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【発明の名称】 コンバイン刈取部の昇降制御装置
【発明者】 【氏名】吉邨 文夫
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】平山 秀孝
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】松澤 宏樹
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】刈取部を昇降する際の上下の限度位置における衝撃を小さく抑えるとともに、その限度位置の近傍における操作性を確保することができるコンバイン刈取部の昇降制御装置を提供する。

【解決手段】コンバイン刈取部の昇降制御装置は、昇降入力操作によって刈取部の昇降限界点の範囲内で昇降動作を制御するとともに、上記刈取部の高さ位置が昇降限界点からその近傍範囲に及ぶ所定の昇降端部領域内であり、かつ、刈取部の昇降入力具による入力方向が該当の限界点の方向である場合に、同限界点までの距離に応じた速度まで入力速度を低減して指令速度とする指令調節手段と、その昇降指令速度について所定の下限速度を維持するように速度比較により指令速度を補正する速度補正手段を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降入力具による昇降入力信号に応じて刈取部の昇降方向と昇降速度に係る昇降指令を上下の少なくとも一方の昇降限界点に至る範囲で出力することにより刈取部の昇降動作を制御するコンバイン刈取部の昇降制御装置において、
上記刈取部の高さ位置が昇降限界点に及ぶ所定の昇降端部領域内であり、かつ、刈取部の昇降入力具による入力方向が該当の限界点の方向である場合に、同限界点までの距離に応じた所定の速度まで入力速度を低減して指令速度とする指令調節手段と、
その昇降指令速度について所定の下限速度を維持するように速度比較により指令速度を補正する速度補正手段を備えることを特徴とするコンバイン刈取部昇降制御装置。
【請求項2】
昇降入力具による昇降入力信号に応じて刈取部の昇降方向と昇降速度に係る昇降指令を上下又はそのいずれかの限界高さ位置として設定した昇降参照点に至る範囲で出力することにより刈取部を昇降制御するコンバイン刈取部の昇降制御装置において、
上記刈取部の高さ位置が昇降参照点またはその外方の昇降超過領域であり、かつ、刈取部の昇降入力具による入力方向が外側方向である場合に、所定速度の指令速度とする延長指令手段を備えることを特徴とするコンバイン刈取部昇降制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機体前部に備えた刈取部の昇降を制御するコンバイン刈取部の昇降制御装置に関し、特に、刈取部の速やかな昇降動作を損なうことなく、その昇降限界における衝撃を抑えることができるコンバイン刈取部の昇降制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンバインは、図13に示すように、刈取部a、脱穀部b、収納部c、搬出部d等の作業機と、走行用の左右のクローラe、eと、作業機および機体の走行を操作するための操縦部f等を備える。その他、図示せぬ原動機とその動力を受けて動作する作業機を制御する制御装置とを備える。
【0003】
上記コンバインの刈取部aは、所定の刈高さ位置に調節した上で機体を前進させつつ穀稈の刈取作業を行う。刈取るべき穀稈が尽きて次の刈取条に移動する際等は、操縦部fに配置されたパワステレバーの後傾操作等により刈取部aを上昇させた上で機体を転向させた後に、刈取を再開するべく、再度、刈取部aを穀稈根元の刈り取り位置まで下降させる必要がある。刈取部aには上下限センサやポジションセンサにより上下限位置を設けることにより、刈取部aの可動上下限位置まで、安全、確実に昇降させることができる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−56079号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、刈取部aは機体の先端部に位置して大きな質量を有することから、上下限位置まで昇降して刈取部aが停止する瞬間は、上下方向の運動量の急変により機体に対して衝撃的なピッチングモーメントを及ぼすという問題があった。この問題は、特に刈取部aを急いで昇降させた場合に顕著であり、オペレータに不快感を与えるのみならず、機器の耐久性等、機体全体に影響が及ぶ点からもその改善が望まれるところである。
【0005】
その対策として、刈取部aが上下限位置に近づくにつれて速度を低減させるように昇降制御すると、その低速動作により限度位置に達するまで長い時間を要するのみならず、時に、低速において不安定なハンチング動作を起こしたり、また、途中で停止し、刈取部aの昇降操作性を阻害するという事態が懸念される。
【0006】
本発明の目的は、刈取部を昇降する際の上下の限度位置における衝撃を小さく抑えるとともに、その限度位置の近傍における操作性を確保することができるコンバイン刈取部の昇降制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、昇降入力具による昇降入力信号に応じて刈取部の昇降方向と昇降速度に係る昇降指令を上下の少なくとも一方の昇降限界点に至る範囲で出力することにより刈取部の昇降動作を制御するコンバイン刈取部の昇降制御装置において、上記刈取部の高さ位置が昇降限界点に及ぶ所定の昇降端部領域内であり、かつ、刈取部の昇降入力具による入力方向が該当の限界点の方向である場合に、同限界点までの距離に応じた所定の速度まで入力速度を低減して指令速度とする指令調節手段と、その昇降指令速度について所定の下限速度を維持するように速度比較により指令速度を補正する速度補正手段を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成の昇降制御装置は、昇降入力具による昇降入力信号に応じて刈取部の昇降方向と昇降速度に係る昇降指令を上下の少なくとも一方の昇降限界点に至る範囲で出力することにより刈取部を昇降制御し、この時、刈取部の高さ位置が昇降限界点に及ぶ所定の昇降端部領域内であり、かつ、刈取部の昇降入力具による入力方向が該当の限界点の方向である場合には、指令調節手段が限界点までの距離に応じた速度に入力速度を低減して指令速度とし、この時、速度補正手段が昇降指令速度について速度比較により所定の下限速度を維持するように指令速度が補正され、減速しつつ一定の下限速度で昇降限界点に近付く。
【0009】
請求項2に係る発明は、昇降入力具による昇降入力信号に応じて刈取部の昇降方向と昇降速度に係る昇降指令を上下又はそのいずれかの限界高さ位置として設定した昇降参照点に至る範囲で出力することにより刈取部を昇降制御するコンバイン刈取部の昇降制御装置において、上記刈取部の高さ位置が昇降参照点またはその外方の昇降超過領域であり、かつ、刈取部の昇降入力具による入力方向が外側方向である場合に、所定速度の指令速度とする延長指令手段を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成の昇降制御装置は、昇降入力具による昇降入力信号に応じて刈取部の昇降方向と昇降速度に係る昇降指令を上下の少なくとも一方の参照点に至る範囲で出力することにより刈取部を昇降制御し、また、刈取部の高さ位置が昇降超過領域にあり、かつ、刈取部の昇降入力具による入力方向が外側方向である場合には、延長指令手段が所定の指令速度に制御して刈取部が昇降動作する。
【0011】
【発明の効果】
本発明のコンバイン刈取部の昇降制御装置は以下の効果を奏する。
上記構成のコンバイン刈取部の昇降制御装置は、刈取部が昇降限度に近付いた場合に、次第に減速しながらも所定の下限速度を維持し、その近傍で下限速度の範囲で昇降限界点に近付くことにより、昇降限界点における急停止衝撃が緩和されて耐久性の向上と作業環境の改善を図ることができるとともに、刈取部のハンチングや途中停止等の不具合を招くことなく、安定動作による作業能率を確保することができる。
【0012】
上記構成の昇降制御装置は、刈取部が上下限界として設定した参照点を越えても入力操作を優先して所定速度の昇降動作を可能としたことにより、昇降動作の自由度を確保してオペレータの裁量範囲の拡大による作業性の向上を図るとともに、停止衝撃を一定範囲に抑えて機器の保護と作業環境の確保を図ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
上記技術思想に基づき具体的に構成された実施の形態につき、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0014】
本発明のコンバイン刈取部の昇降制御装置の制御処理入出力構成図を図1に示す。図1において、刈取部昇降制御装置の制御処理部1は、刈取昇降の手動操作用入力具であるパワステレバーのポジションセンサ3、刈取部の高さ位置に係る刈高ポジションセンサ5、主として下限高さ位置を設定する刈高設定ダイヤル7、エンジンの回転速度を検出するエンジン回転センサ9等からの信号を受け、これらの条件に応じて比例ソレノイドバルブを開度制御する刈取上昇出力11、刈取下降出力13を備える。比例ソレノイドバルブは動作電流に応じて開度制御動作することにより、刈取部昇降用の作動油流量を制御して電流に応じた速度で刈取部を昇降駆動する。
【0015】
つぎに、上記構成の刈取部昇降制御装置の処理手順について、図2のフローチャートにより説明する。
刈取部昇降制御装置は、ステップ1(「S1」と略記する。以下同様)でパワステポジションについてチェックを続け、その上昇操作を待って刈高ポジションをチェック(S2)する。上昇減速開始位置Qを越えるまでは昇降入力具の操作角度(パワステポジション)に応じた上昇電流値をセット(S3)する。刈高ポジションが上昇減速開始位置Qを越えた場合(昇降端部領域内)は、上限位置Pに近付くにつれて昇降操作角度による入力速度を低減した対応電流値をセット(S4〜S7)する。
【0016】
次いで、この電流値についてチェック(S8)し、所定の下限速度と対応する最低電流値に満たないときは最低電流値をセットした上で、出力要求(S10)することにより刈取上昇時の上限近傍において下限速度を確保しつつ速度低減が行われる。
【0017】
上記制御フローによる電流値の変化例を図3に示す。上昇側全倒の場合は、チャート(C1)のように、全倒と対応する電流値A1で上昇後、上限位置Pの近傍に設定した所定の減速開始位置Qを越えると上昇速度を規定する電流値が最低値A0の範囲で低減され、上限位置まで最低値(下限速度)A0で上昇する。半倒の場合もチャート(C2)のように、減速開始位置Qから上限位置Pの範囲で対応する電流値A2から最低値A0の範囲で低減される。
【0018】
また、上述の制御における別の構成例について、その処理手順図を図4に、その電流値の変化例を図5に示す。刈高ポジションのをチェック(S2)を繰り返し、刈高ポジションが上昇減速開始位置を越えた場合に、基準となる昇降操作角度による入力速度を係数βによって小さく評価(S4a)することにより、上昇速度に応じて大きく減速(Δ)する例である。この場合も、最低値A0が確保される。
【0019】
このように、昇降限界点の近傍(昇降端部領域内)で下限速度の範囲で速度を低減調節することにより、昇降限界点における停止衝撃が緩和されて機器の耐久性の向上と作業環境の改善を図ることができるとともに、刈取部のハンチングや途中停止等の不具合を招くことなく、安定動作による作業能率を確保することができる。
【0020】
下降操作の場合も上記同様にして、別途設定した下降限界点Pの近傍Qで下限速度A0の範囲で速度を低減調節することができる。その電流値の変化例は、図6および図7に示すとおりである。
【0021】
つぎに、刈取部の下降設定限度以下まで手動操作制御する例について説明する。その制御処理例の手順図を図8に示すように、刈取部が下降減速位置より上位であることを条件とする下降制御の際の一般処理(S1〜S4)に続き、最新のダイヤル設定を反映(S5)させ。下降設定限度に至る昇降許容範囲内で刈取部を下降駆動する場合は、下降減速開始位置までの下降処理(S6,S7)とダイヤル設定下限位置までの下降処理(S8,S9)により下降速度が規定される。
【0022】
ダイヤル設定下限位置を越えて刈取部を手動操作制御する場合は、ダイヤル設定下限位置と刈取部の間の高さの差およびレバー操作に応じた下降速度で停止しない範囲で低速度となるように係数処理した所定の計算式(S10〜S12)により、下降速度と対応する電流値を定める。この電流値により下降出力セット(S13)と下降出力要求セット(S14)とによって刈取部が下降駆動される。
【0023】
また、図9の別の刈取部下降制御例の電流値の変化例のように、刈取部が下降設定限度位置またはそれ以下の参照点Pを越えた超過範囲(昇降超過領域内)C3では、パワステレバーの操作により、その操作角度によることなく、所定の電流値A0と対応する所定の低速動作で刈取部が下降動作するように制御する。
【0024】
このように構成することにより、刈取部が上下限界として設定した参照点Pを越えた場合においても入力操作を優先して所定速度の昇降動作が可能となる。したがって、昇降動作の自由度を確保してオペレータの裁量範囲の拡大による作業性の向上を図るとともに、停止衝撃を一定範囲に抑えて機器の保護と作業環境の確保を図ることができる。
【0025】
つぎに、エンジン回転数を考慮して減速制御する例について説明する。エンジン回転数を考慮して減速制御する制御処理手順図を図10に、また、その電流値と速度の変化例を図11に示す。制御処理は、前述の図4における減速値の算出(S6)に代え、エンジン回転のチェック(S6a)により、所定回転数を超える高回転の場合(S6b)に対して低回転の場合(S6c)の電流値を小さくするように、係数α1、α2を切り替える。この係数の違いにより、図11の電流値チャートにおいて、エンジンが低回転の場合CA2は、高回転の場合CA1よりも急速に電流値が低減する。この時の上昇速度変化は、上昇速度チャートにおいて、エンジン回転に応じた速度(高速VHと低速VL)を呈し、減速開始後は、エンジンが低回転の場合CV2は、高回転の場合CV1よりも急減速となる。
【0026】
この急減速により、低速であっても、オペレータにとって減速を実感することができる。これを図12の従来の減速変化のチャートと比較すると、電流値のチャートCA3と対応する上昇速度変化は、エンジンが低回転の場合CV4の方が、高回転の場合CV3の高速VHからの減速よりも、低速VLから緩慢に減速する。従来は、この緩慢な減速を見て、オペレータが減速不十分と感じることがあったが、上記減速制御により、常に十分な減速を確保することができるので、オペレータの不安を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコンバイン刈取部の昇降制御装置の制御処理入出力構成図
【図2】刈取部昇降制御装置の処理手順図
【図3】図2の制御フローによる上昇速度電流値の変化例
【図4】別の構成例に係る処理手順図
【図5】図4の制御による電流値の変化例
【図6】下降操作の場合の図3と同様の電流値の変化例
【図7】下降操作の場合の図5と同様の電流値の変化例
【図8】手動操作を可能とする制御処理手順図
【図9】別の刈取部下降制御例の電流値の変化例
【図10】エンジン回転数を考慮した制御処理手順図
【図11】図10の制御処理による電流値と速度の変化例
【図12】エンジン回転数を考慮しない減速チャート
【図13】コンバインの全体構成例に係る側面図
【符号の説明】
1 制御処理部
3 パワステポジションセンサ
5 刈高ポジションセンサ
7 刈高設定ダイヤル
9 エンジン回転センサ
11 刈取上昇出力
13 刈取下降出力
a 刈取部
A0 最低値(下限速度)
C1,C2、C3 電流値チャート(速度チャート)
CA1、CA2、CA3 電流値チャート
CV1〜CV4 速度チャート
P 上下限位置(参照点、昇降超過領域開始位置)
Q 減速開始位置(昇降端部領域開始位置)
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成14年10月21日(2002.10.21)
【代理人】 【識別番号】100077779
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 哲郎

【識別番号】100078260
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 レイ子

【識別番号】100086450
【弁理士】
【氏名又は名称】菊谷 公男

【公開番号】 特開2004−135623(P2004−135623A)
【公開日】 平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願番号】 特願2002−305721(P2002−305721)