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【発明の名称】 オゾンを用いた除染方法及びその装置
【発明者】 【氏名】長瀬 誠
【住所又は居所】茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株式会社日立製作所電力・電機開発研究所内

【氏名】細川 秀幸
【住所又は居所】茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株式会社日立製作所電力・電機開発研究所内

【氏名】穴沢 和美
【住所又は居所】茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会社日立製作所原子力事業部内

【氏名】会沢 元浩
【住所又は居所】茨城県日立市幸町三丁目2番1号 日立エンジニアリング株式会社内

【氏名】千葉 吉紀
【住所又は居所】茨城県日立市幸町三丁目2番1号 日立エンジニアリング株式会社内

【要約】 【課題】除染に伴なう二次廃棄物が出ない、低コストで簡便な除染方法を提供する。

【解決手段】液体オゾンを気化させ、気化したオゾンを再循環ポンプ3よりも上流側の再循環ライン2に注入して炉水に溶解させてオゾン水を形成し、このオゾン水を原子炉再循環系で流動させて、金属表面に付着する放射能を低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 放射性核種に汚染された金属の表面から放射性核種を除去する除染法において、液体オゾンからオゾンガスを気化させ、このオゾンガスを溶解させたオゾン水を前記金属の汚染面に接触させることにより、前記金属の表面から前記放射性核種を含む付着物を除去することを特徴とするオゾンを用いた除染方法。
【請求項2】 液体オゾンから気化させたオゾンの純度が30%以上であることを特徴とする請求項1に記載のオゾンを用いた除染方法。
【請求項3】 放射性核種に汚染された前記金属が沸騰水型原子力発電所の原子炉再循環系を構成する機器、配管を構成する材料を含み、前記オゾン水は、前記機器、配管内を流過しつつ前記金属の表面から前記放射性核種を含む付着物を除去することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオゾンを用いた除染方法。
【請求項4】 オゾンガスが、再循環ポンプの出入口弁のベントライン、再循環ポンプの封水ライン、再循環系サンプリングライン、原子炉浄化系サンプリングライン、余熱除去系のサンプリングラインの少なくとも1箇所以上から系統内に注入され、系統内を流れる炉水に溶解されてオゾン水が形成されることを特徴とする請求項3に記載のオゾンを用いた除染方法。
【請求項5】 原子炉再循環系配管の、再循環ポンプの上流側と下流側を結ぶ仮設循環ラインが設けられ、この仮設循環ラインと再循環ポンプを通るように炉水が循環され、前記再循環ラインの途中にオゾンガスが注入されて循環する炉水に溶解されてオゾン水が形成されることを特徴とする請求項3に記載のオゾンを用いた除染方法。
【請求項6】 炉水温度が80℃以下でかつ主蒸気隔離弁が閉じた状態で、オゾンガスの注入が開始されることを特徴とする請求項4に記載のオゾンを用いた除染方法。
【請求項7】 オゾンガス注入開始前に原子炉浄化系が再循環系から隔離されることを特徴とする請求項4または請求項6に記載のオゾンを用いた除染方法。
【請求項8】 前記仮設循環ラインにイオン交換樹脂を充填したイオン交換樹脂塔を介装した管路と、イオン交換樹脂塔を介装しない管路を、互いに並列に設け、オゾンガスによる除染処理後に、溶出した放射性物質を前記イオン交換樹脂で捕捉、除去することを特徴とする請求項5に記載のオゾンを用いた除染方法。
【請求項9】 オゾンガスによる除染処理後に、溶出した放射性核種を原子炉浄化系で除去することを特徴とする請求項3、4,6,7のうちのいずれか1項に記載のオゾンを用いた除染方法。
【請求項10】 オゾンを用いた除染方法を適用した対象部位の一部分又は全ての部位を対象に、少なくとも1回のシュウ酸を主体とした還元除染剤により還元除染を実施することを特徴とした請求項3から請求項9のうちのいずれか1項に記載のオゾンを用いた除染方法。
【請求項11】 溶出した放射性核種を原子炉浄化系で除去する前に、残留オゾン、過酸化水素を分解する貴金属を、原子炉浄化系の脱塩装置入口側から原子炉浄化系に供給しておくことを特徴とする請求項9に記載のオゾンを用いた除染方法。
【請求項12】 放射性核種に汚染された金属の表面から放射性核種を除去するために、液体オゾンを原料として高純度のオゾンガスを発生させるオゾンガス発生手段と、前記オゾンガス発生手段に接続され、発生したオゾンガスを供給先に導くオゾンガス供給ラインと、を含んで構成され、放射性核種に汚染された金属の表面から放射性核種を除去するために用いられるオゾン除染装置。
【請求項13】 除染対象の部材が収容される除染槽と、この除染槽に接続され、除染槽内の水を循環させる循環ラインと、この循環ラインに介装された循環ポンプ、オゾン分解塔及びイオン交換樹脂塔と、前記循環する水にオゾンガスを注入するオゾンガス注入手段と、を含んで構成され、前記オゾンガス注入手段は、液体オゾンを原料として高純度のオゾンガスを発生させるオゾンガス発生手段と、前記オゾンガス発生手段に接続され、発生したオゾンガスを供給先に導くオゾンガス供給ラインと、を含んでなることを特徴とするオゾン除染装置。
【請求項14】 前記オゾンガス供給ラインにポンプが設置されていることを特徴とする請求項12または請求項13に記載のオゾン除染装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原子力関連施設に係わり、特に放射性核種に汚染された金属部材表面から放射性核種を化学的手段を用いて除去する除染方法に関する。
【0002】
【従来の技術】化学的手段を用いた除染法としては、無機酸や有機酸を始めさまざまな除染剤を用いた化学除染法が存在する。例えば、特公平3−10919号公報に、酸化処理剤として過マンガン酸を、還元剤としてジカルボン酸を用いて原子炉の金属製構造部品を化学的に汚染除去する方法が、また、特開2000−81498号公報にはオゾンとシュウ酸を用いて金属製構造部品を化学的に除染する方法がそれぞれ記載されている。また、特開昭60―39592号公報には、Ceとオゾンを用いて除染を行う方法が、特表昭61−501338号公報には、Ceとクロム酸及びオゾンを用いて除染を行う方法が、それぞれ開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】原子力関連施設で用いられる放射性核種によって汚染された機器や物品、特に沸騰水型原子炉一次系の高温水中で形成された酸化皮膜を有する機器の表面から放射性核種を除去するために特公平3−10919号公報や特開2000−81498号公報に記載されている化学除染法を適用する場合、除染効果は大きいが、除染のための装置が大掛かりになるためコストが高く、除染期間も少なくとも3日以上は必要となり、これがクリティカル工程となる場合には定期検査の時間短縮を阻害する要因となる問題がある。また、化学物質を使用するため、除染後、それら化学物質も除去する必要があり、二次廃棄物がその分増加するという問題がある。
【0004】前記特開昭60―39592号公報、特表昭61−501338号公報に記載された除染方法にあっても、Ceやクロム酸などの化学薬品を除染に用いるため、除染作業終了後、それら化学物質を除去する必要があり、二次廃棄物がその分増加するという問題がある。
【0005】本発明の目的は、放射性物質で汚染された金属面を除染するに際し、除染による二次廃棄物の発生を少なくすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】沸騰水型原子炉一次系の炉水に接する金属表面には、母材の腐食により生成した内層の酸化皮膜と、水側から付着した外層の酸化物の2層構造の付着物が形成されている。
【0007】このうち、外層は鉄酸化物を中心としたクラッドが付着堆積しているもので、この部分に蓄積されている放射能は全体の1/3以下となっている。この外層のクラッドは前記内層の酸化被膜を密に覆うような構造ではなく、孔の多い、炉水が外層を通して容易に内層の酸化被膜に接することができるような構造になっている。
【0008】内層はクロム酸化物を中心とした酸化皮膜となっており、多くの放射性物質がこの皮膜中に取り込まれている。内層の酸化被膜クロム酸化物を溶解、除去すればかなりの放射能を除去することが可能であり、発明者等は、種々、実験を重ねた結果、二次廃棄物を発生せずにクロム酸化物を溶解する手段としてオゾン水を用いる方法に想到した。オゾンの強力な酸化力によりクロムは3価から6価に酸化され、クロム酸イオンとして水に溶解するようになる。余剰のオゾンは容易に分解されて酸素となるため、化学物質による二次廃棄物の発生がない。
【0009】しかし、オゾンの水への溶解度はあまり大きくないので、十分な酸化力を発揮するオゾン濃度のオゾン水を得るためには、純度の高いオゾンガスを用いる必要がある。このような高純度のオゾンガスを提供する手段として、酸素ガスを原料として放電等によりオゾンと酸素の混合ガスを発生させ、発生した混合ガスを酸素の沸点以上でオゾンの沸点以下となる−112℃から−182℃の間まで冷却してオゾンのみを液化することによりほぼ純粋な液体オゾンを得る、オゾン発生装置がある。この液体オゾンを原料にオゾンガスを発生させることにより90%以上の純度のオゾンガスを供給することができる。
【0010】このような高純度のオゾンガスを原子炉再循環系に存在するベントラインやドレンラインなどから注入して系統内を流れる炉水に溶解することにより、高濃度のオゾン水を原子炉再循環系に供給することが可能となり、原子炉再循環系の配管、機器の表面のクロム酸化物を溶解して除染することができる。溶解したコバルトなどの放射性核種はオゾンの残留がないことを確認した後、原子炉浄化系を用いて除去することができる。このため、本手法を実施するための仮設装置は高純度のオゾンガスを供給する装置だけであり、極めて簡便かつ低コストで実施できる。
【0011】なお、除染に用いるオゾン水を生成するときに水に溶解させるオゾンガスの濃度は、純度が高いほどオゾン水の濃度が高くなって酸化力が強くなるので90%以上であるのが好ましいが、少なくとも30%以上、実用的には50%以上であることが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の第1の実施の形態を図1を用いて説明する。本実施の形態は、沸騰水型原子力発電所の原子炉再循環系の機器、配管の内面の除染に本発明を適用した例であり、図1は、原子炉圧力容器と原子炉再循環系、原子炉浄化系、残留熱除去系の各系統、及びこれに液体オゾンから気化したオゾンガスを供給する装置を組み込んだ系統構成の1例を示している。
【0013】本実施の形態では、オゾンガス供給装置34と、このオゾンガス供給装置34に一端を接続され他端を再循環ポンプ入口弁4のベントライン22に接続したオゾンガス供給ライン36と、オゾンガス供給ライン36に介装され、オゾンガス供給装置34で生成されたオゾンガスを原子炉再循環系に送り込むオゾンガス供給ポンプ35と、を含んでなるオゾン除染装置が設置されている。オゾンガス供給ライン36としては、例えばテフロン(登録商標)チューブなどを用いればよい。
【0014】原子炉圧力容器1には、主蒸気隔離弁21を介装した主蒸気ライン20、弁31を介装した給水ライン30、弁33を介装したベントライン32が、それぞれ接続されている。
【0015】原子炉再循環系は、原子炉圧力容器1に接続された再循環ライン2と、再循環ライン2に、上流側から順に介装された再循環ポンプ入口弁4、再循環ポンプ3、再循環ポンプ出口弁5を含んで構成されている。再循環ポンプ出口弁5の出側と原子炉圧力容器1を接続する配管は、ライザ管6と呼ばれる。再循環ポンプ入口弁4、再循環ポンプ出口弁5には、それぞれ、ボンネット部に、ベントライン22,24が設けられ、再循環ポンプ3にもベントライン23が設けられている。また、再循環ポンプ3の入側と出側の再循環ライン2には、除染座25,26が取りつけられている。
【0016】残留熱除去系は、再循環ポンプ入口弁4の上流側の再循環ライン2に上流端が接続され、下流端が再循環ポンプ出口弁5の下流側の再循環ラインに接続された残留熱除去系ライン9と、この残留熱除去系ライン9に、上流側から順に介装された弁19,弁12、残留熱除去系ポンプ10、熱交換器11、弁13を副んd絵構成されている。熱交換器11と弁13の間の残留熱除去系ライン9には、残留熱除去系サンプリングライン29が取りつけられている。また、前記再循環ラインの残留熱除去系ライン9の下流端の接続位置よりも原子炉圧力容器側には、再循環系サンプリングライン27が取りつけられている。
【0017】原子炉浄化系は、前記弁19と弁12の間の残留熱除去系ライン9に上流端が接続され、下流端が前記弁31よりも原子炉圧力容器1側の給水ライン30に接続された原子炉浄化系ライン14と、原子炉浄化系ライン14に、上流側から順に介装された弁17、原子炉浄化系ポンプ15、脱塩器16、弁18を含んで構成されている。脱塩器16と弁18の間の原子炉浄化系ライン14に、原子炉浄化系サンプリングライン28が取りつけられている。
【0018】原子力発電所の発電を停止した場合、開列後の炉水の流れは、次の三つに大別される。第1の流れは、原子炉圧力容器1から再循環ライン2を通って再循環ポンプ3の駆動力によりライザ管6より原子炉圧力容器1に入り、ジェットポンプ7から圧力容器底部、炉心8を通って循環する流れである。第2の流れは、再循環ライン2から分岐して弁19、弁17を経由し、原子炉浄化系ポンプ15により駆動されて脱塩器16、弁18、給水ライン30を通って原子炉圧力容器1に戻る流れである。第3の流れは、再循環ライン2から分岐して弁19、弁12を経由して残留熱除去系ポンプ10により駆動されて熱交換器11、弁13を通り、再循環ライン2に戻る流れである。これらの流れにより炉心1で発生している崩壊熱が除去されて炉水温度が低下されると共に、原子炉水の浄化により原子炉水の水質が高純度に保たれている。
【0019】図2に、高純度オゾンガスを用いて、再循環ライン2、再循環ポンプ3、再循環ポンプ入口弁4、再循環ポンプ出口弁5、ライザ管6を除染対象として除染する場合の工程の概要が示されている。なお、以下の説明で「高純度オゾンガス」は、液体オゾンから気化させたガスのことである。図2には、開列からの経過時間と主な関連イベントが記載されている。開列後、残留熱除去系により炉水温度が下げられ、およそ12時間後には炉水温度が100℃となる。この段階で再循環ポンプ3の流量が最低流量に下げられる。残留熱除去系による熱除去はその後も継続され、炉水温度が80℃を下回った時点で復水器の真空が破壊される。
【0020】オゾン除染では、炉水中のオゾンが気化して、原子炉圧力容器1の上部の気相に移行する可能性があるので、気化したオゾンがタービン系に拡散しないように、除染開始に先立って主蒸気隔離弁21が閉止される。また、オゾン水が原子炉浄化系の脱塩器16に流入すると、脱塩器16のイオン交換樹脂が酸化されて樹脂が分解し、炉水の全有機炭素(TOC)が増加する恐れがある。このため、除染開始に先立って原子炉浄化系ポンプ15が停止され、弁17、弁18が閉じられて原子炉浄化系が原子炉再循環系から隔離される。
【0021】除染のための系統の準備が整ったら、オゾンガス供給装置34から、高純度のオゾンガスがオゾンガス供給ポンプ35によりオゾンガス供給ライン36を介して原子炉再循環系に注入される。図1では注入位置として再循環ポンプ入口弁4についているベントライン22にオゾンガス供給ライン36を接続した例を示している。ベントライン22を用いて注入する利点は、既設の配管を用いるため設備の改造が少なくてすむことと、ベントライン22が再循環ライン2の比較的上流側に位置するため除染範囲が大きくなることである。ただし、このベントライン22をオゾンガスの注入に利用した場合、原子炉圧力容器1から再循環ポンプ入口弁4までの再循環ライン2の部分の除染効果はあまり期待できない。それは、注入されたオゾンは自己分解するだけなく、流れによって必ず炉心8を通過してから再循環ライン2に戻ってくることになるが、炉心8では強いガンマ線により水の放射線分解反応が原子炉停止後も続いており、これらの反応系に入ったオゾンも分解されてしまうためである。
【0022】炉水に溶解させるために注入すべきオゾン量について説明する。再循環ポンプ3の最低流量を定格時の20%としても1100MWeクラスの炉では2000m/hであり、オゾン水濃度20ppmを目標に注入するとすると、およそ40kg/hの割合で注入する必要がある。除染時間については3時間から12時間の範囲、好ましくは5時間から6時間である。
【0023】必要な除染時間を確認するために、次のような試験を行った。まず、実機と同じ水質、温度条件、但し水素注入を実施していない通常水質環境(NWC)で放射性コバルト58を付着させた試験片Aと、実機と同じ水質、温度条件、但し水素注入を実施している水素注入環境(HWC)で放射性コバルト58を付着させた試験片Bを作成した。次に、この試験片A,Bを、常温でオゾンガスをバブリングして飽和させたオゾン水に浸漬した。5時間及び10時間経過した時点で試験片の放射能を調べたところ、5時間経過した時点で、通常水質環境(NWC)で付着させた試験片Aで約1/3の放射能が除去され、水素注入を実施している水素注入環境(HWC)で付着させた試験片Bでは約3/4の放射能が除去されたことが確認された。
【0024】したがって、上述のように、除染時間については3時間から12時間の範囲に設定すればよく、好ましくは5時間から6時間である。より長時間除染を継続すれば、除染の効果が大きくなる可能性はあるが、10時間でもあまり大きな変化が観測されていないので、実機で余裕を持たせるとしても12時間で十分と考えられる。それ以上では除染がクリティカル工程に影響を与えるようになってくるので好ましくない。
【0025】供給するオゾンの純度については、液体オゾンを気化させることにより90%以上にすることは技術的に可能であり、その状態で用いることが最も好ましいが、オゾンガスを供給するオゾン供給ラインの長さや温度によってはオゾンの自己分解により純度は低下する。通常のオゾナイザーで発生したときのオゾンの純度は10%から20%であることを考慮すれば、少なくとも30%以上の純度で使用しなければ液体オゾンを用いるメリットはない。実用的にはオゾンの分圧が支配的になるように50%以上の純度で使用することが好ましい。
【0026】オゾン濃度を高めれば除染時間を短縮することも考えられるが、オゾンの溶解度はあまり大きくなく、高純度のオゾンを利用しても前記の20ppmぐらいが上限である。さらに濃度を高くしようと注入量を増やしても溶解しきれなくなり、逆にガス成分により再循環ポンプ3のキャビテーションを心配しなければならなくなる。したがって、時間を短くする場合でも3時間ぐらいが限度となる。また、5時間という除染時間は残留熱除去系で温度を下げている時間内であり、定検のクリティカル工程に影響を与えないのでこれ以上短くすることのメリットはほとんどない。
【0027】オゾンガスの注入点としては、再循環ポンプ入口弁4についているベントライン22の他にも、再循環ポンプ3や再循環ポンプ出口弁5についているベントライン23や24、再循環系サンプリングライン27、原子炉浄化系脱塩器出口のサンプリングライン28、残留熱除去系のサンプリングライン29、再循環ポンプ3の前後にある除染座25、26を用いることも可能である。さらには、図1には記載していないが、再循環ポンプ3や再循環ポンプ出入口弁4、5に存在するドレンラインを用いることもできる。これらの候補のうち、再循環ポンプ3についているベントライン23はポンプのキャビテーションを引き起こす可能性が高まるので好ましくない。また、再循環ポンプ3の下流側の注入点は単独では再循環ポンプ入口弁4や再循環ポンプ3の除染ができないので好ましくない。しかし、ベントライン22と併用する場合は、入口側(ベントライン22)の注入量を減らせるのでポンプのキャビテーション発生の可能性を低減できる。さらに、再循環ポンプ3の下流側の注入点とベントライン22を併用すると、全体の注入量を同じにした場合、ライザ管6の部分に到達するオゾン濃度は、自己分解量が減少するので高くなる。
【0028】残留熱除去系のサンプリングライン29は通常原子炉格納容器の外側にあり、残留熱除去系サンプリングライン29を注入点として用いる場合は、原子炉格納容器の外側でオゾンガスを注入できるので作業が容易である。その反面、オゾンガスを溶解したオゾン水が再循環系統に流入する位置が、再循環ポンプ出口弁5より下流であり除染対象範囲が小さくなる。これに対して原子炉浄化系脱塩器出口のサンプリングライン28を注入点として用いる場合は、オゾンガスを溶解したオゾン水が給水ライン30を通って原子炉圧力容器1に流入し、その1部分は再循環ライン2に戻ってくるので、再循環ポンプ入口弁4の上流側を除染できるメリットがある。ただし、注入してから除染対象部位にオゾン水が到達するまでに時間がかかることや多くのオゾンはジェットポンプ7を介して炉心1に運ばれて放射線分解し無駄になるので効率は悪い。
【0029】所定の時間オゾン注入による除染が実施された後、オゾンの注入が停止される。オゾンは前述のように自己分解および炉心8における放射線分解により系内から消失するが、炉水中に溶出した放射性物質を原子炉浄化系により除去する前に、炉水中にオゾンの残存がないかどうかを確認するのが望ましい。炉水中にオゾンが残存していると、炉水が脱塩器16を通過するとき、脱塩器16のイオン交換樹脂がオゾンにより酸化分解されてしまうからである。オゾンが残留していないことを確認した後、弁17、弁18を開き、原子炉浄化系ポンプ15を起動して系統の浄化を行う。
【0030】オゾンの分解が不十分でなかなか進まない場合には、原子炉浄化系の脱塩器16の入口側からオゾンを分解する貴金属触媒や活性炭を注入しておく。このようにしてイオン交換樹脂に接触する前にオゾンを分解すれば、イオン交換樹脂へのダメージがなくなるので速やかに浄化工程に移行することができる。
【0031】これらの単純な手順により、原子炉再循環系を構成する機器、配管の内面に付着した放射性物質の一部が除去され、原子炉格納容器内の雰囲気線量率が低減される。本設の原子炉浄化系の装置を除染後の炉水への溶出物除去に用いることにより、多くの溶出した放射性物質の回収と廃棄を遠隔操作で行うことができ、作業に伴う被曝が少なくなると共に、仮設設備も少ないので除染コストも小さくなる。
【0032】原子炉圧力容器1のヘッド(上蓋)を開放する前には、原子炉圧力容器1上部の気相にオゾンガスが残留している可能性がある。このため、ヨウ素等の気体状の放射性核種が残存している場合に備えて実施されるガス置換を、通常のヘッドに設けられるベントライン32に設けられた弁33を開いて実施すればよい。通常気体処理系には、ヨウ素を吸着するため活性炭フィルタが存在しているので、万一オゾンが残留していてもオゾンは活性炭と反応して消失するので環境への問題は生じない。
【0033】高純度オゾン発生装置34としては、図4に示すように、液体オゾンを収容する液体オゾン輸送容器37と、この液体オゾン輸送容器37に液体オゾン移送ライン39で接続されたガス化装置40と、液体オゾン移送ライン39に介装されて液体オゾンを移送する液体オゾン移送ポンプ38を含んで構成される装置を用いればよい。ガス化装置40は、温度制御装置41を備えてガス発生量をコントロール可能なものとする。固体オゾンを収容する容器を輸送容器として用い、固体オゾンを液化してからガス化装置40に送って気化させるようにしてもよい。
【0034】純度の高い液体オゾンを製造するには、図5に示すように、酸素ボンベ43から酸素ガスを通常の放電型オゾン発生装置44に供給してオゾンを発生させ、得られるオゾンと酸素の混合気体を、冷凍機を用いた温度制御装置47により温度を−112℃から−182℃の間に冷却してあるオゾン凝縮管46に導いてオゾンのみを凝縮させて液化すればよい。液化したオゾンは同様に冷却してある液体オゾン貯槽48に貯溜され、弁49を開くことにより液体オゾン取り出しライン50から取り出すことができる。凝縮しない酸素ガスは酸素放出ライン67を通して大気中に放出する。その際酸素中には微量のオゾンが含まれるので、オゾンガス分解塔59を通してオゾンを分解する必要がある。オゾンガス分解塔59には活性炭を充填すればよいが、分解量が多い場合には発火の危険性があるので貴金属触媒を充填してもよい。
【0035】また、酸素ガスを放出せずに放電型オゾン発生装置44の上流側に戻すこともでき、その場合はオゾン分解塔59が不要になると共に原料の酸素ガスの供給量を削減することもできる。酸素ボンベ43の代わりに空気中の酸素を抽出する装置を利用してもよい。また、オゾン凝縮管46や液体オゾン貯槽48の冷却には、冷凍機を用いる代わりに液体窒素を用いることもできる。製造した高純度の液体オゾンは温度をオゾンの融点−182℃より下げることで固体オゾンとすることもできる。液体オゾンは急激な温度変化により爆発する危険性があるので、輸送する場合には固体オゾンとしておいた方がより安全である。
【0036】除染に用いるオゾンは、オンサイトでオゾン発生装置を用いて製造することもできるが、オゾン発生装置として例えば40kg/hの製造能力を持つものとすると設備コストが大きくなると共に占有面積も大きくなり、注入場所に近い原子炉格納容器内では設置スペースを確保することも難しくなる問題がある。格納容器外にオゾン発生装置を設置してオゾンガスのみを格納容器内に導くことも可能ではあるが、高濃度のオゾンガスは自己分解するため、供給ライン内で純度が低下してしまう欠点がある。したがって、高純度オゾンの原料となる液体オゾン又は固体オゾンの製造は原子炉格納容器外で行い、製造した液体オゾン又は固体オゾンを原子炉格納容器内に搬入してガス化させるのが合理的である。原子炉格納容器外部でオゾンを酸素から発生させる場合には、時間をかけて製造することも可能となり、オゾン発生装置の設備コストを低減できると共に、夜間電力などを選択的に使用することで製造コストを低減することもできる。
【0037】先に述べたように、オゾン除染単独では、放射能レベルを2/3〜1/4以下にすることは難しいので、再循環ポンプ3や再循環ポンプ3出入口弁4、5の分解点検を実施する場合、これらの機器をオゾン除染したのち、別途化学除染することが考えられる。具体的にはシュウ酸を主体とした有機酸を2000ppm程度の濃度で90℃で除染対象部位を少なくとも一度洗えばよい。それでも十分な除染効果が得られない場合は、シュウ酸系の除染剤を過酸化水素共存下で触媒や紫外線照射により分解処理してから過マンガン酸イオンを含む酸化除染剤かオゾンを用いた酸化除染を実施し、その後再度シュウ酸系の除染剤を用いて還元除染を行えばよい。オゾンを酸化剤として用いる場合にはシュウ酸系の除染剤もオゾンにより分解することも可能である。このような酸化、還元除染は目標の除染効果が得られるまで繰り返して実施することができる。
【0038】原子炉停止操作中にオゾン除染を実施することは、高い除染効果を望む対象物のその後の有機酸を用いた酸化還元除染の酸化除染を実施したことにも相当する。したがって、オゾン除染後に実施される酸化還元除染の工程短縮と共に、酸化還元除染のための仮設設備の準備を実施する際の作業者の受ける線量を低減することができる。
【0039】上記実施の形態によれば、原子力発電所の定期検査のクリティカル工程に影響することなく、簡便な装置を用いて低コストかつ短時間で原子炉再循環系の線量率を低減することができ、定期検査時の作業従事者の受ける放射線量を低減することができる。また、オゾンによる酸化によって除染を行い、残存するオゾンは容易に分解されて酸素になるため、除染に伴なう新たな二次廃棄物をほとんど発生させることもない。
【0040】次に本発明の第2の実施の形態について説明する。前記第1の実施の形態では、原子炉の停止工程中にオゾン注入による除染工程を組み込んでいたが、再循環ポンプ3が運転されているために原子炉再循環系を流れる炉水流量が大きく、したがって注入すべきオゾン量が大きくなる。そこで、再循環ポンプ3を停止した後の、再循環ポンプ3が慣性で回転している時間を利用して除染することもできる。この場合、流量に応じてガス注入量を適宜調整して注入することで全体のオゾン使用量を削減できる。また、再循環ポンプ3のキャビテーションの発生が抑制されるメリットもある。
【0041】ただし、この場合には通常、再循環ポンプ3の停止後に原子炉圧力容器1のヘッドオフ(上蓋開放)が行われるが、オゾンガスがオペフロ(原子炉圧力容器1の上部開口が位置する建屋領域)に拡散する危険があるので、除染期間と炉水中のオゾンの残留が無いことの確認、原子炉圧力容器1の上部の気相部のベントを実施するための期間、および溶出した放射性物質を浄化、除去する期間だけヘッドオフが遅れることになる。
【0042】次に本発明の第3の実施の形態について説明する。前記第1、第2の実施の形態では、再循環ポンプ3の駆動力あるいは惰性を用いてオゾン水を流動させ、原子炉浄化系の脱塩器16を用いて溶出した放射性物質を除去する方法であったが、再循環ポンプ3や脱塩器16などのプラントを構成する機器を用いるために、工程上の制約が存在する。本実施の形態は、図6に示すように、再循環ポンプ出口弁5のベントライン24から再循環ポンプ入口弁4のベントライン22に至る仮設循環ライン51と、この仮設循環ライン51にベントライン24側から順に介装された仮設循環ポンプ52、弁56、オゾン分解塔57、イオン交換樹脂塔58、オゾン溶解槽53と、仮設循環ポンプ52と弁56の間の仮設循環ライン51をイオン交換樹脂塔58とオゾン溶解槽53の間の仮設循環ライン51に弁55を介して接続するバイパスライン54と、オゾン分解塔57にベントライン68で接続されたオゾンガス分解塔59と、オゾン溶解槽53と前記ベントライン68を接続するベントライン60と、オゾンガス供給装置34と、このオゾンガス供給装置34とオゾン溶解槽53を接続するオゾンガス供給ライン36と、オゾンガス供給ライン36に介装されオゾンガスをオゾン溶解槽53に送りこむオゾンガス供給ポンプ35と、を含んで構成されている。
【0043】この構成により、他の工程と切り離して、再循環ポンプ入口弁4、再循環ポンプ3、再循環ポンプ出口弁5及びその間の再循環ライン2の除染を行うことが可能となる。
【0044】仮設循環ライン51にはバイパスライン54が設けられ、弁55、弁56により流れを変えることができる。オゾン濃度を高くして放射性物質の溶出を促進する際には、弁55を開くとともに弁56を閉じ、オゾンを高純度オゾンガス供給装置34からオゾン溶解槽53に注入しながら仮設循環ポンプ52により、炉水を循環させる。オゾン溶解槽53にはベントライン60が設けられており、余剰ガスはオゾンガス分解塔59で分解された後排気される。放射能の溶出が進んだら、弁56を開いて弁55を閉じ、オゾン分解塔57により水中の残存オゾンを分解した後、イオン交換樹脂塔58により炉水に溶出した放射性物質を除去する。オゾン分解塔57では分解ガスが発生するので、ベントライン68を通じてオゾンガス分解塔59に導いている。
【0045】このような仮設系を用いる利点は、除染工程を定検工程と切り離すことができ、除染範囲を限定することでオゾンの使用量を低減できることである。一方、仮設設備が多くなるため設備コストが大きくなることや除染範囲が再循環ポンプ出入口弁の間のみとなるので被曝低減効果が及ぶ範囲が限定される。
【0046】除染範囲を広げるためには、再循環ポンプ出口弁5のベントライン24の代わりに、それよりも下流側の再循環系サンプリングライン27を仮設循環ライン51の接続点に用いることで除染対象範囲を広げることができる。しかし、サンプリングラインが存在するのは通常2系統ある原子炉再循環系の片側だけであること、残留熱除去系の戻り水と合流すると一部は原子炉圧力容器1に戻ってしまうので、残留オゾンが存在するとオペフロにオゾンガスが拡散する恐れが生じるという問題がある。
【0047】原子炉圧力容器1と再循環ライン2の接続部で配管の端部にプラグをして、ライザ管6を含む再循環ライン2全体を原子炉圧力容器1と隔離し、それから、プラグに設けた接続手段により再循環ライン2を仮設循環ライン51に接続すれば上記のような問題はなくなる。この場合、残留熱除去系は運転を停止することが条件になる。しかし、再循環ライン2にプラグをするためには原子炉圧力容器1がヘッドオフされる必要があるため、除染工程が定検開始(開列)から時間的に遅れること、プラグから引きまわす仮設循環ラインの長さが長くなるためオゾンの自己分解が増加するデメリットもある。
【0048】上記第2、第3の各実施の形態によっても、原子力発電所の定期検査のクリティカル工程に影響することなく、簡便な装置を用いて短時間で原子炉再循環系の線量率を低減することができ、定期検査時の作業従事者の受ける放射線量を低減することができる。また、オゾンによる酸化によって除染を行い、残存するオゾンは容易に分解されて酸素になるため、除染に伴なう新たな二次廃棄物をほとんど発生させることもない。
【0049】次に本発明の第4の実施の形態について説明する。先の第1〜第3の実施の形態は原子炉再循環系の機器、配管を設置状態で除染する、いわゆる系統除染に属する除染方法であるが、図7に示す本実施の形態は、酸化除染により放射能の低減が可能な小物や廃棄物の除染に本発明を適用したものである。
【0050】図7に示す装置は、オゾン水が満たされ、放射能で汚染された除染対象物(汚染物)が投入される除染槽61と、この除染槽61の互いに反対側になる位置に上流端と下流端が接続された循環ライン62と、この循環ライン62に上流側から順に介装された循環ポンプ63、弁66、オゾン分解塔57、イオン交換樹脂塔58、オゾン溶解槽53と、循環ポンプ63と弁66の間の循環ライン62をイオン交換樹脂塔58とオゾン溶解槽53の間の循環ライン62に弁65を介して接続するバイパスライン64と、オゾン分解塔57にベントライン68で接続されたオゾンガス分解塔59と、オゾン溶解槽53と前記ベントライン68を接続するベントライン60と、オゾンガス供給装置34と、このオゾンガス供給装置34とオゾン溶解槽53を接続するオゾンガス供給ライン36と、オゾンガス供給ライン36に介装されオゾンガスをオゾン溶解槽53に送りこむオゾンガス供給ポンプ35と、を含んで構成されている。
【0051】上記構成の装置による除染は次の手順で行われる。すなわち、除染槽61に除染用の流体として水が満たされ、次いで汚染物が投入される。オゾン濃度を高くして放射能の溶出を促進する除染の際には、弁65を開いて弁66を閉じ、循環ライン62に設けられた循環ポンプ63を用いて、除染槽61の水を循環ライン62で循環させながら、オゾンを高純度オゾンガス供給装置34からオゾン溶解槽53に注入し、循環する水に溶解させてオゾン水とする。オゾン溶解槽53にはベントライン60が設けられており、余剰ガスはオゾンガス分解塔59で分解された後排気される。
【0052】オゾン溶解槽53で生成されたオゾン水が除染槽61を通過しつつ、除染槽61内の汚染物表面の放射性付着物を酸化して溶出させる。放射性物質の溶出が進んだら、弁66を開いて弁65を閉じ、除染槽61の水を、オゾン分解塔57、イオン交換樹脂塔58を通る経路で循環させる。オゾン分解塔57により水中の残存オゾンが分解され、溶出した放射性物質はイオン交換樹脂塔58により除去される。オゾン分解塔57で発生した分解ガスは、ベントライン68を通じてオゾンガス分解塔59に導かれ、大気に放出される。
【0053】本実施の形態によれば、汚染物に付着した放射性物質はオゾンによる酸化で水に溶けやすくなって水に溶出し、溶出した放射性物質はイオン交換樹脂塔58により捕捉、除去され、水中に残存したオゾンはオゾン分解塔57で分解される。したがって、イオン交換樹脂塔58により捕捉、除去される放射性物質以外には、二次的な廃棄物は発生せず、放射性廃棄物の量が余分に増えることがない。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、除染による新たな二次廃棄物の発生を抑制することができる。、
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【住所又は居所】東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地
【識別番号】390023928
【氏名又は名称】日立エンジニアリング株式会社
【住所又は居所】茨城県日立市幸町3丁目2番1号
【出願日】 平成13年9月27日(2001.9.27)
【代理人】 【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
【公開番号】 特開2003−98294(P2003−98294A)
【公開日】 平成15年4月3日(2003.4.3)
【出願番号】 特願2001−295916(P2001−295916)