| 【発明の名称】 |
磁気記録媒体 |
| 【発明者】 |
【氏名】冨安 弘
【氏名】諸石 圭二
【氏名】梅澤 禎一郎
【氏名】阿山 兼士
|
| 【要約】 |
【課題】熱揺らぎ特性が良好で、しかも、保磁力角形比(S*)、パルス幅、オーバーライト特性、媒体ノイズ(S/N比)といった記録再生特性が良好な磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】ガラス基板1上に、少なくとも、反強磁性交換相互作用を制御する強磁性材料からなる第1の磁性層5、強磁性材料からなる第2の磁性層7と、前記第1の磁性層5と第2の磁性層7との間に形成されて反強磁性交換相互作用を誘導するスペーサ層6とを有し、前記第2の磁性層7は、下部磁性層71と上部磁性層72との複数の層からなることを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】基板上に、少なくとも、反強磁性交換相互作用を制御する強磁性材料からなる第1の磁性層と、強磁性材料からなる第2の磁性層と、前記第1の磁性層と第2の磁性層との間に形成されて反強磁性交換相互作用を誘導するスペーサ層とを有する磁気記録媒体であって、前記第2の磁性層は、複数の層からなることを特徴とする磁気記録媒体。 【請求項2】前記第2の磁性層を構成する複数の層は、互いに隣接される任意の2層を比較したとき、前記基板側に配置される一方の層の膜厚が他方の層の膜厚より小さいことを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。 【請求項3】前記第2の磁性層を構成する複数の層は、互いに隣接される任意の2層を比較したとき、前記基板側に配置される一方の層の異方性磁界が他方の層の異方性磁界より小さいことを特徴とする請求項1又は2記載の磁気記録媒体。 【請求項4】前記第2の磁性層を構成する複数の層は、互いに隣接される任意の2層を比較したとき、前記基板側に配置される一方の層の飽和磁束密度が他方の層の飽和磁束密度より小さいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気記録媒体。 【請求項5】前記スペーサ層の表面粗さは、Rmaxが6nm以下、Raが0.6nm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気記録媒体。 【請求項6】前記スペーサ層は、少なくともRuを含む材料からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気記録媒体。 【請求項7】前記基板と前記第1の強磁性層との間に下地層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の磁気記録媒体。 【請求項8】請求項7記載の磁気記録媒体であって、前記下地層は、前記第1の磁性層側にhcp構造を有する中間層を備えることを特徴とする磁気録媒体。 【請求項9】請求項8記載の磁気記録媒体であって、前記中間層は、前記基板側から前記各磁性層側に向かうに従って、前記第1の磁性層との結晶整合性が向上するように形成されていることを特徴とする磁気記録媒体。 【請求項10】請求項8又は9記載の磁気記録媒体であって、前記中間層は、複数の層からなることを特徴とする磁気記録媒体。 【請求項11】請求項8ないし10のいずれかに記載の磁気記録媒体であって、前記中間層の前記第1の磁性層側は、強磁性材料からなることを特徴とする磁気記録媒体。 【請求項12】前記基板はガラス基板であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の磁気記録媒体。 【請求項13】前記下地層は、少なくとも前記各磁性層の結晶粒を制御するプリコート層が含まれていることを特徴とする請求項7ないし11のいずれかに記載の磁気記録媒体。 【請求項14】前記プリコート層は、前記下地層において前記基板側に形成され、CrとTaを含む合金であることを特徴とする請求項13記載の磁気記録媒体。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、情報の記録再生を行うための磁気ディスク装置に好適な磁気記録媒体に関する。 【0002】 【従来の技術】HDD(ハードディスクドライブ)の高記録密度化を達成するためには、媒体ノイズの低減が不可欠である。これまでの媒体ノイズの低減は、日々進歩する磁気ヘッドの出力特性の改善を助けとし、磁気ディスクのMr・t(残留磁化膜厚積)を低減させる等のための膜構成や膜材料を改善することにより、実現してきた。 【0003】このMr・tの低減は、R/W(リードライト:読み書き)特性を改善させるためには極めて有効な手段であるが、同時に熱揺らぎ特性の問題を引き起こしつつある。Mr・tの低減、即ち磁性層膜厚の低減は、磁性層の結晶粒径(グレインサイズ)を微細化し、媒体ノイズの改善に繋がるが、微細化された結晶粒は、記録された磁化を保持するのに十分な保磁力(Hc)を持たなくなり、その結果、記録信号が減衰する現象(熱揺らぎ)が現れてきた。 【0004】この記録信号が減衰する現象(熱揺らぎ)を防ぐために、さまざまな膜構成が提案されている。その一つとして最近注目される技術として、AFC(Anti−Ferro−Coupled−Film:反強磁性結合膜)構造がある(特開2001−56923号公報参照)。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】この特開2001−56923号公報に記載の磁気記録媒体は、非磁性分断層(Ru,Rh,Ir等)により磁性層を上下に分断して多層構造にしたものである。すなわち、非磁性分断層により、磁気記録層を分断して複数層にし、それぞれの層の磁化方向が互いに反平行となるようにし、これにより、熱揺らぎ特性を良好にしたものである。 【0006】しかし、AFC構造を用いた膜は、熱揺らぎ特性は良好であったとしても、構造上全体の磁性層膜厚が大きくなってしまう。このため、この磁性層膜厚の増大により、保磁力角形比(S*)が小さくなる。また、パルス幅(PW)やオーバーライト特性も悪化する。また、磁性層膜厚の増大は、磁性層のグレインサイズを増大させ、媒体ノイズ(S/N比)も悪化させる傾向にある。このようなことから、これらの記録再生特性は、近年の高記録密度化における要望を必ずしも満足するものではない。本発明は、上述の背景のもとでなされたものであり、熱揺らぎ特性が良好で、しかも、保磁力角形比(S*)、パルス幅、オーバーライト特性、媒体ノイズ(S/N比)といった記録再生特性が良好な磁気記録媒体を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するための手段として、第1の手段は、基板上に、少なくとも、反強磁性交換相互作用を制御する強磁性材料からなる第1の磁性層と、強磁性材料からなる第2の磁性層と、前記第1の磁性層と第2の磁性層との間に形成されて反強磁性交換相互作用を誘導するスペーサ層とを有する磁気記録媒体であって、前記第2の磁性層は、複数の層からなることを特徴とする磁気記録媒体である。第2の手段は、前記第2の磁性層を構成する複数の層は、互いに隣接される任意の2層を比較したとき、前記基板側に配置される一方の層の膜厚が他方の層の膜厚より小さいことを特徴とする第1の手段にかかる磁気記録媒体である。第3の手段は、前記第2の磁性層を構成する複数の層は、互いに隣接される任意の2層を比較したとき、前記基板側に配置される一方の層の異方性磁界が他方の層の異方性磁界より小さいことを特徴とする第1又は第2の手段にかかる磁気記録媒体である。第4の手段は、前記第2の磁性層を構成する複数の層は、互いに隣接される任意の2層を比較したとき、前記基板側に配置される一方の層の飽和磁束密度が他方の層の飽和磁束密度より小さいことを特徴とする第3の手段にかかる磁気記録媒体である。第5の手段は、前記スペーサ層は、少なくともRuを含む材料であることを特徴とする第1ないし第4のいずれかの手段にかかる磁気記録媒体である。第6の手段は、前記基板と前記第1の強磁性層との間に下地層が形成されていることを特徴とする第1ないし第5のいずれかの手段にかかる磁気記録媒体である。第7の手段は、前記基板はガラス基板であることを特徴とする第1ないし第6のいずれかの手段にかかる磁気記録媒体である。第8の手段は、前記下地層は、少なくとも磁性層の結晶粒を制御するプリコート層が含まれていることを特徴とする第1ないし第7のいずれかの手段にかかる磁気記録媒体である。第9の手段は、前記プリコート層は、前記下地層においてガラス基板側に形成され、CrとTaを含む合金であることを特徴とする第8の手段にかかる磁気記録媒体である。 【0008】上記手段において、第2の磁性層を複数の層としたことにより、第2の磁性層を単層にした場合に比較して、熱揺らぎ特性を改善しながら、保磁力角形比(S*)、パルス幅PWの改善することが可能になる。また、上記手段において、第2の磁性層を構成する複数の層を、互いに隣接される任意の2層を比較したとき、前記基板側に配置される一方の層の膜厚を他方の層の膜厚より小さくしたことにより、基板から離れた位置に配置された比較的厚い層に、主として磁気記録再生の機能をもたせ、一方、基板側の比較的薄い層に、スペーサ層上に直接磁性層を形成した場合の結晶配向の乱れを防止するための機能をもたせることができる。すなわち、磁気記録再生を行うに適した厚さを有する磁性層と、スペーサ層とは、互いに格子定数が必ずしも近似しない場合がある。そこで、スペーサ層と磁気記録再生を行うに適した磁性層との双方に対して格子定数が近似した層(磁性層)を設けることにより、両者の格子定数の違いを緩和することができる。この層は、主として格子定数を近似させる(マッチングさせる)だけであるので、なるべく薄い層がよい。このマッチングをとることにより、スペーサ層上に直接磁性層を形成した場合に比較して、結晶配向の乱れをより少なくできる。その結果、保磁力角形比(S*)、パルス幅PWを改善できる。 【0009】しかし、この場合、格子定数のマッチングをとるために、上記薄い層として、むやみに異方性磁界の大きな磁性層を選択してしまうと、反強磁性交換相互作用を制御する強磁性材料からなる第1の磁性層と第2の磁性層との反強磁性交換相互作用が妨げられ、逆に、熱揺らぎ特性が悪化してしまうこともある。そのため、上記基板側の薄い層の異方性磁界をこの薄い層と接する厚い層(磁性層)の異方性磁界より小さくすることによって、これを防止できる。すなわち、結晶配向を改善しながら、第1の強磁性層と第2の磁性層との反強磁性交換相互作用が薄い層(磁性層)の異方性磁界に左右されにくくなるので、熱揺らぎ特性を改善しながら、保磁力角形比(S*)、パルス幅PWの改善が行われることになる。ここで、薄い層(第2の磁性層が2層の場合には下部磁性層という。以下、薄い層を説明の都合上、下部磁性層という場合がある)と厚い層(第2の磁性層が2層の場合には上部磁性層という。以下、この厚い層を説明の都合上、上部磁性層という場合がある)の異方性磁界は、例えば、下部磁性層、上部磁性層に含まれるPtの含有量を制御することによって調整することができる。下部磁性層の異方性磁界を上部磁性層の異方性磁界より小さくするためには、例えば、下部磁性層に含まれるPtの含有量を上部磁性層に含まれるPtの含有量より少なくすることにより達成することができる。具体的には、下部、上部磁性層に含まれるPtの含有量は、5〜14at%の範囲で調整される。 【0010】ここで、上述のように、スペーサ層と上部磁性層との間に膜厚が薄い下部磁性層を介在させることにより、スペーサ層上に直接上部磁性層を形成した場合の結晶配向の乱れを防止することができる。これは、上述のとおり、下部磁性層と上部磁性層の格子定数のマッチングが良好になる為と考えられる。これにより、保磁力角形比(S*)、パルス幅(PW)は改善する。しかしながら、その一方で、媒体ノイズ(S/N比)、熱揺らぎ特性は低下する場合がある。媒体ノイズ(S/N比)低下の理由の一つとしては、スペーサ層との格子定数のズレがある下部磁性層は、結晶配向の乱れを含むので、下部磁性層を厚くする事はノイズを増加させる原因となる。このため下部磁性層は、上部磁性層の配向性を改善する効果を残した状態で、極力薄くする事が望ましい。 【0011】また、本発明者の研究によれば、下部磁性層の飽和磁束密度を上部磁性層の飽和磁束密度より小さくすることにより、下部磁性層のノイズ源を低減する働きを有し、媒体ノイズ(S/N比)を良好にすることができることも判明した。これによって、保磁力角形比(S*)が改善され、パルス幅(PW)、オーバーライト特性、媒体ノイズ(S/N比),熱揺らぎ特性が良好になる。ここで、下部磁性層と上部磁性層の飽和磁束密度は、例えば、下部磁性層、上部磁性層に含まれるCrの含有量を制御することによって調整することができる。下部磁性層の飽和磁束密度を上部磁性層の飽和磁束密度より小さくするためには、下部磁性層に含まれるCrの含有量を上部磁性層に含まれるCrの含有量より多くすることにより達成することができる。具体的には、下部、上部磁性層に含まれるCrの含有量は、14〜24at%の範囲で調整される。 【0012】この場合、下部磁性層の範囲は、5〜80オングストロームで、これはS/Nを極度に悪化させないという点で好ましい。上部磁性層の膜厚は、所望のMrtにより適宜調整される。また、第2の磁性層は、2層、3層、4層以上とすることができる。製造コストなどの点から、2層又は3層とすることが望ましい。また、下部磁性層の材料としては、例えば、CoCrPtTa、CoCrTa、CoCrPt、CoPt、CoPtTa、CoCrPtTaB、CoCrPtB、CoCr(Cr<22at%)などのCo系合金が挙げられる。 【0013】特に、下部磁性層としてCoCrPtTa合金を用いるとS/N比が高くなるので好ましい。 【0014】また、さらに媒体ノイズを低減させる目的で、結晶粒の微細化の点から、さらに、O、N、C、H、H2O等の元素等を添加しても良い。下部磁性層にこれらの元素等を添加する方法としては、ターゲット中にこれらの元素等が含有したものを使用し、不活性ガス雰囲気下でスパッタにより成膜する方法や、O2、N2、NO、NO2、CH4等に不活性ガスを混合した混合ガス雰囲気下で反応性スパッタにより成膜する方法などがあげられる。この場合、過度にこれらの元素等を添加させないほうがこのましい。何故なら、ガス添加により下部磁性層の磁化が低下し、配向制御層と磁性層の両方の役割を兼ねなくなるからである。添加されるガス濃度は、0.1〜2%であり、さらに望ましくは0.25〜1%が好ましい。 【0015】また、上部磁性層の材料としては、例えば、CoCrPtB、CoCrPtTaB、CoCrPtTa、CoCrPt、CoCrTa、CoCr(但し、Cr<22at%)などのCo系合金が挙げられる。特に、高保磁力Hcで高いS/N特性が得られる点からCo、Pt、Bを含有するCoCrPtB、が好ましい。また、第1の磁性層の材料としては、例えば、CoCr(Cr<22at%)、CoCrPt、CoCrPtB、CoCrPtTa、CoCrPtTaB、CoCrTa、CoCrRuなどのCo系合金が挙げられる。第1の磁性層の膜厚は、熱揺らぎ特性の要求値によって適宜調整する。具体的には、膜厚の範囲は、5〜80オングストロームとすることができる。 【0016】上述した第1の磁性層の材料のなかでも、CoCr合金を用いた場合、熱揺らぎ特性が改善できるので好ましい。 【0017】本発明において、スペーサ層の表面粗さはRmaxが6nm以下、Raが0.6nm以下であることが好ましい。ここでいう表面粗さとは、日本工業規格JISB0601規定のものである。反強磁性交換相互作用を誘導するスペーサ層の作用は、スペーサ層の膜厚に大きく依存する。スペーサ層の表面粗さが大きい場合、第1の磁性層と第2の磁性層との間の交換相互作用にバラツキが生じることが判った。この場合、磁気記録媒体の面内における前記反強磁性交換相互作用に分布が生じるので、熱揺らぎの面内分布が引き起こされる。具体的には、スペーサ層の表面粗さはRmaxが6nm以下、Raが0.6nm以下であると、上記バラツキ(分布)が抑制されることが判った。スペーサ層の表面粗さを所定とするための手段としては、所定荒さ以下に鏡面研磨された基板を用いることが好ましい。このようにすることで、容易にスペーサ層の表面粗さを所定のものとすることができる。本発明においては、Rmaxが6nm以下、Raが0.6nm以下に鏡面研磨された基板を用いることが好ましい。 【0018】また、スペーサ層の材料としては、例えば、Ru、Rh、Irやこれらの合金、例えば(CoRu、NiRuなど)が挙げられる。スペーサ層の膜厚は、反強磁性交換相互作用を得られる範囲において適宜調整する。具体的には、膜厚の範囲は、4〜10オングストローム、好ましくは、7〜9オングストロームとすることができる。特に、スペーサ層の材料としてRuとすることにより、大きな反強磁性相互作用を得られるので好ましい。 【0019】また、通常、磁気記録媒体は、基板と第1の磁性層との間に下地層が形成される。下地層としては、磁性層側から基板側に向かうに従って、例えば、hcp構造を有する中間層、bcc体心立方構造を有する下層、シード層などの複数層を形成することができる。また、これらのうちの単層でも構わない。 【0020】中間層はhcp六方最密充填構造を有し、hcp構造を有する磁性層の結晶配向を整える目的で設けられる。例えば、CoCr、CoCrB、CoCrTa、CoCrPt、CoCrPtTaなどの材料を用いることができる。尚、中間層は非磁性、強磁性材料どちらであっても構わない。また、中間層は、複数の層としてもよい。中間層は、基板側から磁性層側に向かうにしたがって磁性層との結晶整合性が向上するように(例えば、Pt含有量が基板側から磁性層側に向かうにしたがって増加するように)形成することが好ましい。中間層を使用した場合のAFC構造の膜構成としては、例えば、CoCr/CoCrPtTa/Ru/CoCrPtTa/CoCrPtB、CoCr/CoCrPtTa/CoCrPtTa/Ru/CoCrPtTa/CoCrPtBとすることができる。下層はbcc構造を有し、主に静磁気特性を良好にする目的で設けられる。例えば、CrやCr合金(CrMo、CrV、CrW、CrTiなど)などの材料を用いることができる。シード層は、その上に形成する層の結晶粒径を制御する目的で設けられる。例えば、NiAl、AlCo、CrTi、CrNi、AlRuなどの材料を用いることができる。 【0021】なお、前記中間層を設ける場合においては、中間層の膜厚は5〜50オングストロームとするのが好ましい。50オングストロームを超えると磁性層の磁性粒子を大きくする作用が現れ、S/N比が低下するので好ましくない。5オングストローム未満の場合では、磁性層の結晶配向を整える作用が充分でないので好ましくない。この場合、中間層の材料としては、CoCr合金、CoCrPtTa合金を用いると、磁性層との結晶整合性が高く好適である。更に結晶整合性を高めるためには、中間層に含有されるCrは22at%未満とするのが好ましい。このようにすることで、前述した中間層の作用(磁性層の結晶配向を整える作用)が好適に発揮できる。 【0022】また、基板材料は、特に限定されない。アルミニウム、ガラス、ガラスセラミックス、セラミックス、シリコン、カーボン、チタン等が挙げられる。基板表面の平滑性、平坦性、機械的強度、化学的耐久性などの点から、ガラス基板が好ましい。基板上に形成される膜の結晶を制御する点においては、ガラス基板の中でも特にアモルファスガラスが好ましい。アモルファスガラスとしては、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、ソーダライムガラスなどの材料が挙げられる。特にガラス基板とする場合、ガラスにはさまざまな成分が含まれている理由で、微視的(ミクロ)に見た場合、結晶粒の初期成長に分布を生じるものと思われるので、構成6にあるように下地層として、少なくとも磁性層の結晶粒を制御するプリコート層が含まれることが望ましい。ここでいう結晶粒の制御とは、結晶粒径の大きさ、結晶粒径のばらつき(分散)等をさす。 【0023】プリコート層として、CrとTaを含む合金とすることにより、出力(LF)、パルス幅PW、媒体ノイズ(S/N比)の特性が顕著に良好になるので好ましい。CrとTaを含む合金としては、CrTa、CrTaX(X:Ti、O2)が挙げられる。CrとTaを含む合金は、アモルファスか殆どアモルファスの構造が、結晶粒の初期成長の均一化を促す点で好ましい。その場合、Taの含有量は、30〜80at%とすることが好ましい。 【0024】 【発明の実施の形態】以下、本発明の磁気記録媒体について説明する。 (実施例1)図1は本発明の実施例にかかる磁気記録媒体の膜構成を示す図である。図1に示すとおり、実施例の磁気記録媒体は、基板(ガラス基板)1上に、プリコート層2、シード層3、下地層4、第1の磁性層5、スペーサ層6、下部磁性層71、上部磁性層72、保護層8、潤滑層9を順次積層したものである。なお、下部磁性層71と上部磁性層72とは、第2の磁性層7を構成するものである。ガラス基板1は、化学強化されたアルミノシリケートガラスからなり、その表面粗さは最大高さRmax=3.2nm、平均表面粗さRa=0.3nm(原子間力顕微鏡にて測定)で鏡面研磨されている。 【0025】プリコート層2はCrTaのアモルファス層(膜厚300オングストローム)からなる。合金膜におけるCrとTaとの原子組成比は60:40である。シード層3はAl合金薄膜(膜厚250オングストローム)からなる。 【0026】下地層4は、CrW薄膜(膜厚100オングストローム)で、磁性層の結晶構造を良好にするために設けられている。このCrWの下地層4は、Cr:90at%、W:10at%の組成比で構成されている。なお、CrW下地層4は、CrW下地層4の結晶粒の微細化を促進させるため、0.75%のCO2とArの混合ガス雰囲気中でスパッタ成膜したものである。 【0027】また、第1の磁性層5は、強磁性のhcp構造からなるCo系合金薄膜(膜厚:25オングストローム)である。 【0028】スペーサ層6は、Ru膜(膜厚7オングストローム)である。また、下部磁性層71は、CoCrPtTa合金薄膜(膜厚5オングストローム)で、Co、Cr、Pt、Taの含有量はそれぞれ、Co:70at%、Cr:19at%、Pt:9at%、Ta:2at%である。 【0029】上部磁性層72は、CoCrPtB合金薄膜(膜厚:150オングストローム)で、Co、Cr、Pt、Bの含有量はそれぞれ、Co:61at%、Cr:20at%、Pt:12at%、B:7at%である。 【0030】保護層8は、磁性層が磁気ヘッドとの接触によって劣化することを防止するためのものであり、膜厚45オングストロームの水素化カーボン膜からなる。また、潤滑層9は、パーフルオロポリエーテルの液体潤滑剤からなり、この膜によって磁気ヘッドとの接触を緩和している。尚、膜厚は8オングストロームである。 【0031】次に、上述の構成からなる磁気記録媒体の製造方法について説明する。まず、低温型イオン交換によって化学強化したガラス基板の主表面を精密研磨することによって鏡面(Rmax=3.2nm、Ra=0.3nm)にする。次に、このガラス基板の主表面上に静止対向型スパッタリング装置によって、プリコート層2、シード層3、下地層4、第1の磁性層5、スペーサ層6、下部磁性層71、上部磁性層72、保護層8を順次成膜した。尚、下地層4は、Ar+CO2の混合ガス雰囲気下で、保護層8は、Ar+H2の混合ガス雰囲気下で、それ以外の層は、Arの不活性ガス雰囲気下でスパッタリング成膜した。次いで、保護層8上にパーフルオロポリエーテル潤滑剤をディップ処理することによって、潤滑層9を形成し、磁気ディスクを得た。 【0032】この得られた磁気ディスクの保磁力Hcは3698Oe、保磁力角形比(S*)は0.65、出力LFは1.52mV、パルス幅PWは12.3nsec、SN比は30.38dB、オーバーライト特性(OW)は、−33.34[dB]、熱揺らぎ特性は、信号出力減衰:0.12(−dB/decade)であった。このように、熱揺らぎ耐性は良好で、かつ保磁力角形比(S*)、パルス幅PW、SN比、オーバーライト特性の記録再生特性の全てにおいて良好な結果となった。 【0033】尚、これらの特性は以下のようにして測定したものである。以下の実施例、比較例も同じ測定方法によって測定した。保磁力Hc、保磁力角形比(S*)は、ヘッド型磁気測定装置(DMS社製:Hr/Mrt Disk Mapper)で測定した。保磁力Hcは、PWと熱揺らぎ特性の改善において、ヘッドの書きこみ範囲内で高いほど良い。また保磁力角形比(S*)は、面内配向性と磁性粒間の磁気的分離を表す指標で、普通は、高いほど良い。 【0034】出力LFは、電磁変換特性測定機(Guzik)により測定した。出力LFは、その他の電磁変換特性が維持できるのであれば、エラーレートを良くする点で、高ければ高いほど良い。パルス幅(PW50:孤立信号波形の半値幅)の測定は次のようにして行った。PW50測定用のMRヘッドを搭載した電磁変換特性測定機(Guzik)で孤立再生信号を抽出し、グランド(0)に対する出力信号のピーク値の50%における孤立波形の幅をPW50とした。 【0035】なお、このPW50は高記録密度のためには、小さければ小さいほど良い。これは、パルス幅が狭いと同一面積上により多くのパルス(信号)を書き込めることになるからである。一方、PW50が大きいと、隣り合うパルス(信号)同士が干渉しあい、信号を読み出すときにエラーとなって現れる。この波形干渉がエラーレートを悪くする。 【0036】SN比は、記録再生出力の測定を次のようにして行い求めた。磁気ヘッド浮上量が0.025μmの磁気抵抗型ヘッド(以後、MRヘッドと称す)を用いて、MRヘッドと磁気ディスクの相対速度を10m/secとして線記録密度520kfcl(1インチあたり520000ビットの線記録密度)における記録再生出力を測定した。また、キャリア周波数100MHzで、測定帯域を120MHzとしてスペクトラムアナライザにより、信号記録再生時のノイズスペクトラムを測定した。本測定に用いたMRヘッドは、書き込み/読み取り側にそれぞれトラック幅2.0/0.5μm、磁気ヘッドギャップ長は0.20/0.11μmである。SN比は、ノイズによる信号の読み取りエラーを防ぐ為に、高いほどエラーレートが改善され、且つ高記録密度を達成できる。 【0037】オーバーライト特性(OW)も同様に電磁変換特性測定機(Guzik)により測定した。オーバーライト特性は、HDDを組みたてた際、ヘッドの書きこみ能力不足による歩留まり悪化を改善する意味において、高いほどよい。 【0038】熱揺らぎ特性は、次のようにして行った。サーマルオフトラック(ヘッドサスペンションの熱膨張によって磁気記録媒体上のトラックに対し、磁気ヘッドがずれることにより、信号減衰が発生する現象)の影響を受けず磁気記録媒体の熱揺らぎによる信号減衰量のみを正確に評価するため、ライトトラック幅がリードトラック幅に対して2倍以上のリ一ドライト素子を有することを特徴としているMRヘッドを用意し、得られた磁気記録媒体たる磁気ディスクと共にシステム内のヘッド/ディスク機構部にセットする。次にそのヘッド/ディスク機構部を高温環境下にさらすために温度制御可能な環境槽に投入する。環境槽内が設定した温度に安定したら、リードライト回路部よりライト信号をMRヘッドのライト素子に送り、磁気ディスクに信号を書き込む。そして、信号を書き込んだ直後から、磁気ディスクに書き込まれた信号をMRヘッドのリード素子から読み出し、リードライト回路部にて増幅した後、信号評価部にて測定する。信号評価部では一定時間間隔でリード信号の振幅値を記録していく。信号評価部では、例えば、スペクトラムアナライザを用いて測定を行う。 【0039】本測定の条件は、環境槽の温度が60℃、磁気ディスクへ書き込んだ信号の記録密度は、100KFlux/inchである。また、本測定に用いたヘッドは、ライトトラック幅が2.0μm、リードトラック幅が0.5μm、ライトギャップ長が0.20μm、リードギャップ長が0.11μm、リードライト素子部分の浮上量が20nmのMRヘッドである。 【0040】(比較例1)次に、上記実施例1における下部磁性層71を設けなかった以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。この得られた磁気ディスクの保磁力Hcは3639Oe、保磁力角形比(S*)は0.54、出力LFは1.39mV、パルス幅PWは12.6nsec、SN比は30.35dB、オーバーライト特性(OW)は、−26.44[dB]、熱揺らぎ特性は、信号出力減衰で0.17(−dB/decade)であった。 【0041】従来のAFC構造と比べ、本発明の膜構造にした場合、熱揺らぎ特性が良好で、かつ保磁力角形比(S*)、パルス幅PW、O/W特性が特に改善されていることがわかる。特に、O/W特性については、磁気ディスクとして−30dB以上が一般的に必要とされており、望ましくは−33dB以上が必要とされている。これまでのAFC構造では、書きこみが困難であったものが、本特許の構成を用いる事で、充分使用できる領域のO/W特性を得られている事が分かる。 【0042】図2は本発明の実施例、参考例及び比較例にかかる磁気記録媒体のS/N比と信号出力減衰の関係を示したグラフである。◆が本発明の実施例にかかるAFC構造を適用した磁気ディスクの場合を、□は従来のAFC構造を適用した場合の磁気ディスクの場合を、*はAFC構造を適用しない従来の磁気ディスクの場合のS/N比と信号出力減衰を示す。尚、各プロットした値は、各種の磁気ディスクにおいて、下地層4や磁性層の膜材料、膜組成を変化させたときに得られた値である。 【0043】一般に記録密度を上げる為には、S/N比の改善が必須である。しかし、グラフ中にあるように、AFC構造を適用しない場合、S/Nを改善する(すなわち磁性粒を微細化する)と、信号出力減衰が大きくなり(熱揺らぎ特性が悪くなり)、S/N比の改善に限界が生じていた。 【0044】信号出力減衰の許容値は、各ドライブメーカーにより異なるが、おおよそ−0.2dB/decadeを超えると許容できないとされている。その為、AFC構造が提案されたが、この従来のAFC構造においても熱揺らぎ特性としては不充分でありS/N比改善の限界が見えていた。ところが、本発明の新規の膜構造であれば、S/N比を改善した状態で耐熱揺らぎ特性を得る事ができる。このことは、更に記録密度を向上させることができることを示しており、従来AFC構造の限界に対し2世代分の記録密度向上が可能である(磁気ディスクにおいて、1世代に必要なS/N比の改善は約2dBの向上が必要)。 【0045】(参考例1)次に、実施例1の磁気ディスクにおいて、下部磁性層71の膜厚を80オングストローム、上部磁性層72の膜厚を70オングストロームとした以外は実施例1と同様にして磁気ディスクを作製した。その結果を図3の表1に示す。図3の表1に示すように上部磁性層72の膜厚より下部磁性層71の膜厚が厚くなることにより保磁力Hcの低下はあるものの、従来のAFC構造(比較例1)と比べて保磁力角形比(S*)、オーバーライト特性(O/W)が大幅に改善し、さらに、パルス幅(PW)も改善していることがわかる。 【0046】(参考例2)次に、実施例1の磁気ディスクにおいて、下部磁性層71のCr濃度及びPt濃度を図3の表1のように多くした以外は実施例1と同様にして磁気ディスクを作製した。その結果を図3の表1に示す。図3の表1に示すように、下部磁性層71の異方性磁界が上部磁性層72の異方性磁界よりも大きくなったことにより、従来のAFC構造の場合(比較例1)とほぼ同じ熱揺らぎ特性となったが、オーバーライト特性(O/W)が大幅に改善していることがわかる。 【0047】(実施例2、3)次に、実施例1の磁気ディスクにおいて、下部磁性層71のCr濃度を変化(下部磁性層71の飽和磁束密度を変化)(実施例2)、下部磁性層71のPt濃度を変化(下部磁性層71の異方性磁界を変化)(実施例3)させた以外は実施1と同様にして磁気ディスクを作製した。その結果を図3の表1に示す。 【0048】実施例2のように下部磁性層71のCr濃度を変化させることにより、実施例1に比べ下部磁性層71の飽和磁束密度が上部磁性層72の飽和磁束密度よりさらに小さくすることにより、実施例1の磁気ディスクに対し、更にO/W特性、S/N比を改善することができた。また、実施例3のように下部磁性層71のPt濃度を変化させることにより、保磁力Hc、熱揺らぎ特性を改善することができた。 【0049】(実施例4、5)次に、実施例1の磁気ディスクにおいて、下部磁性層71の組成比を図3の表1のように変化させた(Taの含有量を増加させ、Ptの含有量を減少させた)以外は実施例1と同様にして磁気ディスクを作製した。その結果を図3の表1に示す。図3の表1に示すように、実施例4、5ともにTaの含有量の増加により、S/N比を更に改善することができた。実施例4においては、Ptの含有量の減少により、(S*)が従来のAFCの磁気ディスク(比較例1)と同等であったが、熱揺らぎ特性、オーバーライト特性(O/W)が特に改善することができた。 【0050】(参考例3)次に、実施例1の磁気ディスクにおいて、下部磁性層71のCr濃度を図3の表1のように小さくした以外は実施例1と同様にして磁気ディスクを作製した。その結果を図3の表1に示す。図3の表1に示すように、下部磁性層71の異方性磁界は上部磁性層72の異方性磁界より小さくなっているが、下部磁性層71の飽和磁束密度が上部磁性層72の飽和磁束密度より大きくなったことにより、S/N比が悪化していることがわかる。上述の実施例1〜5とを対比すると、下部磁性層71の異方性磁界が上部磁性層72の異方性磁界より小さく、さらに、下部磁性層71の飽和磁束密度が上部磁性層72の飽和磁束密度よりも小さくすることにより、熱揺らぎ耐性が良好で、保磁力角形比(S*)、パルス幅(PW)、オーバーライト特性(O/W)、媒体ノイズ(SN)が良好な磁気ディスクが得られることがわかる。 【0051】(参考例4)次に、実施例1の磁気ディスクにおいて、CrとTaを含む合金のプリコート層2を形成しなかった以外は実施例1と同様にして磁気ディスクを作製した。その結果を図3の表1に示す。実施例とのデータを対比してもわかるように、CrとTaを含む合金のプリコート層2をガラス基板上に形成することによって、熱揺らぎ特性は維持したまま、保磁力Hc、保磁力角形比(S*)、パルス幅PW、S/N比を改善することができることがわかる。 【0052】(実施例6)次に、実施例1において、下地層4のCrW薄膜と第1の磁性層5との間にhcp構造を有する中間層を介挿させた磁気記録媒体(実施例6)を製造した。このとき、中間層は、CoCrPtTa合金からなり、Co:71at%、Cr:19at%、Pt:8at%、Ta:2at%である。膜厚は10オングストロームである。該中間層はhcp六方最密充填構造を有し、hcp構造を有する磁性層の結晶配向を整える目的で設けられている。この点以外は、実施例1と同様である。なお、該CoCrPtTa合金は強磁性材料である。結果は、保磁力Hcは3668エルステッド、保磁力角型比S*は0.80、LFは1.50mV、PWは12.0nsec、O/Wは33.21(−dB)、S/Nは29.79dB、熱揺らぎは0.07(−dB/decade)という好特性が得られた。実施例6の結果は、実施例1の結果と比較して、保磁力角型比、PW、熱揺らぎが大幅に改善した結果である。これは、中間層を介挿したことにより、hcp構造を有する磁性層の結晶配向が整えられたためであると考えられる。 【0053】(実施例7)さらに、実施例6において、下地層4の前記Cr:90at%、W:10at%薄膜と、前記Co:71at%、Cr:19at%、Pt:8at%、Ta:2at%からなる前記中間層との間に、更に、CoCr合金からなる中間層を介挿させた(実施例7)。該CoCr合金は、Co:80at%、Cr:20at%である。膜厚は25オングストロームである。実施例7では、基板1側から磁性層5,7側に向かうに従って、Ptの含有量を増加させることにより、磁性層5,7との結晶配向が向上するように形成されている。この点以外については実施例1と同一である。結果は、保磁力Hcは3659エルステッド、保磁力角型比S*は0.81、LFは1.48mV、PWは12.0nsec、O/Wは33.15(−dB)、S/Nは29.55dB、熱揺らぎは0.06(−dB/decade)という好特性が得られた。この結果は、実施例1、実施例6に対してさらに保磁力角型比と熱揺らぎが改善した結果であり、磁性層の結晶配向が更に向上したものである。 【0054】(実施例8)次に、ガラス基板1として表面粗さRmaxが5.5nm、Raが0.6nmのガラス基板を用いた以外は実施例1と同様に磁気記録媒体を製造した(実施例8)。表面粗さは原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。スペーサ層6迄形成された基板の表面粗さを測定したところ、本実施例におけるガラス基板1と同様の表面粗さであった。結果は、熱揺らぎが0.13(−dB/decade)であった。実施例1と略同様な数値であった。熱揺らぎ以外に関しても、実施例1と略同様の結果であった。 【0055】(実施例9)次に、ガラス基板1として表面粗さRmaxが7.2nm、Raが0.7nmのガラス基板を用いた以外は実施例1と同様に磁気記録媒体を製造した(実施例9)。スペーサ層6迄形成された基板の表面粗さを測定したところ、本実施例におけるガラス基板1と同様の表面粗さであった。結果は、熱揺らぎが0.16(−dB/decade)であった。実施例1に比べて大幅に特性が悪化した。熱揺らぎ以外に関しては、実施例1と同様の結果であった。実施例1、実施例8、実施例9の熱揺らぎ特性の結果を対比すると、ガラス基板1の表面粗さをRmaxが6nm以下、Raが0.6nm以下とすることにより、熱揺らぎ特性が改善されることが判る。これは、反強磁性交換相互作用を誘導するスペーサ層6の表面粗さが平滑化することにより、その作用が面内で均一化するからである。 【0056】(実施例10〜14)第1の磁性層5の好適な組成を調査するため、強磁性のhcp構造からなるCo系合金薄膜の範囲内で、第1の磁性層5の組成を以下のように調整した磁気記録媒体(実施例10〜14)を製造した。なお、実施例10〜14のシード層3は、Al合金薄膜として、Al:50at%、Ru:50at%からなる薄膜(膜厚250オングストローム)を用いている。以上の点以外は、実施例1と同様である。実施例10では、第1の磁性層5は、Co:93at%、Cr:7at%とした。実施例11では、Co:90at%、Cr:10at%とした。実施例12では、Co:85at%、Cr:15at%とした。実施例13では、Co:80at%、Cr:20at%とした。実施例14では、Co:78at%、Cr:22at%とした。膜厚に関しては実施例1と同様である。結果、実施例10〜実施例14の保磁力、保磁力角型比、LF、PW、O/W、S/Nの結果は実施例1と同様の結果であったが、熱揺らぎに関しては、実施例10においては、0.10(−dB/decade)、実施例11においては、0.11(−dB/decade)、実施例12においては、0.12(−dB/decade)、実施例13においては0.12(−dB/decade)、実施例14においては、0.16(−dB/decade)であった。熱揺らぎ特性の結果は、第1の磁性層5のCr含有量に依存し、Crが22at%(実施例14)の場合、非連続的に熱揺らぎが悪化することが判る。従って、第1の磁性層5の材料としては、Cr<22at%とするのが好適である。Cr<22at%の場合は、前記第1の磁性層の作用である、反強磁性交換相互作用を制御する作用が好適に作用するようになるが、Crの含有率が22at%となると、反強磁性交換相互作用の制御が低下するためである。従って、熱揺らぎを抑止するために、第1の磁性層はCr<22at%することが好ましい。 【0057】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、熱揺らぎ耐性が良好な磁気記録媒体が得られる。さらに保磁力角形比(S*)が良好で、かつ記録再生特性(パルス幅(PW)、オーバーライト特性、媒体ノイズ(SN))が良好な磁気記録媒体が得られる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000113263 【氏名又は名称】HOYA株式会社 【識別番号】501259732 【氏名又は名称】ホーヤ マグネティクス シンガポール プライベートリミテッド
|
| 【出願日】 |
平成14年6月26日(2002.6.26) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091362 【弁理士】 【氏名又は名称】阿仁屋 節雄 (外2名)
|
| 【公開番号】 |
特開2003−85729(P2003−85729A) |
| 【公開日】 |
平成15年3月20日(2003.3.20) |
| 【出願番号】 |
特願2002−186667(P2002−186667) |
|