の余分な水分による滑落がなくなる。従って、前記土壌層1に吹き付けた中和層原料は、迅速に乾燥固化し、傾斜している土壌層1の表層から極めて流下しにくい状態となる。
【0057】
また、流動性を有するスラリー状の中和層原料を土壌層1に吹き付けるだけで中和層2を簡単に形成することができる。
【0058】
また、土壌層1に吹き付けた中和層原料は、該土壌層1の表面に固定したネット材5の網目に入り込んで、該中和層原料とネット材5とが積層状態で固化することになり、よって、土壌層1に対してずり動落下することのない強固なネット材5を含んだ中和層2を形成することができる。
【0059】
また、前記中和層原料の土壌層1への吹き付けは、運搬容易なスラリーポンプで行う。
【0060】
即ち、前記中和層原料が、粘性土のような粘性度の高い物質ではなく高い流動性を有するスラリー状物質であるため、スラリーポンプで吹き付けすることができ、これにより、緑化しようとする酸性を呈する土壌層1全面に中和層原料を効率良くスピィーディにしかも安価に吹き付けでき、秀れた施工性を発揮することができる。
【0061】
また、このスラリーポンプは、運搬が容易であるため、施工現場が制限されることは極めて少なく、よって、一層秀れた施工性を発揮することができる。
【0062】
また、緑化しようとする酸性を呈する土壌層1の面積が非常に大きい場合でも、前記スラリーポンプを移動させながら該土壌層1に中和層原料を吹き付けできるため、中和層2を簡単に形成することができる。
【0063】
尚、第一実施例では、中和層2の厚さを1〜2cm程度に設定している。
【0064】
続いて、中和層2の表面に植物4を植生するための富栄養化された土等を吹き付けて植生層3を形成する。
【0065】
続いて、この植生層3で植物4を植生する。
【0066】
また、前記富栄養化された土等を中和層2の表層に吹き付ける際に、該富栄養化された土等に植物の種子を予め一緒に混合して吹き付けても良いし、該富栄養化された土等を吹き付けて植生層3を形成した後に、該植生層3に種子を蒔いたり、樹木を植えたりしても良い。
【0067】
この工法によれば、酸性を呈する土壌層1の表層に形成した中和層2が、該酸性の土壌層1と植物4を生育する為の植生層3とを遮断するから、植生層3が土壌層1の悪影響を受けることを阻止することができ、よって、植生層3で植物4を良好に植生して酸性土壌の緑化を行うことができる。
【0068】
即ち、酸性を呈する土壌層1中の酸性成分が植生層3形成側に浸透しようとしても、中和層2に含まれる中和材の中和作用により該酸性成分が中和されるため、該植生層3が酸性を呈する土壌層1によって極めて酸性化されにくく、よって、植生層3に植物4を良好に植生して酸性土壌を緑化することができる。
【0069】
また、中和層2内の中和材の中和作用により、酸性を呈する土壌層1の表面から所定深さまでの土壌が長期間に亙り中和されて中性状態となるため、該中和層2の表層に形成した植生層3は一層酸性化されにくく、よって、該植生層3で植物4を良好に植生して酸性土壌を良好に緑化できることとなる。
【0070】
また、中和層2は、該中和層2に含まれる水溶性高分子バインダーの吸着作用により、土壌層1の表層に確固に保持されるため、この点においても、中和層2に含まれる中和材の中和作用を長期間に亙って発揮でき、これにより、中和層2の表層に形成した植生層3がより一層酸性化されにくく、よって、該植生層3で植物4を良好に植生して酸性土壌を良好に緑化できることとなる。
【0071】
第一実施例は上述のようにするから、植物4の植生が困難な酸性を呈する土壌層1上に、該土壌層1の悪影響を受けることなく植物4を良好に植生できる植生層3を形成でき、よって、該植生層3に植物4を植生して酸性土壌の緑化を良好に行うことができる。
【0072】
また、前記土壌層1に中和層原料を吹き付け、該中和層原料を乾燥固化させて中和層2を形成した際、中和層原料を構成する水溶性高分子バインダーの接着作用により、該中和層2を酸性土壌1に対してずり動しにくい状態で確固に保持することができる。
【0073】
即ち、前記土壌層1の酸性を中性にする中和材を中和層2と共に長期間に亙って土壌層1表層に保持できるため、中和層2の表面に設けた植生層3が酸性化されることを長期間に亙って阻止して、酸性土壌の緑化を良好に行うことができる。
【0074】
また、前記土壌層1の表層に形成された中和層2は、該土壌層1の酸性を中性にする中和材を水溶性高分子バインダーによって確実に保持しているため、大雨により土壌層1に水分が過剰に供給されても該中和材が中和層2から流出することはなく、よって、中和層2内の中和材の中和作用を長期間に亙って良好に発揮することができる。
【0075】
また、前記中和層2は、酸性を呈する土壌層1の表層に単に形成したのではなく、該土壌層1に固定したネット材5の表面から中和層原料を吹き付けて該ネット材5を含んだ状態で形成されるため、たとえ前記土壌層1に中和層2及び植生層3を厚めに設けても、該中和層2及び植生層3がネット材5によって強固に係止(保持)され、土壌層1に対して極めてずり動落下しにくい状態にできる。従って、この点においても、長期間に亙って酸性土壌を良好に緑化することができる。
【0076】
また、前記中和層2は、安価で入手可能な消石灰や生石灰等のアルカリ性無機質材料と、市販されている水溶性高分子バインダー(クリコートC−402等)とにより形成されるため、安価に形成することができ、よって、酸性土壌の緑化を安価に行うことができる。
【0077】
また、前記中和層2は、流動性の高いスラリー状の中和層原料を、単にネット材5を固定した土壌層1に吹き付けて乾燥固化するだけで形成できるため、酸性を呈する土壌層1を良好に緑化するための中和層2を簡単に形成することができる。
【0078】
また、例えば第四従来例に記載したソイルセメントのような遮断層を設けず、また、中和層2は該ソイルセメントに比して硬くないため、植生層3に植生した植物4の根が成長して中和層2に達した際、該根が中和層2を通過して土壌層1に侵入することができ、よって、植生層3には小さな植物4から大きな植物4(例えば樹木)まで、様々な植物4を良好な状態で植生して酸性土壌を良好に緑化することができる。
【0079】
また、本実施例は、施工に際し、予め酸性を呈する土壌層1の表層を整地するから、ネット材5を敷設し易く、また、中和層原料を吹き付けし易く、よって、ネット材5を含んだ中和層2を簡易に形成することができる。
【0080】
また、中和層原料を吹き付ける前に土壌層1に敷設するネット材5は、杭等の係止部材により固定されるため、このネット材5の表面から中和層原料を吹き付けて乾燥固化することで形成される該ネット材5を含んだ状態の中和層2は、該ネット材5によって土壌層1に強固に保持され、該土壌層1に対して極めてずり動落下しにくい状態となる。
【0081】
また、植生層3は、ネット材5の表面から吹き付けた中和層原料が乾燥固化して中和層2が形成されてから該中和層2の表面に形成するため、植生層3を形成する富栄養化された土等を該中和層2の表面に吹き付けた際に、植生層3の流下しようとする作用と共に中和層2が土壌層1に沿って流下したりすることなく、植生層3も中和層2も土壌層1の表層に良好に保持されることになる。
【0082】
図2に図示した第二実施例は、酸性を呈する法面の土壌層1の表層に中和層2を形成し、この中和層2の表面にネット材5を敷設し、該ネット材5の表面に植生層3を形成し、この植生層3に植物4を植生して酸性土壌を緑化するための土壌緑化工法である。
【0083】
この第二実施例は、ネット材5を敷設する順序が異なる他は、第一実施例と同様の構成である。
【0084】
先ず、予め整地された酸性を呈する土壌層1に前記中和層原料を吹き付け、該中和層原料を乾燥固化することで中和層2を形成する。
【0085】
続いて、この中和層2の表面に前記ネット材5を杭等の係止部材により固定する。
【0086】
続いて、このネット材5の表面から、富栄養化された土等を吹き付けて植生層3を形成する。
【0087】
続いて、植生層3に植物4を植生する。
【0088】
第二実施例によれば、中和層2の表面に固定したネット材5の上から富栄養化された土等を吹き付けることで、該富栄養化された土等がネット材5の網目に入り込みつつ積層状態で配設されていくことになり、よって、形成される植生層3は、該ネット材5により係止された状態となって、中和層2に対して極めてずり動落下しにくいことになる。
【0089】
第二実施例は上述のようにするから、中和層2に対して植生層3を極めてずり動落下しにくい状態で形成することができるため、該植生層3で植物4を良好に植生して酸性土壌を良好に緑化することができる。
【0090】
また、その余は第一実施例と同様である。
【0091】
尚、第一実施例,第二実施例では、前記中和層2を、中和材,水溶性高分子バインダー,水を混合した中和層原料を土壌層1に吹き付けて乾燥固化させることで形成しているが、酸性を呈する土壌層に、先ず中和材を敷設して中和材層を設け、この中和材層の表面から水溶性高分子バインダーを吹き付けて乾燥固化することで、中和層を形成しても良い。
【0092】
また、本実施例は、法面以外にも、傾斜していない平坦な土壌に対しても施工しても良い。また、中性状態の土壌や法面に施工しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一実施例の法面緑化状態を示す説明断面図である。
【図2】第二実施例の法面緑化状態を示す説明断面図である。
【符号の説明】
1 土壌層
2 中和層
3 植生層
4 植物
5 ネット材
【出願人】 【識別番号】000154565
【氏名又は名称】株式会社福田組
【住所又は居所】新潟県新潟市一番堀通町3番地10
【出願日】 平成14年7月4日(2002.7.4)
【代理人】 【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛

【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄

【公開番号】 特開2004−33130(P2004−33130A)
【公開日】 平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願番号】 特願2002−196350(P2002−196350)