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【発明の名称】 無電解めっき用接着剤、無電解めっき用接着剤層およびプリント配線板
【発明者】 【氏名】王 東冬
【住所又は居所】岐阜県揖斐郡揖斐川町北方1−1 イビデン株式会社大垣北工場内

【氏名】浅井 元雄
【住所又は居所】岐阜県揖斐郡揖斐川町北方1−1 イビデン株式会社大垣北工場内

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 酸あるいは酸化剤に対して可溶性である硬化処理済みの耐熱性樹脂粉末を、硬化処理が施された場合には酸あるいは酸化剤に対して難溶性となる未硬化の耐熱性樹脂マトリックス中に分散してなる無電解めっき用接着剤において、前記耐熱性樹脂マトリックスは、未硬化の感光性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物からなることを特徴とする無電解めっき用接着剤。
【請求項2】 上記耐熱性樹脂マトリックスは、未硬化の感光性樹脂と熱可塑性樹脂とを溶媒中に溶解してなる請求項1に記載の無電解めっき用接着剤。
【請求項3】請求項1または2に記載の無電解めっき用接着剤に硬化処理を施すことによって基体上に形成された樹脂複合体からなる無電解めっき用接着剤層。
【請求項4】 上記樹脂複合体は、感光性樹脂と熱可塑性樹脂とが擬似均一相溶構造、共連続構造および球状ドメイン構造のいずれかを形成してなる請求項3に記載の無電解めっき用接着剤層。
【請求項5】 請求項3または4に記載の無電解めっき用接着剤層と、この無電解めっき用接着剤層の表面に形成された粗化面と、その粗化面上に形成された導体回路とを含んで構成されるプリント配線板。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、無電解めっき用接着剤、無電解めっき用接着剤層およびそれを用いたプリント配線板に関し、特に、より高密度でパターン精度の高い配線においてもピール強度に優れるプリント配線板を安定して提供できる無電解めっき用接着剤技術についての提案である。
【0002】
【従来の技術】近年、プリント基板やLSIを実装する配線板は、電子工業の進歩にともない電子機器の小型化あるいは高速化に対応したファインパターンによる高密度化および高い信頼性のものが求められている。
【0003】このために、最近では、配線板に導体を形成する方法として、接着剤を基板表面に塗布して接着剤層を形成し、この接着剤層の表面を粗化した後、無電解めっきを施して導体を形成するアディティブ法が注目を浴びている。この方法によれば、レジスト形成後に無電解めっきを施して導体を形成するため、エッチングによりパターン形成を行うエッチドフォイル方法(サブトラクティブ法)よりも、高密度でパターン精度の高い配線を低コストで作製し得る特徴がある。
【0004】このようなアディティブ法において、導体と接着剤層との密着性(以下、「ピール強度」という。)を改善する手段として、従来、接着剤層の導体形成面側に、化学的エッチングによる微細な凹凸を設ける方法が知られている。この方法によれば、接着剤層表面に設けた凹凸に銅めっき等のめっき金属が充填されるので、その凹凸によるアンカー効果により、ピール強度を改善することができる。このようなアンカー効果によるピール強度の改善は、一般に、破壊面積を大きくすること、導体金属,あるいは接着剤を構成する耐熱性樹脂マトリックスの強度を大きくすることによってなされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、より高密度でパターン精度の高い配線が要求される最近のアディティブ型プリント配線板では、レジストの微小パターンを精度良く形成するために、接着剤層の表面粗化によって形成されるアンカーを小さくすることが必要となる。そのため、上記従来技術において、アンカーを小さくすると、破壊面積が小さくなる結果、ピール強度が著しく低下するという問題を生じた。
【0006】この問題を解消するには、導体金属,あるいは接着剤を構成する耐熱性樹脂マトリックスの強度を大きくする方法がある。しかるに、発明者の実験によれば、導体金属として銅を用い、接着剤を構成する耐熱性樹脂マトリックスとして熱硬化性樹脂や感光性樹脂を用いる従来のプリント配線板では、導体を形成する無電解めっき膜の剥離は、耐熱性樹脂マトリックスの破壊によって生じることが判った。すなわち、上記ピール強度の低下の原因が、接着剤を構成する耐熱性樹脂マトリックスの強度不足にあることに気づいたのである。
【0007】そこで、従来技術が抱えている上記問題を解消するため、この発明の主たる目的は、耐熱性、電気絶縁性および化学的安定性を低下させることなく、接着剤を構成する耐熱性樹脂マトリックスを強靱化することにあり、この発明の他の目的は、無電解めっき膜との密着性に優れる無電解めっき用接着剤層を提供することにあり、この発明のさらに他の目的は、より高密度でパターン精度の高い配線においてもピール強度に優れるプリント配線板を安定して提供できる技術を確立することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記目的の実現に向け、接着剤を構成する耐熱性樹脂マトリックスの強度改善に関し鋭意研究を行った結果、接着剤を構成する耐熱性樹脂マトリックスとして、未硬化の感光性樹脂と熱可塑性樹脂との混合樹脂を用い、さらにこれを硬化してなる樹脂複合体を接着剤層として用いることにより、粗化処理によって形成されるアンカー深さが小さくても、導体金属との接着強度に優れるプリント配線板を提供できることを見出し、この発明に想到した。
【0009】すなわち、(1) この発明の無電解めっき用接着剤は、酸あるいは酸化剤に対して可溶性である硬化処理済みの耐熱性樹脂粉末を、硬化処理が施された場合には酸あるいは酸化物に対して難溶性となる未硬化の耐熱性樹脂マトリックス中に分散してなる無電解めっき用接着剤において、前記耐熱性樹脂マトリックスは、未硬化の感光性樹脂と熱可塑性樹脂との相溶性を調整してなる混合物から構成されており、前記混合樹脂は、相溶状態もしくは非相溶状態にあり、溶媒中に溶解してなることが好ましい。この混合樹脂が相溶状態にある時は、これを硬化する際に、相分離速度と硬化速度を調整することにより、後述する疑似均一相溶構造、共連続構造、球状ドメイン構造を得ることができる。また、この混合樹脂が非相溶状態にある時は、これをそのまま硬化させることにより、球状ドメイン構造を得ることができる。
(2)この発明の無電解めっき用接着剤層は、上記(1)に記載の無電解めっき用接着剤に硬化処理を施すことによって基体上に形成された樹脂複合体から構成され、その樹脂複合体は、感光性樹脂と熱可塑性樹脂とが擬似均一相溶構造、共連続構造および球状ドメイン構造のいずれかを形成していることが好ましい。基体としては、導体回路が形成されたプリント配線板を含む基板や、繊維状、棒状、球状をはじめとして各種形状のものを使用することができる。
(3)この発明のプリント配線板は、基板上に上記(2)に記載の無電解めっき用接着剤層を形成し、その無電解めっき用接着剤層の表面(導体形成面)に粗化面を形成し、その粗化面上に導体回路を形成してなるプリント配線板である。
【0010】
【作用】(1) この発明の無電解めっき用接着剤の特徴は、その接着剤マトリックスとして、未硬化の感光性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物から構成されている点にある。これにより、耐熱性、電気絶縁性および化学的安定性を低下させることなく、上記接着剤の樹脂マトリックスを強靱化することができる。上記無電解めっき用接着剤は、未硬化の感光性樹脂と熱可塑性樹脂とが相溶状態で均質に混合されていることが望ましい。
【0011】ここで、無電解めっき用接着剤の耐熱性樹脂マトリックスとして、上述したような相溶状態の混合樹脂を用いる理由は、硬化によって得られる感光性樹脂と熱可塑性樹脂とからなる樹脂複合体の樹脂構造を、その硬化条件によって容易に制御できるからである。
【0012】未硬化の感光性樹脂と熱可塑性樹脂とを、相溶状態で均質に混合分散させるための方法としては、溶媒中に樹脂を溶解させる方法、加熱により熱可塑性樹脂を溶融させたのち、感光性樹脂を混合する方法などがある。なかでも、溶媒中に樹脂を溶解させる方法が好適に用いられる。この理由は、作業性がよく、低温で樹脂を相溶させることができるからである。上記溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ノルマルメチルピロリンドン(NMP)、塩化メチレン等がある。
【0013】この発明の接着剤において、耐熱性樹脂マトリックスは、未硬化の感光性樹脂と熱可塑性樹脂との配合比が、熱可塑性樹脂の含有量で15〜50wt%であることが望ましい。この理由は、熱可塑性樹脂の含有量が15wt%未満では、接着剤層の靱性を向上させることができず、一方、50wt%を超えると、塗布することが困難で、平滑で均一な接着剤層を形成することが困難になるためである。
【0014】この発明の無電解めっき用接着剤の粘度は、25℃の測定で、0.5 〜10Pa・sであることが望ましい。この理由は、10Pa・sを超えると、レベリング性が低下して平滑な接着面を得ることができず、一方、0.5 Pa・s未満では、耐熱性樹脂粉末の沈降を招き、十分な粗化面を得ることができず、無電解めっき膜との密着性が低下してしまうからである。
【0015】(2)この発明の無電解めっき用接着剤層の特徴は、その樹脂マトリックスとして、感光性樹脂と熱可塑性樹脂との樹脂複合体を用いる点にある。これにより、無電解めっき膜との密着性に優れる無電解めっき用接着剤層を提供することができる。
【0016】ここで、接着剤層の耐熱性樹脂マトリックスとして、感光性樹脂と熱可塑性樹脂の樹脂複合体を用いる理由は、樹脂複合体にすると、感光性樹脂が示す特有の物性と、熱可塑性樹脂特有の靱性をともに発現することが可能となる結果、耐熱性、弾性率、電気絶縁性および化学的安定性を低下させることなく、樹脂マトリックス全体の強靱化を図ることができるからである。
【0017】この無電解めっき用接着剤層において、上記樹脂複合体は、疑似均一相溶構造,共連続構造もしくは球状ドメイン構造を形成していることが望ましい。
ここに、(a).疑似均一相溶構造とは、いわゆるLCST型(Low Critical Solution Temperature )の相図を示す熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂と、熱可塑性樹脂との樹脂複合体において、構成樹脂粒子の粒子径が透過型電子顕微鏡観察による測定値で0.1 μm以下であり、動的粘弾性測定による樹脂のガラス転移温度ピーク値が1つである状態を意味する。この状態は、樹脂の理想的な混合状態に近いものであり、発明者が、独自に考え出した新しい概念である。ここに、この発明における動的粘弾性測定の条件は、振動周波数6.28 rad/sec 、昇温速度5℃/分である。すなわち、この疑似均一相溶構造は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂あるいはアクリル樹脂などの感光性樹脂特有の物性を維持しつつ、ポリエーテルスルホン(PES)などの熱可塑性樹脂特有の物性を越えた導入効果を示す、より均質な構造であり、熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂と、熱可塑性樹脂との相互作用が極めて強いものである。かかる樹脂複合体の構造は、それの破面を、熱可塑性樹脂を溶解させる溶媒を用いてエッチングしても、その表面状態はエッチング前とほとんど変化が無く均質であることから判る。このような疑似均一相溶構造を形成する樹脂複合体は、それの破壊強度と引張り強度はいずれも、それぞれの構成樹脂単独の場合よりも高い値を示す。
【0018】このような樹脂複合体の構造による効果は、前記複合体における熱可塑性樹脂(例えば、PES)の含有量が固形分で15〜50wt%である場合に特に顕著となる。この理由は、熱可塑性樹脂の含有量が15wt%未満では、樹脂成分の網目に絡み合う熱可塑性樹脂分子が少ないため強靱化の効果が十分に発揮されず、一方、熱可塑性樹脂の含有量が50wt%を超えると、架橋点の減少によって熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂と熱可塑性樹脂間との相互作用が小さくなるからである。
【0019】このような疑似均一相溶構造は、未硬化の熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂と、熱可塑性樹脂を必要に応じて溶剤に溶解して均一に混合し、その後、硬化速度を速くすること、および/または相分離速度を遅くすることにより、構成樹脂粒子の粒子径を透過型電子顕微鏡観察による測定値で0.1 μm以下にすることにより、形成される。
【0020】具体的には、第1の方法として、感光性樹脂を用いる場合は、感光性樹脂の光硬化因子,例えば開始剤や増感剤,感光性モノマー,露光条件などによって決定される擬似均一相形成点を超える硬化速度で硬化させ、一方、熱硬化性樹脂を用いる場合は、熱硬化性樹脂の硬化温度、硬化剤の種類、および感光性付与の有無のうちから選ばれる1種または2種以上の因子によって決定される擬似均一相形成点を超える硬化速度で硬化させる方法がある。ここでの擬似均一相形成点とは、複合体を構成する樹脂粒子の粒径がTEM観察による測定値で0.1 μm以下である疑似均一相溶構造を得ることができる,硬化速度の下限値を意味する。
【0021】また、第2の方法として、未硬化の感光性樹脂あるいは未硬化の熱硬化性樹脂の架橋密度または分子量のいずれか1種以上の因子によって決定される擬似均一相形成点を超えない相分離速度で硬化させる方法がある。ここでの擬似均一相形成点とは、複合体を構成する樹脂粒子の粒径がTEM観察による測定値で 0.1μm以下である擬似均一相溶構造を得ることができる,相分離速度の上限値を意味する。
【0022】さらに、第3の方法として、上記擬似均一相形成点を超える硬化速度で、かつ上記擬似均一相形成点を超えない相分離速度で硬化させる方法がある。これは、硬化速度と相分離速度を決定する因子が相互に影響する場合の方法を意味する。
【0023】次に、硬化速度または相分離速度を決定する上述した種々の因子の相互関係について説明する。まず、硬化速度を決定する因子については、他の因子条件を一定とすると、アクリル系樹脂などの感光性樹脂の,例えば開始剤や増感剤,感光性モノマー,露光条件などの光硬化因子によって決定される擬似均一相形成点を超える硬化速度で硬化させる必要がある。上記感光性樹脂の代わりに熱硬化性樹脂を使用する場合は、■熱硬化性樹脂の硬化温度が高いほど硬化速度は速くなる。従って、擬似均一相形成点を超える硬化速度を得るのに必要な硬化温度の下限値を超えて熱硬化性樹脂を硬化すると、得られる樹脂複合体の構造は擬似均一相溶構造となる。
■ゲル化時間が短い硬化剤ほど硬化速度は速くなる。従って、擬似均一相形成点を超える硬化速度を得るのに必要なゲル化時間の上限値を超えないような硬化剤を用いて熱硬化性樹脂を硬化すると、得られる樹脂複合体の構造は擬似均一相溶構造となる。
■感光性を付与するほど硬化速度は速くなる。
従って、他の因子条件が擬似均一相溶構造を形成する組み合わせにおいては、樹脂に感光性を付与することによって、得られる樹脂複合体はより均質な擬似均一相溶構造となる。なお、感光性を付与する方法としては、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂に感光基を導入する方法、感光性モノマーを配合する方法があり、必要に応じて光開始剤,光増感剤を配合してもよい。ただし、熱硬化性樹脂に感光性を付与する場合や、現像の解像度を向上させるために、感光性モノマーを付与する場合には、未硬化の熱硬化性樹脂または未硬化の感光性樹脂と熱可塑性樹脂との相溶性が低下し、(図10〜12を参照)比較的低温でも相分離を起こしてしまう。このため、熱硬化性樹脂に感光性を付与する場合や感光性モノマーを付与する場合には、接着剤を低温(30〜60℃)で、必要に応じて真空乾燥させ、これを一度露光硬化させ、次いで熱硬化(80〜200 ℃)を行うことにより、疑似均一相溶構造を得ることができる。
【0024】このような事実を考慮すると、感光性樹脂あるいは熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合化に当たって上記変動因子が1種の場合は、擬似均一相形成点に対応するその因子の値が1点決まる。それ故に、上記変動因子が2種以上の場合には、擬似均一相形成点に対応するその因子の値は種々の組み合わせが考えられる。すなわち、構成樹脂粒子の粒径がTEM観察による測定値で 0.1μm以下となるような硬化速度を示す組み合わせを選定することができる。
【0025】次に、相分離速度を決定する因子については、他の因子条件を一定とすると、■未硬化感光性樹脂あるいは熱硬化性樹脂の架橋密度が高いほど相分離は起きにくい(相分離速度は遅くなる)。従って、擬似均一相形成点を超えない相分離速度を得るのに必要な架橋密度の下限値を超える架橋密度を有する未硬化感光性樹脂あるいは未硬化熱硬化性樹脂を用いて硬化すると、得られる樹脂複合体の構造は擬似均一相溶構造となる。
■未硬化感光性樹脂あるいは未硬化熱硬化性樹脂の分子量が大きいほど相分離は起きにくい(相分離速度は遅くなる)。従って、擬似均一相形成点を超えない相分離速度を得るのに必要な分子量の下限値を超える分子量を有する未硬化感光性樹脂あるいは未硬化熱硬化性樹脂を用いて硬化すると、得られる樹脂複合体の構造は擬似均一相溶構造となる。
【0026】このような事実を考慮すると、感光性樹脂あるいは熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合化に当たって上記変動因子が1種の場合は、擬似均一相形成点に対応するその因子の値が1点決まる。それ故に、上記変動因子が2種の場合には、擬似均一相形成点に対応するその因子の値は種々の組み合わせが考えられる。すなわち、構成樹脂粒子の粒径がTEM観察による測定値で 0.1μm以下となるような相分離速度を示す組み合わせを選定することができる。
【0027】このような樹脂複合体の疑似均一相溶構造では、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いることができるが、このエポキシ樹脂は、エポキシ当量で100 〜1000程度のものを使用することが望ましい。この理由は、エポキシ当量が100 未満のエポキシ樹脂を製造することは難しく、一方、1000を超える場合は、PESなどの熱可塑性樹脂と混合しにくく、しかも、Tg点の低下により、硬化のために加熱すると相分離を起こし、疑似均一相溶構造を得にくいからである。また、このエポキシ樹脂の分子量は、300 〜10000 が望ましい。この理由は、エポキシ樹脂の分子量が300 未満では、架橋点間分子量が小さすぎ、充分な耐熱性が得られないからである。一方、10000 を超えると熱可塑性樹脂との相溶性が低下してしまうからである。また、熱可塑性樹脂としてはPESを用いることができるが、このPESの分子量は、3000〜100000であることが望ましい。この理由は、PESの分子量が3000未満では、疑似均一相溶構造の靱性向上の効果が得られず、一方、100000を超えると、熱硬化性樹脂や感光性樹脂との相溶状態が形成できないからである。
【0028】以上説明したような方法により得られる樹脂複合体は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が示す特有の物性あるいはアクリル系樹脂などの感光性樹脂が示す特有の物性を具えると共に、PESなどの熱可塑性樹脂本来の物性よりもさらに高い物性値を示すことができる。すなわち、本発明にかかるPES変性エポキシ樹脂やPES変成アクリル樹脂は、PES単独の樹脂強度よりも高くなり、従来にはないエポキシ樹脂あるいはアクリル樹脂の強靱化効果を有するものである。
【0029】(b)共連続構造とは、PES等の熱可塑性樹脂リッチのマトリックス中にアクリル系樹脂等の感光性樹脂リッチの連結し合った球状粒子が存在している複合構造を意味する(井上たかし等、POLYMER ,30,p662(1989)参照)。かかる樹脂複合体の構造は、それの破面を、熱可塑性樹脂を溶解させる溶媒を用いてエッチングすると、熱可塑性樹脂リッチのマトリックス部分が溶けて、連結したアクリル系樹脂等の球状粒子のみが観察されることから判る。このような共連続構造を形成する樹脂複合体は、靱性に優れた熱可塑性樹脂が連続相として存在するため、アクリル系樹脂等の感光性樹脂単独のものよりも強靱な樹脂となる。
【0030】(c)球状ドメイン構造とは、主として、熱可塑性樹脂の樹脂マトリックス中に、感光性樹脂からなる球状ドメインが互いに独立して均一分散している状態の構造を指す。かかる樹脂複合体の構造は、それの破面を、熱可塑性樹脂を溶解させる溶媒を用いてエッチングすると、熱可塑性樹脂リッチのマトリックス部分が溶けて、独立して均一分散している感光性樹脂の球状粒子のみが観察されることから判る。このような球状ドメイン構造を形成する樹脂複合体は、熱可塑性樹脂の"海"の中に、感光性樹脂の球状粒子が分散しているため、感光性樹脂単独の場合より靱性のある樹脂となる。
【0031】このような樹脂複合体の共連続構造や球状ドメイン構造による効果は、前記複合体における熱可塑性樹脂(例えば、PES)の含有量が固形分で15〜50wt%である場合に特に顕著となる。この理由は、熱可塑性樹脂の含有量が15wt%未満では、樹脂成分の網目に絡み合う熱可塑性樹脂分子が少ないため強靱化の効果が十分に発揮されず、一方、熱可塑性樹脂の含有量が50wt%を超えると、架橋点の減少によって感光性樹脂と熱可塑性樹脂間との相互作用が小さくなるからである。
【0032】このような樹脂複合体は、共連続構造もしくは球状ドメイン構造を構成する球状粒子の平均粒径が、それぞれ 0.1μmを超え、5μm以下であることが望ましい。この理由は、前記球状粒子の平均粒径が、 0.1μm以下では、共連続構造や球状ドメイン構造を形成させることが困難であり、一方、5μmを超えると、靱性の改善を図ることができず、しかも感光特性や耐熱性も低下するからである。
【0033】なお、上述した共連続構造あるいは球状ドメイン構造は、■熱硬化性樹脂の熱硬化に関与する官能基と感光基との置換率を制御したり、または■感光性樹脂の種類、分子量を調整したりして、未硬化の熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂と、熱可塑性樹脂を相溶または非相溶状態に混合し、その後、乾燥条件や硬化条件を調整させることにより、構成する球状粒子の平均粒径を、0.1μmを超え、5μm以下とすることによって形成される。また、上記樹脂マトリックスとして、感光性樹脂または熱硬化性樹脂を用い、互いに連結または独立した球状ドメインを形成する樹脂として熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0034】以上説明したように、この発明の接着剤層を構成する樹脂複合体は、疑似均一相溶構造,共連続構造もしくは球状ドメイン構造を形成していることが望ましいが、なかでも、疑似均一相溶構造を形成するほうが、共連続構造もしくは球状ドメイン構造を形成するよりも、より高い樹脂強度が得られることから、疑似均一相溶構造を形成させることが接着剤層の樹脂マトリックスとしてより好適である。
【0035】なお、この発明の接着剤層は、その厚みが10〜200 μmであることが望ましい。この理由は、接着剤層の厚みが10μm未満の場合では、ピール強度が低下してしまい、一方、200 μmを超える場合は、接着剤中の溶剤を除去しにくく、乾燥、硬化が困難であるからである。
【0036】(3) この発明のプリント配線板の特徴は、基板上に、酸あるいは酸化剤に対して可溶性である硬化処理済みの耐熱性樹脂粉末を、硬化処理が施され酸化剤に対して難溶性である耐熱性樹脂マトリックス中に分散してなる接着剤層が設けられ、この接着剤層の導体形成面には、耐熱性樹脂粉末の溶解除去による粗化面が形成され、さらにその粗化面上には導体回路が設けられているプリント配線板であって、前記耐熱性樹脂マトリックスが、感光性樹脂と熱可塑性樹脂との樹脂複合体で構成されている点にある。ここで、前記樹脂複合体は、疑似均一相溶構造,共連続構造もしくは球状ドメイン構造を形成していることが望ましい。前記粗化面は、Rmax=1〜20μmであることが望ましい。この理由は、1μm未満では、密着強度が得られず、20μmを超えると、パターン間隔100 μm以下のファインパターンのプリント配線板を製造することが困難になるからである。
【0037】このようなプリント配線板によれば、耐熱性、弾性率、化学的安定性および電気絶縁性を低下させることなく、接着剤層を構成する耐熱性樹脂マトリックスを強靱化することができるので、より高密度でパターン精度の高い配線においてもピール強度に優れる配線板を安定して提供することができる。
【0038】以上説明したようなこの発明の無電解めっき用接着剤、無電解めっき用接着剤層およびプリント配線板において、無電解めっき用接着剤を構成する耐熱性樹脂マトリックスに用いる感光性樹脂としては、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂や熱硬化性樹脂の官能基を 100%アクリル化したものが好適である。ここで、この感光性樹脂の光硬化因子として重要である光開始剤としては、ベンゾイソブチルエーテル,ベンジルジメチルケタール,ジエトキシアセトフェノン,アシロキシムエステル,塩素化アセトフェノン,ヒドロキシアセトフェノン等の分子内結合開裂型、ベンゾフェノン,ミヒラーケトン,ジベンゾスベロン,2−エチルアンスラキノン,イソブチルチオキサンソン等の分子内水素引抜型のいずれか1種以上が好適に用いられる。光開始助剤としては、トリエタノールアミン,ミヒラーケトン,4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン,2−ジメチルアミノエチル安息香酸,4−ジメチルアミノ安息香酸エチル,4−ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル,4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル,4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル,重合性3級アミン等のいずれか1種以上が用いられる。増感剤としては、ミヒラーケトンやイルガキュア651 ,イソプロピルチオキサンソンなどが好適であり、上記光開始剤のなかには、増感剤として作用するものもある。なお、上記光開始剤と増感剤の組成比は、例えば、感光性樹脂100 重量部に対して、ベンゾフェノン/ミヒラーケトン=5重量部/0.5 重量部イルガキュア184 /イルガキュア651 =5重量部/0.5 重量部イルガキュア907 /イソプロピルチオキサンソン=5重量部/0.5 重量部が好適である。感光性樹脂を構成する感光性モノマーあるいは感光性オリゴマーとしては、エポキシアクリレートやエポキシメタクリレート,ウレタンアクリレート,ポリエステルアクリレート,ポリスチリルメタクリレートなどが好適に用いられる。
【0039】この発明における耐熱性樹脂マトリックスに用いる感光性樹脂の代わりに、熱硬化性樹脂などに感光基を付与させた樹脂を用いることができる。この熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂や尿素樹脂などのアミノ樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ変成ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが使用できる。この理由は、これらの樹脂が、熱的,電気的特性に優れているからである。この熱硬化性樹脂は、部分的に熱硬化に寄与する官能基の一部を感光基で置換したものも使用でき、例えば、エポキシ樹脂の5〜70%アクリル化物などが好適である。
【0040】上記耐熱性樹脂マトリックスに用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニレンスルフィド (PPS)、ポリエーテルエーテルケトン (PEEK) 、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド(PEI) などのエンジニアリングプラスチック、フェノキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリオキシベンゾエート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルなどが使用できる。この理由は、これらの熱可塑性樹脂は、耐熱性が高く、強靱であり、しかも、溶媒を用いることによって熱硬化性樹脂と相溶することができるからである。
【0041】なかでも、上述した熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂は、それぞれエポキシ樹脂およびポリエーテルスルホンであることが好適である。この理由は、メチレンクロライドやジメチルホルムアミド等の溶媒で樹脂マトリックスの成分であるエポキシ樹脂とPESとを混合分散させ、疑似均一相溶構造や共連続構造,球状ドメイン構造を容易に形成できるからである。例えば、接着剤を構成する耐熱性樹脂マトリックスとして、エポキシ樹脂とPESの混合系を用いる場合、PES変性エポキシ樹脂が擬似均一相溶構造を形成することによって、マトリックスが強靱化され、引張り強度および引張り伸び率はいずれも、エポキシ樹脂単独のものよりも1.5 倍以上に向上することが判った。しかも、この樹脂マトリックスの強靱化により、アンカー深さが同じ場合でも、この発明の接着剤もしくは接着剤層を用いたプリント配線板における無電解めっき膜のピール強度は、樹脂マトリックスとしてエポキシ樹脂のみを用いた場合に比べて、高くなることを発明者らは確認した。
【0042】この発明においては、上述した熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂は、それぞれ感光基を付与した樹脂、または感光性を有する樹脂やモノマーなどを添加した樹脂を用いることができる。この理由は、疑似均一相溶構造の樹脂複合体の場合、熱硬化性樹脂などに感光基を付与させることで、熱硬化性樹脂を露光により短時間で硬化して相分離が進まないうちに複合化させることができ、ひいては、疑似均一相溶構造を容易に形成することができるからである。共連続構造あるいは球状ドメイン構造の樹脂複合体の場合、共連続構造あるいは球状ドメイン構造の粒形状(粒径等)を制御しやすくなるからである。
【0043】また、この発明の樹脂マトリックスの硬化剤としては、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合は、イミダゾール系硬化剤やジアミン、ポリアミン、ポリアミド、無水有機酸、ビニルフェノールなどが使用できる。一方、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を使用する場合は、周知の硬化剤を使用できる。
【0044】次に、この発明において使用される耐熱性樹脂粉末について説明する。この発明にかかる耐熱性樹脂粉末は、硬化処理済であることが必要である。この理由は、耐熱性樹脂粉末は、硬化処理によって、熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂,感光性樹脂を溶解させる溶媒に不溶性となるため、このような溶媒を用いた希釈によって樹脂溶液の粘度を低減させることにより、硬化処理済の耐熱性樹脂粉末は、この樹脂溶液中に均一に分散させることができるからである。また、疑似均一相溶構造の樹脂複合体を得る場合、熱硬化性樹脂あるいは感光性樹脂を熱可塑性樹脂と相溶状態で混合させるために溶媒を用いるが、このような場合でも、硬化処理済の耐熱性樹脂粉末はその溶媒に溶解することがないため、明確なアンカーを形成することができる。この発明にかかる上記耐熱性樹脂粉末としては、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂)、ポリエステル樹脂、ビスマレイドートリアジン樹脂などを使用できる。なお、本願の耐熱性樹脂粉末の範疇には含まれないが、耐熱性樹脂粉末に代えて、ブタジエンやABS樹脂などのゴムを使用することも可能である。
【0045】この発明において、酸や酸化剤に不溶性の耐熱性樹脂マトリックスの熱硬化性樹脂成分としては、エポキシ樹脂を使用でき、一方、酸や酸化剤に可溶性の耐熱性樹脂粉末としても、エポキシ樹脂を使用できる。この点について、酸化剤に対する溶解度を例にとり、以下に説明する。エポキシ樹脂は、これらのプレポリマー(分子量300 〜10000 程度の比較的低分子量のポリマー)、硬化剤の種類、架橋密度を制御することにより、その物性を大きく異ならしめることができる。この物性の差は、酸化剤に対する溶解度に対しても例外ではなく、■プレポリマーの種類、■硬化剤の種類、■架橋密度を適宜選択することにより、任意の溶解度のものに調整することができる。例えば、耐熱性樹脂粉末を構成する"酸化剤に可溶性のエポキシ樹脂"としては、(A)「エポキシプレポリマーとして脂環式エポキシを選択し、硬化剤として鎖状脂肪族ポリアミン硬化剤を使用し、架橋点間分子量(架橋点の間の分子量のこと。大きいほど架橋密度は低くなる。)を700 程度として穏やかに架橋したもの」が用いられる。これに対して、耐熱性樹脂マトリックスの熱硬化性樹脂成分である"酸化剤に難溶性(不溶性も含む)のエポキシ樹脂"としては、(B)「エポキシプレポリマーとしてビスフェノールA型エポキシ樹脂を選択し、硬化材として芳香族ジアミン系硬化剤を使用し、架橋点間分子量を500 前後に架橋したもの」や、これよりさらに溶解度の低い、(C)「エポキシプレポリマーとしてフェノールノボラック型エポキシ樹脂を選択し、硬化剤として酸無水物系硬化剤を使用し、架橋点間分子量を400 程度に架橋したもの」が用いられる。また、前記エポキシ樹脂(B)を、"酸化剤に可溶性のエポキシ樹脂"として用いることもでき、この場合には、前記エポキシ樹脂(C)を"酸化剤に難溶性のエポキシ樹脂"として採用する。以上説明したように、エポキシ樹脂は、■プレポリマーの種類、■硬化剤の種類、■架橋密度を適宜選択することにより、任意の溶解度のものに調整することができる。また、前述の例から理解されるように、酸化剤に可溶性か酸化剤に難溶性(あるいは不溶性)ということは、酸化剤に対する相対的な溶解速度を意味しており、酸化剤に可溶性,不溶性のエポキシ樹脂微粉末としては、溶解度差のあるものを任意に選択すればよい。なお、樹脂に溶解度差をつける手段としては、■プレポリマーの種類、■硬化剤の種類、■架橋密度の調整だけに限定されるものではなく、他の手段であってもよい。表1には、前述の各エポキシ樹脂について、そのプレポリマー、硬化剤、架橋密度、溶解度を列記する。
【0046】
【表1】

【0047】この発明においては、上述したような各エポキシ樹脂の溶解度差を利用して、一定時間の酸化処理を施すのである。このような処理を施すことにより、酸化剤に対する溶解度が最も大きい可溶性のエポキシ樹脂微粉末の溶解が激しく起こり、大きな凹部が形成される。同時に酸化剤に難溶性の熱可塑性樹脂を含むエポキシ樹脂マトリックスが残存して、図1に示すような粗化面(アンカー)が形成されるのである。
【0048】なお、この発明では、耐熱性樹脂マトリックスとして、エポキシ樹脂にPESなどの熱可塑性樹脂を混合したものを用いており、このように熱可塑性樹脂を含有させることにより、酸や酸化剤に対する溶解度が低下する傾向が見られた。特に、疑似均一相溶構造の樹脂複合体を耐熱性樹脂マトリックスとして採用した場合、その溶解度の低下は顕著であった。
【0049】この発明において、耐熱性樹脂粉末は、粒子形状、中空形状、解砕片状などの各種形状のものを使用でき、特に粒子形状の場合は、1)平均粒径10μm以下の粒子、2)平均粒径2μm以下の耐熱性樹脂粉末を凝集させて平均粒径2〜10μmの大きさとした凝集粒子、3)平均粒径2〜10μmの耐熱性樹脂粉末と平均粒径2μm以下の耐熱性樹脂粉末との混合物、4)平均粒径2〜10μmの耐熱性樹脂粉末の表面に平均粒径2μm以下の耐熱性樹脂粉末もしくは平均粒径2μm以下の無機粉末のいずれか少なくとも1種を付着させてなる擬似粒子から選ばれることが望ましい。この理由は、平均粒径10μmを超えると、アンカーが深くなり、100 μm以下の所謂ファインパターンを形成できなくなるからであり、一方、上記2)〜4)の疑似粒子が望ましい理由は、複雑なアンカーを形成でき、ピール強度を向上させることができからである。この耐熱性樹脂粉末は、凝集を防止するために、その表面にシリカゾルなどによるコーティングがなされていることが望ましい。この耐熱性樹脂粉末の配合量は、耐熱性樹脂マトリックスの樹脂固形分100 に対して、重量比で5〜100 の割合であることが望ましい。この理由は、重量比で5未満の場合は、アンカーを形成することができず、100 を超える場合は、混練が難しくなること、また相対的に耐熱性樹脂マトリックスの量が減り、接着剤層の強度が低下してしまうためである。
【0050】次に、上述した無電解めっき用接着剤もしくは無電解めっき用接着剤層を用いてこの発明のプリント配線板を製造する方法について説明する。
■.まず、基板上に、未硬化の感光性樹脂または未硬化の熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合樹脂から構成されている無電解めっき用接着剤を塗布、あるいはその接着剤自体を半硬化させてフィルム状にしたものをラミネート、もしくは基板自体をその接着剤で形成することにより、無電解めっき用接着剤層を設ける。さらに、この接着剤層を乾燥硬化して、樹脂マトリックスを構成する樹脂複合体が疑似均一相溶構造,共連続構造あるいは球状ドメイン構造を有する無電解めっき用接着剤層を形成する。
【0051】■.次に、前記無電解めっき用接着剤層の表面に分散している耐熱性樹脂粉末の少なくとも一部を、酸もしくは酸化剤を用いて溶解除去する。この方法としては、前記酸もしくは酸化剤の溶液を用いて、接着剤層を形成した基板をその溶液中に浸漬するか、あるいは基板に酸もしくは酸化剤溶液をスプレーするなどの手段によって実施することができ、その結果、接着剤層の表面を粗化することができる。
【0052】ここで、接着剤を粗化する酸化剤としては、クロム酸やクロム酸塩、過マンガン酸塩などがよい。また酸としては、塩酸や硫酸、有機酸などがよい。
【0053】■.次に、基板上の表面粗化された無電解めっき用接着剤層に無電解めっきを施す。この無電解めっきとしては、例えば無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解スズめっき、無電解金めっきおよび無電解銀めっきなどを挙げることができ、特に無電解銅めっき、無電解ニッケルめっきおよび無電解金めっきのいずれか少なくとも一種であることが好適である。なお、前記無電解めっきを施した上にさらに異なる種類の無電解めっきあるいは電気めっきを行ったり、ハンダをコートしたりすることもできる。なお、無電解めっきの際、めっきレジスト等を形成することにより、めっきにより配線パターンを描くことができる。また、全面に無電解めっきを施し、ついでエッチングして導体回路を描くこともできる。
【0054】上述のようにして得られるプリント配線板としては、■基板上に上記無電解めっき用接着剤層を介してめっきレジストおよび導体回路を形成してなる片面プリント配線板、■基板両面の上記接着剤層とスルホールを介してめっきレジストおよび導体回路を形成してなる両面プリント配線板、および■第1導体層を形成させた基板上に、バイアホールを有する層間絶縁層(前記接着剤層)を介して導体回路を多層形成させてなるビルドアップ多層配線板を挙げることができる。
【0055】なお、この発明に用いられる無電解めっき用接着剤は、プリント配線板の分野以外にも、応用でき、例えば、建築用材料、自動車部品などのめっき膜で被覆された材料、部品などに好適に使用できる。
【0056】
【実施例】(実施例1)熱硬化性樹脂+熱可塑性樹脂(1) クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、商品名:EOCN-104Sエポキシ当量 220 、分子量 5000)70重量部、ポリエーテルスルホン(PES)(ICI製、商品名:Victrex 分子量17000 )30重量部、イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)5重量部およびエポキシ樹脂微粉末(東レ製、商品名:トレパールEP-B )を平均粒径5.5 μmのものを20重量部、平均粒径0.5μmのものを10重量部を混合した後、ジメチルホルムアミド/ブチルセロソルブ(1/1)混合溶剤を添加しながら、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。この時の室温での粘度は、2〜5Pa・sであった。
(2) この接着剤溶液をローラーコーター(サーマトロニクス貿易製)を使用して銅箔が貼着されていないガラスエポキシ絶縁板(東芝ケミカル製)上に塗布し、その後、80℃で2時間、120 ℃で5時間、150 ℃で2時間、乾燥硬化させて厚さ20μmの接着剤層を形成した。
(3) 接着剤層を形成した上記基板を、クロム酸水溶液(CrO3,500g/l)に70℃で15分間浸漬して接着剤層の表面を粗化し、次いで、中和溶液(シプレイ製)に浸漬したのち水洗した。粗化面は、JIS-B-0601 Rmax=10μmであった。
(4) 接着剤層の表面を粗化した基板にパラジウム触媒(シプレイ製)を付与して接着剤層の表面を活性化させ、次いで常法に従いめっきレジストを設け、その後、表2に示す組成のアディティブ用無電解めっき液に11時間浸積して、めっき膜の厚さが25μmの無電解銅めっきを施し、プリント配線板を製造した(図1参照)。
【0057】
【表2】

【0058】なお、本実施例で用いた接着剤のマトリックスに相当する樹脂のみを上記条件で熱硬化させて得られた硬化物は、TEM観察したところ、平均粒径 0.1μm以下の樹脂粒子が見られた。また、上記エポキシ樹脂微粉末を混合しない樹脂組成の混合物を硬化させて得られた硬化物は、振動周波数6.28 rad/sec 、昇温速度5℃/分の条件で粘弾性測定試験を行ったところ、ガラス転移温度Tg のピークが1つであった(図2参照)。従って、本実施例で用いた接着剤のマトリックスは、擬似均一相溶構造を呈していると考えられる(図3参照)。
【0059】(実施例2)熱硬化性樹脂+熱可塑性樹脂(1) クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、商品名:EOCN-103S)70重量部、ポリエーテルスルホン(PES)(ICI製、商品名:Victrex )30重量部、イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2PHZ-CN )10重量部およびエポキシ樹脂微粉末(東レ製、商品名:トレパールEP-B)を平均粒径5.5 μmのものを20重量部、平均粒径0.5 μmのものを10重量部を混合した後、ジメチルホルムアミド/ブチルセロソルブ(1/1)混合溶剤を添加しながら、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。
(2) この接着剤溶液をローラーコーター(サーマトロニクス貿易製)を使用して銅箔が貼着されていないガラスエポキシ絶縁板(東芝ケミカル製)上に塗布し、その後、80℃で3時間、120 ℃で3時間、150 ℃で5時間、乾燥硬化させて厚さ20μmの接着剤層を形成した。
(3) 接着剤層を形成した上記基板を、クロム酸水溶液(CrO3,500g/l)に70℃で15分間浸漬して接着剤層の表面を粗化し、次いで、中和溶液(シプレイ製)に浸漬したのち水洗した。
(4) 接着剤層の表面を粗化した基板にパラジウム触媒(シプレイ製)を付与して接着剤層の表面を活性化させ、次いで常法に従いめっきレジストを設け、その後、表2に示す組成のアディティブ用無電解めっき液に11時間浸漬して、めっき膜の厚さが25μmの無電解銅めっきを施し、プリント配線板を製造した。
【0060】なお、本実施例で用いた接着剤のマトリックスに相当する樹脂のみを上記条件で熱硬化させて得られた硬化物は、TEM観察したところ、平均粒径0.05μm以下の樹脂粒子が見られた。また、上記エポキシ樹脂微粉末を混合しない樹脂組成の混合物を硬化させて得られた硬化物は、振動周波数6.28 rad/sec 、昇温速度5℃/分の条件で粘弾性測定試験を行ったところ、ガラス転移温度Tg のピークが1つであった。従って、本実施例で用いた接着剤のマトリックスは、擬似均一相溶構造を呈していると考えられる。
【0061】(実施例3)熱硬化性樹脂+熱可塑性樹脂(1) ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、商品名:エピコート828エポキシ当量 190 、分子量 380 )70重量部、ポリエーテルスルホン(PES)(ICI製、商品名:Victrex )30部、イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)
10重量部およびエポキシ樹脂微粉末(東レ製、商品名:トレパールEP-B)を平均粒径5.5 μmのものを20重量部、平均粒径0.5 μmのものを10重量部を混合した後、ジメチルホルムアミド/ブチルセロソルブ(1/1)混合溶剤を添加しながら、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。
(2) この接着剤溶液をローラーコーター(サーマトロニクス貿易製)を使用して銅箔が貼着されていないガラスエポキシ絶縁板(東芝ケミカル製)上に塗布し、その後、80℃で1時間、120 ℃で2時間、150 ℃で4時間、乾燥硬化させて厚さ20μmの接着剤層を形成した。
(3) 接着剤層を形成した上記基板を、クロム酸水溶液(CrO3,500g/l)に70℃で15分間浸漬して接着剤層の表面を粗化し、次いで、中和溶液(シプレイ製)に浸漬したのち水洗した。
(4) 接着剤層の表面を粗化した基板にパラジウム触媒(シプレイ製)を付与して接着剤層の表面を活性化させ、次いで常法に従いめっきレジストを設け、その後、表2に示す組成のアディティブ用無電解めっき液に11時間浸漬して、めっき膜の厚さが25μmの無電解銅めっきを施し、プリント配線板を製造した。
【0062】なお、本実施例で用いた接着剤のマトリックスに相当する樹脂のみを上記条件で熱硬化させて得られた硬化物は、TEM観察したところ、平均粒径 0.1μm以下の樹脂粒子が見られた。また、上記エポキシ樹脂微粉末を混合しない樹脂組成の混合物を硬化させて得られた硬化物は、振動周波数6.28 rad/sec 、昇温速度5℃/分の条件で粘弾性測定試験を行ったところ、ガラス転移温度Tg のピークが1つであった。従って、本実施例で用いた接着剤のマトリックスは、擬似均一相溶構造を呈していると考えられる。また、上記エポキシ樹脂微粉末を混合しない樹脂組成の混合物を硬化させて得られた硬化物は、振動周波数6.28 rad/sec 、昇温速度5℃/分の条件で粘弾性測定試験を行ったところ、ガラス転移温度Tg のピークが1つであった。従って、本実施例で用いた接着剤のマトリックスは、擬似均一相溶構造を呈していると考えられる。
【0063】(実施例4)熱硬化性樹脂+熱可塑性樹脂(1) 基本的には実施例1と同様であるが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート828 )60重量部、ポリエーテルスルホン(PES)(ICI製、商品名:Victrex )40重量部、イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)5重量部およびエポキシ樹脂微粉末(東レ製、商品名:トレパールEP-B )を平均粒径5.5 μmのものを20重量部、平均粒径0.5 μmのものを10重量部を混合した後、ジメチルホルムアミド/ブチルセロソルブ(1/1)混合溶剤を添加しながら、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。
【0064】本実施例の接着剤のマトリックス樹脂のみを硬化させて得られた硬化物は、その断面を塩化メチレン(PESを溶解する) でエッチングしてSEM観察したところ、平均粒径0.2 〜2 μmのエポキシ樹脂リッチと考えられる球状物の連続構造(共連続構造)が見られた。
【0065】(実施例5)熱硬化性樹脂+熱可塑性樹脂(1) 基本的には実施例1と同様であるが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート828 )50重量部、ポリエーテルスルホン(PES)(ICI製、商品名:Victrex )50重量部、イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)5重量部およびエポキシ樹脂微粉末(東レ製、商品名:トレパールEP-B )を平均粒径5.5 μmのものを20重量部、平均粒径0.5 μmのものを10重量部を混合した後、ジメチルホルムアミド/ブチルセロソルブ(1/1)混合溶剤を添加しながら、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。
【0066】本実施例の接着剤のマトリックス樹脂のみを硬化させて得られた硬化物は、その断面をPESを溶解させる塩化メチレンでエッチングしてSEM観察したところ、平均粒径2〜5μm程度のエポキシ樹脂リッチと考えられる球状物が見られた。マトリックス樹脂は、エポキシリッチの球状物がPESリッチのベースに浮かんだいわゆる海ー島構造(球状ドメイン構造)であった(図4参照)。
【0067】(比較例1)熱硬化性樹脂のみ(1) フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェル製、商品名:エピコート154 )100 重量部、イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2P4MHZ)4重量部およびエポキシ樹脂微粉末(東レ製、商品名:トレパールEP-B)を平均粒径5.5 μmのものを20重量部、平均粒径0.5 μmのものを10重量部を混合した後、ジメチルホルムアミド/ブチルセロソルブ(1/1)混合溶剤を添加しながら、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。
(2) この接着剤溶液をローラーコーター(サーマトロニクス貿易製)を使用して銅箔が貼着されていないガラスエポキシ絶縁板(東芝ケミカル製)上に塗布し、その後、100 ℃で1時間、150 ℃で5時間、乾燥硬化させて厚さ20μmの接着剤層を形成した。
(3) 接着剤層を形成した上記基板を、クロム酸水溶液(CrO3,500g/l)に70℃で15分間浸漬して接着剤層の表面を粗化し、次いで、中和溶液(シプレイ製)に浸漬したのち水洗した。
(4) 接着剤層の表面を粗化した基板にパラジウム触媒(シプレイ製)を付与して接着剤層の表面を活性化させ、その後、表2に示す組成のアディティブ用無電解めっき液に11時間浸漬して、めっき膜の厚さが25μmの無電解銅めっきを施し、プリント配線板を製造した。
【0068】実施例1〜5および比較例1にて製造したプリント配線板における無電解銅めっき膜のピール強度、ならびに接着剤層の絶縁抵抗とガラス点移転Tg を測定した。さらに、−65℃×30min 〜125 ℃×30min のヒートサイクル試験を行った。その結果を表3に示す。この表に示す結果から明らかなように、疑似均一相溶解構造、共連続構造、球状ドメイン構造を示す樹脂複合体を無電解めっき用接着剤層として用いることにより、接着強度、絶縁性、耐熱性およびヒートサイクル特性が従来のものに比べ著しく向上したプリント配線板を製造することができる。
【0069】
【表3】

【0070】(実施例6)熱硬化性樹脂(一部感光化)+熱可塑性樹脂(1) ガラスエポキシ銅張積層板(東芝ケミカル製)上に感光性ドライフィルム(デュポン製)をラミネートし、所望の導体回路パターンが描画されたマスクフィルムを通して紫外線露光させ画像を焼き付いた。次いで、1,1,1-トリクロロエタンで現像を行い、塩化第二銅エッチング液を用いて非導体部の銅を除去した後、メチレンクロリドでドライフィルムを剥離した。これにより基板上に複数の導体パターンからなる第1層導体回路を有する配線板を作成した。
(2) エポキシ樹脂粒子(東レ製、平均粒径3.9 μm)200gを、5lのアセトン中に分散させて得たエポキシ樹脂粒子懸濁液中へ、ヘンシェルミキサー内で攪拌しながら、アセトン1lに対してエポキシ樹脂(三井石油化学製)を30g の割合で溶解させたアセトン溶液中にエポキシ樹脂粉末(東レ製、平均粒径0.5 μm)300gを分散させて得た懸濁液を滴下することにより、上記エポキシ樹脂粒子表面にエポキシ樹脂粉末を付着せしめた後、上記アセトンを除去し、その後、150 ℃に加熱して、疑似粒子を作成した。この疑似粒子は、平均粒径が約4.3 μmであり、約75重量%が、平均粒径を中心として±2μmの範囲に存在していた。
(3) クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェル製 エポキシ当量 210、分子量 2000)の50%アクリル化物を70重量部、ポリエーテルスルホン(PES)30重量部、ジアリルテレフタレート15重量部、2-メチル-1- [4-(メチルチオ)フェニル]-2- モリフォリノプロパノン-1(チバ・ガイギー製)4重量部、イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)4重量部、および前記(2) で作成した疑似粒子50重量部を混合した後、ブチルセロソルブを添加しながら、ホモディスパー攪拌機で粘度250cpsに調整し、続いて、3本ロールで混練して感光性樹脂組成物の溶液を調製した。
(4) この感光性樹脂組成物の溶液を、前記(1) で作成した配線板上に、ナイフコーターを用いて塗布し、水平状態で20分間放置してから、70℃で乾燥させて厚さ約50μmの感光性樹脂絶縁層を形成した。
(5) 前記(4) の処理を施した配線板に、100 μmφの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯500mj /cm で露光した。これをクロロセン溶液で超音波現像処理することにより、配線板上に100 μmφのバイアホールとなる開口を形成した。さらに、前記配線板を超高圧水銀灯により約3000mj/cm で露光し、100 ℃で1時間、その後150 ℃で5時間の加熱処理することによりフォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた開口を有する樹脂層間層を形成した。
(6) 前記(5) の処理を施した配線板を、過マンガン酸カリウム(KMnO4 ,500g/l )に70℃で15分間浸漬して層間樹脂絶縁層の表面を粗化し、次いで、中和溶液(シプレイ製)に浸漬した後水洗した。
(7) 樹脂絶縁層の表面を粗化した基板にパラジウム触媒(シプレイ製)を付与して絶縁層の表面を活性化させ、その後、表2に示す組成のアディティブ用無電解めっき液に11時間浸漬して、めっき膜の厚さが25μmの無電解銅めっきを施した。
(8) 前記(4) 〜(7) までの工程を2回繰り返した後に、さらに前記(1) の工程を行うことにより、配線層が4層のビルドアップ多層配線板を製造した(図5参照)。
【0071】なお、本実施例で用いた接着剤のマトリックスに相当する樹脂のみを上記条件で熱硬化させて得られた硬化物は、その断面を塩化メチレンでエッチングしてSEM観察したところ、平均粒径 0.2〜2μmのエポキシ樹脂リッチと考えられる球状物の連続構造(共連続構造)が見られた(図6参照)。また、上記エポキシ樹脂微粉末を混合しない樹脂組成の混合物を硬化させて得られた硬化物は、振動周波数6.28 rad/sec 、昇温速度5℃/分の条件で粘弾性測定試験を行ったところ、ガラス転移温度Tg のピークが2つであった(図7参照)。従って、本実施例で用いた接着剤のマトリックスは、共連続構造を呈していると考えられる。
【0072】(実施例7)熱硬化性樹脂(一部感光化)+熱可塑性樹脂(1) 基本的には実施例6と同様であるが、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の25%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(CNA25、分子量4000)、PES(分子量17000 )、イミダゾール硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)、感光製モノマーであるトリメチルトリアクリレート(TMPTA )、光開始剤(チバガイギー製、商品名:I-907 )を用い、下記組成でDMFを用いて混合し、さらにこの混合物に対してエポキシ樹脂微粉末(東レ製、商品名:トレパールEP-B )を平均粒径5.5 μmのものを20重量部、平均粒径0.5 μmのものを10重量部を混合した後、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。
樹脂組成:感光化エポキシ/PES/TMPTA /I-907 /イミダゾール=75/25/10/5/5この接着剤の硬化は、25℃で真空乾燥を行い、これをUV硬化させた後、熱硬化して行った。
【0073】本実施例の接着剤のマトリックスに相当する樹脂のみを、上記条件で真空乾燥、UV硬化、熱硬化させて得られた硬化物は、実施例1と同様にTEM観察したところ、平均粒径 0.1μm以下の樹脂粒子が見られた。また、上記エポキシ樹脂微粉末を混合しない樹脂組成の混合物を硬化させて得られた硬化物は、振動周波数6.28 rad/sec 、昇温速度5℃/分の条件で粘弾性測定試験を行ったところ、ガラス転移温度Tg のピークが1つであった。従って、本実施例で用いた接着剤のマトリックスは、擬似均一相溶構造を呈していると考えられる(図3参照)。また、図8および図9には、それぞれ硬化前と硬化後の接着剤層のSEM断面写真を示した。
【0074】(実施例8)熱硬化性樹脂(一部感光化)+熱可塑性樹脂(1) 基本的には実施例6と同様であるが、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の25%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(CNA25、分子量4000)、PES(分子量17000 )、イミダゾール硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)、感光製モノマーであるトリメチルトリアクリレート(TMPTA )、光開始剤(チバガイギー製、商品名:I-907 )を用い、下記組成でDMFを用いて混合し、さらにこの混合物に対してエポキシ樹脂微粉末(東レ製、商品名:トレパールEP-B )を平均粒径5.5 μmのものを20重量部、平均粒径0.5 μmのものを10重量部を混合した後、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。
樹脂組成:感光化エポキシ/PES/TMPTA /I-907 /イミダゾール=75/25/10/5/5この接着剤の基本組成は実施例7と同じであるが、この接着剤の硬化は、実施例7と異なり、50℃で真空乾燥を行い、これをUV硬化させた後、熱硬化して行った。
【0075】本実施例の接着剤の樹脂マトリックスに相当する樹脂を硬化させて得られた硬化物は、その断面を塩化メチレンでエッチングしてSEM観察したところ、平均粒径0.2 〜2 μmのエポキシ樹脂リッチと考えられる球状物の連続構造(共連続構造)が見られた。
【0076】
(実施例9)熱硬化性樹脂(一部感光化)+熱可塑樹脂(1) 基本的には実施例6と同様であるが、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の25%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(CNA25、分子量4000)、PES(分子量17000 )、イミダゾール硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ−CN)、感光製モノマーであるトリメチルトリアクリレート(TMPTA )、光開始剤(チバガイギー製、商品名:I-907 )を用い、下記組成でDMFを用いて混合し、さらにこの混合物に対してエポキシ樹脂微粉末(東レ製、商品名:トレパールEP-B )を平均粒径5.5 μmのものを20重量部、平均粒径0.5μmのものを10重量部を混合した後、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。
樹脂組成:感光化エポキシ/PES/TMPTA /I-907 /イミダゾール=75/25/10/5/5この接着剤の基本組成は実施例7と同じであるが、この接着剤の硬化は、実施例7と異なり、80℃で乾燥を行い、これをUV硬化させた後、熱硬化(80〜200℃)して行った。
【0077】本実施例のマトリックスに相当する樹脂のみを同じ条件で硬化させて得られた硬化物は、その断面をPESを溶解させる塩化メチレンでエッチングしてSEM観察したところ、平均粒径2〜5μm程度のエポキシ樹脂リッチと考えられる球状物が見られた。マトリックス樹脂は、エポキシリッチの球状物がPSFリッチのベースに浮かんだ、いわゆる海ー島構造(球状ドメイン構造)であった。
【0078】上述した実施例7〜実施例9のように、乾燥条件を変えることにより、同じ組成の接着剤から疑似均一相溶解構造、共連続構造、球状ドメイン構造の硬化物が得られることが判った。この理由は、感光性接着剤の場合は、乾燥時点で均一構造であれば、光硬化で迅速に硬化が行われるため、その後の熱硬化による相分離が極めて発生しにくいからである。なお、参考までに相図を図10〜12に示す。相図は、実施例7〜9とは作成条件が異なり、感光化エポキシ/PES/TMPTA /I-907 /イミダゾール=75/25/20/5/5であった。
【0079】(実施例10)感光性樹脂+熱可塑性樹脂(1) この実施例は、熱硬化性樹脂の代わりに感光性樹脂を用いた例であり、基本的には実施例6と同様であるが、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェル製)のエポキシ基の 100%アクリル化した感光性オリゴマー、PES、イミダゾール硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)、感光製モノマーであるトリメチルトリアクリレート(TMPTA )、光開始剤(チバガイギー製、商品名:I-907 )を用い、下記組成でDMFを用いて混合し、さらにこの混合物に対してエポキシ樹脂微粉末(東レ製、商品名:トレパールEP-B )を平均粒径5.5μmのものを20重量部、平均粒径0.5 μmのものを10重量部を混合した後、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。
樹脂組成:感光化エポキシ/PES/TMPTA /I-907 /イミダゾール=80/20/10/5/5この接着剤の硬化は、25℃で真空乾燥を行い、これをUV硬化させた後、熱硬化して行った。
【0080】本実施例の接着剤のマトリックスに相当する樹脂のみを上記条件で真空乾燥、UV硬化、熱硬化させて得られた樹脂は、実施例1と同様にTEM観察したところ、平均粒径0.1 μm以下の樹脂粒子が見られた。また、上記エポキシ樹脂微粉末を混合しない樹脂組成の混合物を硬化させて得られた硬化物は、振動周波数6.28 rad/sec 、昇温速度5℃/分の条件で粘弾性測定試験を行ったところ、ガラス転移温度Tg のピークが1つであった。従って、本実施例で用いた接着剤のマトリックスは、擬似均一相溶構造を呈していると考えられる(図3参照)。
【0081】(実施例11)感光性樹脂+熱可塑樹脂(1) 基本的には実施例6と同様であるが、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェル製)のエポキシ基の 100%アクリル化した感光性オリゴマー、フェノキシ樹脂、イミダゾール硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)、感光製モノマーであるトリメチルトリアクリレート(TMPTA )、光開始剤(チバガイギー製、商品名:I-907 )を用い、下記組成でDMFを用いて混合し、さらにこの混合物に対して平均粒径3.5μmの凝集エポキシ樹脂微粉末(特開H1−301775号の実施例1参照)を30重量部、混合した後、ジメチルホルムアミド/ブチルセロソルブ(1/1)混合溶剤を添加しながら、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。
樹脂組成:感光化エポキシ/フェノキシ/TMPTA /I-907 /イミダゾール=79/30/10/5/5【0082】本実施例の接着剤の樹脂マトリックスに相当する樹脂を硬化させて得られた硬化物は、その断面を2−ブタノン(フェノキ樹脂を溶解する) でエッチングしてSEM観察したところ、平均粒径0.2 〜2μmのエポキシ樹脂リッチと考えられる球状物の連続構造(共連続構造)が見られた。
【0083】(実施例12)感光性樹脂+熱可塑性樹脂(1) 基本的には実施例6と同様であるが、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェル製)のエポキシ基の 100%アクリル化した感光性オリゴマー、PSF、イミダゾール硬化剤(四国化成製、商品名:2E4MZ-CN)、感光製モノマーであるトリメチルトリアクリレート(TMPTA )、光開始剤(チバガイギー製、商品名:I-907 )を用い、下記組成でDMFを用いて混合し、さらにこの混合物に対して平均粒径3.5 μmの凝集エポキシ樹脂微粉末(特開H1−301775号の実施例1に製法は記載されている)を30重量部、混合した後、ジメチルホルムアミド/ブチルセロソルブ(1/1)混合溶剤を添加しながら、ホモディスパー攪拌機で粘度120CPSに調整し、続いて、3本ロールで混練して接着剤溶液を得た。
樹脂組成:感光化エポキシ/PSF/TMPTA /I-907 /イミダゾール=60/40/10/5/5【0084】本実施例の接着剤を構成するマトリックス樹脂のみを硬化させて得られた硬化物は、その断面をPSFを溶解させる塩化メチレンでエッチングしてSEM観察したところ、平均粒径2〜5μm程度のエポキシ樹脂リッチと考えられる球状物が見られた。マトリックス樹脂は、エポキシリッチの球状物がPSFリッチのベースに浮かんだいわゆる海ー島構造(球状ドメイン構造)であった。
【0085】(比較例2)熱硬化性樹脂のみ(1) 以下に示す樹脂組成以外は実施例6と同様にして、エポキシ樹脂からなる擬似粒子含有の感光性樹脂組成物の溶液を調整し、第1層導体回路を有する配線板の上に、厚さ約50μmの層間樹脂絶縁層とめっき膜の厚さが25μmの無電解銅めっき膜を交互に形成し、配線層が4層のビルドアップ多層配線板を製造した。
〔樹脂組成〕
■クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェル製)の50%アクリル化物 :60重量部■ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製) :40重量部■ジアリルテレフタレート :15重量部■2-メチル-1- [4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパノン-1(チバ・ガイギー製) :4重量部■イミダゾール系硬化剤(四国化成製、商品名:2P4MHZ) :4重量部【0086】実施例6〜12および比較例2にて製造したビルドアップ多層配線板における無電解銅めっき膜のピール強度、ならびに層間樹脂絶縁層の絶縁抵抗とガラス転移温度Tg を測定した。さらに、−65℃×30min 〜125 ℃×30min のヒートサイクル試験を行った。その結果を表4に示す。この表に示す結果から明らかなように、疑似均一相溶解構造、共連続構造、球状ドメイン構造を示す本発明の無電解めっき用接着剤層を用いることにより、接着強度、絶縁性、耐熱性およびヒートサイクル特性が従来のものに比べ著しく向上したプリント配線板を製造することができる。
【0087】
【表4】

【0088】なお、上記ピール強度、絶縁抵抗、ガラス転移温度およびヒートサイクル試験の方法または評価方法を説明する。
(1) ピール強度JIS−C−6481(2) 絶縁抵抗基板に層間絶縁層を形成し、粗化したのち触媒付与を行い、次いで、めっきレジストを形成してレジストパターンを作成した。その後、無電解めっきを施し、パターン間の絶縁抵抗を測定した。なお、パターン間絶縁性は、L/S =75/75μmのくしばパターンにて、80℃/85%/24V,1000時間後の値を測定した。
(3) ガラス転移温度Tg動的粘弾性測定により測定した。
(4) ヒートサイクル試験−65℃×30min 〜125 ℃×30min のヒートサイクル試験を行い、クラックの発生と層間絶縁層の剥離の有無を調べ、その耐久サイクル数で評価した。
【0089】(実施例13)金属調メラミン化粧板実施例1〜12では、プリント配線板に関する実施例を記載したが、本実施例は、化粧板への応用である。
(1) 坪量が10〜80g/m の木材パルプ繊維抄造紙に、メラミン樹脂を含浸させて、これを乾燥させ、厚さ100 μmの含浸紙とした。
(2) 合板ボードの表面に実施例1で得られた無電解めっき用接着剤を塗布し、その後、30℃で真空乾燥し、80℃で2時間、120 ℃で5時間、150 ℃で2時間、加熱硬化させて厚さ20μmの無電解めっき用接着剤層を形成した。
(3) この接着剤層をクロム酸水溶液(CrO3,500g/l)に70℃で15分間浸漬して接着剤層の表面を粗化し、次いで、中和溶液(シプレイ製)に浸漬したのち水洗して、Rmax=10±5μmの接着剤層を得た。
(4) 接着剤層の表面を粗化した基板に、パラジウム触媒(シプレイ製)を付与して接着剤層の表面を活性化させ、常法に従い、無電解銀めっきを行い、表面に厚さ60μmの銀層を形成した。
(5) この銀層の表面に、前記(1) で得られたメラミン樹脂含浸紙をオーバーレイ紙として積層した。
(6) さらに、このオーバーレイ紙の上に1〜60μmの凹凸が設けられた賦型板を積層し、30〜80kg/cm の圧力下で130 〜170 ℃で熱圧着することにより、オーバーレイ紙を設けるとともに、その表面にエンボス加工を施して、金属光沢を持つメラミン化粧板を得た。
【0090】このメラミン化粧板は、表面が透光性で凹凸を持つメラミン樹脂層が形成されているため、この凹凸がレンズの役割を果たし、下層の銀層が浮き上がって見え、化粧板に銀の光沢が映えて、意匠性に優れるものであった。さらに、この化粧板に対して、−65℃×30min 〜125 ℃×30min のヒートサイクル試験を行ったが、クラックも剥離も見られなかった。
【0091】
【発明の効果】以上説明したようにこの発明によれば、無電解めっき用接着剤の耐熱性樹脂マトリックスとして、未硬化の感光性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物を用い、その混合物を硬化処理することによって複合化して擬似均一相溶構造,共連続構造もしくは球状ドメイン構造を形成した樹脂複合体を無電解めっき用接着剤層として用いることができるので、耐熱性、電気絶縁性および化学的安定性を低下させることなく、樹脂マトリックスを強靱化し、接着剤層や層間絶縁層と無電解めっき膜との密着性を著しく改善することができる。これにより、より高密度でパターン精度の高い配線においてもピール強度に優れるプリント配線板を安定して提供することができる。また、ピール強度に優れるため、プリント配線板だけでなく、化粧板などの建築材など、めっき膜が被覆された各種構造材、部品への応用ができ、産業上有益である。
【出願人】 【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
【住所又は居所】岐阜県大垣市神田町2丁目1番地
【出願日】 平成5年12月27日(1993.12.27)
【代理人】 【識別番号】100080687
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 順三 (外1名)
【公開番号】 特開2003−224355(P2003−224355A)
【公開日】 平成15年8月8日(2003.8.8)
【出願番号】 特願2002−356195(P2002−356195)