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【発明の名称】 農用トラクタの昇降装置
【発明者】 【氏名】小峯 岳央
【住所又は居所】大阪府堺市石津北町64番地 株式会社クボタ堺製造所内

【氏名】中村 正
【住所又は居所】大阪府堺市石津北町64番地 株式会社クボタ堺製造所内

【要約】 【課題】作業装置昇降用のリフトアームを駆動するリフトシリンダを機械式のポジション制御弁によって作動制御するよう構成した農用トラクタの昇降装置において、畦際などでの機体方向転換時における昇降を簡単かつ速やかに行えるようにする。

【解決手段】ポジション制御弁の調節アーム22bを、無段階に位置保持可能なポジションレバー31と、所定の複数位置にのみ切換えて位置保持可能な優先昇降レバー51とのいずれか一方で上昇方向に片当たり操作可能に構成するとともに、優先昇降レバー51を、リフトアーム5をポジションレバー31に優先して予め設定された上限位置まで上昇作動させる上昇操作位置と、優先上昇を解除して元の高さまで下降させる下降操作位置の2位置に切換え操作可能に構成してある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置昇降用のリフトアームを駆動するリフトシリンダを機械式のポジション制御弁によって作動制御するよう構成した農用トラクタの昇降装置であって、
前記ポジション制御弁の調節アームを、無段階に位置保持可能なポジションレバーと、所定の複数位置にのみ切換えて位置保持可能な優先昇降レバーとのいずれか一方で上昇方向に片当たり操作可能に構成してあることを特徴とする農用トラクタの昇降装置。
【請求項2】
前記優先昇降レバーを、リフトアームをポジションレバーに優先して予め設定された上限位置まで上昇作動させる上昇操作位置と、優先上昇を解除して元の高さまで下降させる下降操作位置の2位置に切換え操作可能に構成してある請求項1記載の農用トラクタの昇降装置。
【請求項3】
前記優先昇降レバーを、トグル機構によって前記上昇操作位置と下降操作位置の2位置に急速切換え保持可能に構成してある請求項2記載の農用トラクタの昇降装置。
【請求項4】
前記ポジションレバーの操作ストロークに対して優先昇降レバーの操作ストロークを小さく設定してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の農用トラクタの昇降装置。
【請求項5】
前記優先昇降レバーの変位をストローク増幅手段を介して前記調節アームに伝達するよう構成してある請求項4記載の農用トラクタの昇降装置。
【請求項6】
前記ポジションレバーと前記優先昇降レバーとを、運転座席の横側にそれぞれ前後方向に揺動操作可能に配備するとともに、両レバーを前後に並べて配備してある請求項1〜5のいずれか一項に記載の農用トラクタの昇降装置。
【請求項7】
前記優先昇降レバーを前記ポジションレバーの前側に配備するとともに、この優先昇降レバーを前記ポジションレバーよりも高く延出して配置してある請求項6記載の農用トラクタの昇降装置。
【請求項8】
前記優先昇降レバーの操作系に、上昇操作方向へ作用する付勢手段を装備してある請求項1〜7のいずれか一項に記載の農用トラクタの昇降装置。
【請求項9】
前記優先昇降レバーの操作を不能にするロック機構を備えてある請求項1〜8のいずれか一項に記載の農用トラクタの昇降装置。
【請求項10】
前記ロック機構を、優先昇降レバーを任意の位置で固定可能な摩擦式に構成してある請求項9記載の農用トラクタの昇降装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業装置昇降用のリフトシリンダを機械式のポジション制御弁によって作動制御するよう構成した農用トラクタの昇降装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記昇降装置としては、ポジションレバーを操作することなく別に設けた補助操作レバーを上昇操作することでリフトアームを大きく上昇させ、補助操作レバーを下降操作することによりリフトアームを元の高さにまで下降させるように構成したものがある(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭63−123304号公報(第7頁、第12図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の昇降装置は、畦際での機体方向転換時における作業装置の上昇操作、および、機体方向転換後の元の作業高さへの下降復帰を簡単に行えように創案されたものであるが、以下のような不具合があった。
【0005】
(1)補助操作レバーがポジション制御弁のコントロールレバー軸に直接に連動連結された構造であるために、ポジションレバーによってコントロールレバー軸が回動されると、補助操作レバーも一緒に動くことになり、このために補助操作レバーを用いて作業装置を例えば上限まで上昇させるのに、元の作業高さによって補助操作レバーの操作量が変化することになり、操作感覚がよくなかった。
【0006】
(2)ポジションレバーを操作すると補助操作レバーも一緒に動くので、ポジションレバーの操作が重くなりがちであった。
【0007】
(3)また、補助操作レバーの少ない操作量でコントロールレバー軸を大きく回動操作できるように操作系のリンク比などをを設定すると、補助操作レバーの操作が重くなるものであった。
【0008】
本発明は、このような不具合を改善して取扱い性に優れた昇降装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1に係る発明の構成、および、作用効果〕
【0010】
請求項1に係る発明は、作業装置昇降用のリフトアームを駆動するリフトシリンダを機械式のポジション制御弁によって作動制御するよう構成した農用トラクタの昇降装置であって、
前記ポジション制御弁の調節アームを、無段階に位置保持可能なポジションレバーと、所定の複数位置にのみ切換えて位置保持可能な優先昇降レバーとのいずれか一方で上昇方向に片当たり操作可能に構成してあることを特徴とする。
【0011】
上記構成によると、通常の作業時には優先昇降レバーをポジション制御弁の調節アームを片当たり操作しない操作位置に退避保持しておき、ポジションレバーによって調節アームを調節操作して所望の作業高さを得ることができる。そして、畦際での機体方向転換時などにおいては、優先昇降レバーでポジション制御弁の調節アームを片当たり操作することで、ポジションレバーに関係なく上限位置などの所定の高さにまで上昇させることができる。
【0012】
従って、請求項1の発明によると、ポジションレバーおよび優先昇降レバーがポジション制御弁の調節アームにそれぞれ片当たり連動されていて、ポジションレバーと優先昇降レバーとは直接的には連係されていないので、通常時におけるポジションレバーの操作時に優先昇降レバーが一緒に動くようなことがなく、ポジションレバーの操作力が特に重くなるようなことなく軽快に操作できる。
また、優先昇降レバーは、ポジションレバーの操作位置に関係なく決まった操作位置にのみ切換え保持するようにしたので、優先昇降レバーの操作量が常に決まったものとなり、常に同じ操作感覚で操作でき、取扱い性に優れたものとなる。
【0013】
〔請求項2に係る発明の構成、および、作用効果〕
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記優先昇降レバーを、リフトアームをポジションレバーに優先して予め設定された上限位置まで上昇作動させる上昇操作位置と、優先上昇を解除して元の高さまで下降させる下降操作位置の2位置に切換え操作可能に構成してある。
【0015】
上記構成によると、通常の作業時には優先昇降レバーを所定の下降操作位置に切換えるとその位置に保持され、ポジションレバーによって所望の作業高さを得ることができる。また、畦際での機体方向転換時などにおいて、優先昇降レバーを所定の上昇操作位置に切換えるとその位置に保持され、所定の上限位置にまで上昇させることができる。
【0016】
従って、請求項2の発明によると、通常作業時と上限への上昇時での優先昇降レバー操作位置が単純明確で判りやすく、一層操作性に優れたものとなり、請求項1に係る発明の上記効果を助長する。
【0017】
〔請求項3に係る発明の構成、および、作用効果〕
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項2の発明において、前記優先昇降レバーを、トグル機構によって前記上昇操作位置と下降操作位置の2位置に急速切換え保持可能に構成してある。
【0019】
上記構成によると、トグル機構の死点を越えるだけの変位を優先昇降レバーに与えるだけで、優先昇降レバーは下降操作位置から上昇操作位置、あるいはその逆に急速切換え作動し、かつ、その操作位置に保持される。
【0020】
従って、請求項3の発明によると、優先昇降レバーを少し動かすだけで、速やかに所望の操作位置に切換えることができ、一層取扱い性に優れたものとなる。
【0021】
〔請求項4に係る発明の構成、および、作用効果〕
【0022】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項の発明において、前記ポジションレバーの操作ストロークに対して優先昇降レバーの操作ストロークを小さく設定してある。
【0023】
上記構成によると、優先昇降レバーを少し操作するだけで、リフトアームを優先的に所望の上限位置やポジション設定された作業高さへ速やか作動させることができ、請求項1〜3のいずれか一項の発明の上記効果をもたらすとともに、操作性を一層向上することができる。
【0024】
〔請求項5に係る発明の構成、および、作用効果〕
【0025】
請求項5に係る発明は、請求項4の発明において、前記優先昇降レバーの変位をストローク増幅手段を介して前記調節アームに伝達するよう構成してある。
【0026】
上記構成によると、優先昇降レバーの少しの操作でもリフトアームを大きく作動させることができ、迅速性が要求される畦際などでの昇降操作を好適に行う上で有効となる。
【0027】
〔請求項6に係る発明の構成、および、作用効果〕
【0028】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項の発明において、前記ポジションレバーと前記優先昇降レバーとを、運転座席の横側にそれぞれ前後方向に揺動操作可能に配備するとともに、両レバーを前後に並べて配備してある。
【0029】
上記構成によると、前後に揺動される両レバーは、後方操作で上昇、前方操作で下降、等に設定することで、同等の昇降感覚で取り扱うことができるとともに、前後にずらして配備してあるので他方のレバーが邪魔になることはなく、取扱い性を高める上で有効となる。
【0030】
〔請求項7に係る発明の構成、および、作用効果〕
【0031】
請求項7に係る発明は、請求項6の発明において、前記優先昇降レバーを前記ポジションレバーの前側に配備するとともに、この優先昇降レバーを前記ポジションレバーよりも高く延出して配置してある。
【0032】
上記構成によると、前方に位置する優先昇降レバーはステアリングハンドルに近いものとなり、畦際での機体方向転換時に、ステアリングハンドルから放した一方の手を優先昇降レバーに移動させやすいものとなり、優先昇降レバーを用いての迅速な昇降操作を行うことが容易となる。
【0033】
〔請求項8に係る発明の構成、および、作用効果〕
【0034】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれか一項の発明において、前記優先昇降レバーの操作系に、上昇操作方向へ作用する付勢手段を装備してある。
【0035】
上記構成によると、ポジション制御弁の調節アームは一般に下降側に付勢されており、このため、優先昇降レバーの上昇側への操作のほうが下降側への操作より重くなるが、付勢手段によるアシストで上方向への操作力と下降方向への操作力とを同等にすることができ、操作性の向上に有効となる。
【0036】
〔請求項9に係る発明の構成、および、作用効果〕
【0037】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか一項の発明において、前記優先昇降レバーの操作を不能にするロック機構を備えてある。
【0038】
上記構成によると、優先昇降レバーをロックしておけば、誤って優先昇降レバーに触れて、下降しているリフトアームを不用意に上昇させてしまったり、上昇しているリフトアームを不用意に下降させてしまうようなことを未然に回避することができる。
【0039】
従って、請求項9の発明によると、機体からの乗り降りなどおいて、優先昇降レバーを操作できない状態にロックすることで、連結した作業装置を不用意に昇降させることのない状態をもたらすことができ、実用上有効となる。
【0040】
〔請求項10に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0041】
請求項10に係る発明は、請求項9の発明において、前記ロック機構を、優先昇降レバーを任意の位置で固定可能な摩擦式に構成してある。
【0042】
上記構成によると、例えば、係止爪などを用いてロックする構造では、係止作動が円滑かつ確実に行えるように精度を下げるとガタが発生しやすくなり、逆に、ガタを少なくするために精度の高いものにすると係止作動を円滑に行い難いものとなるが、摩擦式であると特別に精度の高いものにしなくてもガタの発生なく確実に所期の機能を十分発揮させることができる。
【0043】
従って、請求項10の発明によると、請求項9に係る発明の上記効果をもたらすとともに、安価で機能の高いレバーロックを行うことができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
図1に、ロータリ耕耘仕様に構成された農用トラクタの後部側面が示されている。この農用トラクタは、トラクタ本機1の後部に、3点リンク機構2を介してロータリ耕耘装置3が連結され、運転座席12の下方に配備されたリフトシリンダ4によって上下揺動可能に油圧駆動されるリフトアーム5で前記3点リンク機構2が駆動昇降されるようになっている。
【0045】
図7の制御用油圧回路に示されるように、単動型に構成された前記リフトシリンダ4はポジション制御弁6よって作動制御されるものであり、このポジション制御弁6には、主スプール7、下降用バルブ8、リリーフ弁9、アンロードバルブ10、等が含まれており、リフトシリンダ4とポジション制御弁6とは落下速度調整弁11を介して接続されている。
【0046】
前記ポジション制御弁6は、トラクタ本機1における後部ミッションケース17の上部一側(右側)に装備されており、図3に示すように、主スプール7の突出部に連結した操作金具7aに天秤揺動可能に連結リンク21が枢支連結されるとともに、この連結リンク21の両端に、調節アーム軸22の内端に連設した偏心ピン22aと、フィードバックアーム軸23のの内端に連設した偏心ピン23aとがそれぞれ係止連結されている。
【0047】
図2に示すように、調節アーム軸22の外端部には調節アーム22bが固着されるとともに、フィードバックアーム軸23の外端部にはフィードバックアーム23bが固着されており、調節アーム22bが回動されて連結リンク21がフィードバックアーム軸23の偏心ピン23aとの係止点を中心にして揺動して、主スプール7が上昇側あるいは下降側にシフトされ、リフトシリンダ4を介してリフトアーム5が駆動上昇作動あるいは自重下降作動する。このリフトアーム5が作動すると、その作動がフィードバックリンク24およびフィードバックアーム23bを介してフィードバックアーム軸23の回動に変換され、主スプール7は、連結リンク21を介して逆方向にシフトされ、調節アーム22bの回動操作位置に対応した所定の回動位置までフィードバックアーム23bが回動されると主スプール7は中立に復帰し、昇降作動が停止する。つまり、調節アーム22bを任意に回動操作することで、リフトアーム5を調節アーム22bに対応した位置にまで昇降させるポジション制御機構が構成されている。
【0048】
前記調節アーム22bの前側近傍には、人為的に作業高さを設定するポジションレバー31と、自動耕深制御における目標耕深を設定するオートレバー32とが共有の支点x周りに前後方向に無段階に揺動調節可能、かつ、任意の操作位置で摩擦保持可能に配備されている。
【0049】
前記ポジション制御弁6の主スプール7はコイルバネ25によって突出方向、つまり、下降方向に付勢されており、これに伴って調節アーム22bは、図2において時計方向に回動付勢されて、前記ポジションレバー31に後方から接当している。従って、ポジションレバー31を後方(図中、反時計回り方向)に向けて揺動するに連れて、調節アーム22bは付勢力に抗して回動され、リフトアーム5は調節アーム22bに対応した位置まで上昇される。逆に、ポジションレバー31を前方(図中、時計回り方向)に向けて揺動するに連れて、回動付勢されている調節アーム22bはポジションレバー31に追従して回動し、リフトアーム5は調節アーム22bに対応した位置まで下降する。なお、ポジションレバー31を、最前方位置に操作した状態では、リフトアーム5の下降に伴うフィードバックにかかわらず、ポジション制御弁6は中立復帰されないようになっており、リフトアーム5が機械的な下限まで自重下降可能な状態、いわゆるフローティング状態がもたらされる。
【0050】
次に、オートレバー32によって設定した耕深にロータリ耕耘装置3を安定維持する自動耕深制御モードと、これに係る耕深設定構造および自動耕深制御機構について説明する。
【0051】
図5および図6に示すように、前記ロータリ耕耘装置3におけるロータ部3aを上方から覆う耕耘カバー33の後端には、耕耘中の土の飛散を防止するとともに耕耘跡を均平化する後カバー34が、支点y周りに上下揺動可能に装備されている。図6に示すように、耕耘カバー33の後部には支点z周りに回動可能にL形リンク35が装備され、このL形リンク35の一端と前記後カバー34とにわたって連動リンク36が架設されている。これによて、後カバー34の支点yまわりの上下揺動に伴ってL形リンク35が回動され、L形リンク35の他端に接続したセンサワイヤ37が操作されているるようになっている。
【0052】
前記センサワイヤ37はレリーズワイヤからなり、そのアウターワイヤ37aの後端部が耕耘カバー33に連結支持されるとともに、インナーワイヤ37bの後端が前記L形リンク35の他端に接続されている。そして、センサワイヤ37はトラクタ本機1側に延出されて、後部ミッションケース17の右側個所において、リンク構造の連係機構38を介して以下のように前記ポジション制御弁6の調節アーム22bに連動連結されている。
【0053】
図8に示すように、前記アウターワイヤ37aの前端部は、後部ミッションケース17に固定したワイヤ支持金具39の後端に回動可能に取り付けた支持ピン39aに連結支持されるとともに、インナーワイヤ37bの前端は、上部の支点a周りに前後揺動可能に配備された揺動リンク41の下部遊端に連結され、さらに、揺動リンク41の中間部位と前記調節アーム22bとが操作リンク42で連係されている。また、揺動リンク41はバネ45によって図中反時計回り方向に揺動付勢されて、インナーワイヤ37bが常に前方へ引き付勢されるようになっている。
【0054】
操作リンク42は、前半の平板部42aと後半のロッド部42bから構成されており、その平板部42aに形成した長孔43と、調節アーム22bに備えた係止ピン44とが前後方向の融通をもって係合連係されている。ここで、前記長孔43は、自動耕深制御用の主長孔部分43aの前端部に、前方に伸びる延長長孔部分43bを一段低い段違い状に連設した段違い長孔に構成されており、操作リンク42全体が揺動リンク41との連結点を中心に自重によって下方に揺動することで、通常は係止ピン44が上側の主長孔部分43aに位置するようになっている。
【0055】
前記揺動リンク41は、下部の支点b周りに前後揺動可能な支持リンク46の遊端に前記支点aを介して枢支連結されるとともに、この支持リンク46と前記オートレバー32とが連係ロッド47で連動連結されており、オートレバー32を前後に揺動操作すると、同方向に支持リンク46が揺動して、揺動リンク41の支点aが、支点bを中心とする円弧軌跡に沿って前後に移動調節されるようになっている。
【0056】
次に、上記構成による自動耕深制御作動、および、その耕深調節作動について説明する。なお、この自動耕深制御モードでは、基本的には、図9に示すように、ポジションレバー31を前方限界の最下降位置にまで操作しておく。
【0057】
ポジションレバー31を最下降位置に操作するとともに、オートレバー32を、自動耕深制御が利かない最前方位置に操作したフローティング状態では、ロータリ耕耘装置3は下降限界にまで下降し、後カバー34は圃場面に受け止められて大きく持ち上げられた状態にある。この時、後カバー34の持ち上げによってセンサワイヤ37のインナーワイヤ37bが後方に大きく引かれ、操作リンク42も後方に移動しているが、長孔43における主長孔部分43aの前端eは係止ピン44に接当干渉することがなく、調節アーム22bは下降側Dに回動している。
【0058】
この状態から、オートレバー32を後方(耕深の浅い側)に移動操作して或る耕深位置にセットすると、支持リンク46の後方揺動によって揺動リンク41の支点aが後方に移動し、操作リンク42が後方に移動される。操作リンク42が後方に移動されると、主長孔部分43aの前端で係止ピン44が後方に接当移動され、調節アーム22bは強制的に上昇側Uに回動され、リフトアーム5の駆動上昇作動してロータリ耕耘装置3が上昇される。なお、主長孔部分43aの前端eは、係止ピン44が少し係合するように浅く凹入されており、機体の上下動揺などによって操作リンク42が不用意に上方変位して係止ピン44が延長長孔部分43bに移行してしまうのを未然に回避している。
【0059】
ロータリ耕耘装置3が上昇してゆくと、相対的に後カバー34が下降揺動して、センサワイヤ37のインナーワイヤ37bが弛められる。これに伴って揺動リンク41がバネ45によって前方に揺動されとともに、操作リンク42も前方に移動する。操作リンク42が前方に移動すると、長孔43の前端に係止されている連係ピン44も前方に移動し、リフトアーム5の上昇に伴うフィードバックアーム23aの回動位置と調節アーム22bの位置とがバランスした状態に到ってポジション制御弁6が中立状態となり、ロータリ耕耘装置3の上昇作動が停止する。図9はポジション制御弁6が中立バランスした状態を示し、この時ロータリ耕耘装置3は、オートレバー32によって設定された目標耕深に維持されることになり、以降は、この状態を基準状態にして自動的に耕深制御が行われる。
【0060】
上記基準状態で耕耘作業を行っていて、例えば、トラクタ本機1の前輪が圃場の隆起に乗りあがったり、後輪が圃場の凹部に落ち込んだりして、機体が前上がり傾斜すると、ロータリ耕耘装置3が目標耕深よりも深くなりかかるが、これに伴って後カバー34が持ち上げ揺動され、センサワイヤ37のインナーワイヤ37bが引き操作されるとともに、揺動リンク41が後方に揺動されて操作リンク42が後方に移動する。
【0061】
ここで、前記基準状態では、調節アーム22bの連係ピン44が操作リンク42の長孔43前端に接当係合されて調節アーム22bが所定の目標耕深位置に保持されているので、上記のように耕深が深くなって操作リンク42が後方に移動すると、調節アーム22bは目標耕深位置を超えて上昇側Uに回動操作され、ロータリ耕耘装置3が駆動上昇される。そして、後カバー34が元の姿勢にまで復元すると上昇作動が停止して、元の耕深に戻される。
【0062】
また、上記基準状態で耕耘作業を行っていて、例えば、トラクタ本機1の後輪が圃場の隆起に乗りあがったり、前輪が圃場の凹部に落ち込んだりして、機体が前下がり傾斜すると、ロータリ耕耘装置3が目標耕深よりも浅くなりかかるが、これに伴って後カバー34が垂れ下がり揺動し、センサワイヤ37のインナーワイヤ37bが弛められる。
【0063】
インナーワイヤ37bが弛められると、揺動リンク41が前方に揺動されて操作リンク42も前方に移動する。これによって、長孔43の前端に接当係合されている連係ピン44も前方に移動可能となり、調節アーム22bが目標耕深位置より下降側Dに付勢回動し、ロータリ耕耘装置3が自重下降する。そして、後カバー34が元の姿勢にまで持ち上げ揺動されると、下降作動が停止して元の耕深に戻される。
【0064】
そして、オートレバー32を後方に調節移動するほど、長孔43における主長孔部分43aの前端eで係止ピン44を接当支持して調節アーム22bを支持するインナーワイヤ37bの位置が後方に位置することになり、後カバー34が振り下がった状態、つまり、浅い耕耘状態が設定されることになる。逆に、オートレバー32を前方に調節移動するほど、主長孔部分43aの前端eで係止ピン44を接当支持して調節アーム22bを支持するインナーワイヤ37bの位置が前方に位置することになり、後カバー34が持ち上がった状態、つまり、深い耕耘状態が設定されることになる。そして、、オートレバー32を最前方の「切」位置にセットすると、主長孔部分43aの前端eと係止ピン44との接当干渉が回避され、ロータリ耕耘装置3が大きく下降されて後カバー34が最大に持ち上げられても、主長孔部分43aの前端eで係止ピン44を接当支持して調節レバー22bを支持することが不能となり、自動耕深制御オフの状態がもたらされるのである。
【0065】
なお、3点リンク機構2からロータリ耕耘装置3を取り外して他の作業装置を取付ける場合、ロータリ耕耘装置3と共にセンサワイヤ37も取り外してしまうが、インナーワイヤ37bの端部を揺動リンク41から外すと、図10に示すように、揺動リンク41はバネ45によって反時計回りに振り上げ揺動される。この時、操作リンク42のロッド部42bに形成した屈曲部分fが揺動リンク41によって突き上げられ、、操作リンク42全体が揺動リンク41との連結点を中心に上方に揺動される。これによって、調節レバー22bの係止ピン44は相対的に操作リンク42に対してに下方移動して主長孔部分43aから延長長孔部分43bに移行し、調節レバー22bは長孔43による制約を受けることなく大きく前方(下降方向)に回動可能となる。
【0066】
従って、ロータリ耕耘装置3を取り外した状態では、図10に示すように、オートレバー32を浅い位置に操作したままであっても、長孔融通が前方側に大きく延長されることになるので、ポジションレバー31を最下降位置まで操作すると、調節レバー22bはポジションレバー31に追従して大きく下降方向に回動し、リフトアーム5は下降限度まで下降することができるのである。
【0067】
上記ポジション制御あるいは上記自動耕深制御を利用しての耕耘作業中において、一行程の耕耘走行が終了して畦際に到るとロータリ耕耘装置3を大きく持上げての機体方向転換を行い、方向転換を終えると再びもとの耕耘高さまでロータリ耕耘装置3を下降させるのであるが、この場合、ポジション制御あるいは自動耕深制御の耕深設定を変えることなくロータリ耕耘装置3を優先的に昇降操作することができるようになっており、以下にその構成について説明する。
【0068】
図11に示すように、前記ポジションレバー31の前側に、支点hを中心に前後に揺動可能な優先昇降レバー51が、ポジションレバー31よりも高く延出されて配備されている。優先昇降レバー51の基部からは下方に向けて延長レバー部51aが延出され、この延長レバー部51aの下端部に、優先昇降レバー51を前後の2位置に切換え保持するトグル機構52が配備されている。
【0069】
前記トグル機構52は、支点ブラケット53の支点i周りに前後揺動可能に取り付けられた切換えアーム54と、切換えアーム54の遊端側に設けた可動ピン55と支点ブラケット53の固定ピン56とに亘って張設された揺動付勢用のトグルバネ57とから構成されており、切換えアーム54が死点を越えて前方あるいは後方に揺動されると、トグルバネ57による揺動付勢方向が反転して切換えアーム54が前方あるいは後方に急速に揺動し、支点ブラケット53から切り起こし形成した前後のストッパ58に受け止め保持されるようになっている。
【0070】
そして、このトグル機構52における切換えアーム54の可動ピン55が、前記優先昇降レバー51における延長レバー部51aの下端に切欠き形成された凹溝59に係入されており、優先昇降レバー51がトグル機構52の付勢方向切換え作動によって前方操作位置と後方操作位置の2箇所に切換え可能、かつ、両操作位置に安定保持されるようになっている。
【0071】
また、前記優先昇降レバー51における延長レバー部51aの長手方向中間部位には支点j周りに揺動可能に操作リンク61が枢支連結され、この操作リンク61の前端部と、位置固定の支点k周りに前後揺動可能に配備された中間操作アーム62の下方延出部62aとが枢支連結され、優先昇降レバー51の少しの前後揺動変位が増幅されて中間操作アーム62の大きい前後揺動変位に変換されるようになっている。そして、この中間操作アーム62の上端部と前記ポジション制御弁6における調節アーム22bとが以下のように連動連結されている。
【0072】
つまり、中間操作アーム60の上端部には操作ロッド63がピン64を介して枢支連結されるとともに、調節アーム22bの遊端部に固着したピン65に金属板を屈曲形成してなる操作リンク66が枢支連結され、この操作リンク66に操作ロッド63が前後スライド可能に挿通連結されている。そして、操作ロッド63が操作リンク66に対して大きく後方にスライドすると、ロッド中間部に貫通装着された操作ピン67が操作リンク66に屈曲形成された受け部66aに前面から接当するようになっている。なお、前記中間操作アーム60は、バネ68によって後方へ向けて適度の揺動付勢力が付与されている。
【0073】
次に、上記優先昇降レバー51の使用形態について説明する。通常の作業中は、図11に示すように、優先昇降レバー51は前方の下降操作位置に保持されており、この場合、中間操作アーム62が前方に揺動して操作ロッド63が前方に変位しているので、操作ロッド63と操作リンク66とは大きくスライド可能な状態にあり、調節アーム22bはポジション制御あるいは自動耕深制御によって自由に操作することができる状態にある。因みに、図11は、ポジションレバー31によって調節アーム22bの位置を設定しているポジション制御状態が示されている。
【0074】
一行程の作業走行が終了して畦際に至ると、機体方向転換に先立ってロータリ耕耘装置3を地上に大きく持上げる必要があり、その際、図12に示すように、優先昇降レバー51を後方の上昇操作位置に切換え保持する。このように優先昇降レバー51を上昇操作位置に切換えると、中間操作アーム62が後方に揺動して操作ロッド63がスライド融通以上に後方に大きく変位されることになり、操作ロッド63の操作ピン67が操作リンク66の受け部66aに前面から片当たりした状態で更に後方に変位する。これによって、操作リンクが後方に押されて調節アーム22bが上昇側の上限にまで強制揺動され、ロータリ耕耘装置3が上限まで上昇される。
【0075】
この場合、優先昇降レバー51はポジションレバー31の前方で高く配備されているので、ステアリングハンドル13から右手を放して少し後方に動かすだけで優先昇降レバー51を操作することができ、しかも、後方に少し操作するだけで、トグル機構52を利用して上昇操作位置に速やかに切換えることができ、す早くステアリングハンドル13を握りなおして機体操縦に復帰することができる。また、この上昇操作位置への操作はバネ68によるアシストが利くので、軽快かつ、迅速に上昇操作を行うことができる。なお、ピン64に対して操作ロッド63を前後に位置調節して、ピン64に対する操作ピン67の前後位置を調節すれば、優先上昇された際の上限高さを微調節することができる。
【0076】
畦際での機体方向転換が終了すると、再び優先昇降レバー51を前方操作位置に切換え保持すると、操作リンク66によって強制的に上昇限度位置まで操作されていた調節アーム22bはポジションレバー31に接当する位置まで付勢揺動し、ロータリ耕耘装置3は元の作業高さまで下降する(図11参照)。
【0077】
なお、先に説明したように、調節アーム22bは下降方向、つまり、図11において時計回りに揺動付勢されて、中間操作アーム62の後方への揺動に抵抗となるが、バネ68のアシスト付勢力でこの抵抗が相殺され、優先昇降レバー51の後方への上昇用操作と前方への下降用操作のそれぞれを略同等の操作力で行うことができるようになっている。
【0078】
また、前記優先昇降レバー51が不用意に操作されないように固定しておく際に利用するロック機構70がフェンダ71に装着されている。このロック機構70は、優先昇降レバー51を上記した下降操作位置あるいは上限操作位置にいずれの位置にでも任意に固定することができるよう構成されたものであり、その詳細な構成が図 に示されている。つまり、このロック機構70は、フェンダ71に固着された上向きU形の固定金具72と、固定金具72に前後揺動可能に挿通されてレバーガイド73の右横から突設されたロックレバー74と、ロックレバー74に連設されたレバー軸74aに左右移動可能に支持された下向きU形の可動金具75、等からなり、固定金具72における機体内方がわの側辺72aと可動金具75の機体外方がわの側辺75aとの間に優先昇降レバー51の前後方向に向かうレバー部分を挿通し、可動金具75を機体内方(図14では左方)にスライドさせて優先昇降レバー51を左右から挟持して摩擦固定するようになっている。なお、可動金具75における側辺75aの挟持面にはゴム板などの摩擦板76が配備されている。
【0079】
そして、固定金具72にはカム板77が設けられるとともに、このカム板77の端面に形成されたテーパカム77aに対向する操作ピン78がレバー軸74aに貫通止着されている。そして、ロックレバー74を後方に倒しこみ揺動しておくと、操作ピン78がテーパカム77aに作用しない位相にあり、可動金具75は左右スライドに制約を受けない自由状態にあり、優先昇降レバー51におけるレバー部分が固定金具72と可動金具75とで挟持されないロック解除状態となる。また、ロックレバー74を前方に大きく倒しこみ揺動操作すると、操作ピン78がテーパカム77aに作用することで、操作ピン78がレバー軸74aと一体に機体内方に相対スライド移動し、操作ピン78に押されて可動金具75が機体内方に移動することで、優先昇降レバー51におけるレバー部分が固定金具72と可動金具75とで挟持固定されたロック状態がもたらされる。
【0080】
なお、前記レバー軸74aには、固定金具72と操作ピン78に亘って係止されたねじりバネ79が挿嵌されており、ロックレバー74をロック解除位置に揺動付勢して、ロック解除状態におけるロックレバー74のがたつきを防止している。
【0081】
上記実施形態では、ポジション制御モードでの作業中に優先昇降レバー51を操作してリフトアーム5を昇降させる場合を示しいるが、オートレバー32を用いて作業高さを設定しての作業においても、優先昇降レバー51を上記と同様に作動させて、ロータリ耕耘装置3を所定の耕深高さと所定の上限位置との間で速やかに昇降させることができるものである。
【0082】
〔別実施形態〕
(1)優先昇降レバー51を下降操作位置および上昇操作位置のみならず、その中間の高さ位置に切換え保持可能に構成して実施することもできる。
【0083】
(2)優先昇降レバー51をステアリングハンドル13の近くに配備するとともに、この優先昇降レバー51とレバー本体のない前記延長レバー部51aとをワイヤ連係した形態で実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】トラクタ後部の側面図
【図2】制御弁操作部の側面図
【図3】ポジション制御弁およびそのの操作部を示す正面図
【図4】連係機構の一部を示す平面図
【図5】ロータリ耕耘装置の側面図
【図6】後カバーとセンサワイヤとの連係構造を示す平面図
【図7】昇降用の油圧回路図
【図8】ポジション制御モードにおける制御弁操作部の側面図
【図9】自動耕深制御モードにおける制御弁操作部の側面図
【図10】センサワイヤ連結解除状態ににおける制御弁操作部の側面図
【図11】優先昇降レバーを下降操作位置に切換えた状態を示す側面図
【図12】優先昇降レバーを最上昇操作位置に切換えた状態を示す側面図
【図13】優先昇降レバーの連係部およびロック機構を示す平面図
【図14】(イ)ロック解除状態のロック機構を示す背面図
(ロ)ロック状態のロック機構を示す背面図
【符号の説明】
4        リフトシリンダ
5        リフトアーム
6        ポジション制御弁
12       運転座席
31       ポジションレバー
51       優先昇降レバー
52       トグル機構
70       ロック機構
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【住所又は居所】大阪府大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号
【出願日】 平成14年10月4日(2002.10.4)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎

【公開番号】 特開2004−121142(P2004−121142A)
【公開日】 平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願番号】 特願2002−292583(P2002−292583)