| 【発明の名称】 |
圧粉磁心 |
| 【発明者】 |
【氏名】武本 聡 【住所又は居所】愛知県名古屋市南区大同町二丁目30番地 大同特殊鋼株式会社技術開発研究所内
【氏名】斉藤 貴伸 【住所又は居所】愛知県名古屋市南区大同町二丁目30番地 大同特殊鋼株式会社技術開発研究所内
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| 【要約】 |
【課題】高磁界が印加されても透磁率低下が抑制され、同時にコアロスも小さい圧粉磁心と、それに用いる新規な軟磁性粉末を提供する。
【解決手段】次式:(Fe1-f(Co+Ni)f)100-e-d-c-b-aMeM’dSicBbXa(ただし、Mは、Hf,Ta,Ti,Zr,Nbの群から選ばれる少なくとも1種を表し、M’は、Sc,V,Cr,Mn,Mo,Pd,W,Pt,Zn,Sn,希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種を表し、Xは、Cu,N,O,Al,P,S,Ca,Ga,Ge,As,Li,Be,Mg,Se,Sr,Cd,In,Sb,Te,Baの群から選ばれる少なくとも1種を表し、また、f,e,d,c,b,aは、それぞれ、0≦f≦30,0≦e≦30,0≦d≦20,0≦c≦30,1≦b≦30,0≦a≦50を満足する数である)で示される組成を有する圧粉磁心。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 次式:(Fe1-f(Co+Ni)f)100-e-d-c-b-aMeM’dSicBbXa(ただし、Mは、Hf,Ta,Ti,Zr,Nbの群から選ばれる少なくとも1種を表し、M’は、Sc,V,Cr,Mn,Mo,Pd,W,Pt,Zn,Sn,希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種を表し、Xは、Cu,N,O,Al,P,S,Ca,Ga,Ge,As,Li,Be,Mg,Se,Sr,Cd,In,Sb,Te,Baの群から選ばれる少なくとも1種を表し、また、f,e,d,c,b,aは、それぞれ、0≦f≦30,0≦e≦30,0≦d≦20,0≦c≦30,1≦b≦30,0≦a≦50を満足する数である)で示される組成を有し、かつ、粒径20nm以下の微細結晶またはアモルファス組織を含有する軟磁性粉末:40〜70体積%,残部が実質的に絶縁バインダと空隙とから成る圧粉磁心であって、初透磁率をμ0,印加磁界が24kA/mのときの透磁率をμとしたとき、μ0とμの間には、μ/μ0≧0.5の関係が成立し、かつ、周波数100kHz,磁束密度0.1Tにおけるコアロスが1500kW/m3以下であることを特徴とする圧粉磁心。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は圧粉磁心に関し、更に詳しくは、高磁界を印加しても高い透磁率を示して優れた直流重畳特性を発揮すると同時にコアロスも小さい圧粉磁心に関する。 【0002】 【従来の技術】圧粉磁心は、対象製品が小型・複雑な形状であっても高い歩留まりで製造することができ、現在では、例えばスイッチング電源のチョークコイル,ノイズフィルタやインジェクタの電磁弁用のコアなどに用いられている。この圧粉磁心は概ね次のようにして製造されている。 【0003】すなわちまず、所定組成の軟磁性合金に対して機械粉砕,アトマイズ法,液体超急冷法などを適用して所定の粒度分布を有する軟磁性粉末を製造する。ついで、この軟磁性粉末に所定量の絶縁材料とバインダ成分を均一に混合して、軟磁性粉末の表面をそれら材料で被覆する。なお、以後の説明においては、上記した絶縁材料とバインダ成分を一括して「絶縁バインダ」と呼ぶ。 【0004】ついで、得られた混合物を金型に充填したのち所定の圧力で成形して圧粉磁心のグリーン体が製造される。なおこのとき、成形性を高めるために、通常は、上記した混合物に更にステアリン酸亜鉛のような潤滑剤の所定量が混合される。そして最後に、上記グリーン体に熱処理を行って、成形時に蓄積された成形歪みを解放し、目的とする圧粉磁心にする。 【0005】このようにして製造された圧粉磁心は、一般に、直流磁界(印加磁界)が強くなるにつれて磁束密度が次第に高くなっていき、そしてある強さの印加磁界で磁束密度が飽和に達するという磁化曲線(B−H曲線)を描く。そして、磁束密度が高くなっていく過程において、ある直流磁界に交流微小磁界を重畳して磁界を微小変化させたときの磁束密度の変化量を前記磁界の微小変化量で除算した値をもって、その磁界における透磁率(微分比透磁率)が定義されている。したがって、B−H曲線の傾きが小さくなる、すなわち印加磁界が強くなるにつれて、上記微分比透磁率は小さくなるので透磁率は低くなり、飽和磁化に達した以降では、透磁率は事実上1となる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】ところで、電気自動車やハイブリッドカーの開発研究が進むなかで、それらに搭載される充電用トランスのコアとして、最近では、圧粉磁心の用途が開けつつある。そして搭載電池の高圧化が進んでいるが、それに伴って上記したトランスコアに流れる電流も増加する傾向にある。 【0007】一方、原料としてFe−Si−Al系,Fe−Ni系,Fe−Si系のような軟磁性粉末を用いて製造した圧粉磁心はその初透磁率が高い。しかしながら、そのような高透磁率の圧粉磁心の場合、大電流通電の状態で使用すると、その高透磁率の故に強い直流磁界が印加されることになるため、当該圧粉磁心の磁束密度は急速に飽和に達し、その結果、ある印加磁界を境にして透磁率は1に向かって低下するという問題が発生する。すなわち、このような高透磁率の圧粉磁心は、直流重畳特性が悪い。 【0008】通常、初透磁率が60〜125程度の圧粉磁心が実用されているが、このような圧粉磁心の場合、例えば16kA/m以上の高磁界が印加されると、その透磁率は極めて低くなり、実使用に耐え得ないという問題が発生している。したがって、高磁界が印加された場合であっても、必要水準の透磁率を確保せしめて直流重畳特性の劣化を抑制するためには、対象とする圧粉磁心の初透磁率を低めることが効果的である。 【0009】そして、一般に、透磁率は圧粉磁心の密度の関数であることが知られており、低密度の圧粉磁心は低い透磁率を示すことを考えると、上記した課題の実現のためには、圧粉磁心を低密度化することが効果的である。このような観点から、圧粉磁心の製造時に比較的多量の絶縁バインダを用い、また成形圧を小さくして低密度なグリーン体を製造し、そのことによって初透磁率を30以下の値に低下させることが行われている。 【0010】しかしながら、Fe−Si−Al系やFe−Ni系の圧粉磁心の場合、上記した方法を適用すると、飽和磁束密度が低くなり、そのため高磁界を印加するまでの間、必要水準の透磁率を確保することができず、また絶縁バインダの増量や低圧成形の影響で保磁力が増加してコアロスが若干大きくなるという問題が生ずる。 【0011】また、Fe−Si系の圧粉磁心の場合には、上記した方法を適用しても、飽和磁束密度は高く、高磁界を印加しても必要水準の透磁率は確保されるが、他方では保磁力の増大によりコアロスは大きくなるという問題が生ずる。本発明は、上記した問題の解決を意図して開発された圧粉磁心であって、高磁界が印加されても透磁率の低下が起こりにくいため高い印加磁界に至るまで実使用が可能であり、しかも、コアロスは低い圧粉磁心の提供を目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明においては、次式:(Fe1-f(Co+Ni)f)100-e-d-c-b-aMeM’dSicBbXa(ただし、Mは、Hf,Ta,Ti,Zr,Nbの群から選ばれる少なくとも1種を表し、M’は、Sc,V,Cr,Mn,Mo,Pd,W,Pt,Zn,Sn,希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種を表し、Xは、Cu,N,O,Al,P,S,Ca,Ga,Ge,As,Li,Be,Mg,Se,Sr,Cd,In,Sb,Te,Baの群から選ばれる少なくとも1種を表し、また、f,e,d,c,b,aは、それぞれ、0≦f≦30,0≦e≦30,0≦d≦20,0≦c≦30,1≦b≦30,0≦a≦50を満足する数である)で示される組成を有し、かつ、粒径20nm以下の微細結晶またはアモルファス組織を含有する軟磁性粉末:40〜70体積%,残部が実質的に絶縁バインダと空隙とから成る圧粉磁心であって、初透磁率をμ0,印加磁界が24kA/mのときの透磁率をμとしたとき、μ0とμの間には、μ/μ0≧0.5の関係が成立し、かつ、周波数100kHz,磁束密度0.1Tにおけるコアロスが1500kW/m3以下であることを特徴とする圧粉磁心が提供される。 【0013】 【発明の実施の形態】まず、本発明の圧粉磁心は、上記した組成式で示される軟磁性粉末と、後述する絶縁バインダとを成形し、更に熱処理して製造された、ある密度を有するバルク体である。したがって、この圧粉磁心は、軟磁性粉末が絶縁バインダで被覆され、同時に相互に結着された骨格構造を有し、そして内部には微細な孔が空隙として分布する組織構造になっている。 【0014】そして、本発明の圧粉磁心では、上記した組織構造において、軟磁性粉末が占有する体積割合は40〜70体積%の範囲に設定されている。したがって、残部の成分である絶縁バインダを主体とする成分と、前記空隙の全体体積を合量した体積の割合は、30〜60体積%になっている。そして、本発明の圧粉磁心は、その初透磁率をμ0,印加磁界が24kA/mのときの透磁率をμとしたとき、μ0とμの間には、μ/μ0≧0.5の関係が成立するような磁気特性を有している。 【0015】すなわち、初透磁率は低いけれども、高磁界が印加されても、透磁率の低下は少なく、具体的には、24kA/mという高磁界が印加されても、その時点において、初透磁率(μ0)に対して50%以上の透磁率(μ)が確保されている圧粉磁心である。また、本発明の圧粉磁心は、周波数100kHz,0.1Tの磁束密度のときのコアロス(Pc)が1500kW/m3以下の値を示すという特性を備えている。 【0016】軟磁性粉末の体積割合が70体積%より大きい場合には、圧粉磁心の初透磁率は高くなり、その結果、高磁界の印加時に透磁率は低下する。具体的には、μ/μ0≧0.5の関係を成立させることができなくなる。また、この体積割合が40体積%より小さい場合には、後述する絶縁バインダなどの成分の相対的な割合が多くなっており、同時に空隙の全体体積も多くなっている状態であるため、磁気特性の面では、初透磁率や飽和磁束密度などが低下し、直流重畳特性も劣化し、そのため、高磁界印加時の透磁率は低下する。具体的には、μ/μ0≧0.5の関係が成立しなくなる。また、保磁力が増大してコアロスは大きくなる。具体的にはPc≦1500kW/m3の関係を満たせなくなる。 【0017】本発明の圧粉磁心において、その原料である軟磁性粉末としては、前記した組成式の材料が用いられる。そして、これらの材料は、いずれも、粒径が20nm以下である微細結晶またはアモルファス組織を含んでいることが必要である。仮に、組成は上記した組成式のとおりであっても、組織が上記した条件を満たしていない場合、具体的には結晶組織が過半になっているような場合には、結晶磁気異方性定数や磁歪定数が大きくなることにより保磁力の上昇という問題が生じて、それを用いて製造した圧粉磁心は前記した磁気特性を示さなくなる。 【0018】なお、ここでいうアモルファス組織とは、結晶組織をもたない、例えばX線回折法による分析で結晶相の回折ピークが認められないような組織のことを指す。これらの材料は、それぞれ単独で用いてもよく、また2種以上を適宜混合して用いてもよい。これらの軟磁性粉末は、それぞれの組成式で示した各成分を所定の割合で混合したのち溶製して所定組成比の合金溶湯を調製し、その溶湯にアトマイズ法を適用して製造することができる。また溶湯に対して溶湯超急冷法を適用してリボンを製造したのちそれを粉砕して製造することもできる。 【0019】本発明の圧粉磁心は、次のようにして製造することができる。まず、上記した軟磁性粉末と絶縁バインダとを混合して、絶縁バインダで軟磁性粉末の全表面または一部表面を被覆する。このときに用いる絶縁バインダとしては、結着能を有し、しかも後述する歪み取り焼鈍時に熱分解しないものであれば格別限定されるものではないが、水ガラスであることが好ましい。 【0020】その場合、絶縁バインダの混合量は、軟磁性粉末100質量部に対して4〜20質量部に設定することが好ましい。4質量部より少ない場合は、成形時の圧力によっても変化するが、軟磁性粉末の体積割合が大きくなって得られるグリーン体の密度が高くなり、圧粉磁心は高透磁率になる。また20質量部より多くすると、軟磁性粉末の体積割合が小さくなって圧粉磁心の透磁率は低くなるが、他方ではコアロスの増大が生じ、目的とする飽和磁束密度も得にくく、更には成形時に割れなどが起こって不良品の発生率が高くなる。 【0021】ついで、混合物を例えばプレス成形してグリーン体にしたのち、例えばArのような不活性雰囲気中で歪み取り焼鈍を行って成形時に蓄積された歪みが除去される。このときの焼鈍温度は、用いた軟磁性粉末の種類に対応して選定すればよいが、軟磁性粉末の結晶化温度よりも低い温度域に設定されることが必要である。 【0022】 【実施例】実施例1〜37,比較例1〜16水アトマイズ法により、粒径が45μm以下で、表1〜表3に示した組成の各種の軟磁性粉末を製造した。そして、これら粉末に対して、一旦、熱処理を施して歪み取りを行った。 【0023】ついで、これらの軟磁性粉末100質量部に対して、水ガラスを4〜20質量部の範囲内で添加して混合し、更に0.5質量部のステアリン酸亜鉛(潤滑剤)を混合した。各混合物を98〜686MPaの範囲内の圧力でプレス成形して、外径20mm,内径10mm,厚み5mmのリング形状の圧粉体を成形し、ついで、Ar雰囲気中において、表1〜表3で示した温度で歪み取り磁気焼鈍を行って軟磁性粉末の体積割合が異なる各種の圧粉磁心にした。 【0024】得られた各圧粉磁心につき、下記の仕様で特性を調べた。 (1)軟磁性粉末の体積割合(%):プレス成形後の圧粉体の体積密度を測定し、添加した水ガラス量と空隙量から算出。 (2)初透磁率(μ0):圧粉磁心に350ターンの巻線を施し、YHP社製の42841AプレシジョンLCRメータで、印加磁界0.4A/m,周波数20kHzの交流磁界における比透磁率として測定。 【0025】(3)印加磁界24kA/mでの透磁率(μ):上記したLCRメータで、印加磁界24KA/m,バイアス直流磁界に印加磁界0.4A/m,周波数20kHzの交流磁界を重畳したときにおける微分比透磁率として測定。 (4)コアロス(Pc):交流BHトレーサを用い、周波数100kHz,磁束密度0.1Tにおいて測定。 【0026】以上の結果を一括して表1〜表3に示した。 【0027】 【表1】
【0028】 【表2】
【0029】 【表3】
【0030】表1〜表3から明らかなように、軟磁性粉末の体積割合が40〜70体積%となるように製造した実施例の圧粉磁心は、いずれもμ/μ0が0.5以上であり、同時にコアロスは非常に小さい値になっていて、大電流通電時に透磁率低下を起こさないコアとして充分有効に機能し得ることがわかる。 【0031】 【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の圧粉磁心は、初透磁率は低いが、高磁界が印加されても透磁率の低下が起こりにくく、同時にコアロスも小さい。したがって、本発明の圧粉磁心は、例えば電気自動車などに搭載されて、大電流が通電される傾向にある充電用トランスのコアとしてその工業的価値は大である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003713 【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社 【住所又は居所】愛知県名古屋市中区錦一丁目11番18号
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| 【出願日】 |
平成14年6月6日(2002.6.6) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090022 【弁理士】 【氏名又は名称】長門 侃二 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−59710(P2003−59710A) |
| 【公開日】 |
平成15年2月28日(2003.2.28) |
| 【出願番号】 |
特願2002−166075(P2002−166075) |
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