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【発明の名称】 苗植付け装置
【発明者】 【氏名】牧原 邦充
【住所又は居所】大阪府堺市石津北町64番地 株式会社クボタ堺製造所内

【氏名】向井 猛
【住所又は居所】大阪府堺市石津北町64番地 株式会社クボタ堺製造所内

【要約】 【課題】回転式の植付け機構を備えた苗植付け装置において、標準の株間による植付けと大きい株間による疎植を選択して行えるようにする。

【解決手段】一定方向に回転駆動される回転ケース82の両端に植付け爪83を装備してなる回転式の植付け機構24を、一定ストロークで往復横移動する苗のせ台22の下端部に対向して配備してある苗植付け装置において、一方の植付け爪83の取付姿勢を変更して、その爪先端軌跡Sを、苗のせ台下端の苗取出し口aを通過する苗取り状態と、苗取出し口aから外れた苗取り不能状態とに切換え可能に構成してある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向に回転駆動される回転ケースの両端に植付け爪を装備してなる回転式の植付け機構を、一定ストロークで往復横移動する苗のせ台の下端部に対向して配備してある苗植付け装置において、
一方の植付け爪の取付姿勢を変更して、その爪先端軌跡を、苗のせ台下端の苗取出し口を通過する苗取り状態と、苗取出し口から外れた苗取り不能状態とに切換え可能に構成してあることを特徴とする苗植付け装置。
【請求項2】
一定方向に回転駆動される回転ケースの両端に植付け爪を装備してなる回転式の植付け機構を、一定ストロークで往復横移動する苗のせ台の下端部に対向して配備してある苗植付け装置において、
一方の植付け爪の取付姿勢を変更可能に構成するとともに、苗のせ台を苗のせ面に沿って上下に位置調節可能に構成し、植付け爪の取付姿勢変更と苗のせ台の上方への位置変更によって、植付け爪の爪先端軌跡を、苗のせ台下端の苗取出し口を通過する苗取り状態と苗取出し口から外れた苗取り不能状態とに切換え可能に構成してあることを特徴とする苗植付け装置。
【請求項3】
一定方向に回転駆動される回転ケースの両端に植付け爪を装備してなる回転式の植付け機構を、一定ストロークで往復横移動する苗のせ台の下端部に対向して配備してある苗植付け装置において、
苗のせ台の横送り速度を切換え選択する横送り変速機構に、横送り速度を標準の株間に対応した横送り速度をもたらす標準の変速位置と、標準の横送り速度の1/2に減速する疎植用の変速位置を設けてあることを特徴とする苗植付け装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の苗植付け装置であって、
前記回転ケースへの回転動力の伝達を遮断して、並列配備された複数条の植付け機構の内の一部の植付けを休止する少数条植え用の畦際クラッチを、ケース回転位相の特定一個所でのみクラッチ入り切り操作可能に構成してあることを特徴とする苗植付け装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一定方向に回転駆動される回転ケースの両端に植付け爪を装備してなる回転式の植付け機構を備えた苗植付け装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、苗の消費量を少なくして植付け作業を行う、等のために、株間を標準株間よりも十分大きくする、いわゆる疎植を行うことが要求されることがあり、回転式の植付け機構で疎植を行う手段の一つとして、回転ケースの両端に取付けた一対の植付け爪の一方を取外すことで、回転ケースの1回転で1回の植付けを行って、回転ケースの1回転で2回の植付けを行う標準仕様の植付け機構で植付ける場合の2倍の株間で植付けを行う形態や、回転ケースの回転速度を十分に落して株間を大きくする形態、等が提案されている。
【0003】
回転ケースの1回転で2回の植付けを行う標準仕様の植付け形態では、回転ケースの1回転に対して苗のせ台を2回の植付け分、つまり2株分だけ横移動するように苗のせ台の横移動速度を設定するので、この横送り形態のまま一対の植付け爪の一方を取外す前者の形態で疎植を行うと、苗のせ台の苗が櫛歯状に切り取られることになってしまう。そこで、この疎植形態では、回転ケースの1回転に対して苗のせ台が1株分だけ横移動するように、苗のせ台の横移動速度が標準仕様の場合の2分の1となるように、苗のせ台横送り駆動機構のギヤを入れ替えている。
【0004】
また、回転ケースの回転速度を十分に落して株間を大きくする後者の形態では、植付け爪の移動速度が遅いために植付け爪が田面内に突入している時間が長くなり、植付け爪によって田面に形成される植付け穴が前後に長いものになって植付けた苗が傾いたり倒れたりしやすくなる。そこで、回転ケースの回転周期を遅くしながら不等速回転させて、植付け爪が田面内を移動する植付け回転位相での爪先端移動速度を速くして植付け爪の田面内への突入時間を短くし、もって、植付け爪によって田面に形成される植付け穴を前後に短いものにして、植付けた苗が傾いたり倒れたりするのを防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、回転ケースの1回転で1回の植付けを行う前者の疎植形態は、標準仕様の苗植付け装置における苗のせ台横送り駆動機構を改造して疎植専用に組み替えられたものであるので、標準の株間での植付を行おうとして回転ケースの両端に植付け爪を装着しても、苗のせ台の横移動速度が標準仕様の場合の2分の1のままであるために、1回の植付けに対する苗のせ台横移動量は標準仕様の時の半分になってしまうものであった。つまり、この疎植仕様に改造した苗植付装置は疎植専用であり、標準仕様での植付けができないものとなっていた。
【0006】
また、両端に植付け爪を備えた回転ケースを低速で不等速回転させる後者の疎植形態では、回転ケースは回転速度にかかわらず不等速回転されるので、回転速度を高めて標準の株間での植付けを行おうとしても、全条の植付け機構が速い速度で不等速駆動されるために大きい振動が発生しやすくなる不具合が生じるものであった。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、標準的な株間による植付けと疎植を行うことのできる苗植付け装置を提供することを主たる目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0009】
請求項1に係る発明は、一定方向に回転駆動される回転ケースの両端に植付け爪を装備してなる回転式の植付け機構を、一定ストロークで往復横移動する苗のせ台の下端部に対向して配備してある苗植付け装置において、一方の植付け爪の取付姿勢を変更して、その爪先端軌跡を、苗のせ台下端の苗取出し口を通過する苗取り状態と、苗取出し口から外れた苗取り不能状態とに切換え可能に構成してあることを特徴とする。
【0010】
上記構成によると、標準の株間での植付けを行う時には、回転ケースの両端に装備した2組の植付け爪をそれぞれ所定の標準姿勢にして、両植付け爪の爪先端軌跡を苗のせ台下端の苗取出し口を通過する苗取り状態にすることで、回転ケース1回転で2回の植付けを行うことができる。
【0011】
また、疎植を行う場合には、回転ケースの両端に装備した2組の植付け爪の内の一方を姿勢変更して、その爪先端軌跡を苗取出し口から外れた苗取り不能状態に切換える。これによって、回転ケース1回転で1回の植付けを大きい株間で行うことができる。また、苗取り不能状態に切換えた植付け爪の姿勢を標準姿勢に戻せば、回転ケース1回転で2回の植付けを標準の株間で行うことができる。
【0012】
従って、請求項1の発明によると、標準的な株間による植付けと疎植を行うことのできる実用性に優れた苗植付け装置を得ることができる。る
【0013】
〔請求項2に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0014】
請求項2に係る発明は、一定方向に回転駆動される回転ケースの両端に植付け爪を装備してなる回転式の植付け機構を、一定ストロークで往復横移動する苗のせ台の下端部に対向して配備してある苗植付け装置において、一方の植付け爪の取付姿勢を変更可能に構成するとともに、苗のせ台を苗のせ面に沿って上下に位置調節可能に構成し、植付け爪の取付姿勢変更と苗のせ台の上方への位置変更によって、植付け爪の爪先端軌跡を、苗のせ台下端の苗取出し口を通過する苗取り状態と苗取出し口から外れた苗取り不能状態とに切換え可能に構成してあることを特徴とする。
【0015】
上記構成によると、標準の株間での植付けを行う時には、苗のせ台を標準高さ位置にセットするとともに、回転ケースの両端に装備した2組の植付け爪をそれぞれ所定の標準姿勢にして、両植付け爪の爪先端軌跡を苗のせ台下端の苗取出し口を通過する苗取り状態にすることで、回転ケース1回転で2回の植付けを行うことができる。
また、疎植を行う場合には、苗のせ台を標準高さ位置よりも高い位置に移動してセットするとともに、回転ケースの両端に装備した2組の植付け爪の内の一方を姿勢変更して、その爪先端軌跡を苗取出し口から外れた苗取り不能状態に切換える。これによって、回転ケース1回転で1回の植付けを大きい株間で行うことができる。なお、この場合、苗取出しを行う他方の植付け爪の姿勢を標準状態にしたままであると、苗のせ台が高くなった分だけ苗縦送り方向での苗取り量が少なくなるので、この他方の植付け爪の姿勢を標準状態より少し上方に変更することで、この植付け爪による1株の苗取り量を標準植付け時と同等にすることができる。
また、苗のせ台を標準高さ位置に戻すとともに、苗取り不能状態に切換えた植付け爪の姿勢を標準姿勢に戻せば、回転ケース1回転で2回の植付けを標準の株間で行うことができる。
【0016】
従って、請求項2の発明によると、標準的な株間による植付けと疎植を行うことのできる実用性に優れた苗植付け装置を得ることができる。また、苗のせ台の高さ位置調節と植付け爪の姿勢調節との双方の調節によって一方の植付け爪を苗取り不能状態にするので、植付け爪の姿勢調節量は少なくてすむ。
【0017】
〔請求項3に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0018】
請求項3に係る発明は、一定方向に回転駆動される回転ケースの両端に植付け爪を装備してなる回転式の植付け機構を、一定ストロークで往復横移動する苗のせ台の下端部に対向して配備してある苗植付け装置において、苗のせ台の横送り速度を切換え選択する横送り変速機構に、横送り速度を標準の株間に対応した横送り速度をもたらす標準の変速位置と、標準の横送り速度の1/2に減速する疎植用の変速位置を設けてあることを特徴とする。
【0019】
上記構成によると、標準の株間での植付けを行う時には、回転ケースの両端に装備した2組の植付け爪の爪先端軌跡を苗のせ台下端の苗取出し口を通過する苗取り状態にするとともに、横送り変速機構で標準の変速位置を選択することで、回転ケース1回転で2回の植付けを行うことができる。
【0020】
また、疎植を行う場合には、回転ケースの両端に装備した2組の植付け爪の内の一方を姿勢変更して、その爪先端軌跡を苗取出し口から外れた苗取り不能状態に切換えるか、あるいは、一方の植付け爪を外すことで、片方の植付け爪のみのよる植付けが行われるようにセットするとともに、横送り変速機構で疎植用の変速位置を選択して苗のせ台を低速で横移動させる。これによって、回転ケース1回転で1回の植付けを大きい株間で行うことができる。
【0021】
従って、請求項3の発明によると、標準的な株間による植付けと大きい株間での疎植を選択して行うことのできる実用性に優れた苗植付け装置を得ることができる。
【0022】
〔請求項4に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0023】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の苗植付け装置であって、前記回転ケースへの回転動力の伝達を遮断して、並列配備された複数条の植付け機構の内の一部の植付けを休止する少数条植え用の畦際クラッチを、ケース回転位相の特定一個所でのみクラッチ入り切り操作可能に構成してあることを特徴とする。
【0024】
上記構成によると、疎植による植付け作業において、畦際近くにおい一部の畦際クラッチを切って少数条植えを行った後、切られていた畦際クラッチを入れて再び全条植えを行うことになるが、この場合、休止されていた植付け機構は、休止されていない他の植付け機構と同じ位相でのみ駆動開始されることになり、1回転で1回の植付けを行うようセットされた全植付け機構は完全に同期作動し、一部の植付け機構の植付け爪が180°反転した位相で作動して、植付け苗が横一列に揃わない植付け状態、いわゆる千鳥植え状態がもたらされるようなことはない。
【0025】
従って、請求項4の発明によると、標準的な株間による植付けと大きい株間での疎植を選択して任意に行うことのできるとともに、少数条植えの後の全条植えを仕上がり良く行うことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1、図2に、水田作業機の一例として6条植え仕様に構成された乗用型田植機全体の側面図と平面図がそれぞれ示されている。この乗用型田植機は、操向自在な左右一対の前輪1と操向不能な左右一対の後輪2とを備えた四輪駆動型の走行機体3の後部に、6条植え仕様の苗植付け装置4が油圧シリンダ5によって駆動される四連リンク機構6を介して昇降自在に連結されるとともに、機体後部に6条仕様の施肥装置7が装備された構造となっている。
【0027】
前記走行機体3における機体フレーム8の前部には、前輪1を軸支したミッションケース9が連結固定されるとともに、機体フレーム8の後部には、後輪2を軸支した後部伝動ケース10がローリング自在に支持されている。また、ミッションケース9から前方に延出した前フレーム11にエンジン12が防振支持されるとともに、エンジン12の後方に位置する搭乗運転部には、ステアリングハンドル13、運転座席14、ステップ15などが備えられ、また、予備苗を複数段に載置収容する予備苗のせ台16が、機体前部の左右に配備されている。
【0028】
図5に示すように、前記苗植付け装置4は、四連リンク機構6の後端下部にローリング自在に連結された角筒状の支持フレーム20、フィードケース21、6条分の苗を載置して左右方向に一定ストロークで往復移動される苗のせ台22、支持フレーム20に後ろ向き片持ち状に並列連結された3個の植付けケース23、各植付けケース23の後部に左右2組づつ装備された回転式の植付け機構24、各条の植付け箇所を整地する3個の整地フロート25、等を備えて構成されている。
【0029】
前記施肥装置7は、運転座席15と苗植付け装置4との間において走行機体3上に搭載されており、肥料ホッパー26に収容した粉粒状の肥料を設定量づつ繰り出し、電動ブロワ27からの風を受ける供給ホース28を介して整地フロート25に左右一対づつ備えた作溝器29に風力搬送するよう構成されている。
【0030】
図3,図4に、この田植機の伝動構造の概略が示されている。前記ミッションケース9の側面には、エンジン12にベルト連動された油圧式無段変速装置(HST)が主変速装置31として連結され、その出力がミッションケース9に入力されて走行系と作業系に分岐される。なお、この主変速装置31はステアリングハンドル13の左横側に配備した主変速レバー32によって無段階に前後進変速できるようになっている。
【0031】
走行系動力は、ギヤ式の副変速機構33によって高低2段に変速された後、前輪系と後輪系に再度分岐され、前輪系の動力はデフロック可能なデフ装置34を介して左右の前輪1に伝達されるとともに、後輪系の動力は伝動軸35を介して後部伝動ケース10に伝達され、多板式のサイドクラッチ36を介して左右の後輪2に伝達される。なお、副変速機構33は、運転座席14の左横側に配備した副変速レバー37によって変速操作されるとともに、デフ装置34は、足元に設けられたデフロックペダル38の踏み込みによってデフロックされて左右の前輪1が等速で駆動されるようになっている。また、後部伝動ケース10には機体停止用の多板式のブレーキ39が装備されており、このブレーキ39は、ステップ15の右側前部に配備された単一のペダル40に機械的に連動連結されている。
【0032】
また、図4に示すように、ミッションケース9内で分岐された作業系の動力は、ワンウエイクラッチ41によってその正転動力のみが取出されれ、6段のギヤ変速が可能な株間変速機構42および植付けクラッチ43を経てPTO軸44から取出され、伝動軸45を介して苗植付け装置4のフィードケース21に軸伝達されるようになっている。
【0033】
図5,図6,図7に示すように、ミッションケース9から取出されて軸伝達された作業用動力は、フィードケース21の前面に設けられた入力軸51に供給された後、一対のベベルギヤ52で方向転換されて伝動軸53に伝達され、さらに、この伝動軸53の動力はチェーン54を介して出力軸55に伝達されるとともに、横送り変速機構56を介して横送り用駆動軸57に伝達されるようになっており、出力軸55の動力は並列配備された各植付けケース23に分配されるとともに、横送り用駆動軸57によって苗のせ台横送り用のねじ軸58が駆動されるよう構成されている。
【0034】
苗のせ台22は、その下部および上部が、並列配備された植付けケース23に亘って水平に横架支持した摺動レール59と、支持フレーム20から立設した左右の支柱60に左右移動可能に係合支持されるとともに、往復螺旋溝mを備えた前記ねじ軸58の一定方向回転によって往復ねじ送りされる可動部材61が苗のせ台22の背面にに連結されており、ねじ軸58の一定方向への連続回転に伴って苗のせ台22が一定ストロークで左右に往復移動されるようになっている。
【0035】
ここで、前記横送り変速機構56を用いて横送り用駆動軸57の回転速度を変更すると、植付け機構24の作動速度に対する苗のせ台横送り速度を3段に変更することができ、苗のせ台横送りストロークに対する苗取出し回数を変更して、1株の苗取出し量を変更することができる。なお、前記横送り変速機構56の詳細な構造については後述する。
【0036】
苗のせ台22における各条の苗収容部には、載置した苗を下方に縦送りする苗送りベルト62が、下部駆動ローラ63と上部遊転ローラ64とに亘って巻回張設されており、下部駆動ローラ63を苗送り方向に回動させる送りレバー65が苗のせ台22の横移動ストロークエンドごとに操作されることで、苗送りベルト62が間欠的に送り駆動されるようになっている。そして、この送りレバー65は、前記伝動軸53と同心に配備された苗送り駆動軸66によって操作されるようになっている。この苗送り駆動軸66は、横送り用駆動軸57にギヤ連動されて一定方向(図6中、反時計方向)に駆動されるものであり、苗のせ台22の横移動ストロークに相当する間隔をもって一対の駆動アーム67が備えられており、苗のせ台22が横移動ストロークエンドに到達すると、前記送りレバー65が駆動アーム67の回転軌跡内に入って所定角度だけ苗送り方向に接当回動され、これによって苗送りベルト62が所定量だけ送り駆動されるのである。なお、駆動アーム67から外れた送りレバー65は、図示しないバネによって逆方向に回動復帰されて、次回の送り作動に備えるようになっている。
【0037】
図8に示すように、各植付けケース23の基部には、前記出力軸55に同心状に連動連結された植付け入力軸71が支承されるとともに、植付けケース23の後端には植付け機構24を駆動する植付け駆動軸72が左右水平に貫通支承され、植付け入力軸71に遊嵌した駆動側スプロケット73と植付け駆動軸72に遊嵌した従動側スプロケット74とがチェーン75で巻き掛け連動されている。そして、植付け入力軸71と駆動側スプロケット73とがトルクリミッタ76を介して連動連結されるとともに、従動側スプロケット74と植付け駆動軸72とが畦際クラッチ77で連動連結されている。
【0038】
前記トルクリミッタ76は、植付け入力軸71にスライド可能にスプライン装着した伝動部材78をバネ79によってスライド付勢して前記駆動側スプロケット73に軸心方向から噛合い連動させた構造となっており、植付け駆動軸72の負荷が大きくなって駆動側スプロケット73に作用する負荷トルクが設定値に達すると、噛合い爪同士の乗り上がりによって伝動部材78がバネ79に抗して後退変位して、伝動部材78から駆動側スプロケット73への動力伝達が断たれ、植付け機構24に過大な負荷がかかることが回避されるようになっている。なお、トルクリミッタ76における駆動側スプロケット73と伝動部材78との噛合い部は、1回転のうちの一箇所でのみ噛合いが可能となるよう爪位相が設定されている。
【0039】
前記畦際クラッチ77は、畦際近くでの植付け行程において、6条の植付け機構24のうちの一部を休止して、2条植え、4条植え、などの少数条植えを行う場合に使用するものであり、植付け駆動軸72にスライド可能にスプライン装着した爪クラッチ部材80をバネ81によってスライド付勢して従動側スプロケット74に軸心方向から噛合い連動させた構造となっており、各植付けケース23ごとに備えられた畦際クラッチ77は、運転座席14の後側に配備した畦際クラッチレバー100にそれぞれワイヤ連係されており、各クラッチごとに任意に入り切り操作することができるようになっている。また、この畦際クラッチ77における従動側スプロケット74とクラッチ部材80との噛合い部も、1回転のうちの一箇所でのみ噛合いが可能となるよう爪位相が設定されている。
【0040】
回転式の植付け機構24は、植付け駆動軸72に連結されて駆動軸軸心p1周りに一定方向に回転駆動される回転ケース82の両端に、植付け爪83を備えた爪ケース84を軸心p2周りに自転可能に取付け、回転ケース82が一定方向へ等速で1回転するのに伴って爪ケース84を逆方向へ不等速で1回自転させることで、苗のせ台下端部の取出し口aを通過する縦長の爪先端回動軌跡Sをもって植付け爪83を循環回動させるよう構成されている。
【0041】
本発明は、標準の株間での植付けと特に大きい株間での植付け(疎植)とを任意に選択できるよう工夫されており、以下その構成について説明する。
【0042】
苗のせ台横送り速度を切り換える前記横送り変速機構56は以下のように構成されている。つまり、駆動側となる前記伝動軸53には、変速用の第1ギヤG1,第2ギヤG2,第3ギヤG3、および、2段ギヤに構成された減速用の第4ギヤG4がそれぞれ遊嵌され、従動側となる横送り用駆動軸57には、前記第1ギヤG1および第2ギヤG2にそれぞれ常時咬合する第5ギヤG5および第6ギヤG6がキー連結されるとともに、2段ギヤに構成された第7ギヤG7が遊転自在に装着されている。そして、第7ギヤG7の大径ギヤ部g1が第3ギヤG3に咬合されるとともに、第7ギヤG7の小径ギヤ部g2が第4ギヤG4の大径ギヤ部g3に咬合され、さらに、第4ギヤG4の小径ギヤ部g4が、横送り用駆動軸57にキー連結した第8ギヤG8に咬合されている。
【0043】
そして、伝動軸53に形成されたキー溝85には半径方向に変位可能なキー部材86がシフト可能に組み込まれるとともに、このキー部材86の一端部がケース外から出退操作されるシフト軸87に連結されており、キー部材86がシフトされて第1ギヤG1、第2ギヤG2、第3ギヤG3のいずれかのボス部にに択一係合されることで横送り用駆動軸57が3段に変速されるようになっている。ここで、キー部材86が第1ギヤG1に係合された場合(第1変速状態)、あるいは第2ギヤG2に係合された場合(第2変速状態)には、比較的小さい減速比の変速が行われるが、キー部材86が第3ギヤG3に係合された場合(第3変速状態)には大きい減速比での変速が行われて横送り用駆動軸57は第1変速状態の場合の1/2に大きく減速されて駆動されることになる。
【0044】
具体的には、キー部材86が第1ギヤG1に係合される第1変速状態では、苗のせ台22のストロークに対して植付け機構24の回転ケース82が13回転し、キー部材86が第2ギヤG2に係合される第2変速状態では、苗のせ台22のストロークに対して回転ケース82が10回転し、また、キー部材86が第3ギヤGsに係合される第3変速状態では、苗のせ台22のストロークに対して回転ケース82が26回転するものであり、上記第1変速状態あるいは第2変速状態は通常の株間での植付けを行う場合に選択され、また、第3変速状態は疎植を行う場合にのみ選択される。
【0045】
つまり、通常の株間での植付けを行う場合には、植付け機構24における回転ケース82の両端に備えた植付け爪83で、回転ケース1回転に対して2回の植付けを行うことで、苗のせ台22が1ストローク横移動する間に回転ケース82が13回転する第1変速状態では26回の植付けが行われるとともに、苗のせ台22が1ストローク横移動する間に回転ケース82が10回転する第2変速状態では20回の植付けが行われるのである。
【0046】
そして、回転ケース82の両端に植付け爪83を装備しての通常植付け形態においては、ミッションケース内の前記株間変速機構42を6段に切換えることで、例えば、12cm,14cm,16cm,18cm,21cm,24cmの株間を選択することができる。
【0047】
また、疎植を行う場合には、回転ケース82に備えた一対の植付け爪83のうちの一方のみを利用して植付けを行うことで、上記した各標準株間の2倍の株間を現出することができることになる。ただし、実際に疎植用として要求される株間は30cm前後であるので、株間変速機構42で標準株間14cmあるいは16cmを選択して一方の植付け爪83のみで植付け作動させることで28cmあるいは32cmの株間を得ることができる。そして、回転ケース82の1回転で1回の苗取出しを行う疎植形態では、前記第3変速状態を選択することで、苗のせ台横送り速度を通常の1/2に減速し、もって、1回の苗取出しに対する苗横送り量を標準の植付けの場合と同様にするのである。
【0048】
ここで、疎植のために回転ケース82に備えた一対の植付け爪83のうちの一方のみを苗取出しに利用して、他方の植付け爪83による苗取出しを行わせなくする形態としては、他方の植付け爪83の爪先端回動軌跡Sを苗取出し口aを通過しないように後退変位させる爪後退形態と、他方の植付け爪83を無くしてしまう爪取外し形態とが考えられるものであり、各形態の具体構造を以下に例示する。
【0049】
〔爪後退形態(1)〕
【0050】
図9〜図12に示すように、この例では、回転ケース82の両端に装備された爪ケース84a,84bのうちの一方84aは、回転ケース82に装備された回転軸88のフランジ88aに所定姿勢(微調節は可能)でボルト連結された「標準仕様」となっているのに対して、他方の爪ケース84bは、回転軸88のフランジ88aに姿勢変更可能に取付けられた中間フランジ部材89にボルト連結された「標準/疎植切換え仕様」に構成されている。ここで、前記中間フランジ部材89は、回転軸88のフランジ88aに2本のボルト90で締結されるとともに、ボルト挿通用の長孔91の範囲で回転軸軸心p2周りに回動可能に支持され、かつ、フランジ88aの一個所に挿通した位置決めピン92を中間フランジ部材89に形成した一対のピン孔93のいずれかに選択挿通することで、中間フランジ部材89を回転軸軸心p2周りの2位置に選択固定できるようになっており、この中間フランジ部材89に2本のボルト94で爪ケース84bが締結固定されている。
【0051】
このような構成によると、標準の株間での植付けを行う場合には、前記中間フランジ部材89を、図9および図11(イ)に示すように、フランジ88aを時計方向に回動させた長孔終端位置で固定することによって、「標準/疎植切換え仕様」の爪ケース84bを「標準仕様」と同じ姿勢にセットする。このようにセットされると、回転ケース82の両端における植付け爪83の爪先端回動軌跡Sは共に苗取出し口aを通過する状態となり、回転ケース82の1回転で2回の苗取出しを行う状態を得ることができる。
【0052】
また、疎植を行う場合には、前記中間フランジ部材89を、図10および図11(ロ)に示すように、フランジ88aを反時計方向に回動させた長孔終端位置(退避位置)に固定して、「標準/疎植切換え仕様」の爪ケース84bを「疎植仕様」にセットする。「疎植仕様」となった爪ケース84bに装着された植付け爪83の爪先端回動軌跡Sは苗取出し口aから外れたものとなり、回転ケース82の1回転で1回の苗取出しを行う状態を得ることができる。
【0053】
〔爪後退形態(2)〕
【0054】
図13〜図16に示すように、この例では、回転ケース82の両端に装備された爪ケース84a,84bのうちの一方84aは、回転ケース82に装備された回転軸88のフランジ88aに所定姿勢(微調節は可能)でボルト連結された「標準仕様」となっているのに対して、他方の爪ケース84bはフランジ88aに対して姿勢変更可能にボルト連結された「標準/疎植切換え仕様」に構成されている。つまり、図15に示すように、「標準/疎植切換え仕様」の爪ケース84bにおける回転軸88のフランジ88aには回転軸軸心p2を中心とした円弧状の長孔95が形成され、回転ケース82および長孔95に挿通された2本のボルト96がフランジ88aの背面に配備された共通のプレートナット97に締結されており、長孔95の範囲内でボルト挿通位置を移動させることで、爪ケース84bを回転軸軸心p2周りに大きく姿勢を変更することが可能となっている。
【0055】
このような構成によると、標準の株間での植付けを行う場合には、図13および図15(イ)に示すように、「標準/疎植切換え仕様」の爪ケース84bにおけるボルト挿通位置を長孔95の時計方向の端部に移動させて締込み固定し、「標準/疎植切換え仕様」の爪ケース84bを「標準仕様」の爪ケース84aと同じ姿勢にセットする。このようにセットされると、回転ケース両端における植付け爪83の爪先端回動軌跡Sは共に苗取出し口aを通過する状態となり、回転ケース82の1回転で2回の苗取出しを行う状態を得ることができる。
【0056】
また、疎植を行う場合には、図14およびび図15(ロ)に示すように、「標準/疎植切換え仕様」の爪ケース84bにおけるボルト挿通位置を長孔95の反時計方向の端部に移動させて締込み固定し、「標準/疎植切換え仕様」の爪ケース84bを「疎植仕様」にセットする。「疎植仕様」となった爪ケース84bに装着された植付け爪83の爪先端回動軌跡Sは苗取出し口aから外れたものとなり、回転ケース82の1回転で1回の苗取出しを行う状態を得ることができる。
【0057】
〔爪取外し形態〕
【0058】
図17〜図19に示すように、この例では、回転ケース82の両端に装備された爪ケース84a,84bは共に、回転ケース82に装備された回転軸88のフランジ88aに所定姿勢(微調節は可能)でボルト連結された「標準仕様」となっており、疎植を行う場合には、図18に示すように、予め決められた側の爪ケース84bの植付け爪83bのみを取外し、回転ケース82の1回転で1回の苗取出しを行う状態をもたらす。
【0059】
この場合、爪ケース84a,84bには取出した苗を田面に押し込み作動する苗押し出し具98を備えた押出しロッド99が爪長手方向に沿ってスライド移動自在に装備されており、この苗押し出し具98の先端が苗取出し口aの近くを通過するので、干渉防止のために、植付け爪83を取外した爪ケース84bを微調節範囲で最も苗取出し口aから遠ざかる方向に移動調整しておく。
【0060】
〔他の実施形態〕
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0061】
図9,図10,図13,図14,および、図17,図18中に示すように、苗のせ台22の下端部を受け止め支持する摺動レール59からは斜め下方に向けてガイド軸101が突設されて、植付けケース23のボス23aにスライド自在に挿通支持されており、図示しない調節レバーを操作して摺動レール59を上下に位置調節固定することで、苗取出し口aにおける爪先端回動軌跡Sとの干渉代を変更し、苗縦送り方向での苗取り量を調節することが可能となっており、上記した〔爪後退形態(1)〕〕、および、〔爪後退形態(2)を実施するに際して、前記爪ケース84bを後退させるとともに、苗のせ台22を上方に適当量後退させるようにすることもでき、これによると、「標準/疎植切換え仕様」の爪ケース84bの後退量を少なくすることができる。また、上記した〔爪取外し形態〕においても、植付け爪83の取外しと苗のせ台22の上方後退移動を組合せることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】田植機の全体側面図
【図2】田植機の全体平面図
【図3】走行系の伝動構造を示す概略図
【図4】作業系の伝動構造を示す概略図
【図5】苗植付け装置の駆動構造を示す平面図
【図6】苗植付け装置の側面図
【図7】フィードケースの断面図
【図8】植付けケースの断面図
【図9】爪後退形態(1)に構成した植付け機構を標準仕様に切換えた状態を示す側面図
【図10】爪後退形態(1)に構成した植付け機構の疎植仕様に切換えた状態を示す側面図
【図11】爪後退形態(1)に構成した植付け機構における仕様切換え構造の側面図
【図12】爪後退形態(1)に構成した植付け機構の背面図
【図13】爪後退形態(2)に構成した植付け機構を標準仕様に切換えた状態を示す側面図
【図14】爪後退形態(2)に構成した植付け機構の疎植仕様に切換えた状態を示す側面図
【図15】爪後退形態(2)に構成した植付け機構における仕様切換え構造の側面図
【図16】爪後退形態(2)に構成した植付け機構の背面図
【図17】爪取外し形態に構成した植付け機構を標準仕様に切換えた状態を示す側面図
【図18】爪取外し形態に構成した植付け機構を疎植仕様に切換えた状態を示す側面図
【図19】爪取外し形態に構成した植付け機構における仕様切換え構造の側面図
【符号の説明】
22      苗のせ台
24      植付け機構
56      横送り変速機構
77      畦際クラッチ
82      回転ケース
83      植付け爪
a       苗取出し口
S       爪先端回動軌跡
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【住所又は居所】大阪府大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号
【出願日】 平成14年6月6日(2002.6.6)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎

【公開番号】 特開2004−8089(P2004−8089A)
【公開日】 平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願番号】 特願2002−166060(P2002−166060)