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【発明の名称】 鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末及びその製造法
【発明者】 【氏名】沖中 健二
【住所又は居所】山口県小野田市新沖1丁目1番1号 戸田工業株式会社小野田工場内

【氏名】上神 雅之
【住所又は居所】山口県小野田市新沖1丁目1番1号 戸田工業株式会社小野田工場内

【要約】 【課題】本発明は、微粒子であるにもかかわらず適度な保磁力を有すると共に、分散性及び酸化安定性が良好であって、しかも優れた保磁力分布を有する鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末に関するものである。

【解決手段】Coを含有する紡錘状ゲータイト種晶粒子の表面にCoとAlとを含有するゲータイト層が形成されている紡錘状ゲータイト粒子であってその表面にはCoと希土類元素化合物とからなる最外層が形成されている出発粒子を加熱脱水、加熱還元及び表面酸化して得られる紡錘状金属磁性粒子粉末であって、当該紡錘状金属磁性粒子粉末の平均長軸径(L)が0.05〜0.15μm、保磁力Hcが111.4〜159.2kA/m(1400〜2000Oe)、比表面積(S)が一般式:S≦−160L+65で表され、且つ、発火温度が145℃以上、Δσsが4.5%以下である鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記A〜Eによって規定される出発粒子粉末を加熱脱水、加熱還元及び表面酸化して得られる紡錘状金属磁性粒子粉末であって、当該紡錘状金属磁性粒子粉末の平均長軸径(L)が0.05〜0.15μm、保磁力Hcが111.4〜159.2kA/m(1400〜2000Oe)、比表面積(S)が一般式:S≦−160L+65で表され、且つ、発火温度が145℃以上、Δσsが4.5%以下であることを特徴とする鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末。
記A.出発粒子粉末を構成する各粒子がCoを含有する紡錘状ゲータイト種晶粒子の表面にCoとAlとを含有するゲータイト層が形成されている紡錘状ゲータイト粒子であってその表面にはCoと希土類元素化合物とからなる最外層が形成されており、且つ、Alは該ゲータイト層にのみ存在し希土類元素は該最外層にのみ存在していること。
B.前記紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Co量が全Fe量に対して0.5以上5原子%未満であること。
C.前記ゲータイト層に含まれているAl量が前記紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Fe量に対して5〜10原子%であること。
D.前記最外層に含まれているCo量が前記紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Co量に対して20〜200%であると共に前記出発粒子に含まれている全Fe量に対して5以上15原子%未満であること。
E.前記最外層に含まれている希土類元素換算が前記紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Fe量に対して1.5〜5原子%であること。
【請求項2】 紡錘状ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して紡錘状ヘマタイト粒子粉末とした後、該紡錘状ヘマタイト粒子粉末を還元性ガスで加熱還元して鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を得る製造法において、下記4工程からなることを特徴とする請求項1記載の鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の製造法。
第一工程:炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させ、次いで当該種晶粒子と第一鉄含有沈澱物とを含む水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって該種晶粒子の表面上にゲータイト層を成長させて紡錘状ゲータイト粒子を生成させるにあたり、前記種晶粒子の生成時において、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液に、全熟成期間の50%以内の時点において全Feに対しCo換算で0.5以上5原子%未満のCo化合物を添加し、酸素含有ガスの空塔速度を2.3〜3.5cm/sとして酸化反応を全Fe2+の30〜50%の範囲で行い、次いで、全Feに対しAl換算で5〜10原子%のAl化合物を添加した後、引き続き酸化反応を行い紡錘状ゲータイト粒子粉末を得る。
第二工程:第一工程で得られた紡錘状ゲータイト粒子を含有する懸濁液に希土類元素換算で該紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Feに対して1.5〜5原子%の希土類元素化合物と該紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Co量に対して20〜200%であるとともに得られる出発粒子に含まれているCo量が全Fe量に対して5以上15原子%未満になる量のCoとを添加し、当該紡錘状ゲータイト粒子の表面を被覆して出発粒子粉末を得る。
第三工程:第二工程で得られた出発粒子粉末を非還元性雰囲気中、650〜800℃で加熱脱水処理を行って、紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得る。
第四工程:第三工程で得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末を還元装置内に導入して層高が3〜15cmの固定層を形成せしめた後、空塔速度が40〜150cm/sの還元性ガス雰囲気下で昇温速度が10〜80℃/minで400〜700℃に昇温し、当該紡錘状ヘマタイト粒子粉末を加熱還元し、次いで表面酸化被膜を形成して鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得る。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微粒子、殊に平均長軸径が0.05〜0.15μmであるにもかかわらず適度な保磁力を有すると共に、分散性及び酸化安定性が良好であって、しかも優れた保磁力分布を有する鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、民生用DAT(デジタルオーディオテープ)、8mm、Hi−8VTRテープ、業務用VTRテープ、コンピューターテープあるいはディスクなどのオーディオ、ビデオ、コンピューター用の磁気記録再生用機器の長時間記録化、小型軽量化が激化しており、特に、昨今におけるVTR(ビデオ・テープ・レコーダー)の普及は目覚しく、長時間記録化並びに小型軽量化、更に記録方式をアナログ方式からデジタル方式化への移行を目指したVTRの開発が盛んに行われている。これに伴い、一方では、磁気記録媒体の高画像画質、高出力特性、殊に周波数特性の向上が要求されており、この要求に応じる為には、磁気記録媒体に起因するノイズの低下、残留磁束密度Brの向上、高保磁力化並びに、分散性、充填性、テープ表面の平滑性の向上が必要であり、益々S/N比の向上が要求されてきている。
【0003】磁気記録媒体のこれらの諸特性は磁気記録媒体に使用される磁性粒子粉末と密接な関係を有するものであり、近年においては、従来の酸化鉄磁性粒子粉末に比較して高い保磁力と大きな飽和磁化を有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末が注目され、DAT、8mm、Hi−8等の民生用VTRテープ、βcamSP、デジタルβcam、HDcam等の業務用VTRテープ、DDS、DLT、LTO等のコンピューターテープあるいはディスクなどの磁気記録媒体に使用され実用化されている。特に民生用8mm、Hi−8テープ、業務用デジタルβcam、HDcam、データ用DLT、LTO等に使用されている金属磁性粒子粉末については、更なる出力向上及び酸化安定性の向上が要求されている。しかしながら、これらは既存のフォーマットであり経済性も同時に満足する必要があり、各種添加金属を極力低減しながら上記要求特性を満足することが強く望まれている。
【0004】磁気記録媒体の諸特性について詳述すれば次の通りである。
【0005】ビデオ用磁気記録媒体として高画像画質を得る為には、S/N比、ビデオ周波数特性の向上が要求される。その為には、磁気記録媒体の表面平滑性を改良することが重要となり、磁性粒子粉末の塗料中での分散性、塗膜中での配向性及び充填性を向上させることが必要となる。また、ビデオ周波数特性の向上を図る為には、磁気記録媒体の保磁力が高く、且つ、残留磁束密度が大きいことが必要であり、加えて、磁気記録媒体のS.F.D.(Switching FieldDistribution)、即ち、保磁力分布が小さいことが必要である。更に、磁気記録媒体の繰り返し走行性、スチル特性、あるいは過酷な環境下における使用での記録の信頼性を確保すること、換言すれば耐久性を向上させることも重要である。
【0006】前記諸特性を満たす磁気記録媒体用の金属磁性粒子粉末としては、分散性、酸化安定性においては粒子サイズが大きい方が好ましい。一方、表面平滑性、ノイズ低減の観点からは粒子サイズが小さい方が好ましいが、粒子サイズが小さくなるほど分散が難しく、酸化安定性にも問題を生ずる。また、組成的には鉄との固溶体を形成し酸化安定性に寄与することが知られているコバルトも多い方が好ましいが、経済性を考えると高価なコバルトを多量に使用するのは好ましくない。そこで、コバルトなどの高価な元素の使用を極力抑え、適度な保磁力であって分散性及び酸化安定性に優れた金属磁性粒子粉末が必要である。
【0007】周知の通り、金属磁性粒子粉末は出発原料であるゲータイト粒子粉末、該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られるヘマタイト粒子粉末、又は前記各粒子粉末に鉄以外の異種金属を含有させた粒子粉末を、必要により非還元性雰囲気下で加熱処理した後、還元性雰囲気下で加熱還元することにより得られる。その際、出発原料であるゲータイト粒子粉末の形状や粒度を適切に制御し、更に、加熱、還元などの熱処理時の粒子同士の融着、あるいは単一粒子の変形、形状破壊を防止し、出発原料であるゲータイト粒子の粒子形状や粒度を金属磁性粒子粉末へ保持継承させることが必要である。
【0008】前記出発原料となるゲータイト粒子粉末を大別すると、水酸化アルカリを用いて得られる針状ゲータイト粒子粉末と炭酸アルカリを用いて得られる紡錘状ゲータイト粒子粉末の2種類が存在する。針状ゲータイト粒子粉末は一般的に軸比の大きいものが得られやすいという特徴を持つ反面、紡錘状粒子粉末に比較して粒度分布が劣り、また粒子サイズの小さいものが得られ難いという問題がある。粒度分布は、一次粒子の均一性の指標であるので、金属磁性粒子粉末の保磁力分布や酸化安定性にも密接に関係してくる。そこで、出発原料としては粒度分布の優れた紡錘状ゲータイト粒子粉末を用いることが望ましい。
【0009】一方、前記加熱還元に用いられる加熱還元装置としては、出発原料を粉末状で流動させながら加熱還元する流動層還元装置、出発原料を造粒して顆粒状とし固定層を形成して加熱還元する固定層還元装置、更に固定層を形成した層を移動させる移動層還元装置等が知られている。
【0010】そして、金属磁性粒子の需要増加に伴う量産化技術の需要が高まる中、水素等の還元性ガスの流量を多量にしても粒子の飛散が無く量産化が可能である固定層を形成させた装置(移動層をも含む)が工業的、経済的に有利である。
【0011】しかし、固定層を形成させて水素ガス雰囲気下で加熱還元を行う場合、固定層下部で起こる急激な還元により水蒸気分圧が増大し、層下部に比較して層上部での粒子の形状破壊や短軸成長が多量に起こり、層下部と層上部での粒子の特性に違いが生じやすく、均質な特性を有する金属磁性粒子を得ることが困難である。
【0012】一般的に、出発原料である粒子同士の融着、あるいは単一粒子の変形、形状破壊を防止し、出発原料であるゲータイト粒子あるいはヘマタイト粒子の形状や粒度を金属磁性粒子へ保持継承させることが必要である。形状破壊された金属磁性粒子は、形状異方性の低下によって高い保磁力を得ることができず、粒子サイズの分布は低下する。また、磁気記録媒体の製造に当っても、結合剤樹脂との混練、分散過程における粒子間力の増大、あるいは磁気的凝集力の増大によって、分散性が低下し、磁性塗膜とした時の角形比が低下し、優れたSFDを有する磁気記録媒体を得ることはできない。
【0013】そこで、粒子形状の破壊が可及的に防止されるとともに、固定層が形成された層下部と層上部における金属磁性粒子の特性が均質となる加熱還元方法が強く要求される。
【0014】以上のような背景から、民生用8mm、Hi−8テープ、業務用デジタルβcam、HDcam、データ用DLT、LTO等の磁気記録媒体に用いられる金属磁性粒子粉末は、更なる特性改善と経済性追求のため、コバルトなどの高価な元素の使用を極力抑え、且つ、111.4〜159.2kA/m(1400〜2000Oe)の適度な保磁力であり、分散性及び酸化安定性が良好な金属磁性粒子粉末が求められている。
【0015】従来、金属磁性粒子粉末の諸特性向上を目的として、■金属磁性粒子粉末の組成を特定している技術(特開平7−210856号公報、特開平8−279137号公報、特開平8−279142号公報、特開平8−306031号公報、特開平9−293233号公報、特開平9−295814号公報、特開平10−69629号公報、特開平10−245233号公報、特開平10−275326号公報、特開平10−334455号公報、特開平10−334457号公報、特開平11−11951号公報、特開平11−130439号公報、特開平11−251122号公報、特開平2000−302445号公報)、■BET比表面積値を低く制御している技術(特公平1−18961号公報、特開平8−236327号公報)及び■固定層を形成して金属磁性粒子の特性が均質で高い保磁力を有する鉄を主成分とする金属磁性粒子を得ている技術(特開昭54−62915号公報、特開平4−224609号公報、特開平6−93312号公報)等が知られている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】保磁力が111.4〜159.2kA/m(1400〜2000Oe)の金属磁性粒子粉末であって、微粒子、殊に平均長軸径が0.05〜0.15μmであるにもかかわらず、適度な保磁力を有すると共に、分散性及び酸化安定性が良好であって、しかも優れた保磁力分布を有する鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0017】即ち、前記■の金属磁性粒子粉末の組成を特定している前出各公開公報記載の各技術では、金属磁性粒子粉末の全Feに対するCo、Al及び希土類元素の各元素含有量を特定しているが、長軸径と比表面積値及び結晶子サイズの関係は示されておらず、微粒子でありながら、適度な保磁力、優れた分散性及び酸化安定性を共に満たす金属磁性粒子粉末とは言い難いものである。
【0018】特に、特開平8−306031号公報には、酸化安定性については考慮されておらず、また、平均長軸径に対するBET比表面積値が大きいため酸化安定性が十分とは言い難いものである。
【0019】また、前記■のBET比表面積値を低く制御している技術にあっては、前出特公平1―18961号公報には、粒子サイズとその軸比を適当に選ぶことによって目的の保磁力を得て、低比表面積として塗料の粘度を低減させる技術が開示されているが、金属磁性粒子の酸化安定性あるいは塗膜の角形比、配向性などは全く考慮されていない。また、前出特開平8−236327号公報には、金属磁性粒子粉末の粒子表面を酸化すると同時に金属水和物又は金属酸化物を析出させる技術が開示されているが、結晶子サイズについては考慮されておらず、更に、金属磁性粒子粉末と磁性塗膜との保磁力の差が大きく、所望の特性を有する磁気記録媒体を製造することは困難である。
【0020】また、前記■の固定層を形成している前出特開平4−224609号公報記載の技術では、昇温雰囲気は水素であるが昇温速度が特定されておらず、酸化安定性など十分な検討が成されているとは言い難いものである。前出特開昭54−62915号公報記載の技術では、昇温雰囲気が窒素であることと、還元性ガスの空塔速度が小さいためか、得られる金属磁性粒子粉末は保磁力が95.5kA/m(1200Oe)程度と小さく、また、塗料中での分散性、塗膜での角形比、配向性など十分な検討がなされているとは言い難い。また、前出特開平6−93312号公報記載の技術では、Coを含有しておらず、磁性粒子の酸化安定性及び塗料中での分散性、塗膜での角形比、配向性など十分な検討がなされているとは言い難い。
【0021】特開2000−302445号公報記載の金属磁性粒子粉末においても酸化安定性に優れるが、少ないコバルト量でもより一層の酸化安定性に優れた金属磁性粒子粉末が必要とされている。
【0022】そこで本発明は、微粒子、殊に平均長軸径が0.05〜0.15μmであるにもかかわらず、適度な保磁力を有すると共に、分散性及び酸化安定性が良好であって、しかも優れた保磁力分布を有する鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を、固定層を形成した還元装置を用いて均質な特性を有する金属磁性粒子を製造することを技術的課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0024】即ち、本発明は、下記A〜Eによって規定される出発粒子粉末を加熱脱水、加熱還元及び表面酸化して得られる紡錘状金属磁性粒子粉末であって、当該紡錘状金属磁性粒子粉末の平均長軸径(L)が0.05〜0.15μm、保磁力Hcが111.4〜159.2kA/m(1400〜2000Oe)、比表面積(S)が一般式:S≦−160L+65で表され、且つ、発火温度が145℃以上、Δσsが4.5%以下であることを特徴とする鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末である。
記A.出発粒子粉末を構成する各粒子がCoを含有する紡錘状ゲータイト種晶粒子の表面にCoとAlとを含有するゲータイト層が形成されている紡錘状ゲータイト粒子であってその表面にはCoと希土類元素化合物とからなる最外層が形成されており、且つ、Alは該ゲータイト層にのみ存在し希土類元素は該最外層にのみ存在していること。
B.前記紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Co量が全Fe量に対して0.5以上5原子%未満であること。
C.前記ゲータイト層に含まれているAl量が前記紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Fe量に対して5〜10原子%であること。
D.前記最外層に含まれているCo量が前記紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Co量に対して20〜200%であると共に前記出発粒子に含まれている全Fe量に対して5以上15原子%未満であること。
E.前記最外層に含まれている希土類元素換算が前記紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Fe量に対して1.5〜5原子%であること。
【0025】また、本発明は、紡錘状ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して紡錘状ヘマタイト粒子粉末とした後、該紡錘状ヘマタイト粒子粉末を還元性ガスで加熱還元して鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を得る製造法において、下記4工程からなることを特徴とする前記鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の製造法である。
【0026】第一工程:炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させ、次いで当該種晶粒子と第一鉄含有沈澱物とを含む水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって該種晶粒子の表面上にゲータイト層を成長させて紡錘状ゲータイト粒子を生成させるにあたり、前記種晶粒子の生成時において、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液に、全熟成期間の50%以内の時点において全Feに対しCo換算で0.5以上5原子%未満のCo化合物を添加し、酸素含有ガスの空塔速度を2.3〜3.5cm/sとして酸化反応を全Fe2+の30〜50%の範囲で行い、次いで、全Feに対しAl換算で5〜10原子%のAl化合物を添加した後、引き続き酸化反応を行い紡錘状ゲータイト粒子粉末を得る。
【0027】第二工程:第一工程で得られた紡錘状ゲータイト粒子を含有する懸濁液に希土類元素換算で該紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Feに対して1.5〜5原子%の希土類元素化合物と該紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Co量に対して20〜200%であるとともに得られる出発粒子に含まれているCo量が全Fe量に対して5以上15原子%未満になる量のCoとを添加し、当該紡錘状ゲータイト粒子の表面を被覆して出発粒子粉末を得る。
【0028】第三工程:第二工程で得られた出発粒子粉末を非還元性雰囲気中、650〜800℃で加熱脱水処理を行って、紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得る。
【0029】第四工程:第三工程で得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末を還元装置内に導入して層高が3〜15cmの固定層を形成せしめた後、空塔速度が40〜150cm/sの還元性ガス雰囲気下で昇温速度が10〜80℃/minで400〜700℃に昇温し、当該紡錘状ヘマタイト粒子粉末を加熱還元し、次いで表面酸化被膜を形成して鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得る。
【0030】先ず、本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末について述べる。
【0031】本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、Coを全Feに対して5以上15原子%未満含有する。Co含有量が5原子%未満では磁気特性の向上効果がなく、15原子%以上の場合にはCoの還元促進作用により還元時の形状保持が困難になり希土類元素を増加させる必要があり、経済的に不利である。
【0032】本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、Alを全Feに対して5〜10原子%含有する。また、希土類元素を全Feに対して1.5〜5原子%含有する。
【0033】Al含有量が5原子%未満の場合には、特に粒子サイズが小さい場合には、保磁力が大きくなり過ぎるため適度な保磁力に制御することが困難となり、焼結防止効果が不十分となりやすい。10原子%を越える場合には、本発明では比較的低軸比であるため、保磁力の調整が難しくなる。希土類元素の含有量が1.5原子%未満の場合、焼結防止効果が十分でなく、また金属磁性粒子粉末とする場合、サイズ分布が劣化し、磁性塗膜のSFDも悪化する。5原子%を越える場合には経済的に不利となる。
【0034】本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、平均長軸径が0.05以上0.15μm未満である。平均長軸径が0.05μm未満では粒子径が小さくなり過ぎて飽和磁化、保磁力が低下する。更に、塗料中での分散性が劣り、磁性塗膜の酸化安定性も劣化しやすくなる。一方、0.15μm以上の場合には目的の保磁力が得られ難く、粒子サイズが大きいために磁性塗膜の表面平滑性が低下し、それに起因して出力も向上し難くなる。
【0035】本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の結晶子サイズD11は、150以上170Å未満が好ましい。結晶子サイズD110が150Å未満の場合には、磁気記録媒体にした場合に粒子性ノイズ低減の点では有利となるが、飽和磁化値が低くなりやすく、また酸化安定性も低下する。170Å以上の場合には粒子性ノイズが増加するため好ましくない。
【0036】本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末のBET比表面積(S)は、平均長軸径をLとした場合、S≦−160×L+65を満たす値を有する。前記関係式を超える値の場合には、優れた酸化安定性が得られ難い。なお、下限値は30m/gが好ましい。比表面積が30m/g未満には加熱還元工程での焼結が既に生じており、磁性塗膜の角形比が向上し難い。
【0037】本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末のサイズ分布(標準偏差/平均長軸径)は、0.30以下が好ましい。サイズ分布は小さければ小さい程良く、下限は特に限定されないが、工業的製造の観点からは0.10程度が適当である。一方、0.30を超える場合には、酸化安定性が劣化し、また、磁性塗膜のSFDも劣化し、高密度記録化が困難となる。
【0038】本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の軸比は4〜8が好ましい。軸比が4未満の場合には、目的とする保磁力が得られず、磁性塗膜の角形比、配向比ともに劣化する。一方、8を超える場合には保磁力が高くなり過ぎるか、あるいは、酸化安定性が劣化する。
【0039】本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、保磁力Hcが111.4〜159.2kA/m(1400〜2000Oe)である。また、飽和磁化σsは120〜150Am/kg(120〜150emu/g)が好ましい。
【0040】本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、後出の評価法による飽和磁化値σsの酸化安定性Δσsが絶対値として4.5%以下である。また、本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の発火温度は145℃以上である。飽和磁化値の酸化安定性及び発火温度が前記各範囲外の場合には酸化安定性が十分とは言い難い。
【0041】本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を用いた塗膜の特性は、397.9kA/m(5kOe)磁場配向した場合に、角形比(Br/Bm)は0.84以上が好ましく、配向性(OR)は2.8以上が好ましく、保磁力分布(SFD)は0.53以下が好ましい。
【0042】本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を用いた磁性塗膜の酸化安定性(ΔBm)は、397.9kA/m(5kOe)磁場配向の塗膜で3.5%以下が好ましい。
【0043】次に、本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の製造法について述べる。
【0044】本発明に係る紡錘状金属磁性粒子粉末は、第一工程において紡錘状ゲータイト粒子粉末を製造した後、第二工程において該紡錘状ゲータイト粒子粉末を被覆処理して出発粒子粉末とし、第三工程において該出発粒子粉末を加熱脱水して紡錘状ヘマタイト粒子粉末とし、次いで、第四工程において該紡錘状ヘマタイト粒子粉末を加熱還元することにより得ることができる。
【0045】第一工程の紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造法について述べる。
【0046】本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末は、紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させ、次いで、該種晶粒子表面にゲータイト層を成長させることによって得られる。
【0047】紡錘状ゲータイト種晶粒子は、炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に、該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させるにあたり、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液に、全熟成期間の50%以下の時点において全Feに対しCo換算で0.5以上5原子%未満のCo化合物を添加し、酸化反応を全Fe2+の30〜50%の範囲で行うことによって得られる。
【0048】Co化合物を全熟成期間の50%を超える時点において添加した場合には、目的とする粒子サイズ及び軸比の粒子が得られない。また、酸化反応が全Fe2+の30%未満及び50%を超える場合にも、目的とする粒子サイズ及び軸比の粒子が得られ難くなる。
【0049】熟成は、非酸化性雰囲気下の前記懸濁液を40〜80℃の温度範囲で行うのが好適である。40℃未満の場合には、軸比が小さく十分な熟成効果が得られ難く、80℃を越える場合には、マグネタイトが混在してくることがある。熟成時間は、通常、30〜300分間である。30分未満及び300分を超える場合には目的とする軸比のものが得られ難い。非酸化性雰囲気とするには、前記懸濁液の反応容器内に不活性ガス(窒素ガスなど)又は還元性ガス(水素ガスなど)を通気すればよい。
【0050】紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において、第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄水溶液、塩化第一鉄水溶液等を使用することができる。これらは単独又は必要に応じ2種以上混合して用いられる。
【0051】紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において使用される混合アルカリ水溶液は、炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液とを混合して得られる。この場合の混合比率(規定換算による%表示)として、水酸化アルカリ水溶液の割合は10〜40%(規定換算%)が好ましく、より好ましくは15〜35%(規定換算%)である。10%未満の場合には、目的とする軸比が得られないことがある。40%を超える場合には、粒状マグネタイトが混在してくることがある。
【0052】炭酸アルカリ水溶液としては、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液等が使用でき、前記水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用できる。これらはそれぞれ単独又は必要に応じ2種以上混合して用いられる。
【0053】混合アルカリ水溶液の使用量は、第一鉄塩水溶液中の全Feに対する当量比として1.3〜3.5、好ましくは1.5〜2.5である。1.3未満の場合には、マグネタイトが混在することがあり、3.5を超えると工業的に好ましくない。
【0054】第一鉄塩水溶液と混合アルカリ水溶液との混合後の第一鉄濃度は、0.1〜1.0mol/lが好ましく、より好ましくは0.2〜0.8mol/lである。0.1mol/l未満の場合には、収量が少なく、工業的でない。1.0mol/lを超える場合には、粒径分布が大きくなるため好ましくない。
【0055】紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応におけるpH値は、8.0〜11.5が好ましく、より好ましくは8.5〜11.0の範囲である。pHが8.0未満の場合には、ゲータイト粒子中に酸根が多量に含まれるようになり、洗浄によっても簡単に除去することができないので、金属磁性粒子粉末とする場合に、粒子同志の焼結を引き起こす場合があり、また11.5を越えるときには目的とする保磁力が得られにくい。
【0056】紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応は、酸素含有ガス(例えば空気)を液中に通気する酸化反応によって行う。
【0057】酸素含有ガスの空塔速度は、好ましくは2.3〜3.5cm/sである。2.3cm/s未満では酸化速度が遅いため、粒状マグネタイト粒子が混在し易く、且つ、目的の粒子サイズに制御することが困難になる。一方、3.5cm/sを超えると酸化速度が速すぎ、目的の粒子サイズに制御することが困難になる。なお、空塔速度とは、単位断面積(円柱反応塔の底断面積、巣板の孔径、孔数は考慮しない。)当たりの酸素含有ガスの通気量であって、単位はcm/secである。
【0058】紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応における反応温度は、ゲータイト粒子が生成する80℃以下で行えばよい。80℃を超える場合には、紡錘状ゲータイト粒子中にマグネタイトが混在することがある。好ましくは45〜55℃の範囲である。
【0059】紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において、添加するCo化合物としては、硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト等を使用することができる。これらは単独又は必要に応じ2種以上混合して用いられる。Co化合物は、酸化反応を行う前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む懸濁液に添加する。
【0060】Co化合物の添加量は、最終生成物である紡錘状ゲータイト粒子粉末中の全Feに対して0.5以上5原子%未満である。
【0061】ゲータイト層の成長反応におけるpH値は8.0〜11.5であり、好ましくは8.5〜11.0の範囲である。pHが8.0未満の場合には、ゲータイト粒子中に酸根が多量に含まれるようになり、洗浄によっても簡単に除去することができないので、金属磁性粒子粉末とする場合に、粒子同志の焼結を引き起こす場合があり、また11.5を超えるときには、目的とする粒度分布のものが得られない場合がある。
【0062】ゲータイト層の成長反応は、酸素含有ガス(例えば空気)を液中に通気する酸化反応によって行う。酸素含有ガスの通気の空塔速度は、前記種晶粒子の生成反応時より大きくすることが好ましい。大きくしない場合には、Al添加時に水懸濁液の粘度が上昇し、短軸方向の成長がより促進され、軸比が低下し、目的とする軸比のものが得られないことがある。但し、種晶粒子の生成反応時の空塔速度が2.0cm/s以上の場合はこの限りではない。
【0063】ゲータイト層の成長反応における反応温度は、通常、ゲータイト粒子が生成する80℃以下の温度で行えばよい。80℃を越える場合には、ゲータイト粒子中にマグネタイトが混在することがある。好ましくは45〜55℃の範囲である。
【0064】ゲータイト層の成長反応において、添加するAl化合物としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等の酸性塩、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸アンモニウム等のアルミン酸塩を使用することができる。これらは単独又は必要に応じ2種以上混合して用いられる。
【0065】Al化合物の添加は、酸素含有ガスの空塔速度を種晶粒子の生成反応時の空塔速度を好ましくは大きくして通気すると同時に行うことができる。Alの添加が長時間に渡る場合は、酸化反応を進行させない意味で、窒素含有ガスに切り替えて行うことができる。なお、酸素含有ガスを通気した状態でAl化合物を分割添加したり、連続的及び間欠的に添加した場合には本発明の十分な効果が得られない。
【0066】Al化合物の添加量は、最終生成物である紡錘状ゲータイト粒子中の全Feに対して5〜10原子%である。
【0067】得られる紡錘状ゲータイト粒子は、Coを全Feに対して0.5以上5原子%未満含有し、Alを全Feに対して5〜10原子%含有する。
【0068】Co含有量が0.5原子%未満では、金属磁性粒子粉末とした場合に、磁気特性の向上効果がなく、5原子%以上では粒子サイズの制御が困難となる。Al含有量が5原子%未満では焼結防止効果があるものの、粒子サイズが小さい場合には、保磁力が大きくなり過ぎるため適度な保磁力に制御することが困難となる。10原子%を越える場合には本発明では比較的低軸比であるため、保磁力の調整が難しくなる。
【0069】本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末は、平均長軸径が0.05〜0.18μmであることが好適である。また、サイズ分布(標準偏差/平均長軸径)が0.20以下であり、軸比(平均長軸径/平均短軸径)が4〜8であることが好適である。
【0070】平均長軸径が0.05μm未満のときには、金属磁性粒子粉末とした場合に、粒子径が小さくなり過ぎて飽和磁化、保磁力が低下し、更に塗料中での分散性が劣り、酸化安定性も劣化しやすくなる。一方、0.18μmを超える場合には目的の保磁力が得られ難く、粒子サイズが大きいために塗膜の表面平滑性が低下し、それに起因して出力も向上し難くなる。
【0071】サイズ分布は小さければ小さい程良く、下限は特に限定されないが、工業的製造の観点からは0.10程度が適当である。一方、0.20を超えるときには、金属磁性粒子粉末とした場合に、酸化安定性が劣化し高密度記録化も困難となる。また軸比が4未満では目的とする保磁力が得られず、一方、8以上では保磁力が高くなり過ぎるか、あるいは、酸化安定性が劣化する。
【0072】また、本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末のBET比表面積は100〜200m/gであることが好適である。BET比表面積が100m/g未満の場合には粒子サイズが相対的に大きく、金属磁性粒子粉末とした場合に、目的とする保磁力が得られず、一方、200m/gを超える場合には必要以上に保磁力が高くなり、酸化安定性が劣化する。
【0073】本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末の結晶子サイズD020は100〜200Å、D110は60〜130Åがそれぞれ好適である。また、結晶子サイズ比D020/D110は1.8未満が好適である。D020/D110が1.8以上の場合は、目的とする粒子サイズの金属磁性粒子粉末は得られるが、目的とする保磁力のものが得られにくい傾向がある。
【0074】本発明における紡錘状ゲータイト粒子は、種晶部分とCo及びAlを含有するゲータイト層とから形成されており、該種晶部分及び当該ゲータイト層にCoが存在し、Alは当該ゲータイト層にのみ存在する。
【0075】前記種晶部分とは、添加した第一鉄塩の内、Al化合物を添加するまでに酸化されて形成されるゲータイト種晶粒子部分をいう。具体的には、Fe2+の酸化率により決まるFeの重量比率の部分であって、好ましくは、ゲータイト粒子の内部中心から30〜50重量%の部分である。
【0076】第二工程の紡錘状ゲータイト粒子の被覆処理について述べる。
【0077】本発明においては、希土類元素化合物とCoとを前記紡錘状ゲータイト粒子粉末の粒子表面に被覆処理して出発粒子粉末を得る。
【0078】希土類元素化合物としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム等の1種又は2種以上の化合物が好適であり、前記希土類元素の塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が使用できる。その処理方法は乾式又は湿式のいずれでもよく、好ましくは湿式での被覆処理である。
【0079】希土類化合物の添加量は、全Feに対して1.5〜5原子%である。
【0080】被覆処理に用いるCo量は、第一工程で製造した紡錘状ゲータイト粒子に含まれている全Co量に対して20〜200%である。200%を超える場合には、Co量が多すぎるため、均一に被覆することが難しく、単独でコバルト化合物が析出しやすい。また、金属磁性粒子粉末とした場合に磁気特性の低下を引き起こしやすい。一方、20%未満の場合には、Co被覆量が少なすぎるため、本発明の効果を得ることが困難となる。
【0081】希土類元素化合物に加えてCoを同時に被覆することにより、粒子及び粒子相互間の焼結が防止され、紡錘状ゲータイト粒子粉末の粒子形状及び軸比をより一層保持継承した紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得ることができ、これによって、前記形状等を保持継承し、個々に独立した鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末が得られやすくなる。
【0082】出発粒子は、ゲータイト種晶粒子、ゲータイト層及び最外層とから構成されており、Coはゲータイト種晶粒子、ゲータイト層及び最外層に存在し、Alはゲータイト層にのみ存在し、且つ、希土類元素は最外層にのみ存在する。
【0083】Coが最外層にも存在するため、少ないCo含有量でも酸化安定性に優れた金属磁性粒子粉末を得ることが可能となる。
【0084】第三工程の出発粒子粉末の加熱脱水処理について述べる。
【0085】紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、第二工程で得られた出発粒子粉末を非還元性雰囲気中、650〜800℃で加熱処理を行って得ることができる。
【0086】前記出発粒子粉末を非還元性雰囲気下において650〜800℃の範囲内で加熱処理を行うに当たって、紡錘状ヘマタイト粒子粉末の結晶子サイズD104がD104/D110(ゲータイト)として1.0〜1.3の範囲になるように加熱処理することが好ましい。
【0087】加熱処理温度が650℃未満では前記比率が1.0未満となりやすく、一方、800℃を超えると前記比率が1.3を超えやすい。なお、D104/D110(ゲータイト)が1.0未満のときは、金属磁性粒子粉末とした場合に、粒度分布が広がり塗膜のSFDが劣化する。D104/D110(ゲータイト)が1.3を超えるときはヘマタイト粒子での形状破壊及び焼結が生じるため、金属磁性粒子粉末とした場合もそれを継承し粒度分布が広く、焼結体も存在し、磁性塗膜とした場合は角形比、SFDともに劣化する。
【0088】なお、NaSO等の不純物塩の除去のために加熱処理後のヘマタイト粒子粉末を洗浄してもよい。この場合において、被覆された焼結防止剤が溶出しない条件で洗浄を行うことにより、不要な不純物の除去を行うことが好ましい。具体的には、陽イオン性不純物の除去にはpHを上げて行い、陰イオン性不純物の除去には、pHを下げることでより効率的に洗浄することができる。
【0089】得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、Co含有量が粒子全体で全Feに対して5以上15原子%未満であり、Alの含有量が全Feに対して5〜10原子%であり、また、希土類元素の含有量が全Feに対して1.5〜5原子%である。Co含有量及びAl含有量を特定した理由は、前記ゲータイト粒子の組成を特定した理由と同様である。希土類元素が1.5原子%未満のときには、焼結防止効果が十分でなく、また金属磁性粒子粉末とした場合に、サイズ分布が劣化し、磁性塗膜のSFDも悪化する。5原子%を越える場合には経済的に不利となる。
【0090】本発明における紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.05〜0.17μmであり、サイズ分布(標準偏差/平均長軸径)が0.22以下であり、軸比が4〜9であることが好適である。
【0091】平均長軸径が0.05μm未満では金属磁性粒子粉末とした場合に、粒子径が小さくなり過ぎて飽和磁化、保磁力が低下し、更に塗料中での分散性が劣り、酸化安定性も劣化しやすくなる。一方、0.17μmを超えると本発明の軸比の範囲では、目的とする保磁力が得られ難く、粒子サイズが大きいために磁性塗膜の表面平滑性が低下し、それに起因して出力も向上し難くなる。
【0092】またサイズ分布は小さければ小さい程良く、下限は特に限定されないが、工業的製造の観点からは0.10程度が適当である。一方、0.22を超えると金属磁性粒子粉末とした場合に、酸化安定性が劣化し、高密度記録化も困難となる。また、軸比が4未満の場合には、目的とする保磁力が得られない。一方、9を超える場合には保磁力が高くなり過ぎるか、酸化安定性が劣化する。
【0093】本発明における紡錘状ヘマタイト粒子粉末のBET比表面積は35m/g以上60m/g未満が好ましい。BET比表面積が35m/g未満の場合には本発明における粒子サイズでは加熱処理工程での焼結が既に生じておいてサイズ分布が悪化し、金属磁性粒子粉末とする場合、サイズ分布が悪化し、磁性塗膜のSFDも劣化する。一方、60m/g以上の場合、加熱還元工程での焼結防止が不十分となり、金属磁性粒子粉末のサイズ分布が悪化し、磁性塗膜のSFDも劣化する。
【0094】本発明における紡錘状ヘマタイト粒子粉末の結晶子サイズD104は100〜160Åが好ましく、D110は200〜300Åが好ましい。結晶子サイズ比D110/D104は1.8〜2.2が好ましい。D110/D104が1.8未満のときは脱水加熱時の粒子成長が過度に起こり、短軸方向の成長と合わせて、粒度分布が悪化し、金属磁性粒子粉末とした場合に、保磁力が低く、分散性も劣化する。D110/D104が2.2を超えるときは、脱水加熱による結晶成長が不十分で、加熱還元時の形状保持効果が期待できず、保磁力が低下し、更に粒度分布も悪化する。
【0095】本発明における紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、前記出発粒子の層構造及び組成分布をほぼ保持継承してヘマタイトに変態しており、ヘマタイト種晶粒子、ヘマタイト層及び最外層から形成されている。ヘマタイト種晶粒子、ヘマタイト層及び最外層にCoが存在し、ヘマタイト層にのみAlが存在し、且つ、最外層にのみ希土類元素が存在する。
【0096】前記ヘマタイト種晶粒子とは、前記ゲータイト種晶粒子がそのまま変化したものであり、好ましくは、ヘマタイト粒子の中心部からFeの重量比率が30〜50重量%である。また、前記ヘマタイト層とは、前記ゲータイト層がそのまま変化したものであり、好ましくは、粒子表面の希土類元素からなる最外層を除いた場合の表面からFeの重量比率が50〜70重量%の部分である。
【0097】第四工程においては、前記紡錘状ヘマタイト粒子粉末を還元装置内に導入して固定層を形成し、加熱還元して鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を得る。
【0098】本発明において、紡錘状ヘマタイト粒子の固定層を形成するのに当って、前記ヘマタイト粒子粉末を常法により造粒して平均径1〜5mmの顆粒状物にして用いることが好ましい。
【0099】本発明における固定層を形成させた還元装置としては、ベルトまたはトレー上に固定層を形成して該ベルト又はトレーを移送させながら還元する移動式還元装置(連続式)が好ましい。
【0100】本発明における紡錘状ヘマタイト粒子粉末からなる造粒物の層高は3〜15cmが好ましく、より好ましくは4〜14cmである。15cmを超える場合には、固定層の層下部の急激な還元による水蒸気分圧の増大によって、固定層上部の保磁力が低下する等の問題が起こり、全体として特性が劣化する。3cm未満の場合は、ガス空塔速度にも依存するが造粒物が飛散する場合があり好ましくない。
【0101】本発明において、400〜700℃の還元温度に昇温する間の雰囲気は還元性ガス雰囲気である。還元性ガスとしては水素が好適である。還元性ガス以外の雰囲気、特に窒素等の不活性ガス雰囲気では、昇温後の還元工程で還元性ガスに切り換えた場合、急激に還元が生じ均一な粒子成長が起こりにくいため高い保磁力が得られない。
【0102】本発明における昇温工程の還元性ガスの空塔速度は40〜150cm/s、好ましくは40〜140cm/sである。空塔速度が40cm/s未満の場合、ヘマタイト粒子の還元で発生した水蒸気が系外に運ばれる速度が非常に遅くなるため、層上部の保磁力、塗膜のSFDが低下し、全体として高い保磁力が得られない。150cm/sを超える場合、還元温度が高温を要したり、造粒物が飛散し破壊されるなどの問題が起こり易く好ましくない。
【0103】本発明における昇温速度は10〜80℃/min、好ましくは20〜70℃/minである。昇温速度が10℃/min未満の場合、低温領域で層下部から非常にゆっくり還元が進行するため、得られる金属磁性粒子の結晶子サイズの非常に小さいものが生成しやすく、且つ発生した水蒸気が系外に運ばれる速度も非常に遅くなり、層上部の保磁力、塗膜のSFDが低下し、下層の結晶性が悪化するのも合わせて全体として高い保磁力が得られない。また、80℃/minを超える場合は、窒素中で昇温した時の挙動に近くなり、急激に還元が生じ、水蒸気分圧の比較的高い条件でのα−Feへ移行が起こるため、得られる金属磁性粒子の結晶子サイズも大きく、保磁力が低下し、塗膜のSFDも劣化したものとなる。
【0104】本発明における加熱還元における雰囲気は還元性ガスであり、還元性ガスとしては水素が好適である。
【0105】加熱還元の温度範囲は400〜700℃が好ましい。400℃未満である場合には、還元反応の進行が遅く、長時間を要する。また、700℃を越える場合には、還元反応が急激に進行して粒子粉末の変形と、粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こす場合がある。
【0106】加熱還元後の鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、周知の方法、例えば、トルエン等の有機溶剤中に浸漬する方法、還元後の鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の雰囲気を一旦不活性ガスに置換した後に、不活性ガス中の酸素含有量を徐々に増加させながら最終的に空気とする方法、酸素と水蒸気を混合したガスを使用して徐々に酸化する方法等により空気中に取り出すことができる。
【0107】
【発明の実施の形態】本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0108】各粒子粉末の平均長軸径、平均短軸径及び軸比は、いずれも電子顕微鏡写真(30000倍)から測定した数値の平均値で示した。また、標準偏差も同時に求め、その標準偏差を平均長軸径で除した値をサイズ分布として示した。
【0109】各粒子粉末のCo量、Al量、希土類元素量は、「誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS4000」(セイコー電子工業(株)製)を使用して、測定した。
【0110】各粒子粉末の比表面積は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム(株)製)を使用して、BET法により測定した値で示した。
【0111】各粒子粉末の結晶子サイズは、X線回折法で測定される結晶粒子の大きさを、各粒子の結晶面のそれぞれに垂直な方向における結晶粒子の厚さを表したものであり、各結晶面についての回折ピーク曲線から、下記のシェラーの式を用いて計算した値で示したものである。
【0112】結晶子サイズ=Kλ/βcosθ但し、β=装置に起因する機械幅を補正した真の回折ピークの半値幅(ラジアン単位)
K=シェラー定数(=0.9)
λ=X線の波長(Cu Kα線 0.1542nm)
θ=回折角(各結晶面の回折ピークに対応)
【0113】金属磁性粒子粉末の磁気特性は、「振動試料磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を使用し、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測定した。
【0114】金属磁性粒子粉末の発火温度は、「TG/DTA測定装置SSC5100TG/DTA22」(セイコー電子工業(株)製)を用いて測定した。
【0115】磁性塗膜は下記成分を100ccのポリ容器に下記の割合で入れた後、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で8時間混合分散を行うことにより調製した磁性塗料を厚さ25μmのポリエチレンテレフタートフィルム上にアプリケータを用いて50μmの厚さに塗布し、次いで、397.9kA/m(5kOe)で磁場中で乾燥させることにより得た。得られた磁性塗膜について磁気特性を測定した。
【0116】
3mmφスチールボール 800重量部、 鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末 100重量部、 スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 20重量部、 シクロヘキサノン 83.3重量部、 メチルエチルケトン 83.3重量部、 トルエン 83.3重量部。
【0117】金属磁性粒子粉末の飽和磁化値σsの酸化安定性Δσs及び磁性塗膜の飽和磁束密度Bmの酸化安定性ΔBmは、温度60℃、相対湿度90%の恒温槽に粒子粉末又は磁性塗膜を一週間静置する促進経時試験の後、粒子粉末の飽和磁化値及び磁性塗膜の飽和磁束密度をそれぞれ測定し、試験開始前のσs及びBmと促進経時試験一週間後のσs’及びBm’との差(絶対値)を試験開始前のσs及びBmで除した値をΔσs、ΔBmとしてそれぞれ算出した。
【0118】<第一工程:紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造>炭酸ナトリウム25molと水酸化ナトリウム水溶液を19mol(混合アルカリに対し水酸化ナトリウムは規定換算で27.5mol%に相当する。)とを含む混合アルカリ水溶液30Lを気泡塔の中に投入し、窒素ガスを空塔速度2.20cm/sで通気しながら47℃に調整する。次いでFe2+として20molを含む硫酸第一鉄水溶液20L(硫酸第一鉄に対し混合アルカリ水溶液は規定換算で1.725当量に相当する。)を気泡塔中に投入して45分間熟成した後、Co2+0.96molを含む硫酸コバルト水溶液4L(全Feに対しCo換算で4.8原子%に相当する。)を添加し、さらに4時間15分間熟成(Co添加時期の全熟成時間に対する比率15%)した後、空気を空塔速度2.50cm/sで通気してFe2+の酸化率40%まで酸化反応を行ってゲータイト種晶粒子を生成させた。
【0119】次いで、Al3+1.6molを含む硫酸アルミニウム水溶液1L(全Feに対しAl換算で8.0原子%に相当する。)を3ml/sec以下の速度で添加して酸化反応を行った後、フィルタープレスで電気伝導度60μS/cmまで水洗を行ってプレスケーキとした。
【0120】前記ケーキの一部を常法により乾燥、粉砕を行って紡錘状ゲータイト粒子粉末を得た。得られたゲータイト粒子粉末は各粒子が紡錘状を呈しており、平均長軸径0.153μm、σ(標準偏差)0.0300μm、サイズ分布(標準偏差/長軸径)0.196、平均短軸径0.0244μm、軸比6.3、BET比表面積169.3m/gで樹枝状粒子が全く存在していないものであり、結晶子サイズD020は194Å、D110は109Åであり、その比率D020/D10は1.78であった。
【0121】また、紡錘状ゲータイト粒子粉末のCo含有量は全Feに対して4.8原子%、Al含有量は全Feに対して8.0原子%であった。また、Alはゲータイト層部分にのみ存在していた。
【0122】<第二工程:出発粒子粉末の製造>次いで、得られた紡錘状ゲータイト粒子1000g(Feとして9.22mol)を含有するプレスケーキを40Lの水中に十分に分散させた後、121.2gの硝酸ネオジム6水塩を含む硝酸ネオジム水溶液2L(前記ゲータイト粒子中の全Feに対しNdとして3.0原子%に相当する。)、51.8gの硫酸コバルト7水塩を含む硫酸コバルト水溶液2L(全Feに対しCo換算で2.0原子%に相当し、紡錘状ゲータイト粒子中のCo量に対して41.7%に相当する。)を添加して攪拌し、濃度25.0重量%の炭酸ナトリウム水溶液を沈澱剤として添加してpH9.5に調整した後、フィルタープレスで水洗し、得られたプレスケーキを圧縮成型機を用いて孔径4mmの成型板で押し出し成型して120℃で乾燥して出発粒子粉末の成型物を得た。
【0123】該出発粒子粉末の成型物を粉砕して得られた出発粒子中のCoの含有量は全Feに対して6.8原子%、Alの含有量は全Feに対して8.0原子%、Ndの含有量は全Feに対して3.0原子%であった。また、Alはゲータイト中間層にのみ存在し、Ndは最外層にのみ存在していた。
【0124】<第三工程:紡錘状ヘマタイト粒子粉末の製造>前記出発粒子粉末を、紡錘状ゲータイト粒子のD110の大きさに対して、得られる紡錘状ヘマタイト粒子のD104がD104/D110(ゲータイト粒子)とした場合、1.0〜1.3の範囲になるように、空気中720℃で加熱脱水して紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0125】得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、各粒子が紡錘状を呈しており、平均長軸径0.139μm、σ(標準偏差)0.0301μm、サイズ分布(標準偏差/平均長軸径)0.217、平均短軸径0.0198μm、軸比7.0、BET比表面積45.1m/gであり、結晶子サイズD104は122Åであり、ゲータイト粒子のD110に対する比率はD104/D110(ゲータイト粒子)として1.12であり、D110は266Åであり、その比率D110/D10は2.18であった。また、該粒子中のCoの含有量は全Feに対して6.8原子%、Alの含有量は全Feに対して8.0原子%、Ndの含有量は全Feに対して3.0原子%であった。
【0126】<第四工程:鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の製造>次いで、得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末を層高7cmになるように還元装置内に固定層を形成して、470℃でガス空塔速度70cm/sのHガスを通気し、20℃/minの昇温速度で還元温度470℃まで昇温し、引き続き加熱還元する。その後、窒素ガスに切り替えて70℃まで冷却し、次いで、水蒸気を通気しながら酸素分圧を徐々に増加させて空気と同じ比率として粒子表面に安定な酸化被膜を形成した。
【0127】得られた鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、平均長軸径が0.125μm、σ(標準偏差)が0.0288μm、サイズ分布(標準偏差/長軸径)が0.230、平均短軸径が0.0190μm、軸比が6.6、BET比表面積が42.7m/g、結晶子サイズが153Åの紡錘状粒子からなり、粒度が均斉で樹枝状粒子の少ないものであった。また、該粒子中のCoの含有量は全Feに対して6.8原子%、Alの含有量は全Feに対して8.0原子%、Ndの含有量は全Feに対して3.0原子%であった。また、この紡錘状金属磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力が136.9kA/m(1720Oe)であり、飽和磁化σsが126.4Am/kg(126.4emu/g)、角形比(σr/σs)が0.491、飽和磁化の酸化安定性Δσsが絶対値として3.3%(実測値−3.3%)であり、発火温度が150℃であった。
【0128】また、シート特性は、シートHcが136.4kA/m(1714Oe)、シート角形比(Br/Bm)が0.851、シートの配向性ORが3.20、シートSFDが0.490、ΔBmが2.7%(実測値−2.7%)であった。
【0129】なお、固定層の下層部(層高2cm以下の部分)及び上層部(5cm以上の部分)からそれぞれ一部を抜き出し、別に磁気特性及び結晶子サイズを測定したところ、下層部分から抜き出した紡錘状金属磁性粒子は、保磁力Hcが137.5kA/m(1728Oe)、飽和磁化σsが125.9Am/kg(125.9emu/g)、角形比(σr/σs)が0.492、X線粒径のD110が151Åであった。一方、上層部分から抜き出した紡錘状金属磁性粒子は、保磁力Hcが136.2kA/m(1711Oe)、飽和磁化σsが126.8Am/kg(126.8emu/g)、角形比(σr/σs)が0.490、X線粒径のD110が154Åであった。
【0130】
【作用】本発明において最も重要な点は、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の前駆体であるゲータイト粒子の最外層にもコバルトを存在させたことによって、得られる紡錘状金属磁性粒子粉末のCo含有量が少なく微粒子であるにもかかわらず、適度な保磁力を有すると共に、分散性及び酸化安定性が良好であって、しかも優れた保磁力分布を有する鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末が得られるという事実である。
【0131】本発明において、酸化安定性に優れた金属磁性粒子粉末が得られる理由は未だ明らかではないが、Coを特定範囲で被覆することによって、還元前の粒子表面付近のCo濃度が高くなるので、還元時の結晶子成長が促進され酸化安定性向上に有利に機能し、また、還元終了後も粒子表層のCo濃度が高いという構造はある程度保持されていると考えられ、より緻密な酸化被膜を形成しやすいものと本発明者は推定している。
【0132】そのため、Coを全て固溶(ゲータイト反応時にのみ添加)した場合と比較して同一Co量では酸化安定性が更に向上し、同等の酸化安定性を得る場合にはCo量を低減することが可能となり経済的に有利となる。しかも、そのCo量を低減した状態でも酸化安定性についてはより優れている。
【0133】更に、本発明においては、比表面積を小さくし、且つ、平均長軸径による関係式以下の値にすることによって、Co含有量を少なくしても、微粒子でありながら酸化安定性を低下させることなく、適度な保磁力を有し、分散性が良好な金属磁性粒子粉末を得ることができたものと考えている。
【0134】
【実施例】次に、実施例並びに比較例を示す。
【0135】実施例1〜4、比較例1〜4:<第一工程:ゲータイト粒子粉末の製造>ゲータイト種晶粒子生成反応の条件及び成長反応の条件を表1に示すように種々変化させた以外は、前出実施の形態と同様にして紡錘状ゲータイト粒子粉末を得た。得られたゲータイト粒子粉末の諸特性を表2に示す。なお、表1中のアルカリ比は(1/2水酸化アルカリ)/(全アルカリ)(但し、全アルカリ=1/2水酸化アルカリ+炭酸アルカリ)として算出し、また、当量比は(全アルカリ)/(Fe2+)(但し、全アルカリ=1/2水酸化アルカリ+炭酸アルカリ)として算出した。
【0136】
【表1】

【0137】
【表2】

【0138】<第二工程:出発粒子粉末の製造>前記第一工程で得られたゲータイト粒子粉末1〜5を用い、希土類元素の種類及び添加量、Coの添加量を種々変化させた以外は、前出実施の形態と同様にして出発粒子粉末を得た。このときの製造条件を表3に示す。
【0139】<第三工程:ヘマタイト粒子粉末の製造>前記第二工程で得られた出発原料粒子粉末1〜8を用い、加熱脱水温度、その後の加熱処理の温度を種々変化させた以外は、前出実施の形態と同様にしてヘマタイト粒子粉末を得た。このときの製造条件を表3に、得られたヘマタイト粒子粉末の諸特性を表4に示す。
【0140】
【表3】

【0141】
【表4】

【0142】<第四工程:紡錘状金属磁性粒子粉末の製造>前記第三工程で得られたヘマタイト粒子粉末1〜8を用いて、層高、昇温ガスの種類、還元ガス空塔速度、昇温速度、加熱還元温度を種々変化させた以外は前記発明の実施の形態と同様にして金属磁性粒子粉末を得た。このときの製造条件を表5に、得られた金属磁性粒子粉末の諸特性を表6及び表8に、固定層の層上部及び層下部からそれぞれ抜き出した金属磁性粒子粉末の諸特性を表7に、得られた金属磁性粒子粉末を用いた製造したシートの諸特性を表8に示した。
【0143】
【表5】

【0144】
【表6】

【0145】
【表7】

【0146】
【表8】

【0147】
【発明の効果】本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、微粒子、殊に平均長軸径が0.05〜0.15μmであるにもかかわらず、適度な保磁力及び優れた酸化安定性を有すると共に、分散性が良好であって、しかも優れた保磁力分布を有するので、磁気記録媒体用として好適であり、該金属磁性粒子粉末を用いた磁気記録媒体は、高画像画質、高出力特性及び記録の信頼性に優れている。
【出願人】 【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
【住所又は居所】広島県広島市中区舟入南4丁目1番2号
【出願日】 平成13年8月10日(2001.8.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−59707(P2003−59707A)
【公開日】 平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願番号】 特願2001−244233(P2001−244233)