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【発明の名称】 苗植付装置
【発明者】 【氏名】塩崎 孝秀
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】従来の苗植付装置は、各植付条毎に回転体が設けられているので、複数条植えの苗移植機において、回転体の個数が多くなり、また回転体の個数に付随して伝達軸への伝達機構等を含む部品点数が多くなり、重量が大きくなり、コストアップの要因となる。

【解決手段】左右方向の軸心回りに回転する回転体31の左右に苗植付具32を取り付けた苗植付装置とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向の軸心回りに回転する回転体31の左右に苗植付具32を取り付けたことを特徴とする苗植付装置。
【請求項2】
回転体31の回転中心から偏位した位置で該回転体31から左右にそれぞれ伝達軸36を設け、該伝達軸36の駆動が苗植付具32に伝達される構成としたことを特徴とする請求項1に記載の苗植付装置。
【請求項3】
回転体31の外周を受けて該回転体31を支持する支持部63を設け、該支持部63に対して回転体31を回転可能に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の苗植付装置。
【請求項4】
左右方向の軸心回りに回転する回転体31に苗植付具32を取り付けた苗植付装置において、回転体31の少なくとも下側にガ−ド体63を設けたことを特徴とする苗植付装置。
【請求項5】
回転体31と支持部63とを一体で機体に対して着脱可能に設けたことを特徴とする請求項3に記載の苗植付装置。
【請求項6】
側面視で回転体31を支持部63と重複しない位置に設けたことを特徴とする請求項3又は5に記載の苗植付装置。
【請求項7】
回転体31と支持部63との間に介在する介在部材85を他の構成部材より強度のある素材で構成したことを特徴とする請求項3、5又は6に記載の苗植付装置。
【請求項8】
回転体31と支持部63との間に介在する介在部材85を回転体31に接触させて設け、回転体31に対して前記介在部材85が移動しないように回転体31と介在部材85とを係合する係合部85a,31gを設けたことを特徴とする請求項3、5、6又は7に記載の苗植付装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、苗植付具により苗を保持した状態で圃場面に移送して植え付ける苗植付装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、田植機等の苗移植機において、伝動ケースから突出する左右方向の駆動軸の駆動回転により、該駆動軸と一体回転する回転体の回転中心から偏位した位置に伝達軸を設け、該伝達軸の駆動が伝達されるように苗植付具を回転体に取り付けた構成の苗植付装置が設けられている。この苗植付装置は、回転体の回転により苗植付具を上下往復移動させ、苗植付具により、苗載置台上の例えばマット状の苗から一株分の苗を掻き取って保持して圃場面まで移送し、苗を圃場に植え付ける構成となっている。前記伝達軸は、回転体を構成する回転ケース内の複数のギヤからなる伝達機構により、回転体の回転に連動して回転体に対して該回転体の回転方向と逆方向に回転する構成となっている。この伝達軸に苗植付具を取り付けて、伝達軸により苗植付具の姿勢が制御されるようになっている。
【0003】
そして、苗植付装置は、各植付条毎に回転体が設けられ、この回転体の左右一側にのみ苗植付具を取り付けた構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−269023号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の苗植付装置は、各植付条毎に回転体が設けられているので、複数条植えの苗移植機において、回転体の個数が多くなり、また回転体の個数に付随して伝達軸への伝達機構等を含む部品点数が多くなり、重量が大きくなり、コストアップの要因となる。
【0006】
また、回転体の左右一側に伝達軸を延ばして、この伝達軸に複数の苗植付具を取り付けて左右に並べ、単一の回転体により複数条分の苗植付具を作動させることが考えられるが、植付条間にわたるべく伝達軸が左右に長くなる分、苗植付具の作動が不安定になったり、伝達軸が周囲の構造物と干渉しないようにするために他の構造物の配置等の設計の自由度が低下したり、コストアップを招くおそれがある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するために、次の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、左右方向の軸心回りに回転する回転体31の左右に苗植付具32を取り付けたことを特徴とする苗植付装置とした。
【0008】
従って、請求項1に記載の苗植付装置は、回転体31の左右方向の軸心回りの回転により、回転体31の左右に取り付けた苗植付具32により圃場に複数条に苗を植え付けていく。
また、請求項2に係る発明は、回転体31の回転中心から偏位した位置で該回転体31から左右にそれぞれ伝達軸36を設け、該伝達軸36の駆動が苗植付具32に伝達される構成としたことを特徴とする請求項1に記載の苗植付装置とした。
【0009】
従って、請求項2に記載の苗植付装置は、請求項1に記載の苗植付装置の作用に加えて、伝達軸36により左右の苗植付具32の姿勢が制御されながら、回転体31の回転に伴って左右の苗植付具32が上下往復移動し、圃場に複数条に苗を植え付けていく。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、回転体31の外周を受けて該回転体31を支持する支持部63を設け、該支持部63に対して回転体31を回転可能に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の苗植付装置とした。
従って、請求項3に記載の苗植付装置は、請求項1又は2に記載の苗植付装置の作用に加えて、支持部63により回転体31の外周を受ける構成としたので、左右の苗植付具32が回転体の駆動軸や該駆動軸への伝動部等に干渉しないように構成でき、ひいては回転体31の小型化が図れる。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、左右方向の軸心回りに回転する回転体31に苗植付具32を取り付けた苗植付装置において、回転体31の少なくとも下側にガ−ド体63を設けたことを特徴とする苗植付装置とした。
従って、請求項4に記載の苗植付装置は、回転体31の左右方向の軸心回りの回転により、回転体31に取り付けた苗植付具32により圃場に複数条に苗を植え付けていく。そして、ガ−ド体63により回転体に泥や水等がかかるのを防止でき、回転体31の作動を良好に維持できると共に、回転体31の摩耗を防止して耐久性の向上を図ることができる。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、回転体31と支持部63とを一体で機体に対して着脱可能に設けたことを特徴とする請求項3に記載の苗植付装置とした。
従って、請求項5に記載の苗植付装置は、請求項3に記載の苗植付装置の作用に加えて、機体に対して回転体31と支持部63とを一体で着脱することができるので、修理や調整等のメンテナンスを容易に行える。
【0013】
また、請求項6に係る発明は、側面視で回転体31を支持部63と重複しない位置に設けたことを特徴とする請求項3又は5に記載の苗植付装置とした。
従って、請求項6に記載の苗植付装置は、請求項3又は5に記載の苗植付装置の作用に加えて、側方から回転体31を取り外したり回転体31へのメンテナンスを行うとき、支持部63が邪魔にならずに容易に行える。
【0014】
また、請求項7に係る発明は、回転体31と支持部63との間に介在する介在部材85を他の構成部材より強度のある素材で構成したことを特徴とする請求項3、5又は6に記載の苗植付装置とした。
従って、請求項7に記載の苗植付装置は、請求項3、5又は6に記載の苗植付装置の作用に加えて、回転体31の回転により介在部材85が摩耗したり変形したりするようなことを防止できる一方、他の構成部材の素材は軽量なものにしたり安価なものにすることができ、軽量化又はコストダウンを図ることができる。
【0015】
また、請求項8に係る発明は、回転体31と支持部63との間に介在する介在部材85を回転体31に接触させて設け、回転体31に対して前記介在部材85が移動しないように回転体31と介在部材85とを係合する係合部85a,31gを設けたことを特徴とする請求項3、5、6又は7に記載の苗植付装置とした。
【0016】
従って、請求項8に記載の苗植付装置は、請求項3、5、6又は7に記載の苗植付装置の作用に加えて、係合部85a,31gにより回転体31に対して介在部材85が移動しないようにできるので、回転体31の回転による該回転体31又は介在部材85の摩耗を防止することができ、耐久性が向上する。また、回転体31を内部に伝達機構を備えるケースで構成し、該ケース内に潤滑油を供給した場合には、この潤滑油がケース外へ漏れ出るのを防止できる。
【0017】
【発明の効果】
請求項1に記載の苗植付装置によると、回転体31の左右に取り付けた苗植付具32により圃場に複数条に苗を植え付けることができ、部品点数が少なくなって軽量化、コストダウンを図ることができる。
【0018】
また、請求項2に記載の苗植付装置によると、請求項1に記載の苗植付装置の効果に加えて、伝達軸36により左右の苗植付具32の姿勢が制御されるので、苗植付姿勢の適正化を図ることができる。
また、請求項3に記載の苗植付装置によると、請求項1又は2に記載の苗植付装置の効果に加えて、左右の苗植付具32が回転体の駆動軸や該駆動軸への伝動部等に干渉しないように構成でき、ひいては回転体31の小型化が図れる。
【0019】
また、請求項4に記載の苗植付装置によると、ガ−ド体63により回転体31に泥や水等がかかるのを防止でき、回転体31の作動を良好に維持できると共に、回転体31の摩耗を防止して耐久性の向上を図ることができる。
また、請求項5に記載の苗植付装置によると、請求項3に記載の苗植付装置の効果に加えて、機体に対して回転体31と支持部63とを一体で着脱することができるので、修理や調整等のメンテナンスを容易に行える。
【0020】
また、請求項6に記載の苗植付装置によると、請求項3又は5に記載の苗植付装置の効果に加えて、側方から回転体31を取り外したり回転体31へのメンテナンスを行うとき、支持部63が邪魔にならずに容易に行える。
また、請求項7に記載の苗植付装置によると、請求項3、5又は6に記載の苗植付装置の効果に加えて、回転体31の回転により介在部材85が摩耗したり変形したりするようなことを防止できる一方、他の構成部材の素材は軽量なものにしたり安価なものにすることができ、軽量化又はコストダウンを図ることができる。
【0021】
また、請求項8に記載の苗植付装置によると、請求項3、5、6又は7に記載の苗植付装置の効果に加えて、回転体31の回転による該回転体31又は介在部材85の摩耗を防止することができ、耐久性が向上する。また、回転体31を内部に伝達機構を備えるケースで構成し、該ケース内に潤滑油を供給した場合には、この潤滑油がケース外へ漏れ出るのを防止できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、乗用型の田植機1を示すものであり、この乗用型の田植機1は、走行車体2と6条植えの苗植付部3とから構成される。
【0023】
走行車体2の略中央に駆動源であるエンジン4が備えられ、該エンジン4の駆動により走行ミッションケ−ス5等を介して前輪6,6及び後輪7,7が駆動され、これらの前後輪6,6,7,7が駆動されて走行車体2が走行する。前記エンジン4の上方に操縦席8が備えられ、該操縦席8の前側にステアリングハンドル9が設けられている。この走行車体2の後部に昇降リンク機構10が設けられ、該昇降リンク機構10を介して前記苗植付部3が装着され、油圧昇降シリンダ11の伸縮により上下に昇降するように設けられている。尚、走行車体側からの動力が植付クラッチケ−ス12を介して前記苗植付部3に伝動されるようになっている。
【0024】
また、操縦席前側のステップ部には有段操作される株間変速レバ−13が設けられており、走行車体2の走行速度に対する苗植付部3の作動速度を変速できるようになっている。この株間変速レバ−13により、植付作業者が圃場に移植する苗の植付株間を設定できるようになっている。従って、前記株間変速レバ−13を操作しない限り、走行速度に比例した速度で前記苗植付部3が作動されるようになっている。
【0025】
苗植付部3は、苗載置台20と植付伝動部21及び各2条毎の苗植付装置22,…とを備えて構成される。苗植付部3の下部には、センタ−フロ−ト23及び両側部にサイドフロ−ト24,24が設けられており、該フロ−ト23,24,24が圃場面を滑走する構成である。
【0026】
また、苗植付部3は、植付伝動部21からの動力により前記苗植付装置22を作動する。前記苗載置台20は、上部を苗載置台支持ロ−ラ25,25、下部を左右移動ガイド板26により左右移動可能に支持されている。そして、苗植付部3は、植付伝動部21からの動力により苗載置台20が固着された苗載置台左右移動棒27を左右移動させて苗載置台20を左右移動させ、マット状の苗を苗植付装置22により一株づつ掻き取る構成となっている。尚、前記左右移動ガイド板26には、苗植付装置22,…の苗掻き取り口26a,…が設けられている。また、前記苗載置台20は、左右移動終端においてマット状の苗を各条の苗送りベルト28,…により苗載置台20に沿って苗植付装置側に順次移送する公知の構成である。
【0027】
苗植付装置22は、植付伝動部21の植付伝動フレ−ム29の後端部で機体の走行速度に比例して一定速度で回動する苗植付装置駆動軸30の駆動により作動するようになっている。尚、前記苗植付装置駆動軸30は、前側から巻きかけたチェ−ン37からの伝動により駆動する従動スプロケット38と安全クラッチ39とを介して伝動されて駆動する。前記安全クラッチ39は、該従動スプロケット38の端部に一体で設けた駆動クラッチ爪39a、該駆動クラッチ爪39aと噛み合う受動クラッチ爪を備える受動クラッチ爪体39b及び前記従動スプロケット38を前記受動クラッチ爪体39b側へ付勢する圧縮スプリング39cを備えて構成される。尚、前記従動スプロケット38すなわち前記駆動クラッチ爪39aは苗植付装置駆動軸30回りに回転するように設けられ、前記受動クラッチ爪体39bは前記苗植付装置駆動軸30と一体回転するようになっている。前記駆動クラッチ39a爪及び受動クラッチ爪体39bの爪部は傾斜面を備えており、苗植付装置22が異物等に干渉してメカロックを起こすと、前記傾斜面により圧縮スプリング39cに抗して駆動クラッチ爪39aすなわち従動スプロケット38が受動クラッチ爪体39bとは反対側に移動して、安全クラッチ39の伝動を断つようになっている。
【0028】
そして、前記受動クラッチ爪体39bと一体回転する入力ギヤ60が設けられ、該入力ギヤ60の後側で噛み合う駆動ギヤ61へ伝動され、苗植付装置22の回転ケ−ス31が駆動ギヤ61と一体回転する構成となっている。尚、該駆動ギヤ61は、左右方向において回転ケ−ス31及び該回転ケ−ス31に装着した左右の苗植付具32間の略中央位置に設けられている。尚、入力ギヤ60又は駆動ギヤ61が、回転ケース31へ回転動力を入力する入力部となる。
【0029】
苗植付装置22は、前記回転ケ−ス31と該回転ケ−ス31の左右それぞれに装着した一対の苗植付具32とを備えて構成され、該苗植付具32が前記苗掻き取り口26a上の苗を掻き取り、掻き取った苗を圃場に植え付けていくようになっている。前記回転ケ−ス31は、植付伝動フレ−ム29の後端に上下左右計4本の締付ボルト62で固着された支持部となる回転支持ケース63に左右の回転ケ−ス軸受(ベアリング)64を介して回転可能に支持され、外周が回転支持ケース63に覆われている。従って、回転支持ケース63は、回転ケ−ス31の回転により該ケ−ス31に圃場の泥や水等がかかるのを防止するガード体となっている。更には、回転ケ−ス31が作業者や他の構造物に接触しにくく、安全性の向上を図ると共に、回転ケ−ス31が破損するようなことを防止している。また、前記4本の締付ボルト62を外すことにより、回転ケ−ス31ごと回転支持ケース63を植付伝動フレ−ム29から取り外すことができる。回転支持ケース63内には、前記左右の軸受64の間に位置する内歯の固定ギヤ65が4か所の締付ボルト66で固着されている。この固定ギヤ65と噛み合う回転ギヤ67が、回転ケ−ス31内に設けた左右方向の回転ギヤ軸68回りに回転するように駆動ギヤ61の右側に設けられている。尚、前記回転ギヤ軸68は、回転ケ−ス31の回転中心に対して偏位して設けられている。従って、回転ケ−ス31の回転に伴って回転ギヤ67が固定ギヤ65に沿って公転しながら自転し、これらの回転ギヤ67、固定ギヤ65及び回転ケ−ス31等により遊星ギヤ機構を構成している。また、駆動ギヤ61の左側には回転ギヤ67と一体回転する中間ギヤ69が設けられ、該中間ギヤ69と噛み合う複数個(2個)の遊星駆動ギヤ70が、回転ケ−ス31内に設けたそれぞれの左右方向の遊星駆動ギヤ軸71回りに回転するように設けられている。そして、遊星駆動ギヤ70と一体回転する第一偏心ギヤ72がそれぞれ最終ギヤとなる第二偏心ギヤ73と噛み合う。尚、前記遊星駆動ギヤ70及び第一偏心ギヤ72により、カウンタギヤを構成している。この一対の第二偏心ギヤ73は、回転ケ−ス31内に設けたそれぞれの左右方向の最終回動軸36と一体回転するように設けられている。尚、前記第一偏心ギヤ72及び第二偏心ギヤ73は、偏心しているばかりでなく外形が不規則な非円形に構成されており、回転角速度を変化させながら最終回動軸36へ伝動する。また、一対の前記遊星駆動ギヤ70、第一偏心ギヤ72、第二偏心ギヤ73、遊星駆動ギヤ軸71及び最終回動軸36は、それぞれ回転ケ−ス31の回転中心に対して互いに対称な位置に配置されていると共に、回転ケ−ス31の回転により公転しながら自転する遊星ギヤとなっている。
【0030】
ところで、固定ギヤ65から回転ギヤ67への回転伝達比(すなわち、回転ケ−ス31の回転に対する回転ギヤ67の回転数の比)と中間ギヤ69から遊星駆動ギヤ70への回転伝達比とが互いに逆数の関係にあり、固定ギヤ65から遊星駆動ギヤ70への回転伝達比が1となるため、回転ケ−ス31の1回転につき遊星駆動ギヤ70が同じ方向へ1回転する構成となっている。また、第一偏心ギヤ72と第二偏心ギヤ73とは同じ歯数で回転伝達比が1であり、回転ケ−ス31の1回転につき最終回動軸36が回動角速度を変えながらそれぞれ逆方向に1回転する。
【0031】
最終回動軸36は、それぞれ左右の最終回動軸軸受(ベアリング)74により回転ケ−ス31に対して回転可能に両持ち支持されている。そして、最終回動軸36の両端の方形軸部が苗植付具32の苗植付具固定部材32cの方形穴部に嵌合しており、前記最終回動軸36と前記苗植付具32を一体回転させ、回転ケ−ス31の回動位置に対して苗植付具32の前後傾斜姿勢が決定される。すなわち、左右一対の苗植付具32が第二偏心ギヤ73と一体回転するようになっている。従って、回転ケ−ス31が1回転する間に、苗植付具32が前後傾斜姿勢を変化させながら回転ケ−ス31の回動とは逆方向に該回転ケ−ス31に対して1回転するようになっている。尚、苗植付具32には苗植付具ケ−ス32aを備えており、該苗植付具ケ−ス32aを2本の取付ボルト32bにより前記苗植付具固定部材32cに固着している。
【0032】
また、回転ケ−ス31内のギヤの噛み合いにおけるバックラッシにより発生するガタを吸収すべく、ガタ止め機構40を回転ケ−ス31内に設けている。該ガタ止め機構40は、駆動ギヤ61の右側に設けられ、最終回動軸36と一体回転するガタ止めカム40aと該カム40aに当接するガタ止めア−ム40bと該ア−ム40bを前記ガタ止めカム40a側に付勢するガタ止めスプリング40cとを備えて構成される。従って、ガタ止めカム40aと第二偏心ギヤ73とを駆動ギヤ61の左右に振り分けているので、両者40a、73が左右に離れて配置され、この両者40a、73が作用する最終回動軸36の撓みを防止でき、植付精度の向上を図っている。尚、該ガタ止めスプリング40cの両端を一対のガタ止めア−ム40bに連結して、複数個(2個)のガタ止めア−ム40bでガタ止めスプリング40cを共用している。このガタ止め機構40cにより、苗植付装置22が苗掻き取り口26aから苗を掻き取るとき及び掻き取った苗を圃場に植え付けるときに前記バックラッシによる第二偏心ギヤ73のガタを止めて苗植付具32の前後傾斜姿勢のガタを抑え、該苗植付具32により適確に苗を掻き取り適確に圃場に苗を植え付けるようにしている。尚、前記ガタ止めア−ム40bは駆動ギヤ61に設けた支点軸40d回りに回動するように設けられ、ガタ止めスプリング40cは駆動ギヤ61の内部に設けた左右に連通する空洞孔部61aのスペ−スに重複して配置されている。
【0033】
前記苗植付具32は、マット状の苗を一株分掻き取って保持する植付爪41と該植付爪41で分離して保持した苗を圃場面へ向けて押し出す苗押出体の一例である苗押出フォ−ク42とを備えて構成される。回転ケ−ス31の回動により苗植付具32が上下に長いル−プ軌跡Tを描いて苗掻き取り口26aを通過することにより、取付ボルト43により苗植付具ケ−ス32aに固着された植付爪41が苗掻き取り口26aにある苗を掻き取り保持するようになっている。
【0034】
苗押出フォ−ク42は、押出作動により前記苗植付具ケ−ス32aに対して摺動する丸軸部42aと該丸軸部42aの先端に固着された苗押出部42bとを備えて構成される。この苗押出部42bの前端部が植付爪41が保持した苗の苗床に当接して植付爪41が保持した苗を押し出すようになっている。
【0035】
前記苗押出フォ−ク42の上部すなわち丸軸部42aの一部は、苗植付具ケ−ス32a内に挿入されている。前記苗植付具ケ−ス32a内には、前記苗押出フォ−ク42の上端部に下部支軸44aを介して連結された連結リンク44と、該連結リンク44に上部支軸44bを介して連結した苗押出ア−ム45と、苗押出ア−ム45と一体的に設けたカム側ア−ム46と、該カム側ア−ム46と当接する苗押出カム47とを備えている。尚、前記苗押出ア−ム45及び前記カム側ア−ム46は、苗植付具ケ−ス32aに取り付けた揺動軸48回りに一体で揺動するようになっている。尚、前記連結リンク44は、前記下部支軸44aを介して前記苗押出フォ−ク42に連結されているが、苗押出フォ−ク42と当接することにより該苗押出フォ−ク42に対してほとんど回動しないように設けられている。また、前記苗押出カム47は、回転ケ−ス31の最終回動軸36回りに回動可能に設けられると共に、回転ケ−ス31と一体で該回転ケ−ス31に対して回動しないように設けられている。従って、回転ケ−ス31の一回転につき、苗押出カム47が苗植付具32に対して一回転する構成となっている。そして、苗植付具32に対する苗押出カム47の一回転につき、カム側ア−ム46を介して苗押出ア−ム45が1往復分揺動し、苗押出フォ−ク42が1往復分摺動する構成となっている。尚、苗植付具ケ−ス32aにおける苗押出フォ−ク42が摺動する部分にはゴム製のシ−ル材50を設けており、該シ−ル材50により苗押出フォ−ク42の摺動により苗植付具ケ−ス32a内に供給されたグリス(潤滑剤)が苗植付具ケ−ス32a外へ連れ出されないようにしている。
【0036】
連結リンク44の上端部には、圧縮スプリングである苗押出スプリング51を当接させて設けている。尚、苗押出スプリング51の他端は、苗植付具ケ−ス32aの内面に当接している。また、前記連結リンク44の上端部には、前記苗押出スプリング51の下端部が当接するための当接面を構成している。そして、苗押出フォ−ク42は、前記苗押出スプリング51により苗の押出作用側へ付勢されており、前記苗押出カム47により苗の押出作用側への摺動が規制され、カム側ア−ム46が苗押出カム47の小径部47bに当接する状態で苗押出スプリング51により摺動して押出作動するようになっている。尚、苗植付具32のル−プ軌跡Tの下死点Aの位置にきたとき、前記苗押出フォ−ク42が押出作動するようになっている。そして、苗植付具32が前記下死点Aの位置から上昇して苗掻き取り口26aの位置に来るまでに押出作動した苗押出フォーク42が戻り作動して、植付爪41が苗を掻き取るまでに苗押出フォーク42が戻り作動するようになっている。尚、苗押出フォ−ク42が押出作動したときに苗押出ア−ム45と当接するクッションゴム52を苗植付具ケ−ス32a内に設けており、該クッションゴム52により苗押出スプリング51による苗押出フォ−ク42の押出作動の衝撃を緩和する構成となっている。
【0037】
次に、回転ケ−ス31について説明する。
回転ケ−ス31は、左右のケ−ス体31aにより構成されている。尚、このケ−ス体31aは、左右で同じものを使用して共用部品となっている。左右のケ−ス体31aは、左側及び右側から挿入されるそれぞれ2本づつのケ−ス結合用ボルト75(計4本)により結合される。このケ−ス結合用ボルト75は、それぞれの最終回動軸36の近くで該軸36と略対称位置に配置されており、左右の互いのケ−ス体31aあるいは回転ケ−ス31全体における最終回動軸軸受74を受ける部分の位置ずれが起こりにくいようにしており、回転ケ−ス31に対して最終回動軸36の位置が適正な位置へ精度良く固定されるようにしている。尚、最終回動軸36及びケ−ス結合用ボルト75は、その中途部で駆動ギヤ61に設けたそれぞれに対応する孔61bを貫通し、回転ケ−ス31に対する駆動ギヤ61の位置精度を向上させると共に、回転ケ−ス31及び駆動ギヤ61に対する最終回動軸36の位置精度の向上を図っている。
【0038】
また、図7に基づいて説明すると、左側のケ−ス体31a内部に備える雌ねじ孔部31bに回転ギヤ軸68の一端(左端)に設けた雄ねじ部68aを螺合すると共に、回転ギヤ軸68の他端(右端)に設けた雄ねじ部68bをケ−ス外へ突出させ、該雄ねじ部68bに締付ナット76をケ−ス外側から螺合している。従って、回転ギヤ67及び中間ギヤ69の回転軸心となる回転ギヤ軸68は、その両端部を左右のケ−ス体31aにより支持固定されると共に、前記ケ−ス結合用ボルト75と同様に左右のケ−ス体31aを結合する結合部材となっている。尚、回転ギヤ軸68の外周に設けたボス部77により、回転ギヤ67及び中間ギヤ69が一体で構成されている。また、回転ギヤ軸68及びボス部77は駆動ギヤ61内部の空洞孔部61aを貫通しており、この空洞孔部61aで回転ギヤ67側(図7では右側)から中間ギヤ69を通し、該中間ギヤ69を駆動ギヤ61の回転ギヤ67とは反対側(図7では左側)に位置させて回転ギヤ67及び中間ギヤ69を装着するようになっている。尚、左右のケ−ス体31aが共用部品のため、回転ギヤ軸68の雄ねじ部68bをケ−ス外へ突出させるための孔31cは他方(図7では左側)のケ−ス体31aにも設けられているが、この孔31cにはキャップ78を挿入して回転ケ−ス31内の潤滑油が該孔31cから抜け出ないようにしている。
【0039】
また、回転ケ−ス31の回転中心に対して回転ギヤ軸68とは反対側に、左右のケ−ス体31aを結合する結合部材となるケ−ス結合軸79が設けられている。このケ−ス結合軸79は、その一端(図7では左端)に設けた雄ねじ部79aを一方の(図7では左側)のケ−ス体31a内部に備える雌ねじ孔部31dに螺合すると共に、他端(図7では右端)に設けた雄ねじ部79bをケ−ス体31a(図7では右側)に備える軸孔31eからケ−ス外へ突出させ、該雄ねじ部79bに締付ナット80をケ−ス外側から螺合している。尚、このケ−ス結合軸79は、駆動ギヤ61内部に設けた孔61cを貫通しており、回転ケ−ス31に対する駆動ギヤ61の位置精度の向上を図っている。
【0040】
また、回転ケ−ス31の回転中心に対して前記ケ−ス結合軸79と対称な位置に、一方(図7では左側)のケ−ス体31a内部に支持され駆動ギヤ61を固定するための締付用軸81が設けられている。該締付用軸81は、駆動ギヤ61内部に設けた孔61dを貫通し、その一端(図7では左端)に設けた雄ねじ部81aをケ−ス体31a(図7では左側)に備える軸孔31eからケ−ス外へ突出させ、該雄ねじ部81aに締付ナット82をケ−ス外側から螺合してケ−ス体31aに固着すると共に、他端(図7では右端)に設けた雌ねじ孔部81bに締付ボルト83を螺合し、一方(図7では左側)のケ−ス体31aに駆動ギヤ61を固着している。更には、遊星駆動ギヤ軸71も、駆動ギヤ61内部に設けた孔61eを貫通し、その一端(図7では左端、図6では下端)に設けた雄ねじ部71aをケ−ス体31a(図7では左側、図6では下側)内部に備える雌ねじ孔部31fに螺合すると共に、他端(図7では右端、図6では上端)に設けた雄ねじ部71bに締付ナット84を螺合し、一方(図7では左側、図6では下側)のケ−ス体31aに駆動ギヤ61を固着している。従って、締付用軸81及び遊星駆動ギヤ軸71により、一方(図7では左側、図6では下側)のケ−ス体31aに駆動ギヤ61を固着し、該駆動ギヤ61の位置を確実に固定している。尚、一方(図7では左側、図6では下側)のケ−ス体31aに駆動ギヤ61を固着したので、左右のケ−ス体31aを離して回転ケ−ス31を分割するとき、4本のケ−ス結合用ボルト75及び締付ナット76,80を外すだけで回転ケ−ス31を分割することができる。
【0041】
回転ケ−ス31と回転ケ−ス軸受(ベアリング)64との間には、図6乃至図8及び図11に示すような回転体31と支持部63との間に介在する介在部材となるブッシュ85が介在している。このブッシュ85は、左右のケ−ス体31aにそれぞれ対応して設けられ、回転ケ−ス31の左右外側となる端部の適宜箇所(2か所)に回転ケ−ス31の回転中心側に折り曲げて構成される突起85aを備えている。一方、左右のケ−ス体31aには、図11に示すように、回転ケ−ス31の左右外側となる端部の前記突起85aと対応する位置に溝31gを備えている。従って、回転ケ−ス31にブッシュ85を装着すると、前記突起85aが前記溝31gに係合して回転ケ−ス31とブッシュ85との係合部となり、回転ケ−ス31に対してブッシュ85が回転するのを阻止する回り止めとなる。尚、回転ケ−ス軸受(ベアリング)64の左右外側には、回転ケ−ス31内の潤滑油が外へ放出されないように、回転ケ−ス31と回転支持ケース63との間を塞ぐオイルシ−ル86が設けられている。
【0042】
尚、回転ケ−ス31を受ける前記ブッシュ85及び最終回動軸軸受74を受ける苗押出カム47は、鉄製で強度を持たせてあり、回転ケ−ス31あるいは最終回動軸36をしっかりと確実に支持できるようにしている。そして、回転ケ−ス31や回転支持ケース63等の他の構造物は、アルミ鋳物で構成され、軽量化が図られている。尚、前記他の構造物を、アルミ鋳物で構成する代わりに樹脂製としてもよい。
【0043】
また、固定ギヤ65は、適宜の位置で回転支持ケース63内部に固着されている。尚、この固定ギヤ65は、図5に示すように、外周の複数箇所(4か所)に凸部65aで構成される係合部を備えており、この凸部65aが回転支持ケース63側に設けた凹部(図示せず)と係合して、回転支持ケース63に対して回転しないように設けられている。
【0044】
苗植付具32の苗植付具ケ−ス32aと苗押出カム47との間には、左右方向で両者のボス部32d,47cの外面にわたるように伸縮可能なゴム製のブ−ツ87が設けられている。このブ−ツ87は、端部が苗押出カム47の外面に設けたブ−ツ用溝47dに回転しやすいように係合し、苗植付装置22の作動抵抗になりにくいように装着され、回転ケ−ス31あるいは苗植付具ケ−ス32a内の潤滑油が外へ洩れ出るのを防止している。尚、苗植付具ケ−ス32aのボス部32d内面と苗押出カム47の外面との間、及び苗押出カム47のボス部47c内面と最終回動軸36との間には、従来と同様に苗植付具ケ−ス32aあるいは回転ケ−ス31の潤滑油洩れを防ぐためのそれぞれオイルシ−ル88,89が設けられている。
【0045】
また、図3等から判るように、回転支持ケース63の内部空間内に回転ケ−ス31が収容され、機体側面視で回転支持ケース63と回転ケ−ス31とが重複しないように配置されている。従って、回転ケ−ス31の左右一側の一対の苗植付具32を最終回動軸36から取り外し、苗植付具32が残る他側へ回転ケ−ス31をスライドさせて取り外すことができる。尚、苗押出カム47のボス部47cは、側面視で、回転ケ−ス31の外周より該ケ−ス31の回動中心側に位置しているので、回転ケ−ス31の取り外しの支障にならない。
【0046】
以上により、この苗植付具32は、回転ケ−ス31の回転により、上下方向のル−プ軌跡Tで旋回し植付爪41により苗載置台20の下部の苗掻き取り口26aから一株分の苗を掻き取ってその掻き取った苗を圃場面に移送し、苗押出フォ−ク42が摺動して圃場に苗を押し出して植え付ける。尚、図10には、機体の走行を加味した苗植付具32の動軌跡Uを示している。
【0047】
尚、以上の発明の実施の形態は乗用型の田植機1について記述したが、本発明は乗用型の田植機に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用型の田植機を示す側面図
【図2】乗用型の田植機を示す平面図
【図3】苗植付装置を示す側面図
【図4】入力ギヤ及び駆動ギヤを示す側面図
【図5】回転ケ−ス内の一部のギヤを示す側面図
【図6】図5のS1−S1断面における苗植付装置の展開断面図
【図7】図5のS2−S2断面における苗植付装置の断面図
【図8】図4のS3−S3断面における苗植付装置の断面図
【図9】苗植付具を示す側面断面図
【図10】苗植付具の作動軌跡を示す側面図
【図11】回転ケ−スのケ−ス体とブッシュとの関係を判り易く示した斜視図
【図12】苗植付装置の動作を判り易く示した側面図
【図13】図12の「1」の状態における回転ケ−ス内のギヤの様子を判り易く示した側面図
【図14】図12の「2」の状態における回転ケ−ス内のギヤの様子を判り易く示した側面図
【図15】図12の「3」の状態における回転ケ−ス内のギヤの様子を判り易く示した側面図
【図16】図12の「4」の状態における回転ケ−ス内のギヤの様子を判り易く示した側面図
【図17】図12の「5」の状態における回転ケ−ス内のギヤの様子を判り易く示した側面図
【図18】図12の「6」の状態における回転ケ−ス内のギヤの様子を判り易く示した側面図
【符号の説明】
22…苗植付装置、31…回転ケ−ス、31g…溝、32…苗植付具、36…最終回動軸、63…回転支持ケース、85…ブッシュ、85a…突起
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成15年1月31日(2003.1.31)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−229593(P2004−229593A)
【公開日】 平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願番号】 特願2003−24403(P2003−24403)