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【発明の名称】 Mn−Zn−Ni系フェライトおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】藤田 明
【住所又は居所】千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製鉄株式会社技術研究所内

【氏名】後藤 聡志
【住所又は居所】千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製鉄株式会社技術研究所内

【要約】 【課題】100kHz以上の周波数領域で比較的低損失であり、かつ100 ℃前後の温度域において高い飽和磁束密度を有するMn−Zn−Ni系フェライトを提供する。

【解決手段】ZnO :4〜12 mol%、Fe2O3 :55〜60 mol%およびNiO :4 mol%超10 mol%以下を含み、残部がMnO の基本成分に、さらにSiO2:0.0050〜0.0200mass%およびCaO :0.0200〜0.2000mass%を含有する組成になり、かつPおよびBの混入量を、P:0.0004mass%未満およびB:0.0004mass%以下に抑制する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ZnO :4〜12 mol%、Fe2O3 :55〜60 mol%およびNiO :4 mol%超10 mol%以下を含み、残部がMnO の基本成分に、さらにSiO2:0.0050〜0.0200mass%およびCaO :0.0200〜0.2000mass%を含有する組成になり、かつPおよびBの混入量を、P:0.0004mass%未満およびB:0.0004mass%以下に抑制したことを特徴とするMn−Zn−Ni系フェライト。
【請求項2】酸化亜鉛をZnO 換算で4〜12 mol%、酸化鉄をFe2O3 換算で55〜60 mol%および酸化ニッケルをNiO 換算で4 mol%超10 mol%以下にて含み、残部が酸化マンガンの基本成分に、さらに酸化珪素をSiO2換算で0.0050〜0.0200mass%および酸化カルシウムをCaO 換算で0.0200〜0.2000mass%にて含有し、かつPおよびBの混入量を、P:0.0004mass%未満およびB:0.0004mass%以下に抑制した組成になる、Mn−Zn−Ni系フェライト材料を焼成してMn−Zn−Ni系フェライトを製造するに当り、前記焼成時の最高保持温度を1300℃以上に保持するとともに、500 ℃から該最高保持温度までの昇温速度を600 ℃/h以上とすることを特徴とするMn−Zn−Ni系フェライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電源回路、特に平滑回路のチョークコイル等に供して好適な、高い飽和磁束密度を有するMn−Zn−Ni系フェライトとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】フェライトと称される酸化物磁性材料は、BaフェライトやSrフェライト等の硬質磁性材料と、Mn−ZnフェライトやNi−Znフェライト等に代表される軟質磁性材料とに分けられる。後者の軟質磁性材料とは、非常にわずかな磁場に対しても十分に磁化する材料であり、電源、通信機器、計測制御機器、磁気記録、そしてコンピュータなどの多方面にわたって用いられる重要な磁性材料である。それ故、この軟磁性材料には、保磁力が小さく透磁率が高いこと、飽和磁束密度が大きいこと、低損失であることなど、多くの特性が要求される。
【0003】このような軟磁性材料としては、上記の酸化物フェライト以外に金属系の磁性材料があげられる。この金属系軟磁性材料は飽和磁束密度が高い点で有利であるが、金属磁性材料は電気抵抗が低いために、高周波帯域で使用する際には渦電流に起因する磁気損失が大きくなり、高周波帯域まで低損失を維持することができないという欠点があった。
【0004】すなわち、近年では、電子機器の電源部分に供給される電力も大きくなり、大電流化が進んでおり、かような環境においては飽和磁束密度の高い磁心材料が好適であるが、一方で大電流化とともに、電子機器の小型化並びに高密度化の要請を背景に、使用周波数の高周波化が進んでいる。例えば、使用周波数が100kHz以上になると、上記金属磁性材料は、渦電流損による発熱が大きくなり、その使用はほとんど不可能であった。
【0005】そのため、高周波域で使用される電源回路などの磁芯材料としては、酸化物系のMn−Znフェライトが主流となっていた。特に、平滑回路のチョークコイルに用いられる磁心材料は、飽和磁束密度が高いことが必要であるから、Ni−Zn系よりもMn−Zn系のフェライトが有利である。
【0006】ところで、電子機器の電源部分は、先に述べた小型化の要請から、各種部品が高密度に積載されるようになってきており、フェライト材料以外の部品からの発熱が大きく、この影響から積載されているフェライトコアの温度も80〜100 ℃となる。従来のMn−Zn系フェライトでは、温度上昇とともに飽和磁束密度が低下するため、80℃〜100 ℃の温度域で飽和磁束密度を有する材料が望まれていた。
【0007】発明者らは、この要請に応えるべく、80℃で高い飽和磁束密度を有する、Mn−Zn−Ni系の低鉄損フェライト磁心材料を、特開平10−6471号公報にて提案した。しかしながら、この材料はトランスとして低鉄損であることも目的に含めれていたため、飽和磁束密度を高める点では、未だ不十分であった。
【0008】また、特開平11−392822号公報には、酸化鉄の含有量を60〜85mol%とすることにより高い飽和磁束密度を実現したフェライト焼結体が記載されているが、この場合は焼成プロセスにおいて、酸素濃度を1%以下に制御する、煩雑な操作が必要であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明は、100kHz以上の周波数領域で比較的低損失であり、かつ100 ℃前後の温度域において高い飽和磁束密度を有するMn−Zn−Ni系フェライトを、その有利な製造方法に併せて提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】発明者らは、100 ℃前後の温度域において高い飽和磁束密度を有するMn−Zn−Ni系フェライトを得るには、成分組成を規制するとともに、特定の不純物の混入量を制限することが有効であるのを見出し、この発明を完成するに到った。
【0011】すなわち、この発明は、ZnO :4〜12 mol%、Fe2O3 :55〜60 mol%およびNiO :4 mol%超10 mol%以下を含み、残部がMnO の基本成分に、さらにSiO2:0.0050〜0.0200mass%およびCaO :0.0200〜0.2000mass%を含有する組成になり、かつPおよびBの混入量を、P:0.0004mass%未満およびB:0.0004mass%以下に抑制したことを特徴とするMn−Zn−Ni系フェライトである。
【0012】また、この発明は、酸化亜鉛をZnO 換算で4〜12 mol%、酸化鉄をFe2O3 換算で55〜60 mol%および酸化ニッケルをNiO 換算で4 mol%超10 mol%以下にて含み、残部が酸化マンガンの基本成分に、さらに酸化珪素をSiO2換算で0.0050〜0.0200mass%および酸化カルシウムをCaO 換算で0.0200〜0.2000mass%にて含有し、かつPおよびBの混入量を、P:0.0004mass%未満およびB:0.0004mass%以下に抑制した組成になる、Mn−Zn−Ni系フェライト材料を焼成してMn−Zn−Ni系フェライトを製造するに当り、前記焼成時の最高保持温度を1300℃以上に保持するとともに、500 ℃から該最高保持温度までの昇温速度を600 ℃/h以上とすることを特徴とするMn−Zn−Ni系フェライトの製造方法である。
【0013】なお、基本成分であるZnO 、Fe2O3 、NiO およびMnO の含有量は、ZnO 、Fe2O3 、NiO およびMnO の合計量に対する mol%で示し、SiO2、CaO 、PおよびBの含有量は、Mn−Zn−Ni系フェライト中の比としてmass%で示す。
【0014】
【発明の実施の形態】まず、この発明において、基本成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
Fe2O3 :55〜60 mol%Fe2O3 量は少なくなると、徐々にではあるが飽和磁束密度が低下するため、飽和磁束密度を高い値に維持するのに、Fe2O3 を55 mol%以上とする。ここで、この発明に係るフェライトのように、NiO を従来材料より比較的に多く含む組成では、磁性イオンであるNi2+イオンがフェライトのスピネル化合物の格子点に入ることにより、他の格子点にある磁性イオンとの相互作用、すなわち超交換相互作用が強められ、その結果キュリー温度が上昇する効果が見られた。また、超交換相互作用の他、磁気異方性定数K1ならびに飽和磁歪定数λs が変化し、損失に対して最適組成範囲が変化すると考えられる。
【0015】すなわち、NiO を含むことにより、その最適組成範囲はFe2O3 リッチ側に広がるため、Fe2O3 量の上限を高く設定できる。しかし、Fe2O3 量が多くなりすぎると、損失が極小となる温度が低温側にシフトし、100 ℃付近での損失が大きくなり、しかも100 ℃からさらに温度が高くなると損失が上昇する方向に進むため、ますます発熱が顕著になると推測される。フェライトを含むコイルから発生する損失としては、フェライト磁心の発熱である鉄損と、巻線から発生する銅損との2種類がある。平滑回路のチョークコイルにおいては、鉄損よりも、巻線から発生する銅損の方が大きいため、トランス用の材料と比べると、鉄損はそれほど問題にはならないが、回路設計においては鉄損が大きすぎると望ましくない場合もある。以上の種々の技術的背景を考慮した結果、Fe2O3 量の上限は60 mol%に制限した。
【0016】ZnO :4〜12 mol%ZnO 量が多すぎると、室温での飽和磁束密度が小さくなるだけでなく、キュリー温度が低下するため、温度上昇につれて飽和磁束密度の低下をもたらし、100℃付近における飽和磁束密度が急激に下がることになる。従って、ZnO 量の上限を12 mol%とする。一方、ZnO 量が少ない場合、通常の焼成条件では、焼結体密度を高めにくくなるため、4 mol%を下限とする。
【0017】NiO :4 mol%超10 mol%以下NiO 量が4 mol%以下になると、キュリー温度が低くなる結果、100 ℃での飽和磁束密度が小さくなることから、NiO 量を4 mol%を超える範囲とする。一方、NiO 量が10 mol%を超えると、キュリー温度は上昇するものの、室温での飽和磁束密度と、100 ℃おける飽和磁束密度の上昇効果とが低下するため、10 mol%を上限とする。
【0018】なお、上記したFe2O3 、ZnO およびNiO の原料としては、これら酸化物のみに限らず、焼成により、これら形態に代わることのできる、例えば炭酸塩などの化合物を使用することもできる。
【0019】SiO2:0.0050〜0.0200mass%CaO :0.0200〜0.2000mass%この発明のMn−Zn−Ni系フェライトは、上記した所定範囲のFe2O3 、ZnO およびNiO を含み、残部がMnO の組成を基本成分とするが、さらに、SiO2およびCaOを添加することにより、焼結性を高め、焼結体密度を高めることができる。すなわち、基本成分組成によって高飽和磁束密度を実現する場合にあっても、焼結体密度が低ければ高い飽和磁束密度を得ることが難しいことから、焼結性を高めることが肝要である。また、これらの添加物は、粒界相を高抵抗化して低損失化に寄与する。
【0020】SiO2は焼結促進の効果があり、添加効果を引き出すためには0.0050mass%以上が必要であり、一方多すぎると異常粒成長を起こして焼結体が健全な結晶組織とならず、かえって焼結体密度向上を阻害し、損失の著しい増大を招くため、上限を0.0200mass%とする。ただし、この上限付近の添加量では焼結温度を若干下げる等の考慮が必要である。
【0021】また、CaO はSiO2とともに粒界を高抵抗化して損失を小さくする効果を有する。しかし、0.0200mass%未満ではその効果が現れず、一方0.2000mass%を越えると焼結性に問題が生じることから、0.2000mass%以下とした。
【0022】さらに、不純物として混入するPおよびBについて、これらの混入量が多いと、異常粒成長が発生して磁気特性の低下をまねくため、Pは0.0004mass%未満に、Bは0.0004mass%以下とする。
【0023】PおよびBの混入を抑制するには、例えば結晶精製法などで得た高純度原料(酸化鉄など)を用いるとよい。
【0024】さらに、上記成分に加えて、スピネルを形成しない、Ta2O5 、ZrO2、Nb2O5 、V2O5、HfO2、Ti02、Sno2の微量添加成分を加えることにより、損失の少ないMn−Zn−Niフェライトとすることができるため、これらの微量添加成分を0.1 mass%を上限として添加してもよい。
【0025】次に、上記のMn−Zn−Niフェライトの製造方法について説明する。まず、原料としては、焼成後に上記した成分組成が得られるもの、すなわち、酸化亜鉛をZnO 換算で4〜12 mol%、酸化鉄をFe2O3 換算で55〜60 mol%および酸化ニッケルをNiO 換算で4 mol%超10 mol%以下にて含み、残部が酸化マンガンの基本成分に、さらに酸化珪素をSiO2換算で0.0050〜0.0200mass%および酸化カルシウムをCaO 換算で0.0200〜0.2000mass%にて含有し、かつPおよびBの混入量を、P:0.0004mass%未満およびB:0.0004mass%以下に抑制した組成になる、Mn−Zn−Ni系フェライト材料が適合する。
【0026】このMn−Zn−Ni系フェライト材料は、酸化鉄を、Mn源、Zn源およびNi源と乾式または湿式混合して得られ、この材料を仮焼後、成形、そして焼成することによって、Mn−Zn−Ni系フェライトを製造することができる。
【0027】Mn−Zn−Ni系フェライト材料を仮焼そして成形してから焼成する際、該焼成時の最高保持温度を1300℃以上に保持するとともに、500 ℃から該最高保持温度までの昇温速度を600 ℃/h以上とすることが肝要である。
【0028】ここで、最終組成がFe2O3 :MnO :ZnO :NiO が56.4:26.6:11.8:5.2 のモル比となる基本成分組成の仮焼粉を作製し、各種酸化物を微量添加して粉砕して造粒した粉末を外径36mm、内径24mmおよび高さ12mmのリング状に成形し、酸素分圧を制御した窒素・空気混合ガス中で、500 ℃以上の温度域の昇温速度を450 ℃/hから800 ℃/hまで変えて1340℃まで加熱して3時間保持した後冷却して得た、リング状試料について、100 ℃における磁束密度を後述の実施例1の場合と同様に測定し、その測定値を昇温速度との関係に整理した結果を図1に示す。なお、焼結体に含まれるSiO2、CaO 、PおよびBの分析結果は、SiO2:0.0140mass%、CaO :0.0936mass%、P:0.0001mass%、B:0.0003mass%であった。
【0029】図1から明らかなように、焼成時の昇温速度が600 ℃/hに満たないと、高い磁束密度を実現できず、その値も従来材の450 mT以下に止まる。すなわち、Mn−Zn−Ni系フェライトの製造における焼成時の昇温速度は、600 ℃/h以上が必要である。
【0030】ちなみに、従前の焼成時の昇温速度は 300〜400 ℃/h程度が通例である。なぜなら、PおよびBの量を上記した範囲に抑制しない場合に、昇温速度を速くすると、異常粒が発生して却って磁束密度の低下をまねき、損失が著しく増大するからである。この点、この発明では、PおよびBの混入量を抑制しているから、600 ℃/hの高速での昇温を実施することが可能になるのである。
【0031】焼成時には、後述するような成形助剤(ポリビニルアルコール)や潤滑剤を 300〜500 ℃で脱脂する。脱脂する際の昇温速度が速い場合は、焼成体に欠けが生じるため、この発明では脱脂がほぼ完了した500 ℃から最高保持温度までの昇温速度を600 ℃/h以上とする。なお、昇温速度は、必ずしも一定でなくてもよい。
【0032】また、焼成に先立つ工程は、Mn−Zn−Ni系フェライトの製造の一般に従うものでよい。例えば、原料の粉砕混合を終えた混合酸化物は、空気、窒素、あるいはそれらの混合ガス、又は、炭化水素燃料の燃焼排ガスなどの雰囲気中、最高700〜1100℃で加熱することで仮焼する。仮焼には、ロータリーキルンなどを使用できる。
【0033】仮焼した混合酸化物は、粉砕と同時に微量添加物を混合する。この混合時、磁気特性向上のために、種々の酸化物粉末を微量添加することができる。こうして得られた混合粉砕粉は、通常0.3 〜2μm程度の平均粒径に調整する。
【0034】混合粉砕粉末には、通常0.1 〜1質量%程度のポリビニルアルコール(PVA)に代表される成形助剤や0.01〜1質量%程度のステアリン酸亜鉛に代表される潤滑剤を混合し、−30mesh程度に造粒を行い、成形原料とする。
【0035】成形原料は、例えば、0.1 〜2t/cm2 程度の圧力で所望の形状に金型成形する。かくして得られた成形体は、大気または窒素、あるいはそれらの混合ガス中で、上記した昇温速度の下に1300℃以上の温度まで加熱され、この温度で保持して焼成する。すなわち、焼成時の最高保持温度が1300℃未満の場合、焼結体密度が低くなり、高い飽和磁束密度を得ることが難しい。また、保持時間は、組成によって異なるが、通常1〜8時間程度である。
【0036】実施例1表1に示す最終組成となるように、基本成分のうちNiO 含有量を主に変化させて原料酸化物を配合したものを、ボールミルを用いて湿式混合してから乾燥したのち、この混合粉を大気雰囲気で950 ℃および3時間にて仮焼した。この仮焼粉に対し、SiO2:0.01mass%およびCaCO3 :0.15mass%を添加してから、再度ボールミルを用いて湿式で混合粉砕して乾燥させた。この粉末にポリビニルアルコール濃度が5mass%の水溶液を10mass%加えた後、造粒した粉末を外径36mm、内径24mmおよび高さ12mmのリング状に成形し、酸素分圧を制御した窒素・空気混合ガス中で1330℃、3時間の焼成を行った。このとき、500 ℃から1330℃までの昇温速度を650 ℃/hとした。このようにして得られた焼結体を分析した結果、SiO2:0.0156mass%、CaO :0.0912mass%、P:0.0001mass%、B:0.0003mass%であった。
【0037】
【表1】

【0038】また、得られたリング試料に1次側20巻・2次側40巻の巻線を施し20℃〜140℃において直流BHループトレーサーで1200A/m の磁界をかけたときの磁束密度を測定した。この大きさの磁場では磁束ははぼ飽和しており、この値は飽和磁束密度と見なせる。この測定結果を図2に示す。
【0039】さらに、これらの焼結体試料を破砕した小片について、試料振動型磁力計で40kA/mの磁界をかけながら500 ℃まで昇温し、磁化がなくなるキュリー温度を測定した。この測定結果を図3に示す。
【0040】これらの結果からわかるように、NiO 量が増えるに従い、キュリー温度は単調に増加し、その結果、100 ℃において高い飽和磁束密度を示す。しかしながら、NiO 量が10mol %を超えると室温付近で飽和磁束密度が低下するために、100℃での飽和磁束密度も小さくなってしまう。
【0041】実施例2最終組成として表2に示した組成に対し、実施例1と同様に混合、仮焼、粉砕、成形、焼成し焼結体試料を作製した。得られた焼結体試料に1次側20巻・2次側40巻の巻線を施し100 ℃において直流BHループトレーサーで1200A/m の磁界をかけたときの磁束密度を測定した。この測定結果を、表2に併せて示すように、主成分組成が最適範囲であれば、100 ℃での飽和磁束密度は450mT 以上の高い値となることがわかる。
【0042】
【表2】

【0043】実施例3最終組成がFe2O3 :MnO :ZnO :NiO が 54.7 :32.3:7.8 :5.2 のモル比となる主成分組成に対して、数種の酸化物原料を用いて、実施例1と同様に仮焼粉を作製し、各種酸化物を微量添加して粉砕、成形したものを、酸素分圧を制御した窒素・空気混合ガス中で1300〜1350℃において2〜6時間の焼成を施した。かくして得られた焼結体試料中に含まれるSiO2、CaO 、P、Bを分析した結果を表3に示す。
【0044】得られたリング試料に実施例1と同様に巻線を施して直流BHループトレーサーで1200A/m の磁界をかけたときの磁束密度を測定した。また同じ試料に1次側5巻・2次側5巻の巻線を施し周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で、損失を測定した。これらの飽和磁束密度、損失の極小値、ならびに焼結体密度を表3に併記するように、SiO2およびCaO 量が適切で、PおよびBの濃度が高すぎない範囲であれば、焼結体密度も高まり、高い飽和磁束密度を得ることができ、損失も大きくなりすぎない。
【0045】
【表3】

【0046】実施例4最終組成として:ZnO :6.2mol%およびNiO :4.8mol%としてFe2O3 量を種々に変化した場合(残部MnO )について、実施例1と同様に焼結体を作製し、得られた焼結体試料に1次側5巻・2次側5巻の巻線を施し周波数100kHz、最大磁束密度200 mTの条件下で、20℃〜120 ℃における損失を測定した。これらの損失の温度変化を図4に示した。図4から、適切な組成範囲であれば、損失は2000kW/m3 以下であるが、Fe2O3 量が過剰になると、100 ℃での損失が大きくなり、かつ、さらに発熱により温度が高くなった場合は、損失が高くなるという悪循環に陥ることがわかる。
【0047】
【発明の効果】この発明によれば、電源回路、特に平滑回路のチョークコイル等に供して好適な、高い飽和磁束密度を有するMn−Zn−Ni系フェライトを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】川崎製鉄株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区北本町通1丁目1番28号
【出願日】 平成13年8月28日(2001.8.28)
【代理人】 【識別番号】100072051
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 興作 (外1名)
【公開番号】 特開2003−68516(P2003−68516A)
【公開日】 平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願番号】 特願2001−257200(P2001−257200)