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【発明の名称】 Mn−Znフェライトおよび巻き線部品
【発明者】 【氏名】伊藤 清
【住所又は居所】静岡県磐田郡浅羽町浅名1743番地1 ミネベア株式会社浜松製作所内

【氏名】小林 修
【住所又は居所】静岡県磐田郡浅羽町浅名1743番地1 ミネベア株式会社浜松製作所内

【氏名】鈴木 行夫
【住所又は居所】静岡県磐田郡浅羽町浅名1743番地1 ミネベア株式会社浜松製作所内

【要約】 【課題】初透磁率が広い周波数帯域で維持され、かつ巻き線を施した状態での浮遊容量が小さく、広い周波数帯域で優れたインピーダンス特性を有するMn -Zn フェライトおよびその巻き線部品を提供する。

【解決手段】基本成分が、Fe2O3 44.0〜50.0 mol%(ただし、50.0 mol%は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol%、残部MnO からなる構成として、1kHz における複素比誘電率実数部ε´を20000以下、1MHz における複素比誘電率実数部ε´を50以下に抑えることにより、初透磁率を広い周波数帯域で維持し、広い周波数帯域で優れたインピーダンスを確保する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基本成分が、Fe2O3 44.0〜50.0 mol%(ただし、50.0 mol%は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol%、残部MnO からなり、1kHz における複素比誘電率実数部ε´が20000以下でかつ1MHz における複素比誘電率実数部ε´が50以下であることを特徴とするMn −Zn フェライト。
【請求項2】 副成分として、SnO2 0.01〜4.0 mass%およびTiO2 0.01〜3.0 mass%のうちの少なくとも一方を含有(ただし、複数含有の場合の上限は4.0mass%)することを特徴とする請求項1に記載のMn −Zn フェライト。
【請求項3】 副成分として、CuO 0.01〜2.0 mass%、 NiO 0.01〜2.0 mass%、CoO 0.01〜2.0 mass%、MgO 0.01〜2.0 mass%、Al2O3 0.01〜2.0 mass%およびCr2O3 0.01〜2.0 mass%のうちの1種または2種以上を含有(ただし、複数含有の場合の上限は2.0 mass%)することを特徴とする請求項1または2に記載のMn −Zn フェライト。
【請求項4】 請求項1乃至3の何れか1項に記載のMn −Zn フェライトを磁心に用いたことを特徴とする巻き線部品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Mn −Zn フェライトおよびこれを磁心に用いた巻き線部品に係り、特にスイッチング電源、ノイズフィルタ、チョークコイル等に向けて好適なMn −Zn フェライトおよび巻き線部品に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、EMI対策ラインフィルタなどのノイズフィルタに使用される磁心材料は、ノイズを除去したい周波数帯域で大きなインピーダンスを有することが望まれる。高周波数帯域でのインピーダンスを増大させる方法としては、巻き線の浮遊容量(C)とコアのインダクタンス(L)との共振現象を利用する方法があり、インピーダンスは共振周波数(1/√LC)で極大となる周波数特性を示すことが知られている。一方、共振周波数より低い周波数側のインピーダンスはコアの初透磁率に比例することや、共振周波数より高い周波数側のインピーダンスは巻き線の浮遊容量に反比例することなども知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、広い周波数帯域で高透磁率を維持するMn -Zn フェライトの研究については、従来より盛んに行われており、例えば、特開2000−353613号公報、特開平9−180925号公報等に開示されている。しかし、Mn -Zn フェライトの初透磁率は、複素比誘電率実数部ε´と密接な関係があり、複素比誘電率実数部ε´が大きな値をもつと、高周波帯域で初透磁率の緩和が起こり、高周波数帯域まで初透磁率を維持することはできず、結果として、高周波数帯域において優れたインピーダンス特性を得ることは困難となる。しかるに、上記特開2000−353613号公報に記載のものには、誘電特性についての認識もインピーダンス特性についての言及もない。これに対し、上記特開平9−180925号公報に記載のものには、誘電率(比誘電率)εについての記載があるが、その特許請求の範囲や実施例を見ると、1kHz における比誘電率εは50000〜1000000と非常に大きい。通常、複素比誘電率εは[ε´−jε"]で表され、前記した比誘電率εは複素成分や実数成分に分離されていないが、一般に多結晶Mn −Zn フェライトはε"/ε´=0.5〜1.5であり、どう低く見積っても複素比誘電率実数部ε´は30000〜60000の範囲にあり、非常に大きい値となっている。1kHz における複素比誘電率実数部ε´がこのように大きな値をもつと、1MHzにおける複素比誘電率実数部ε´が50以下になることは到底不可能であるばかりか、500kHz付近で初透磁率の緩和が起こり、1MHz以上の高周波数帯域まで初透磁率を維持することはできない。
【0004】一方、本発明者等は、複素比誘電率実数部ε´が大きい従来のMn -Zn フェライトを磁心として用いた巻き線部品では、巻き線条件を工夫してもほとんど浮遊容量を減らす効果がないことを見出した。すなわち、巻き線部品の浮遊容量は、巻き線−巻き線間容量と、巻き線−コア間容量とに大別することができ、前者は巻き線条件によって、後者は磁心の材料特性によってそれぞれ決定され、複素比誘電率実数部ε´が大きいほど増加する。したがって、複素比誘電率実数部ε´が大きい従来のMn -Zn フェライトを磁心として用いた巻き線部品では、巻き線−コア間容量が巻き線−巻き線間容量に比べて極端に大きいため、巻き線条件を工夫してもほとんど浮遊容量を減らす効果がないのである。
【0005】すなわち、高周波数帯域で使用される磁心材料および巻き線部品を設計する場合は、高透磁率が高周波帯域まで維持する磁心材料を用い、かつ巻き線条件を工夫して浮遊容量を減らすという2つの条件を満たされなければならないが、従来のMn -Zn フェライトを磁心として用いた巻き線部品の場合は、前記した2つの条件の何れも満足しておらず、広い周波数帯域で大きなインピーダンスを得ることは困難になっていた。本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、初透磁率が広い周波数帯域で維持され、かつ巻き線を施した状態での浮遊容量が小さく、広い周波数帯域で優れたインピーダンス特性を有するMn -Zn フェライトおよびその巻き線部品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明に係るMn −Zn フェライトは、基本成分が、Fe2O3 44.0〜50.0 mol%(ただし、50.0 mol%は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol%、残部MnO からなり、1kHz における複素比誘電率実数部ε´が20000以下でかつ1MHz における複素比誘電率実数部ε´が50以下であることを特徴とし、また、本発明に係る巻き線部品は、前記したMn -Zn フェライトを磁心として用いたことを特徴とする。本発明に係るMn −Zn フェライトおよび巻き線部品は、上記主成分に対し、副成分として、SnO2 0.01〜4.0 mass%およびTiO2 0.01〜3.0 mass%のうちの少なくとも一方を含有(ただし、複数含有の場合の上限は4.0 mass%)する構成とすることができるほか、副成分として、CuO 0.01〜2.0 mass%、 NiO 0.01〜2.0mass%、CoO 0.01〜2.0 mass%、MgO 0.01〜2.0 mass%、Al2O3 0.01〜2.0 mass%およびCr2O3 0.01〜2.0 mass%のうちの1種または2種以上を含有(ただし、複数含有の場合の上限は2.0 mass%)する構成とすることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明に係るMn −Zn フェライトの基本成分組成は、上記したようにFe2O344.0〜50.0 mol%(ただし、50.0 mol%は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol%、残部MnO からなることを特徴とするが、その製造に際しては、前記組成となるように成分調整した混合粉末を用いて成形を行った後、酸素を適当量含む雰囲気中で焼成および焼成後の冷却を行うか、下記(1) 式中の定数bとして6〜21の範囲内の任意の値を用いて求めた酸素濃度の雰囲気中で焼成および焼成後の冷却を行う。ここで、定数bは6〜21としたが、21より大きい値を選択した場合は、実質大気と同じ雰囲気になるので、酸素濃度を規定する意味はなくなる。また、得られるMn -Zn フェライトの低周波域における初透磁率を高くするには、この定数bとしてできるだけ小さい値を選択するのが望ましいが、6より小さくなるとFeO の生成が多くなって電気抵抗が小さくなりすぎ、高周波域における初透磁率が悪化するので、6以上に設定する。なお、本発明の目的からは、フェライト中のFeO の形態の鉄成分は1mol%未満が望ましい。
log Po2={−14540 /(T+273 )}+b (1)
ただし、T:温度(℃)、Po2:酸素分圧(−)
【0008】本発明に係るMn −Zn フェライトにおいて、Fe2O3は、44.0 mol%未満では初透磁率および飽和磁束密度が著しく低下し、一方、50.0 mol%を超えると1kHz における複素比誘電率実数部ε´が20000より大きくかつ1MHz における複素比誘電率実数部ε´が50より大きくなってしまうので、これを44.0〜50.0 mol%(ただし、50.0 mol%は除く)とした。Fe2O3 の含有量が前記した範囲にあるため、焼成過程を、酸素を適当量含む雰囲気中、または上記(1) 式中の定数bとして6〜21の範囲内の任意の値を用いて求めた酸素濃度の雰囲気中で行うことで得られるMn −Zn フェライトは、1kHz における複素比誘電率実数部ε´が20000以下でかつ1MHz における複素比誘電率実数部ε´が50以下となる。その結果、初透磁率が広い周波数帯域で維持され、かつ巻き線を施した状態で、特に高周波数帯域での分布容量が小さくなり、広い周波数帯域で優れたインピーダンス特性を有するものとなる。本発明は、上記複素比誘電率実数部ε´の特性を満足していれば、初透磁率、飽和磁束密度等の磁気特性は実用上問題のない範囲で変化させてもよい。しかし、ZnO が4.0 mol%未満では、初透磁率が著しく低下し、ZnO が26.0 mol%を超えると飽和磁束密度が著しく低下してしまうため、ZnO は4.0〜26.5 mol%の範囲に収めるようにする。
【0009】ところで、フェライトコアのインピーダンス特性は、リアクタンス成分とレジスタンス成分とに分離することができる。そして、低周波帯域ではリアクタンス成分が支配的であり、これはノイズを磁気エネルギーに変換し除去する成分である。一方、高周波帯域ではレジスタンス成分が支配的であり、これはノイズを熱エネルギーに変換し除去する成分である。これら両成分の交わる周波数(fkとする)はノイズを磁気エネルギーに変換し除去する成分と熱エネルギーに変換し除去する成分との境目となる周波数である。通常、ノイズを除去する際は熱エネルギーに変換して除去する成分が多い方が望ましい。同じインピーダンス特性であれば、前記fkは低い程よい。SnO2 およびTiO2 の添加は、インピーダンス特性を変化させることなく両成分の交わる周波数を低周波側にシフトさせる効果がある。本発明において、上記基本成分組成に対し、副成分としてSnO2 およびTiO2 のうちの少なくとも一方を含有する構成としたのは、上記知見に基づくものである。ただし、これら副成分は、微量の添加では上記した効果が小さく、過剰の添加は、1kHz における複素比誘電率実数部ε´を増加させるため、SnO2 は0.01〜4.0 mass%、TiO2 は0.01〜3.0 mass%の範囲とするのが望ましい。この場合、前記SnO2 、TiO2 は、酸化スズ、酸化チタンそのものであっても、焼成によって酸化スズ、酸化チタンになる化合物であってもよい。これら酸化物もしくは焼成によって酸化物になる化合物を単独で用いる場合の添加量はSnO2 またはTiO2 換算の質量比で前記範囲とするが、これらを複数添加する場合は、SnO2 またはTiO2換算の質量比で合計0.02〜4.0 mass%とするのがよい。
【0010】本発明に係るMn -Zn フェライトは、副成分としてさらに、CuO 、NiO 、CoO、MgO 、Al2O3 およびCr2O3 のうちの1種または2種以上をそれぞれ0.01〜2.0mass%含有する構成とすることができる。CuO は、1kHz および1MHz における複素比誘電率実数部ε´を低下させる効果があるので、共振周波数より高い周波数側でのインピーダンス特性の向上に効果がある。ただし、その微量の添加は前記した効果が小さく、その過剰の添加は初透磁率の緩和現象を引き起こして共振を起こしにくくするため、上記範囲とするのが望ましい。この場合、CuO は、酸化銅そのものであっても、焼成によって酸化銅 になる化合物であってもよく、酸化銅もしくは焼成によって酸化銅になる化合物を単独で用いる場合の添加量はCuO 換算の質量比で前記範囲とする。NiO は、1kHz および1MHz における複素比誘電率実数部ε´を低下させる効果があるので、、共振周波数より高い周波数側でのインピーダンス特性の向上に効果がある。ただし、その微量の添加は前記した効果が小さく、その過剰の添加は初透磁率の緩和現象を引き起こして共振を起こしにくくするため、上記範囲とするのが望ましい。この場合、NiO は、酸化ニッケルそのものであっても、焼成によって酸化ニッケル になる化合物であってもよく、酸化ニッケルもしくは焼成によって酸化ニッケルになる化合物を単独で用いる場合の添加量はNiO 換算の質量比で前記範囲とする。CoO は、1kHz および1MHz における複素比誘電率実数部ε´を低下させる効果があるので、共振周波数より高い周波数側でのインピーダンス特性の向上に効果がある。また、Co2+はスピネルのBサイトに固溶すると正の結晶磁気異方性をもち、全体の結晶磁気異方性を零にする効果もあるため、初透磁率も増加し,共振周波数より低い周波数側でインピーダンス特性の向上に効果がある。ただし、その微量の添加は前記した効果が小さく、その過剰の添加は逆に正の結晶磁気異方性や磁歪を大幅に増加させ、磁気特性を劣化させる原因となるので、上記範囲とするのが望ましい。この場合、CoO は、酸化コバルトそのものであっても、焼成によって酸化コバルトになる化合物であってもよい。酸化コバルトもしくは焼成によって酸化コバルトになる化合物を単独で用いる場合の添加量はCoO 換算の質量比で前記範囲とする。MgO は、1kHz および1MHz における複素比誘電率実数部ε´を低下させる効果があるので、共振周波数より高い周波数側でのインピーダンス特性の向上に効果がある。ただし、その微量の添加は前記した効果が小さく、過剰の添加は初透磁率の緩和減少を引き起こして共振を起こしにくくするため、上記範囲とするのが望ましい。この場合、MgO は、酸化マグネシウムそのものであっても、焼成によって酸化マグネシウムになる化合物であってもよい。酸化マグネシウムもしくは焼成によって酸化マグネシウムになる化合物を単独で用いる場合の添加量はMgO 換算の質量比で前記範囲とする。Al2O3 は、1kHz および1MHz における複素比誘電率実数部ε´を低下させる効果があるので、共振周波数より高い周波数側でのインピーダンス特性の向上に効果がある。ただし、その微量の添加は前記した効果が小さく、過剰の添加は焼結性を劣化させるため、上記範囲とするのが望ましい。この場合、Al2O3 は、酸化アルミニウムそのものであっても、焼成によって酸化アルミニウムになる化合物であってもよい。酸化アルミニウムもしくは焼成によって酸化アルミニウムになる化合物を単独で用いる場合の添加量はAl2O3 換算の質量比で前記範囲とする。Cr2O3 は、1kHz および1MHz における複素比誘電率実数部ε´を大幅に低下させる効果があるので、共振周波数より高い周波数側でのインピーダンス特性の向上に効果がある。また、Cr3+はスピネルのBサイトに固溶すると、微弱ではあるが正の結晶磁気異方性もち、全体の結晶磁気異方性を零にする効果もあるため、初透磁率も増加し,共振周波数より低い周波数側でインピーダンス特性の向上に効果がある。ただし、その微量の添加は前記した効果が小さく、過剰の添加は焼結性を劣化させるため、上記範囲とするのが望ましい。この場合、Cr2O3 は、酸化クロムそのものであっても、焼成によって酸化クロムになる化合物であってもよい。酸化クロムもしくは焼成によって酸化クロムになる化合物を単独で用いる場合の添加量はCr2O3 換算の質量比で前記範囲とする。これら副成分としてのCuO 、NiO 、CoO 、MgO 、Al2O3 およびCr2O3 は複数添加する場合は、それらの酸化物換算の重量比で合計0.06〜2.0 mass%とするのがよい。
【0011】Mn −Zn フェライトの製造に際しては、予め主成分としてのFe2O3、ZnO およびMnO の原料粉末を所定の比率となるように秤量し、これらを混合して混合粉末を得、次に、この混合粉末を仮焼、微粉砕する。前記仮焼温度は、目標組成によって多少異なるが、800 〜1000℃の温度範囲内で適宜の温度を選択する。また、混合粉末の微粉砕には汎用のボールミルを用いることができる。なお、副成分としてSnO2 、TiO2 、CuO 、NiO 、CoO 、MgO 、Al2O3 、Cr2O3 等を含有させる場合は、前記微細な混合粉末に、これら副成分の粉末を適量添加混合し、目標成分の混合粉末を得る。その後は、通常のフェライト製造プロセスに従って造粒、成形を行い、さらに、900〜1400℃で焼成を行う。前記造粒は、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、グリセリン等のバインダーを添加する方法を、また成形は、例えば、80MPa 以上の圧力を加えて行う方法をそれぞれ採用することができる。また、焼成および焼成後の冷却は、酸素を適当量含む雰囲気中、または前記 (1)式に基づいて規定される酸素分圧の雰囲気中で行う。このようにして得られたMn -Zn フェライトおよびこれを磁心として用いた巻き線部品は、広い周波数帯域におけるインピーダンス特性が良好であり、実用上、特に重要となる10〜100MHz 帯域のノイズを効果的に熱エネルギーに変換し吸収することができる。
【0012】
【実施例】実施例1Fe2O3 43.0〜52.0 mol%、ZnO 21.0 mol%、残部MnO となるように各原料粉末をボールミルにて混合した後、空気中、 850℃で2時間仮焼し、さらにボールミルにて20時間粉砕して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を先の組成となるように成分調整し、さらにボールミルにて1時間混合した。次に、この混合粉末にポリビニルアルコールを加えて造粒し、80MPa の圧力で、焼成後に外径25mm,内径15mm,高さ(厚さ)5mmの大きさとなるようにトロイダル状コア(成形体)を成形した。その後、この成形体を焼成炉に入れ、窒素を流すことにより、前記(1) 式中の定数bを8として求められる酸素濃度となるように雰囲気を調整し、1300℃で3時間焼成および焼成後の冷却を行い、表1に示すような試料1−1〜1−6を得た。そして、上記のようにして得た各試料1−1〜1−6について、1kHz での初透磁率を測定すると共に、1kHz および1MHz での複素比誘電率実数部ε´を測定し、さらにインピーダンスの周波数特性を巻き数10ターンで測定した。それらの結果を表1および図1に示す。なお、表1では、本発明の範囲に含まれるものを「本発明」、本発明の範囲を外れるものを「比較」としてそれぞれ区分している。
【0013】
【表1】

【0014】表1に示す結果より、Fe2O3 を52.0 mol%含む比較試料1−1の複素比誘電率実数部ε´が、1kHz で50000超、1MHz で9000超の大きな値となっているのに対し、Fe2O3 を50.0 mol%未満含む本発明試料1−3、1−4および1−5は、いずれも複素比誘電率実数部ε´が1kHz で20000以下、1MHz で50以下の小さい値となっている。一方、Fe2O3 が43.0 mol%と低い比較試料1−6の1kHz での初透磁率が1100であるのに対し、本発明試料1−3、1−4および1−5の1kHz での初透磁率は、いずれも4000以上の高値となっている。この結果、図1に示すようにインピーダンスの周波数特性は、比較試料に対し本発明試料は10kHz〜100 MHz の広帯域において大きなインピーダンスが維持されている。
【0015】実施例2Fe2O3 48.0 mol%、ZnO 21.0 mol%、残部 MnO からなる主成分に対し、SnO2またはTiO2 が0.01〜5.0 mass%となるように各原料粉末をボールミルにて混合した後、空気中、 850℃で2時間仮焼し、さらにボールミルにて20時間粉砕して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を先の組成となるように成分調整し、さらにボールミルにて1時間混合した。次に、この混合粉末にポリビニルアルコールを加えて造粒し、80MPa の圧力で、焼成後に外径25mm,内径15mm,高さ(厚さ)5mmの大きさとなるようにトロイダル状コア(成形体)を成形した。その後、この成形体を焼成炉に入れ、窒素を流すことにより、前記(1) 式中の定数bを8として求められる酸素濃度となるように雰囲気を調整し、1300℃で3時間焼成および焼成後の冷却を行い、表2に示すような試料2−1〜2−8を得た。そして、上記のようにして得た各試料2−1〜2−8について、1kHz での初透磁率、1kHz および1MHz での複素比誘電率実数部ε´、ならびに10kHz および100MHz でのインピーダンスを巻き数10ターンで測定し、併せて前記したノイズを磁気エネルギーに変換し除去する成分とノイズを熱エネルギーに変換し除去する成分との交わる周波数fkを測定した。それらの結果を表2に示す。なお、表2には、上記実施例1における本発明試料1−3の結果も併記している。また、表2では、本発明の範囲に含まれるものを「本発明」、本発明の範囲を外れるものを「比較」としてそれぞれ区分している。
【0016】
【表2】

【0017】表2に示す結果より、SnO2 またはTiO2 を規定内で添加した本発明試料2−1、2−4、2−5、2−6および2−7は、SnO2 またはTiO2 を全く含まない試料(本発明試料)1−3よりも周波数fkが低くなっているが、10kHz および100MHz でのインピーダンスはほとんど同じである。一方、SnO2 またはTiO2 を規定より多く添加した比較試料2−2、2−6および2−8は、いずれも本発明試料に比べて、1kHz での初透磁率が低下するばかりか、1kHz および1MHz での複素比誘電率実数部ε´が増加し、結果として10kHz および100MHz でのインピーダンスが著しく減少している。
【0018】実施例3Fe2O3 48.0 mol%、ZnO 21.0 mol%、残部 MnO からなる主成分に対し、CuO、NiO 、CoO 、MgO 、Al2O3 、Cr2O3 が0.01〜3.0 mass%となるように各原料粉末をボールミルにて混合した後、空気中、 850℃で2時間仮焼し、さらにボールミルにて20時間粉砕して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を先の組成となるように成分調整し、さらにボールミルにて1時間混合した。次に、この混合粉末にポリビニルアルコールを加えて造粒し、80MPa の圧力で、焼成後に外径25mm,内径15mm,高さ(厚さ)5mmの大きさとなるようにトロイダル状コア(成形体)を成形した。その後、この成形体を焼成炉に入れ、窒素を流すことにより、前記(1) 式中の定数bを8として求められる酸素濃度となるように雰囲気を調整し、1300℃で3時間焼成および焼成後の冷却を行い、表3に示すような試料3−1〜3−10を得た。そして、上記のようにして得た各試料3−1〜3−10について、1kHz での初透磁率を測定すると共に、1kHz および1MHz での複素比誘電率実数部ε´を測定し、さらに10kHz および100MHz でのインピーダンスを巻き数10ターンで測定した。それらの結果を表3に示す。なお、表3には、上記実施例1における本発明試料1−3の結果も併記している。また、表3では、本発明の範囲に含まれるものを「本発明」、本発明の範囲を外れるものを「比較」としてそれぞれ区分している。
【0019】
【表3】

【0020】表3に示す結果より、CoO またはCr2O3 を規定内で添加した本発明試料3−3、3−6は、これらを全く含まない試料(本発明試料)1−3よりも複素比誘電率実数部ε´が小さくなるばかりか、1kHz での初透磁率もた高くなっており、その結果、10kHz および100MHz でのインピーダンスも増加している。また、CuO、NiO 、MgO 、Al2O3 を規定量含む本発明試料3−1、3−2、3−4および3−5は、これらを全く含まない試料(本発明試料)1−3に対して、1kHz での初透磁率はほとんど変わらないが、特に1MHz での複素比誘電率実数部ε´が小さくなっており、その結果、100MHz でのインピーダンスが増加している。一方、これら副成分を規定より多く添加した比較試料3−7、3−8および3−10は、いずれも本発明試料に比べて、1kHz での初透磁率が著しく低下し、その結果、10kHz でのインピーダンスが著しく減少している。
【0021】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明に係るMn −Zn フェライトおよび巻き線部品によれば、広い周波数帯域におけるインピーダンス特性が良好で、実用上、特に重要となる10〜100MHz 帯域のノイズを効果的に熱エネルギーに変換し吸収することができ、その利用価値は大なるものがある。
【出願人】 【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
【住所又は居所】長野県北佐久郡御代田町大字御代田4106―73
【出願日】 平成13年8月10日(2001.8.10)
【代理人】 【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫 (外3名)
【公開番号】 特開2003−59712(P2003−59712A)
【公開日】 平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願番号】 特願2001−244439(P2001−244439)