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【発明の名称】 原子燃料用被覆管およびその製造方法
【発明者】 【氏名】伊藤 邦雄
【住所又は居所】神奈川県横須賀市内川二丁目3番1号 株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン内

【要約】 【課題】高燃焼度化に伴う原子炉運転の長期化や、異種金属間どうしの電気化学的な相互作用と原子炉水質の変化との相乗作用に対しても、充分に高耐食性が維持できる原子燃料用被覆管を提供する。

【解決手段】原子燃料用被覆管11の燃料支持格子で保持される部位とこの部位から上下方向に0〜20mmの範囲の被膜形成領域16aが溶解槽21Aないし21N内に位置付けられる。溶解槽21Aないし21N内には電解溶液31が注入され、直流電源32の陽極側が被膜形成領域16aに、陰極側が溶解槽21Aないし21Nにそれぞれ電気的に接続される。所定時間通電することにより被膜形成領域16aに、厚さが約0.5μmの金属酸化物からなる被膜部が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 沸騰水型原子炉の燃料集合体を構成し、燃料棒支持手段によって互いの間隔が保持される複数の燃料棒であって、この燃料棒の外皮としてジルコニウム合金によって形成された原子燃料用被覆管において、この原子燃料用被覆管の前記燃料棒支持手段によって保持される部位に金属酸化物からなる被膜を設けたことを特徴とする原子燃料用被覆管。
【請求項2】 請求項1記載の原子燃料用被覆管における金属酸化物からなる被膜は、高温水蒸気中酸化法、高温空気中酸化法、高温酸素中酸化法、陽極酸化法のうちのいずれか一つの方法によって、前記原子燃料用被覆管の表面そのものを酸化させることにより厚さが0.1μm〜5μmに形成されていることを特徴とする原子燃料用被覆管の製造方法。
【請求項3】 請求項1記載の原子燃料用被覆管における金属酸化物からなる被膜は、金属を含む溶液に浸漬する方法、噴射によって塗布する方法、プラズマ溶射による方法のうちのいずれか一つの方法によって、原子燃料用被覆管の表面に厚さが0.1μm〜5μmのジルコニウム酸化物または鉄酸化物からなる被膜を付着させることによって形成されていることを特徴とする原子燃料用被覆管の製造方法。
【請求項4】 請求項3記載の原子燃料用被覆管の製造方法において、前記被膜を付着させる以前に、原子燃料用被覆管の少なくとも前記被膜を付着させる部位に微細な凹凸を設けておくことを特徴とする原子燃料用被覆管の製造方法。
【請求項5】 請求項3記載の原子燃料用被覆管の製造方法において、鉄酸化物はFe23であることを特徴とする原子燃料用被覆管の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、沸騰水型原子炉の燃料集合体を構成する燃料棒の外皮としての原子燃料用被覆管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の原子燃料用被覆管は従来から高温水中における耐食性に優れたジルコニウム合金によって形成されており、このジルコニウム合金としては、ZrにSn、Fe、Ni、Cr等の元素を添加したジルカロイ−2が主に使用されている。近年、燃料の大幅な高燃焼度化を目指した高耐食性のジルコニウム合金の開発が進められている。例えば特開平6−317687号公報には、添加する合金元素の割合を変えることにより、耐食性に優れ、水素吸収量の少ない原子燃料用被覆管が得られる製造方法が提案されている。また、特開平11−23757号公報には、原子燃料用被覆管の腐食を防止するための表面処理方法として、電解液中において直流電圧を印加する陽極酸化処理によって原子燃料用被覆管の表面に酸化膜を形成する方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の原子燃料用被覆管の製造方法のうち前者の場合には、Zrに添加する合金元素の割合を変えることにより、通常の原子炉内環境に対する耐食性は向上する。しかしながら、原子燃料用被覆管には表面処理等が施されていないために、原子燃料用被覆管の表面が露出した状態となっている。このため、この原子燃料被覆管の露出した表面が直接放射線によって照射されるため、特に燃料支持格子によって保持される部位で発生する電気化学的な腐食に対しては、必ずしも充分な対策が施されているとは云えなかった。これは、原子燃料用被覆管を形成しているジルコニウム合金と、燃料支持格子に使用されているNi基合金との異種金属間どうしの電気化学的な相互作用や、原子炉水質の変化等に起因して、原子燃料用被覆管の燃料支持格子によって保持される部位におけるいわゆるガルバニック腐食が特に顕著になるからである。
【0004】一般に、原子炉水質の変化に伴う原子燃料用被覆管の腐食については、水素を添加した場合、原子燃料用被覆管に取り込まれる水素が増加するおそれがある。これは原子炉水中に溶けている水素が原子燃料用被覆管の表面で原子状になり、原子燃料用被覆管の酸化膜を透過して金属母材中に入り込むからである。また、亜鉛を添加した場合には、亜鉛が酸化物として原子燃料用被覆管の表面に付着することが考えられる。このように付着した酸化物は熱伝導率が小さいために、原子燃料用被覆管に対して熱的な負荷を加える。この熱的負荷によって、原子燃料用被覆管の酸化速度が大きくなり、結果として腐食が加速される。
【0005】また、上述した従来の原子燃料用被覆管の製造方法のうち後者の場合には、全長が約4mの原子燃料用被覆管の全体に酸化膜を形成することになるので、酸化膜を形成するための装置が大型化するとともに構造が複雑化するという問題があった。また、酸化処理中に処理液が被覆管の両端の開口から内部にも充填され、被覆管内部が酸化することや不純物が対流するおそれがある。このため、酸化処理前に被覆管の両端の開口を仮端栓によって覆う作業と、酸化処理後にこの仮端栓を除去する作業とが必要になるので、製造工程が増加するだけでなく製造作業が煩雑になっていた。
【0006】これらの問題を解決するために、特開2000−105290公報には、燃料支持格子側に酸化膜を形成し、原子燃料用被覆管との間の電気化学的な腐食を防止する技術が提案されている。しかしながら、原子炉材料の長寿命化や被爆の低減等を目的とした原子炉の水質制御によって、Pt,Pd等の貴金属を炉水中に注入されることがある。この場合には、これらの貴金属が原子燃料用被覆管の表面に付着すると、これら貴金属の触媒作用によって、貴金属と燃料被覆管との間に発生する電気化学的な相互作用が規制できなくなり、必ずしも原子燃料用被覆管の表面の腐食を防止できなかった。
【0007】本発明は、燃料支持部材付近で発生する原子燃料用被覆管の特異な腐食現象に着目してなされたものであり、その目的とするところは、高燃焼度化に伴う原子炉運転の長期化や、異種金属間どうしの電気化学的な相互作用と原子炉水質の変化との相乗作用に対しても、充分に高耐食性を維持できる原子燃料用被覆管およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、沸騰水型原子炉の燃料集合体を構成し、燃料棒支持手段によって互いの間隔が保持される複数の燃料棒であって、この燃料棒の外皮としてジルコニウム合金によって形成された原子燃料用被覆管において、この原子燃料用被覆管の前記燃料棒支持手段によって保持される部位に金属酸化物からなる被膜を設けたものである。したがって、原子燃料用被覆管の燃料棒支持手段によって保持される部位に発生しやすい特異な腐食現象を抑制できる。
【0009】また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明における金属酸化物からなる被膜を、高温水蒸気中酸化法、高温空気中酸化法、高温酸素中酸化法、陽極酸化法のうちのいずれか一つの方法によって、前記原子燃料用被覆管の表面そのものを酸化させることにより厚さが0.1μm〜5μmに形成したものである。したがって、被膜を原子燃料用被覆管に部分的に形成することにより、被膜形成工程において原子燃料用被覆管の両端の開口を仮端栓によって覆う必要がない。
【0010】また、請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明における金属酸化物からなる被膜を、金属を含む溶液に浸漬する方法、噴射によって塗布する方法、プラズマ溶射による方法のうちのいずれか一つの方法によって、原子燃料用被覆管の表面に厚さが0.1μm〜5μmのジルコニウム酸化物または鉄酸化物からなる被膜を付着させることによって形成したものである。したがって、被膜を原子燃料用被覆管の一部に形成することにより、被膜形成工程において原子燃料用被覆管の両端の開口を仮端栓によって覆う必要がない。
【0011】また、請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記被膜を付着させる以前に、原子燃料用被覆管の少なくとも前記被膜を付着させる部位に微細な凹凸を設けておく。したがって、凹凸を設けることによりその部位の表面積が増加することにより被膜の付着が良好になる。
【0012】また、請求項5に係る発明は、請求項3に係る発明において、鉄酸化物はFe23である。したがって、Fe23が原子炉内に存在する不純物の主成分で、かつ絶縁物であり、電気化学的にも安定した酸化物であるので、原子炉内における電気化学的な相互作用が防止される。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1(a)は本発明に係る原子燃料用被覆管によって構成される燃料集合体の構造を示す断面図、同図(b)は同じく原子燃料用被覆管を使用した燃料棒の一部を破断して示す側面図である。図2(a)は同じく燃料支持格子の平面図、同図(b)は同じく正面図、図3は同じく原子燃料用被覆管に被膜を形成する被膜形成装置の全体を示す平面図、図4は図3におけるIV-IV 線断面図である。図5(a)は図3におけるV矢視図、同図(b)は同図(a)におけるV(b)-V(b) 線断面図、同図(c)は同図(a)におけるV(c)-V(c) 線断面図である。図6は同じく被膜形成装置の要部を示す模式図、図7は同じく原子燃料用被覆管に被膜を形成するための工程図である。なお、図3において、溶液槽の上部溶液槽は便宜上図示を省略している。
【0014】図1(a)において、全体を符号1で示すものは燃料集合体であって、この燃料集合体1においては、多数本の燃料棒2と、これら燃料棒2の中心に配置された太径のウォータロッド3とが燃料棒支持手段としての燃料支持格子4によって保持されることにより正方格子状に束ねられている。これら燃料棒2とウォータロッド3とは、上部タイプレート5および下部タイプレート6によって固定されて燃料棒束とされ、この燃料棒束がチャネルボックス7によって包囲されることによって、燃料集合体1が構成されている。
【0015】図2に示すように、燃料支持格子4は、ジルコニウム合金によって形成されたバンド8および多数のセル9とNi基合金によって形成されたばね10とによって構成され、高さがW1に形成されている。上述した多数本の燃料棒2は、この燃料支持格子4のセル9のそれぞれに係入され、ばね10によって保持されている。
【0016】同図(b)において、燃料棒2は、上下端が開口した原子燃料用被覆管11と、これら原子燃料用被覆管11の上下端の開口を閉塞する上部端栓12、下部端栓13と、原子燃料用被覆管11の内部に装填される燃料ペレット14、プレナムスプリング15とによって構成されている。原子燃料用被覆管11はジルコニウム合金によって形成され、燃料支持格子4が対向する部位、すなわち燃料支持格子4によって保持される部位の表面に金属酸化物からなる被膜16が設けられ、この被膜16が形成される幅W2は、燃料支持格子4の高さ方向の寸法W1に上下方向にそれぞれ0〜20mmの範囲を加えた長さに形成されている。
【0017】次に、図3ないし図6を用いて被膜形成装置について説明する。図3において、全体を符号20で示す被膜形成装置は、同じ外形および同じ構造を有するN個の溶液槽21Aないし21Nを備え、これらN個の溶液槽21Aないし21Nは所定の間隔を隔てて平行に並べられ、幅が前記被膜16の幅W2と同じ長さに形成されている。図4に示すように、これら溶液槽21Aないし21Nは、有底角筒状に形成した下部溶液槽22と、角筒状に形成された上部溶液槽23とによって分割されており、各下部溶液槽22は連通路24を介して互いに連通され、各上部溶液槽23は互いの上端間を連結した連結板25によって一体化されている。
【0018】図5(a)に示すように、下部溶液槽22の上端と上部溶液槽23の下端との突き合わせ部のそれぞれには、半円形の切欠き22a,23aが互いに開口を突き合わせるようにして設けられ、これら切欠き22a,23aは、各溶液槽21Aないし21Nの両側板に互いに対向するように複数対設けられている。同図(b)に示すように、これら切欠き22a,23aの端縁のそれぞれには、断面コ字状の可撓性を有する封止部材27,27が取り付けられ、同図(c)に示すように、上部溶液槽23の下端には、断面がH字状の封止部材29が取り付けられている。
【0019】このような構成において、複数本の原子燃料用被覆管11をN個の溶液槽21Aないし21Nの各下部溶液槽22の切欠き22aに取り付けられた封止部材27に載置し、上部溶液槽23の下端を下部溶液槽22の上端とを突き合わせ、図示を省略した固定手段によって上部溶液槽23を下部溶液槽22に固定する。同図(b)に示すように、原子燃料用被覆管11が一対の封止部材27,27によって保持され、原子燃料用被覆管11と溶液槽21Aないし21Nとの間が封止される。同時に、同図(c)に示すように、下部溶液槽22の上端と上部溶液槽23の下端との突き合わせ部が、封止部材28によって封止される。
【0020】図6において、32は直流電源、33は溶液槽21Aないし21N内の電解溶液31を循環させる循環パイプであって、この循環パイプ33の経路中には、第1の電動バルブ34、ポンプ35、水質制御装置36、温度制御装置37が備えられている。このうち、水質制御装置36は溶液槽21Aないし21N内の電解溶液31の電導度およびPHをモニターし、これらを一定に保持するためのものであり、温度制御装置37は溶液槽21Aないし21N内の電解溶液31の温度を一定に保持するものである。これら水質制御装置36および温度制御装置37は制御装置38によって制御され、この制御装置38によって原子燃料用被覆管11の被覆形成領域16aに形成される酸化被膜の厚さが制御できるように構成されている。40は溶液貯留槽、41は溶液貯留槽40内の電解溶液31を循環パイプ33に導入するための導入パイプであって、この導入パイプ41には第2の電動バルブ42が設けられている。
【0021】次に、このような構成の被膜形成装置を用いて原子燃料用被覆管の表面に被膜を形成する方法を説明する。図4におけるS1において、ジルコニウム合金によって形成されたジルカロイ素管(図示せず)を圧延、熱処理、研磨および洗浄することによりジルコニウムライナ付きのジルカロイ製の原子燃料用被覆管11が形成される。S2において、この原子燃料用被覆管11の燃料支持格子4に保持される部位を特定するために、下部端栓13が溶接によって固着される。
【0022】S3において、原子燃料用被覆管11の燃料支持格子4によって保持される部位に金属酸化物からなる被膜16が形成される。すなわち、図3に示すように、複数本の原子燃料用被覆管11の複数の被膜形成領域16aを各溶液槽21Aないし21N内に位置付け、下部溶液槽22の上端と上部溶液槽23の下端とを突き合わせる。上述したように、原子燃料用被覆管11と各溶液槽21Aないし21Nとの間および下部溶液槽22の上端と上部溶液槽23の下端との突き合わせ部が封止される。
【0023】次に、図6において、第1の電動バルブ34が閉じられ、第2の電動バルブ42が開放され、ポンプ35が作動することにより、溶液貯留槽40内の電解溶液31が溶液槽21Aないし21N内に注入される。注入が終了したら、第2の電動バルブ42が閉じられ、第1の電動バルブ34が開放される。直流電源32の陽極側が原子燃料用被覆管11の被膜形成領域16aに電気的に接続されるとともに、陰極側が溶液槽21Aないし21Nに電気的に接続された後、所定時間通電することにより被膜形成領域16aに、厚さが約0.5μmの金属酸化物からなる被膜16が形成される。
【0024】なお、被膜16の厚さについては、所定の厚さよりも薄く形成すると、厚みが一様にならずムラが発生し、電気化学的な相互作用を完全に防止することが困難となるので、0.1μm以上とすることが望ましい。また、所定の厚さよりも厚く形成すると、初期酸化膜が熱的な障壁となるため、燃料を冷却する上で好ましくない。したがって、燃料性能に悪影響を及ぼすことがないように、5μm以下とすることが望ましい。すなわち、被膜16の厚さを0.1μm〜5μmとすることにより、被覆部16にクラック・ポア等の発生が抑制され、緻密な被膜が形成されるので電気化学的に充分絶縁され、かつ酸素や水素の拡散移動距離を長くするために必要な厚さとすることができる。
【0025】また、径が小さくかつ全長が長く形成された原子燃料用被覆管11が、その全長方向の複数箇所で溶液槽21Aないし21Nに支持されることにより、被膜16が形成される際に原子燃料用被覆管11の撓みが防止される。また、溶液槽21Aないし21Nは、原子燃料用被覆管11の一部分のみに、金属酸化物からなる被膜16を形成すればよいので容量を小さく形成することができ、このため大型の溶液槽で必要としていた水質を均一にするための撹拌装置が不要になる。
【0026】なお、本実施例では、複数の溶液槽21Aないし21Nを連通路24を介して連通させたが、各溶液槽21Aないし21Nを独立させた構造としてもよい。また、複数の溶液槽21Aないし21Nによって同時に複数の被膜16を形成したが、一つの溶液槽によって複数回に分けて処理することにより所要箇所に被膜16を形成してもよい。
【0027】S4において、原子燃料用被覆管11内に燃料ペレット14およびプレナムスプリング15が装填され、S5において原子燃料用被覆管11内にHeが充填された後、S6において上部端栓12が溶接で固着されることによって燃料棒2が形成される。このように、本発明においては、原子燃料用被覆管11に部分的に被膜16が複数箇所に形成されるようにしたことにより、被膜16が形成される際に、原子燃料用被覆管11の一端側が開口していても原子燃料用被覆管11内に電解溶液31が浸入することがない。したがって、従来必要であった仮の端栓によって原子燃料用被覆管の両端を覆う必要がなくなるから、製造工程が省略できるので製造時間が短縮されて生産性が向上するとともに製造コストが低減される。
【0028】S7において、図1(a)に示すように、多数本の燃料棒2とウォータロッド3とが燃料支持格子4によって正方格子状に束ねられ、これら燃料棒2とウォータロッド3とが上部タイプレート5および下部タイプレート6によって固定されて燃料棒束とされ、この燃料棒束がチャネルボックス7によって包囲されることによって、S8において燃焼集合体1が形成される。
【0029】このように、原子燃料用被覆管11がジルコニウム合金によって形成されていることにより、通常の原子炉内環境に対しての耐食性は従来と同様に維持できる。本発明においては、さらに、燃料支持格子4によって保持される部位およびこの部位から上下方向に0〜20mmの範囲に厚さが0.1μm〜5μmの金属酸化物からなる被膜16が設けられている。したがって、燃料支持格子4によって保持される部位における異種金属間どうしの電気化学的な相互作用と、原子炉水質の変化との相乗作用に起因する特異な腐食に対しての耐食性が長期間に亘り維持できる。
【0030】換言すれば、沸騰水型原子炉のジルコニウム合金製の原子燃料用被覆管において、最も腐食が顕著に発生する燃料支持格子によって保持される部位での電気化学的な腐食が防止できることにより、長期間の原子炉運転や原子炉水質の変化への対応が可能になり、原子力プラントが安定した状態で運転できる。すなわち、高燃焼度化に伴う原子炉運転の長期化と、水素注入、亜鉛注入あるいは貴金属注入等の原子炉水質の変化との相乗作用に対しても充分に高耐食性が維持できる原子燃料用被覆管を提供することができる。
【0031】なお、被膜16を燃料支持格子4によって保持される部位のみならず、この部位から上下方向に20mm以内の範囲に設けた理由は、燃料支持格子4そのものの存在により原子炉冷却水の流れの変化による影響を考慮したものである。すなわち、原子炉から取り出された燃料棒の表面に付着した鉄さびの付着状態を統計的に調査した結果、燃料支持格子に保持された部位から20mm以内の範囲に限定されることが判ったためであり、この範囲内に被膜16を設けることにより、異種金属間による電気化学的な相互作用を抑制し腐食を防止することができる。
【0032】なお、この第1の実施の形態では、陽極酸化法によって被膜16を形成したが、原子燃料用被覆管11の表面を高温水蒸気(約600℃、100気圧)に数十時間さらす高温水蒸気中酸化法によって形成するようにしてもよい。また、原子燃料用被覆管11の表面を高温空気(又は酸素、約500℃)に数十時間さらす高温空気中酸化法、高温酸素中酸化法のいずれか一つの方法によって形成してもよい。
【0033】図8は本発明に係る第2の実施の形態における被膜形成装置の要部を示す模式図である。同図において、上述した図3ないし図6に示す第1の実施の形態において説明した同一または同等の部材については、同一の符号を付し詳細な説明は適宜省略する。上述した第1の実施の形態では、原子燃料用被覆管11の表面そのものが酸化して被膜16が形成されるのに対して、この第2の実施の形態では、原子燃料用被覆管11の表面に金属酸化物が付着することによって、被膜16が形成される点に特徴を有するものである。
【0034】すなわち、同図において、溶液貯留槽40内には、ZrO2 を析出して結晶化したZrO2 を原子燃料用被覆管11の表面に付着させる機能を有する金属を含む溶液51(Zr溶液24)が貯留されている。また、予め原子燃料用被覆管11の被膜形成領域16aには、表面粗さが0.5μm〜1.5μmRaの多数の微細な凹凸が形成されている。このような構成において、複数本の原子燃料用被覆管11のN個の被膜形成領域16aが溶液槽21Aないし21N内に位置付けられ、第1の電動バルブ34が閉じられ、第2の電動バルブ42が開放され、ポンプ35によって金属を含む溶液51(Zr溶液24)が溶液貯留槽40から溶液槽21Aないし21N内に注入される。
【0035】この金属を含む溶液51内に原子燃料用被覆管11の被膜形成領域16aが約10分間浸漬されることにより、0.1μm〜5μmの厚さのジルコニウム酸化物からなる緻密な被膜が付着する。この場合、原子燃料用被覆管11の被膜形成領域16aが金属を含む溶液51内に浸漬される以前に、この領域の表面に微細な凹凸が形成されていることにより、その部位の表面積が実質的に増加するので、被膜の付着が良好になり均一な膜厚の被覆が短時間で形成される。
【0036】なお、金属酸化物を付着させる方法としては、スプレーや噴霧器を用いて金属を含む溶液51(Zr溶液24)が原子燃料用被覆管11に噴霧されることによって塗布する方法でもよい。すなわち、この方法は、Zr酸化物のように高融点の酸化物を溶融して噴射する方法であって、噴射方法には粉末法があり、溶射用の粉体を粉体送り用ガスと燃料ガスとともにノズルに送り込み、ノズルから炎とともに溶射流を放出して原子燃料用被覆管11の表面に付着させる。また、溶融状態(プラズマ状態)にした金属粒子が飛んでいる間に酸化され物体表面に吹き付けられて付着するプラズマ溶射による方法でもよい。これらの場合にも、原子燃料用被覆管11の被膜形成領域16aに微細の凹凸が形成されていることにより、被膜の付着が良好になる。
【0037】また、付着させる金属酸化物は鉄酸化物でもよく、この鉄酸化物がFe23であることにより、Fe23が原子炉内に存在する不純物の主成分であることから、原子炉内における電気化学的な相互作用が防止される。また、Fe23が電気化学的にも安定した酸化物であることから、このFe23を原子燃料用被覆管に付着させることにより、長期間安定した状態で被覆管に付着した状態が維持される。
【0038】
【実施例】第1の実施の形態における電解溶液31をホウ酸アンモニウム1wt%とし、直流電源32の両極間に150Vの直流電圧を約8分間印加した。また、第2の実施の形態における金属を含む溶液51(Zr溶液24)としては、Zrアルコキシドを純水で希釈したものが使用され、Zrアルコキシドとして、Zrエトキシド、Zrプロキシド、Zrプロキシド等の金属アルコキシドが使用され、これらの有機金属溶液を有機溶媒等に混合した溶液が用いられた。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、高燃焼度化に伴う原子炉運転の長期化や、異種金属間どうしの電気化学的な相互作用と、水素注入、亜鉛注入あるいは貴金属注入等の原子炉水質の変化との相乗作用に対しても充分耐食性に優れた被覆管を提供することができる。
【0040】また、請求項2および3に係る発明によれば、被膜が原子燃料用被覆管に部分的に形成されることにより、原子燃料用被覆管の両端の開口を仮端栓によって覆う必要がないので、製造工程が省略できるから製造時間が短縮されて生産性が向上するとともに、製造コストが低減される。
【0041】また、請求項4に係る発明によれば、被膜の付着が良好になり、均一な膜厚の被膜が短時間で形成される。
【0042】また、請求項5に係る発明によれば、Fe23が原子炉内に存在する不純物の主成分で、かつ絶縁物であり、電気化学的にも安定した酸化物であるので、このFe23を原子燃料用被覆管に付着することにより、原子炉内における電気化学的な相互作用を防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000229461
【氏名又は名称】株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン
【住所又は居所】東京都中央区銀座6丁目4番4号
【出願日】 平成13年12月25日(2001.12.25)
【代理人】 【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
【公開番号】 特開2003−194977(P2003−194977A)
【公開日】 平成15年7月9日(2003.7.9)
【出願番号】 特願2001−391580(P2001−391580)