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【発明の名称】 ハロゲンフリーな難燃性電磁波吸収体
【発明者】 【氏名】遠藤 博司
【住所又は居所】愛知県名古屋市南区大同町ニ丁目30番地 大同特殊鋼株式会社技術開発研究所内

【要約】 【課題】アクリルゴムのマトリクス中に軟磁性金属の粉末を分散させてなる、ハロゲンフリーで耐熱性が高い電磁波吸収体において、高い難燃性を、加工性の低下を伴うことなく実現した製品を提供する。

【解決手段】難燃剤ないし難燃助剤として、メラミンおよびメラミン誘導体の一方または両方(C)、赤リンおよびポリリン酸アンモニウムの一方または両方(D)、ならびに、ペンタエリスリトール、デキストリンおよびポリ酢酸ビニルの1種または2種以上(E)を、C単独、C+Dの併用またはC+D+Eの併用の形で添加し、成形してなる電磁波吸収体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アクリルゴム(A)のマトリクス中に、軟磁性材料の粉末(B)を分散させてなる電磁波吸収体において、難燃剤ないし難燃助剤として、メラミンおよびメラミン誘導体の一方または両方(C)、赤リンおよびポリリン酸アンモニウムの一方または両方(D)、ならびにペンタエリスリトール、デキストリンおよびポリ酢酸ビニルの1種または2種以上(E)を、C単独、C+Dの併用またはC+D+Eの併用の形で添加したことを特徴とするハロゲンフリーな難燃性電磁波吸収体。
【請求項2】 アクリルゴム(A)が、アルキルアクリレート重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体またはエチレン−酢酸ビニル−アルキルアクリレート相互重合体である請求項1の難燃性電磁波吸収体。
【請求項3】 軟磁性材料の粉末(B)が、軟磁性金属の扁平な粉末である請求項1の難燃性電磁波吸収体。
【請求項4】 メラミン誘導体(C)が、メラム、メレム、メロン、硫酸メラミン、メラミンシアヌレートまたはポリリン酸メラミンである請求項1の難燃性電磁波吸収体。
【請求項5】 下記の割合で各成分を配合してなる請求項1の難燃性電磁波吸収体。アクリルゴム(A):100重量部、軟磁性材料の粉末(B):700〜1700重量部、メラミンおよびメラミン誘導体の一方または両方(C):(B)100重量部に対して3.5重量部以上、ただし、アクリルゴム(A)の容積は、A+B+Cの総容積に対して27%以上とする。
【請求項6】 下記の割合で各成分を配合してなる請求項1の難燃性電磁波吸収体。アクリルゴム(A):100重量部、軟磁性材料の粉末(B):700〜1700重量部、メラミンおよびメラミン誘導体の一方または両方(C):Bの100重量部に対して3.0重量部以上、赤リンおよびポリリン酸アンモニウムの一方または両方(D):Cの100重量部に対して20重量部以上、ただし、アクリルゴム(A)の容積は、A+B+C+Dの総容積に対して27%以上とする。
【請求項7】 下記の割合で各成分を配合してなる請求項1の難燃性電磁波吸収体。アクリルゴム(A):100重量部、軟磁性材料の粉末(B):700〜1700重量部、メラミンおよびメラミン誘導体の一方または両方(C):Bの100重量部に対して3.0重量部以上、赤リンおよびポリリン酸アンモニウムの一方または両方(D):Cの100重量部に対して20重量部以上、ペンタエリスリトール、デキストリンおよびポリ酢酸ビニルの1種または2種以上(E):Dの100重量部に対 して50〜100重量部、ただし、アクリルゴム(A)の容積は、A+B+C+D+Eの総容積に対して27%以上とする。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハロゲンフリーであって、焼却処理をしたときにダイオキシンを発生するおそれがなく、かつ、必要に応じた難燃性を備えている電磁波吸収体に関する。
【0002】
【従来の技術】各種電子機器類において、外部から来るノイズ電磁波の干渉を防いだり、外部への電磁波の放射を抑制したりする必要があるため、種々の電磁波シールドが行なわれている。その中で、簡易であり普遍性がある手段として好まれているものは、軟磁性金属の粉末をゴムまたはプラスチックのマトリクスの中に分散させた複合材料を、シートそのほか任意の形状に成形してなる電磁波吸収体を使用することである。軟磁性金属の粉末としては、センダスト、パーマロイ、Fe−Cr合金、Fe−Cr−Al合金などのアトマイズ粉末が使用され、マトリクス材料としては塩素化ポリエチレンゴムが、成形性のよさと、それ自体がもつある程度の難燃性を買われて、好んで用いられている。
【0003】ところが、塩素化ポリエチレンを材料とする製品は、廃棄物となったときに焼却処理すると、有害なダイオキシンを発生する原因となる。環境への影響を重視すると、この種のハロゲン含有有機物質は、近い将来、使用が許されされなくなるか、少なくとも使用できる局面にかなり制約が加えられると考えられる。
【0004】従って、電磁波吸収体においても、ハロゲンを含有しないマトリクスを使用しなければならない。ハロゲンを含有しないゴム状材料としては、シリコーンゴムがあるものの、金属粉末と混合したときの成形性が低く、シリコーンゴムに対して多量の粉末を充填することはできないから、所望の特性をもった電磁波吸収体を得ることが困難である。
【0005】そのほかにハロゲンを含有しないゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPDM)やアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)などがあるが、これらは、難燃性をもたせようとしたとき、難燃化剤としてはハロゲン化合物を使用せざるを得ず、それ以外の難燃化剤で難燃化することは困難である。
【0006】この種の電磁波吸収体に対するもうひとつの要求は、耐熱性である。最近の電子回路の高集積化に伴って、電子装置の発熱量が増大し、温度が上昇する傾向がある。そのため必然的に、電磁波吸収体もまた、耐熱性を向上させる努力がなされている。ITSなどの電磁波利用技術が自動車に適用される見通しであり、電気自動車の普及をも考え合わせると、電磁波吸収体が使用される環境は、今後いっそう高温になることが避けられない。耐熱性の要求に対して、EPDMやNBRは、応えることができない。
【0007】発明者は、ハロゲンフリーであり、ある程度の耐熱性も有する、難燃性の電磁波吸収体を開発して、すでに開示した(特開2001−308583)。そのハロゲンフリー電磁波吸収体は、軟磁性金属の粉末をゴムのマトリクス中に分散させてなる電磁波吸収体において、マトリクスとなるゴムとして、アクリルゴムを使用したことを特徴とするものである。この電磁波吸収体において難燃性を備えたものは、難燃剤として、水酸化アルミニウムおよび(または)水酸化マグネシウムを50〜500phr添加したことを特徴とするものである。
【0008】水酸化アルミニウムも水酸化マグネシウムも、その難燃化作用は、火焔に接したときに脱水反応を起こし、それが吸熱反応であることに基づき温度が低下する現象を利用するものである。このため、十分な難燃効果を得ようとすると、難燃剤を多量に添加しなければならず、そのことが加工性の低下を招くという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、電磁波吸収体に対して現在要求されており、かつ、その要求は近い将来ますます高まると考えられることに対応して、ハロゲンフリーであって焼却処理に問題がなく、しかも耐熱性が高く、かつそれとともに、必要に応じた難燃性を、加工性の実質的な低下を伴うことなく達成した製品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の、ハロゲンフリーであって耐熱性が高く、加工性を損なうことなく難燃性をもたせた電磁波吸収体は、アクリルゴム(A)のマトリクス中に、軟磁性材料の粉末(B)を分散させてなる電磁波吸収体において、難燃剤ないし難燃助剤として、メラミンおよびメラミン誘導体の一方または両方(C)、赤リンおよびポリリン酸アンモニウムの一方または両方(D)、ならびにペンタエリスリトール、デキストリンおよびポリ酢酸ビニルの1種または2種以上(E)を、C単独、C+Dの併用またはC+D+Eの併用の形で添加したことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施形態】本発明の、ハロゲンフリーな難燃性電磁波吸収体を構成する各成分の配合割合は、難燃剤ないし難燃助剤として前記(C)成分すなわちメラミンおよびメラミン誘導体の一方または両方だけを使用する場合は、アクリルゴムの量を基準として、下記の割合で各成分を配合することが好ましい。アクリルゴム(A):100重量部、軟磁性材料の粉末(B):700〜1700重量部、メラミンおよびメラミン誘導体の一方または両方(C):(B)100重量部に対して3.5重量部以上、ただし、アクリルゴム(A)の容積は、A+B+Cの総容積に対して27%以上とする。
【0012】難燃剤ないし難燃助剤として前記(C)成分に加えて(D)成分すなわち赤リンおよびポリリン酸アンモニウムの一方または両方を使用する場合は、やはりアクリルゴムの量を基準として、下記の割合で各成分を配合することが好ましい。アクリルゴム(A):100重量部、軟磁性材料の粉末(B):700〜1700重量部、メラミンおよびメラミン誘導体の一方または両方(C):Bの100重量部に対して3.0重量部以上、赤リンおよびポリリン酸アンモニウムの一方または両方(D):Cの100重量部に対して20重量部以上、ただし、アクリルゴム(A)の容積は、A+B+C+Dの総容積に対して27%以上とする。
【0013】難燃剤ないし難燃助剤として、前記(C)成分および(D)成分に加えてさらに(E)成分すなわちペンタエリスリトール、デキストリンおよびポリ酢酸ビニルの1種または2種以上を使用する場合は、これもアクリルゴムの量を基準として、下記の割合で各成分を配合することが好ましい。アクリルゴム(A)、100重量部、軟磁性材料の粉末(B):700〜1700重量部、メラミンおよびメラミン誘導体の一方または両方(C):Bの100重量部に対して3.0重量部以上、赤リンおよびポリリン酸アンモニウムの一方または両方(D):Cの100重量部に対して20重量部以上、ペンタエリスリトール、デキストリンおよびポリ酢酸ビニルの1種または2種以上(E):Dの100重量部に対して50〜100重量部、ただし、アクリルゴム(A)の容積は、A+B+C+D+Eの総容積に対して27%以上とする。
【0014】上記各態様の配合割合において、軟磁性材料の粉末(B)の配合量の下限700重量部は、電磁波吸収性能を得る上で通常必要な最小の粉末量であり、上限1700重量部は、所望の形状に成形する上で添加可能な最大の粉末量である。各難燃剤ないし難燃助剤の量は、後記する実施例で行なうUL−94垂直難燃性試験において、少なくともV1の難燃性を達成するために必要な添加量である。組成物全体の総容積中、アクリルゴム(A)の容積が27%以上を占めることは、良好な加工性を確保するための条件である。
【0015】アクリルゴム(A)とは、具体的には、アルキルアクリレート重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体またはエチレン−酢酸ビニル−アルキルアクリレート相互重合体である。これらのゴムは、加硫しても、しなくても使用できる。加硫する場合は、適宜の加硫剤や、加硫促進剤などの助剤を加える。上記の配合条件を満たす範囲内であれば、他のフィラーとして、炭酸カルシウム、タルク、クレー、ホワイトカーボン、カーボンブラックなどを添加してもよい。
【0016】メラミン誘導体(C)としては、メラム、メレム、メロン、硫酸メラミン、メラミンシアヌレートまたはポリリン酸メラミンを挙げることができる。
【0017】軟磁性材料の粉末(B)としては、軟磁性金属の扁平な粉末が好適であって、それにより、電磁波吸収体としての性能が高く得られる。扁平な度合いは、下記の式で定義される「扁平度」にして、10以上あることが好ましい。
扁平度=平均径/平均厚さただし、平均径=(長径+短径)/2平均厚さ=(最大厚さ+最小厚さ)/2このような扁平粉は、溶湯アトマイズ法により製造した金属粉末を、アトライタまたはボールミルで処理して、扁平化することにより得られる。
【0018】本発明で使用する難燃化剤ないし難燃助剤の示す難燃効果の機構は、それぞれつぎのとおりであると考えられる。
メラミンおよびその誘導体:熱により分解して、NOなどの窒素系ガスを放出する。それが酸素濃度を低くすることで燃焼が防止される。
赤リンおよびポリリン酸アンモニウム:ポリマー物質の表面に緻密な炭化層を形成することにより、表面を不燃化させる。
ペンタエリスリトール、デキストリンおよびポリ酢酸ビニル:発泡剤の存在下にリン系の物質と反応して発泡炭化層を生成し、これが断熱作用をして内部温度の上昇を防ぎ、燃焼の継続を防ぐ。ここでは、メラミンまたはその誘導体が発泡剤の作用をする。
【0019】本発明のハロゲンフリーな難燃性電磁波吸収体は、その意図するところの、ハロゲンを含有しないことと、必要により所望の難燃性を実現することとに対して不利益でない限り、その他の添加剤、たとえば後記の実施例で挙げる、耐久性を高めるための老化防止剤や、加工性を良好にするための滑剤などを、任意に加えることができる。
【0020】
【実施例】下記の材料を用意した。
軟磁性金属粉末:Fe−13Cr合金の溶湯を水噴霧し、得られた粉末をアトラ イターで処理して、厚さ1〜2μm、粒径15〜30μmの扁平粉としたもの (密度7.78g/cm3
アクリルゴム:「べーマックG」(三井デュポンケミカルのエチレン−メチルメ タクリレート共重合体ゴム 密度1.03g/cm3
難燃剤:メラミン(密度1.57g/cm3
硫酸メラミン「アピノン901」(三和ケミカル製 密度1.77g/cm3) ポリリン酸メラミン「MPP−A」(三和ケミカル製 密度1.77g/cm3) 水酸化マグネシウム「キスマ5」(比較例)(協和化学工業製 密度2. 36g/cm3
難燃助剤:赤リン(密度2.2g/cm3
ポリリン酸アンモニウム(密度1.89g/cm3
ペンタエリスリトール(密度1.34g/cm3
老化防止剤:「ナウガード445」(白石カルシウム製)
滑 剤:ステアリン酸【0021】[実施例I−1〜5および比較例I−1〜4]表1に示す処方(重量部)で配合し、ロールを用いて混練して、混練物をカレンダーロールで厚さ1.0mmの電磁波吸収シートとした。得られたシートを、UL−94垂直難燃性試験により評価した。その結果を、表1に示す。評価は、「V0」が最も難燃性が高く、「V1」がそれに次ぐ。シート化に際して、別段問題のなかったものを「シート化の可否」の欄に「○」で、クラックが発生したり、シート化が困難であったりしたものは「×」で、あわせて表1に示した。
【0022】実施例I−4の電磁波吸収シートについて、周波数10MHz〜10GHzの領域において、比透磁率の実部(μ’)および虚部(μ”)を測定し、電磁波吸収性能を直接示す、反射減衰を測定した。比透磁率を図1のグラフに、反射減衰を図2のグラフに、それぞれ示す。図2にみるように、この電磁波吸収シートは2.4GHz付近に、吸収のピークを有する。
【0023】[実施例II−1〜4および比較例II−1〜3]表2に示す処方(重量部)で配合し、実施例Iと同様にして、厚さ1.0mmの電磁波吸収シートとした。得られたシートを、UL−94垂直難燃性試験により評価した。その結果を、表2に示す。「シート化の可否」も、あわせて表2に〜示した。
【0024】[実施例3および比較例3]表3に示す処方(重量部)で配合し、実施例1と同様にして、厚さ1.0mmの電磁波吸収シートとした。得られたシートを、UL−94垂直難燃性試験により評価した。その結果を、表3に示す。「シート化の可否」も、引張強度とともに、表3にあわせて示した。
【0025】表 1
【0026】表 2
【0027】表 3
【0028】
【発明の効果】本発明のハロゲンフリーな難燃性電磁波吸収体は、マトリクス材料にハロゲンを含有しないアクリルゴムを使用したから、使用済みとなったものを焼却処理しても、ダイオキシン発生の原因にならず、アクリルゴムのもつ高い耐熱性を利用して、広い温度範囲(連続使用可能な温度が140〜160℃)にわたって使用可能である。このため、本発明の電磁波吸収体は、電子機器の小型化・高密度化の要請に応えることができる。
【0029】難燃剤、および必要によりさらに難燃助剤を添加した電磁波吸収体は、UL垂直燃焼試験法の少なくともV1から、さらにはV0規格を満たす高い難燃性を、電磁波吸収性能と両立させたものであり、しかも多量の難燃剤を添加することが引き起こす加工性の低下も、実質上避けることができる。
【出願人】 【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
【住所又は居所】愛知県名古屋市中区錦一丁目11番18号
【出願日】 平成14年2月19日(2002.2.19)
【代理人】 【識別番号】100070161
【弁理士】
【氏名又は名称】須賀 総夫
【公開番号】 特開2003−243879(P2003−243879A)
【公開日】 平成15年8月29日(2003.8.29)
【出願番号】 特願2002−40926(P2002−40926)