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【発明の名称】 ポリマPTCシートおよびPTCサーミスタ並びにこれらの製造方法
【発明者】 【氏名】福井 禎明
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【氏名】寺門 誠之
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【氏名】山下 正三
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【要約】 【課題】ポリマPTCシートを成形すると同時に電極を接合する必要はなく、ポリマPTCシートを単独で成形可能で、後工程でポリマPTCシートが2層以上で電極が3層以上の多層積層構造でも容易に成形することができ、打ち抜きパターンを有する電極との位置精度の良い接合を可能とするポリマPTCシートを有するPTCサーミスタを提供する。

【解決手段】ポリマPTC材料8を溶融状態で混練し、前記ポリマPTC材料8をポリマPTCシート10として送り出す2本の熱ロール9a、9bと、この2本の熱ロール9a、9bから送り出されたポリマPTCシート10を引き出す引き出しロール13a、13bとを有し、前記2本の熱ロール9a、9bと引き出しロール13a、13bとの間において前記ポリマPTCシート10を急冷する急冷手段14を設け、前記ポリマPTCシート10のいずれかの面に接合される一対以上の電極とを備えたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 結晶性樹脂と導電性微粒子を必須の成分とし、所定のギャップを設けて平行に配置された2本の熱ロールを回転することにより混練された後に、所定の厚みのシート状に引き出される際に急速冷却処理することによって得たポリマPTCシート。
【請求項2】 請求項1に記載のポリマPTCシートの上面および下面にそれぞれ所定形状の電極を形成したPTCサーミスタ。
【請求項3】 PTCサーミスタのポリマPTCシートを電子架橋し、その後前記PTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却した後、さらに前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することにより得られる請求項2に記載のPTCサーミスタ。
【請求項4】 PTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却し、その後前記ポリマPTCシートを電子架橋し、その後再び前記ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却した後、さらに前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することにより得られる請求項2に記載のPTCサーミスタ。
【請求項5】 PTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却し、その後前記ポリマPTCシートを電子架橋し、その後再び前記ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却した後、前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することにより得られる請求項2に記載のPTCサーミスタ。
【請求項6】 PTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却した後、前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却し、その後前記ポリマPTCシートを電子架橋し、その後再び前記ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却し、さらに前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することにより得られる請求項2に記載のPTCサーミスタ。
【請求項7】 結晶性樹脂と導電性微粒子を必須の成分とするポリマPTC材料を所定のギャップを設けて平行に配置された2本の熱ロールを回転させることにより混練する工程と、前記2本の熱ロールを用いて所定厚さのシートを得る工程と、この所定厚さのシートを急速冷却処理する工程を必須の構成要素とするポリマPTCシートの製造方法。
【請求項8】 2本の熱ロールを用いて所定厚さのシートを得る工程における前記2本の熱ロール間のギャップを、前記2本の熱ロールで混練する工程における前記2本の熱ロール間のギャップより狭くした請求項7に記載のポリマPTCシートの製造方法。
【請求項9】 2本の熱ロールを用いて所定厚さのシートを得る工程における前記2本の熱ロール間の回転速度の比を、前記2本の熱ロールで混練する工程における前記2本の熱ロール間の回転速度の比より小さくした請求項7に記載のポリマPTCシートの製造方法。
【請求項10】 2本の熱ロールで混練する工程における前記2本の熱ロールの回転速度の内、一の熱ロールの回転速度が他の一の熱ロールの回転速度より速く、前記2本の熱ロールを用いて所定厚さのシートを得る工程においては前記一の熱ロールの回転速度が前記他の一の熱ロールの回転速度より遅くした請求項7に記載のポリマPTCシートの製造方法。
【請求項11】 請求項7に記載の製造方法によって得られたポリマPTCシートの上面および下面に電極を形成する工程を有するPTCサーミスタの製造方法。
【請求項12】 ポリマPTCシートの上面および下面に電極を形成する方法は、前記ポリマPTCシートの上面および下面をそれぞれ所定形状に形成された電極により挟み加熱しながらプレスする方法である請求項11に記載のPTCサーミスタの製造方法。
【請求項13】 請求項11に記載の製造方法の後に、ポリマPTCシートを電子架橋する工程を有するPTCサーミスタの製造方法。
【請求項14】 請求項11に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタを前記ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートを電子架橋する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法。
【請求項15】 請求項11に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートを電子架橋する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法。
【請求項16】 請求項11に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートの融点以下の温度に加熱し冷却する工程と、その後前記ポリマPTCシートを電子架橋する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法。
【請求項17】 請求項13に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法。
【請求項18】 請求項14に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートの融点以下の温度に加熱し冷却する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法。
【請求項19】 請求項15に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートの融点以下の温度に加熱し冷却する工程とを有するるPTCサーミスタの製造方法。
【請求項20】 請求項16に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートの融点以下の温度に加熱し冷却する工程とを有すPTCサーミスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリマPTCシートおよびPTCサーミスタ並びにこれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリマPTCシートを用いたPTCサーミスタは過電流保護素子として使用でき、電気回路に過電流が流れるとPTC特性を有する導電性ポリマが自己発熱し、導電性ポリマが熱膨張して高抵抗に変化し電流を安全な微小領域まで減衰させるものである。
【0003】以下、従来のPTCサーミスタについて説明する。
【0004】従来のPTCサーミスタとしては、特開昭61−202210号公報に示されているように、ポリマPTC材料を金型より押出した直後に押出温度よりさらに高い温度に加熱し、これと電極材料を加圧接合することにより金属箔とポリマPTC材料を積層するPTCサーミスタの製造方法が開示されている。図3は従来のPTCサーミスタの製造方法を示す図である。
【0005】図3において、1は押出機で、この押出機1内に投入された結晶性樹脂と導電性微粒子からなるポリマPTC材料は、この押出機1内で可塑化されてダイス2に入り、所望の形状に成形されて押し出される。押し出されたポリマPTC材料は加熱用ヒータ3によってさらに加温された後、圧着ロール4a、4bによって一対の金属箔電極5a、5bが接合されると同時に所望の厚みのシートに加工される。金属箔電極5a、5bを接合されたポリマPTC材料は引き取りロール6a、6bによって引き取られ、長尺の積層体7が形成される。これを必要な寸法に分割することによってPTCサーミスタが製造される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この上記した従来のPTCサーミスタは、圧着ロール4a、4bによって所望の厚さのポリマPTCシートが形成されると同時に金属箔電極5a、5bによって補強されることに加工上の特長がある。結晶性樹脂と導電性微粒子を主成分とするポリマPTCシートは溶融状態では極めて強度が弱く、この金属箔電極5a、5bによる補強がなければ、引き取りロール6a、6bによる引き取り張力のわずかな変動によって、厚みの変動が避けられない。また、ポリマPTCシート内の冷却速度にわずかな差が生じても、熱収縮寸法が場所によって異なるために、平面形状が崩れ凹凸が発生する。ところが、金属箔電極5a、5bが接合された後であれば、張力が多少変化したり、冷却速度が多少ばらついても、金属箔電極5a、5bによって保持されるので、ポリマPTCシートの厚みが変動したり、凹凸が発生することはない。この点において、上記した従来のPTCサーミスタの製造方法は優れている。
【0007】しかしながら、上記した従来のPTCサーミスタは、一対の金属箔電極5a、5bに後加工のための打ち抜きパターンを形成するのは、ポリマPTCシートと接合した後でしかできないという制約があった。前工程で打ち抜きパターンを形成した一対の金属箔電極を用い、上記した従来の製造方法で接合すると、一対の金属箔電極の間で打ち抜きパターンの位置が正確に一致しない、あるいは、累積的に位置がズレていくなどの現象が生じ、精密なパターンを正確に位置合わせすることは困難であった。したがって、打ち抜きパターンを形成するのは接合した後に限定され、それも、金属箔電極のみに打ち抜きパターンを形成するためには、エッチングなどの特定の加工法に頼らざるを得ないという課題がある。
【0008】また、上記の打ち抜きパターン位置ズレの対策として、一対の金属箔電極を接合しないポリマPTCシートのみを製造し、後工程で打ち抜きパターンを形成した一対の金属箔電極を熱プレスなどで接合する方法が考えられる。しかし、従来のPTCサーミスタの製造方法では、一対の金属箔電極がない状態で加工すると、張力の変動と冷却速度の差がポリマPTCシートに直接作用することによって、厚みが不均一で凹凸のあるポリマPTCシートしか得られない。
【0009】この原因を詳述すると、溶融状態のポリマPTCシートが冷却する過程で非結晶状態から結晶状態に変化する時の熱収縮が大きいことと、冷却が一様に進行しないことが重なるためにシート内で収縮部分と非収縮部分が同時に発生することにある。金属箔電極が接合されていればその収縮による変位を金属箔電極が抑制するし、金属箔電極の剛性も大きいのでシートは変形しない。しかし、ポリマPTCシート単独では、収縮による変位を妨げることはできず、剛性も小さいためにシート内で様々な形状の凹凸が発生することを避けられない。この凹凸は冷却してもそのまま残り、凹凸だけでなく厚みや比抵抗値も不均一なシートとなる。このように、結晶性樹脂と導電性微粒子を必須の成分とするポリマPTCシートを凹凸なく作製することは容易でなく、後工程で一対の金属箔電極と接合しても厚みが不均一であるばかりか、凹凸のために接合加工も困難であるという課題がある。
【0010】さらに、上記した従来のPTCサーミスタの製造方法は、ポリマPTCシートを押し出すと同時に一対の金属箔電極で被覆するように接合するものであり、ポリマPTCシートが1層のみで形成される単層構造のPTCサーミスタであれば製造は比較的容易である。
【0011】しかし、より低い抵抗値を得るために2層以上のポリマPTCシートと3層以上の電極を交互に接合し、多層積層構造のPTCサーミスタを製造することは以下の理由により困難を伴うものであった。多層積層構造のPTCサーミスタを製造するには、2台以上の押出機からポリマPTCシートを2層以上押し出し、2層以上のポリマPTCシートと3層以上の金属箔電極が交互に重なるように導き、圧着ロールで金属箔電極を接合するとともに所望の厚みのポリマPTCシートを加工する方法が考えられる。
【0012】しかし、2層以上のポリマPTCシートの厚みを同時に圧着する方法では、総厚みは制御できるが各々のポリマPTCシートの厚みを個々に制御することは困難であり、厚み変動に起因する抵抗特性の変動が避けられない。層数が増えるにしたがってこの傾向は強まり、ポリマPTCシートが3層以上の場合各々のシート厚みは益々不確定となる。これに、層数が1層増える毎に加工設備が指数関数的に複雑なものになることが加わるので、従来のPTCサーミスタの製造方法では、多層積層構造のPTCサーミスタを形成できないという課題がある。
【0013】本発明は上記従来の課題を解決するもので、シート状に引き出されると同時に金属箔電極を接合しなくても、厚みが均一で凹凸のない平坦なポリマPTCシートを作製でき、従って、後工程で打ち抜きパターンを形成した金属箔電極を熱プレス等の方法で接合することによってPTCサーミスタが製造でき、また、ポリマPTCシートが2層以上で金属箔電極が3層以上の多層積層体であっても熱プレス等の方法で接合することによってPTCサーミスタが製造できるポリマPTCシートおよびPTCサーミスタを提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明のポリマPTCシートは、結晶性樹脂と導電性微粒子を必須の成分とし、所定のギャップを設けて平行に配置された2本の熱ロールを回転することにより混練された後に、所定の厚みのシート状に引き出される際に急速冷却処理することによって得られるものである。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、結晶性樹脂と導電性微粒子を必須の成分とし、所定のギャップを設けて平行に配置された2本の熱ロールを回転することにより混練された後、所定の厚みのシート状に引き出される際に急速冷却処理することによって得たポリマPTCシートであり、急速冷却処理がなされることにより、2本の熱ロールによる混練で半溶融状態にあるポリマPTCシートの少なくとも表面が瞬時に融点以下となり固まるため、ポリマPTCシートは内部の冷却に伴う張力の変動および熱収縮に対して形状維持に必要な強度を保持することができるという作用を奏し、これにより、従来のように金属箔で接合する必要はなく、単体状態で厚みが均一で凹凸のないポリマPTCシートを得ることができる。また、このポリマPTCシートを用いれば、簡単な構成の装置で、複数枚ポリマPTCを重ね合わせた積層型PTCサーミスタを得ることができる。
【0016】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポリマPTCシートの上面および下面にそれぞれ所定形状の電極を形成したものであり、これにより、請求項1に記載のポリマPTCシートは厚みが均一で凹凸がなく平滑であるので、電極との密着性が良好となり、抵抗値の低いPTCサーミスタを得ることができる。
【0017】請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のPTCサーミスタのポリマPTCシートを電子架橋し、その後前記PTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却した後、さらに前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することにより得られるPTCサーミスタであり、これにより、低抵抗で経時変化が少なく抵抗値のバラツキも少ないPTCサーミスタを得ることができる。
【0018】これは下記の理由によるものと考えられる。まず、請求項2に記載のPTCサーミスタが有するポリマPTCシートと電極との密着性が良いことに起因して抵抗値が低くなる。また、電子架橋により導電性微粒子の配列が固定され、熱によりポリマPTCシートが膨張、収縮を繰り返してもこの配列を維持することができ、経時変化が少なくなる。そして、電子架橋後にポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却することにより、電子架橋によりポリマPTCシート内に生じた残留応力を低減できるので、ポリマPTCシートの抵抗値のバラツキを低減できる。さらに、ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することにより抵抗値が低くなる。これは、結晶性樹脂の結晶成長を促すので、導電性微粒子が結晶化部分から排除され、非結晶部分に集結するためと考えられる。
【0019】請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却し、その後前記ポリマPTCシートを電子架橋し、その後再び前記ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却した後、さらに前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することにより得られるPTCサーミスタであり、これにより、低抵抗で経時変化が少なく抵抗値のバラツキも少ないPTCサーミスタを得ることができる。
【0020】これは下記の理由によるものと考えられる。まず、請求項2に記載のPTCサーミスタが有するポリマPTCシートと電極との密着性が良いことに起因して抵抗値が低くなる。さらに、ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱することにより、急速冷却による残留応力の低減を図ることができ、抵抗値のバラツキを低減することができる。そして、電子架橋以降の工程を行うことによる請求項3に記載の発明と同様の理由によるものと考えられる。
【0021】尚、請求項4に記載のPTCサーミスタは、急速冷却処理により生じた残留応力の低減も行うので、請求項3に記載のPTCサーミスタより抵抗値のバラツキは低減されたものとなる。
【0022】請求項5に記載の発明は、請求項2に記載のPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却し、その後前記ポリマPTCシートを電子架橋し、その後再び前記ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却した後、前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することにより得られるPTCサーミスタであり、これにより、低抵抗で経時変化が少なく抵抗値のバラツキも少ないPTCサーミスタを得ることができる。
【0023】これは下記の理由によるものと考えられる。まず、請求項2に記載のPTCサーミスタが有するポリマPTCシートと電極との密着性が良いことに起因して抵抗値が低くなる。さらに、ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱することにより抵抗値が低くなる。これは、ポリマPTCシートが混練から引き出される際に急速冷却されることによりポリマPTCシートの結晶性樹脂が微結晶化されるが、上記製造方法によりこの結晶性樹脂の結晶成長を促すので導電性微粒子が結晶化部分から排除され、非結晶部分に集結するためと思われる。そして、電子架橋以降の工程を行うことにより請求項3と同様の理由によるものと考えられる。
【0024】請求項6に記載の発明は、請求項2に記載のPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却した後、前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却し、その後前記ポリマPTCシートを電子架橋し、その後再び前記ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却し、さらに前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することにより得られるPTCサーミスタであり、これにより、低抵抗で経時変化が少なく抵抗値のバラツキも少ないPTCサーミスタを得ることができる。
【0025】これは下記の理由によるものと考えられる。まず、請求項2に記載のPTCサーミスタが有するポリマPTCシートと電極との密着性が良いことに起因して抵抗値が低くなる。そして、ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱することにより、急速冷却による残留応力の低減を図ることができ、抵抗値のバラツキを低減することができる。そして、請求項5の場合と同様に、ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱することにより抵抗値が低くなる。そして、電子架橋以降の工程を行うことによる請求項3と同様の理由によるものと考えられる。
【0026】請求項7に記載の発明は、結晶性樹脂と導電性微粒子を必須の成分とするポリマPTC材料を所定のギャップを設けて平行に配置された2本の熱ロールを回転させることにより混練する工程と、前記2本の熱ロールを用いて所定厚さのシートを得る工程と、この所定厚さのシートを急速冷却処理する工程を必須の構成要素とするポリマPTCシートの製造方法であり、急速冷却処理がなされることにより、2本の熱ロールによる混練で半溶融状態にあるポリマPTCシートの少なくとも表面が瞬時に融点以下となり固まるため、ポリマPTCシート内部の冷却に伴う張力の変動および熱収縮に対して形状維持に必要な強度を保持することができるポリマPTCシートを得ることができる。
【0027】これにより、従来のように金属箔で接合する必要はなく、単体状態で厚みが均一で凹凸のないポリマPTCシートを得ることができる。また、この製造方法によって得られたポリマPTCシートを用いれば、簡単な構成の装置で、複数枚ポリマPTCを重ね合わせた積層型PTCサーミスタを得ることができる。
【0028】請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明の2本の熱ロールを用いて所定厚さのシートを得る工程における前記2本の熱ロール間のギャップを、2本の熱ロールで混練する工程における前記2本の熱ロール間のギャップより狭くしたポリマPTCシートの製造方法であり、これにより、2本一組の熱ロールでポリマPTCペレットの混練と、ポリマPTCシートの成形が、それぞれに適切なギャップで行うことができるという効果を奏する。
【0029】請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の2本の熱ロールを用いて所定厚さのシートを得る工程における前記2本の熱ロール間の回転速度の比を、2本の熱ロールで混練する工程における前記2本の熱ロール間の回転速度の比より小さくしたポリマPTCシートの製造方法であり、2本の熱ロール間の回転速度の比が大きいとポリマPTCペレットを混練するには有利であるが、ポリマPTCシートの成形時にはせん断力が大きくなり好ましくないが、ポリマPTCペレットの混練時とポリマPTCシートの成形時とで2本の熱ロール間の回転速度を変えることで、それぞれ適切な状態で混練または成形を行うことができる。
【0030】請求項10に記載の発明は、2本の熱ロールで混練する工程における前記2本の熱ロールの回転速度の内、一の熱ロールの回転速度が他の一の熱ロールの回転速度より速く、前記2本の熱ロールを用いて所定厚さのシートを得る工程においては前記一の熱ロールの回転速度を前記他の一の熱ロールの回転速度より遅くした請求項7に記載のポリマPTCシートの製造方法であり、2本の熱ロールの内、一方の熱ロールが他方の熱ロールより回転速度が速い場合、回転速度の速い方の熱ロールに混練されたポリマPTC材料は巻き付く。ここで、ポリマPTCペレットの混練の工程では、より効率的にポリマPTCペレットを混練するために、熱ロールに巻き付いたポリマPTC材料をヘラ等を用いて混練する場合がある。一方、ポリマPTCシートの成形の工程においては、ポリマPTC材料が巻き付いた熱ロール近傍に、巻き付いたポリマPTC材料の厚みを管理するためのセンサや、この巻き付いたポリマPTC材料をポリマPTCシートとして熱ロールより引き剥がすためのスクレッパ等が設けられる。これらのポリマPTCシート成形時に用いる装置は、混練作業において障害となる。
【0031】しかし、本発明では、2本の熱ロールの回転速度の大小をポリマPTCペレットの混練時とポリマPTCシートの成形時とで逆転させることにより、それぞれの工程において、ポリマPTC材料が巻き付く熱ロールを異なるものとしており、ポリマPTCシートの成形時に用いる装置がポリマPTCペレットの混練作業の障害とならないという効果を奏する。
【0032】請求項11に記載の発明は、請求項7に記載の製造方法によって得られたポリマPTCシートの上面および下面に電極を形成する工程を有するPTCサーミスタの製造方法であり、この製造方法により請求項7に記載のポリマPTCシートの製造方法によって得られたポリマPTCシートは厚みが均一で凹凸がなく平滑であるので、電極との密着性がよくなり、これにより抵抗値の低いPTCサーミスタを得ることができる。
【0033】請求項12に記載の発明は、ポリマPTCシートの上面および下面に電極を形成する方法は、前記ポリマPTCシートの上面および下面をそれぞれ所定形状に形成された電極により挟み加熱しながらプレスする方法である請求項11に記載のPTCサーミスタの製造方法であり、これにより簡単な方法でPTCサーミスタを得ることができ、またこの製造方法によれば、ポリマPTCシートと電極を複数枚積層して得られる積層型のPTCサーミスタを簡単な方法で得ることができる。
【0034】請求項13に記載の発明は、請求項11に記載の製造方法の後に、前記ポリマPTCシートを電子架橋する工程を有するPTCサーミスタの製造方法であり、これにより、低抵抗で経時変化が少ないPTCサーミスタを得ることができる。
【0035】これは下記の理由によるものと考えられる。まず、請求項11に記載の製造方法によりポリマPTCシートと電極との密着性が良いことに起因して抵抗値が低くなる。また、電子架橋により導電性微粒子の配列が固定され、熱によりポリマPTCシートが膨張、収縮を繰り返してもこの配列を維持することができ、経時変化が少なくなる。
【0036】請求項14に記載の発明は、請求項11に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタを前記ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートを電子架橋する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法であり、これにより、低抵抗で経時変化が少なく抵抗値のバラツキも少ないPTCサーミスタを得ることができる。
【0037】これは下記の理由によるものと考えられる。まず、請求項11に記載の製造方法によりポリマPTCシートと電極との密着性が良いことに起因して抵抗値が低くなる。さらに、ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱することにより、急速冷却による残留応力の低減を図ることができ、抵抗値のバラツキを低減することができる。そして、電子架橋により導電性微粒子の配列が固定され、熱によりポリマPTCシートが膨張、収縮を繰り返してもこの配列を維持することができ、経時変化が少なくなる。
【0038】請求項15に記載の発明は、請求項11に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートを電子架橋する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法であり、これにより、低抵抗で経時変化が少なく抵抗値のバラツキも少ないPTCサーミスタを得ることができる。
【0039】これは下記の理由によるものと考えられる。まず、請求項11に記載の製造方法によりポリマPTCシートと電極との密着性が良いことに起因して抵抗値が低くなる。さらに、ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱することにより抵抗値が低くなる。これは、ポリマPTCシートが混練から引き出される際に急速冷却されることによりポリマPTCシートの結晶性樹脂が微結晶化されるが、上記製造方法によりこの結晶性樹脂の結晶成長を促すので、導電性微粒子が結晶化部分から排除され、非結晶部分に集結するためと思われる。そして、電子架橋により導電性微粒子の配列が固定され、熱によりポリマPTCシートが膨張、収縮を繰り返してもこの配列を維持することができ、経時変化が少なくなる。
【0040】請求項16に記載の発明は、請求項11に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートの融点以下の温度に加熱し冷却する工程と、その後前記ポリマPTCシートを電子架橋する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法であり、これにより、低抵抗で経時変化が少なく抵抗値のバラツキも少ないPTCサーミスタを得ることができる。
【0041】これは下記の理由によるものと考えられる。まず、請求項11に記載の製造方法によりポリマPTCシートと電極との密着性が良いことに起因して抵抗値が低くなる。次に、ポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱することにより、急速冷却による残留応力の低減を図ることができ、抵抗値のバラツキを低減することができる。さらに、請求項15と同様の理由でポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱することにより抵抗値が低くなる。そして、電子架橋により導電性微粒子の配列が固定され、熱によりポリマPTCシートが膨張、収縮を繰り返してもこの配列を維持することができ、経時変化が少なくなる。
【0042】請求項17に記載の発明は、請求項13に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法であり、これにより、低抵抗で経時変化が少なく抵抗値のバラツキも少ないPTCサーミスタを得ることができる。
【0043】これは下記の理由によるものと考えられる。請求項13に記載の製造方法により請求項13と同様の作用を奏し、電子架橋後にポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却することにより、電子架橋によりポリマPTCシート内に生じた残留応力を低減できるので、ポリマPTCシートの抵抗値バラツキを低減できる。さらに、ポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することにより抵抗値が低くなる。これは、結晶性樹脂の結晶成長を促すので、導電性微粒子が結晶化部分から排除され、非結晶部分に集結するためと思われる。
【0044】請求項18に記載の発明は、請求項14に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートの融点以下の温度に加熱し冷却する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法であり、これにより、低抵抗で経時変化が少なく抵抗値のバラツキも少ないPTCサーミスタを得ることができる。
【0045】これは、請求項14に記載の製造方法により請求項14と同様の作用を奏し、請求項17と同様に電子架橋後にポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却すること、及びポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することによるものと考えられる。
【0046】請求項19に記載の発明は、請求項15に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートの融点以下の温度に加熱し冷却する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法であり、これにより、低抵抗で経時変化が少なく抵抗値のバラツキも少ないPTCサーミスタを得ることができる。
【0047】これは、請求項15に記載の製造方法により請求項15と同様の作用を奏し、請求項17と同様に電子架橋後にポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却すること、及びポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することによるためと考えられる。
【0048】請求項20に記載の発明は、請求項16に記載の製造方法によって得られたPTCサーミスタをポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却する工程と、前記ポリマPTCシートの融点以下の温度に加熱し冷却する工程とを有するPTCサーミスタの製造方法であり、これは、請求項16に記載の製造方法により請求項16と同様の作用を奏し、請求項17と同様に電子架橋後にポリマPTCシートの融点以上の温度に加熱し冷却すること、及びポリマPTCシートの融点以下の所定の温度に加熱し冷却することによるためと考えられる。
【0049】以下、本発明の一実施の形態におけるPTCサーミスタの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0050】図1(a)〜(f)は本発明の一実施の形態におけるポリマPTCシートの製造方法を示す工程図である。
【0051】図1(a)において、8は結晶性樹脂として融点130℃の高密度ポリエチレンに導電性微粒子として平均粒径58nm、比表面積38m2/gのファーネス系カーボンブラックを56重量%を分散した材料を主成分とするポリマPTC材料であり、まず、このポリマPTC材料8を結晶性樹脂の融点を50K越える180℃に加熱した直径12インチの2本の熱ロール9a、9b間に投入する。2本の熱ロール9a、9bの一方の熱ロール9aの回転速度は毎分13回転であり、他方の熱ロール9bの回転速度である毎分10回転よりも30%速くなるように設定されている。投入したポリマPTC材料8の重量は1200gであり、2本の熱ロール9a、9b間のギャップは1.1mmに設定した。
【0052】次に、図1(b)に示すように、2本の熱ロール9a、9b間に投入したポリマPTC材料8は熱ロール9bの回転速度よりも30%速い回転速度を有する熱ロール9aに巻き付き、2本熱ロール9a、9b間のギャップ幅1.1mmに対応した厚みのポリマPTCシート10が成形される。この時、熱ロール9aに巻き付いたポリマPTCシート10からあふれたポリマPTC材料8は混練バンク11となって2本の熱ロール9a、9b間の上部に滞留する。この混練バンク11はポリマPTCシート10と順次入れ替わりながら全体が一様になるように混練される。この状態を12分間保持し、全体を均一な状態にした。
【0053】次に、図1(c)に示すように、熱ロール9aの回転速度よりも熱ロール9bの回転速度が速くなるように熱ロール9bの回転速度を毎分16回転にまで変速させる。これにより熱ロール9aに巻き付いていたポリマPTCシート10は熱ロール9bに巻き付かれるように転写する。この直後、2本の熱ロール9a、9bの回転速度をさらに低速にするとともにほぼ同速度とすることにより、混練速度とせん断速度を低下させ、分散が必要以上に進まないようにする。熱ロール9aは毎分3.0回転、9bは毎分3.2回転に設定し、この状態を1分間保った。次いで、この熱ロール9bに転写したポリマPTCシート10を所定の厚みにするために、ポリマPTCシート10の厚みを測定しながら2本の熱ロール9a、9bのギャップ幅を調節した。ギャップ幅を0.25mmに設定したときポリマPTCシート10の厚みは0.27mmであった。熱ロール9a、9bの回転数を低下させることによって、幅の振れと振動が低減するために厚み調節の精度が改善される。
【0054】次に、図1(d)に示すようにポリマPTCシート10が0.27mmの均一な厚みに調整できたとき、スクレッパ12をポリマPTCシート10が巻き付いた熱ロール9bに押し当てる。これにより熱ロール9bに巻き付いているポリマPTCシート10はスクレッパ12によって熱ロール9bから剥がされる。
【0055】次に、図1(e)に示すように剥がされたポリマPTCシート10は上下に位置する引き出しロール13a、13bの間に導かれ、そしてこの2本の引き出しロール13a、13b間をポリマPTCシート10が通過したとき、上の引き出しロール13aがポリマPTCシート10に接触するまで降下し、そしてこの2本の引き出しロール13a、13bは熱ロール9bから剥がされたポリマPTCシート10の進行方向に回転する。これにより、ポリマPTCシート10は熱ロール9bと、2本の引き出しロール13a、13b間で引っ張られ、ポリマPTCシート10の厚みはその引っ張り速度の比率に応じて薄くなる。
【0056】次に、図1(f)に示すように、2本の熱ロール9a、9bから引き出しロール13a、13bまでの間において、ポリマPTCシート10をノズル14からエアーを噴出させて急冷する。ノズル14から噴出されるエアーの冷却により、ポリマPTCシート10の少なくとも表面温度は急速に結晶性樹脂の融点以下まで降下し、強度を増すために内部が溶融状態であるにもかかわらず熱変形によるムラを抑制できる。この状態で薄く引き延ばし、シートの大半を融点以下に冷却してから引き出しロール13a、13bで引き取る。この方法で、厚みが均一で凹凸がなく、平坦な表面のポリマPTCシート10を得た。
【0057】なお、図1(f)において、引き出しロール13a、13bは内部に水を循環させることにより、表面温度が室温近辺になるようにして加工した。このために、引き取られた後のポリマPTCシート10は完全に冷却されているので、巻き取りあるいは打ち抜きなどの後工程での取り扱いが極めて容易であった。引き出しロール13a、13bの表面温度は少なくともポリマPTCシート10の融点以下が望ましく、一般には水冷もしくは空冷などの冷却手段によって、室温近辺に保持することが設備設定上は好ましいが、引き出しロール13a、13bに接触したときの熱収縮による歪みを減らすためには室温よりも高い軟化温度近辺に設定することも効果的である。
【0058】さらに、図1(f)においてノズル14から噴出されるエアーを停止させると、ポリマPTCシート10は引き出しロール13a、13bを通過した後、激しい凹凸が生じ、以降の工程で使用可能な状態のシートは得られなかった。エアーの流量を増すに伴い、表面の凹凸は急速に解消され細かい波紋も消滅する。エアーの流量は多いほど良好であり、圧縮空気や高速ターボファン等のように狭いノズルから噴出させることのできるものが望ましい。また、冷却風はシートの両面から噴出させることによりさらに良好な結果が得られる。
【0059】また、図1(f)において、熱ロール9bの周速度を毎分300cmに設定し、2本の引き出しロール13a、13bの引き出し速度を約1.5倍の毎分450cmとした結果、ポリマPTCシート10の厚みは0.2mmであった。引き出し速度を毎分180cmとすると、ポリマPTCシートの厚みは0.18mmが得られた。このように2本の熱ロール9a、9bのギャップ幅を必要以上に狭くすることなく、引き出しロール13a、13bの速度を調節することにより、0.2mm以下の薄いポリマPTCシート10でも高精度で、かつ、均一に形成することができる。さらに、シートの幅方向の寸法もロールの有効範囲内で任意に設定可能であり、幅寸法が600mmの2本の熱ロール9a、9bであれば幅寸法が450mmを越えるような大面積のシートを精度良く作製できる。
【0060】次に、図2(a)に示すように、厚さ0.2mmポリマPTCシート10a、10bと、金型プレスにより打ち抜きパターン15を形成された表面粗面化ニッケル箔電極16a、16b、16cを交互に配置し、140℃の真空熱プレスにより加熱加圧成形し、図2(b)に示す接合体17を作製した。その後、接合体17の結晶性樹脂の融点以上の温度である160℃で熱処理した。この熱処理は、急速冷却により生じた残留応力を除去又は低減することを目的としており、焼きならしに相当するものである。尚、160℃で加熱した後は空気中で冷却するのが好ましい。そして、電子線照射装置にて電子線を30メガラッド照射し、結晶性樹脂の架橋を行った。
【0061】次に図2(b)に示すように、ダイシングにより細長い一定間隔の貫通溝18を所望のPTCサーミスタの長手方向の幅を残して形成し、貫通溝18の周辺を除いて、スクリーン印刷を行い、保護コート19を形成し、保護コート19が形成されていない部分と貫通溝18の内壁にめっき層からなる側面電極を形成した。
【0062】その後、接合体17をダイシングにより個片分割し、結晶性樹脂の融点以上の温度である160℃で1時間の熱処理を行い、架橋前後で発生した熱応力と分子構造の変化による歪み成分を除去した。この熱処理も焼きならしに相当するものである。加熱後の冷却は空気中で行うことが好ましい。さらにその後、結晶性樹脂の融点以下の温度である100℃で熱処理を3回行い、図2(c)に示す4.5mm×3.2mmのサイズのPTCサーミスタ20aを作製した。この熱処理は、焼きなましに相当するものであり、加熱後の冷却は徐冷で行う。以下、この方法によって得られたPTCサーミスタをAタイプのPTCサーミスタと記す。
【0063】なお、上記図2(a)にて、接合体17を作製した後、結晶性樹脂の融点以上の熱処理を省略し架橋を行ったBタイプのPTCサーミスタ、接合体17を作製した後結晶性樹脂の融点以上の160℃で熱処理をした後に、結晶性樹脂の融点以下である100℃の熱処理を行いその後に架橋をしたCタイプのPTCサーミスタ、さらに、接合体17を作製した後、融点以下の熱処理のみを行いその後に架橋を行ったDタイプのPTCサーミスタを作製した。尚、いずれのPTCサーミスタもAタイプのPTCサーミスタと同様に架橋後にポリマPTCシートの融点以上の温度での熱処理を行った後、融点以下の温度で熱処理を行っている。
【0064】BタイプのPTCサーミスタはAタイプのPTCサーミスタに比べ、抵抗値は約7%低下したが抵抗値のバラツキが約30%増大するという結果が得られた。抵抗値が低下したのは、シート成形時の急速冷却処理により導電性微粒子が微細に凝集した低比抵抗値の状態が、融点以上の熱処理を省略したことによって残存しているためである。また、バラツキが増大したのは、架橋前のポリマPTCシート内に残留する熱応力が、結晶性樹脂の融点以上の熱処理を省略したために緩和されないためであり、それが架橋後にも残りシート内の抵抗値の平準化を妨げることによる。
【0065】また、CタイプのPTCサーミスタは、AタイプのPTCサーミスタに比べ、抵抗値が10%低下した。これは、融点以下の熱処理をすることにより結晶が成長し、導電性粒子が結晶部分から排除され、非結晶部分に集結するために抵抗値が低下し安定化するのであって、その状態が架橋後にも維持されることを示している。また、DタイプのPTCサーミスタはAタイプのPTCサーミスタに比べ、抵抗値が約15%低下し最も低い値が得られた。
【0066】これは、シート成形時の急速冷却装置により導電性微粒子が微細に凝集した低比抵抗値の状態が、融点以上の熱処理を省略したことによって残存している上に、融点以下の熱処理をすることにより結晶が成長し、導電性微粒子が結晶部分から排除され、非結晶部分に集結するために抵抗値がさらに低下するためである。
【0067】なお、上記図2(b)の状態にて、架橋した後に結晶性樹脂の融点以上の熱処理を行うのは、架橋による分子構造の変化による歪み成分がリフロー等の融点以上の熱にさらされたときに開放されるのを前もって除去するためでもある。この熱処理の時間を調整することによって、融点以上の温度にさらされたときの抵抗値の変化率を緩和することができるだけでなく、PTCサーミスタとしての抵抗値を調整することができる。BタイプのPTCサーミスタにおいて架橋後に融点以上での熱処理を160℃で1時間施したときと熱処理時間を20分に短縮したときを比較した結果、時間を短縮することによって約10%程度抵抗値が低下する傾向が確認された。この熱処理は、抵抗値の調整方法としても有用である。また、架橋した後に融点以下の熱処理を行うのは、結晶性樹脂の結晶化を進め低抵抗化するとともに安定化した状態での抵抗値を判定するためのものであり、これも工程管理上、極めて有用である。
【0068】なお、上記本発明の一実施の形態においては、2本の熱ロールの直径、温度、回転数、回転数の比、ポリマPTC材料の投入量、ロールのギャップ、混練時間、熱処理温度、熱処理時間、架橋線量等について1つの実施の形態で説明したが、本発明はこれらに示した数値に限定されるものではなく、材料や設備等の条件に応じてより幅広い範囲で選択できるものである。
【0069】なお、上記本発明の一実施の形態においては、結晶性樹脂としては高密度ポリエチレンを用いた場合で説明したが、この樹脂に限定されるものではなく、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン等の結晶性樹脂、さらに、エチレン酢酸ビニル共重合体等の結晶性を有する共重合体、あるいはアイオノマーのような特殊樹脂、さらに、官能基グラフトした結晶性樹脂等を用いることができる。また、導電性微粒子としても特定粒子径のファーネス系カーボンブラックを用いた場合で説明したが、このカーボンブラックに限定されるものではなく、粒子径や比表面積等の組合せで、非常に多くのカーボンブラックの中からPTC特性を示す材料が選択できる。
【0070】また、上記本発明の一実施の形態においては、表面を粗面化したニッケル箔を用いた場合で説明したが、この箔に限定されるものではなく、銅箔、合金箔、圧延箔等も使用できる。また、PTCサーミスタはポリマPTCシートを2層積層した場合で説明したが、ポリマPTCシートは単層でも3層以上の場合でも本発明は有効であり、2層に限定されるものではない。
【0071】上記した本発明の一実施の形態におけるポリマPTCシートの製造方法においては、2本の熱ロールのギャップ幅を各ステップで固定した場合で説明したが、混練バンク11の量によってポリマPTCシート10の厚みが変動する要素もあり、このような時には、混練バンク11の量を検出し、適宜2本の熱ロール9a、9bのギャップ幅を調整することができる。このように調整することによって、2本の熱ロール9a、9bに投入されたポリマPTC材料8の1バッチ分をすべて無駄なく所定の厚みのポリマPTCシート10に製造することができる。
【0072】なお、上記本発明の一実施の形態においては、2本の熱ロール9a、9bから引き出しロール13a、13bまでの間においてノズル14からエアーを噴出させてポリマPTCシート10を急冷するようにしたものについて説明したが、液体に浸漬することによりポリマPTCシート10を急冷するようにしても、上記本発明の一実施の形態と同様の効果を奏するものである。
【0073】また、ポリマPTCシート10の融点以上の温度での熱処理とは、焼きならしに相当するものであり、融点以下の所定の温度での熱処理とは焼きなましに相当するものである。
【0074】以上のように本発明のPTCサーミスタは、ポリマPTCシートを成形すると同時に電極を積層する方法に依らずに、薄肉かつ幅広のポリマPTCシートを高精度で単独で成形する工程を経て形成される。比抵抗値が低く、厚みが均一、凹凸がなく平坦な形状の大面積のポリマPTCシートは、打ち抜きパターンを形成した電極材料と精密な位置合わせをして接合することにより、後加工で側面電極を形成する等の工法が可能となる。また、2層以上のポリマPTCシートと3層以上の電極材料を交互に多層重ね合わせた状態で、熱プレスなどによって一体に積層することが可能で、そのような多層積層体を、側面電極によって並列接続すると共に、多くの個片に分割することによって、非常に低抵抗のPTCサーミスタを大量に生産することができる。
【0075】また、このポリマPTCシートは急速冷却により微結晶化された組織からなる均一な抵抗材料であり、架橋前後の熱処理と架橋の組合せ選択により、低抵抗で安定な抵抗特性を示す。また、熱処理条件を変更することによって抵抗特性を調整することができる。このような、シートを多層積層して形成されるPTCサーミスタは低抵抗であるばかりでなく、高精度かつ高信頼性であり、極めて有用である。
【0076】また、ポリマPTCシートの幅がダイスの幅に制約されることはなく、2本のロールの有効幅を最大限に活用した幅広のポリマPTCシートの加工が可能となる。また、ポリマPTCシートの厚みは2本の熱ロールのギャップ幅で任意に調整できるので薄肉で幅広のポリマPTCシートの加工が可能となる。さらに、ポリマPTCシートの冷却の強弱でポリマの結晶構造が変化することを利用して、抵抗値の微調整が可能になる。
【0077】
【発明の効果】以上のように本発明のポリマPTCシートは、結晶性樹脂と導電性微粒子を必須の成分とし、2本の熱ロールで混練されるとともに引き出しロールにより所定の速度でシート状に引き出される際に急速冷却処理されることによって得られるのである。このポリマPTCシートは厚みが均一で凹凸のない平坦な形状であり、単体で形状を保持する強度を有するものである。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地
【出願日】 平成13年8月30日(2001.8.30)
【代理人】 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄 (外2名)
【公開番号】 特開2003−68506(P2003−68506A)
【公開日】 平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願番号】 特願2001−260752(P2001−260752)