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【発明の名称】 交差点間走行所要時間推定装置
【発明者】 【氏名】西村 茂樹
【住所又は居所】大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電気工業株式会社大阪製作所内

【要約】 【課題】シミュレーションの手法を採用することにより、信号待ちや行列待ちがある場合も考慮した交差点間走行所要時間を正確に求める。

【解決手段】上流交差点X1の流出部付近の地点及び下流交差点X2の流出部付近の地点に光ビーコンB1,B2をそれぞれ設置し、前記光ビーコンB1,B2を通過した車両の通過時刻の情報を収集し、下流交差点の信号灯色の履歴情報を記憶しておき、同一車両と特定された車両の前記両地点間の通過時間から下流交差点の停止線から下流交差点の前記流出部までの当該車両の通過時間aを引いた時間に基づき、かつ、下流交差点の信号灯色の履歴及び下流交差点手前での信号待ち台数を考慮することにより、上流交差点の流出部付近の地点から、信号待ちがないとした場合の下流交差点の停止線に至るまでの走行所要時間Tを推定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】上流交差点の流出部付近の地点及び下流交差点の流出部付近の地点にそれぞれ設置された車両検出器と、前記車両検出器を通過した車両の通過時刻の情報を収集する通過時刻収集手段と、下流交差点の信号灯色の履歴情報を記憶する信号灯色履歴記憶手段と、前記各地点を通過した車両の同一性を識別する車両識別手段と、車両識別手段により同一車両と特定された車両の前記両地点間の通過時間から下流交差点の停止線から下流交差点の前記流出部までの当該車両の通過時間aを引いた時間に基づき、かつ、下流交差点の信号灯色の履歴及び下流交差点手前での信号待ち台数を考慮することにより、上流交差点の流出部付近の地点から、信号待ちがないとした場合の下流交差点の停止線に至るまでの走行所要時間Tを推定する走行所要時間推定手段とを備えることを特徴とする交差点間走行所要時間推定装置。
【請求項2】下流交差点の信号灯色が赤の場合、下流交差点の信号待ち台数は、車両が下流交差点に入るごとに増加し、下流交差点の信号灯色が青の場合、下流交差点の信号待ち台数は、所定時間ごとに一台ずつ減少していくことを特徴とする請求項1記載の交差点間走行所要時間推定装置。
【請求項3】下流交差点の信号灯色が青の場合でも、下流交差点の信号待ち台数が0でないときは、下流交差点の信号待ち台数は、車両が下流交差点に入るごとに増加することを特徴とする請求項2記載の交差点間走行所要時間推定装置。
【請求項4】前記通過時間aを0とみなすことを特徴とする請求項1記載の交差点間走行所要時間推定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、交差点間走行所要時間推定装置に関するものである。このようにして求められた交差点間走行所要時間は、上流交差点から下流交差点に到達する交通流を予測して交通信号パラメータを最適化する制御に用いられる。
【0002】
【従来の技術】交差点に光ビーコンなどの車両検出器が設置されていることがある。この車両検出器は通過車両を感知するだけでなく、車両に搭載された車載通信機との間で車両識別情報を含む情報のやり取りを行う双方向通信機能を持っている。この双方向通信機能を使えば、2交差点間を走行する車両の識別ができるので、車両の交差点間走行所要時間が決定できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記車両検出器は通常、交差点の流出部付近に設置されているので、上流交差点の流出部から、下流交差点の流出部に至るまでの走行所要時間は決定できるが、実際に交通信号パラメータの制御に必要なデータである上流交差点の流出部から下流交差点の停止線に至るまでの走行所要時間Tを直接決定することはできない。
【0004】なぜなら、車両が下流交差点の停止線で信号待ちすることがあり、この信号待ち時間を考慮する必要があるからである。また、交通量が多いときは、信号待ちのための行列待ち台数も多くなるので、この行列待ち時間も考慮する必要がある。そこで、本発明は、シミュレーションの手法を採用することにより、信号待ちや行列待ちがある場合も考慮した交差点間走行所要時間を正確に求めることのできる交差点間走行所要時間推定装置を実現することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の交差点間走行所要時間推定装置は、上流交差点の流出部付近の地点及び下流交差点の流出部付近の地点にそれぞれ設置された車両検出器と、前記車両検出器を通過した車両の通過時刻の情報を収集する通過時刻収集手段と、下流交差点の信号灯色の履歴情報を記憶する信号灯色履歴記憶手段と、前記各地点を通過した車両の同一性を識別する車両識別手段と、車両識別手段により同一車両と特定された車両の前記両地点間の通過時間から下流交差点の停止線から下流交差点の前記流出部までの当該車両の通過時間aを引いた時間に基づき、かつ、下流交差点の信号灯色の履歴及び下流交差点手前での信号待ち台数を考慮することにより、上流交差点の流出部付近の地点から、信号待ちがないとした場合の下流交差点の停止線に至るまでの走行所要時間Tを推定する走行所要時間推定手段とを備えるものである。
【0006】前記車両検出器は、光ビーコン、超音波車両感知器、路上カメラなど一台一台の車両を感知できるものであればよい。前記車両識別手段は、双方向光ビーコンなどにより車載装置と通信することにより車両を識別するもの、カメラのように車番プレートを読み取るもの、などであればよい。前記下流交差点の停止線から下流交差点の前記流出部までの当該車両の通過時間aは、交差点間通過時間に比べて非常に小さい値となる。したがって、近似的に0とおいてもよい(請求項4)。
【0007】前記「下流交差点の信号灯色の履歴及び下流交差点手前での信号待ち台数を考慮する」とは、具体的には、下流交差点の信号灯色が赤の場合、下流交差点の信号待ち台数を、車両が下流交差点に入るごとに増加させ、下流交差点の信号灯色が青の場合、下流交差点の信号待ち台数を、所定時間ごとに一台ずつ減少させていくことをいう(請求項2)。また、下流交差点の信号灯色が青の場合でも、下流交差点の信号待ち台数が0でないときは、下流交差点の信号待ち台数を、車両が下流交差点に入るごとに増加させることを含めてもよい(請求項3)。
【0008】前記交差点間走行所要時間推定装置の構成によれば、上流交差点から下流交差点の停止線までの同一車両の通過時間に基づき、上流交差点の流出部付近の地点から、信号待ちがないとした場合の下流交差点の停止線に至るまでの走行所要時間Tを推定する。この場合、下流交差点の信号灯色の履歴及び下流交差点手前での信号待ち台数を考慮することとする。すなわち、下流交差点の信号灯色が赤の場合、車両は下流交差点を通過することができず、信号待ち台数を、車両が下流交差点に入るごとに増加させていく。下流交差点の信号灯色が青の場合、下流交差点の信号待ちがあれば、その台数を所定時間ごとに一台ずつ減少させていく。また、下流交差点の信号灯色が青の場合でも、下流交差点の信号待ち台数があるときは、下流交差点の信号待ち台数を、車両が下流交差点に入るごとに増加させていく。
【0009】以上のシミュレーション手法を採用することにより、信号がある交差点においても、上流交差点の流出部付近の地点から、信号待ちがないとした場合の下流交差点の停止線に至るまでの走行所要時間Tを正確に推定することができる。また、交通量が多くて信号待ち行列のある場合でも、信号待ちがないとした場合の下流交差点の停止線に至るまでの走行所要時間Tを正確に推定することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の説明に用いるための左側通行の道路地図である。上流交差点X1の流出部付近に光ビーコンB1が設置され、下流交差点X2の流出部付近に光ビーコンB2が設置されている。光ビーコンは、多くの交差点に設置されているが、ここでは交差点X1,X2の間の走行所要時間を決定することを想定しているので、交差点X1,X2に設置された光ビーコンB1,B2のみを図示している。
【0011】図2は、交差点間走行所要時間推定装置の概略機能ブロック図である。各交差点に設置された光ビーコンは、当該管轄地域内の下位コンピュータ11につながれている。下位コンピュータ11は、光ビーコンから、車両が通過するごとに車両感知信号を受け取る。また、光ビーコンから、通過した車両(車載通信装置搭載車両に限る)の識別番号のデータを受け取る。また、当該管轄地域内の信号機が下位コンピュータ12につながれている。下位コンピュータ12は、信号機の信号色変化の履歴データを格納している。
【0012】以上2つの下位コンピュータ11,12は、中央信号制御コンピュータ10に接続されている。中央信号制御コンピュータ10は、下位コンピュータ11,12から得た通過車両のデータ、信号の前記履歴データに基づいて、上流交差点X1の流出部から信号待ちがないとした場合の下流交差点X2の停止線に至るまでの車両の走行所要時間Tを推定する。なお、下位コンピュータ11,12、中央信号制御コンピュータ10の構成は、中央処理装置(CPU)、記憶装置(メモリ)、入出力装置などを備えた公知のものであり、ここでは構成の詳しい説明を省略する。また、以下に説明する車両の走行所要時間Tを推定する手順は前記メモリに格納されたコンピュータプログラムにより実行されるものである。
【0013】以下、車両の走行所要時間Tの推定処理を、フローチャート(図3〜図5)を用いて説明する。この処理は、過去に蓄積した通行車両のデータ(通過時刻のデータ、車載通信装置搭載車両の識別番号のデータ)に基づいて、オフラインで行う処理である。処理の中における時刻変数をtと表す。図3を参照して、まずΔTを0とする(ステップS1)。車両の走行所要時間TをT=T1+ΔTという形で表す(ステップS2)。T1は固定値、ΔTは可変値である。「信号待ち台数」という変数を0とする(ステップS3)。また評価値の初期値を0とする(ステップS4)。
【0014】次に、図4に移り、時刻tにおける下流交差点X2の信号色を判定する(ステップS5)。青信号であれば、「信号待ち台数」が0かどうか判定し(ステップS6)、0であれば、時刻t-Tに上流光ビーコンB1を通過した車両があるかどうかを判定する(ステップS7)。もしあれば、時刻t+aの近傍に下流光ビーコンB2を通過した車両の中に、前記時刻t-Tに上流光ビーコンB1を通過した車両、又は時刻tに信号待ちから出発した先頭車両があるかどうかを調べる(ステップS8)。ここで記号aは、車両が当該下流交差点X2の停止線を出てから下流光ビーコンB2を通過するまでの時間を表し、便宜上定数と考えている。同一の車両であるかどうかの判断は、車載通信装置から受け取る識別番号が同一かどうかで判断する。従って、車載通信装置を搭載していない車両は、同一の車両であっても、地上側ではその判断はできないので、ここでは同一車両と扱わないし、車載通信装置を搭載している車両であっても、識別番号が異なれば当然同一車両とは扱わない。つまり、ここでいう車両の同一は、車載通信装置を搭載して光ビーコンにアップリンクしてきた車両間で判断することになる。時刻t+aの「近傍」という意味は、時刻t+aを中心としてその前後一定時間内で下流光ビーコンB2を通過したかどうか、で判断する。前記「一定時間」はあまり小さな値とすると、同一車両を見つける確率が減少し、あまり大きな値とすると、サーチに時間がかかる。よって、シミュレーションなどをして適切な値を設定する必要がある。
【0015】同一車両があれば、その車両が実際に下流光ビーコンB2を通過した時刻を参照し、当該時刻と、時刻t+aとの差を求める(ステップS9)。そして、この差の2乗を評価値に加えていく(ステップS10)。以上が、上流光ビーコンB1を通り、交差点で信号待ちすることなく下流光ビーコンB2を通過した車両の、上流光ビーコンB1から交差点の停止線までの走行所要時間Tを評価する処理となる。
【0016】ステップS5において、時刻tにおける下流交差点X2の信号色を判定し、赤信号であれば、時刻t-Tに上流光ビーコンB1を通過した車両があるかどうかを判定する(ステップS11)。もしあれば、信号待ち台数を+1する(ステップS12)。赤信号である限り、信号待ち台数が増加していく。そして、青信号に変わったら、ステップS5でYESの判定が出て、ステップS6に進み、ステップS6でYESであれば、前述したステップS7以下の処理を行う。ステップS6でNOであれば、後述するステップS13以下の処理を行う。
【0017】下流交差点X2の信号色が青信号であった場合でも、信号で待っていた車両があれば、後から来る車両はノンストップで通過できるとは限らない。この場合は、ステップS6で信号待ち台数ありの判定となり、時刻t-Tに上流光ビーコンB1を通過した車両があるかどうかを判定する(ステップS13)。もしあれば、信号待ち台数を+1する(ステップS14)。そして、時刻tが先頭車両の出発するタイミングであるかどうか判断する(ステップS15)。このタイミングは、前に先頭車両があったときは、前の先頭車両が出発してから、所定時間経過したかどうかで判断する。「所定時間」は、信号待ち車両が青信号で一台ずつ出て行く時間を意味し、ここでは、定数としている。
【0018】先頭車両が出発するタイミングであれば、信号待ち台数から1引き(ステップS16)、ステップS8に進む。ステップS8からステップS10までの処理は前に説明したとおりであるので、説明を省略する。以上のようにして、上流光ビーコンB1を通り、交差点で信号待ちすることなく下流光ビーコンB2を通過した車両、及び交差点で信号待ちしてから下流光ビーコンB2を通過した車両の、上流光ビーコンB1から交差点の停止線までの走行所要時間Tを評価することができた。
【0019】図5において、時刻変数tについて、全時刻処理済みであるかどうか判断する(ステップS17)。全範時刻処理済みでなければ、tをt+1にして(ステップS18)、ステップS5の入り口に戻り、処理を繰り返す。次に、ΔTの全範囲について処理済であるかどうか、判断する(ステップS19)。全範囲について処理済でなければ、ΔTを変えて(ステップS20)、ステップS2の入り口に戻り、処理を繰り返す。このようにして、ΔTを変えるごとに評価値が求められる。つまり、ΔTの関数としての評価値が求められる。
【0020】ステップS21では、評価値が最小となるΔTを選び、T=T1+ΔTを求める。このTが、車両が、上流光ビーコンB1を通過してから交差点の停止線まで走行するのにかかる時間を表す最尤値(もっともらしい値)となる。以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではない。例えば、図3〜図5を用いて説明した、上流交差点X1の流出部付近の地点から、信号待ちがないとした場合の下流交差点X2の停止線に至るまでの走行所要時間TをT1+ΔTとおいて、下流の光ビーコンまでの通過時間との差が最小になる更新量ΔTを求める手法は、誤差の少ない走行所要時間Tを求めるための一解法に過ぎず、この解法以外に、他の種類の最尤推定法を採用することも可能である。その他、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【0021】
【発明の効果】以上のように本発明の交差点間走行所要時間推定装置によれば、したがって、上流交差点から下流交差点に到達する交通流を予測して交通信号パラメータを最適化する制御に好適な走行所要時間Tのデータを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜四丁目5番33号
【出願日】 平成13年9月10日(2001.9.10)
【代理人】 【識別番号】100075155
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
【公開番号】 特開2003−85687(P2003−85687A)
【公開日】 平成15年3月20日(2003.3.20)
【出願番号】 特願2001−273714(P2001−273714)