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【発明の名称】 磁気コア及びそれを用いたインダクタンス部品
【発明者】 【氏名】石井 政義
【住所又は居所】宮城県仙台市太白区郡山六丁目7番1号 株式会社トーキン内

【氏名】藤原 照彦
【住所又は居所】宮城県仙台市太白区郡山六丁目7番1号 株式会社トーキン内

【氏名】保志 晴輝
【住所又は居所】宮城県仙台市太白区郡山六丁目7番1号 株式会社トーキン内

【氏名】磯谷 桂太
【住所又は居所】宮城県仙台市太白区郡山六丁目7番1号 株式会社トーキン内

【要約】 【課題】優れた直流重畳特性及びコアロス特性を有すると共に、耐酸化性を有する磁気コアを提供すること。

【解決手段】この磁気コア3では、Mn−Zn系フェライト材で作成されたEE型コア2の中芯の磁路に形成されたギャップに対して挿入装着される直流磁気バイアス印加用磁石としてのボンド磁石1を改良し、希土類磁石粉末として磁気特性の優れたSm2 Co17磁石粉末の表面に予め体積比1.0〜15%でエポキシ樹脂による樹脂被膜をコーティング形成した上でバインダーを含んだ樹脂の総量を適量(20vol%以上)に定める構成としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁路の1箇所以上にギャップを有する磁芯における該ギャップのうちの少なくとも一つのものに対し、固有保磁力Hc が7.9×106 A/m以上であると共に、キューリー温度Tc が500℃以上であり、且つ平均粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末と、前記希土類磁石粉末の表面に予め体積比1.0〜15%でコーティング形成された樹脂被膜を含む樹脂とから成る直流磁気バイアス印加用磁石としてのボンド磁石を挿入装着して構成されたことを特徴とする磁気コア。
【請求項2】 請求項1記載の磁気コアにおいて、前記樹脂被膜は、前記コーティング形成の繰り返しにより形成されたものであることを特徴とする磁気コア。
【請求項3】 請求項1又は2記載の磁気コアにおいて、前記希土類磁石粉末の表面は、前記樹脂被膜のコーティング形成に先立って予めZn,Al,Bi,Ga,In,Mg,Pb,Sb,Snのうちの少なくとも一種又はその合金で被覆されていることを特徴とする磁気コア。
【請求項4】 請求項3記載の磁気コアにおいて、前記ボンド磁石における前記樹脂被膜を含む前記樹脂は、総量が体積比で20vol%以上であり、比抵抗が1Ω・cm以上であることを特徴とする磁気コア。
【請求項5】 請求項1〜4の何れか一つに記載の磁気コアを用いたインダクタンス部品において、前記磁芯の前記ギャップに装着された前記ボンド磁石の周囲に対して少なくとも1ターン以上の巻線を巻回して成る巻き線部を設けて成ることを特徴とするインダクタンス部品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として高周波用スイッチング電源等向けのチョークコイルやトランスに適用される直流磁気バイアス印加用磁石を備えた磁気コア及びそれを用いたインダクタンス部品に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、チョークコイルやトランスに用いられる磁気コアには良好な直流重畳特性が求められており、特に高周波用の磁気コアに用いられる磁芯にはフェライトや圧粉磁芯が使用されている。
【0003】一般に、フェライトによる磁芯は初透磁率が高くて飽和磁束密度が小さいという特色があり、圧粉磁心は初透磁率が低くて飽和磁束密度が高いという物性による特色があるため、フェライトによる磁芯は例えば一対のE型コアの中足にギャップを挿入するようにして互いに突き合わせた形状のEE型コアとして用いられることが多く、圧粉磁心はトロイダル形状として用いられることが多い。
【0004】ところで、こうした磁芯を用いた磁気コアの開発分野においても、近年の電子機器に対する小型化の需要に伴う電子部品の小型化に従って全体の小型化を実施することが必要不可欠となっており、このような小型化に際して、磁気特性として一層大きな重畳磁界でより高い透磁率を持つことが強く求められている。
【0005】直流重畳特性を向上させるためには、通常飽和磁化の高い磁芯を選択すること、即ち、高磁界で磁気飽和しない磁芯を選択することが必要とされるが、飽和磁化は材料の組成で必然的に決定されてしまうものであり、無制限に高くできるものではないため、従来では僅かな飽和磁化の向上を図るために多大な労力が費されており、その割りには成果として直流重畳特性が期待される程伸びていないのが現状である。
【0006】このような問題の解決手段として、磁芯における磁路の1箇所以上にギャップを形成し、そのギャップの1つのものに永久磁石を挿入装着して磁気コアを構成する手法が以前から検討されている。このような構成の磁気コアの場合、直流重畳特性を向上させるための成果は上げられるが、その反面、例えば永久磁石として金属製の焼結磁石を用いると磁芯のコアロスが著しく増大してしまったり、或いはフェライト磁石を用いると直流重畳特性が安定しなくなってしまう等の問題が起きてしまうため、実用に耐え得る磁気特性を有するものが得られていないのが現状である。
【0007】そこで、このような問題を解決する手段として、例えば特開昭50−133453号公報に開示された技術では、磁気コアに用いられる磁芯のギャップに挿入装着される永久磁石として、保磁力の高い希土類磁石粉末とバインダーとを混合した上で圧縮成形して成るボンド磁石を用いることが提案されており、こうした構成によって直流重畳特性の向上と磁気コアの温度上昇の改善とを図り得るものとしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述した磁芯のギャップに挿入装着される永久磁石に保磁力の高い希土類磁石粉末とバインダーとを混合した上で圧縮成形して成るボンド磁石を用いた磁気コアの場合、確かに直流重畳特性の向上が図られるという長所を有するが、最近の高周波用スイッチング電源等に対する電力変換効率の向上への要求が一層厳しくなっていることや、或いはチョークコイルやトランスに用いられる磁気コアに対しても単に温度測定を行うだけでは磁気特性の優劣が判断不能なレベルとみなされるようになっており、コアロス特性が優れていることも必要不可欠な判断基準であるとみなされる現状を考慮すれば、実際にコアロス測定装置によりコアロス特性を測定した結果によれば開示された抵抗率の値ではコアロス特性が劣化しているという問題がある。
【0009】又、例えば最近の電子部品としてのインダクタンス部品には表面実装タイプであることが要望されており、そのインダクタンス部品に用いられる磁気コアに備えられる永久磁石の磁石材料には耐酸化性を有することが要求されている。
【0010】本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、優れた直流重畳特性及びコアロス特性を有すると共に、耐酸化性を有する磁気コア及びそれを用いたインダクタンス部品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、磁路の1箇所以上にギャップを有する磁芯における該ギャップのうちの少なくとも一つのものに対し、固有保磁力Hc が7.9×106 A/m以上であると共に、キューリー温度Tc が500℃以上であり、且つ平均粒径が2.5〜50μmの希土類磁石粉末と、希土類磁石粉末の表面に予め体積比1.0〜15%でコーティング形成された樹脂被膜を含む樹脂とから成る直流磁気バイアス印加用磁石としてのボンド磁石を挿入装着して構成された磁気コアが得られる。
【0012】又、本発明によれば、上記磁気コアにおいて、樹脂被膜は、コーティング形成の繰り返しにより形成された磁気コアが得られる。
【0013】更に、本発明によれば、上記何れかの磁気コアにおいて、希土類磁石粉末の表面は、樹脂被膜のコーティング形成に先立って予めZn,Al,Bi,Ga,In,Mg,Pb,Sb,Snのうちの少なくとも一種又はその合金で被覆されている磁気コアが得られる。
【0014】加えて、本発明によれば、上記磁気コアにおいて、ボンド磁石における樹脂被膜を含む樹脂は、総量が体積比で20vol%以上であり、比抵抗が1Ω・cm以上である磁気コアが得られる。
【0015】一方、本発明によれば、上記何れか一つの磁気コアを用いたインダクタンス部品において、磁芯のギャップに装着されたボンド磁石の周囲に対して少なくとも1ターン以上の巻線を巻回して成る巻き線部を設けて成るインダクタンス部品が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に実施例を挙げ、本発明の磁気コア及びそれを用いたインダクタンス部品について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】最初に、本発明の磁気コアの技術開発に至る概要を簡単に説明する。本発明では、磁路の1箇所以上にギャップを有する磁芯におけるギャップの少なくとも一つに対して挿入装着する永久磁石について検討を重ねた結果、比抵抗が1Ω・cm以上で固有保磁力Hc が7.9×106 A/m以上の磁石粉末を使用したときに優れた直流重畳特性が得られ、しかもコアロス特性の劣化が生じない磁芯を構成できることを見い出した。これは優れた直流重畳特性を得るために必要な磁石特性は最大エネルギー積(BH)max よりもむしろ固有保磁力Hc にあり、比抵抗の高い磁石粉末を使用しても固有保磁力Hc が高ければ充分に高い直流重畳特性が得られることを発見したことによる。
【0018】比抵抗が高く、しかも固有保磁力Hc が高い永久磁石は、一般的には希土類磁石粉末をバインダーと共に混合した上で圧縮成形して成るボンド磁石で得られるが、固有保磁力Hc の高い磁石粉末であれば如何なる組成のものでも適用することが可能である。希土類磁石粉末の種類はSmCo系,NdFeB系,SmFeN系とあるが、使用目的上のリフロー条件及び耐酸化性を考慮すれば、現状では固有保磁力Hc が7.9×106 A/m以上であると共に、キューリー温度Tcが500℃以上であって、且つ平均粒径を2.5〜50μmとしたSm2 Co17系磁石粉末に限定される。
【0019】又、本発明の磁気コアに用いられる磁芯におけるギャップに挿入装着するボンド磁石は、特に耐酸化性を向上させるため、Sm2 Co17系磁石粉末の表面に予め体積比1.0〜15%でコーティング形成された樹脂被膜を含むもので、ボンド磁石における樹脂被膜及びバインダーから成る樹脂は、総量が体積比で20vol%以上とすることが好ましく、この場合にも比抵抗が1Ω・cm以上得られるようにする。ここでの樹脂被膜は、コーティング形成の繰り返しにより形成されることが好ましい。
【0020】更に、Sm2 Co17系磁石粉末の表面は、樹脂被膜のコーティング形成に先立って予めZn,Al,Bi,Ga,In,Mg,Pb,Sb,Snのうちの少なくとも一種又はその合金で被覆しておくことが好ましい。
【0021】加えて、磁芯の材料としては、チョークコイルやトランスに好適な軟磁気特性を有する材料であれば如何なるものでも有効であるが、一般的にはMnZn系又はNiZn系のフェライト,圧粉磁心,珪素鋼板,アモルファス等が用いられるので、それらを任意に選択して構わない。磁芯の形状については、特に制限があるわけではなく、トロイダルコア,EE型コア,EI型コア等のあらゆる形状のものを適用することが可能である。何れにしても、これらコアの磁路の少なくとも1箇所以上にギャップを設け、そのギャップに上述した構成のボンド磁石を挿入装着する。尚、コアの磁路に設けるギャップ長は特に制限されないが、ギャップ長が狭すぎると直流重畳特性が劣化してしまうし、又ギャップ長が広すぎると透磁率が低下し過ぎてしまうので、そうした短所が発現しないように配慮すれば自ずと決定されるものである。
【0022】以下は、幾つかの実施例を挙げ、磁気コア及びそれを用いたインダクタンス部品について、それらの製造工程を含めて具体的に説明する。
【0023】(実施例1)実施例1では、先ずボンド磁石を得るための希土類磁石粉末として平均粒径が約5μmのSm2 Co17系磁石粉末を用い、このSm2 Co17系磁石粉末の表面にエポキシ樹脂による樹脂被膜がそれぞれ体積比vol%で0.5,1.0,2.0,5.0,10.0,15.0,20.0としてコーティング形成されるように、加圧ニーダを用いてエポキシ樹脂を混練することにより混合物を得た後、この混合物を150℃で硬化して得られる塊をライカイ機で解砕して粉末化を行った。但し、ここでエポキシ樹脂による樹脂被膜を体積比20.0vol%でコーティング形成した試料は解砕を行うことが困難であったので、粉末化することができなかった。
【0024】次に、これらの樹脂被膜をコーティング形成したSm2 Co17系磁石粉末の各試料に対し、樹脂のトータルの総量が体積比vol%で50になるように各試料に対してエポキシ樹脂によるバインダーを混合した後、無磁場中で金型成形することにより各試料に係るボンド磁石を作製した。
【0025】一方、磁芯としてMn−Zn系フェライト材で作成された磁路長7.5cm、実効断面積0.74cmのEE型コアを用意し、その中芯に1.5mmのギャップ加工を施すと共に、EE型コアの中芯断面形状に合致し、且つ高さが1.5mmの形状となるように加工した各試料に係るボンド磁石を約10Tのパルス磁場で磁路方向に着磁した後、EE型コアのギャップに各試料に係るボンド磁石を挿入装着して各試料に係る磁気コアを作製した。
【0026】図1は、このようにして作製された本発明の実施例1に係る磁気コア3の外観構成を示した斜視図である。この磁気コア3は、EE型コア2の中芯の磁路に形成されたギャップに対し、上述した各試料に係るボンド磁石1を挿入装着して構成されるものである。
【0027】因みに、このようにして得られた磁気コア3は、図2の側面図に示されるように、磁気コア3における磁芯となるEE型コア2のギャップに装着されたボンド磁石1の周囲に対して少なくとも1ターン以上の巻線を巻回して巻き線部4を設けることにより、インダクタンス部品5として構成される。
【0028】表1は、ここでの各試料に係るボンド磁石のフラックスをリフローの前後で測定して減磁率(%)を調べた結果を比較例としての樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成しない点以外は同様な手順で作製されたボンド磁石と対比して示したものである。又、表2は、ここでの各試料に係るボンド磁石の比抵抗をリフローの前後で測定した結果を比較例としての樹脂被膜をSm2Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成しない点以外は同様な手順で作製されたボンド磁石と対比して示したものである。
【0029】
【表1】

【表2】

但し、ここでリフロー条件は、各試料に係るボンド磁石をリフロー炉として270℃の恒温槽で30分保持してから常温まで冷却して2時間放置したものであり、表1のフラックス及び表2の比抵抗の測定結果はこうしたリフロー前後における測定結果を含んでいる。
【0030】表1,2からは、Sm2 Co17系磁石粉末に対する樹脂被膜のコーティング量(樹脂コーテイング量)を体積比で1vol%以上とすれば、フラックスを変化させずに消磁率(コアロス)及び比抵抗を向上させ得ることが判る。
【0031】図3は、ここでの各試料に係る樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成して成るボンド磁石をEE型コアのギヤップに挿入装着して構成される磁気コアの透磁率μの周波数特性を周波数f[kHz]に対する透磁率μ[−]の関係で比較例としての樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成せずに成るボンド磁石をEE型コアのギヤップに挿入装着して構成される磁気コア並びにボンド磁石をEE型コアのギヤップに挿入装着せずに構成される磁気コア(AirGAP)と対比して示したものである。
【0032】図3からは、透磁率μの周波数特性では、比抵抗が高いものの方が高周波帯域まで伸びている(尚、図3中ではコーティング15vol%のデータがコーティング10vol%のデータとほぼ重複しており、判別し難くなっている)ことが判る。又、直流重畳特性はフラックスと同様な傾向を示しており、樹脂被膜をコーティングして成るボンド磁石を挿入装着することで高磁界まで透磁率μが伸びることを確認できた。
【0033】以上の実施例1では、Sm2 Co17系磁石粉末に対する樹脂被膜のコーティング量(樹脂コーテイング量)を1vol%以上とした場合に比抵抗が高く、樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末にコーティング形成しない場合のボンド磁石を用いた場合よりも耐酸化性及び消磁率の向上が図られて良好な特性の磁気コアを得られること、更に樹脂コーテイング量を20vol%以上とすると粉末化できずに実施(適用)が困難となることが判った。
【0034】(実施例2)実施例2では、先ずボンド磁石を得るための希土類磁石粉末として実施例1の場合と同様な平均粒径が約5μmのSm2 Co17系磁石粉末に対して平均粒径が約5μmのZn金属粉末を3wt%混合し、Ar雰囲気中の温度500℃の条件下で2時間熱処理を施すことにより、Sm2 Co17系磁石粉末の表面にZnが被覆されたSm2 Co17系磁石粉末を得た。
【0035】次に、このSm2 Co17系磁石粉末に対してエポキシ樹脂を1.0vol%撹拌混練して得られた混練物を150℃で硬化した後、ライカイ機で解砕して粉末化を行った。
【0036】更に、この粉末に上述した工程と同じ工程、即ち、エポキシ樹脂を1.0vol%撹拌混練して得られた混練物を150℃で硬化した後、ライカイ機で解砕して粉末化を行う工程を繰り返すことで、予め表面にZnが被覆されたSm2 Co17系磁石粉末の表面にエポキシ樹脂による樹脂被膜をコーティング形成する樹脂コーティングを1回から5回まで段階別に行うと共に、各樹脂コーティング回数毎にサンプリングするようにして得られた各粉末の各試料に対し、樹脂のトータルの総量が体積比vol%で50になるようにエポキシ樹脂によるバインダーを混合した後、無磁場中で金型成形することにより各試料に係るボンド磁石を作製した。
【0037】これらのボンド磁石を実施例1の場合と同様の形状に加工して約10Tのパルス磁場で着磁した後、EE型コアのギャップに各試料に係るボンド磁石を挿入装着して各試料に係る磁気コアを作製した。
【0038】表3は、ここでの各試料に係るボンド磁石のフラックスをリフローの前後で測定して減磁率(%)を調べた結果を比較例としての樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にそれぞれ体積比で1.0,2.0,5.0vol%として1回だけコーティング形成したボンド磁石と対比して示したものである。又、表4は、ここでの各試料に係るボンド磁石の比抵抗をリフローの前後で測定した結果を比較例としての樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にそれぞれ体積比で1.0,2.0,5.0vol%として1回だけコーティング形成したボンド磁石と対比して示したものである。因みに、ここでの比較例となる各試料に係るボンド磁石は、実施例1で説明した形態のものに対応するため、あくまでも実施例2中においての比較例であるとする。
【0039】
【表3】

【表4】

又、ここでのリフロー条件も、実施例1の場合と同様であり、表3のフラックス及び表4の比抵抗の測定結果はこうしたリフロー前後における測定結果を含んでいる。
【0040】表3,4からは、フラックスの相違は殆ど認められないものの、比抵抗の方は樹脂コーティング回数が多い程向上しており、しかも同じ樹脂コーテイング量であっても樹脂コーテイングを繰り返し行った方が高い結果となることが判る。又、ここでも各試料に係るボンド磁石(本実施例のもの)をEE型コアのギヤップに挿入装着して各試料に係る磁気コアを構成した上、実施例1の場合と同様に透磁率μの周波数特性を測定した結果、比抵抗が高い試料では透磁率μが高周波まで伸びていることを確認できた。
【0041】以上の実施例2では、予め表面にZnが被覆されたSm2 Co17系磁石粉末に対する樹脂被膜のコーティング(樹脂コーテイング)形成を繰り返し行えば、樹脂被膜のコーティング形成を1回で行った場合よりも比抵抗が高く、優れた比抵抗及び消磁率(コアロス)を持った良好な特性の磁気コアを得られることが判った。
【0042】(実施例3)実施例3では、先ずボンド磁石を得るための希土類磁石粉末として実施例2の場合と同様な平均粒径が約5μmのSm2 Co17系磁石粉末に対して平均粒径が約5μmのZn金属粉末を3wt%混合し、Ar雰囲気中の温度500℃の条件下で2時間熱処理を施すことにより、Sm2 Co17系磁石粉末の表面にZnが被覆されたSm2 Co17系磁石粉末を得た。
【0043】次に、このSm2 Co17系磁石粉末に対してエポキシ樹脂を10vol%撹拌混練して得られた混練物を150℃で硬化した後、ライカイ機で解砕して粉末化を行った。これにより、予め表面にZnが被覆されたSm2 Co17系磁石粉末の表面にエポキシ樹脂による樹脂被膜をコーティング形成する樹脂コーティングを施した。
【0044】更に、この樹脂コーティングを行った粉末に樹脂のトータルの総量が体積比vol%でそれぞれ20,30,40,50になるようにエポキシ樹脂によるバインダーを混合した後、無磁場中で金型成形することにより各試料に係るボンド磁石を作製した。
【0045】これらのボンド磁石を実施例1の場合と同様の形状に加工して約10Tのパルス磁場で着磁した後、EE型コアのギャップに各試料に係るボンド磁石を挿入装着して各試料に係る磁気コアを作製した。
【0046】表5は、ここでの各試料に係るボンド磁石のフラックスをリフローの前後で測定して減磁率(%)を調べた結果を比較例としての樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成しない点以外は同様な手順で作製されたボンド磁石と対比して示したものである。又、表6は、ここでの各試料に係るボンド磁石の比抵抗をリフローの前後で測定した結果を比較例としての樹脂被膜をSm2Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成しない点以外は同様な手順で作製されたボンド磁石と対比して示したものである。
【0047】
【表5】

【表6】

但し、ここでのリフロー条件も、実施例1の場合と同じであり、表5のフラックス及び表6の比抵抗の測定結果はこうしたリフロー前後における測定結果を含んでいる。
【0048】表5,6からは、フラックスの相違は殆ど認められないものの、樹脂全体の総量を体積比で20vol%とした試料でも比抵抗が1Ω・cm以上得られることが判る。又、表中には記載していないが、樹脂全体の総量を体積比で20vol%以下とした場合には比抵抗は1Ω・cm以下となることが判った。更に、ここでも各試料に係るボンド磁石(本実施例のもの)をEE型コアのギヤップに挿入装着して各試料に係る磁気コアを構成した上、実施例1の場合と同様に透磁率μの周波数特性並びに直流重畳特性を測定した結果、樹脂コーティング有無に関係なく樹脂の総量が少ない場合の方が直流重畳特性は高磁界まで伸びており、樹脂コーティングを行った試料の場合の方が透磁率μの周波数特性は高周波まで伸びていることを確認できた。特に透磁率μの周波数特性に関しては、比抵抗の場合と同様に樹脂の総量を体積比20vol%としたときに顕著になる傾向が見い出された。
【0049】以上の実施例3では、予め表面にZnが被覆されたSm2 Co17系磁石粉末に対して樹脂被膜のコーティング(樹脂コーテイング)形成を行った上で樹脂の総量を適量とすれば、樹脂被膜のコーティング形成を行わない場合よりも比抵抗が高く、1Ω・cm以上の比抵抗を維持しながら樹脂の総量を低減でき、優れた比抵抗及び消磁率(コアロス)を持った良好な特性の磁気コアを得られることが判った。
【0050】(実施例4)実施例4では、先ずボンド磁石を得るための希土類磁石粉末として実施例2の場合と同様な平均粒径が約5μmのSm2 Co17系磁石粉末に対して平均粒径が約5μmのZn金属粉末を3wt%混合し、Ar雰囲気中の温度500℃の条件下で2時間熱処理を施すことにより、Sm2 Co17系磁石粉末の表面にZnが被覆されたSm2 Co17系磁石粉末を得た。
【0051】次に、このSm2 Co17系磁石粉末に対して固形分比15%のポリアミドイミド樹脂をNMPで20倍に希釈した溶液を樹脂の固形分比での体積比が10vol%となるように加圧ニーダを用いて混練を行うことで得られた混練物を温度80℃の条件下で溶剤を揮発させるように予備乾燥を行い、ここで得られた塊をライカイ機で解砕して粉末化を行った後に温度条件200℃で30分熱処理した。これにより、予め表面にZnが被覆されたSm2 Co17系磁石粉末の表面にポリアミドイミド樹脂による樹脂被膜をコーティング形成する樹脂コーティングを施した。
【0052】更に、この樹脂コーティングを行った粉末に樹脂のトータルの総量が体積比vol%で50になるようにPAI樹脂によるバインダーを混合して粘度が約300Pのスラリーを得た後、このスラリーをドクターブレード装置でそれぞれ厚膜100,200,500μmのシート状となるように加工して各試料に係るボンド磁石を作製した。
【0053】これらのボンド磁石を実施例1の場合と同様にEE型コアのギャップに挿入装着される形状に加工して約10Tのパルス磁場で着磁した後、EE型コアのギャップ(ここでの厚膜100,200,500μmに対応した寸法のものが用意されているものとする)に各試料に係るボンド磁石を挿入装着して各試料に係る磁気コアを作製した。
【0054】表7は、ここでの各試料に係るボンド磁石の比抵抗をリフローの前後で測定した結果を比較例としての樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成しない点以外は同様な手順で作製されたボンド磁石と対比して示したものである。
【0055】
【表7】

但し、ここでのリフロー条件も、実施例1の場合と同様であり、表7の比抵抗の測定結果はこうしたリフロー前後における測定結果を含んでいる。
【0056】表7からは、樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成していないボンド磁石では膜厚の減少により比抵抗が低下しているのに対し、樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成した試料では膜厚100μmの場合においても1Ω・cm以上の比抵抗が得られることが判る。又、ここではボンド磁石の比抵抗のみについて述べたが、実施例1の場合と同様に磁気コアを構成して透磁率μの周波数特性を測定したところ、樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成した試料の方が透磁率μの周波数特性が高周波まで伸びることを確認できた。
【0057】以上の実施例4では、樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成した後の樹脂の総量を適量とした上でボンド磁石の膜厚を所定の範囲で選定して規定するようにすれば、樹脂被膜をSm2 Co17系磁石粉末の表面にコーティング形成しない場合よりも比抵抗が高いシート状のボンド磁石が得られ、優れた比抵抗及び消磁率(コアロス)を持った良好な特性の磁気コアを得られることが判った。
【0058】尚、上述した実施例2〜4では、樹脂被膜のコーティング形成に先立って予めSm2 Co17系磁石粉末の表面に被覆する金属粉末としてZnを用いた場合を説明したが、低融点金属であれば他のものでも適用することができ、例えばその他にAl,Bi,Ga,In,Mg,Pb,Sb,Snの少なくとも一種、或いはその合金等を用いても同様の効果を得ることができる。又、樹脂材料についても、各実施例ではSm2 Co17系磁石粉末の表面に被覆される樹脂被膜材料としてエポキシ樹脂やアミドイミド樹脂を用いた場合、バインダーとしてエポキシ樹脂やPAI樹脂を用いた場合を説明したが、耐熱性を有する樹脂材料であればその他のものでも適用可能である。
【0059】
【発明の効果】以上に述べた通り、本発明の磁気コアによれば、磁芯の磁路に形成されたギャップに挿入装着される直流磁気バイアス印加用磁石としてのボンド磁石を改良し、希土類磁石粉末として磁気特性の優れたSm2 Co17磁石粉末の表面に予め体積比1.0〜15%で樹脂被膜をコーティング形成した上でバインダーを含んだ樹脂の総量を適量に定める構成とし、しかも樹脂被膜のコーティング形成に先立って予めSm2 Co17磁石粉末の表面を低融点金属又はその合金で被覆するように構成しているので、優れた直流重畳特性及びコアロス特性、並びに耐酸化性を有する磁気コアが得られるようになる。この結果、この磁気コアにおける磁芯のギャップに装着されたボンド磁石の周囲に対して少なくとも1ターン以上の巻線を巻回して成る巻き線部を設けて成る高周波用のインダクタンス部品においても、表面実装タイプとしての適用が有効となる。
【出願人】 【識別番号】000134257
【氏名又は名称】エヌイーシートーキン株式会社
【住所又は居所】宮城県仙台市太白区郡山6丁目7番1号
【出願日】 平成13年8月10日(2001.8.10)
【代理人】 【識別番号】100071272
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 洋介 (外2名)
【公開番号】 特開2003−59727(P2003−59727A)
【公開日】 平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願番号】 特願2001−244197(P2001−244197)