トップ :: H 電気 :: H01 基本的電気素子




【発明の名称】 膜厚測定方法ならびにその方法を用いた膜厚計
【発明者】 【氏名】脇田 昭平

【要約】 【課題】蒸着機などで成長中の膜の膜厚をタングステンランプを光源とする光を膜厚測定用光として用いて測定していたが、層数の多い多層膜のように高度な仕様の膜の膜厚を正確に測定することができなかった。

【解決手段】膜厚測定用光の光源としてファイバレーザを用いた光源を用いて上記課題を解決するとともに、これに加えて透過型と反射型の膜厚測定を組合せることにより膜厚測定精度を飛躍的に向上させることができた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光源からの膜厚測定用光を入射光として膜に入射させ、前記膜からの出射光を測定して前記膜の厚みを測定する膜厚測定方法において、前記光源として、レーザ共振器に光ファイバを用いたレーザであるいわゆるファイバレーザを用いた光源を用いることを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項2】 請求項1に記載の膜厚測定方法において、前記膜への入射光が複数あり、前記複数の入射光に対応して前記膜から出射する出射光のうち、少なくとも1つの出射光は前記複数の入射光のうちのいずれかが前記膜を透過して出射した光であり、少なくとも1つの出射光は前記複数の入射光のうちのいずれかが前記膜で反射して出射した光であることを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項3】 請求項2に記載の膜厚測定方法において、前記入射光が少なくとも3種類あり、前記3種類の入射光のうちのいずれか2種類の入射光は、その波長が同一であるが前記膜に入射するときの入射面が前記膜の互いに異なる側にあり、前記2種類の入射光とは異なる入射光は、前記2種類の入射光のうちのいずれか一方と、その波長が異なるが前記膜に入射するときの入射面が前記膜の同じ側であることを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜厚測定方法において、前記膜への入射光もしくは入射光の少なくとも1つは変調されていることを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項5】 請求項3または4に記載の膜厚測定方法において、前記複数の入射光のうちの波長の異なるいずれか2つの入射光の波長は、その波長の比が整数であることを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項6】 請求項5に記載の膜厚測定方法において、前記波長の異なるいずれか2つの入射光の波長の比である整数が2であることを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項7】 請求項5または6に記載の膜厚測定方法において、前記波長の異なるいずれか2つの入射光のうちの一方の入射光は他方の入射光を非線形結晶に入射させて発生させた高調波であることを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項8】 請求項3〜7のいずれか1項に記載の膜厚測定方法において、前記膜への膜厚測定用光としての入射光が、前記膜を透過させるように入射する透過型入射光が1種類と、前記膜に反射されるように入射する反射型入射光が2種類であり、前記2種類の反射型入射光はそれぞれ波長が異なり、前記波長の異なる2種類の反射光のうちの一方は前記透過型入射光と波長が同じであることを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項9】 請求項8に記載の膜厚測定方法において、前記膜への透過型入射光の入射面は前記膜の成長する側であり、前記膜への反射型入射光の入射面は前記膜の基板側であることを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項10】 請求項3〜7のいずれか1項に記載の膜厚測定方法において、前記膜への透過型入射光と前記膜への反射型入射光はいずれも波長の異なる少なくとも2種類の入射光であることを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項11】 光源からの膜厚測定用光を入射光として膜に入射させ、前記膜からの出射光を測定して前記膜の厚みを測定する膜厚計において、前記光源が、レーザ共振器に光ファイバを用いたレーザであるいわゆるファイバレーザを用いた光源であることを特徴とする膜厚計。
【請求項12】 請求項11に記載の膜厚計において、前記膜からの出射光が、前記膜への入射光が前記膜を透過して出射した光であることを特徴とする膜厚計。
【請求項13】 請求項11に記載の膜厚計において、前記膜からの出射光が、前記膜への入射光が前記膜により反射された光であることを特徴とする膜厚計。
【請求項14】 請求項11に記載の膜厚計において、前記膜への入射光が複数あり、前記複数の入射光に対応して前記膜から出射する出射光のうち、少なくとも1つの出射光は前記複数の入射光のうちのいずれかが前記膜を透過して出射した光であり、少なくとも1つの出射光は前記複数の入射光のうちのいずれかが前記膜で反射して出射した光であることを特徴とする膜厚計。
【請求項15】 請求項14に記載の膜厚計において、前記入射光が少なくとも3種類あり、前記3種類の入射光のうちのいずれか2種類の入射光は、その波長が同一であるが前記膜に入射するときの入射面が前記膜の互いに異なる側にあり、前記2種類の入射光とは異なる入射光は、前記2種類の入射光のうちのいずれか一方と、その波長が異なるが前記膜に入射するときの入射面が前記膜の同じ側であることを特徴とする膜厚計。
【請求項16】 請求項11に記載の膜厚計において、前記膜への入射光が少なくとも2種類あり、前記2種類の入射光は、その波長が互いに異なるが、前記膜への入射面は前記膜の同じ側であることを特徴とする膜厚計。
【請求項17】 請求項11〜16のいずれか1項に記載の膜厚計において、前記膜への入射光もしくは入射光の少なくとも1つは変調されていることを特徴とする膜厚計。
【請求項18】 請求項17に記載の膜厚計において、前記変調されている入射光の変調手段が、光の遮蔽板を回転させて光束を断続するチョッパを用いた手段であることを特徴とする膜厚計。
【請求項19】 請求項17または18に記載の膜厚計において、前記変調されている入射光を変調している変調信号が、前記膜からの出射光を検出した信号を処理するロックインアンプの参照信号になっていることを特徴とする膜厚計。
【請求項20】 請求項15〜19のいずれか1項に記載の膜厚計において、前記複数の入射光のうちの波長の異なるいずれか2つの入射光の波長は、その波長の比が整数であることを特徴とする膜厚計。
【請求項21】 請求項20に記載の膜厚計において、前記波長の異なるいずれか2つの入射光の波長の比である整数が2であることを特徴とする膜厚計。
【請求項22】 請求項20または21に記載の膜厚計において、前記波長の異なるいずれか2つの入射光のうちの一方の入射光は他方の入射光を非線形結晶に入射させて発生させた高調波であることを特徴とする膜厚計。
【請求項23】 請求項22に記載の膜厚計において、前記非線形結晶がPPLNであることを特徴とする膜厚計。
【請求項24】 請求項15〜23のいずれか1項に記載の膜厚計において、前記膜への膜厚測定用光としての入射光が、前記膜を透過させるように入射する透過型入射光が1種類と、前記膜に反射されるように入射する反射型入射光が2種類であり、前記2種類の反射型入射光はそれぞれ波長が異なり、前記波長の異なる2種類の反射光のうちの一方は前記透過型入射光と波長が同じであることを特徴とする膜厚計。
【請求項25】 請求項24に記載の膜厚計において、前記膜への透過型入射光の入射面は前記膜の成長する側であり、前記膜への反射型入射光の入射面は前記膜の基板側であることを特徴とする膜厚計。
【請求項26】 請求項15〜23のいずれか1項に記載の膜厚計において、前記膜への透過型入射光と前記膜への反射型入射光はいずれも波長の異なる少なくとも2種類の入射光であることを特徴とする膜厚計。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被測定膜へ、ファイバレーザを用いた光源からの光を膜厚測定用の光(以下、膜厚測定用光とも称する)として入射させて被測定膜の膜厚を測定する膜厚測定方法ならびにその方法を用いた膜厚計に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、光通信や医療用計測装置をはじめ各種の光学装置の発展は著しく、そこに用いられるフィルタをはじめとする薄膜素子への要求も高度なものになってきている。
【0003】たとえば、通信伝送路に光ファイバを用いる光通信においては、ニーズの拡大と利用技術の進展に伴って、通信ビットレートの高速化が試みられている。たとえば、通信ビットレートを2.5Gbps(毎秒2.5ギガビット)から40Gbpsや80Gbpsに高速化することが試みられているが、その実現のためには、少なくとも3次の分散補償を充分に行うことが必要である。この3次の分散補償素子として誘電体多層膜を用いた薄膜素子が有力視されている。
【0004】また、レーザ発振器やレーザ光を利用する医療用計測装置をはじめとする各種の光学装置においては薄膜を用いたミラーが用いられているが、レーザ光パルス幅が100フェムト秒オーダで、かつパワーの大きな安定したレーザ光が求められるようになり、薄膜を用いたミラーを構成する多層膜への要求が極めて高度なものになってきている。
【0005】上記の3次の分散補償素子を構成する多層膜やミラーを構成する多層膜には、薄膜の仕様としては極めて高度なものがあり、たとえば、3次の分散補償素子に用いられる薄膜には、高屈折率の層と低屈折率の層を組み合わせた100層を越える多層膜が要求されることがあり、また、ミラーとしては高パワーレーザ光に耐え得る品質が要求されている。
【0006】このような高度な仕様の薄膜の製造においては、蒸着機などの薄膜製造装置で、成長過程の薄膜の膜厚を正確に測定し、その膜厚測定結果を用いて蒸着条件管理などの薄膜成長管理をできるだけ正確に行うことが重要となる。
【0007】しかし、このような薄膜の膜厚測定方法や膜厚測定装置(本発明では膜厚計ともいう)には、上記の如き3次の分散補償素子やミラーに用いられる薄膜の成長過程において、膜の成長開始から完成まで正確な膜厚を測定できるものがなく、極めて層数の多い均質な多層膜を得るには、技術者の経験と勘に頼らざるを得ないのが現状である。
【0008】図2は従来の膜厚測定方法とその方法を用いた膜厚計を説明する図である。以下、膜厚計の動作説明をもって、同時に膜厚測定方法の説明を兼ねることにする。
【0009】図2で、符号100は蒸着機、101は基板101aの上に薄膜としての多層膜101bを蒸着によって形成させた試料、103と104は蒸着機100に設けられた窓、102と105はレンズ、106は膜厚計の光源、107は検出装置、108は信号処理回路、109は光源制御回路である。
【0010】光源制御回路109,光源106,レンズ102,レンズ105,検出装置107,信号処理回路108は膜厚計の主要な構成要素となっている。
【0011】従来の膜厚計は、図2に例を示したように、タングステンランプと分光計を有する光源106から発する所定の波長の膜厚測定用光をレンズ102を介してガラスなどから成る窓103から蒸着機100内に入射し、試料101を透過させ、試料101を透過した膜厚測定用光をガラスなどから成る窓104から出射させてレンズ105を介して検出器107に入射させる。検出器107で検出された結果の信号は、信号処理回路108で処理されて、蒸着機100の制御に利用される。光源制御回路109は光源106を制御し、測定条件に応じた膜厚測定用光を光源106から発生させる。
【0012】図2において、蒸着機100の膜厚測定以外の構成要素、たとえば蒸着源などは図示いていない。また、膜形成装置として蒸着機を例にとったが、本発明でいう膜厚計を用いることが望まれる膜形成装置はこれに限られず、スパッタ装置、イオンプレーティング装置など多種あり、本発明の記述における膜厚計の説明は、これら各種の膜形成装置に適用することが出来る。
【0013】試料101はガラスなどから成る基板101aの上に蒸着により多層膜(多層膜も含めて薄膜といわれている)101bを所定の厚さまで成長させるものである。
【0014】膜形成過程においては、多層膜101bの膜厚が所定の厚さに近づくのを膜厚計で測定し、その結果を信号処理回路108から蒸着機100の制御部(図示せず)にフィードバックして、多層膜101bの成長を制御する。
【0015】上記の手順で多層膜101bを成長させるとき、たとえばミラーの場合、多層膜101bは成長して所定の膜厚に近づくにつれて特定の波長に対する反射率が高くなっていくので、すなわち、光源106から蒸着機100に入射して試料101を透過した透過光(以下、単に光源106からの透過光ともいう)の強度が減少するので、この透過光の強度を測定することによって多層膜101bの厚さを測定することが出来る。これにより、多層膜101bの膜厚を設計値に近づけて形成しようとする。
【0016】しかし、多層膜101bが所定の厚さ近傍まで成長した場合、その反射率が100%に近づくにつれて、所定の波長の光の透過量が小さくなり、所定の厚さの近傍では膜厚を正確に測定することが難しくなる。その結果、多層膜101bを設計値に極めて近い値で均質に形成するのは困難になる。
【0017】上記の問題に対し、種々の工夫がなされている。まず、光源として大出力のタングステンランプを用い、その出力光を分光器に入力して所望の波長の光を選択し、その光を膜厚測定用に用いる。このとき、光源用の電源をかなり大きなものとし、水冷して用い、光源から出る光の強さを高めている。
【0018】しかし、このような大出力のタングステンランプを用いても、分光器により取り出せる特定波長の光の光量は決して充分な大きさにすることが出来ず、膜厚測定の精度は大きく制約されるため、たとえば、100層を越える均質な多層膜を歩留良く得るための蒸着機の制御に必要な正確さをもって膜厚を測定するのは極めて難しいのが現状である。
【0019】これに対し、膜厚測定用光源の特定波長の光量を大きくするとともに、前記検出光のS/N(信号/ノイズ)比を上げるためにレーザ光を用いることが検討された。しかし、He−Neレーザや半導体レーザを用いて膜厚測定が試みられたが、たとえば、多層に形成されているレンズや試料などを透過したレーザ光は干渉ノイズが大きくなり、S/N比を高めることが出来ず、タングステンランプからの光を用いた場合に比べて膜厚測定精度が低いのが現状である。そのため、膜厚測定光用の光源としてはタングステンランプに代表される白色光を発するランプが用いられている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような膜厚測定方法を用いた膜厚計を用いても、たとえば、百数十層のような層数の多い多層膜や、特殊な高精度が要求される多層膜を、均質性をもって歩留まりよく形成することは極めて難しく、前記のように、技術者の経験と勘に頼らざるを得ないことが多く、しかも歩留は極めて低く、膜形成のコストも極めて高いのが現状で、膜厚測定の精度の高い膜厚測定方法ならびに膜厚計の実現が重要な課題になっている。
【0021】膜厚計による膜厚の測定精度を高める一つの方法として、所定の波長を有する膜厚測定用光の光量を増すことが考えられ、また、他の一つの方法として、膜厚測定用光のS/N比を高めることが考えられる。
【0022】前者の方法として、前記の如く、各種レーザの使用が試みられたが干渉ノイズが多くて測定精度を上げることができず、その結果として、タングステンランプの光が用いられている。しかし、その光量の増加をもってしても、膜厚測定の精度はまだまだ不充分である。
【0023】後者の方法として、He−Neレーザや半導体レーザの出力光に位相変調器を用いて、レーザ光の位相変調を行い、可干渉性を低下させ、干渉ノイズを低減させる方法がある。しかし、この方法は、位相変調器の変調特性に制約を受け、特に、変調度の立ち上がりスピードにより制限され、この方法を用いた膜厚測定の精度はまだ不充分である。
【0024】本発明はこのような点に鑑てなされたものであり、本発明の目的は層数が多い多層膜の膜厚をも極めて高い精度で測定することが出来る膜厚計を提供せんとするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明の目的の達成を図るため、本発明の発明者らは、たとえばガラス基板上に多層膜を形成している過程の膜厚を、ファイバレーザを用いて測定する膜厚計を作成した。
【0026】ファイバレーザは、その共振器の長さを、たとえば10〜20mという長い値にすることが出来るため、レーザ発振の縦モードの間隔は狭くなり、隣同士が干渉し、平均化された強度のレーザ光を出力することが出来る。
【0027】このようなファイバレーザを用いた光源を膜厚測定用の光源に用いて、その光源からの光を成長中の多層膜に入射させ、その出射光を測定する膜厚計をつくったところ、従来の膜厚計よりも高い精度で多層膜の膜厚を測定することができ、膜形成のための制御を従来より正確に行えることがわかった。
【0028】本発明の目的の達成を図るため、本発明の膜厚測定方法は光源からの膜厚測定用光を入射光として膜に入射させ、前記膜からの出射光を測定して前記膜の厚みを測定する膜厚測定方法で、前記光源として、レーザ共振器に光ファイバを用いたレーザであるいわゆるファイバレーザを用いた光源を用いたことを特徴としている。
【0029】本発明の膜厚測定方法の例は、前記膜への入射光が複数あり、前記複数の入射光に対応して前記膜から出射する出射光のうち、少なくとも1つの出射光は前記複数の入射光のうちのいずれかが前記膜を透過して出射した光であり、少なくとも1つの出射光は前記複数の入射光のうちのいずれかが前記膜で反射して出射した光であることを特徴としている。
【0030】本発明の膜厚測定方法の好ましい例は、前記入射光が少なくとも3種類あり、前記3種類の入射光のうちのいずれか2種類の入射光は、その波長が同一であるが前記膜に入射するときの入射面が前記膜の互いに異なる側にあり、前記2種類の入射光とは異なる入射光は、前記2種類の入射光のうちのいずれか一方と、その波長が異なるが前記膜に入射するときの入射面が前記膜の同じ側であることを特徴としている。
【0031】本発明の膜厚測定方法の例は、前記膜への入射光もしくは入射光の少なくとも1つは変調されていることを特徴としている。
【0032】本発明の膜厚測定方法の例は、前記複数の入射光のうちの波長の異なるいずれか2つの入射光の波長は、その波長の比が整数であることを特徴としており、前記波長の異なるいずれか2つの入射光の波長の比である整数が2であるようにして、測定結果の処理をし易くしている。
【0033】また、本発明の膜厚測定方法の例は、前記波長の異なるいずれか2つの入射光のうちの一方の入射光は他方の入射光を非線形結晶に入射させて発生させた高調波であることを特徴としている。
【0034】本発明の膜厚測定方法の例は、前記膜への膜厚測定用光としての入射光が、前記膜を透過させるように入射する透過型入射光が1種類と、前記膜に反射されるように入射する反射型入射光が2種類であり、前記2種類の反射型入射光はそれぞれ波長が異なり、前記波長の異なる2種類の反射光のうちの一方は前記透過型入射光と波長が同じであることを特徴としている。
【0035】本発明の膜厚測定方法の例は、前記膜への透過型入射光の入射面は前記膜の成長する側であり、前記膜への反射型入射光の入射面は前記膜の基板側であることを特徴としている。
【0036】本発明の膜厚測定方法の例は、前記膜への透過型入射光と前記膜への反射型入射光はいずれも波長の異なる少なくとも2種類の入射光であることを特徴としている。
【0037】本発明の目的の達成を図るため、本発明による膜厚計は、光源からの膜厚測定用光を入射光として膜に入射させ、前記膜からの出射光を測定して前記膜の厚みを測定する膜厚計において、前記光源が、レーザ共振器に光ファイバを用いたレーザであるいわゆるファイバレーザを用いた光源であることを特徴としている。
【0038】本発明の膜厚計の例は、前記膜からの出射光が、前記膜への入射光が前記膜を透過して出射した光であることを特徴としている。
【0039】本発明の膜厚計の例は、前記膜からの出射光が、前記膜への入射光が前記膜により反射された光であることを特徴としている。
【0040】本発明の膜厚計の例は、前記膜への入射光が複数あり、前記複数の入射光に対応して前記膜から出射する出射光のうち、少なくとも1つの出射光は前記複数の入射光のうちのいずれかが前記膜を透過して出射した透過光であり、少なくとも1つの出射光は前記複数の入射光のうちのいずれかが前記膜で反射して出射した反射光であることを特徴としている。たとえば、前記入射光が少なくとも3種類あり、前記3種類の入射光のうちのいずれか2種類の入射光はその波長が同一であるが前記膜に入射するときの入射面が前記膜の互いに異なる側にあり、前記2種類の入射光とは異なる入射光は前記2種類の入射光のうちのいずれか一方とその波長が異なるが前記膜に入射するときの入射面が前記膜の同じ側であるようにすることができる。また、前記膜の同じ側にある膜厚測定用光として、前記膜への入射光が少なくとも2種類あり、その波長が互いに異なるようにすることができる。
【0041】本発明の膜厚計の例は、前記膜への入射光もしくは入射光の少なくとも1つに変調を加えるようにし、前記変調されている入射光の変調手段として、たとえば、光の遮蔽板を回転させて光束を断続するチョッパを用いた手段を用いることができる。そして、前記変調されている入射光を変調している変調信号を、前記膜からの出射光を検出した信号を処理するロックインアンプの参照信号として用いることができる。
【0042】本発明の膜厚計の例は、前記複数の入射光のうちの波長の異なるいずれか2つの入射光の波長を、その波長の比が整数であるようにすることによって、膜厚測定情報の処理を簡単にすることができる。たとえば、波長の異なるいずれか2つの入射光の波長の比を整数2にすると、信号光の処理が簡単になるという効果がある。
【0043】前記波長の異なるいずれか2つの入射光のうちの一方の入射光として、他方の入射光を非線形結晶(たとえば、PPLN)に入射させて発生させた高調波を用いることができる。
【0044】本発明の膜厚計の例は、前記膜への膜厚測定用光としての入射光が、前記膜を透過させるように入射する透過型入射光が1種類と、前記膜に反射されるように入射する反射型入射光が2種類であり、前記2種類の反射型入射光はそれぞれ波長が異なり、前記波長の異なる2種類の反射光のうちの一方は前記透過型入射光と波長が同じであるようにすることができ、前記膜への透過型入射光の入射面は前記膜の成長する側であり、前記膜への反射型入射光の入射面は前記膜の基板側であるようにすることができる。
【0045】そして、本発明の膜厚計の例は、前記膜への透過型入射光と前記膜への反射型入射光に、それぞれ波長の異なる少なくとも2種類の入射光を用いることができる。
【0046】
【実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明に用いる各図は本発明を理解できる程度に各構成成分の寸法、形状、配置関係などを概略的に示してある。
【0047】そして本発明の説明の都合上、部分的に拡大率を変えて図示する場合もあり、本発明の説明に用いる図は、必ずしも実施例などの実物や記述と相似形でない場合もある。また、各図において、同様な構成成分については同一の番号を付けて示し、重複する説明を省略することもある。
【0048】図1は本発明の膜厚測定方法ならびにその方法を用いた膜厚計を説明する図である。以下、本発明の膜厚測定方法の説明は、その方法を用いた膜厚計の説明と重複するので、膜厚計の説明を記述することによって、膜厚測定方法の説明を兼ねることにする。
【0049】図1において、符号1は蒸着機、12は少なくとも特定の波長の光に対して透明な基板12aに薄膜としての多層膜12bを蒸着によって形成させた試料、2〜5は蒸着機1に設けられた窓で膜厚測定用光を透過させることができる窓、9と22は光ファイバをレーザ発振の共振器とするファイバレーザを用いた光源、10は光源9からの光を転送する光ファイバ、6は光ファイバコリメータで光ファイバ10の端末とレンズでコリメータを形成している、11a〜bおよび23〜30は膜厚測定用光の光路を示す矢印または線、7、8、50は反射板、70と80は膜厚測定に用いる光を変調する変調器としてのチョッパーで遮光板を回転させている、20は入射した光の高調波を発生させることができる非線形結晶としてのPPLN、13はフォトダイオードなどの光検出素子と信号処理回路を有する光検出器、14はスペクトル表示装置、60は波長分波器、51と61はフィルタ、52,53,62,63はレンズ、54と64はスリット、55と65は光検出器、56と66は信号処理装置、57と67はロックインアンプ、15は光学膜厚状態表示装置である。
【0050】まず、光源9からの光を用いた膜厚測定について説明する。光源9でファイバレーザ(図示せず)を用いて発生させた波長がλ1(たとえばλ1が1.5μm)の光を、膜厚測定用光として光ファイバ10を伝送させ、光ファイバコリメータ6から出射させ、変調器としてのチョッパ70で変調して、窓2を通って蒸着機1内に入射させ、光路11aを通って基板12a上に成長させている多層膜12bの法線方向から多層膜12bに入射光として入射させ、多層膜12b、基板12aを透過させて、多層膜12bの出射光として窓3を通って蒸着機1から出射させ、光路11bを通って光検出器13に入射させる。光検出器13においては、多層膜12bの出射光として光路11bを通って前記の如く入射した光を検出し、電気信号にして、必要な電気信号の処理をして、そのスペクトルをスペクトル表示器14に表示するとともに、適宜信号処理した結果の情報を光学膜厚状態表示装置15に送る。
【0051】以上説明した光源9からの光を膜厚測定用光として用いて光検出器13で検出する一連の膜厚測定方法を用いた膜厚計は、被測定物である多層膜12bを膜厚測定用光が透過した結果を用いて膜厚を測定する、いわゆる透過型膜厚計である。
【0052】次に、光源22からの光を用いた膜厚測定について説明する。光源22でファイバレーザ(図示せず)を用いて膜厚測定用光として発生させた波長がλ2の光を、変調器としてのチョッパ80で変調して、光路23に進行させ、非線形結晶としてのPPLNを用いて波長λ3が(λ2)/2である光を発生させ、光路24を、波長がλ2である膜厚測定用光と波長がλ3(=(λ2)/2)である膜厚測定用光の2種類の膜厚測定用光を進行させ、反射板7によって光路を変え、光路25を通り窓4を通って蒸着機1に入射させて基板12aの側から斜めに多層膜12aに入射させる。光路25から多層膜12aに入射した膜厚測定用光は多層膜12aで反射され、反射光となって窓5を通り、光路26を進行して反射板8で光路27に進路を変えられて波長分波器60に入射する。光路27を通って波長分波器60に入射した光は、波長がλ2の光は光路28に、波長がλ3の光は光路29にそれぞれ進行する。
【0053】光路28に進行した波長がλ2の光は、フィルタ61を通り、膜厚測定用光が蒸着機を通過するときに膜厚測定用光に生じたノイズを除去されてレンズ62,スリット64,レンズ63を通って光検出器65に入射して電気信号となり、信号処理回路66で電気信号の必要な処理をされてロックインアンプ67で増幅され、光学膜厚状態表示装置15に入力される。
【0054】一方、光路29に進行した波長がλ3(=λ2/2)の光は、反射板50で進路を変えられて光路30へ進み、フィルタ51を通り、膜厚測定用光が蒸着機を通過するときに膜厚測定用光に生じたノイズを除去され、レンズ52,スリット54,レンズ53を通って光検出器55に入射して電気信号となり、信号光処理回路56で電気信号の必要な処理をされてロックインアンプ57で増幅され、光学膜厚状態表示装置15に入力される。
【0055】以上説明した光源22からの光を膜厚測定用光として用いて光検出器55と65により検出する一連の膜厚測定方法を用いた膜厚計は、被測定物である多層膜12bにより膜厚測定用光が反射された結果を用いて膜厚を測定するいわゆる反射型膜厚計である。
【0056】図1を用いて説明した本発明の膜厚計の好ましい例では、被測定物である多層膜に、膜形成時に膜を積層する方向(基板12aとは反対側、以下、多層膜の表側ともいう)から膜厚測定用光を入射させ、膜厚測定用光が多層膜12bを透過した結果を測定する(以下、測定Aともいう)とともに、多層膜12bの基板側(以下、多層膜の裏側ともいう)から多層膜12bに斜め方向から膜厚測定用光を入射させ、測定光が多層膜12bにより反射された結果を測定(以下、測定Bともいう)している。
【0057】前記測定Aでは、基板12の上に成長させる多層膜12bの膜厚変化を、膜の成長初期からかなり精度良く測定することができるが、多層膜12bが成長するにしたがって、多層膜12bの膜厚測定用光に対する透過率が次第に低くなり、多層膜12bの成長目標が反射率の高い層である場合、たとえば反射率が100%に近い場合、多層膜12bの完成に近づくにつれ、多層膜12bを透過する膜厚測定用光の量が次第に少なくなり、正確な膜厚測定が難しくなる。
【0058】この欠点を補う1つの方法として、本発明の前記好ましい実施例では、前記測定Aに前記測定Bを併用した。
【0059】すなわち、測定Bは、多層膜12bに基板12a側から入射させた膜厚測定用光の多層膜12bによる反射を用いているので、多層膜12bの成長が進むにつれて反射光の光量が多くなり、多層膜12bが完成に近づいたときの膜厚測定をかなり正確に行うことができる。
【0060】さらに、測定Bでは、測定Aで用いた膜厚測定用光の波長λ1と同じ波長(波長λ2=λ1)の膜厚測定用光とその1/2の波長の膜厚測定用光(λ3=(λ2)/2)の2種類の光を用いている。
【0061】波長がλ2の光と波長がλ3(=(λ2)/2)の光に対する多層膜12bの反射率が異なる。この2種類の反射情報を利用して、膜厚測定の精度を一層高めることができる。
【0062】そして、(波長λ2)/(波長λ3)の値が整数になるようにすることによって、各膜厚測定用光の前記測定結果をコンピュータ処理するときに処理が簡単になる。図1を用いて説明した例においては、λ2/λ3の値が整数2になっており、前記処理を簡単にしている。
【0063】また、透過型膜厚計で、入射光を膜の法線方向から入射させる代わりに、所定の入射角で入射させる方法もある。
【0064】図1の説明では、膜形成装置として蒸着機を例にとって説明したが、前記の如く、本発明の膜厚計が適用できる膜形成装置はこれに限定されるものではなく、スパッタ装置、イオンプレーティング装置をはじめ、現在膜形成装置として用いられている多くの装置はもちろん、それらの改良装置など広範囲の膜形成装置に本発明の膜厚計を用いることができることは、上記の本発明の説明からも明らかなことである。
【0065】本発明の膜厚測定方法は、上記説明の如き膜厚計を、膜厚計の各構成部品と等価なものを用いて膜厚計を構成して膜厚を測定することを可能にするものであり、必ずしも膜厚計として構成された装置を購入して配置しなくても、膜厚を正確に、しかもより安いコストで測定することを可能にするものであることは、以上の説明から明白である。
【0066】
【発明の効果】蒸着機で多層膜12bのような薄膜を成長させる場合、多層膜12bが所望の膜厚で所望の物性を有する均質な膜になるように成長させるには、多層膜の完成目標に近づいたときの膜厚情報が重要である。本発明の膜厚計は多層膜が目標に近いところまで成長したときにも高い精度の膜厚情報を得ることが出来るようにしたものである。
【0067】本発明の膜厚測定方法ならびにその方法を用いた膜厚計は、その測定精度を向上させるため、光源にファイバレーザを用いている。前記の如く、従来は、光源にレーザ光を用いると多層に形成されたレンズ、蒸着機の窓ガラスなどでのレーザ光の反射に起因して膜厚測定用光にノイズが生じてしまい、測定の精度が低下してしまうため、光源にレーザ光を用いることは好ましくなく、タングステンランプの光を分光器で分光して用いるのがよいと考えられていた。
【0068】そして、He−Neレーザや半導体レーザに位相変調を行うことも試みられたが、その結果は充分な精度での膜厚測定を与えるものではなかった。
【0069】本発明は、光ファイバをレーザ共振器に用いるファイバレーザでは、共振器長を10〜20mと長くして、縦モードの間隔をきわめて狭くできることに着目して、レーザ光でありながら、タングステンランプに近い平均化された出力光を出すことが出来るファイバレーザを用いた光源による膜厚測定用光を得るようにした。
【0070】本発明は、このようなファイバレーザのレーザ光を膜厚測定用光として用い、さらに前記の如く、透過光を用いた膜厚測定情報と反射光を用い膜厚測定情報とを組み合わせて、膜の完成間近の正確な膜厚情報を得ることができる膜厚計を実現することができたものであり、本発明による膜厚計を膜形成装置の膜厚計として用いることによって、難しい仕様の多層膜を工業的に量産することを可能にするというきわめて大きな効果を発揮するものである。
【出願人】 【識別番号】501367934
【氏名又は名称】脇田 昭平
【出願日】 平成13年8月16日(2001.8.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−59993(P2003−59993A)
【公開日】 平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願番号】 特願2001−284132(P2001−284132)