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【発明の名称】 静電チャック装置
【発明者】 【氏名】松木 照幸
【住所又は居所】神奈川県平塚市万田1200 株式会社小松製作所研究本部内

【氏名】杉原 幹英
【住所又は居所】神奈川県平塚市万田1200 株式会社小松製作所研究本部内

【氏名】門谷 ▲皖▼一
【住所又は居所】神奈川県平塚市万田1200 株式会社小松製作所研究本部内

【要約】 【課題】基板の裏面と静電チャックとの間の接触熱抵抗を低減し、基板表面の高精度の温度制御が可能な、耐プラズマ性及び耐久性の高い静電チャックを提供する。

【解決手段】静電チャック10の絶縁層として少なくとも第1の電気絶縁層13に絶縁性粘性流体又は低硬度のゲル状物質を使う。この粘性流体又はゲル状物質からなる電気絶縁層13の保持面は基板14の裏面形状に倣って変形するため、ほぼ全面で均一に密着する。また、電気絶縁層の露出面を耐蝕性ある第2の電気絶縁層で被覆してもよく、更には第1絶縁層13と金属製の絶縁層支持板11との間にも高絶縁性材料からなる第3の電気絶縁層を配することもできる。また、電極12は第1絶縁層13の内部に埋設することもできるが、第2絶縁層の下面又は第3絶縁層の上面に固着することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属製支持板(11,21) 上に固着された電気絶縁層(13)の内部に電極(12,22) が配され、その絶縁層の上面を基板の保持面として静電気により吸着保持する静電チャック装置にあって、前記電極(12,22) を覆う電気絶縁層の少なくとも一部が粘性流体又は低硬度のゲル状物質からなること特徴とする静電チャック装置。
【請求項2】 前記電気絶縁層の全てが低硬度のゲル状物質からなる請求項1記載の静電チャック装置。
【請求項3】 前記電気絶縁層が少なくとも二層から構成され、その内層の少なくとも一層(13,23) が前記粘性流体又は低硬度のゲル状物質層から構成され、その外表面が少なくとも耐蝕性ある第2絶縁層(24)により被覆されてなる請求項1記載の静電チャック装置。
【請求項4】 前記電気絶縁層が少なくとも三層から構成され、その内層の少なくとも一層(13,23) が粘性流体層又は低硬度のゲル状物質層から構成され、それらの電気絶縁層(13,23) と上記金属製支持板(11,21) との間に、高絶縁性を有する第3の電気絶縁層(25) が更に配されてなる請求項3記載の静電チャック装置。
【請求項5】 前記電極(12,22) が前記第2絶縁層(24)の下面に配されてなる請求項3又は4記載の静電チャック装置。
【請求項6】 前記電極(12,22) が前記第3絶縁層(25)の上面に配されてなる請求項4記載の静電チャック装置。
【請求項7】 前記第2絶縁層(24) が他の電気絶縁層(13,23,25)及び同絶縁層(13,23,25)周辺の上記金属製支持板(11,21) の外部露出表面を被覆してなる請求項3又は4記載の静電チャック装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は基板表面の温度制御が可能で優れた伝熱性能と耐久性を有すると共に、被加工体に対する高密着性を有する静電チャックに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体製造工程における各種の成膜工程、ドライエッチング工程、イオン注入工程においては半導体基板を保持するために静電チャックが用いられている。この静電チャックは、電気絶縁層の内部に電極を埋設して、その絶縁層上面を基板の保持面とし、この保持面と基板との間に直流電圧を印可することにより、誘電分極によるクーロン力や微少な漏れ電流によるジョンソン・ラーベック力と呼ばれる吸着力を発生させて基板を保持面に吸着保持させている。
【0003】これらの静電チャックの電気絶縁層としては、例えば特開平7−106300号公報、特開平9−298233号公報、特開2000−113850号公報、特開2000−286332号公報などにも記載されているように、アルミナ等のセラミックスやポリイミド、シリコーンゴム等の高分子材料を使うことが提案され、一部は実用化されている。
【0004】前記特開平7−106300号公報によれば、電気絶縁層の耐プラズマ性を向上させるために、高分子有機膜から構成される電気絶縁層の露出表面を弗素樹脂にて被覆している。また特開2000−113850号公報によれば、電気絶縁層に各種のセラミックスやガラスが使われ、その露出表面にプラズマなどに対する耐性を有し、耐熱性、耐薬品性、耐老化性に優れたPFTE、メチルフェニルビニル、フロロシリコーンなどのシリコーン樹脂を浸食防止絶縁膜として被覆している。特開2000−286332号公報には、電気絶縁層にポリイミド樹脂フィルムを使い、その表面をフッ素樹脂からなる保護膜により被覆し、ポリイミト樹脂フィルムに対するエッチングによる腐食を防止している。
【0005】また、上記特開平9−298233号公報には、金属支持板上の熱伝導性シリコーンゴムからなる第1絶縁層上に電極を配し、この電極上に硬さが85以下であり、表面粗さが5μm以下である熱伝導性シリコーンゴムからなる第2絶縁層を形成して放熱性を確保し、基板との密着性を向上させて接触熱抵抗を低く抑え、基板の温度を精度よく均一に且つ一定にする静電チャックが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、電気絶縁層として用いられるセラミックスが熱伝導率、耐プラズマ性に優れることから、セラミックス製の静電チャックはエッチング装置やCVD装置などに広く使用されているが、その材質は硬すぎて基板(半導体ウェハ)となじみにくいため、静電チャック時に基板と静電チャックとは実際には殆ど接触していない状態となり、その伝熱性能が非常に乏しいものとなっていた。
【0007】一方、 ポリイミド製の静電チャックは安価に製造できるため、エッチング装置にも多く使用されているが、硬く、熱伝導率に乏しいことから、セラミックスと同様にその伝熱性能に乏しく、また耐プラズマ性も十分でないため耐久性にも問題があった。
【0008】そこで、これらの静電チャックを減圧下で使用する際に、基板と静電チャックの支持板であるサセプタとの間の熱伝達を促進させるため、基板と静電チャックの間にヘリウムガスなどの不活性ガスを供給し伝熱性能を向上させていることも多い。しかしながら、不活性ガスを供給するために装置全体が複雑化し、また不活性ガスのリークによるプロセスへの影響なども懸念されている。
【0009】一方、上記特開平9−298233号公報のようにシリコーンゴムなどを使った静電チャックは、セラミックスやポリイミドを使った静電チャックに比べると接触熱抵抗を低減させることができることから、伝熱性能には優れているものの、耐プラズマ性、耐久性に乏しく、実際にはエッチング装置での使用が困難であるため、イオン注入装置など一部の用途に限られていた。
【0010】また、特開2000−113850号公報では、シリコーンゴム製の静電チャックの上面にダイヤモンド状カーボン(DLC)、フッ素樹脂、ポリイミドなどをコーティングすることも提案されている。しかるに、これらのコーティングはウエハに対する離脱性にのみ着目したものであって、シリコーンゴムからなる電気絶縁層の周側面は相変わらず外部に露出しており、それらの材質からも耐プラズマ性については何ら考慮されていないものである。
【0011】更に、シリコーンゴム製の静電チャックに対して、耐プラズマ性を向上させるために、その表面にダイヤモンド状カーボン(DLC)やフッ素樹脂、ポリイミドなどの硬度が高い材質をコーティングすると、通常のシリコーンゴム程度の硬さになると接触熱抵抗が増加してしまい、伝熱性能を期待通りに向上させることができなくなる。その結果、プラズマに耐え得るに十分な厚みを持ったコーティングをすることは不可能となり、現実にはエッチング装置に使うことは不可能となる。
【0012】本発明は、上述のような課題を解消すべくなされたものであり、その第1の目的は電気絶縁層に基板となじみやすい材質を使い基板との間の接触熱抵抗を下げて伝熱性能を向上させた静電チャックを提供することにあり、更に第2の目的は耐蝕性にも優れた静電チャックを提供することにある。他の目的は、以下の説明により明らかにされる。
【0013】
【課題を解決するための手段及び作用効果】上記第1の目的は、請求項1に係る発明の構成を備えていることにより達成される。すなわち、請求項1に係る発明は、金属製支持板上に固着された電気絶縁層の内部に電極が配され、その絶縁層の上面を基板の保持面として静電気により吸着保持する静電チャック装置にあって、前記電極を覆う電気絶縁層の少なくとも一部が粘性流体又は低硬度のゲル状物質からなること特徴とする静電チャック装置にある。
【0014】前記電気絶縁層の一部に粘性流体又は低硬度のゲル状物質を採用することにより、粘性流体又は低硬度のゲル状物質の相手方形状に倣って変形する物性を利用して、静電チャックの基板保持面を基板の裏面に対して均一に密着させることが可能となり、例えばエッチング処理時の真空環境下にあっても、その接触界面に真空層を実質的に排除することができるようになり、その接触熱抵抗を減少させ、高い熱伝導性を確保する。
【0015】ここで、粘性流体としては、例えば熱伝導率が1以上の各種のグリース、シリコンオイルなどを挙げることができ、ゲル状物質としては、特に高分子材料であることが好ましく、その材質としては、例えばシリコーンゲル、ポリウレタンゲル、エポキシゲルなどを挙げることができる。ゲル状高分子材料のゲル化は、多官能基を含むモノマーの縮合反応や高分子溶質が架橋剤やイオン結合などの分子間反応、溶質間の水素結合や疎水結合によって架橋点を形成するときに生じる。
【0016】上記ゲル状高分子材料のうちにあって、特に、以下に示すような優れた特徴を持つことからシリコーンゲルがもっとも好ましい。シリコーンゲルの基本構造はジメチルシロキサンポリマーを化学結合によって相互架橋させて、シリコーンゴムとシリコーンオイルの中間的な性質を持たせたものであり、ゴムよりもはるかに柔らかく保形性のある材料である。
【0017】その架橋密度は通常のシリコーンゴムの1/3〜1/10に制御されている。また、一般のヒドロゲルのような水分子と極性基間の水素結合がないこと、ポリマー骨格が熱的に安定であるため、ゲル状態を広い温度範囲で維持することができる。更に、このシリコーンゲルは、■各物性の温度依存性が小さく、耐熱性があり、■機械的強度が比較的高く、■粘弾性特性の調整が可能であって成形が容易であり、■電気特性・耐候性に優れるなどの特徴を持っている。
【0018】本発明で使用される低硬度ゲル状高分子材料は、接触熱抵抗を低減できるように、低硬度、低弾性率である必要があり、JIS K6301の硬さが10以下、JIS K2207の針入度は5以上であり、特に50〜200であることが好ましい。
【0019】また、前記ゲル状高分子材料の肉厚が薄すぎると、機械的強度、絶縁破壊電圧が低下してしまい、また接触熱抵抗の低減に必ずしも有効ではない。一方、その肉厚が厚すぎると、その分の熱抵抗が増加してしまう。実験によれば、ゲル状高分子材料はある肉厚のとき最適値をとることを知った。その厚みは0.1〜2mmであることが好ましい。特に、静電チャックとして使用する場合、その吸着力は誘電層の厚さの二乗に反比例することから1mm以下であることが好ましい。
【0020】請求項2に係る発明は、前記電気絶縁層の全てが低硬度のゲル状物質から構成される場合を規定している。上述のごとく、ゲル状物質単独の電気絶縁層を備えた静電チャックは電気絶縁層が保形性を有するとともに極めて柔軟であるため、基板を載置して保持すると、既述したとおり、電気絶縁層の保持面は基板の裏面の凹凸に倣って変形し、ほぼ全面で密着するため、基板と吸着面との接触熱抵抗が低く抑えられる。その結果、特に冷却効率を向上させることができることから、高効率、高精度な基板の温度制御が可能となり、基板温度の低温化、冷却装置の省エネ化にも対応できるものである。
【0021】更に、本静電チャックは、上述のごとく、接触熱抵抗を極めて低く抑えることができるため、真空中においても伝熱性能に優れ、従来から使われている伝熱促進用の冷却ガス等が不要になる。また、ゲル状物質は熱伝導性フィラーの添加により高い熱伝導性を付与することが可能である。ゲル状物質に添加する熱伝導性フィラーとしては、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化珪素などがある。
【0022】その熱伝導率は1W/m・K以上であることが好ましく、シリコーンゲルのシート成形品としては株式会社ジェルテック製:λゲル(熱伝導率6.5W/m・K)などがある。一方、上記電極材料としては、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、タングステンなどの金属系の導電体、窒化チタンなどのセラミックスを挙げることができる。
【0023】請求項3に係る発明は、上記請求項1の静電チャックにあって、その電気絶縁層が少なくとも二層から構成され、その内層の少なくとも一層が前記粘性流体又は低硬度のゲル状物質層から構成され、その外表面が少なくとも耐蝕性ある第2絶縁層により被覆されてなる静電チャック装置にある。
【0024】本発明で使用できる第2絶縁層としては、例えばポリイミド樹脂もしくはフッ素樹脂などを挙げることができる。ポリイミド樹脂としては、縮合反応型で非熱可塑性の全芳香族ポリイミド(PI)はもちろんのこと、熱可塑性ポリイミド、また付加反応型の熱硬化性ポリイミドであるポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)なども含まれる。フッ素樹脂としては、PTFE、PFA、ETFE、FEPなどが挙げられ、特に化学的に安定なPTFEやPFAが好ましい。
【0025】また、ゲル状物質からなる電気絶縁層を、PFAで被覆したのちに、更にその表面をPTFEで被覆し、或いはゲル状物質からなる電気絶縁層をPTFEで被覆し、更にその表面をポリイミド樹脂で被覆するような三層構造とするなど、最外層に耐蝕性絶縁層がくるように自由に組み合わせた多層構造を採用することもできる。
【0026】第2絶縁層の膜厚は接触熱抵抗の点から薄いほうが好ましいが、薄すぎると保護膜としての役割を十分に果たすことができなくなり、機械的強度も低下する。特に、本発明の静電チャックのように第1絶縁層に低硬度のゲル状高分子材料を用いた場合、保護膜の膜厚が10μm以下であると強度が実用に耐えられず、同時に耐蝕性も十分でなくなる。また、その膜厚が50μmを越えると保護膜の硬度が高くなり、ゲル状物質からなる電気絶縁層が期待通りの変形を伴わず、第2絶縁層と基板との間の接触熱抵抗が高くなって、期待通りの伝熱性能が得られない。
【0027】このように、ゲル状物質からなる電気絶縁層の硬度及び弾性と、その絶縁層に被覆される耐蝕性ある第2絶縁層の膜厚を適正化することにより、高い伝熱性能が得られると同時に、基板の冷却特性を損なうことなく耐久性を向上させることができる。
【0028】請求項4に係る発明は、同じく上記請求項1の静電チャックにおいて、その電気絶縁層が少なくとも三層から構成され、その内層の少なくとも一層が粘性流体層又は低硬度のゲル状物質層から構成され、それらの電気絶縁層の上記金属製支持板の少なくとも上面に高絶縁性を有する第3の電気絶縁層が更に配されてなる請求項3記載の静電チャック装置にある。
【0029】一般に、粘性流体層はその絶縁性を高めることは可能であるが、流動性があるため、どうしても密封層の内部に封入する必要がある。一方、ゲル状物質、特にゲル状高分子材料の場合には、所要の熱伝導率を得ることができ、例えば上記請求項2のごとく、静電チャックの電気絶縁層として単独で使用することも可能ではあるが、通常の絶縁性物質と比較すると電気絶縁性に劣る。
【0030】そこで、本発明では、静電チャックの上記金属製支持板の上面に直接絶縁性の高い第3の電気絶縁層を配すると共に、その絶縁層と該表面に配される耐食性の第2絶縁層とにより、上記粘性流体層又はゲル状物質層を封入している。これにより、粘性流体層の保形性が保障され、或いはゲル状物質のもつ絶縁性に乏しい部分を支持板上に直接配された絶縁層により補うことが可能となる。この支持板上に配される高絶縁層としては、上記耐食性絶縁層と同様に、例えば各種のポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂が使われる。
【0031】前記電極は、請求項5に係る発明のごとく、前記耐食性ある第2絶縁層の下面に直接配され、或いは請求項6のごとく、前記支持板上の高絶縁性を有する第3絶縁層の上面に直接配することが好ましい。このような部位に電極を配することは、上記各種の絶縁層の成形を容易にする。この電極は、例えば前記第2絶縁層の下面、又は前記支持板上の高絶縁性を有する第3絶縁層の上面に接着剤を介して固定することもできるが、蒸着等により直接形成することもできる。
【0032】更に、電極を第2絶縁層の下面に直接配した場合には、電極がチャック上面に載置される基板に接近するため、静電吸着力が増加する。また、支持板上の高絶縁性を有する第3絶縁層の上面に直接配する場合には、電極は安定した状態で固定されることになり、電極としての機能が安定して得られる。
【0033】請求項7に係る発明は、前記第2絶縁層が他の電気絶縁層及び同絶縁層周辺の前記金属製支持板の外部露出表面を被覆していることを特徴とする。かかる構成により、支持板上に接着材を介して直接接合固定される絶縁層のみならず、前記接着剤に対しても耐プラズマ性や耐エッチング性が向上すると共に、耐熱性、耐薬品性、耐老化性に優れた静電チャック装置が得られる。
【0034】
【発明の実施形態】以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に示す実施例に基づいて具体的に説明する。図1は本発明の第1実施例である静電チャック装置の概略構成を示しており、図3は本発明の第2実施例である静電チャック装置の概略構成を示している。
【0035】本発明に係る静電チャックは、図1及び図3に示すごとく、金属製支持板11に載置され固定される。本発明の静電チャック10の基本構成は、図1に示すごとく、静電チャックの電気絶縁層として、本発明の特徴部の一つである低硬度のゲル状物質を採用することにある。図1においては、前記電気絶縁層13としてゲル状高分子材料を単独で使用する実施形態を示している。電極12はゲル状高分子材料からなる電気絶縁層13により完全に被覆された状態にある。
【0036】また本発明は、図3に示すごとく、第1絶縁層23の露出表面部分をフッ素樹脂またはポリイミド樹脂などの耐蝕性絶縁層からなる第2絶縁層24により覆うことをも含んでいる。以下に述べる実施例1及び2では、本発明に係る静電チャック10,20は冷却用のサセプタ(金属支持板)11上に、例えば接着剤などを介して接合して使用される。
【0037】更に本発明は、図4及び図5に示すごとく、前記金属製支持板21と、前記第1絶縁層23との間に、更に第3の絶縁層25を配することもできる。この第3絶縁層としては、各種のポリイミド樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの耐熱性で且つ高絶縁性の樹脂が使われる。
【0038】この場合、電極21は前記第3絶縁層25の上面又は上記第2絶縁層である耐食絶縁層24の裏面に、接着剤により接合させるか、或いは蒸着等により直接形成される。また、第1絶縁層23を第2及び第3絶縁層で完全に被覆する場合には、第1絶縁層23の材質として、例えば各種のグリースやオイルなどの絶縁性と熱伝導性に優れた粘性流体を使うこともできる。
【0039】(実施例1)本発明の実施例を図1に示す。静電チャック10は、例えばプラズマエッチング工程において、冷却用の支持板11上に取り付けられる。この静電チャック10は電極12と、この電極12を覆う低硬度のゲル状高分子材料である電気絶縁層13から構成される。前記電極12には、静電チャック10の基板保持面と基板14との間にリード線15を介して直流電圧が印可され、誘電分極によるクーロン力や微少な漏れ電流によるジョンソン・ラーベック力と呼ばれる吸着力を発生させて基板14を保持面に吸着保持する。通常、リード線15は絶縁耐圧に優れたPTFE,FEP,PFA等のフッ素樹脂を被覆した電線が使われる。
【0040】本発明においてゲル状高分子材料からなる電気絶縁層13の硬度が「低硬度」であるとは、既述したとおり、JIS K6301の硬さが10以下であって、JIS K2207の針入度は5以上、特に50〜200であることが好ましい。このように電気絶縁層13が低硬度、低弾性率であるため、静電チャック10の保持面が変形して基板14の下面の形状に倣うようになり、ほぼ全面で密着するようになり、基板14に対する電気絶縁層13の接触熱抵抗が低減できる。
【0041】ゲル状高分子材料からなる電気絶縁層13の肉厚が薄すぎると、機械的強度、絶縁破壊電圧が低下し、また接触熱抵抗の低減にも必ずしも有効ではない。一方、肉厚が厚すぎるとその厚み分だけ熱抵抗も増加することになり、結果として電気絶縁層13自体の熱抵抗は増加してしまう。すなわち、このゲル状高分子材料からなる電気絶縁層13の肉厚は、ある範囲内で最適値をもち、その値は0.1〜2mmであることが好ましい。特に、静電チャック10として使用する場合、その吸着力は誘電層の厚さの二乗に反比例することから1mm以下であることがさらに好ましい。さらに、前記絶縁層13の熱伝導率は1W/m・K以上であることが好ましく、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などの絶縁性の熱伝導性フィラーを添加しても良い。
【0042】電気絶縁層13の構成材料であるゲル状高分子材料としては、例えばシリコーンゲル、ポリウレタンゲル、エポキシゲルなどがあり、特に以下に示すような優れた特徴を持つことからシリコーンゲルがもっとも効果的である。本実施例では、ゲル状高分子材料としてシリコーンゲルを採用している。
【0043】シリコーンゲルの基本構造はジメチルシロキサンポリマーを架橋して、シリコーンゴムとシリコーンオイルの中間的な性質を持ち、ゴムよりもはるかに柔らかい保形性のある材料である。特に、その架橋密度は通常のシリコーンゴムの1/3〜1/10と低く制御されている。このシリコーンゲルはポリマー骨格が熱的に安定であるため、ゲル状態を広い温度範囲で維持することができ、既述したとおり、■各物性の温度依存性が小さく、耐熱性がある■機械的強度が比較的高い■粘弾性特性の調整が可能であり成形が容易である■電気特性・耐候性に優れるなどの優れた特性を備えている。
【0044】次に、1Paに減圧できる真空チャンバー内において、冷却用のアルミプレート上に直接アルミプレートとヒータを順に装着した場合と、冷却用のアルミプレート上に各種の電気絶縁層を装着して、さらにその上にアルミプレート、ヒータと順次装着した場合について、それぞれ100gf/cm2 の圧力をかけた状態で、上部のヒーターにより加熱し、アルミプレート温度が平衡状態になったときの、アルミプレート温度と、アルミプレートを冷却している冷却液の出入口の温度差とを測定し、これらの測定値からアルミプレート/絶縁層間の接触熱抵抗を計算して、その冷却性能を確認した。
【0045】図2は、それらの実験結果を示す。なお、同図に示す接触熱抵抗比の値は、シリコーンゴムの接触熱抵抗値を1としたときを基準とした値である。同図からも理解できるように、電気絶縁層を挿入しない場合には、その接触熱抵抗は真空下(1Pa)で極めて大きいが、低硬度、低弾性率である本発明のシリコーンゲルかシリコーンゴムを挿入すると、真空下での接触熱抵抗が大きく改善されることが理解できる。特に、本発明による上述の硬度を持つシリコーンゲルが最も効果的である。また、電気絶縁層として比較的低硬度のPTFE(F50)樹脂を挿入した場合にも多少の改善は見られるが、高硬度、高弾性率のポリイミドを挿入しても、逆に接触熱抵抗が増加してしまい、絶縁層を挿入しない場合以上に接触熱抵抗が高くなることが分かる。
【0046】(実施例2)図3は本発明の第2実施例である静電チャック装置の概略構成を示している。静電チャック20は支持板21上に接着剤により接合されている。本実施例の静電チャック20は、電極22を上記実施例と同様に、上記低硬度のシリコーンゲルからなる第1絶縁層23で被覆し、さらに同絶縁層23の露出表面部分を耐蝕性保護膜からなる第2絶縁層24で被覆している。
【0047】本実施例で使用される耐蝕性保護膜24としては、例えばポリイミド樹脂もしくはフッ素樹脂などを使用することができ、ポリイミド樹脂としては縮合反応型で非熱可塑性の全芳香族ポリイミド(PI)はもちろんのこと、熱可塑性ポリイミド、また付加反応型の熱硬化性ポリイミドであるポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)なども含まれる。
【0048】フッ素樹脂としては、PTFE、PFA、ETFE、FEPなどが挙げられ、特に化学的に安定なPTFE及び PFAが好ましい。また、本実施例にあっては、例えばシリコーンゲルをPFAで被覆したのちに、さらにPTFEによって被覆し、或いはシリコーンゲルをPTFEで被覆したのちに、さらにポリイミドを被覆するように、三層構造にしてもよい。すなわち、本発明にあっては、最外層に耐蝕性保護膜が配されるかぎり、ゲル状高分子材料と最外層との間を多様な絶縁層を自由に組み合わせた多層構造としてもよい。
【0049】耐蝕性保護膜の膜厚は接触熱抵抗の点から薄いほうが好ましいが、薄すぎると保護膜としての機能を十分に果たすことができなくなり、機械的強度も低下する。後述する実験結果から明らかなように、本実施例による静電チャック20のように第1絶縁層23に低硬度ゲル状高分子材料を用いる場合には、50μmの耐蝕性保護膜を使用しても十分な冷却特性が得られることから、本発明の静電チャック20における第2絶縁層24である耐蝕性保護膜の膜厚は、10〜50μmであることが好ましい。
【0050】次に、上記第1実施例と同様に、1Paに減圧できる真空チャンバー内において、冷却用のアルミプレート上に各種の電気絶縁層を装着して、さらにその上にアルミプレート、ヒータと順次装着し、それぞれ100gf/cm2 の圧力をかけた状態で、上部のヒーターにより加熱し、アルミプレート温度が平衡状態になったときの、アルミプレート温度とアルミプレートを冷却している冷却液の出入口の温度差とを測定し、これらの測定値からアルミプレート/絶縁層間の接触熱抵抗を計算して、その冷却性能を確認した。
【0051】図4は、300μmの肉厚からなるシリコーンゴム、同じく300μmの肉厚からなるシリコーンゲル、同シリコーンゲルに膜厚が12μm、25μm、50μmの耐蝕性保護膜である3種類のフッ素樹脂層を積層させた場合の実験結果を示している。同図においても、各試料の接触熱抵抗はシリコーンゴムのそれを1としたときの相対的な接触熱抵抗値である。
【0052】シリコーンゲルにフッ素樹脂を積層させた場合、ゲル単体のときと比べて、その接触熱抵抗は増加しているものの50μmのフッ素樹脂を積層した場合でも、その接触熱抵抗はシリコーンゴム単体のときよりも低いことが理解できる。つまり、針入度50程度の低硬度のゲル状高分子材料を第1絶縁層23として使用した場合、耐蝕性保護膜として厚さ50μm程度のシートを積層させて十分な耐プラズマ性を持たせても、その冷却特性は従来のシリコーンゴム製の静電チャックより優れていることが分かる。
【0053】(実施例3)第3実施例による静電チャックの構成は、図3に示す上記第2実施例と同様であって、静電チャック20は、電極を上記低硬度のシリコーンゲルからなる第1絶縁層23で被覆し、さらに同絶縁層23の露出表面部分を耐蝕性保護膜からなる第2絶縁層24で被覆している。ただし、第2実施例と異なるところは、耐蝕性保護膜である第2絶縁層24の材質として、フッ素樹脂に代えてポリイミド樹脂を使っている点である。
【0054】図5は、上記アルミプレート間に挿入されるシート材料として、上記第2実施例と同様の300μmの肉厚からなるシリコーンゴム、同じく300μmの肉厚からなるシリコーンゲルとした場合と、同シリコーンゲルに膜厚が12μm、25μm、50μm及び75μmの4種類のポリイミド樹脂層を積層させたシート材料を挿入した場合の各実験結果を示している。同図においても、各試料の接触熱抵抗はシリコーンゴムのそれを1としたときの相対的な接触熱抵抗値である。
【0055】同図から理解できるように、上記第2実施例と比較すると、シリコーンゲルからなる第1絶縁層23を耐蝕性保護膜としてのポリイミド樹脂からなる第2絶縁層24で被覆した場合にも、その接触熱抵抗は第2絶縁層24の膜厚が50μmまでは、上記第2実施例と同様の値を示していることが理解できる。しかしながら、その肉厚が50μmを越えると、シリコーンゴム製の静電チャックの接触熱抵抗より大きくなっている。
【0056】このように、数GPaの弾性率をもつ比較的硬度の高いポリイミド製の耐蝕性保護膜を使っても、本発明の目的とする機能が十分に達成されることが実証された。こうした実験結果から、第2及び第3の実施例による静電チャック20が、優れた冷却特性と耐プラズマ性(耐久性)とを兼ね備えた高性能な静電チャックであることが確認された。
【0057】(実施例4、5)図6及び図7は、本発明の第4及び第5実施例を示している。第4実施例によれば、金属製支持板21の支持面に高絶縁性を有する第3絶縁層25を直接接着剤で接着して、更にその上面に電極22を同じく接合により、或いは蒸着により固着する。更にその電極22を被覆するようにして、上記実施例1と同様の材質からなる成形された又は成形によりゲル状高分子材料の第1絶縁層23を固着する。最後に、前記第1絶縁層23及び第3絶縁層25の外部露出表面の全てを実施例2と同様の材質から構成される第2絶縁層24により被覆している。この実施例では、第3絶縁層25の上面に電極22を単に固着すればよいため、静電チャック20の製作が容易であるばかりでなく、電極22の固定位置が不動となり、第1実施例や第2実施例と比較すると、電極22と静電チャック20に載置される基板との間の距離を均等にできるため、静電チャック20による安定した吸着がなされるようになる。
【0058】第5実施例では、第4実施例と同様に、金属製支持板21の支持面に高絶縁性を有する第3絶縁層25を直接接着剤で接着している。その上面に上記実施例1と同様の材質からなる成形された又は成形によりゲル状高分子材料の第1絶縁層23を固着する。更に、その第1絶縁層23の上面に電極22を固着すると共に、前記電極22、第1絶縁層23及び第3絶縁層25の外部露出表面の全てを、第4実施例と同様に、上記第2絶縁層24により被覆している。この実施例では、電極22の固着位置が不動となり、第4実施例と同様に、静電チャック20による安定した吸着が得られるばかりでなく、第4実施例と比較すると、電極22と静電チャック20の所面に載置される基板との間の距離が接近するため、静電吸着力が増加する。
【0059】また、これらの実施例にあっては、絶縁性に難がある第1絶縁層23と金属製支持板21との間に高絶縁性を有する第3絶縁層を介装しているため、静電チャックとして求められる高い絶縁性が得られ、強力な吸着性能が発揮できるようになる。なお、上記第4及び5の実施例では、金属製支持板21の静電チャック支持面の周辺を段差をもって低く形成し、上記第2絶縁層24による被覆を、第1絶縁層23及び第3絶縁層25の外部露出表面だけでなく、金属性支持板21の段差の全側周面まで被覆するようにしている。その結果、支持板21と第3絶縁層25との固着面に介在する接着剤層や支持板21の段差部側周面の耐食性も向上する。
【0060】図8〜図11は、上記第4実施例の変形例を示している。図8及び図9に示す変形例では、上記金属製支持板21の段差部側周面のみならず、更に段差に続く上面部分、或いはその上面部分及び更に支持板21の全側面を、上記第2絶縁層24をもって被覆し、支持板21の耐プラズマ性や耐エッチング性を確保している。図10に示す変形例は、上記第2絶縁層24に代えて、金属製支持板21の上面に固設する第3絶縁層25をもって同支持板21の上記段差部側周面を被覆するものである。この場合、第3絶縁層25は当然に、第2絶縁層24と同様、耐食性に優れた材質が使われる。図11に示す変形例では、前記第3絶縁層25をもって絶縁性粘性流体層又はゲル状絶縁層である第1絶縁層23の全周面を被覆し、更に上記第2絶縁層24をもって、第1絶縁層23の上面、第3絶縁層25の外部露出面及び支持板21の段差部側周面を被覆している。この場合、柔軟性或いは流動性のあるゲル状物質又は粘性流体からなる第1絶縁層23の全周面が、第2及び第3絶縁層24,25の2層で被覆されることになり、十分な強度が得られ耐久性も向上する。
【0061】以上の説明から明らかなように、本発明の静電チャックは、その基本構成が電気絶縁層として少なくとも絶縁性の粘性流体又は低硬度のゲル状高分子材料により構成するため、基板の裏面と静電チャックの保持面との密着性が高くなり、その結果、接触熱抵抗を低減され、従来のように基板の裏面と静電チャックとの間に伝熱促進用の冷却ガスなどを流さないでも、ウエハ表面の高精度の温度制御が可能となる優れた冷却性能を有する高性能で且つ高耐久性の静電チャックが得られる。
【0062】さらに本発明にあっては、前記粘性流体又は低硬度のゲル状高分子材料からなる電気絶縁層を含む全絶縁層の露出表面をフッ素樹脂、ポリイミド樹脂などの耐蝕性保護膜で被覆してもよく、この場合に前記ゲル状高分子材料からなる電気絶縁層の硬度及び弾性、前記耐蝕性保護膜の膜厚などを適正に選定することにより、基板の冷却特性を損なうことなく、耐プラズマ性を向上させることができ、耐久性のさらなる向上につながる。
【0063】また、静電チャックを載置固定する支持板と絶縁性に難のある粘性流体又はゲル状物質との間に、通常の高絶縁性を有する絶縁層を介在させる場合には、静電チャックに必要な絶縁性能が確保でき、強力な吸着が実現できる。更に、静電チャックの外部露出面を被覆する耐食性絶縁層からなる第2絶縁層を、静電チャック周辺の金属製支持板表面をもって被覆する場合には、支持板表面と第3絶縁層との間に存在する接着剤層や同周辺の支持板表面に対する耐食性を向上させることが可能となる。
【0064】なお、上記実施例は本発明の代表的な態様を具体的に説明したものであり、例えばゲル状高分子材料及び耐蝕性保護膜の材質などは上記実施例に限定されず、同等の物性を持つ材料であれば任意に選択し得るものである。
【出願人】 【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
【住所又は居所】東京都港区赤坂二丁目3番6号
【出願日】 平成14年1月10日(2002.1.10)
【代理人】 【識別番号】100091948
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 武男 (外1名)
【公開番号】 特開2003−60020(P2003−60020A)
【公開日】 平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願番号】 特願2002−3598(P2002−3598)