トップ :: H 電気 :: H01 基本的電気素子




【発明の名称】 軟磁性膜と薄膜磁気ヘッドとこれらの製造方法
【発明者】 【氏名】小西池 勇
【住所又は居所】東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニー株式会社内

【氏名】菅原 伸浩
【住所又は居所】東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニー株式会社内

【要約】 【課題】高飽和磁束密度Bsを有するFeCoNiメッキ膜における応力が大きいという課題を従来におけるような硫黄Sの添加を行わずして、応力の低減化を図って、膜厚の大なるメッキ膜を実現する。

【解決手段】本発明による軟磁性膜1は、FeCoNiを主成分とする複数の軟磁性薄膜層を主層2とし、これら軟磁性薄膜層間に配置されたFeNiもしくはFeCoNiを主成分とする副層3との積層膜構成とする。このようにして、副層3による中間層の存在によって応力の低減化を図ることができ、膜厚の大きい磁性薄膜の形成、またこの応力の低減化から、その成膜における電気メッキの通電電流を大とすることができて、成膜時間の短縮化を図ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 それぞれFeCoNiを主成分とする軟磁性薄膜層による複数の主層と、これら主層間にFeNi副層が配置された積層膜構成とされたことを特徴とする軟磁性膜。
【請求項2】 上記複数の主層を構成する軟磁性薄膜層は、それぞれその厚さt1 が0.1μm≦t1 ≦1.8μmであり、組成がFeX1Coy1Niz1(x1 , y1 , z1 は、それぞれ原子%)であり、20≦x1 ≦3050≦y1 ≦7010≦z1 ≦20x1 +y1 +z1 =100に選定され、上記副層は、その厚さt2 が0.1μm≦t2 ≦1.0μmであり、組成がFeX2Niz2(x2 ,z2 は、それぞれ原子%)とされ、15≦x2 ≦6040≦z2 ≦85x2 +z2 =100に選定され、上記主層の総厚をT1 とし、上記副層の総厚をT2 とするとき、T2 /(T1 +T2 )≦0.3に選定されることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性膜。
【請求項3】 それぞれFeCoNiを主成分とする軟磁性薄膜層による複数の主層と、これら主層間に配置され、これら主層を構成する軟磁性薄膜層とは異なる組成比を有するFeCoNiを主成分とする副層との積層膜構成とされたことを特徴とする軟磁性膜。
【請求項4】 上記複数の主層を構成する軟磁性薄膜層は、それぞれその厚さt1 が0.1μm≦t1 ≦1.8μmであり、組成がFeX1Coy1Niz1(x1 , y1 , z1 は、それぞれ原子%)であり、20≦x1 ≦3050≦y1 ≦7010≦z1 ≦20x1 +y1 +z1 =100に選定され、上記副層は、その厚さt3 が0.1μm≦t3 ≦1.0μmであり、組成がFeX3Coy3 Niz3(x3 ,y3,z3 は、それぞれ原子%)とされ、10≦x3 ≦2050≦y3 ≦7515≦z3 ≦30x3 +y3 +z3 =100に選定され、上記主層の総厚をT1 とし、上記副層の総厚をT3 とするとき、T3 /(T1 +T3 )≦0.3に選定されることを特徴とする請求項3に記載の軟磁性膜。
【請求項5】 軟磁性膜を少なくとも一部の磁路として有する薄膜磁気ヘッドにあって、上記軟磁性膜が、それぞれFeCoNiを主成分とする軟磁性薄膜層による複数の主層と、これら主層間に配置されたFeNi副層との積層膜構成とされたことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
【請求項6】 上記複数の主層を構成する軟磁性薄膜層が、それぞれその厚さt1 が0.1μm≦t1 ≦1.8μmであり、組成がFeX1Coy1Niz1(x1 , y1 , z1 は、それぞれ原子%)であり、20≦x1 ≦3050≦y1 ≦7010≦z1 ≦20x1 +y1 +z1 =100に選定され、上記副層が、その厚さt2 が0.1μm≦t2 ≦1.0μmであり、組成がFeX2Niz2(x2 ,z2 は、それぞれ原子%)とされ、15≦x2 ≦6040≦z2 ≦85x2 +z2 =100に選定され、上記主層の総厚をT1 とし、上記副層の総厚をT2 とするとき、T2 /(T1 +T2 )≦0.3に選定されることを特徴とする請求項5に記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項7】 軟磁性膜を少なくとも一部の磁路として有する薄膜磁気ヘッドにあって、上記軟磁性膜が、それぞれFeCoNiを主成分とする軟磁性薄膜層による複数の主層と、これら主層間に配置され、これら軟磁性薄膜層とは異なる組成比を有するFeCoNiを主成分とする副層との積層膜構成とされたことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
【請求項8】 上記複数の主層を構成する軟磁性薄膜層が、それぞれその厚さt1 が0.1μm≦t1 ≦1.8μmであり、組成がFeX1Coy1Niz1(x1 , y1 , z1 は、それぞれ原子%)であり、20≦x1 ≦3050≦y1 ≦7010≦z1 ≦20x1 +y1 +z1 =100に選定され、上記副層は、その厚さt2 が0.1μm≦t3 ≦1.0μmであり、組成がFeX3Coy3Niz3( x3 ,y3,z3 は、それぞれ原子%)とされ、10≦x3 ≦2050≦y3 ≦7515≦z3 ≦30x3 +y3 +z3 =100に選定され、上記主層の総厚をT1 とし、上記副層の総厚をT3 とするとき、T3 /(T1 +T3 )≦0.3に選定されることを特徴とする請求項7に記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項9】 それぞれ厚さt1 が0.1μm≦t1 ≦1.8μmであり、組成がFeX1Coy1Niz1(x1 , y1 , z1 は、それぞれ原子%)で、20≦x1 ≦3050≦y1 ≦7010≦z1 ≦20x1 +y1 +z1 =100に選定されたそれぞれ軟磁性薄膜層による複数の主層と、これら主層間に介在され、厚さt2 が0.1μm≦t2 ≦1.0μmであり、組成がFeX2Niz2(x2 ,z2 は、それぞれ原子%)で、15≦x2 ≦6040≦z2 ≦85x2 +z2 =100に選定された副層とを交互に、かつ、上記主層の総厚をT1 とし、上記副層の総厚をT2 とするとき、T2 /(T1 +T2 )≦0.3となる成膜を行う工程を有し、上記主層を構成する軟磁性薄膜層は、電気メッキ法によって成膜し、上記副層は、電気メッキ法、スパッタ法、イオンプレーティング法、蒸着法、気相成長法のいずれかによって成膜することを特徴とする軟磁性膜の製造方法。
【請求項10】 それぞれ厚さt1 が0.1μm≦t1 ≦1.8μmであり、組成がFeX1Coy1Niz1(x1 , y1 , z1 は、それぞれ原子%)で、20≦x1 ≦3050≦y1 ≦7010≦z1 ≦20x1 +y1 +z1 =100に選定されたそれぞれ軟磁性薄膜層による複数の主層と、これら主層間に介在され、厚さt3 が0.1μm≦t3 ≦1.0μmであり、組成がFeX3Coy3Niz3( x3 ,y3,z3 は、それぞれ原子%)とされ、10≦x3 ≦2050≦y3 ≦7515≦z3 ≦30x3 +y3 +z3 =100に選定された副層とを交互に、かつ、上記主層の総厚をT1 とし、上記副層の総厚をT3 とするとき、T3 /(T1 +T3 )≦0.3となる成膜を行う工程を有し、上記主層を構成する軟磁性薄膜層は、電気メッキ法によって成膜し、上記副層は、上記軟磁性薄膜層の電気メッキ浴と同一のメッキ浴によってメッキ条件を変更する電気メッキ法によって成膜することを特徴とする軟磁性膜の製造方法。
【請求項11】 軟磁性膜による磁路を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法にあって、上記軟磁性膜が、それぞれ厚さt1 が0.1μm≦t1 ≦1.8μmであり、組成がFeX1Coy1Niz1(x1 , y1 , z1 は、それぞれ原子%)で、20≦x1 ≦3050≦y1 ≦7010≦z1 ≦20x1 +y1 +z1 =100に選定されたそれぞれ軟磁性薄膜層による複数の主層と、これら主層間に介在され、厚さt2 が0.1μm≦t2 ≦1.0μmであり、組成がFeX2Niz2(x2 ,z2 は、それぞれ原子%)で、15≦x2 ≦6040≦z2 ≦85x2 +z2 =100に選定された副層とを交互に、かつ、上記主層の総厚をT1 とし、上記副層の総厚をT2 とするとき、T2 /(T1 +T2 )≦0.3となる成膜を行う工程を有し、上記主層を構成する軟磁性薄膜層は、電気メッキ法によって成膜し、上記副層は、電気メッキ法、スパッタ法、イオンプレーティング法、蒸着法、気相成長法のいずれかによって成膜することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項12】 軟磁性膜を少なくとも一部の磁路として有する薄膜磁気ヘッドの製造方法にあって、それぞれ厚さt1 が0.1μm≦t1 ≦1.8μmであり、組成がFeX1Coy1Niz1(x1 , y1 , z1 は、それぞれ原子%)で、20≦x1 ≦3050≦y1 ≦7010≦z1 ≦20x1 +y1 +z1 =100に選定された軟磁性薄膜層による複数の主層と、これら主層間に介在され、厚さt3 が0.1μm≦t3 ≦1.0μmであり、組成がFeX3Coy3Niz3( x3 ,y3,z3 は、それぞれ原子%)とされ、10≦x3 ≦2050≦y3 ≦7515≦z3 ≦30x3 +y3 +z3 =100に選定された副層とを交互に、かつ、上記主層の総厚をT1 とし、上記副層の総厚をT3 とするとき、T3 /(T1 +T3 )≦0.3となる成膜を行う工程を有し、上記主層を構成する軟磁性薄膜層は、電気メッキ法によって成膜し、上記副層は、上記軟磁性薄膜層の電気メッキ浴と同一のメッキ浴によってメッキ条件を変更する電気メッキ法によって成膜することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軟磁性膜と薄膜磁気ヘッドとこれらの製造方法、特に新規な構成を採る軟磁性膜と、この軟磁性膜を薄膜磁気コアとする薄膜磁気ヘッドと、これらの製造方法に係わる。
【0002】
【従来の技術】近年、ハードディスクの急速な磁気記録密度の向上に伴い、記録媒体は高保磁力Hc化が進み、それに対応して飽和磁束密度Bsの高い磁気ヘッド用コア材料が必要とされている。現在、ハードディスク用磁気ヘッド材料としては、パーマロイ(Fe20Ni80) または、このパーマロイより飽和磁束密度Bsが高いFe55Ni45メッキ材料が知られている。これら磁気ヘッド材料の飽和磁束密度Bsは、Fe20Ni80が1.0〔T〕、Fe55Ni45が1.5〜1.6〔T〕程度であって、現在開発されている100ないしは200Gb/inch2 という高記録密度の記録媒体に対する磁気ヘッドへの適応は困難である。
【0003】一方、メッキなどの湿式法によらないスパッタ等の乾式法による軟磁性材料においても、全元素の中で、最も高い飽和磁束密度Bsを有するFeが注目され、Fe基軟磁性材料の研究が盛んに行われているところである。例えばFeN/Ta(Young K.Kim and Charles Partee,IEEE Trans.Magn.,33,2815(1997) 参照) ,FeCoAl−O( 大沼、小林、増本、藤森、日本応用磁気会誌.,22,441(1998)参照) や、最近ではFeの結晶格子中に、炭素Cが入り込んだ構造を持ち、飽和磁束密度Bsが2.0〔T〕を超えるFeC磁性材料の開発も行われている。
【0004】しかし、これらスパッタ材料は厚膜化が困難である。また、耐熱性が低い等の問題点も存在する。これらのことから、また、装置コストの面でもメッキによる磁性膜が有利とされる。
【0005】近年、電気メッキにおいては、FeCoNi軟磁性メッキ材料が報告され、サッカリン、チオ尿素を添加剤として用い、膜中にS(硫黄)を混入させることで、Fe15Co73Ni12の組成において、Bsが1.7〔T〕、Hcが0.9〔Oe〕、磁歪λsが4.4×10-6の特性を有する軟磁性薄膜の作製が可能であることが報告された(中村、高井、林、逢坂、表面技術、47, 934(1996))。このFeCoNiメッキ材料は、FeNi材料よりも、例えば磁気ヘッド材として、より強磁界発生が可能であることから、すぐれたオーバーライト特性を有する磁気ヘッドを構成する磁気ヘッド材料であり、更に、これはパーマロイメッキの既存技術を応用した簡便な手法で成膜が行うことができると考えられていて、いわゆる次世代の磁気ヘッド材料として注目を集めている。
【0006】このFeCoNi合金の飽和磁束密度Bsは、主にFe,Co,Ni各金属の組成比で決まり、その結晶構造はNiの多い領域でfcc構造、Niの少ない領域でbcc構造を採る。基本的にFeCoNi合金はFe含有量が多く、Ni含有量が少ないほどBsが高くなる。したがって、高いBsを有するFeCoNi合金を得るには、膜厚中のFe量を増加させ、Ni量を低減させることになるが、このFe量を極端に多くしてNiを少なくすると、保磁力が増大し、軟磁気特性が失われてしまう。
【0007】このことから、fcc−bcc混相領域において結晶粒径が微細化され、低保磁力のメッキ膜が得られるということ(T.Osaka,M.Hayashi,Y.Ohashi,M.Sato and K.Yamada,Nature.,392,396(1998)) と低磁歪が好ましいなどの磁気ヘッド材料に必要なパラメータを考慮すると、20≦Fe≦30,10≦Ni≦20の領域で、低保磁力,低磁歪でかつ高い飽和磁束密度Bsが得られ、この領域が磁気ヘッド材料として最も適していると考えられる。
【0008】一方、最近において、このFeCoNi三元系合金は、サッカリン、チオ尿素等の硫黄Sを含有する添加剤を用いない系において、結晶構造の相境界と磁歪ゼロラインが、Fe含有量が多い領域、すなわち高飽和磁束密度Bs側にシフトしていることが確認された。例えば、Fe23Co65Ni12 の組成において、Bsが2.1 [T] 、Hcが1.2 [Oe] 、λsが1.8×10-6という、すぐれた磁気特性を有し、また、膜中にSを含まないため、パーマロイより高い耐食性を持つ高BsのFeCoNiメッキ材料が報告された(T.Osaka,M.Hayashi,Y.Ohashi,M.Sato and K.Yamada,Nature.,387,796(1998)) 。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように、硫黄Sを含有する添加剤を用いないFeCoNiメッキ膜は、飽和磁束密度Bsは高いものの、応力緩和の効果がある硫黄Sが膜中に存在していないため、膜厚化が困難であり、この膜厚を例えば1μm以上にすると、応力が大きくなって剥離の問題が生じる。したがって、FeCoNiにおける厚膜の成膜を短時間で行うことができるというメッキの利点が失われる。また、薄膜磁気ヘッドへの適用は、実用的でないと考えられる。
【0010】また、FeCoNi系において、前述した高飽和磁束密度Bsを有し、低保磁力を示す20≦Fe≦30、10≦Ni≦20の組成領域では、粗大粒子析出が起こり易いという問題がある。したがって、生産性を高めるために成膜速度を上げるように、高電流密度、高pHの条件でメッキを行う場合、粗大粒子析出が生じ、平滑なメッキ膜が得られないという問題がある。
【0011】本発明においては、上述したFeCoNi系で、20≦Fe≦30、10≦Ni≦20の組成領域とされて、高い飽和磁束密度Bsを有し、低保磁力を有するすなわち軟磁性を有する磁性体を用いる場合においても、硫黄(S)の添加を回避、あるいは極く微量にとどめることによって、磁歪のゼロラインを高いFe含有領域、すなわち、高い飽和磁束密度Bsが得られる領域での磁歪の低減化を図ると共に、耐食性の向上、すなわち信頼性の向上を図ることができるようにし、しかも、応力緩和の低下による厚膜化の阻害を回避することができ、更に粗大粒子の発生を効果的に抑制することができる軟磁性膜を提供するものである。
【0012】更に、本発明による薄膜磁気ヘッドは、上述した特性を有する軟磁性膜によって薄膜磁気ヘッドを構成することによって、例えば高密度化を図るために、高抗磁力(高保磁力)を有する記録磁気記録媒体に対して、すぐれたオーバーライト特性を有する電磁変換特性にすぐれ、信頼性の高い、薄膜磁気ヘッドを提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明による軟磁性膜は、それぞれFeCoNiを主成分とする軟磁性薄膜層による複数の主層と、これら主層間に配置されたFeNi副層との積層膜構成とする。あるいは、本発明による軟磁性膜は、それぞれFeCoNiを主成分とする軟磁性薄膜層による複数の主層と、これら主層間に配置され、これら主層の軟磁性薄膜層とは異なる組成比を有するFeCoNiを主成分とする副層との積層膜構成とする。る。
【0014】また、本発明による薄膜磁気ヘッドは、軟磁性膜を、少なくとも一部の磁路として有する薄膜磁気ヘッドであって、その軟磁性膜を、上述した本発明による各軟磁性膜構成とする。
【0015】そして、また、本発明による軟磁性膜の製造方法は、上述した各本発明による軟磁性膜の製造方法であって、その軟磁性薄膜によるFeCoNiを主成分とする主層を電気メッキによって成膜し、FeNi主成分とする副層を電気メッキ法、スパッタ法、イオンプレーティング法、蒸着法、気相成長法等任意の方法によって形成する。
【0016】また、本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法は、上述した各本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、その軟磁性薄膜によるFeCoNiを主成分とする主層を電気メッキによって成膜し、同様にFeCoNiを主成分とするものの、その組成比は、主層のそれとは異なる組成を有する副層を、主層を成膜するメッキ浴と同一メッキ浴を用い、メッキ条件を変更することによって形成する。
【0017】上述した本発明による軟磁性膜によれば、高い飽和磁束密度Bsを有し、低保磁力すなわち軟磁性を有する組成によるFeCoNi系において、硫黄(S)の添加を回避、あるいは極く微量にとどめる構成としても、高飽和磁束密度、磁歪の低減化、耐食性の向上を図り、実質的膜厚を大とすることができ、しかも応力による問題が解決され、更に、粗大粒子の発生が回避された。これは、FeCoNi系の軟磁性薄膜による複数の主層間に副層を介在させた構成としたことにより、膜厚方向に軟磁性膜が分断されて結晶粒径の成長を抑える効果を生じることができること、応力の緩和が図られることによると考えられる。このように、本発明によれば、すぐれた軟磁性、高い飽和磁束密度を有し、かつ十分厚い軟磁性膜が構成される。
【0018】そして本発明による磁気ヘッドは、この構成による軟磁性膜によって薄膜磁路を構成ものであり、これによって、電磁変換特性にすぐれ、ノイズの低減化、信頼性の高い磁気ヘッドが構成される。
【0019】そして、本発明製造方法によれば、粗大粒子析出を抑制する効果を得ることができることによって、通常においては、粗大粒子析出が生じやすい高電流密度の電気メッキによってFeCoNiの主層を形成することができることから、高速メッキが可能になるものである。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明は、図1に概略断面図を示すように、軟磁性膜1を、それぞれFeCoNiを主成分とする軟磁性薄膜層による複数の主層2と、これら主層2間に配置されたFeNiもしくはFeCoNiを主成分とする副層3との繰り返し積層による積層膜構成によって構成する。
【0021】主層2は、ぞれその厚さt1 が0.1μm≦t1 ≦1.8μmとされ、その組成は、前述した高飽和磁束密度Bsを有し、保磁力が小さい、すなわちFeX1Coy1Niz1(x1 , y1 , z1 は、それぞれ原子%)において、20≦x1 ≦3050≦y1 ≦7010≦z1 ≦201 +y1 +z1 =100とする。この主層2の特性は、Bs≧1.8〔T〕、保磁力Hc<5〔Oe〕であることが望ましい。
【0022】副層3は、FeNiを主成分とする構成においては、その厚さt2 が0.1μm≦t2 ≦1.0μmとされ、組成がFeX2Niz2(x2 ,z2 は、それぞれ原子%)において、15≦x2 ≦6040≦z2 ≦85x2 +z2 =100に選定される。
【0023】また、副層3を、FeCoNiを主成分とする構成とする場合においては、その厚さt3 が0.1μm≦t3 ≦1.0μmとされ、組成がFeX3Coy3Niz3( x3 ,y3,z3 は、それぞれ原子%)において、10≦x3 ≦2050≦y3 ≦7515≦z3 ≦30x3 +y3 +z3 =100に選定される。
【0024】そして、上述した主層2の総厚をT1 とし、FeNi副層3の総厚をT2 とし、FeCoNi副層3の総厚をT3 とするとき、T2 /(T1 +T2 )≦0.3、T3 /(T1 +T3 )≦0.3に選定する。
【0025】このように、主層2と副層3との繰り返し積層によって構成された軟磁性膜1の磁気的特性は、Bs>1.7〔T〕、Hc<3〔Oe〕が望ましく、この軟磁性膜1の膜厚Ts(すなわち、T1 +T2 あるいはT1 +T3 )は、Ts≦7μmとされる。
【0026】この構成において、主層2のFeCoNiの各組成x1 ,y1 ,z1 の組成範囲の選定は、高い飽和磁束密度Bsが得られる組成として知られている範囲に選定したものである。そして、FeNi副層3におけるx2 およびz2 の組成は、FeNi合金ではFeの組成が小さ過ぎると、飽和磁束密度Bsが低く、軟磁性膜1においてBsの低下を来し、目的とするBs>1.7〔T〕が得難くなる。例えばFeが15原子%のFe15Ni85におけるBsは1.0〔T〕以下となる。また、Feが60原子%以上となると高いBsは得られるものの、保磁力および磁歪が磁気ヘッドの薄膜コアへの適応において好ましくなくなる。また、FeCoNi副層3においてはは、上述した高いBsを示すFeCoNi組成領域(特に、Fe組成が大きく、Ni組成が小さい領域)では、粗大粒子析出のための平滑な膜が得難く、このような組成の膜を副層として用いることが好ましくないことからFeを20原子%以下とし、また著しいBs低下を回避する上で、10原子%とするものである。
【0027】また、上述したように、主層2の膜厚t1 を0.1μm≦t1 ≦1.8μm(好ましくは0.1μm≦t1 ≦1.5μm)に選定する理由は、FeCoNi主層の膜厚が余り薄いと、特に0.1μm未満では、透磁率が充分得られなくなること、また、余り厚くなると、特に1.8μmを超えると、高飽和磁束密度を示すFeCoNiの組成領域において、粗大粒子析出が起こり易くなって表面性の劣化、高周波透磁率の低下を来たし、磁気ヘッド磁性膜として加工性に問題が生じたり、高周波特性が低くなることを認めたことによる。特に、前述したように、硫黄を含まない高BsのFeCoNiにおいては、膜厚t1 が1.8を超えると剥離が生じる。
【0028】また、副層3の厚さt2 およびt3 を、0.1μm≦t2 ,t3 ≦1.0μmに選定し、かつ軟磁性膜1の膜厚Ts(すなわちT1 +T2 あるいはT1 +T3)に対する各FeNiおよびFeCoNi副層3の総厚T2 およびT3 の各比、(T2 /(T1 +T2 )およびT3 /(T1 +T3 )をそれぞれ0.3以下に選定する理由は、まず、副層の厚さt2 およびt3 の膜厚が0.1μm以下では、この副層3を設けることによる応力の緩和等の効果が生じにくくなること、また、これら膜厚t2 およびt3 が、1.0μmを超えても、この副層3の介在による効果が増加することはなく、かえって軟磁性膜1における飽和磁束密度Bsを低下させるという不都合が生じてくるものであり、特に、最終的に得る飽和磁束密度Bsを1.7〔T〕以上とするためには、軟磁性膜1における副層3の占める膜厚総和が、0.3を超えると、軟磁性膜1における飽和磁束密度Bsが低下してくることを認めたことに因る。
【0029】そして、本発明による軟磁性膜の製造方法は、上述した構成による主層2と副層3の繰り返し積層成膜工程を採る。そして、主層2は、電気メッキによって成膜し、副層3は、これが主層2と組成比を異にするものの、同一組成元素による場合、すなわち主層2および副層3が、共にFeCoNiを主成分とする場合においては、同一メッキ浴を用いて電気メッキによって連続的に積層成膜することができる。また、副層3が、FeNiを主成分とする場合においては、電気メッキ法、スパッタ法、イオンプレーティング法、蒸着法、気相成長法等によって成膜する。
【0030】また、主層2は、FeCoNiを主成分とし、副層3は、FeCoNiもしくはFeNiを主成分とするが、これにS、C、N等を添加することができる。しかしながら、この場合においても、その添加量は、飽和磁束密度Bsが大幅に低下することがない程度の原子数濃度が1原子%以下とすることが望ましい。
【0031】また、本発明による磁気ヘッドは、例えば図2にその一例の概略断面図を示すように、前方面12すなわち磁気記録媒体11との対向ないしは対接面に臨んで磁気ギャップgを形成する磁路13においてその少なくとも一部が軟磁性膜によって構成される薄膜磁気ヘッド10にあって、その軟磁性膜を、上述した本発明による軟磁性膜1によって構成する。
【0032】また、本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法は、上述した本発明による薄膜磁気ヘッドの軟磁性膜1の製造工程が、上述した本発明による軟磁性膜の製造方法によるものである。
【0033】次に、本発明による軟磁性膜1の製造方法の実施形態を説明する。主層2を構成するFeCoNi、更に或る場合は、副層3を構成するFeCoNiを電気メッキする。
【0034】〔導電性下地層〕まず、これら電気メッキを行う面、すなわち図1で示す軟磁性膜1を形成する基体4の軟磁性膜形成面4sが、非導電性もしくは導電性に劣る場合は、軟磁性膜形成面4sに導電性下地層5を形成する。この導電性下地層5は、基体4を構成する例えばガラス基板、Siウェハー等の表面、SiO2 、Al2 3 等の絶縁層による軟磁性膜形成面4sに、金属層、例えば厚さ10nm〜20nmのCr層と、厚さ55nm〜200nmのCu層との積層構造、あるいは厚さ10nm程度のTaと厚さ55nmのFeNiとの積層構造の導電層をそれぞれ例えばDC(直流)マグネトロンスパッタよって形成する。この導電性下地層5は、軟磁性膜1のメッキにおいて、低電流密度のメッキがなされる場合、軟磁性膜1が、下地層5の金属の結晶配向に応じて同一配向がなされるエピタキシャル成長が起こることから、下地層5はその配向に考慮が必要となるが、比較的高電流密度によるメッキがなされる場合いおいては、下地層5の配向は問題とならない。
【0035】〔メッキ浴〕FeCoNiメッキ浴は、金属塩として、例えばスルファミン酸塩、硫酸塩、塩酸塩を用い、添加剤として、サッカリン酸ナトリウム、ホウ酸、アスコルビン酸、酒石酸、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、アウリル硫酸ナトリウム等を添加した水溶液系の浴を用いることができる。
【0036】〔アノード〕メッキにおけるアノードは、不溶性のTi上にPtを被覆したアノード、あるいは例えばNi、FeNi、FeCoNiによる可溶性のアノードを用いることができる。この可溶性アノードを用いるときは、メッキ中のFe(II)の酸化(生成物はFe(III) による浴の消耗を抑制することができるとともに、浴中に連続的に金属を供給することができる。
【0037】〔成膜条件〕
温度:温度は、室温から50℃程度が望ましい。比較的高温にすると膜質および表面性にすぐれた平滑な膜が得られ易くなるが、浴の消耗が激しくなることから、室温より幾分高い温度とすることが望ましい。この浴の消耗は、主にFe(II)の酸化が起こり易くFe(III) になってしまうことに因る。
pH:pHは、2〜4程度が望ましい。pHが低くなると金属析出と競合する水素発生が優先的に起こり、成膜速度が極端に低下する。逆に、pHが高い場合、水素発生が抑制され、電流効率が高くなるが、膜質および表面性にすぐれた平滑な膜が得られにくくなる。
電流密度:電流密度は、パルス電解の場合は、20〜250〔mA/cm2 〕、直流電解の場合は、3〜40〔mA/cm2 〕が望ましい。金属析出の、電流の集中する箇所におけるバリを防ぐため、一時的に逆電流を流す、いわゆるPRパルス電解を用いることができる。
撹拌:撹拌は、一般的に用いられているパドル撹拌法を用いることができる。しかしながら、超音波撹拌、回転撹拌等の定常的で効率の良い撹拌を行うことができる周知の手法を用いることができる。尚、軟磁性膜1に一軸異方性を付与することが望まれる場合においては、磁場中メッキを行うことができる。また、組成分布、膜厚分布向上のためメッキ浴中に補助電極を用いて、メッキ浴中に、本来の電流線とは異なる電流線を形成して被メッキ体(基体4)とアノード間の電流線の制御を行うことができる。
【0038】〔第1の実施形態〕この実施形態においては、主層2および副層3が、互いに組成を異にするFeCoNiによって同一メッキ浴によって電解メッキを行って軟磁性膜1を成膜した場合である。このメッキは、図3および図4に示すように、メッキ槽30が設けられ、このメッキ槽30内で、メッキ処理がなされる。このメッキ槽30のメッキ浴は、例えば図4に示すように、メッキ液採取弁31によって制御され供給されたメッキ液がポンプ32によってフィルタ33および流量計34を通じて所要の流量をもって供給される。またこのメッキ槽30からのメッキ液が所要量フィルタ33によって浄化されて循環される。
【0039】メッキ槽30は、例えば図4に示すように、メッキ液供給口35とメッキ液導出口36とを有する。メッキ槽30内のメッキ浴中には、軟磁性膜1を形成する基体4を固定保持するカソードとなる基体固定治具37が配置され、基体4の配置部に対向してアノード38が配置される。また、メッキ槽30内にはメッキ浴を所要の温度に加温するヒータ39と、メッキ浴の撹拌手段40例えばスキージが配置される。そして、カソード37およびアノード38間に電源41が接続される。
【0040】メッキ浴としては、溶解度の高いスルファミン酸塩を採用し、高濃度スルファミン酸浴において、成膜速度が速い、結晶粒径の微細化が図られるなど、様々な利点を発揮するパルス電解によった。アノード38は、例えばNi電極、あるいはPtメッキが施されたTi電極を用いることができる。
【0041】そのメッキ時の通電態様を、図5A〜C、図6AおよびBに例示する。各図において、縦軸は通電電流密度jを示し、横軸は時間経過Tを示す。第1の通電態様においては、例えば図5Aに示すように、電流密度jp1 を所要のtonの区間通電するパルス通電を、所要の休止区間toff の間隔をもって必要数繰り返し行って主層2をメッキし、その後、電流密度jp1 に比して低い所要の電流密度jp2 のパルス通電を同様に例えば繰り返し行って副層3を形成する。この作業を繰り返し行うことによって所要層数の主層2と副層3が繰り返し積層された軟磁性膜1を成膜する。
【0042】また、例えば図5Bに示すように、例えば副層3のメッキにおいては、電流密度jp2 による直流通電を行うことによって形成することもできる。また、例えば図5Cに示すように、それぞれ電流密度jp1 およびjp2 のパルス幅ton1 およびton2 による各1パルス毎に、主層2および副層3を繰り返しメッキすることもできる。あるいは、例えば図6Aに示すように、各電流密度jp1 およびjp2 によるパルスを連続させたパルス形状として主層2および副層3の形成を行い、所要区間で例えば塩の拡散を生じさせる休止区間toff を設ける態様を採ることもできる。更にあるいは、例えば図6Bに示すように、休止区間toff を設けることなく、区間ton1 およびton2 によって主層2および副層3を繰り返しメッキすることもできる。そのほか、上述した2種の電流密度jp1 およびjp2 のみによることなく、種々の3種以上の電流密度の組み合わせによるメッキを行って2種以上の組成の例えば主層2の形成を行うこともできる。
【0043】次に、メッキ浴組成および成膜条件を、表1に例示する。
【0044】
【表1】

【0045】この場合のFeCoNiメッキ膜は、FeX Coy Niz (x,y,zは、原子%、でx+y+z=100)において、20≦x≦30、10≦z≦20近傍特に21≦x≦26、10≦y≦14の組成領域で、飽和磁束密度Bs>1.8〔T〕、保磁力Hc<3〔Oe〕の軟磁気特性を示し、また低磁歪を示した。したがって、このようにして得られる磁性膜は、例えば磁気ヘッド材料として好適な特性を示す。
【0046】ところが、この組成領域のFeCoNiのメッキ膜においては、粒径が50nm以上の粗大粒子の析出が起こり易く、磁気ヘッドへの適用には困難となる。この粗大粒子は、パターン近傍や、下地基体4例えばウェハー周辺部等の電解集中、すなわち電流線の集中が著しい箇所において顕著に観察される。しかしながら、このFeCoNiメッキの膜厚を1μm以下とするときは、結晶粒の成長を防ぐことができ、粗大粒子析出が極めて起こりにくくなることを究明した。
【0047】これについて説明する。図7AおよびBは、軟磁性膜の形成面4s上に、所定のパターンに軟磁性膜を形成するように、開口21Wが形成されたメッキマスクのレジスト膜21を形成し、上述した実施形態に基いてFeCoNiによる軟磁性膜20を形成した場合のSEM(走査電子顕微鏡)写真に基く概略断面図を示したものである。図7Aは、その軟磁性膜20の膜厚を1μm以下とした場合であり、図7Bは、膜厚を2.0μmとした場合である。その膜厚を大とした場合には、図7Bに示すように、粗大粒子20Gが特にパターン縁部に顕著に発生している。
【0048】一方、FeX Coy Niz において、x<20、z≧14の場合、その飽和磁束密度Bsは、1.8〔T〕未満という、さほど高くない値となるが、膜質および平滑性にすぐれた膜が得られ易い。
【0049】この実施形態においては、粗大粒子析出が起こり易いが、飽和磁束密度Bsが1.8〔T〕以上のFeCoNiより成る2層以上の主層2間に、上述したBsが1.8〔T〕未満の副層3を介在させた図1で示した積層構造によって軟磁性膜1を構成する。
【0050】この構成による軟磁性膜1は、低保磁力、高飽和磁束密度Bsを保持して、かつ低応力、粗大粒子の析出の回避が図られ、2μm以上の膜厚を有する軟磁性膜1を、すぐれた膜質および平滑性をもって形成することができた。そして、粗大粒子の析出が効果的に回避されることから、その膜作製における成膜速度、すなわちメッキ速度を高めることができた。
【0051】すなわち、本発明構成による軟磁性膜は、硫黄Sの無添加、あるいは極めて微量の添加のみを行う構成とした応力の緩和効果が損なわれるものであるが、本発明構成では、低応力、粗大粒子の析出の回避が図られ、2μm以上の膜厚を有する軟磁性膜1を、すぐれた膜質および平滑性をもって形成することができた。これは、その主層2間に、他の組成による副層3を介在させた構成として主層2の分断がなされたことによって粗大粒子の析出の抑制、応力の緩和が図られたと考えられるものである。
【0052】また、上述した組成比を異にするFeCoNiによる主層2および副層3は、同一メッキ浴を用いて、メッキ条件例えば電流密度を選定することによって構成することができる。すなわち、この系におけるメッキ膜中の各金属Fe、CoおよびNiの濃度と電流密度との関係をそれぞれ図8A、BおよびCに示す。これより、飽和磁束密度Bsに大きな影響を与えるFe、Niの組成が、電流密度に大きく依存していることが分かる。そして、パルス電解は、低電流から瞬間的な大電流まで幅広く電流密度を用いることができるため、単に電流密度を変化させるだけで大きく組成が異なるFeCoNi膜を同一メッキ浴によって成膜可能であることが分かる。
【0053】したがって、金属塩の濃度が比較的高いメッキ浴において、パルス電解を用いて成膜を行った場合、浴の組成、pH、温度などの他の組成に影響を与えるパラメータを変えることなく、電流密度だけを変えるだけで同一浴において、上述主層2および副層3の繰り返し積層膜を連続的に成膜することができることが分かる。
【0054】因みに、FeCoNiメッキにおいて、一般的に用いられている硫酸浴による直流電解メッキでは、電流密度の範囲がある程度制限されるため、電流密度を変えても組成はそれほど変化しないという報告(Young K.Kim and Charles Partee,IEEE Trans .Magn.,33,2815(1997))があるが、実際には、表2に示すように、電流密度をきわめて小さくすると、組成が大きく変化する。
【0055】
【表2】

【0056】このように直流メッキにおいても、同一のメッキ浴による異組成のFeCoNiメッキ膜の作製が可能であることが確認でき、直流電解だけでも積層膜の作製が可能であることが分かる。尚、これらパルス電流、直流電流を組み合わせることによっても積層膜の作製が可能であり、電流密度を様々に変化させて、組成の異なる3種類以上のFeCoNi膜を積層成膜することもできる。
【0057】〔第2の実施形態〕この実施形態においては、主層2を、FeCoNiによる構成とし、副層3をFeNiとした。これらは、格子定数が極めて近いものであることから、これらFeCoNiとFeNiとの積層成膜は良好に行うことができる。しかしながら、このように、副層3をFeNiによって構成する場合は、主層2のFeCoNiと、このFeNiと同一メッキ浴によって構成することはできない。
【0058】次に、本発明による軟磁性膜の実施例を挙げて説明する。
〔実施例1〕この実施例においては、図5Aで説明した通電態様によって、2層の主層2間に副層3が介在された軟磁性膜を成膜した場合である。主層2は、Fe25Co63Ni12によってそれぞれ厚さ0.9μmとした場合で、副層3は、Fe18Co64Ni18によって厚さ0.1とした場合である。この構成による軟磁性膜を試料1とする。
【0059】〔実施例2〕この実施例においては、主層2を実施例1と同様の組成および厚さとした場合であるが、副層3をFe55Ni45によって形成した。この場合においても2層の主層2間に副層3が介在された軟磁性膜を成膜した場合である。この構成による軟磁性膜を試料2とする。
【0060】〔比較例1〕この例では、厚さ2.0μmのFe25Co63Ni12単一構造のメッキ層とした。この軟磁性膜を試料3とする。
【0061】〔比較例2〕この例では、厚さ0.9のFe31Co59Ni10による2層の主層2間にFe55Ni45による副層3が介在された軟磁性膜を構成した場合である。この軟磁性膜をを試料4とする。
【0062】〔比較例3〕この例では、Fe31Co59Ni10の軟磁性膜の単一構造のメッキ層とした。この構成の軟磁性膜を試料5とする。
【0063】これら各試料1〜5の、磁気的特性すなわち飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcの測定結果を表3に示す【0064】
【表3】

【0065】表3により明らかなように、本発明による試料1および2は、高いBsを有し、しかもHcが格段に低減化され、軟磁性を示す。
【0066】上述したように、本発明による軟磁性膜は、高飽和磁束密度Bsを有するものの、応力が大きいことによって大きな膜厚とすることに問題のあったFeCoNiメッキ膜を、その高飽和磁束密度Bsを保持したままで、十分大なる膜厚をもって成膜することができるものである。
【0067】そして、前述したように、本発明による薄膜磁気ヘッドは、磁路の少なくとも一部を薄膜コアによって構成する場合において、その薄膜コアを本発明による軟磁性膜によって構成する。図2においては、再生感度にすぐれた磁気抵抗効果型磁気ヘッドによる再生磁気ヘッド56上に、記録磁気ヘッドとしての本発明による薄膜磁気ヘッド10を一体に構成して記録再生磁気ヘッドを構成した場合の一例の概略断面図である。
【0068】この場合、例えば磁気シールド基板51上に、第1の電極層52が形成され、この上に、例えば面垂直電流型のスピンバルブ型巨大磁気抵抗効果素子による磁気抵抗効果素子(MR素子)53が形成される。このMR素子53の周囲には絶縁層54が埋め込まれる。MR素子53上には、第2の電極層55が形成され、これら電極52および55間にMR素子53に対し、その膜面と交叉する方向にセンス電流の通電がなされる。このようにして、磁気抵抗効果型再生ヘッド56が形成される。
【0069】MR素子53は、例えば図示のように、前方面12に直接臨んで配置され、この前方面12から、磁気記録媒体11上の記録磁区からの情報磁界を導入して、この情報信号の再生を行うようにする。あるいは図示しないがMR素子53を前方面12より後退した位置に配置し、このMR素子53と磁気的に結合する磁束ガイド(図示せず)を設けてこの磁束ガイドの前方端を前方面12に臨ませてこれに上述した磁気記録媒体からの情報磁界をMR素子に導入して再生を行う。
【0070】第2の電極層55は、例えば磁気シールド兼電極層によって構成し、更に本発明による薄膜磁気ヘッド10を構成する下層コアを構成する磁性層とすることもできるが、図2で示した例においては、第2の電極層55上に、薄膜磁気ヘッドを構成する下層コア層56を設けた場合である。
【0071】そして、下層コア層56上に、薄膜磁気ヘッドの磁気ギャップgを前方端において形成する例えばSiO2 、Al2 3 等の非磁性層57が形成され、この上に例えば薄膜導電層によるコイル58が形成される。
【0072】コイル58上には絶縁層59が被覆され、この上に、コイル58の中心部で下層コア層56と磁気的に結合させた上層コア層60が形成される。これら下層コア層56および上層コア60の前方端は、前方面12に非磁性層57を介して臨み磁気ギャップgが形成される。そして、上層コア層60上には保護層61が被覆される。この構成において、例えば上層コア層60、および/または下層コア層56が薄膜コアによって構成されるものであり、本発明においては、これら薄膜コアを上述した本発明による軟磁性膜1によって構成する。
【0073】この構成による薄膜磁気ヘッド10は、その薄膜コアが、前述したように、磁気特性にすぐれたすなわち高飽和磁束密度を有し、保磁力が低く、また十分厚い膜厚を有し、磁歪、粗大粒子のない薄膜磁性膜によって構成されることから、高周波特性にすぐれ、ノイズが小さく、電磁変換特性にすぐれた、信頼性の高い薄膜磁気ヘッドを構成することができる。
【0074】尚、本発明による軟磁性膜1の膜構成、本発明による薄膜磁気ヘッドは、上述した例に限定されるものではなく、本発明構成において、種々の変形変更を行うことができることはいうまでもない。
【0075】
【発明の効果】上述したように、本発明による軟磁性膜は、高い飽和磁束密度Bsを有し、低保磁力を有するすなわち軟磁性を有し、また磁歪が小さく、耐蝕性にすぐれ、磁気的特性、信頼性にすぐれた、十分膜厚が大きい、軟磁性膜とすることができるものである。
【0076】本発明による薄膜磁気ヘッドは、上述した特性を有する軟磁性膜によって薄膜磁気ヘッドを構成することによって、例えば高密度化を図るために、高抗磁力(高保磁力)を有する記録磁気記録媒体に対して、すぐれたオーバーライト特性を有する電磁変換特性にすぐれ、ノイズの小さい、信頼性の高い、薄膜磁気ヘッドを構成することができるものである。
【0077】そして、本発明方法によれば、粗大粒子析出を抑制する効果を得ることができることによって、通常においては、粗大粒子析出が生じやすい高電流密度の電気メッキによってFeCoNiの主層を形成することができることから、高速メッキが可能になるものである。
【0078】また、FeCoNiによる主層2と副層3とを用いることによって同一メッキ浴を用いることができることから、多層の主層2および副層3の積層を連続作業で行うことができ、生産性の向上を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
【住所又は居所】東京都品川区北品川6丁目7番35号
【出願日】 平成13年8月9日(2001.8.9)
【代理人】 【識別番号】100080883
【弁理士】
【氏名又は名称】松隈 秀盛
【公開番号】 特開2003−59717(P2003−59717A)
【公開日】 平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願番号】 特願2001−242423(P2001−242423)