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【発明の名称】 有機酸除染廃液の乾式熱分解方法および乾式熱分解装置
【発明者】 【氏名】会沢 元浩
【住所又は居所】茨城県日立市幸町三丁目2番1号 日立エンジニアリング株式会社内

【氏名】片岡 一郎
【住所又は居所】茨城県日立市幸町三丁目2番1号 日立エンジニアリング株式会社内

【氏名】長瀬 誠
【住所又は居所】茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株式会社日立製作所電力・電機開発研究所内

【氏名】大内 智
【住所又は居所】茨城県日立市幸町三丁目2番1号 日立エンジニアリング株式会社内

【氏名】穴沢 和美
【住所又は居所】茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会社日立製作所原子力事業部内

【氏名】吉川 博雄
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜二丁目2番22号 栗田エンジニアリング株式会社内

【氏名】風間 正彦
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜二丁目2番22号 栗田エンジニアリング株式会社内

【要約】 【課題】イオン交換樹脂を用いずに、100℃から高々170〜180℃までの温度範囲で有機酸除染廃液を完全に熱分解し、廃棄物の量をより削減できる有機酸除染廃液の乾式熱分解方法および乾式熱分解装置を提供する。

【解決手段】有機酸を含む化学薬液を用いて放射性物質を除染して残った除染廃液を処理する有機酸除染廃液の乾式熱分解装置において、除染廃液を加熱媒体上に噴霧する噴霧手段7と、噴霧された除染廃液を100℃以上に加熱して水分を蒸発させる加熱媒体8と、除染廃液の水分を乾燥させるに必要な熱量を加熱媒体に供給する加熱手段9と、加熱媒体8上に生ずる乾燥粉体を除去する回収手段12,13とからなり、有機酸を含む除染廃液を空気または酸素を含む環境下で100℃以上の加熱媒体8上に噴霧し、除染廃液中に含まれる有機酸を炭酸ガスと水に分解し、有機酸を完全に消滅させる有機酸除染廃液の乾式熱分解装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機酸を含む化学薬液を用いて除染対象物に付着した放射性物質を除去し、残った有機酸を含む除染廃液を処理する有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、前記有機酸を含む除染廃液を空気または酸素を含む環境下で100℃以上の加熱媒体上に噴霧し、除染廃液中に含まれる有機酸を分解し除染廃液水分を蒸発乾燥することを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項2】 有機酸を含む化学薬液を用いて除染対象物に付着した放射性物質を除去し、残った有機酸を含む除染廃液を処理する有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、前記有機酸を含む除染廃液を空気または酸素を含む環境下で100℃以上の加熱媒体上に噴霧し、除染廃液中に含まれる有機酸を分解し除染廃液水分を蒸発乾燥し、その後生成する乾燥粉体を180℃以上の加熱媒体上で加熱することを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項3】 有機酸を含む化学薬液を用いて除染対象物に付着した放射性物質を除去し、残った有機酸を含む除染廃液を処理する有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、前記有機酸を含む除染廃液に酸化剤を添加し、100℃以上の加熱媒体上に噴霧し、除染廃液中に含まれる有機酸を分解し除染廃液水分を蒸発乾燥することを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項4】 有機酸を含む化学薬液を用いて除染対象物に付着した放射性物質を除去し、残った有機酸を含む除染廃液を処理する有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、前記有機酸を含む除染廃液に酸化剤を添加し、100℃以上の加熱媒体上に噴霧し、除染廃液中に含まれる有機酸を分解し除染廃液水分を蒸発乾燥し、その後生成する乾燥粉体を180℃以上の加熱媒体上で加熱処理することを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項5】 有機酸を含む化学薬液を用いて除染対象物に付着した放射性物質を除去し、残った有機酸を含む除染廃液を処理する有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、前記除染廃液に酸化剤を添加し、前記酸化剤を含む除染廃液を100℃以上で加熱処理することを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項6】 有機酸を含む化学薬液を用いて除染対象物に付着した放射性物質を除去し、残った有機酸を含む除染廃液を処理する有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、前記除染廃液に酸化剤を添加し、前記酸化剤を含む除染廃液を100℃以上で加熱処理し、生成された乾燥粉体を180℃以上で加熱処理することを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項7】 請求項3ないし6のいずれか一項に記載の有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、除染廃液に添加される前記酸化剤は、過酸化水素であることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項8】 請求項7に記載の有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、過酸化水素の添加量は、有機酸分解のための化学量論的必要量の3倍以上であり、かつ、過酸化水素濃度が10%以下の範囲にあることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項9】 請求項3ないし6のいずれか一項に記載の有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、除染廃液に添加される前記酸化剤は、過マンガン酸および過マンガン酸塩のうち少なくとも一種類であることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項10】 請求項9に記載の有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、過マンガン酸および過マンガン酸塩の添加量は、有機酸分解のための化学量論的必要量の1.5倍以上であり、かつ、過マンガン酸濃度が15%以下の範囲にあることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項11】 請求項3ないし6のいずれか一項に記載の有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、最初に除染廃液に添加される前記酸化剤は、過酸化水素であり、次に除染廃液に添加される前記酸化剤は、過マンガン酸および過マンガン酸塩のうち少なくとも一種類であることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項12】 請求項11に記載の有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、前記最初に添加される酸化剤である過酸化水素の添加量は、前記除染廃液に含まれる有機酸分解のための化学量論的必要量の3倍以上であり、前記次に添加される酸化剤である過マンガン酸および過マンガン酸塩の添加量は、前記除染廃液に残留している有機酸分解のための化学量論的必要量の1.5倍以上であることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項13】 請求項1ないし12のいずれか一項に記載の有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、前記除染廃液に含まれる有機酸は、ギ酸,シュウ酸,マロン酸,クエン酸のうち少なくとも一種類であることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解方法。
【請求項14】 有機酸を含む化学薬液を用いて除染対象物に付着した放射性物質を除去し、残った有機酸を含む除染廃液を処理する有機酸除染廃液の乾式熱分解装置において、空気または酸素を含む環境下で前記除染廃液を加熱媒体上に噴霧する噴霧手段と、噴霧された除染廃液を100℃以上に加熱し水分を蒸発させる加熱媒体と、前記除染廃液の水分を乾燥させるに必要な熱量を前記加熱媒体に供給する加熱手段と、前記加熱媒体上に生ずる乾燥粉体を除去する回収手段とからなることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解装置。
【請求項15】 有機酸を含む化学薬液を用いて除染対象物に付着した放射性物質を除去し、残った有機酸を含む除染廃液を処理する有機酸除染廃液の乾式熱分解装置において、前記除染廃液を一時貯蔵する廃液回収タンクと、前記廃液回収タンクに酸化剤を供給する供給手段と、前記除染廃液を100℃以上に加熱する加熱手段と、前記除染廃液を前記加熱手段に供給する供給手段と、前記加熱手段に生ずる乾燥粉体を除去する回収手段とからなることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解装置。
【請求項16】 有機酸を含む化学薬液を用いて除染対象物に付着した放射性物質を除去し、残った有機酸を含む除染廃液を処理する有機酸除染廃液の乾式熱分解装置において、前記除染廃液を一時貯蔵する廃液回収タンクと、前記廃液回収タンクに酸化剤を供給する供給手段と、前記除染廃液を100℃以上に加熱する加熱手段と、前記除染廃液を前記加熱手段に供給する供給手段と、前記加熱手段に生ずる乾燥粉体を除去する回収手段と、前記乾燥粉体を180℃以上に再加熱する再加熱手段とからなることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解装置。
【請求項17】 請求項14ないし16のいずれか一項に記載の有機酸除染廃液の乾式熱分解装置において、前記加熱手段は内面から加熱し外面において前記除染廃液を加熱する回転ドラムであり、前記回転ドラムを加熱する手段は、加熱蒸気,電気ヒータ,電磁誘導加熱器のうち少なくとも一種類であり、乾燥粉体の前記回収手段は、前記回転ドラム面に平行に設けた掻き取りブレードであることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解装置。
【請求項18】 請求項14ないし16のいずれか一項に記載の有機酸除染廃液の乾式熱分解装置において、前記加熱手段は、複数の金属球であり、前記複数の金属球を加熱する手段は、前記複数の金属球間に挿入した電気ヒータおよび電磁誘導加熱器のうち少なくとも一種類であり、乾燥粉体の前記回収手段は、前記複数の金属球を攪拌して生ずる摩擦による剥離力を利用する攪拌手段であることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解装置。
【請求項19】 請求項16ないし18のいずれか一項に記載の有機酸除染廃液の乾式熱分解装置において、前記乾燥粉体を再加熱する手段は、加熱手段を有するスクリューコンベアであることを特徴とする有機酸除染廃液の乾式熱分解装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機酸除染廃液の乾式熱分解方法および乾式熱分解装置に係り、特に、有機酸を含む除染廃液を分解し消滅させ、廃棄物の量を削減する手段に関する。
【0002】
【従来の技術】放射線取扱い施設の構造材に付着する放射能は、構造材表面に生成する酸化皮膜に取り込まれる形で付着している。酸化皮膜を除去するために、化学薬液により酸化皮膜を溶解する方法が用いられている。化学薬液としては、硝酸,塩酸,硫酸などの無機酸を用いる方法と、シュウ酸,ギ酸,クエン酸,マロン酸などの有機酸を用いる方法とが知られている。
【0003】有機酸を用いた場合に、除染に伴って発生する二次廃棄物を削減する方法としては、特許第2941429号公報に示されるように、過酸化水素と紫外線とを用いて除染廃液を分解する方法、特開2000−105295号公報に示されるように、過酸化水素と貴金属触媒とを用いて除染廃液を分解する方法、特開平5−273387号公報に示されるように、金属触媒と過酸化水素とを除染廃液に添加して100℃以下の水中で有機酸を分解する方法などが知られている。
【0004】しかし、除染により溶解した金属酸化物は、除染液中に残留する。除染液中に溶解している金属イオンをイオン交換樹脂で吸着し浄化すると、イオン交換樹脂が二次廃棄物となる。さらに、除染液を純水に戻すには、アニオン樹脂とカチオン樹脂とを混合した混床樹脂塔を用いて溶解成分を吸着除去する。その結果、イオン交換樹脂の廃棄物が発生する。したがって、イオン交換樹脂を用いず、廃棄物の量を更に削減することが望まれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】特開昭57−129815号公報,特開昭63−055499号公報,特開昭63−058299号公報,特開平01−320497号公報は、いずれも、基本的には200℃以上の高温で、除染廃液を熱分解する方法を提案している。しかし、200℃以上の高温環境下では、熱分解装置を形成する容器などの材料の耐久性が低下する問題があり、熱分解装置の寿命が短くなり、熱分解装置自体が廃棄物となるおそれがある。
【0006】熱分解装置の寿命の観点からは、除染廃液の水分が蒸発する100℃から高々170〜180℃までの温度範囲で、有機酸除染廃液を熱分解することが好ましい。
【0007】本発明の目的は、熱分解装置の寿命短縮を回避しつつ、廃棄物の量を削減する有機酸除染廃液の乾式熱分解方法および乾式熱分解装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、有機酸を含む化学薬液を用いて除染対象物に付着した放射性物質を除去し、残った有機酸を含む除染廃液を処理する有機酸除染廃液の乾式熱分解方法において、前記除染廃液に酸化剤を添加し、酸化剤を含む除染廃液を100℃以上で加熱処理する。本発明においては、有機酸を含む除染廃液を熱分解処理するので、廃棄物の量を削減できる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明においては、イオン交換樹脂を用いず、有機酸を含む廃液を処理する手段として、乾式熱分解方法を検討した。有機酸の乾式熱分解方法の有効性を確認するため、発明者らが実施した確認試験の結果を以下に示す。
【0010】有機酸の熱分解性を確認する試験においては、1%シュウ酸溶液30mlを秤量瓶に入れ、100℃の恒温槽内で乾燥させ、析出物の重量を測定した。すなわち、水分が蒸発したことを確認した後、恒温槽から取り出し、冷却した後に、析出物の重量を測定した。同様に、恒温槽の温度を10℃ずつ上昇させ、重量変化を測定した。
【0011】シュウ酸の熱分解反応は、(1)式で示され、2C224+O2→4CO2+2H2O ……(1)シュウ酸は、大気中の酸素を取り込み、炭酸ガスと水蒸気となり、消失する。
【0012】図1は、シュウ酸の熱分解性の試験結果を示す図である。シュウ酸の重量は、100℃におけるシュウ酸の重量を1とした相対値で示すと、温度の上昇に伴い低下した。温度が150℃に達した段階で、試験に用いたシュウ酸のほとんどが、分解し消滅した。
【0013】さらに、1%シュウ酸溶液30mlに過酸化水素を1%の濃度で添加し、同様の試験を実施した。図1に示すように、100℃の恒温槽内で乾燥させただけで、シュウ酸が消滅した。
【0014】過酸化水素を添加した場合の熱分解反応は、(2)式で示され、C224+H22→2CO2+2H2O……(2)過酸化水素の分解により酸素が供給され、シュウ酸の分解が、低温でも進行すると考えられる。
【0015】以上の試験結果から、シュウ酸を含む除染廃液は、150℃以上の温度で乾燥させると、消失することを確認できた。
【0016】さらに、1%過酸化水素を添加すると、100℃以上の温度で乾燥させるだけで、シュウ酸が消失することを確認できた。1%の過酸化水素の添加量は、(2)式で示すシュウ酸の分解反応当量の約3倍量に相当する。
【0017】図2は、マロン酸の熱分解性の試験結果を示す図である。マロン酸の場合も、シュウ酸と同様に、150℃以上の温度で乾燥させると、分解し消滅した。過酸化水素を1%添加した場合は、無添加の場合と比較して、分解速度が高くなったが、100℃では、添加量の約1/2が残留した。さらに、過酸化水素濃度を5%に増加させた場合は、100℃における乾燥操作で、全てのマロン酸が、分解し消滅した。
【0018】マロン酸の熱分解反応は、(3)式C344+4H22→3CO2+6H2O…(3)で示される。したがって、1%の過酸化水素の添加量は、1%マロン酸溶液のマロン酸を分解するために必要な化学当量に対して、約0.8倍提供したこととなる。さらに、5%の過酸化水素の添加量は、化学量論的必要量に対して約3倍提供した結果となる。
【0019】本発明者らは、1%ギ酸,1%クエン酸についても、同様な試験を実施した。ギ酸は、100℃ではギ酸のままでも蒸発するので、重量法では測定できない。そこで、蒸発水を凝縮させ、凝縮水中のTOC(全有機炭素濃度)濃度を測定し、分解率を確認した。
【0020】140℃以上の温度で、ほとんどのギ酸が分解した。また、過酸化水素を添加した場合は、0.5%の添加量でも、100℃における乾燥操作で、全てのギ酸が分解した。
【0021】ギ酸の熱分解反応は、(4)式で示され、2COOH+H22→2CO2+2H2O ……(4)0.5%の過酸化水素の添加量は、化学量論的必要量の約3倍に相当する。
【0022】1%クエン酸の場合は、150℃以上の乾燥操作で、全てのクエン酸を分解できた。また、過酸化水素を5%添加すると、100℃の乾燥操作でも、クエン酸を完全に分解できた。
【0023】クエン酸の熱分解反応は、(5)式で示され、C678+9H22→6CO2+13H2O ……(5)5%の過酸化水素の添加量は、クエン酸分解に必要な化学量論的必要量に対して約3倍であった。
【0024】上記試験結果によると、a.過酸化水素で有機酸を分解する場合は、化学当量以上に添加する必要があるb.100℃でも完全に分解するには、分解に必要な化学量論的必要量の3倍以上にすることが望ましいという2つの事実を確認できた。
【0025】一方、過酸化水素の上限は、分解操作の面から規定できる。具体的には、過酸化水素を過剰に添加すると、恒温槽内で加熱した場合、過酸化水素の急激な分解により、析出物が飛散する。析出物が飛散しないようにするための過酸化水素の上限濃度は、実験により、10%以下としなければならないことを確認した。さらに、1%有機酸除染廃液に過マンガン酸カリウムを添加して、100℃で乾燥させた。
【0026】過マンガン酸カリウムの添加量は、下記の化学反応式<ギ酸分解反応式>2KMnO4+3HCOOH→2KOH+2MnO2+3CO2+2H2O……(6)<シュウ酸分解反応式>2KMnO4+3C242→2KOH+2MnO2+6CO2+2H2O……(7)<マロン酸分解反応式>8KMnO4+3C344→8KOH+8MnO2+9CO2+2H2O……(8)<クエン酸分解反応式>6KMnO4+C678→6KOH+6MnO2+6CO2+H2O ……(9)で示される化学反応当量の1.5倍量を添加した。添加した過マンガン酸カリウムの濃度は、それぞれ、1%ギ酸溶液に1.2%、1%シュウ酸溶液に1.8%、1%マロン酸溶液に6.4%、1%クエン酸溶液に7.4%とした。
【0027】乾燥操作後、残留物を再び純水に溶解させてTOC濃度を測定した結果、有機炭素濃度は、検出限界以下であった。したがって、有機酸は、過マンガン酸カリウムによっても、完全に分解し消滅することを確認できた。
【0028】有機酸の酸化には、過マンガン酸カリウムのような過マンガン酸塩の他に、同様の酸化作用を持つ過マンガン酸を用いることも可能である。有機酸を分解するために必要な過マンガン酸カリウムの添加量の上限濃度は、過酸化水素の場合と同様に、乾燥粉体が飛散しないという条件で選定すると、過マンガン酸カリウム濃度で20%以下(過マンガン酸濃度相当で15%以下)であった。
【0029】さらに、本発明者らは、上記有機酸除染廃液中に除染対象物質から溶解した鉄イオンを多く含む場合、有機酸の未分解成分がわずかに残ることを確認した。この未分解成分を完全に分解する方法を検討し、生成した乾燥粉体を180℃以上の温度に再加熱すると、未分解有機酸が完全に消滅することを確認した。
【0030】以上の試験結果から、ギ酸,シュウ酸,マロン酸,クエン酸は、150℃以上の温度で乾燥操作すると、分解し消滅することを確認した。さらに、酸化剤を添加し、100℃以上の温度で乾燥させると、有機酸が分解して炭酸ガスと水になるので、有機酸が消滅することを確認した。
【0031】ここでは、ギ酸,シュウ酸,マロン酸,クエン酸についてのみの試験結果を説明した。しかし、本発明は、グリコール酸,グルコン酸,ジグリコール酸,L−アスコルビン酸,酒石酸,エチレンジアミン四酢酸などの有機酸にも適用できることを確認している。
【0032】これらの有機酸を上記例と同様に熱分解処理するには、分解温度または必要酸化剤の添加量をそれぞれに最適化しなければならない。また、本発明の適用範囲は、単独の有機酸溶液に限らない。すなわち、本発明は、複数種類の有機酸を含む除染廃液に対しても有効である。さらに、乾式熱分解装置伝熱面の腐食を抑制するために、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ薬品を添加し、処理液のpHを中性からアルカリ性に調整する前処理をすることも有効な手段となる。
【0033】
【実施例1】図3は、本発明による有機酸を含む除染廃液の乾式熱分解方法の処理手順を示すフローチャートである。まず、除染設備からの除染廃液を廃液回収タンクに収集する。廃液回収タンクに収集した廃液を必要に応じてサンプリングし、廃液中の有機酸濃度を分析する。分析結果に基づき、酸化剤の添加量を計算する。なお、廃液回収タンク中の有機酸の種類および濃度が予めわかっている場合は、分析操作を省略できる。
【0034】次に、廃液回収タンク内の液を昇温することにより、乾式熱分解装置内の加熱面での熱損失量を少なくすると、加熱面での温度変化を小さくでき、分解反応を安定化させることが可能となる。廃液の昇温の目安は、沸点より低い約90℃が望ましい。廃液の昇温完了後、必要量の酸化剤を添加すると、乾式熱分解装置への供給準備が完了する。一方、熱分解装置は、加熱面を目標温度に設定するとともに、分解ガスおよび水蒸気の回収系を起動する。これらの操作により、除染廃液の乾式熱分解装置の準備が完了する。
【0035】廃液および熱分解装置の準備が完了したら、除染廃液を熱分解装置に供給し、分解する。廃液の熱分解が完了したら、分解により生成した熱分解生成物(スラッジ)を回収し、回収物を固化設備に供給して、固化処理すると、一連の廃棄物処理が完了する。
【0036】本実施例1においては、有機酸を含む除染廃液を連続的に乾式熱分解できるので、除染化学薬品を分解し消滅させ、廃棄物の量を大幅に削減できる。また、イオン交換樹脂を用いずに、有機酸を含む除染廃液を処分可能であるから、樹脂廃棄物の量を削減できる。さらに、従来の除染廃液の熱分解方法と比較して、熱分解反応温度が低く、乾式熱分解装置の寿命が延びる。
【0037】
【実施例2】図4は、本発明による回転ドラム式乾式熱分解装置の全体構成を示す系統図であり、図5は、本発明による回転ドラム式乾式熱分解装置の回転ドラム周りの構造を示す斜視図であり、図6は、本発明による回転ドラム式乾式熱分解装置の運転手順を示すフローチャートである。まず、弁20を開き、移送ライン1を介して、廃液回収タンク2に除染廃液を入れる。廃液回収タンク2の廃液は、蒸発乾燥し易いように、ヒータ3で約90℃程度まで予め加熱する。酸化剤を添加する場合は、この段階で注入する。
【0038】一方、乾式熱分解装置6の運転準備を次の手順で実行する。蒸気ボイラ9を起動し、弁22を開き、回転ドラム8に蒸気を供給し、回転ドラム8の温度を100℃以上の目標温度に設定する。それと同時に、弁24,弁25,弁26を開き、排気ブロア18を起動し、排気系の設備を起動する。これらの操作により、乾式熱分解装置6の運転準備が完了する。なお、弁26は、凝縮器15と排気ブロア18との間に設置してもよい。
【0039】廃液および乾式熱分解装置6の準備が完了した後に、弁21を開き、移送ポンプ4および移送ライン5により、廃液を乾式熱分解装置6に導く。乾式熱分解装置内6では、加熱された回転ドラム8の外表面にスプレイノズル7から除染廃液を噴霧する。回転ドラム8には、蒸気ボイラ9で生成した加熱蒸気を蒸気供給ライン10により供給する。供給する熱量は、除染廃液の蒸発潜熱以上とし、回転ドラム8の加熱面の温度が設定温度以下に低下し分解率が下がることを防止する。加熱蒸気は、戻りライン11から蒸気ボイラ9に戻り、循環する。
【0040】なお、本実施例2では、蒸気ボイラ9は、乾式熱分解装置専用であるが、必要な熱量を供給できれば、原子力施設内の共用設備を兼用することも可能である。さらに、回転ドラム8の加熱手段としては、加熱蒸気以外に、電気ヒータまたは電磁誘導加熱器を設置してもよい。
【0041】スプレイノズル7から噴霧された除染廃液は、回転ドラム8の表面で蒸発し、乾燥する。その際に、除染廃液中の有機酸は、上記本発明の温度条件に調整すると、炭酸ガスおよび水に分解し、消滅する。
【0042】一方、除染液中に含まれる金属成分およびスラッジなどは、回転ドラム8上に乾燥粉体として堆積する。乾燥粉体が増加すると、熱伝達率が低下し、除染廃液を連続して乾燥し分解することが難しくなる。そこで、回転ドラム8の回転軸と平行に設けた掻き取りブレード12により、回転ドラム8の表面に堆積する乾燥粉体を連続的に掻き取り除去する。
【0043】弁23を適当なタイミングで開き、掻きとられた乾燥粉体を乾式熱分解装置下部から回収容器13に回収する。回収した乾燥粉体は、最終的には、図示しない固化処理設備に供給し、最終処分できる固化体とする。
【0044】除染廃液を乾燥させ分解する操作で発生した水蒸気は、回収ライン14から凝縮器15に送り凝縮させる。凝縮水は、凝縮水ライン16を経て、凝縮水タンク17に回収される。回収された凝縮水は、除染水として再利用可能である。有機酸が分解して生成される炭酸ガスは、排気ブロア18および排気ライン19から排出される。
【0045】本実施例2においては、有機酸を含む除染廃液を連続的に乾式熱分解できるので、除染化学薬品を分解し消滅させ、廃棄物の量を大幅に削減できる。また、イオン交換樹脂を用いずに、有機酸を含む除染廃液を処分可能であるから、樹脂廃棄物の量を削減できる。さらに、従来の除染廃液の熱分解方法と比較して、熱分解反応温度が低く、乾式熱分解装置の寿命が延びる。
【0046】また、回転ドラムの回転軸と平行に設けた掻き取りブレードによれば、回転ドラムの表面に堆積する乾燥粉体を連続的に掻き取り除去できる。
【0047】
【実施例3】図7は、本発明による金属球式乾式熱分解装置の全体構成を示す系統図であり、図8は、本発明による金属球式乾式熱分解装置内部の詳細な構造を示す図であり、図9は、本発明による金属球式乾式熱分解装置の運転手順を示すフローチャートである。
【0048】本実施例3の有機酸を含む除染廃液を乾式熱分解装置6に供給する過程と、有機酸を蒸発させ分解した後の水蒸気および炭酸ガスの処理過程とは、実施例2と同じである。まず、弁20を開き、移送ライン1を介して、廃液回収タンク2に除染廃液を入れる。廃液回収タンク2の廃液は、蒸発乾燥し易いように、ヒータ3で約90℃程度まで予め加熱する。酸化剤を添加する場合は、この段階で注入する。
【0049】一方、乾式熱分解装置6の運転準備を次の手順で実行する。攪拌棒27および内蔵ヒータを起動し、複数の金属球27の温度を100℃以上の目標温度に設定する。それと同時に、弁24,弁25,弁26を開き、排気ブロア18を起動し、排気系の設備を起動する。これらの操作により、乾式熱分解装置6の運転準備が完了する。
【0050】廃液および乾式熱分解装置6の準備が完了した後に、弁21を開き、移送ポンプ4および移送ライン5により、廃液を乾式熱分解装置6に導く。
【0051】本実施例3では、除染廃液を乾燥し分解する媒体として、図8に示すように、複数の金属球27を用いる。複数の金属球27を目標温度まで上昇させ除染廃液中の水分を蒸発させるために必要な熱は、電気ヒータまたは電磁誘導加熱器を内蔵した攪拌棒28から供給する。
【0052】攪拌棒28の表面には、攪拌指29を設け、複数の金属球27を攪拌する。有機酸を分解できるまで複数の金属球27の温度を上昇させた後、スプレイノズル7から除染廃液を複数の金属球27上に噴霧する。スプレイノズル7から噴霧された除染廃液は、加熱された複数の金属球27の表面で蒸発し、乾燥する。その際に、除染廃液中の有機酸は、上記本発明の温度条件に調整すると、炭酸ガスおよび水に分解し、消滅する。
【0053】一方、除染液中に含まれる金属成分およびスラッジなどは、複数の金属球27上に乾燥粉体として堆積する。乾燥粉体が増加すると、熱伝達率が低下し、除染廃液を連続して乾燥し分解することが難しくなる。そこで、攪拌棒28で攪拌する際に生ずる摩擦力により、複数の金属球27の表面に堆積する乾燥粉体を剥離させる。
【0054】弁23を適当なタイミングで開き、剥離した乾燥粉体を乾式熱分解装置下部から回収容器13に回収する。回収した乾燥粉体は、最終的には、図示しない固化処理設備に供給し、最終処分できる固化体とする。上述の方法により、有機酸を含む除染廃液を連続的に乾燥し分解処理することが可能となる。
【0055】本実施例3の乾式熱分解方法および乾式熱分解装置によれば、有機酸を含む除染廃液を連続的に乾燥させ分解処理することが可能となる。
【0056】本実施例3においては、攪拌棒で攪拌する際に生ずる摩擦力により、複数の金属球の表面に堆積する析出物を剥離させるので、乾燥粉体を確実に剥離できる。
【0057】
【実施例4】次に、図10〜図12を参照して、廃液回収タンク内での有機酸の分解を促進する手段を追加した本発明による有機酸除染廃液の乾式熱分解方法および乾式熱分解装置の実施例を説明する。
【0058】図10は、廃液回収タンク内での有機酸の分解を促進する手順を追加した有機酸を含む除染廃液の乾式熱分解方法の処理手順を示すフローチャートである。まず、除染設備からの除染廃液を廃液回収タンクに収集する。廃液回収タンクに収集した廃液を必要に応じてサンプリングし、廃液中の有機酸濃度を分析する。分析結果に基づき、酸化剤の添加量を計算する。なお、廃液回収タンク中の有機酸の種類および濃度が予めわかっている場合は、分析操作を省略できる。
【0059】次に、廃液回収タンク内の液を昇温し、乾式熱分解装置内の加熱面での熱損失量を少なくすると、加熱面での温度変化を小さくでき、分解反応を安定させることが可能となる。また、廃液回収タンクにも酸化剤を添加し、廃液回収タンク内を均一に攪拌すると、廃液回収タンク内での有機酸の分解を促進できる。さらに、廃液回収タンク内に酸化剤を添加してもよい。廃液の昇温の目安は、沸点より低い約90℃が望ましい。廃液の昇温完了後、必要量の酸化剤を添加すると、乾式熱分解装置への供給準備が完了する。
【0060】一方、熱分解装置は、加熱面を目標温度に設定するとともに、分解ガスおよび水蒸気の回収系を起動する。これらの操作により、除染廃液の乾式熱分解装置の準備が完了する。
【0061】廃液および熱分解装置の準備が完了したら、除染廃液を熱分解装置に供給し、分解する。廃液の熱分解が完了したら、分解により生成した熱分解生成物(スラッジ)を回収し、回収物を固化設備に供給して、固化処理すると、一連の廃棄物処理が完了する。
【0062】
【実施例5】図11は、廃液回収タンク内での有機酸の分解を促進する手段を追加した本発明による回転ドラム式乾式熱分解装置の全体構成を示す系統図である。本実施例5の回転ドラム式乾式熱分解装置の回転ドラム周りの構造は、図5と同じなので、図示を省略する。
【0063】本実施例5では、実施例2の回転ドラム式乾式熱分解装置に、酸化剤調整タンク30と、酸化剤注入ポンプ31と、酸化剤注入ライン32と、攪拌器33と、弁34とを追加してある。
【0064】まず、弁20を開き、移送ライン1を介して、廃液回収タンク2に除染廃液を入れる。廃液回収タンク2の廃液は、蒸発乾燥し易いように、ヒータ3で約90℃程度まで予め加熱する。同時に攪拌器33を起動し、廃液回収タンク2内を均一に攪拌する。酸化剤調整タンク30から酸化剤注入ポンプ31および酸化剤注入ライン32を経由して廃液回収タンク2に酸化剤を添加する。
【0065】一方、乾式熱分解装置6の運転準備を次の手順で実行する。蒸気ボイラ9を起動し、弁22を開き、回転ドラム8に蒸気を供給し、回転ドラム8の温度を100℃以上の目標温度に設定する。それと同時に、弁34,弁24,弁25,弁26を開き、さらに排気ブロア18を起動し、排気系の設備を起動する。これらの操作により、乾式熱分解装置6の運転準備が完了する。なお、弁26は、凝縮器15と排気ブロア18との間に設置してもよい。
【0066】廃液および乾式熱分解装置6の準備が完了した後に、弁21を開き、移送ポンプ4および移送ライン5により、廃液を乾式熱分解装置6に導く。乾式熱分解装置内6では、加熱された回転ドラム8の外表面にスプレイノズル7から除染廃液を噴霧する。回転ドラム8には、蒸気ボイラ9で生成した加熱蒸気を蒸気供給ライン10により供給する。
【0067】供給する熱量は、除染廃液の蒸発潜熱以上とし、回転ドラム8の加熱面の温度が設定温度以下に低下し分解率が下がることを防止する。加熱蒸気は、戻りライン11から蒸気ボイラ9に戻り、循環する。
【0068】なお、本実施例5では、蒸気ボイラ9は、乾式熱分解装置専用であるが、必要な熱量を供給できれば、原子力施設内の共用設備を兼用することも可能である。さらに、回転ドラム8の加熱手段としては、加熱蒸気以外に、電気ヒータまたは電磁誘導加熱器を設置してもよい。
【0069】スプレイノズル7から噴霧された除染廃液は、回転ドラム8の表面で蒸発し、乾燥する。その際に、除染廃液中の有機酸は、上記本発明の温度条件に調整すると、炭酸ガスおよび水に分解し、消滅する。
【0070】一方、除染液中に含まれる金属成分およびスラッジなどは、回転ドラム8上に乾燥粉体として堆積する。乾燥粉体が増加すると、熱伝達率が低下し、除染廃液を連続して乾燥し分解することが難しくなる。そこで、回転ドラム8の回転軸と平行に設けた掻き取りブレード12により、回転ドラム8の表面に堆積する乾燥粉体を連続的に掻き取り除去する。
【0071】弁23を適当なタイミングで開き、掻きとられた乾燥粉体を乾式熱分解装置下部から回収容器13に回収する。回収した乾燥粉体は、最終的には、図示しない固化処理設備に供給し、最終処分できる固化体とする。除染廃液を乾燥させ分解する操作で発生した水蒸気は、回収ライン14から凝縮器15に送り凝縮させる。凝縮水は、凝縮水ライン16を経て、凝縮水タンク17に回収される。回収された凝縮水は、除染水として再利用可能である。有機酸が分解して生成される炭酸ガスは、排気ブロア18および排気ライン19から排出される。
【0072】
【実施例6】図12は、廃液回収タンク内での有機酸の分解を促進する手段を追加した本発明による金属球式乾式熱分解装置の全体構成を示す系統図である。本実施例6の金属球式乾式熱分解装置内部の詳細な構造は、図8と同じなので、図示を省略する。
【0073】本実施例6では、実施例3の回転ドラム式乾式熱分解装置に、酸化剤調整タンク30と、酸化剤注入ポンプ31と、酸化剤注入ライン32と、攪拌器33と、弁34とを追加してある。本実施例6の有機酸を含む除染廃液を乾式熱分解装置6に供給する過程と、有機酸を蒸発させ分解した後の水蒸気および炭酸ガスの処理過程とは、実施例5と同じである。
【0074】まず、弁20を開き、移送ライン1を介して、廃液回収タンク2に除染廃液を入れる。廃液回収タンク2の廃液は、蒸発乾燥し易いように、ヒータ3で約90℃程度まで予め加熱する。同時に攪拌器33を起動し、廃液回収タンク2内を均一に攪拌する。酸化剤調整タンク30から酸化剤注入ポンプ31および酸化剤注入ライン32を経由して廃液回収タンク2に酸化剤を添加する。
【0075】一方、乾式熱分解装置6の運転準備を次の手順で実行する。攪拌棒28および内蔵ヒータを起動し、複数の金属球27の温度を100℃以上の目標温度に設定する。それと同時に、弁34,弁24,弁25,弁26を開き、さらに排気ブロア18を起動し、排気系の設備を起動する。これらの操作により、乾式熱分解装置6の運転準備が完了する。
【0076】廃液および乾式熱分解装置6の準備が完了した後に、弁21を開き、移送ポンプ4および移送ライン5により、廃液を乾式熱分解装置6に導く。本実施例6では、除染廃液を乾燥し分解する媒体として、上記図8に示すように、複数の金属球27を用いる。複数の金属球27を目標温度まで上昇させ除染廃液中の水分を蒸発させるために必要な熱は、電気ヒータまたは電磁誘導加熱器を内蔵した攪拌棒28から供給する。
【0077】攪拌棒28の表面には、攪拌指29を設け、複数の金属球27を攪拌する。有機酸を分解できるまで複数の金属球27の温度を上昇させた後、スプレイノズル7から除染廃液を複数の金属球27上に噴霧する。スプレイノズル7から噴霧された除染廃液は、加熱された複数の金属球27の表面で蒸発し、乾燥する。その際に、除染廃液中の有機酸は、上記本発明の温度条件に調整すると、炭酸ガスおよび水に分解し、消滅する。
【0078】一方、除染液中に含まれる金属成分およびスラッジなどは、複数の金属球27上に乾燥粉体として堆積する。乾燥粉体が増加すると、熱伝達率が低下し、除染廃液を連続して乾燥し分解することが難しくなる。そこで、攪拌棒28で攪拌する際に生ずる摩擦力により、複数の金属球27の表面に堆積する乾燥粉体を剥離させる。
【0079】弁23を適当なタイミングで開き、剥離した乾燥粉体を乾式熱分解装置下部から回収容器13に回収する。回収した乾燥粉体は、最終的には、図示しない固化処理設備に供給し、最終処分できる固化体とする。上述の方法により、有機酸を含む除染廃液を連続的に乾燥し分解処理することが可能となる。
【0080】除染廃液を乾燥させ分解する操作で発生した水蒸気は、回収ライン14から凝縮器15に送り凝縮させる。凝縮水は、凝縮水ライン16を経て、凝縮水タンク17に回収される。回収された凝縮水は、除染水として再利用可能である。有機酸が分解して生成される炭酸ガスは、排気ブロア18および排気ライン19から排出される。
【0081】実施例4,5,6においては、除染廃液回収タンク内に除染廃液を貯蔵している際にも、酸化剤を添加して昇温させ攪拌すると、廃液中の有機酸の分解を促進できる。酸化剤として過酸化水素を添加する場合には、有機酸の分解に長時間を要するが、酸化剤として過マンガン酸塩を使用すると、除染廃液回収タンク中の有機酸を比較的短時間で分解できる。
【0082】
【実施例7】図13は、乾燥粉体を再加熱する再加熱装置を追加した本発明による回転ドラム式乾式熱分解装置の全体構成を示す系統図である。除染廃液を乾式熱分解装置に供給し、乾燥粉体を生成するまでは、上記各実施例と同様なので、説明を省略する。図11に示した回転ドラム加熱方式の乾式熱分解装置6または図12に示した金属球加熱方式の乾式熱分解装置6などにより、乾燥粉体を生成する。本実施例では、乾式熱分解装置6は回転ドラム加熱方式を例として示した。
【0083】乾式熱分解装置により乾燥粉体を生成した後、乾燥粉体を再加熱装置35に導いて180℃以上に加熱し、乾燥粉体中に残留する有機酸を分解する。
【0084】再加熱装置35としては、例えば図13に示すように、加熱装置付のスクリューコンベアを用いることが可能である。スクリューコンベアは、例えば、中心に電気ヒータを内蔵させるかまたは加熱蒸気を供給し、羽根部を含めて180℃以上に加熱する。スムーズに分解するには、220℃〜230℃に調整することが好ましい。スクリューコンベア内に導かれた乾燥粉体中の有機酸は、スクリューコンベア内を移動する間に分解する。
【0085】本実施例7においては、乾燥粉体生成後に乾燥粉体を再加熱するので、わずかに残留する有機酸を完全に消滅させることができる。分解および乾燥処理の段階で、万一未分解の有機酸を含む乾燥粉体が生成した場合においても、再加熱装置35により分解させ、分解処理の信頼性を高めることが可能となる。また、液体を含まないため、高温で処理しても装置の材料腐食を緩和できる。上記実施例の乾式熱分解方法および乾式熱分解装置によれば、有機酸を含む除染廃液を連続的に乾燥させ分解処理することが可能となる。
【0086】
【実施例8】次に、図14および図15を参照して、廃液回収タンク内で過酸化水素と過マンガン酸および過マンガン酸塩のうち少なくとも一種類とを用いて有機酸の分解を促進する手段を追加した本発明による有機酸除染廃液の乾式熱分解方法および乾式熱分解装置の実施例を説明する。
【0087】図14は、廃液回収タンク内で過酸化水素と過マンガン酸および過マンガン酸塩のうち少なくとも一種類とを用いて有機酸を分解する手順を追加した有機酸を含む除染廃液の乾式熱分解方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0088】まず、除染設備からの除染廃液を廃液回収タンクに収集する。廃液回収タンクに収集した廃液を必要に応じてサンプリングし、廃液中の有機酸濃度を分析する。分析結果に基づき、過酸化水素の添加量を計算する。なお、廃液タンク中の有機酸の種類および濃度が予めわかっている場合は、分析操作を省略できる。
【0089】次に、廃液回収タンク内の液を昇温し、乾式熱分解装置内の加熱面での熱損失量を少なくすると、加熱面での温度変化を小さくでき、分解反応を安定させることが可能となる。
【0090】廃液の昇温の目安は、沸点より低い約90℃が望ましい。廃液タンク内の温度が90℃に達したら、廃液回収タンクに過酸化水素を必要量添加し、廃液回収タンク内を均一に撹拌すると、有機酸の分解を促進できる。
【0091】過酸化水素による有機酸の分解反応が十分進行した後に、廃液回収タンク内の残留有機酸濃度を測定する。残留有機酸濃度の測定結果に基づき、残留有機酸の分解に必要な過マンガン酸および過マンガン酸塩量を求め、廃液回収タンクに過マンガン酸および過マンガン酸塩のうち少なくとも一種類を注入する。
【0092】一方、熱分解装置は、加熱面を目標温度に設定するとともに、分解ガスおよび水蒸気の回収系を起動する。これらの操作により、除染廃液の乾式熱分解装置の準備が完了する。
【0093】廃液および熱分解装置の準備が完了したら、除染廃液を熱分解装置に供給し、分解する。廃液の熱分解が完了したら、分解により生成した熱分解生成物(スラッジ)を回収し、回収物を固化設備に供給して、固化処理すると、一連の廃棄物処理が完了する。
【0094】
【実施例9】図15は、廃液回収タンク内で過酸化水素と過マンガン酸および過マンガン酸塩のうち少なくとも一種類とにより有機酸の分解を促進する手段を追加した本発明による回転ドラム式乾式熱分解装置の全体構成を示す系統図である。本実施例9の回転ドラム式乾式熱分解装置の回転ドラム周りの構造は、図5と同じなので、図示を省略する。
【0095】本実施例9では、実施例5の回転ドラム式乾式熱分解装置に、第1酸化剤調整タンク(過酸化水素調整タンク)30と、第2酸化剤調整タンク(過マンガン酸または過マンガン酸塩調整タンク)36と、第1酸化剤調整タンク出口弁37と、第2酸化剤調整タンク出口弁38とを追加してある。
【0096】まず、弁20を開き、移送ライン1を介して、廃液回収タンク2に除染廃液を入れる。廃液回収タンク2の廃液は、酸化剤による有機酸の分解を促進するために、ヒータ3で90℃程度まで予め加熱する。同時に撹拌器33を起動し、廃液回収タンク2内を均一に撹拌する。
【0097】過酸化水素を充填した第1酸化剤調整タンク30から酸化剤注入ポンプ31および酸化剤注入ライン32を経由して廃液回収タンク2に過酸化水素を必要量添加する。
【0098】過酸化水素による有機酸の分解が完了する時間経過後に、廃液回収タンクの残留有機酸濃度を測定し、次に添加する過マンガン酸および過マンガン酸塩のうち少なくとも一種類の添加量を求める。過マンガン酸または過マンガン酸塩を充填した第2酸化剤調整タンク36から酸化剤注入ポンプ31および酸化剤注入ライン32を経由して廃液回収タンク2に過マンガン酸または過マンガン酸塩を必要量添加する。
【0099】その後、乾式熱分解装置6に廃液回収タンク2内の廃液をスプレイし、残留有機酸を分解し、乾燥処理する。乾式熱分解装置の運転方法は、実施例5に示した内容と同じであるから、説明を省略する。
【0100】実施例8,9においては、最初に、過酸化水素を除染廃液に添加して、高濃度の有機酸を分解し、その後、過酸化水素による分解において残留した有機酸を過マンガン酸および過マンガン酸塩を添加して分解するので、未分解成分を完全に分解できる。
【0101】
【発明の効果】本発明によれば、有機酸を含む除染廃液を連続的に乾式熱分解できるので、廃棄物の量を大幅に削減できる。また、イオン交換樹脂を用いずに、有機酸を含む除染廃液を処分可能であるから、樹脂廃棄物の量を削減できる。さらに、従来の除染廃液の熱分解方法と比較して、熱分解反応温度が低く、乾式熱分解装置の寿命が延びる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【住所又は居所】東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地
【識別番号】390023928
【氏名又は名称】日立エンジニアリング株式会社
【住所又は居所】茨城県日立市幸町3丁目2番1号
【識別番号】390027188
【氏名又は名称】栗田エンジニアリング株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜2−2−22 (北浜中央ビル9F)
【出願日】 平成14年9月18日(2002.9.18)
【代理人】 【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
【公開番号】 特開2003−194995(P2003−194995A)
【公開日】 平成15年7月9日(2003.7.9)
【出願番号】 特願2002−271443(P2002−271443)