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【発明の名称】 積層型インダクタ及びその製造方法
【発明者】 【氏名】坂田 啓二
【住所又は居所】京都府長岡京市天神二丁目26番10号 株式会社村田製作所内

【要約】 【課題】磁路構成の設計の自由度が高く、かつ、小型の積層型インダクタ及びその製造方法を提供する。

【解決手段】積層体16の上面及び下面にはそれぞれコイル用導体パターン13a〜13g,14a〜14fが露出し、積層体16の両側面にはそれぞれ柱状接続導体15Aが露出している。積層体16の両端面を残して、上面、下面及び両側面を絶縁保護膜17で被覆する。絶縁保護膜17の材料としては、樹脂やセラミックペースト等が用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の絶縁体層を積み重ねて構成した積層体と、前記積層体の上部に配置された複数のコイル用導体パターンと、前記積層体の下部に配置された複数のコイル用導体パターンと、前記積層体の両側部にそれぞれ配置され、かつ、前記積層体の両側面のそれぞれに少なくとも一つが露出している複数の柱状接続導体と、前記積層体の表面に露出しているコイル用導体パターン及び/又は柱状接続導体を被覆するための絶縁保護膜とを備え、前記上部及び下部のコイル用導体パターンを前記柱状接続導体を介して交互に電気的に直列に接続して構成したコイルが、前記絶縁体層の積み重ね方向に対して垂直な方向にコイル軸を有していること、を特徴とする積層型インダクタ。
【請求項2】 前記複数の柱状接続導体が全て前記積層体の両側面にそれぞれ露出していることを特徴とする請求項1に記載の積層型インダクタ。
【請求項3】 前記複数の柱状接続導体が前記積層体の両側部近傍にそれぞれ配置され、前記コイルと前記積層体の両側面との間にそれぞれ磁路を形成するとともに、前記積層体の両側面のそれぞれに前記柱状接続導体の少なくとも一つが、柱状接続導体の全長にわたって前記コイルの径方向に延在して前記磁路を横切り、前記積層体の両側面に露出していることを特徴とする請求項1に記載の積層型インダクタ。
【請求項4】 前記積層体内に形成されている磁路が非閉磁路であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の積層型インダクタ。
【請求項5】 前記複数の柱状接続導体が全て前記積層体の両側面にそれぞれ露出するとともに、前記複数の柱状接続導体の一部が前記コイル内に折り返され、該折り返し部分の前記コイルと前記積層体の両側面との間にそれぞれ磁路を形成したことを特徴とする請求項1に記載の積層型インダクタ。
【請求項6】 前記コイルに流れる電流値により閉磁路と開磁路の2段階に変化する磁路が、前記積層体内に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の積層型インダクタ。
【請求項7】 スルーホールを設けた絶縁体マザーシートと、複数のコイル用導体パターンをそれぞれ設けた絶縁体マザーシートを積み重ね、一体的に焼成してマザー積層体を焼成するとともに、前記スルーホールを連接して長尺状スルーホールを形成する工程と、前記マザー積層体を前記長尺状スルーホールの位置にて切断して所定のサイズのチップ状積層体を切り出し、前記長尺状スルーホールを2分割してなる柱状接続導体を介して、前記チップ状積層体の上部及び下部にそれぞれ配置されたコイル用導体パターンを交互に電気的に直列に接続し、絶縁体シートの積み重ね方向に対して垂直な方向にコイル軸を有しているコイルを構成する工程と、前記チップ状積層体の表面に露出しているコイル用導体パターン及び/又は柱状接続導体を被覆するための絶縁保護膜を形成する工程と、を備えたことを特徴とする積層型インダクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、積層型インダクタ、特にEMIフィルタなどとして使用される積層型インダクタ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の積層型インダクタとして、従来より、図32に示す積層型インダクタ1が知られている。この積層型インダクタ1は、コイル用導体パターン3a〜3dを表面に設けた絶縁体シート2aと、コイル用導体パターン4a〜4dを表面に設けた絶縁体シート2dと、複数のスルーホール5を設けた絶縁体シート2b,2c等を積み重ね、一体的に焼成して積層体を構成している。
【0003】積層体の上部のコイル用導体パターン3a〜3d並びに下部のコイル用導体パターン4a〜4dはそれぞれ同一層に配置されており、両者は、絶縁体シート2a〜2cに配置されている複数のスルーホール5を介して電気的に直列に接続され、螺旋状コイルLを構成している。螺旋状コイルLは、その軸方向が絶縁体シート2a〜2dの積み重ね方向に対して垂直であり、かつ、入出力外部電極7,8(図33参照)に対して垂直である。言い換えると、螺旋状コイルLの軸方向は、積層型インダクタ1の実装面に対して平行である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年の携帯電話端末機に代表される電子機器の高性能化かつ小型化に伴い、積層型インダクタ1にも電気特性向上や小型化の要求が高い。従って、これらの要求を満足させるために、インダクタ1に内蔵されている螺旋状コイルLとインダクタ1の外面との間に確保されている絶縁領域を小さくする設計が試みられている。ここで、特に問題となるのが、加工の際、スルーホール5がインダクタ1の外面に露出しないように加工精度を考慮して設計することである。しかし、加工精度の制約上、絶縁領域を小さくするのにも限界がある。
【0005】また、絶縁体シート2a〜2dの材料として、フェライト等の磁性体材料を使用した場合、図33に示すように、螺旋状コイルLによって発生した磁束φは、インダクタ1内を通る。つまり、インダクタ1は閉磁路を構成することになる。従って、このインダクタ1を開磁路構成に変更する場合には、絶縁体シート2a〜2dの材料として、誘電体材料や絶縁体材料を使用する必要がある。このように、従来の積層型インダクタ1の磁路構成の変更は、通常、絶縁体シート2a〜2dの材料を選択することによって行われており、インダクタ1の磁路構成の設計の自由度が低いという問題もあった。
【0006】そこで、本発明の目的は、磁路構成の設計の自由度が高く、かつ、小型の積層型インダクタ及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用】前記目的を達成するため、本発明に係る積層型インダクタは、(a)複数の絶縁体層を積み重ねて構成した積層体と、(b)前記積層体の上部に配置された複数のコイル用導体パターンと、(c)前記積層体の下部に配置された複数のコイル用導体パターンと、(d)前記積層体の両側部にそれぞれ配置され、かつ、前記積層体の両側面のそれぞれに少なくとも一つが露出している複数の柱状接続導体と、(e)前記積層体の表面に露出しているコイル用導体パターン及び/又は柱状接続導体を被覆するための絶縁保護膜とを備え、(f)前記上部及び下部のコイル用導体パターンを前記柱状接続導体を介して交互に電気的に直列に接続して構成したコイルが、前記絶縁体層の積み重ね方向に対して垂直な方向にコイル軸を有していること、を特徴とする。
【0008】以上の構成により、絶縁保護膜が、積層体の表面に露出しているコイル用導体パターン及び/又は柱状接続導体を被覆するので、精度の高い加工を必要としなくてすむ。
【0009】また、柱状接続導体の全てを積層体の両側面に露出させることで、絶縁体層の材料が磁性体材料からなるときでも、開磁路構造が得られる。従って、インダクタンスの直流重畳特性が良くなる。
【0010】また、複数の柱状接続導体を積層体の両側部近傍にそれぞれ配置し、コイルと積層体の両側面との間にそれぞれ磁路を形成するとともに、積層体の両側面のそれぞれに柱状接続導体の少なくとも一つを、柱状接続導体の全長にわたってコイルの径方向に延在させて磁路を横切らせ、積層体の両側面に露出させることを特徴とする。これにより、磁路に非磁性部分が設けられ、閉磁路に近い開磁路構造となり、優れた直流重畳特性が得られるとともに、大きなインダクタンスも得られる。このように、非閉磁路構造には、開磁路構造、並びに、閉磁路に近い開磁路構造を含む。
【0011】また、本発明に係る積層型インダクタは複数の柱状接続導体が全て積層体の両側面にそれぞれ露出するとともに、複数の柱状接続導体の一部がコイル内に折り返され、該折り返し部分のコイルと積層体の両側面との間にそれぞれ磁路を形成したことを特徴とする。これにより、直流重畳特性が2段階に変化する。
【0012】また、本発明に係る積層型インダクタの製造方法は、(g)スルーホールを設けた絶縁体マザーシートと、複数のコイル用導体パターンをそれぞれ設けた絶縁体マザーシートを積み重ね、一体的に焼成してマザー積層体を焼成するとともに、前記スルーホールを連接して長尺状スルーホールを形成する工程と、(h)前記マザー積層体を前記長尺状スルーホールの位置にて切断して所定のサイズのチップ状積層体を切り出し、前記長尺状スルーホールを2分割してなる柱状接続導体を介して、前記チップ状積層体の上部及び下部にそれぞれ配置されたコイル用導体パターンを交互に電気的に直列に接続し、絶縁体シートの積み重ね方向に対して垂直な方向にコイル軸を有しているコイルを構成する工程と、(i)前記チップ状積層体の表面に露出しているコイル用導体パターン及び/又は柱状接続導体を被覆するための絶縁保護膜を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。以上の方法により、長尺状スルーホールを2分割して柱状接続導体を効率よく形成することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る積層型インダクタ及びその製造方法の実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
【0014】[第1実施形態、図1〜図10]図1に示すように、積層型インダクタ11は、直線状のコイル用導体パターン13a〜13gを上面に設けた絶縁体シート12aと、直線状のコイル用導体パターン14a〜14fを下面に設けた絶縁体シート12eと、複数の半円形スルーホール15を縁部に設けた絶縁体シート12b〜12d等にて構成されている。
【0015】コイル用導体パターン13a〜13g,14a〜14fは、スクリーン印刷、スパッタリング、蒸着、フォトリソグラフィ等の方法により形成されている。コイル用導体パターン13a〜13g,14a〜14fの材料としては、Ag,Ag−Pd,Pd,Cu,Niなどが使用される。絶縁体シート12a〜12eの材料としては、フェライト等の磁性体材料やセラミック等の誘電体材料、ガラス等の絶縁体材料を、結合剤などと一緒に混練し、シート状に成形したものである。
【0016】スルーホール15は、絶縁体シート12a〜12eにレーザ加工やパンチング加工などにより、予めスルーホール用孔を形成した後、そのスルーホール用孔に導電性ペーストを充填することにより形成される。これらのスルーホール15は、絶縁体シート12a〜12eの積み重ね方向に連接され、それぞれ柱状接続導体15A(図2参照)を構成する。
【0017】コイル用導体パターン13a〜13gは、後述の積層体16(図2参照)の上面に配置される。コイル用導体パターン14a〜14fは、積層体16の下面に配置される。上面に配置されたコイル用導体パターン13a〜13gはそれぞれ、絶縁体シート12a〜12eの縁部に設けたスルーホール15からなる柱状接続導体15Aを介して順次下面に配置されたコイル用導体パターン14a〜14fに電気的に直列に接続され、螺旋状コイルLを構成する。螺旋状コイルLは、その軸方向が絶縁体シート12a〜12eの積み重ね方向に対して垂直であり、かつ、後述の入出力電極18,19(図4参照)に対して垂直である。言い換えると、螺旋状コイルLの軸方向は、インダクタ11の実装面に対して平行である。
【0018】以上の絶縁体シート12a〜12eは積み重ねられた後、一体的に焼成され、図2に示すように、積層体16とされる。積層体16の上面及び下面にはそれぞれコイル用導体パターン13a〜13g,14a〜14fが露出し、積層体16の両側面にはそれぞれ柱状接続導体15Aが全て露出している。
【0019】次に、図3に示すように、積層体16の両端面を残して、上面、下面及び両側面を1〜5μm程度の絶縁保護膜17で被覆する。絶縁保護膜17の材料としては、樹脂やセラミックペースト等が用いられる。樹脂の場合には、エポキシやポリイミド等の高分子樹脂を、塗布、浸漬、印刷、スプレー等の方法によりコイル用導体パターン13a〜13g等の露出面に付与し、適温にて硬化させる。例えば、浸漬法で形成した場合には、絶縁保護膜17の厚みは50〜100μm程度になる。セラミックペーストの場合にも、ガラス等のセラミックペーストを、同様の方法によりコイル用導体パターン13a〜13g等の露出面に付与し、焼成させる。
【0020】なお、絶縁保護膜17は、積層体16の全表面を被覆するように形成してもよい。ただし、この場合には、積層体16の両端面のコーナ部を面取りし、コイル用導体パターン13a,13gの端部を露出させる必要がある。コーナ部の面取りは機械切削加工によって行ってもよいが、バレル研磨加工を用いると、積層体16の両端面以外のコーナ部の面取りも同時に行うことができるので、製造コストが低減する。
【0021】次に、図4に示すように、積層体16の両端部には、それぞれ入出力外部電極18,19が設けられる。入出力外部電極18,19は、それぞれコイル用導体パターン13a,13gに電気的に接続されている。これらの入出力外部電極18,19は、Ag,Ag−Pd,Cu等の導電性ペーストを塗布後、焼付け、さらに乾式めっきすることによって形成される。なお絶縁保護膜17が樹脂からなるときは、入出力外部電極18,19の導電性ペーストとして、低温で硬化できるものを使用する。例えば、熱硬化型の導電性接着剤などを使用する。
【0022】図5は、積層型インダクタ11の内部構造を模式的に示したものである。絶縁体シート12a〜12eがフェライト等の磁性体材料からなる場合でも、螺旋状コイルLによって発生した磁束φは、インダクタ11の外を通るので、開磁路を構成することができる。これにより、図6に実線21で示すように、積層型インダクタ11のインダクタンスの直流重畳特性が良くなる。比較のために、図6には、図32に示した絶縁体シート2a〜2dをフェライト等の磁性体材料で製作した閉磁路構成の従来の積層型インダクタ1の直流重畳特性を、併せて記載している(点線22参照)。
【0023】また、絶縁体シート12a〜12eが非磁性体材料からなる場合には、積層型インダクタ11は空芯コイルとなり、螺旋状コイルLの内径が大きい高インダクタンス、高Q特性のインダクタが得られる(図7の実線23参照)。比較のために、図7には、図32に示した絶縁体シート2a〜2dを非磁性体材料で製作した従来の積層型インダクタ1のQ特性を併せて記載している(点線24参照)。
【0024】次に、第1実施形態の積層型インダクタ11をマザー基板を用いて量産する場合について説明する。
【0025】図8に示すように、積層型インダクタ11が複数個取れるような広面積の絶縁体マザーシート12Aを準備し、縦横にインダクタ11の配列位置を決定する。インダクタ11は隣り合うように配列され、その境界部分にはスルーホール用孔が形成される。この位置に合わせて、コイル用導体パターン13a〜13gを、スクリーン印刷などの方法を用いて形成するとともに、スルーホール用孔に導電性ペーストを充填してスルーホール25を形成する。
【0026】同様に、図9及び図10に示すように、広面積の絶縁体マザーシート12B,12C,12D,12Eを準備する。絶縁体マザーシート12B〜12Dにはそれぞれ、インダクタ11の配列数分のスルーホール用孔が形成され、さらに、このスルーホール用孔に導電性ペーストを充填してスルーホール25が形成される。スルーホール25は隣り合うインダクタ11の境界部分に位置している。絶縁体マザーシート12Eは、その下面にインダクタ11の配列数分のコイル用導体パターン14a〜14fが形成される。なお、図8〜図10において、コイル用導体パターン13a〜13gやスルーホール25は、中央部の四つのインダクタのもの以外は省略している。
【0027】次に、こうして加工された絶縁体マザーシート12E,12D,12C,12B,12Aを、この順に積み重ね、加圧してマザー積層体を形成する。スルーホール25は連接して長尺状スルーホール25となる。このマザー積層体をダイサーやレーザビーム、あるいはジェット水流で縦横に切断し、図8〜図10の一点鎖線で囲んだサイズ毎に切り出し、チップ状の積層体、つまり、図2に示したような積層体16を得る。このとき、長尺状スルーホール25は2分割され、横断面が半円形の柱状接続導体15Aとなる。チップ状の積層体16は所定の温度に加熱され、焼成される。この後、前述したように、積層体16の両端面を残して、上面、下面及び両側面を絶縁保護膜17で被覆する(図3参照)。次に、図4に示すように、積層体16の両端部にそれぞれ入出力外部電極18,19を設ける。
【0028】以上の方法によれば、一度で大量に生産でき、低コストで能率良く積層型インダクタ11を得ることができる。なお、マザー積層体を焼成して、その上下面に樹脂等で絶縁保護膜を形成した後、図8〜図10の一点鎖線で囲んだサイズ毎に切り出し、チップ状の積層体16を得るようにしてもよい。また、長尺状スルーホール25の横断面(分割前)は、楕円形や長方形、正方形などであってもよい。長方形や正方形といった角形の場合には、表面積が大きくなるので特性上好ましい。さらに、導電性ペーストをスルーホール25に充填する際に、ペースト落ち(抜け)が発生しにくい。
【0029】[第2実施形態、図11〜図19]第2実施形態は、直流重畳特性が良く、かつ、大きなインダクタンスも得られる積層型インダクタについて説明する。図11に示すように、積層型インダクタ31は、コイル用導体パターン34a〜34gを上面に設けた絶縁体シート32aと、コイル用導体パターン35a〜35fを下面に設けた絶縁体シート32eと、複数のスルーホール36,37を縁部に設けた絶縁体シート32b〜32dと、保護シート33等にて構成されている。絶縁体シート32a〜32eは、フェライト等の磁性体材料やセラミック等の誘電体材料、絶縁体材料からなる。保護シート33は、ガラス系の非磁性セラミックシート等からなる。
【0030】スルーホール36,37は、絶縁体シート32a〜32eの積み重ね方向に連接され、それぞれ柱状接続導体36A,37A(図12参照)を構成する。スルーホール37は絶縁体シート32a〜32eの手前側又は奥側の辺にそれぞれ達する長穴形状を有している。
【0031】コイル用導体パターン34a〜34gは、後述の積層体38(図12参照)の上部に配置される。コイル用導体パターン35a〜35fは、積層体38の下部に配置される。上部に配置されたコイル用導体パターン34a〜34gはそれぞれ、絶縁体シート32a〜32eの縁部に設けたスルーホール36,37からなる柱状接続導体36A,37Aを介して順次下部に配置されたコイル用導体パターン35a〜35fに電気的に直列に接続され、螺旋状コイルLを構成する。螺旋状コイルLは、その軸方向が絶縁体シート32a〜32eの積み重ね方向に対して垂直である。
【0032】以上の各シート32a〜32e,33は積み重ねられた後、一体的に焼成され、図12に示すように、積層体38とされる。積層体38の両側面にはそれぞれ柱状接続導体37Aが露出し、積層体38の両端面にはそれぞれコイル用導体パターン34a,34gの端部が露出している。
【0033】次に、図13に示すように、積層体38の両側面をそれぞれ絶縁保護膜39,40で被覆する。絶縁保護膜39,40の材料としては、樹脂やセラミックペースト等が用いられる。
【0034】次に、図14に示すように、積層体38の両端部にそれぞれ入出力外部電極41,42が設けられる。入出力外部電極41,42は、それぞれコイル用導体パターン34a,34gに電気的に接続されている。
【0035】図15は、積層型インダクタ31の内部構造を模式的に示したものである。絶縁体シート32a〜32eがフェライト等の磁性体材料からなる場合、螺旋状コイルLと積層体38の両側面との間にそれぞれ磁路が形成される。従って、螺旋状コイルLによって発生した磁束φはインダクタ11の内部を通る。ところが、柱状接続導体37Aが、その全長にわたって螺旋状コイルLの径方向に延在し、前記磁路を横切っている。そのため、前記磁路の一部に配設された非磁性体からなる柱状接続導体37Aによって、インダクタ31は完全な閉磁路にはならず、閉磁路に近い構造となる。
【0036】この結果、インダクタ31は大きなインダクタンスを有することができる。さらに、磁路に非磁性部分のギャップが設けられているため、この非磁性部分で磁束漏れが生じて磁気抵抗が増大する。これにより、図16に実線44で示すように、積層型インダクタ31のインダクタンスの直流重畳特性を向上させることができる。比較のために、図16には、図32に示した絶縁体シート2a〜2dをフェライト等の磁性体材料で製作した閉磁路構成の従来の積層型インダクタ1の直流重畳特性を、併せて記載している(点線45参照)。なお、非磁性部分を形成する柱状接続導体37Aは一つである必要はなく、複数であってもよい。また、磁路の非磁性部分を、空洞にしたり、他の非磁性材料を充填したりして形成してもよい。
【0037】次に、第2実施形態の積層型インダクタ31をマザー基板を用いて量産する場合について説明する。
【0038】図17に示すように、積層型インダクタ31が複数個取れるような広面積の絶縁体マザーシート32Aを準備し、縦横にインダクタ31の配列位置を決定する。インダクタ31は隣り合うように配列され、その境界部分には1箇所だけ共有のスルーホール用孔が形成され、さらに、各インダクタ31毎に個別のスルーホール用孔が形成される。この位置に合わせて、コイル用導体パターン34a〜34gを、スクリーン印刷などの方法を用いて形成するとともに、スルーホール用孔に導電性ペーストを充填してスルーホール46,47を形成する。スルーホール47は長穴形状を有している。
【0039】同様に、図18及び図19に示すように、広面積の絶縁体マザーシート32B,32C,32D,32Eを準備する。絶縁体マザーシート32B〜32Dにはそれぞれ、インダクタ31の配列数分のスルーホール用孔が形成され、さらに、このスルーホール用孔に導電性ペーストを充填してスルーホール46,47が形成される。絶縁体マザーシート32Eは、その下面にインダクタ31の配列数分のコイル用導体パターン35a〜35fが形成される。
【0040】次に、こうして加工された絶縁体マザーシート32E,32D,32C,32B,32Aを、この順に積み重ね、さらに、広面積の保護マザーシートを上下に配置した後、加圧してマザー積層体を形成する。スルーホール46,47は連接して長尺状スルーホール46,47となる。このマザー積層体をダイサーやレーザビーム、あるいはジェット水流で縦横に切断し、図17〜図19の一点鎖線で囲んだサイズ毎に切り出し、チップ状の積層体、つまり、図12に示したような積層体38を得る。このとき、長尺状スルーホール47は2分割され、柱状接続導体37Aとなる。長尺状スルーホール46は、そのまま柱状接続導体36Aとなる。チップ状の積層体38は所定の温度に加熱され、焼成される。この後、前述したように、積層体38の両側面を絶縁保護膜39,40で被覆する(図13参照)。次に、図14に示すように、積層体38の両端部にそれぞれ入出力外部電極41,42を設ける。
【0041】以上の方法によれば、一度で大量に生産でき、低コストで能率良く積層型インダクタ31を得ることができる。
【0042】[第3実施形態、図20〜図31]図20に示すように、積層型インダクタ51は、コイル用導体パターン53a〜53gを上面に設けた絶縁体シート52aと、コイル用導体パターン54a〜54fを下面に設けた絶縁体シート52kと、複数の半円形スルーホール60を縁部に設けた絶縁体シート52b〜52d,52i,52jと、折り返し導体パターン55,57、56,58をそれぞれ上面に設けた絶縁体シート52e,52hと、複数の円形スルーホール61を縁部に設けた絶縁体シート52f,52g等にて構成されている。
【0043】スルーホール60,61は、それぞれ絶縁体シート52a〜52kの積み重ね方向に連接され、折り返し導体パターン55,56、57,58とともにそれぞれ柱状接続導体60A(図21参照)を構成する。この柱状接続導体60Aは、スルーホール61及び折り返し導体パターン55〜58が形成されている部分が、後述の螺旋状コイルLの内側(コイルLの径方向)に折り返されている。
【0044】コイル用導体パターン53a〜53gは、後述の積層体66(図21参照)の上部に配置される。コイル用導体パターン54a〜54fは、積層体66の下部に配置される。上部に配置されたコイル用導体パターン53a〜53gはそれぞれ、絶縁体シート52a〜52kの縁部に設けたスルーホール60,61及び折り返し導体パターン55〜58からなる柱状接続導体60Aを介して順次下部に配置されたコイル用導体パターン54a〜54fに電気的に直列に接続され、螺旋状コイルLを構成する。螺旋状コイルLは、その軸方向が絶縁体シート52a〜52kの積み重ね方向に対して垂直である。
【0045】以上の各シート52a〜52kは積み重ねられ、さらに、上下に保護シートが配置された後、一体的に焼成され、図21に示すように、積層体66とされる。積層体66の両側面にはそれぞれ柱状接続導体60Aが露出し、積層体66の両端面にはそれぞれコイル用導体パターン53a,53gの端部が露出している。
【0046】次に、図22に示すように、積層体66の両側面をそれぞれ絶縁保護膜69,70で被覆する。絶縁保護膜69,70の材料としては、樹脂やセラミックペースト等が用いられる。
【0047】次に、図23に示すように、積層体66の両端部にそれぞれ入出力外部電極71,72が設けられる。入出力外部電極71,72は、それぞれコイル用導体パターン53a,53gに電気的に接続されている。
【0048】図24は、積層型インダクタ51の内部構造を模式的に示したものである。絶縁体シート52a〜52kがフェライト等の磁性体材料からなる場合、螺旋状コイルLの折り返し部分のスルーホール61と積層体66の両側面との間にそれぞれ微小磁路が形成される。これにより、積層型インダクタ51の直流重畳特性を2段階に変化させることができる。すなわち、螺旋状コイルLに流れる電流が小さいときの磁束φ1は、スルーホール61と積層体66の両側面との間に形成されている微小磁路を通って、インダクタ51の内部を周回する。従って、インダクタ51は閉磁路構成となり、大きなインダクタンスが得られる。
【0049】一方、螺旋状コイルLに流れる電流が大きくなり、ある値を超えると、前記微小磁路での磁束密度が大きくなり、磁気飽和を起こすため、インダクタ51のインダクタンスが低下する。この段階で、磁束φ2はインダクタ51の外を通るようになり、インダクタ51は開磁路構成に変わり、螺旋状コイルLに流れる電流がさらに大きくなってもインダクタンス低下が起きにくくなる。
【0050】このように、低負荷時に大きなインダクタンスが得られるので、DC/DCコンバータ等にこのインダクタ51を使用した場合には、低電流出力時の波形を安定化でき、待機時にも安定した出力が得られる。図25は、インダクタ51の直流重畳特性を示すものである(実線74参照)。比較のために、図25には、図32に示した絶縁体シート2a〜2dをフェライト等の磁性体材料で製作した閉磁路構成の従来の積層型インダクタ1の直流重畳特性を、併せて記載している(点線75参照)。
【0051】なお、本第3実施形態では、前記微小磁路を積層体66の厚み方向において、略中央に配置したが、積層体66の上面側あるいは下面側に配置してもよい。また、微小磁路は積層体66の手前側又は奥側のいずれか一方の側面のみに配置するものであってもよい。また、保護シートの材料として、磁性材を使用した場合には、螺旋状コイルLによって発生した磁束φが保護シートの部分を通るため、特に、スルーホール61と折り返し導体パターン55〜58にて微小磁路を構成する必要がなくなる。
【0052】次に、第3実施形態の積層型インダクタ51をマザー基板を用いて量産する場合について説明する。
【0053】図26に示すように、積層型インダクタ51が複数個取れるような広面積の絶縁体マザーシート52Aを準備し、縦横にインダクタ51の配列位置を決定する。インダクタ51は隣り合うように配列され、その境界部分にはスルーホール用孔が形成される。この位置に合わせて、コイル用導体パターン53a〜53gを、スクリーン印刷などの方法を用いて形成するとともに、スルーホール用孔に導電性ペーストを充填してスルーホール80を形成する。
【0054】同様に、図27〜図31に示すように、広面積の絶縁体マザーシート52B〜52Kを準備する。絶縁体マザーシート52B〜52Kにはそれぞれ、インダクタ51の配列数分のスルーホール80,81や折り返し導体パターン55〜58、コイル用導体パターン54a〜54fが形成されている。
【0055】次に、こうして加工された絶縁体マザーシート52K〜52Aを、この順に積み重ね、さらに、広面積の保護マザーシートを上下に配置した後、加圧してマザー積層体を形成する。スルーホール80,81と折り返し導体パターン55〜58は連接して長尺状スルーホールとなる。このマザー積層体をダイサーやレーザビーム、あるいはジェット水流で縦横に切断し、図26〜図31の一点鎖線で囲んだサイズ毎に切り出し、チップ状の積層体、つまり、図21に示したような積層体66を得る。このとき、長尺状スルーホールはその一部分(スルーホール80の部分)が2分割され、柱状接続導体60Aとなる。チップ状積層体66は所定の温度に加熱され、焼成される。この後、前述したように、積層体66の両側面を絶縁保護膜69,70で被覆する(図22参照)。次に、図23に示すように、積層体66の両端部にそれぞれ入出力外部電極71,72を設ける。
【0056】以上の方法によれば、一度で大量に生産でき、低コストで能率良く積層型インダクタ51を得ることができる。
【0057】[他の実施形態]なお、本発明は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0058】積層型インダクタを製造する場合、コイル用導体パターンやスルーホールを設けた絶縁体シート等を積み重ねた後、一体的に焼成する工法に必ずしも限定されない。絶縁体シートは予め焼成されたものを用いてもよい。また、以下に説明する工法によって積層型インダクタを製造してもよい。すなわち、印刷などの手段によりペースト状の絶縁体材料にて絶縁体層を形成した後、その絶縁体層の表面にペースト状の導電性材料を塗布してコイル用導体パターンを形成する。次に、ペースト状の絶縁体材料を前記コイル用導体パターンの上から塗布してコイル用導体が内蔵された絶縁体層とする。同様にして、順に重ね塗りをしながら、コイル用導体の必要な箇所をスルーホールで電気的に接続することにより、積層構造を有するインダクタが得られる。
【0059】また、積層体の側面に形成される柱状接続導体は、スルーホールに導電性ペーストを充填したものに限らず、導電性ペーストを積層体の側面に直接塗布する方法やめっき法などでもよい。
【0060】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、絶縁保護膜が積層体の表面に露出しているコイル用導体パターン及び/又は柱状接続導体を被覆するので、精度の高い加工を必要としなくてすむ。
【0061】また、柱状接続導体の全てを積層体の両側面に露出させることで、絶縁体層の材料が磁性体材料からなるときでも、開磁路構造を得ることができる。従って、インダクタンスの直流重畳特性を向上させることができる。
【0062】また、コイルと積層体の両側面との間にそれぞれ磁路を形成するとともに、積層体の両側面のそれぞれに柱状接続導体の少なくとも一つを、柱状接続導体の全長にわたってコイルの径方向に延在させて磁路を横切らせ、積層体の両側面に露出させることにより、磁路に非磁性部分が設けられ、直流重畳特性が良く、かつ、大きなインダクタンスが得られる。
【0063】また、複数の柱状接続導体を全て積層体の両側面にそれぞれ露出させるとともに、複数の柱状接続導体の一部をコイル内に折り返し、該折り返し部分のコイルと積層体の両側面との間にそれぞれ磁路を形成することにより、直流重畳特性を2段階に変化させることができる。
【出願人】 【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
【住所又は居所】京都府長岡京市天神二丁目26番10号
【出願日】 平成13年8月10日(2001.8.10)
【代理人】 【識別番号】100091432
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 武一
【公開番号】 特開2003−59722(P2003−59722A)
【公開日】 平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願番号】 特願2001−244877(P2001−244877)