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【発明の名称】 水田作業機の変速操作構造
【発明者】 【氏名】藤井 健次
【住所又は居所】大阪府堺市石津北町64番地 株式会社クボタ堺製造所内

【氏名】中川 善清
【住所又は居所】大阪府堺市石津北町64番地 株式会社クボタ堺製造所内

【要約】 【課題】無段変速装置における変速操作具とエンジンの調速機構を連係し、変速操作具を中立位置から増速操作するに連れて調速機構の設定回転速度を高めるよう構成してある水田作業機の変速操作構造において、変速操作具の操作性を向上する。

【解決手段】変速操作具53の増速側への操作をアシストするトッグルバネ80を装備するとともに、このトッグルバネ80のデッドポイントDPを後進低速位置に設定してある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在に連結するとともに、走行速度を無段に変速する無段変速装置における変速操作具を、前進変速操作径路から後進変速操作径路に亘って中立位置を介して一連に移動操作可能に構成するとともに、前記変速操作具とエンジンの調速機構を連係し、変速操作具を中立から増速操作するに連れて前記調速機構の設定回転速度を高めるよう構成してある水田作業機の変速操作構造であって、
前記変速操作具の増速側への操作をアシストするトッグルバネを装備するとともに、このトッグルバネのデッドポイントを後進低速位置に設定してあることを特徴とする水田作業機の変速操作構造。
【請求項2】
走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在に連結するとともに、走行速度を無段に変速する無段変速装置における変速操作具を、前進変速操作径路から後進変速操作径路に亘って中立位置を介して一連に移動操作可能に構成するとともに、前記変速操作具とエンジンの調速機構を連係し、変速操作具を中立から増速操作するに連れて前記調速機構の設定回転速度を高めるよう構成してある水田作業機の変速操作構造であって、
肥料ホッパから繰出した粉粒状の肥料を前記水田作業装置に備えた作溝器に風力搬送する施肥装置を装備し、前記変速操作具が作業用速度範囲より低速の前進低速位置にある時に、風力搬送用に備えた電動ブロアによる電力消費とエンジン動力で駆動される発電機の発電電力とが略均衡するように変速操作具と調速機構とを連係設定してあることを特徴とする水田作業機の変速操作構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、田植機、水田直播機などの水田作業機の変速操作構造に係り、特には、走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在に連結するとともに、走行速度を無段に変速する無段変速装置における変速操作具を、前進変速操作径路から後進変速操作径路に亘って中立位置を介して一連に移動操作可能に構成するとともに、前記変速操作具とエンジンの調速機構を連係し、変速操作具を中立から増速操作するに連れて前記調速機構の設定回転速度を高めるよう構成してある水田作業機の変速操作構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記変速操作構造を備えた水田作業機としては、変速レバー(変速操作具)の増速側への操作をアシストするトッグルバネを装備するとともに、このトッグルバネのデッドポイントを変速レバーの中立位置と一致するように設定した田植機が提案がされている(特許文献1参照)。
【0003】
また、変速レバー(変速操作具)が中立から前進側へ少し操作されるとエンジン回転速度が一挙に高められる特性で変速レバーとエンジン調速機構とを連係するとともに、肥料ホッパから繰出した粉粒状の肥料を電動ブロアを用いて風力搬送して水田作業装置に備えた作溝器に送込む施肥装置を装備した田植機が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−56697号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、トッグルバネのデッドポイントが変速レバーの中立位置に一致一致していると、前進変速および後進変速のそれぞれに対して増速方向へのアシストを行うことができ、増速操作を軽快に行うことができるものであるが、後進低速を行いたい場合に不用意に高速位置まで操作してしまうおそれがある。
【0006】
電動ブロアを用いて肥料を風力搬送する施肥装置を装備した田植機では、電動ブロアを通電作動させることを忘れると施肥が行われないまま植付け作業を行ってしまうことになるので、圃場内においてはエンジンを作動させている間は常に電動ブロアを通電作動させておくことが推奨されている。従って、畦際での機体方向転換のように作業を行っていない低速走行時にも電動ブロアが通電作動されており、この間、電動ブロアは大きい電力を消費する。
【0007】
ここで、従来では、上記低速走行時(例えば前進1速)にもエンジン回転速度を相当高く設定してあるので、エンジン動力で駆動される発電機の出力は高く、電動ブロアで消費される電力が十分補われる状態にある。しかし、その反面、上記低速走行時における燃料消費が大きくなるのみならずエンジン騒音も大きいものにならざるをえないものとなっていた。
【0008】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、その主たる目的は、
油圧式無段変速装置を操作する変速操作具の操作性を向上することにあり、また、他の目的は、電力バランスを好適に設定することで、出力の小さいエンジンを搭載した小型の水田作業機においても、電動ブロアを用いて肥料を風力搬送する施肥装置を装備して良好な作業を行うことができるようにすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在に連結するとともに、走行速度を無段に変速する無段変速装置における変速操作具を、前進変速操作径路から後進変速操作径路に亘って中立位置を介して一連に移動操作可能に構成するとともに、前記変速操作具とエンジンの調速機構を連係し、変速操作具を中立から増速操作するに連れて前記調速機構の設定回転速度を高めるよう構成してある水田作業機の変速操作構造であって、
前記変速操作具の増速側への操作をアシストするトッグルバネを装備するとともに、このトッグルバネのデッドポイントを後進低速位置に設定してあることを特徴とする。
【0011】
上記構成によると、トッグルバネの付勢力は、変速操作具を増速操作する際にはアシスト力として作用し、逆に、無段変速装置の反力によって変速操作具が減速方向に戻されることに対しては抵抗となる。
この場合、トッグルバネの付勢力が反転するデッドポイントが、後進低速位置にあるので、変速速操作具が中立位置にある時も、トッグルバネの付勢力は前進増速側へのアシスト力とし作用しており、微速前進を開始する場合の操作が軽くなる。
また、変速操作具を後進高速位置へ操作する際には、後進低速位置のデッドポイントを意識的に乗り越える必要がある。
【0012】
従って、請求項1の発明によると、変速操作具が中立位置においても前進増速側にアシストされているので、中立位置から前進側への操作開始を軽快に行うことができ、前進走行の開始を円滑に行うことができる。また、後進低速位置にトッグルバネのデッドポイントがあることで、後進高速位置への不用意な操作を抑制することができ、変速操作具の取扱い性を向上することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在に連結するとともに、走行速度を無段に変速する無段変速装置における変速操作具を、前進変速操作径路から後進変速操作径路に亘って中立位置を介して一連に移動操作可能に構成するとともに、前記変速操作具とエンジンの調速機構を連係し、変速操作具を中立から増速操作するに連れて前記調速機構の設定回転速度を高めるよう構成してある水田作業機の変速操作構造であって、
肥料ホッパから繰出した粉粒状の肥料を前記水田作業装置に備えた作溝器に風力搬送する施肥装置を装備し、前記変速操作具が作業用速度範囲より低速の前進低速位置にある時に、風力搬送用に備えた電動ブロアによる電力消費とエンジン動力で駆動される発電機の発電電力とが略均衡するように変速操作具と調速機構とを連係設定してあることを特徴とする。
【0014】
上記構成によると、変速操作具を中立にして走行を停止するとエンジン回転速度は自動的にアイドリング回転速度に落とされ、燃料の節減とエンジン騒音の低減が図られる。そして、変速操作具を増速操作して前進走行あるいは後進走行すると、エンジン回転速度は自動的に上げられてエンジンの出力アップが図られる。
この場合、エンジン回転速度の増大に応じて発電機の発電電力も高められ、作業走行中は発電電力は電動ブロアの消費電力よりも大きくなって、搭載したバッテリの充電が可能な状態がもたらされる。
【0015】
また、畦際での機体旋回などにおいて変速操作具を作業用速度範囲より低速の前進低速位置に操作すると、エンジン回転速度が落とされて発電機の発電電力も低下するが、この時の発電電力はの消費電力と略均衡しているので、低速での非作業走行中に電動ブロアを作動し続けても、バッテリの蓄電力が大きく消費されてしまうことはない。
【0016】
従って、請求項2の発明によると、大きい電力を消費する電動ブロ付きの施肥装置を装備するにあたり、バランスのとれた電力供給を行うことができ、出力が比較的小さい小型の水田作業機においても好適に同時施肥を行って能率の良い作業を行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1、図2に、水田作業機の一例として乗用型田植機が示されている。この乗用型田植機は、操向自在な左右一対の前輪1と操向不能な左右一対の後輪2とを備えた乗用型の走行機体3の後部に、6条植え仕様に構成された苗植付け装置4(水田作業装置)が油圧シリンダ 5によって駆動される平行四連式のリンク機構6を介して昇降自在に連結されるとともに、機体後部に施肥装置7が装備された構造となっている。
【0018】
前記走行機体3の機体フレーム8の前部には、前輪1を軸支したミッションケース9が連結固定されるとともに、機体フレーム8の後部には、後輪2を軸支した後部伝動ケース10がローリング自在に支持されている。また、ミッションケース9から前方に延出された前フレーム11にエンジン12が横向きに搭載されてボンネット13で覆われているとともに、エンジン12の後方に位置する搭乗運転部には、前輪1を操向操作するためのステアリングハンドル14、運転座席15、ステップ16などが備えられ、また、機体前部の左右には、予備の苗を複数段に載置収容する予備苗のせ台17が備えられている。
【0019】
水田作業装置の一例である前記苗植付け装置4は、6条分の苗を載置して左右方向に設定ストロークで往復移動される苗のせ台21、苗のせ台21下端から1株分づつ苗を切り出して圃場に植付けてゆく6組の回転式の植付け機構22、植付け箇所を整地する3個の整地フロート23、等を備えて構成されている。また、前記施肥装置7は、運転座席15と苗植付け装置4との間において走行機体3上に搭載されており、粉粒状の肥料を貯留する肥料ホッパー24、この肥料ホッパー24内の肥料を設定量づつ繰り出す繰出し機構25、繰り出された肥料を供給ホース26を介して各整地フロート23に備えた作溝器27に風力搬送する電動ブロア28、などを備えており、作溝器27によって田面Tに形成した溝に肥料を送り込んで埋設してゆくよう構成されている。
【0020】
苗植付け装置4は、田面Tに対する高さを安定維持するように自動昇降制御されるようになっており、この制御手段の概略構成が図20のブロック図に示されている。つまり、苗植付け装置4を昇降する前記油圧シリンダ5は、制御装置31によって作動制御される電磁制御弁32に接続されるとともに、中央の整地フロート23を利用したセンサフロートSFの上下変位を検出する回転ポテンショメータ利用の変位センサ33が制御装置31に接続されており、この変位センサ33の検出情報に基づいて苗植付け装置4が自動的に昇降制御されるようになっている。
【0021】
つまり、前記変位センサ33からの検出値が設定範囲にあることが判別されると電磁制御弁32は中立に維持され、この時、苗植付け装置4は田面Tに対して標準高さ範囲にある。そして、苗植付け装置4が標準高さ範囲から外れて沈下しかかると、相対的にセンサフロートSFが後部支点xを中心に上方に揺動変位し、これが変位センサ33で検出されて上昇制御が実行され、苗植付け装置4が標準高さ範囲に戻ると上昇制御が停止される。逆に、苗植付け装置4が田面Tに対して浮上しかかると、相対的にセンサフロートSFが後部支点xを中心に下方に揺動変位し、これが変位センサ33で検出されて下降制御が実行され、苗植付け装置4が標準高さ範囲に戻ると下降制御が停止される。このように、変位センサ33からの検出値を設定範囲内に維持するように苗植付け装置4を昇降させることで、苗植付け装置4が田面Tに対して標準高さ範囲に維持されるのである。
【0022】
なお、図20に示すように、前記制御装置31には、運転座席15の右側に配備された植付けレバー34の操作位置を検出するポテンショメータ35、ステアリングハンドル14の右脇に配備された優先昇降レバー36の操作状態を検出する上げスイッチ37と下げスイッチ38が接続されるとともに、苗植付け装置4への動力伝達を断続する後述の植付けクラッチ40を入り切り操作する電動モータ39が接続されている。前記植付けレバー34は前後揺動操作によって、「植付け」,「下げ」,「中立」,「上げ」,および「自動」の各操作位置に切換え可能であり、「植付け」位置に操作することでセンサフロートSFの変位検出に基づく上記自動昇降制御が実行されるとともに植付けクラッチ40が入れられ、「下げ」位置に操作することで自動昇降制御が実行されるとともに植付けクラッチ40が切られ、「中立」位置に操作することで植付けクラッチ40が切られた状態で自動昇降制御が停止され、「上げ」位置に操作することで植付けクラッチ40が切られた状態で強制上昇が行われる。また、植付けレバー34を「自動」位置に操作すると、自動昇降制御が実行されるとともに優先昇降レバー36による昇降および後述するバックアップ制御が可能となる。
【0023】
通常の植付け作業においては、植付けレバー34を「自動」位置に操作しておくことで、優先昇降レバー36の操作だけで苗植付け装置4を田面Tに接する作業高さと上限高さとの範囲で昇降させることができるとともに植付けクラッチ40の入り切りを行うことができる。つまり、優先昇降レバー36は上下に揺動操作可能かつ中立復帰可能に構成されており、苗植付け装置4が作業高さにある状態で優先昇降レバー36を上方にワンショット操作して上げスイッチ37を1回オン操作すると、苗植付け装置4が上限高さまで上昇されるとともに、植付けクラッチ40が切り操作されることになる。従って、一行程の植付け走行を終えて畦際で機体方向転換を行う際に優先昇降レバー36を上方にワンショット操作するだけで、植付け作動を停止した苗植付け装置4を大きく上昇させることができ、ステアリングハンドル14による機体操縦操作に専念することができる。
【0024】
そして、機体方向転換が終りかかると、優先昇降レバー36を下方にワンショット操作して下げスイッチ38を1回オン操作することで自動昇降制御状態となり、苗植付け装置4は作業高さに向けて下降されてゆく。この場合、植付けクラッチ40は未だ入れられることはなく、空中で植付け作動が開始されて苗がばら撒かれることはない。そして、機体方向転換を終えて先の植付け条に対する位置合わせ(条合わせ)を済ませたら、再び優先昇降レバー36を下方にワンショット操作して下げスイッチ38を2回目にオン操作するすることで、はじめて植付けクラッチ40が入り操作されて次行程の植付け作業が開始されるのである。
【0025】
図17,図18に、この田植機の伝動構造の概略が示されている。前記ミッションケース9の側面には、エンジン12にベルト連動された主変速用の無段変速装置として静油圧式無段変速装置(HST)41が連結され、その出力がミッションケース9に入力されて走行系と作業系に分岐される。
【0026】
分岐された作業系の動力は、ワンウエイクラッチ42によってその正転動力のみが取出されれ、6段のギヤ変速が可能な株間変速機構43および上記した植付けクラッチ40を経て作業用動力取出し軸(PTO軸)45から取出され、伝動軸46を介して苗植付け装置4に伝動されるようになっている。
【0027】
分岐された走行系動力は、ギヤ式の副変速機構47によって高低2段に変速された後、前輪系と後輪系に再度分岐され、前輪系の動力はデフロック可能なデフ装置48を介して左右の前輪1に伝達されるとともに、後輪系の動力は伝動軸49を介して後部伝動ケース10に伝達され、多板式のサイドクラッチ50を介して左右の後輪2に伝達される。後部伝動ケース10には機体停止用の多板式のブレーキ51が装備されており、このブレーキ51は、ステップ16の右側足元に配備された走行停止用の単一のペダル52に機械的に連動連結されている。
【0028】
ここで、前記無段変速装置41は、ステアリングハンドル15の左脇に配備された主変速レバー(変速操作具)53で変速操作されるとともに、副変速機構47は、運転座席15の左横側に配備された副変速レバー54によって切換え操作されるようになっている。また、前輪1のデフ装置48は、足元のデフロックペダル55の踏み込みによってデフロックされて、左右の前輪1が等速で駆動されるようになっている。なお、図14,15に示すように、前記主変速レバー53の上端に取付けられた樹脂製のグリップ58は、暗色のグリップ本体58aの表面に目立つ色の化粧板58bを嵌め込み装着して構成されており、化粧板58bの色を適宜選択することで、外観上のアクセントにして商品価値を高める効果が期待できる。
【0029】
図19に示すように、左右のサイドクラッチ50はステアリング機構56にリンク機構57を介して機械的に連係されており、ステアリングハンドル14によって前輪1を左または右に設定角度(例えば30°)以上に操向すると、旋回内側となる後輪2のサイドクラッチ50が自動的に切り操作されて、円滑で小回りの利いた旋回が行われるようになっている。
【0030】
次に、前記無段変速装置41の変速操作構造について説明する。
【0031】
図7〜図9に示すように、ステアリングハンドル14を支持するハンドルポスト61には支持ブラケット62が固着され、この支持ブラケット62の左側端部には、支軸63を介してデテント板64が横向き支点a周りに前後揺動可能に支持され、このデテント板64に前記主変速レバー53が前後向き支点b周りに左右揺動可能に支持されている。ハンドルポスト61を支持する支持枠65に、横向き支点c周りに回動可能に中継回動部材66が支持されており、この中継回動部材66とデテント板64とが連係ロッド67を介して連係され、さらに、この中継回動部材66と、無段変速装置41の変速操作軸68に連結された変速アーム69とが連係ロッド70を介して連係されている。
【0032】
前記支持ブラケット62にはガイド板71が固着されるとともに、このガイド板71に形成された段違い状の案内溝72に、主変速レバー53に基部から下向きに延出された案内ロッド53aが貫通されており、案内溝に72と案内ロッド53aとの係合案内作用によって主変速レバー53を所定の段違い操作径路に沿って前後に揺動操作することで、デテント板64を正逆に回動させて無段変速装置41を前進域から後進域までの範囲で変速操作することが可能となっている。
【0033】
そして図10,図12に示すように、段違い操作径路の段違い部位が無段変速装置41の中立位置Nに相当し、その前方に前進変速操作径路Fが、また、後方に後進変操作径路Rがそれぞれ形成されるとともに、デテント板64の外周に形成した9つの凹部64aに、片持ちバネレバー73の遊端に支持したデテントロラーラ74を弾性係入させることで、主変速レバー53を前進5段(F1 〜F5 )、後進3段(R1 〜R3 )の各変速位置、および、中立位置Nに保持することができるようになっている。
【0034】
図8に示すように、無段変速装置41の前記変速操作軸68は、変速アーム69に連設したV形カム69aと、このV形カム69aにバネ75で押圧される位置決めローラ76とからなる中立位置決め機構77によって中立Nに機械的に安定保持されるようになっている。
【0035】
また、図9,図12,図13に示すように、一端にデテント板64が固着された前記支軸63の他端には下方に延出された付勢アーム78が固着されるとともに、この付勢アーム78の遊端とハンドルポスト61に固着しバネ受けピン79とに亘ってトッグルバネ80が張設されており、主変速レバー53の前後揺動によって付勢アーム78が一体回動することで、アーム遊端のバネ受け点dがデッドポイントDPを越えて前後に移動し、トッグルバネ80の張力によって付勢アーム78に与えられる回動付勢力が正逆に切換わるよう構成されている。
【0036】
ここで、支軸63とバネ受けピン79とを結ぶ前記デッドポイントDPが、中立位置Nよりも後進側に偏った位置(この例では、後進1速R1と後進2速R2の中間あたり)にあるよう設定されており、主変速レバー53が中立位置Nにある時、アーム遊端のバネ受け点dはデッドポイントDPより後方にあり、主変速レバー53前方(前進側)に向かう付勢力が作用する。そして、主変速レバー53を後進2速R2あるいは後進3速R3に操作すると、アーム遊端のバネ受け点dがデッドポイントDPを前方に越え、付勢アーム78に与えられる回動付勢力が反転して、主変速レバー53には後方(後進側)に向かう付勢力が作用するようになる。
【0037】
静油圧式の無段変速装置41における変速操作軸68には、中立位置N側に向けて復帰させようとする油圧反力が作用するとともに、前記中立位置決め機構77による中立復帰力が作用して、主変速レバー53を高速側に操作する場合の操作抵抗となっているが、上記のように変速操作に連動して反転作用するトッグルバネ80を装備することで、主変速レバー53を高速側に操作する場合にはバネ付勢力がアシスト力となって操作力が軽減され、逆に、主変速レバー53を中立側に戻す場合には、トッグルバネ80を変形させる荷重がレバー操作抵抗となるので、走行負荷の増大に伴って油圧反力が高まって主変速レバー53が中立側に戻される力が大きくなっても、変速操作軸68が勝手に減速側に作動してしまうことが抑制されることになる。
【0038】
また、トッグルバネ80の付勢力が反転するデッドポイントDPが、後進低速位置にあるので、主変速レバー53が中立位置Nにある時も、トッグルバネ80の付勢力は前進増速側へのアシスト力とし作用しており、微速前進を開始する場合の操作が軽くなる。また、主変速レバー53を後進高速位置へ操作する際には、後進低速位置のデッドポイントDPを意識的に乗り越える必要がある。
【0039】
従って、主変速レバー53が中立位置Nにおいても前進増速側にアシストされているので、中立位置Nから前進側への操作開始を軽快に行うことができる。また、後進低速位置にトッグルバネ80のデッドポイントDPがあることで、後進高速位置への不用意な操作を抑制することがでる。
【0040】
主変速レバー53が前進変速操作径路Fに操作されている前進走行状態、あるいは、後進変速操作径路Rに操作されている後進走行状態で機体停止用の前記ペダル52を踏み込み操作すると、主変速レバー53を中立位置Nにまで強制的に復帰作動させるようになっており、その構造が3〜図6に示されている。
【0041】
つまり、上記変速装置操作部の後方には、支点e周りに前後揺動可能に牽制作動部材81が配備されている。この牽制作動部材81にはアジャストボルト81bによって支点f周りに位置微調節可能な牽制金具81aが備えられており、牽制作動部材81の前縁部が、前記中継回動部材66の支点cより上方箇所に設けた第1接当ピン82に後方から対向するよう構成されるとともに、牽制金具81aの前縁部が、中継回動部材66の支点cより下方箇所に設けた第2接当ピン83に後方から対向するよう配備されている。
【0042】
他方、前記ペダル52を連結したペダル支軸84の他端部には牽制操作アーム85が固着され、この牽制操作アーム85のに遊端に回動自在に枢支したボス部材86に、前記牽制作動部材81の下端から後方に向けて延出された押し引きロッド87の後端部が挿通連結されている。ここで、押し引きロッド87は、ボス部材86に対して一定範囲でのみ前後にスライド自在に挿通支持されるとともに、予め初期圧縮変形して押し引きロッド87に外嵌装着した圧縮コイルバネ88によって押し引きロッド87はボス部材86に対して前方スライド限界にスライド付勢されている。
【0043】
図3は、ペダル52が踏み込み操作されないで主変速レバー53が中立位置Nにある状態を示し、図4は、ペダル52が踏み込み操作されないで主変速レバー53が前進の最高速である前進5速F5 にある状態を示し、また、図5は、ペダル52が踏み込み操作されないで主変速レバー53が後進の最高速である後進3速R3 にある状態を示している。
【0044】
これによると、主変速レバー53が前進変速操作径路Fにある状態(例えば図4の状態)でペダル52を踏み込み操作すると、牽制操作アーム85が図中反時計方向に回動されることで押し引きロッド787が前方(図では左方)に突き出され、牽制作動部材81は支点e周りに時計方向に揺動操作される。これによって、牽制作動部材81は第1接当ピン82を前方に接当押圧し、中継回動部材66は支点c周り反時計方向に強制回動され、主変速レバー53が中立位置N側に向けて戻されてゆく。
【0045】
そして、主変速レバー53が中立位置Nに到ると、図6に示すように、第2接当ピン83も牽制金具81aに接当することになり、支点cの上下両側に位置する第1接当ピン82および第2接当ピン83が共に牽制作動部材81に接当することで、中継回動部材66は、主変速レバー53が中立位置Nとなる一定姿勢に保持される。また、第1接当ピン82および第2接当ピン83に接当した牽制作動部材81自体も、それ以上時計周りに回動することが不能となる。なお、牽制作動部材81の牽制金具81aを位置調節することで、第1接当ピン82および第2接当ピン83を共に牽制作動部材81に接当させて中継回動部材66を正確に中立復帰させることができる。
【0046】
ここで、圧縮コイルバネ88によって与えられた初期圧縮力は、主変速レバー53を強制移動させるのに必要な操作力より大きく設定されており、主変速レバー53が中立位置Nに到るまでは、圧縮コイルバネ88は操作反力で圧縮変形されることはない。そして、主変速レバー53が中立位置Nに到った後、更にペダル52が踏み込み操作されると、前方に移動不能となった押し引きロッド87に対して牽制操作アーム85が圧縮コイルバネ88を更に圧縮変形させながら図中反時計方向に回動されることで十分なブレーキ操作ストロ−クが確保される。
【0047】
また、主変速レバー53が後進変速操作径路Rにある状態(例えば図5の状態)でペダル52を踏み込み操作すると、牽制操作アーム85が図中反時計方向に回動されることで押し引きロッド87が前方(図では左方)に突き出され、牽制作動部材81が支点e周りに時計方向に揺動操作される。これによって、牽制作動部材81の牽制金具81aは第2接当ピン83を前方に接当押圧し、中継回動部66は支点c周り時計方向に強制回動され、主変速レバー53が中立位置N側に向けて戻されてゆく。そして、主変速レバー53中立位置Nに到ると、図6に示すように、第1接当ピン82も牽制動部材81の牽制金具81aに接当することになり、支点cの上下両側に位置する第1接当ピン81および第2接当ピン83が、牽制作動部材81に共に接当することで、中継回動部材66は主変速レバー53が中立位置Nとなる一定姿勢に保持される。
【0048】
この場合も、主変速レバー53が中立位置Nに到るまでは、圧縮コイルバネ88は操作反力で圧縮変形されることはなく、主変速レバー53が中立位置Nに到った後、更にペダル52が踏み込み操作されることで、前方に移動不能となった押し引きロッド87に対して牽制操作アーム85が圧縮コイルバネ88を更に圧縮変形させながら図中反時計方向に回動される。
【0049】
なお、ペダル52を踏み込み操作して主変速レバー53を中立位置N側に向けて強制的に戻す際に、中立位置Nに到達するまでに踏み込みを止めれば、主変速レバー53はペダル52の踏み込み位置に応じた変速位置にまで減速移動してその位置に保持されることになり、従って、両手をハンドル操作や他の操作に使いながら、足操作だけで走行速度の減速を行うことができ、操作性を向上するのに有効となっている。
【0050】
また、前記主変速レバー53によって無段変速装置41を操作すると、これに連動してエンジン12の回転速度が変更されるように構成されており、以下、その構造を図7,図10,図11,図16に基づいて説明する。
【0051】
図7,図10に示すように、主変速レバー53を案内する案内溝72を備えたガイド板71の上面には、前進変速操作径路Fに重複するように第1カム部材91が支点g周りに揺動可能に枢支連結されるとともに、後進変操作径路Rに重複するように第2カム部材92が支点h周りに揺動可能に枢支連結されている。そして、各カム部材91,92の後端部にはワイヤ93,94がそれぞれ連結され、このワイヤ93,94が、前記エンジン12に装備された機械式の調速機構(メカニカルガバナ)95の調速レバー96にそれぞれ連結されている。また、各カム部材91,92の後端部にはワイヤ93,94を弛める方向に各カム部材91,92を揺動付勢するバネ97,98が連結されており、各カム部材の付勢揺動限界がガイド板71上のストッパ99,100によって接当規制されている。
【0052】
前記調速機構95は、両ワイヤ93,94が弛むと「低速」側に揺動し、いずれかのワイヤ93,94が引かれると「高速」側に揺動するようになっており、図16に示すように、主変速レバー53が中立位置Nにある時には、両ワイヤ93,94が共に弛められて調速機構95はアイドリング回転速度(例えば1700rpm)に維持されている。
【0053】
そして、図11(イ)に示すように、主変速レバー53が前進変速操作径路Fに操作されると、第1カム部材91がバネ97に抗して図中時計方向に揺動されてワイヤ93が引張され、調速機構95は「高速」側に作動し、エンジン回転速度が高められる。また、図11(ロ)に示すように、主変速レバー53が後進変速操作径路Rに操作されると、第2カム部材92がバネ98に抗して図中時計方向に揺動されて他方のワイヤ94が引張され、調速機構95は「高速」側に作動してエンジン回転速度が高められる。
【0054】
この場合、主変速レバー53はねじりバネ90によって支点b周りに横方向に回動付勢されているので、中立Nに放置された自由状態では、図10中に示すように、前進変速操作径路Fに臨む前進側中立Nfに安定しており、この状態では両ワイヤ93,94が共に弛められて調速機構95はアイドリング回転速度に維持されている。ここで、主変速レバー53をねじりバネ90に抗して前進側中立Nfから後進変速操作径路Rに臨む後進側中立Nrに移動させると、無段変速装置41は走行速度が零となる変速中立状態に維持されなが第2カム部材91だけが接当揺動操作され、調速機構95が「高速」側に作動してエンジン回転速度が高められる。
【0055】
つまり、主変速レバー53を前進側中立Nfから後進側中立Nrに移動させて保持することでアクセルアップ状態を得ることができ、寒冷時や寒冷地などでエンジン始動が困難な場合には、主変速レバー53を後進側中立Nrに移動させてアクセルアップ状態をもたらしてエンジン始動を確実に行うことができるのである。そして、主変速レバー53の変速状態とエンジン回転速度との関係は、各カム部材91,92における接当カム面の形状によって決まるものであり、その一例が図16に示されている。
【0056】
この例の特性では、通常の植付け作業速度範囲(F2〜F5)より低速である前進1速F1において、エンジン12に備えられた発電機Gの発電電力と前記施肥装置7に利用されている電動ブロア28の消費電力が略均衡するよう設定されている。従って、畦際での機体旋回などにおいて電動ブロア28を作動させたまま前進1速Fで走行しても、エンジン回転速度が落とされて発電機Gの発電電力も低下するが、この時の発電電力はの電動ブロア28の消費電力と略均衡しているので、バッテリの蓄電力が大きく消費されてしまうことはない
【0057】
また、主変速レバー53が後進側中立Nrを含む後進変操作径路Rに操作されて第2カム部材92が接当操作されると、ガイド板71に取付けられたスイッチ101が押圧操作されて後進操作状態になったことが検知されるようになっている。この後進検出スイッチ101は前記制御装置31に接続されており、上記のように植付けレバー34が「自動」に操作されている状態で、後進検出スイッチ101が検知作動すると、苗植付け装置4を自動的に上限まで上昇させる制御(バックアップ制御と呼称している)が実行されるようになっている。
【0058】
このバックアップ制御は、圃場内で機体を後進移動させると自動的に機体後部の作業装置を強制上昇させて、苗植付け装置4が畦などに衝突するのを回避するためのに開発されたものであり、速やかな上昇制御が望まれる。ここで、上記したように、主変速レバー53が後進側中立Nrおよび後進変速域Rに操作されるとエンジン回転速度が高められるので、エンジン12の出力で駆動される油圧ポンプP(図17参照)の吐出量は多くなり、速やかな上昇制御を実行することができる。
【0059】
〔別実施形態〕
本発明に係る変速操作構造は、以下に示すような形態にして実施することもできる。
【0060】
(1)走行用の無段変速装置41としては、静油圧式無段変速装置(HST)を利用する他に、ベルト式無段変速装置と正逆転切換え機構を組合わせたもの、遊星ギヤを利用した無段変速装置、などを単独あるいは、組合わせて利用することができる。
【0061】
(2)エンジン12の調速機構95としては、機械式のものの他に、電子ガバナを利用することもでき、この場合には、変速操作具の操作位置をポテンショメータなどで電気的に検出し、操作位置に対して予め設定した特性で電子ガバナを制御するようにすればよい。
【0062】
無段変速装置41を操作する変速操作具としては、レバーのほかペダルを利用するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】乗用田植機の全体平面図
【図3】中立状態の変速操作部を示す側面図
【図4】前進変速状態の変速操作部を示す側面図
【図5】後進変速状態の変速操作部を示す側面図
【図6】強制中立復帰作動した状態の変速操作部を示す側面図
【図7】変速操作部の側面図
【図8】変速操作部における中立位置決め機構を示す平面図
【図9】変速操作部の一部を示す正面図
【図10】変速操作具が中立にある時のエンジン調速機構との連係構造を示す平面図
【図11】変速操作具が変速操作された時のエンジン調速機構との連係構造を示す平面図
【図12】変速操作具のデテント構造を示す側面図
【図13】変速操作具を切換え揺動付勢する構造のデッドポイント状態を示す側面図
【図14】変速操作具のグリップ部を示す縦断側面図
【図15】変速操作具のグリップ部を示す斜視図
【図16】変速操作位置とエンジン回転速度との関係を示す特性線図
【図17】走行系の伝動系統図
【図18】作業系の伝動系統図
【図19】自動操向構造の平面図
【図20】制御ブロック図
【符号の説明】
3 走行機体
4 水田作業装置
7 施肥装置
12 エンジン
24 肥料ホッパ
27 作溝器
28 電動ブロア
53 変速操作具(主変速レバー)
80 トッグルバネ
95 調速機構
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【住所又は居所】大阪府大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号
【出願日】 平成15年3月28日(2003.3.28)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎

【公開番号】 特開2004−298021(P2004−298021A)
【公開日】 平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願番号】 特願2003−92472(P2003−92472)