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【発明の名称】 有機EL素子製造に用いる真空蒸着用金属マスク
【発明者】 【氏名】土屋 輝直
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内

【氏名】坂田 卓也
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内

【要約】 【課題】有機EL素子製造における真空蒸着工程において、取り扱い性の良い且つ高精細パターニングを可能とする金属マスクを提供する。

【解決手段】多数のスリットを形成した有効部11Aとその両端の保持部11B、11Bを備えた金属マスク11において、有効部11Aの両側に両端の保持部11B、11Bに連結するように外枠11C、11Cを設けて補強し、取り扱い易くする。また、外枠11Cと保持部11Bの間には易開封線を形成して外枠11Cを容易に除去可能とし、金属マスクを基板表面に配置して蒸着する際には外枠11Cを除去し、残りの部分に張力を加えて有効部11Aのスリットを引き揃えた状態に維持し、高精細なパターニングを可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機EL素子製造における真空蒸着工程で用いる真空蒸着用金属マスクであって、多数の微細なスリットを微小間隔で平行に配列した有効部と、その両端の保持部と、前記有効部の両側に位置し且つ両端の保持部に連結された外枠と、前記外枠を前記保持部から分離することができるよう前記外枠と保持部との境界に形成された易切断線を有する真空蒸着用金属マスク。
【請求項2】 前記有効部の両側で且つ前記外枠の内側に、両端の保持部を連結するサポート部を設けて前記有効部を補強していることを特徴とする請求項1記載の真空蒸着用金属マスク。
【請求項3】 前記有効部の多数のスリット間に位置する金属線部が、金属マスクの一方の面側を頂辺とし、他方の面側を底辺とする二等辺台形断面を有することを特徴とする請求項1又は2記載の真空蒸着用金属マスク。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機EL素子の製造における真空蒸着工程で用いる真空蒸着用金属マスクに関する。
【0002】
【従来の技術】有機EL素子は、図6に示すように、ガラス板等の透明基板1上に、アノード電極(ITO)2、ホール輸送層3、有機層(発光層)4、電子輸送層5、カソード電極6をこの順に積層し、表面に封止缶7を配置した構成となっている。有機EL素子の種類には、有機層4が高分子タイプと低分子タイプがあり、素子の駆動方式にはパッシブタイプとアクティブタイプがある。これらの有機EL素子の製造工程において、パッシブタイプ及びアクティブタイプの低分子有機層の形成及びパッシブタイプのカソード電極6の形成には真空蒸着が行われている。そして、低分子有機層及びカソード電極の真空蒸着パターニングには、多数の微細なスリットを微小間隔で平行に配列した有効部を備えた金属マスクを使用していた。また、カソード電極の真空蒸着パターニングには、電気絶縁性の隔壁を形成するカソードセパレータ法(特開平8−315981号公報参照)が用いられることもあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、かかる従来技術にはいずれも問題があった。すなわち、金属マスクを用いる場合、従来は、蒸着すべき基板表面に単に金属マスクを載置し、裏面から磁石を用いて保持させているが、そのマスクの有効部(多数の微細なスリットを形成している部分)は剛性がきわめて小さく、このため、金属マスクを基板表面に保持させる際に有効部のスリットにゆがみを生じ易く、特に、スリット形状をきわめて微細にすると、一層スリット精度が維持できなくなり、高精細パターニングができないという問題があった。一方、カソードセパレータ法は、フォトリソグラフィーにて露光の強弱を調整して隔壁の斜面の角度を作っているため、安定した製造が困難であった(逆台形断面の隔壁の斜面部分のテーパー角度が小さいと電極の分離ができず、大きいと三角形状になり倒れてしまう)。
【0004】本発明者らはかかる問題点を解消すべく鋭意検討の結果、金属マスクを用いた真空蒸着パターニングにおいて、図7に示すように、中央に多数のスリットを形成した有効部8Aを備え、その両端をスリットのない保持部8B、8Bとした構成の金属マスク8を用い、その金属マスク8を、両端の保持部8B、8Bをつかんで引っ張った状態で治具に保持させ、その表面に基板を配置することで、高精細なスリットでも、そのスリットを形成している多数の細長い金属線部を引き揃えて基板表面に位置させることができ、高精細パターニングが可能であることを見出した。ところが、この構成の金属マスク8にも更に改良すべき点のあることが判明した。すなわち、図7に示す金属マスク8では中央に剛性の低い有効部8Aが存在するため、取り扱いにくく、わずかな外力が加わったのみでも、変形して不良品となってしまうことがあるという問題が生じた。
【0005】本発明はかかる問題を解決すべくなされたもので、有効部に張力を掛けてセットする構成の金属マスクにおいて、剛性を高くして取り扱いを容易とした金属マスクを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、多数の微細なスリットを微小間隔で平行に配列した有効部と、その両端の保持部とを有する金属マスクの剛性を大きくして取り扱いを容易とするため、有効部の両側に、両端の保持部に連結するように外枠を設け、且つその外枠と保持部との境界に易切断線を形成するという構成としたものである。この構成により、金属マスクの輸送時や治具への取り付け時等の取り扱い時には、外枠が有効部を補強するので、外力から有効部の変形を防ぐことができ、また、治具に取り付け、張力を加えた状態で使用する際には、外枠を易切断線を利用して分離しておくことで、有効部の金属線部に適度な張力を加えて、所定形状に引き揃えておくことができ、高精細パターニングを行うことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の金属マスクは、有機EL素子製造における真空蒸着工程で用いる真空蒸着用金属マスクであって、多数の微細なスリットを微小間隔で平行に配列した有効部と、その両端の保持部と、前記有効部の両側に位置し且つ両端の保持部に連結された外枠と、前記外枠を前記保持部から分離することができるよう前記外枠と保持部との境界に形成された易切断線を有することを特徴とする。
【0008】ここで、前記有効部の両側で且つ前記外枠の内側に、両端の保持部を連結するサポート部を設けて有効部を補強することが好ましい。このようにサポート部を設けておくと、金属マスクに張力を付加した時、その張力の一部をサポート部が負担することとなるため、金属マスクに或る程度の大きい張力を加えても、有効部の細い金属線部に過大な張力が加わることを防止でき、金属マスクの破損を防止できると共に金属マスクに加える張力の調整をラフとすることができるという利点が得られる。
【0009】有効部に設けている多数の金属線部の断面形状は任意であるが、金属マスクの一方の面側を頂辺とし、他方の面側を底辺とする二等辺台形断面とすることが好ましい。この構成を採用すると、蒸着時に基板表面にターゲットの陰ができることがなく、このため均一な蒸着膜を得ることができる。
【0010】
【実施例】以下、図面に示す本発明の好適な実施例を説明する。図1は本発明の一実施例に係る金属マスクを示すもので、(a)はその金属マスクの概略平面図、(b)は金属マスクの有効部の一部の拡大して且つスリットに平行方向に見た概略断面図、(c)は金属マスクの易切断線を示す概略断面図、(d)は外枠を除去した後の金属マスクを示す概略平面図である。全体を参照符号11で示す金属マスクは、通常、厚み30〜100μm程度の、好ましくは50μm程度のステンレス鋼等の金属板で形成されており、中央に多数の微細なスリット11aを微小間隔で平行に配列した有効部11Aと、その両端の保持部11B、11Bと、有効部11Aの両側に位置し且つ両端の保持部11B、11Bに連結された外枠11C、11C等を備えている。有効部11Aの長さL及び幅Wやスリット幅等は、形成すべき有機EL素子の大きさに応じて適宜定めるものであり、この実施例では、長さLを60mm、幅Wを40mmとしている。また、有効部11Aに形成するスリット11aの幅wは260μm、スリット11a間に位置する金属線部11bの幅d(最大幅)は40μmとしている。金属線部11bの断面形状は単純な矩形状でもよいが、本実施例では、図1(b)に示すように、金属マスクの一方の面側を頂辺とし、他方の面側を底辺とする二等辺台形状として、スリット11aの片側の開口(図面では下側の開口)を他方の開口よりも大きくしている。この構成とすることで、金属マスク11の上に基板12を配置して蒸着操作を行った際、蒸気が広い側の開口から進入することとなり、従って、基板表面にターゲットの陰ができることがなく、このため均一な蒸着膜を得ることができる。
【0011】外枠11Cは、有効部11Aを補強するために設けたものであり、この外枠11C、11Cで有効部11Aの両側の保持部11B、11Bを連結することで、金属マスク11の中央部に剛性の極めて小さい有効部11Aが存在しているにも関わらず、金属マスク11全体の剛性を高めることができる。このため、この金属マスク11を輸送や保管のために取り扱う際、或いは、後述する治具に取り付ける際に、金属マスク11に不用意に外力が加わっても、金属マスク11に変形を生じることはほとんどなく、このため、金属マスク11の取り扱いが容易となる。外枠11Cの幅は、必要な補強効果を確保しうるように定めるものであり、例えば、5〜20mm程度に、好ましくは10mm程度に選択すればよい。外枠11Cと保持部11Bの境界には、外枠11Cを保持部11Bから容易に分離することができるよう、易切断線11dを形成している。易切断線11dの構成は、外枠11Cを容易に分離可能なものであれば任意であるが、本実施例では、図1(c)に示すように、金属マスク11の厚みの半分以上に形成した溝11dを用いている。
【0012】有効部11Aの両側には、外枠11Cの内側に位置するように、両端の保持部11B、11Bを連結するサポート部11c、11cが形成されている。このサポート部11c、11cは、図1(d)に示すように、外枠を分離した後の金属マスク11に残るように設けており、有効部11Aを補強する効果を有している。すなわち、有効部11Aは多数の金属線部11bを備えた構成ではあるが、金属線部11bはきわめて細いため、それにはあまり大きい張力を加えることができず、このため、サポート部11c、11cが無い場合には、金属マスク11に加える張力を小さい所定の範囲に調整しなければならないが、サポート部11c、11cを設けたことにより、そのサポート部11c、11cが金属マスク11に加える張力の一部を負担することとなり、かなり大きい張力を加えても支障がなくなる。かくして、金属マスク11に加える張力をかなりラフに設定することが可能となる。サポート部11cの幅は、広い程補強効果は大きくなるが、あまり広くすると、金属マスク11に張力を加えてスリットを整列させる際に要する張力をきわめて大きくしなければならず、作業性が悪くなる。これらを考慮して、サポート部11cの幅は、1.5〜2mm程度とすることが好ましい。
【0013】次に、上記構成の金属マスク11を取り付けて蒸着に供するための治具(金属マスク保持治具という)を説明する。図2は金属マスク保持治具の概略平面図、図3は図2に示す金属マスク保持治具を矢印A−A方向に見た概略端面図、図4はその金属マスク保持治具に金属マスクを取り付けた状態を示す概略平面図、図5は金属マスク及び基板を取り付けた状態の金属マスク保持治具を図4の矢印B−B方向に見た概略断面図である。図2〜図5において、全体を参照符号13で示す金属マスク保持治具は、中央に蒸着範囲を規制するウインドウ14を備えたベースプレート15と、金属マスク11を、その金属マスク11に形成している有効部11Aをウインドウ14の上に位置させ且つスリットの長手方向に引っ張った状態でベースプレート15の上に位置させるマスク引張保持手段16と、基板12をベースプレート15に固定する基板クランプ手段17等を備えている。ベースプレート15は、その上に金属マスク11を張力を掛けた状態で保持させ且つその上に更に基板12を保持させることができる剛性を備えた板材で構成されている。なお、ベースプレート15は単に1枚の板材で構成する場合に限らず、所定サイズのウインドウを形成した薄い金属板と、その金属板を支持する剛性を備えた板材とで構成してもよく、その場合には、板材には金属板のウインドウよりも大きい開口を形成しておけばよい。
【0014】マスク引張保持手段16は、金属マスク11の一端の保持部11Bをベースプレート15に固定する固定側マスククランプ20及びボルト21と、ウインドウ14に関して固定側マスククランプ20とは反対側に配置され、固定側マスククランプ20から離れる方向及び近づく方向に移動可能なスライダ23と、ベースプレート15に固定され、スライダ23を移動可能に保持したガイドロッド24と、スライダ23に金属マスク11の他端の保持部11Bを固定する移動側マスククランプ25及びボルト26と、固定側マスククランプ20と移動側マスククランプ25で保持された金属マスク11に所望の張力を付与するようスライダ23を固定側マスククランプ20から離れる方向に移動させる移動手段28等を備えている。移動手段28は、ベースプレート15に固定された支持棒29と、その支持棒29に保持され、ベースプレート15とスライダ23の間に配置された圧縮コイルバネ30からなる弾性手段を備えている。ガイドロッド24の先端には、スライダ23の抜け止め用のストッパ32が取り付けられている。基板クランプ手段17は、基板をベースプレート15に押し付けて固定する基板用クランプ34及びボルト35を備えている。
【0015】次に、上記構成の金属マスク保持治具13による金属マスク保持動作及び真空蒸着動作を説明する。図2において、万力等(図示せず)でスライダ23を、圧縮コイルバネ30を圧縮させる方向に移動させ、その位置に保持する。次に、金属マスク11をベースプレート15上に置き、有効部11Aをウインドウ14に合わせ且つウインドウ14に対してアライメントする。その状態で、図4に示すように、金属マスク11の一端を固定側マスククランプ20でベースプレート15に固定し、他端を、移動側マスククランプ25でスライダ23に固定する。なお、これらの動作を行う際、金属マスク11は両側の外枠11C、11Cを有する状態のままであるので、有効部11Aが変形するというようなトラブルを回避できる。その後、万力を開放し、スライダ23を移動自在とする。これにより、圧縮コイルバネ30がスライダ23を外向きに押して移動させ、金属マスク11に均一な張力を加える。その後、金属マスク11の両側の外枠11Cを折り曲げて切り離す。これにより、金属マスク保持治具13に保持された金属マスク11は、図1(d)に示す状態となり、有効部11A及びその両側のサポート部11c、11cに、圧縮コイルバネ30によるばね力が作用し、有効部11Aは均一な張力で引っ張られた状態となり、有効部11Aの多数のスリットが真っ直ぐで且つ一定ピッチで並んだ状態に保持される。なお、外枠11Cの分離操作は、万力を開放してスライダ23を移動自在とする前に行っても良い。
【0016】次に、図5に示すように、基板12を、その蒸着すべき領域を金属マスク11の有効部11Aに対してアライメントを取って、金属マスク11上に乗せ、基板用クランプ34でベースプレート15に固定する。以上により、金属マスク11が多数のスリットを所定の形状に保持した状態で基板12の表面に配置されることとなる。その後、金属マスク保持治具13によって組み合わされた金属マスク11と基板12を、そのままの状態で蒸着機にセットし、蒸着を行う。以上により、基板12の表面に、金属マスク11の有効部11Aのスリットに対応して蒸着が行われ、高精細パターニングが行われる。
【0017】なお、上記実施例では、スライダ23を圧縮コイルバネ30で押して金属マスク11に張力を付与しているが、この代わりに、引張ばねや板ばねを用いてもよい。また、スライダ23を移動させるには、ばねを用いる代わりに、ボルト等を用いても良い。更に、金属マスク11を固定側マスククランプ20で、ベースプレート15に固定しているが、この代わりに、スポット溶接等によって固定してもよい。また、上記実施例では、ベースプレートに1個のウインドウを形成し、金属マスクにも1個の有効部を形成しているが、本発明はこの構成に限らず、ベースプレートに複数のウインドウを形成し、且つ金属マスクにも、ベースプレートのウインドウに対応する部分に多数のスリットを形成した有効部を形成し、多面付けする構成としてもよい。また、ベースプレートには複数のウインドウを形成し、金属マスクにはその複数のウインドウを覆う広い領域にスリットを形成した有効部を形成し、多面付けする構成としてもよい。
【0018】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の金属マスクは、有効部の両側に分離可能な外枠を形成した構成としたので、取り扱い時に外力によって有効部が変形してしまうということがなく、取り扱いがきわめて容易であり、しかも、有機EL素子の製造工程において、真空蒸着に用いる際には、外枠を除去した後の金属マスクをスリットの長手方向に引っ張った状態で基板表面に配置することで、きわめて微細なスリットを微細間隔に配置した高精細なマスクでも、スリットを真っ直ぐな状態で且つ所定のピッチに保持した状態で基板表面に配置することができ、真空蒸着により高精細なパターンを基板上に形成することができるという効果を有している。
【出願人】 【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号
【出願日】 平成13年8月29日(2001.8.29)
【代理人】 【識別番号】100075971
【弁理士】
【氏名又は名称】乗松 恭三
【公開番号】 特開2003−68456(P2003−68456A)
【公開日】 平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願番号】 特願2001−259521(P2001−259521)