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【発明の名称】 乗用型作業機
【発明者】 【氏名】佐伯 正文
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地           井関農機株式会社技術部内

【氏名】新山 裕之
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地           井関農機株式会社技術部内

【氏名】神谷 寿
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地           井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】畦際等の田植機の進行方向に傾斜した地面を走行するときに、センサフロートの後端部が圃場に沈み跡を作ることがないようにした乗用型作業機を提供すること。

【解決手段】走行車両の後側に苗植付装置を昇降可能に設け、苗植付装置の下部に苗植付装置を所望の対地高さとなるよう昇降制御し、左右方向の軸回りに前部が上下動するセンサフロート165を設け、該フロート165が所定量以上上動すると苗植付装置を上昇させるサブセンサ202をセンサフロート165の後方に設ける。圃場から畦際等に田植機が作業をしながら進行する時に前後方向に傾斜の急な状態となりサブセンサ202が圃場面に一定量以上沈み込もうとすると、センサフロート165を上動させることができ、センサフロート165の後端部が圃場に沈み跡を作ることがなくなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両1の後側に農作業装置3を昇降可能に設け、
該農作業装置3の下部に農作業装置3を所望の対地高さとなるよう昇降制御するための接地センサ165を設け、
該接地センサ165の上下動に基づいて上下動可能で、所定量以上上動すると農作業装置3を上昇させる後部センサ202を前記接地センサ165の後方に設けたことを特徴とする乗用型作業機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、接地センサ(センサフロート)の上下動で昇降させる苗植装置を備えた乗用型田植機などの乗用型作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の乗用型作業機の典型例である乗用型田植機を例にして、以下説明する。例えば、特開平9−252618号公報に記載されているように、乗用型田植機には、車輪が耕盤上を回転して前進する走行車体に苗植装置が昇降するように連結されており、センサフロートが苗植装置に後部の横軸の回りに揺動しながら泥面を滑走するように取付けられ、センサフロートの先端が上下に移動すると、該センサフロートに連動する田植装置の昇降リンク機構により、苗植装置が昇降して耕盤に深浅があっても苗植装置が一定の高さに保たれる。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−252618号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の乗用型田植機において、田植機が苗植付作業しながら圃場から退出するときに、図11に示すように、田植機の前方部が畦などに乗り上げ、上向きになりながら進行するため、センサフロート165の後端部が圃場に沈み跡を作ることがある。圃場に沈み跡ができると、それを整地するための作業が必要になり、二度手間をかけた農作業になる。
そこで、本発明の課題は、畦際等の田植機の進行方向に傾斜した地面を走行するときに、センサフロートの後端部が圃場に沈み跡を作ることがないようにした乗用型作業機を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では次の構成を採用する。
請求項1記載の発明は、走行車両1の後側に農作業装置(苗植付装置3)を昇降可能に設け、該農作業装置(苗植付装置3)の下部に農作業装置(苗植付装置3)を所望の対地高さとなるよう昇降制御するための接地センサ(センサフロート165)を設け、該接地センサ(センサフロート165)の上下動に基づいて上下動可能で、所定量以上上動すると農作業装置(苗植付装置3)を上昇させる後部センサ(サブセンサ202)を前記接地センサ(センサフロート165)の後方に設けた乗用型作業機である。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、圃場から畦際等に乗用型作業機が農作業装置(苗植付装置3)を用いて農作業をしながら進行する時に前後方向に傾斜の急な状態となるので、後部センサ(サブセンサ202)が無いと接地センサ(センサフロート165)の検出不良により、農作業装置3の昇降制御が不適正となり、接地センサ(センサフロート165)の後端部が圃場に沈み跡を作ることがある。そこで後部センサ(サブセンサ202)を接地センサ(センサフロート165)の後ろに配置して、後部センサ(サブセンサ202)が圃場面に一定量以上沈み込もうとすると、接地センサ(センサフロート165)を上動させることができ、接地センサ(センサフロート165)の後端部が圃場に沈み跡を作ることがなくなる。
【0007】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、圃場から畦際等に乗用型作業機が進行するとき等に接地センサ(センサフロート165)の後端部が圃場に沈み跡を作ることがないので、圃場の沈み跡を直す手間がかからず、農作業などが能率的に行える。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を図面に基づき詳細に説明する。図1の側面図に示すように、乗用型田植機は走行車両1に昇降用リンク装置2で作業装置の一種である苗植付装置3を装着すると共に施肥装置4を設け、全体で乗用施肥田植機として機能するように構成されている。走行車両1は、駆動輪である左右各一対の前輪6、6および後輪7、7を有する四輪駆動車両である。
【0009】
メインフレーム10の上にミッションケース11とエンジン12が前後に配設されており、該ミッションケース11の後部上面に油圧ポンプ13が一体に組み付けられ、またミッションケース11の前部からステアリングポスト14が上方に突設されている。
【0010】
そして、ステアリングポスト14の上端部にステアリングハンドル16と操作パネル17が設けられている。機体の上部には操縦用のフロアとなるステップ19が取り付けられ、エンジン12の上方部に操縦席20が設置されている。前輪6、6は、ミッションケース11の側方に向きを変更可能に設けた前輪支持ケース22、22に軸支されている。また、後輪7、7は、ローリング杆23の左右両端部に一体に取り付けた後輪支持ケース24、24に軸支されている。ローリング杆23はメインフレーム10の後端部に突設したローリング軸25で進行方向と垂直な面内で回動自在に支持されている。
【0011】
図3に示すように、エンジン12の回転動力は、ベルト31を介して油圧ポンプ13の駆動軸であるカウンタ軸32に伝えられ、さらに該カウンタ軸32からベルト33を介して油圧式変速装置HSTの入力軸35に伝えられ、油圧式変速装置HSTの出力軸36からベルトを介してミッション入力軸34に伝えられる。
【0012】
なお、ミッション入力軸34上には、メインクラッチ43が設けられており、油圧式変速装置HSTの駆動力はメインクラッチ43を介してミッション入力軸34に伝動される。メインクラッチ43は周知の多板クラッチであり、図4に示すようにメインクラッチ軸側の摩擦板44とミッション入力軸側の摩擦板45、両摩擦板を押し付けるスプリング46、切替操作用の固定部材47と摺動部材48などから構成されている。
【0013】
図4に示すように、ミッションケース11のケーシング40の前部には、ミッション入力軸34、カウンタ軸50、走行一次軸51、走行二次軸52、植付一次軸53、植付二次軸54がそれぞれ平行に支承されている。ミッション入力軸34のギヤG1とカウンタ軸50のギヤG2、およびギヤG2と走行一次軸51のギヤG3がそれぞれ互いに噛合しており、ミッション入力軸34の回転が走行一次軸51に順方向に伝えられる。
【0014】
主変速装置Kには、走行一次軸51に前記ギヤG3とギヤG4がそれぞれ定位置に嵌着され、走行二次軸52に互いに一体に成形されたギヤG5、G6が軸方向に摺動自在に嵌合している。シフタ56でギヤG5、G6を移動させ、ギヤG4、G5が噛合すると低速の作業速、ギヤG3とギヤG4が噛合すると高速の路上走行速になる。
【0015】
また、植付一次軸53にはギヤG4に常時噛合するギヤG7とバックギヤG8が嵌着されており、ギヤG6をバックギヤG8に噛合させると後進速になる。ギヤG5、G6がいずれのギヤとも噛合しない位置がニュートラルになる。この主変速装置Kの操作するチェンジレバー90(図1)は操作パネル17に設けられている。
【0016】
また、株間変速装置Cとして、植付一次軸53に互いに一体に成形されたギヤG9、G10が軸方向に摺動自在に嵌合しているとともに、植付二次軸54にギヤG11、G12がそれぞれ取り付けられている。シフタ57でギヤG9、G10を適宜に移動させることにより、ギヤG9とギヤG11、ギヤG10とギヤ11、およびギヤG11とギヤG12の3通りの組み合わせが得られ、3段階の株間切替を行える。植付二次軸54からベベルギヤG13、G14を介して植付部伝動軸58に伝動される。
【0017】
ケーシング40の後部には、リヤアクスル60、60とフロントアクスル61、61が支承され、前記走行二次軸52からリヤデフ装置Dを介してリヤアクスル60、60に伝動されるとともに、リヤデフ装置Dからフロントデフ装置Eを介して左右フロントアクスル61、61に伝動される。そして、左右フロントアクスル61、61により各々左右前輪6、6が駆動回転される構成となっている。
【0018】
リヤデフ装置Dは、走行二次軸52のギヤG15に噛合するギヤG16が外周部に形成された容器63を備え、該容器63内の縦軸64に取り付けた一次ベベルギヤG17と左右のリヤアクスル60、60に各別に取り付けた二次ベベルギヤG18、G18とが互いに噛合する状態で収納されており、各アクスル60、60に伝動される駆動力が適宜変動するようになっている。
【0019】
フロントデフ装置Eもリヤデフ装置Dと同様の構成で、容器65、縦軸66、リヤデフ装置側のギヤG19、フロントデフ装置側のギヤG20、縦軸66に取り付けたベベルギヤG21、フロントアクスル61に取り付けたベベルギヤG22を備えている。上記リヤデフ装置Dおよびフロントデフ装置Eにはデフ機能を停止し、左右両アクスルに駆動力が均等に伝動されるようにするデフロック装置F、Hが設けられている。このデフロック装置F(H)は、容器63(65)に形成された爪69(70)とアクスルの角棒部に嵌合するデフロック部材71(72)の爪73(74)とアクスル60(61)を互いに固定するようになっている。この後輪のデフロック装置Fを操作するデフロックレバー91(図1)は操作パネル17に設けられている。
【0020】
なお、前輪のデフロック装置Hは、ステップ19に設けたデフロックペダル91’を踏み込むとデフ機能が停止される構成となっている(図1)。このデフロックレバー91及びデフロックペダル91’(図2)は、共に機体の前部に配置されており、例えば圃場の畦を乗り越えて機体を圃場から出す時等に、操縦者は機体から降りて機体の前方に立って(自分の身体をウエイト代わりにするために機体の前端部に乗って)機体を前進若しくは後進させてこの畦越えを安全に行う。
【0021】
この時、左右前輪6、6の何れか又は左右後輪7、7の何れかが空回りした場合に、操縦者は即座に機体前部にあるデフロックレバー91及びデフロックペダル91’を容易な姿勢で操作できて、デフロック状態にして安全に畦越えを行うことができる。
【0022】
リヤアクスル60、60はベベルギヤG23、G24、…によってサイドクラッチ軸76、76に伝動連結され、さらに該サイドクラッチ軸76、76からリヤ出力軸77、77にサイドクラッチI、Iを介して伝動される。該サイドクラッチIは多板クラッチであり、サイドクラッチ軸側の摩擦板80、リヤ出力軸側の摩擦板81を備えている。リヤ出力軸77に摺動自在に嵌合する作動筒82は、板ばね83によって両摩擦板80、81を押し付ける方向に付勢されており、常時はサイドクラッチIが入った状態となっている。シフタ85Iで作動筒82を付勢方向と逆向きに移動させると、サイドクラッチIが切れる。
【0023】
更に、リヤ出力軸77、77には後輪ブレーキ装置J、Jが設けられている。該後輪ブレーキ装置Jは、リヤ出力軸77に取り付けたディスク87、…にプレッシャプレート88、…を押し付けて制動するものであり、このプレッシャプレート88、…の作動はシフタ85Jで行う。すなわち、常時はサイドクラッチIが入で、後輪ブレーキ装置Jが掛かっていない状態であり、シフタ85Iを操作して作動筒82を付勢方向と逆向きに移動させるとサイドクラッチIが切れ、シフタ85Jを操作すると後輪ブレーキ装置Jが掛かるのである。これらサイドクラッチIおよび後輪ブレーキ装置Jの操作(左右シフタ85I・85Jの操作)は、後述のステップ19上に設けたペダル140で行う。なお、左右シフタ85Iには、左右クラッチ操作アーム86Iの基部が固着されており、左右シフタ85Jには、左右ブレーキ操作アーム86Jの基部が固着されている(図5)。
【0024】
リヤ出力軸77、77の後端部はケーシング40外に突出し、この突出端部に前記後輪支持ケース24、24に伝動する左右後輪伝動軸89、89が接続されている。そして、この左右後輪伝動軸89、89により各々左右後輪7、7が駆動回転される構成となっている。
【0025】
なお、図面に示すように、ミッションケ−ス11の左右サイドクラッチI、Iと左右後輪ブレーキ装置J、Jとは、機体側面視で前輪6と重複する位置となっており、ピットマンアーム175から非常に近い距離となっている。
【0026】
また、そのミッションケ−ス11に左右後輪7、7の左右後輪ブレーキ装置J、Jを設けているので、ペダル140からの距離が短くて、ペダル140と左右後輪ブレーキ装置J、Jとの連繋機構が簡潔でコンパクトなものとなり、各部材の製造誤差等が少なくなって性能の良い機構を得ることができる。特に、ペダル140は、メインクラッチ43も入り切り操作するものであるから、ミッションケ−ス11にメインクラッチ43を設けたことと相乗して、ペダル140とメインクラッチ43と左右後輪ブレーキ装置J、Jとの連繋機構が簡潔でコンパクトなものとなり、各部材の製造誤差等が少なくなって性能の良い機構を得ることができる。
【0027】
また、上記実施例においては、ステアリングハンドル16の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪7のサイドクラッチIを切る例を示したが、ステアリングハンドル16の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪7のサイドクラッチIを切って、且つ、旋回内側の後輪7のブレーキ装置Jを制動するように構成しても良いことはいうまでもない。また、左右後輪7がデフ装置を介して駆動されている場合には、ステアリングハンドル16の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪7のブレーキ装置Jを制動するように構成しても良い。
【0028】
苗植付装置3は、走行車両1に昇降用リンク装置2で昇降自在に装着されているのであるが、その昇降させる構成と苗植付装置3の構成について説明する。先ず、走行車両1に基部が回動自在に設けた一般的な油圧シリンダー160(図1)のピストン上端部を昇降用リンク装置2に連結し、走行車両1に設けた油圧ポンプ13にて電磁油圧バルブ(図示せず)を介して油圧シリンダー160に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー160のピストンを伸進・縮退させて昇降用リンク装置2に連結した苗植付装置3が上下動されるように構成されている。
【0029】
苗植付装置3は、昇降用リンク装置2の後部にローリング軸を介してローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース162と、該植付伝動ケース162に設けられた支持部材に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台163と、植付伝動ケース162の後端部に装着され前記苗載台163の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける苗植付け具164…と、植付伝動ケース162の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンサフロート165・サイドフロート166…等にて構成されている。センサフロート165・サイドフロート166…は、圃場を整地すると共に苗植付け具164…にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。また、センサフロート165の後部には後で詳細に説明するサブフロート(サブセンサ)202を設けている。
【0030】
PTO伝動軸167は両端にユニバーサルジョイントを有し、施肥駆動ケース168の動力を苗植付装置3の植付伝動ケース162に伝達すべく設けている。昇降リンクセンサ169はメインフレーム10に立設した支柱15(図1)と昇降用リンク装置2の上下動する平行リンク部材2a、2bの間に設けられ、リンク169aの動きを検出するポテンショメータである。
【0031】
そして、後述する迎い角センサ207によるセンサフロート165前部の上下位置検出に基づいて、図示しない制御装置により電磁油圧バルブを制御して油圧シリンダー160にて苗植付装置3の上下位置を制御するように構成されている。
【0032】
即ち、センサフロート165の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられた時には、油圧ポンプ13にてミッションケース11内から汲み出された圧油を油圧シリンダー160に送り込んでピストンを突出させ、昇降用リンク装置2を上動させて苗植付装置3を所定位置まで上昇させる。また、センサフロート165の前部が適正範囲以上に下がった時には、油圧シリンダー160内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植付装置3を所定位置まで下降させる。そして、センサフロート165の前部が適正範囲にあるとき(苗植付装置3が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー160内の圧油の出入りを止めて苗植付装置3を一定位置に保持させるように設けられている。このように、センサフロート165を苗植付装置3の自動高さ制御のための接地センサーとして用いている。
【0033】
ステアリングハンドル16の下方にフィンガーレバー171(図2)が配置され、該フィンガーレバー171を上下方向に操作すると図示しないフィンガーレバースイッチが作動されて、制御装置のPTOクラッチ作動手段によりPTOクラッチ作動SOLを操作して、施肥駆動ケース168(図1)内に設けられた動力を断接するPTOクラッチを操作して施肥装置4及び苗植付装置3への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、制御装置の苗植付装置昇降手段により、電磁油圧バルブを操作して手動にて苗植付装置3を上下動できるように構成されている。
【0034】
即ち、フィンガーレバー171を「上」に操作すると、PTOクラッチが切れ施肥装置4及び苗植付装置3の作動が停止し、且つ電磁油圧バルブが強制的に苗植付装置3を上昇する側に切換えられる。
【0035】
そして、フィンガーレバー171を「上」に操作した後に、フィンガーレバー171を「下」に1回操作すると、電磁油圧バルブがセンサフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態となり、苗植付装置3が上昇された状態であればセンサフロート165が接地して適正姿勢になるまで苗植付装置3は下降する。更にもう一回、フィンガーレバー171を「下」に操作すると、電磁油圧バルブがセンサフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入り施肥装置4及び苗植付装置3が駆動される。以降、フィンガーレバー171を「下」に操作する度に、電磁油圧バルブがセンサフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入りと切りに交互に切り換えられる。
【0036】
ここで、ステアリングハンドル16にて前輪6、6が操向操作される部分の構成について図5と図6に基づいて説明する。
ステアリングハンドル16は、ステアリングポスト14内に設けられたステアリング軸上部に固定されており、ステアリング軸の回転はミッションケース11内に設けられたステアリング変速歯車を介して減速されて出力軸174に伝動される。そして、出力軸174の下端は、ミッションケース11底面から突出してピットマンアーム175が固定されている。該ピットマンアーム175の前部左右側と左右前輪支持ケース22、22(図1)とは左右ロッド176、176(図1)にて連結されている。
【0037】
従って、ステアリングハンドル16を回動操作すると、ステアリング軸・ステアリング変速歯車・出力軸174・ピットマンアーム175・左右ロッド176、176・左右前輪支持ケース22、22へと伝達されて、左右前輪6、6が左右操向操作される。
【0038】
一方、ピットマンアーム175の後部上面には、作動ローラ177が回転自在に設けられており、その作動ローラ177の左右両側を囲むように平面視でコ字状に切り欠かれた切欠き部178を有する従動体179がミッションケース11の底面に回動自在に支持されている。そして、従動体179の左右両側部には、前記左右クラッチ操作アーム86I、86Iに連結された左右ロッド180、180の前部が連結されている。従って、ステアリングハンドル16を所定量(機体を右旋回させる意思を持って作業者が右に回す量)以上右に回すと、ピットマンアーム175も右回動し、作動ローラ177が(ハ)方向に回動し、従動体179の切欠き部178の左側面178aを押すために、従動体179を(ニ)方向に回動させ、右ロッド180を引き、右クラッチ操作アーム86Iが操作されて右サイドクラッチIが切れ、旋回中心側の右後輪7が遊転状態となるので、右後輪7が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、右旋回がスムーズできれいにできる。
【0039】
逆に、ステアリングハンドル16を所定量以上左に回すと、ピットマンアーム175も左回動し、作動ローラ177が反(ハ)方向に回動し、従動体179の切欠き部178の右側面178bを押すために、従動体179を反(ニ)方向に回動させ、左ロッド180を引き、左クラッチ操作アーム86Iが操作されて左サイドクラッチIが切れ、旋回中心側の左後輪7が遊転状態となるので、左後輪7が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、左旋回がスムーズできれいにできる。
【0040】
更に、ピットマンアーム175の前部上面には、左右センサ押片182、182が設けられており、ステアリングハンドル16を左右何れかに200度回転させると、ミッションケース11の底面に固定されたオートリフトスイッチ183がオンになる(ステアリングハンドル16は左右に最大360度〜400度回転する)。
【0041】
上記旋回用の機構を備えた本実施例の乗用型田植機において、ハンドル16を操作することで旋回用サイドクラッチI、Iの入・切とは別に、図7に示す手動レバー92で任意にサイドクラッチI、Iを切替可能な構成とする。
【0042】
手動レバー92で作動するワイヤ93のアウタワイヤ93aの端部がミッションケース11の外側壁に固定されており、手動レバー92をハンドルとの連動解除をする矢印(ホ)方向へ作動させると、インナーワイヤ93bが上方に引っ張られ、従動体179が実線の通常位置から点線位置に動く。これにより従動体179の通常位置では、係合していたヒットマンアーム175と従動体179が係合解除される。
こうして手動レバー92の操作でサイドクラッチIを「入」とすることができ、停止していた旋回内側の車輪が回転を始める。
【0043】
このように、手動レバー92の切替で、サイドクラッチI、Iの入・切ができるため、深い圃場などで、ぬかるんだ圃場面を車輪がスリップして本乗用型田植機が動けなくなっても、ハンドル16を直進状態に戻すことなく、手動レバー92の操作だけで任意に四輪駆動にできるため、大回りせず旋回を容易に行える。
【0044】
また、手動レバー92を通常位置に戻しても、ピットマンアーム175が非旋回状態(直進状態)にならないと、ヒットマンアーム175と従動体179が係合しない。従って手動レバー92の戻し操作で即座にサイドクラッチIが「切」とならず、オペレータの意図に反して機体が操向されるようなことがなく、安全に作業を行うことができる。
また前記手動レバー92を運転席の近くに配置したので、旋回時の操作性が向上する。
【0045】
本実施例の田植機には左右一対の次回の田植え苗の条に対応した位置に圃場内に沿い溝を付けるための電動マーカ94(図1)を設けることができるが、該電動マーカ94と前記サイドクラッチIを作動させて行う旋回モードとを操縦席20の前方に折りたたみ自在に設けたマルチビジョン95と組合せることができる。
【0046】
前記旋回モードに入ると、旋回外側の電動マーカ94が作動準備状態となり、マルチビジョン95のマーカランプを点滅させる。そして苗植付装置3を「下降」させる操作をすると苗植付装置3が下降し、電動マーカ94も作動位置に出て、マーカランプが常燈するという構成にする。
【0047】
こうして前記旋回モードと田植機のターンと電動マーカ94の連動が確実に行え、マーカ94の出す方向がほぼ正確になる(苗植付装置3を上、下では切り換えない。)。また、電動マーカ94の作動準備状態(苗植付装置3が上昇位置にあるとき)にあればランプが点滅し、旋回が始まると旋回センサ181(図6)がオンとなり、ランプの点滅が開始し、電動マーカ94が作動状態(苗植付装置3が下降位置にあり、左右どちらかに電動マーカ94が出てるとき)であるときランプを常燈とする。そのため電動マーカ94の状態がよくわかり、電動マーカ94の作動確認のためにオペレーターが後ろを振り向く必要が無くなる。
【0048】
次に、後進時に苗植付装置3を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、図8に示すように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、該チェンジレバー90の基部に設けた接当片190が接当してオンになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置により電磁油圧バルブを制御して油圧シリンダー160にて苗植付装置3を最上位置まで上昇させるように構成されている。
【0049】
このように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付装置3を最上位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付装置3は最上位置まで上昇しているので、苗植付装置3が畦に衝突して破損することが未然に防止できる。
【0050】
また、前記ステアリングハンドル16を左右何れかに200度回転させた時にオートリフトスイッチ183がオンになると、制御装置により電磁油圧バルブを制御して油圧シリンダー160にて苗植付装置3を最上位置まで上昇させるように構成されている。
【0051】
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル16を左右何れかに最大限まで回転させると、オートリフトスイッチがオンになり、自動的に苗植付装置3は最上位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付装置3を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0052】
一方、操作パネル17には、苗植付装置3の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替えスイッチ192が設けられており、即ち、自動リフト切替えスイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がオンになるかオートリフトスイッチ183がオンになると自動的に苗植付装置3は制御装置の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替えスイッチ192をオフにしていると、バックリフトスイッチ191がオンになってもオートリフトスイッチ183がオンになっても苗植付装置3は自動上昇されない。
【0053】
このように、一つの自動リフト切替えスイッチ192で、バックリフトスイッチ191がオンになってもオートリフトスイッチ183がオンになっても苗植付装置3は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0054】
なお、自動リフト切替えスイッチ192をオフにして、バックリフトスイッチ191がオンになってもオートリフトスイッチ183がオンになっても苗植付装置3が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時にチェンジレバー90を後進速に操作しても苗植付装置3が自動上昇しないので、苗植付装置3を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付装置3をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル16を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替えスイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル16を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付装置3が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替えスイッチ192をオフにしていると、ステアリングハンドル16を左右何れかに200度以上回転しても苗植付装置3は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0055】
次に、畦際等の傾斜の急な斜面を走行時におけるセンサフロート165が圃場に沈み跡を付けるのを防止する構成について説明する。
センサフロート165の後端にサブセンサ(サブフロート)202を設けることで、該センサフロート165の迎い角センサ207と前記サブセンサ202のどちらでもセンサフロート165部分の圃場面の検知を可能にすることができ、センサフロート165の後端が一定以上沈むと苗植付装置3を上昇作動させる。
【0056】
センサフロート165の感度調節装置を図9の側面図、図10の平面図に示すように構成し、主感度調節と行うと、単一のばねの伸縮で迎い角センサ207の出力が変化し、主感度調節と共に副感度調節を行うと複数のばねの伸縮で迎い角センサ207の出力が変化するように設けることができる。
【0057】
硬い圃場では、センサフロート165の前端の上昇をおさえる荷重が増え、センサフロート165の頻繁な作動による苗植付装置3の昇降のハンチングを防止できる。
【0058】
すなわち、センサフロート165の後端部に一端が回動自在に連結したアーム205が、その前端部に設けられた回動軸205aの軸芯回りに回動するように設けられ、深さ調節レバー203(操縦席20付近にあるレバー(図示せず)で調節可能)の操作でアーム205の後端部が上下に移動すると、センサフロート165の後部が上下して苗の植付深さが調節できるようになっている。一対の支持板214、214が植付歯車箱220のフランジ220aの両横に固定されている。該フランジ220aはリンク部材2bに支持されている。
【0059】
上下と左右(田植機の進行方向に対して左右、以下同じ)に一対ずつ平行に配置されたリンク215、215……の前方の両端が支持枠216に、そして後方の両端が一対の支持板214にそれぞれ回動自在に取付けられて平行リンクを構成している。上側の一対のリンク215と支持板214に枢支されている軸217が一体化されており、アーム218が軸217から下に伸び、その突端と深さ調節レバー203がロッド219で連結されて、アーム205の後端が上下すると支持枠216が同じ方向に上下するようにできている。この支持枠216は、板が前から見てC型に曲げて作られ、左の片に迎い角センサ(ポテンショメータ)207が取付けられている。右の片の上の長孔222でピン223が支えられている。アウタワイヤ225aから突出したインナワイヤ225bの端がピン223に取付けられ、その押し引きで上下に移動するようにできている。アーム226の中間が上側のリンク215の前端の軸215aに回動自在に取付けられて、その後端がリンク228でセンサフロート165の前端部に連結され、その前端がロッド229で迎い角センサ207のアーム207aに連結されている。ピン226aがアーム226の前部に設けられ、これと前記のピン223に3本のばね230、231、232の両端が掛けられている。ばね232、233は、下端に順に長い長孔部を備え、これに上記のピン226aが差し込まれている。
【0060】
そして、前部主感度では、ピン226aがばね231、232の長孔で遊んでいる状態にインナワイヤ225bを緩めて設定して用いる。すると、センサフロート165の前端が上下に移動すると、アーム226がばね230のみを伸縮しながら揺動し、この揺動がロッド229でアーム207aに伝わって迎い角センサ207の出力が変化する。また、前部副感度では、インナワイヤ225bを引いてピン223を引き上げてばね230に初期張力を与えるとともにばね231の長孔の下端(およびばね232の長孔の下端)をピン226aに接触させて用いる。すると、センサフロート165の前端部の上昇が、ばね230、231(さらにはばね232)に抗して行なわれ、その動きが鈍くなる。
【0061】
また、センサフロート165上の支持部材235にはアーム205の後端を回動自在に支持する側面視「く」字状の連結アーム236によりサブフロート202がセンサフロート165の後に連結されている。サブフロート202上には長穴237aを持った立設アーム237が固定されており、該長穴237aにピン長穴236aを介して連結アーム236でサブフロート202はセンサフロート165に連結されている。また、「く」字状の連結アーム236の一端はロングリンク239によりくの字型のプレート241(図9)の下端部に回動自在に連結されている。支持板214には該支持板214に枢支される軸217が固着しているが、該軸217にはプレート241も固着しており、該プレート241の端部はセンサフロート165に連結されたリンク228に回動自在に連結されている。
【0062】
従ってサブフロート202が上下動すると、その動きが連結アーム236、ロングリンク239、支持板214及びプレート241を介してリンク228を上下動させる。こうして、前記主感度及び副感度に応じて迎い角センサ207の出力が変化してセンサフロート165を上下に動かすことができる。
【0063】
このようにして、畦際等の傾斜の急な斜面を走行時でもサブフロート202の動きにより、センサフロート165部分が圃場に水平位置に保持され、昇降リンクセンサ169の検出不良による農作業装置の昇降制御の不適正を防止する。
【0064】
なお、図1及び図2には、機体前部に設けた予備苗載台200と直進走行の指標とするセンターマスコット201を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を示す全体側面図である。
【図2】図1に示す乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】図1に示す乗用型田植機の走行車両の伝動構成を示す概略平面図である。
【図4】図1に示す乗用型田植機のミッションケースの展開断面図である。
【図5】図1に示す乗用型田植機の主クラッチ及び後輪ブレーキの操作構成を示す平面図である。
【図6】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成を示す斜視図である。
【図7】図1に示す乗用型田植機の旋回駆動系の解除可能な操作系の概略図である。
【図8】図1に示す乗用型田植機のチェンジレバー部の斜視図である。
【図9】図1に示す乗用型田植機のセンサフロートの連動機構を示す側面図である。
【図10】図9の要部平面図である。
【図11】従来技術の問題点を説明する図である。
【符号の説明】
1 走行車両           2 昇降用リンク装置
2a、2b 平行リンク部材    3 苗植付装置
4 施肥装置           6 前輪
7 後輪             10 メインフレーム
11 ミッションケース      12 エンジン
13 油圧ポンプ         14 ステアリングポスト
15 支柱            16 ステアリングハンドル
17 操作パネル         19 ステップ
20 操縦席           22 前輪支持ケース
23 ローリング杆        24 後輪支持ケース
25 ローリング軸        31、33 ベルト
32 カウンタ軸         34 ミッション入力軸
35 入力軸           36 出力軸
40 ケーシング         43 メインクラッチ
44、45、80、81 摩擦板  46 スプリング
47 切替操作用の固定部材    48 摺動部材
50 カウンタ軸         51 走行一次軸
52 走行二次軸         53 植付一次軸
54 植付二次軸         56、57 シフタ
58 植付部伝動軸        60 リヤアクスル
61 フロントアクスル      63、65 容器
64、66 縦軸         69、70、73、74 爪
71、72 デフロック部材    76 サイドクラッチ軸
77 出力軸           82 作動筒
83 板ばね           85 シフタ
86I 左右クラッチ操作アーム  86J 左右ブレーキ操作アーム
87 ディスク          88 プレッシャプレート
89 左右後輪伝動軸       90 チェンジレバー
91 デフロックレバー      91’ デフロックペダル
92 手動レバー         93 ワイヤ
94 電動マーカ         95 マルチビジョン
140 ペダル          160 油圧シリンダー
162 植付伝動ケース      163 苗載台
164 苗植付け具        165 センサフロート
166 サイドフロート      167 PTO伝動軸
168 施肥駆動ケース      169 昇降リンクセンサ
169a リンク         171 フィンガーレバー
174 出力軸          175 ピットマンアーム
176 左右ロッド        177 作動ローラ
178 切欠き部         179 従動体
180 左右ロッド        181 旋回センサ
182 左右センサ押片      183 オートリフトスイッチ
190 接当片          191 バックリフトスイッチ
192 自動リフト切替えスイッチ 200 予備苗載台
201 センターマスコット    202 サブセンサ(サブフロート)
203 深さ調節レバー      205 アーム
205a 回動軸         207 迎い角センサ
207a、218、226 アーム
214 支持板          215 リンク
215a 軸           216 支持枠
217 軸            219 ロッド
220 植付歯車箱        220a フランジ
222 長孔           223 ピン
225 ワイヤ          228 リンク
229 ロッド          226a ピン
230、231、232 ばね   235 支持部材
236 連結アーム        236a 長穴
237 立設アーム        237a 長穴
239 ロングリンク       241 くの字型プレート
C 株間変速装置         D リヤデフ装置
E フロントデフ装置       G ギヤ
F、H デフロック装置      I 左右サイドクラッチ
J 左右後輪ブレーキ装置     K 主変速装置
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成14年9月25日(2002.9.25)
【代理人】 【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義

【公開番号】 特開2004−113082(P2004−113082A)
【公開日】 平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願番号】 特願2002−279482(P2002−279482)