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【発明の名称】 二重化通信モジュール装置
【発明者】 【氏名】水島 冬樹
【住所又は居所】東京都武蔵野市中町2丁目9番32号 横河電機株式会社内

【要約】 【課題】フィールドバス通信制御の冗長化を目的とした通信モジュールの二重化環境において、通信モジュールのフィールドバスへのコネクタ抜けで発生する、通信モジュール相互間の制御権競合による障害を防止した二重化通信モジュール装置を実現する。

【解決手段】フィールドバスに接続される複数のフィールド機器の内、上位装置との通信を行う通信モジュールを二重化し、一方に前記フィールドバスのセグメント管理権を持たせた二重化通信モジュール装置において、前記通信モジュールと前記フィールドバスを接続するコネクタの接続状態を監視するコネクタ抜け検出手段と、コネクタ抜けが検出された場合に、自己の前記上位装置との通信機能を停止させる通信制御手段とを具備する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】フィールドバスに接続される複数のフィールド機器の内、上位装置との通信を行う通信モジュールを二重化し、一方に前記フィールドバスのセグメント管理権を持たせた二重化通信モジュール装置において、前記通信モジュールと前記フィールドバスを接続するコネクタの接続状態を監視するコネクタ抜け検出手段と、コネクタ抜けが検出された場合に、自己の前記上位装置との通信機能を停止させる通信制御手段と、を具備する二重化通信モジュール装置。
【請求項2】前記フィールドバスが、FFH1規格であることを特徴とする請求項1記載の二重化通信モジュール装置。
【請求項3】前記二重化した通信モジュールは、セグメント管理機能を有するリンクマスタ機器であり、その一方が実際にセグメント管理動作を行うリンクアクティブスケジューラ機器として選定されていることを特徴とする、請求項2記載の二重化通信モジュール装置。
【請求項4】コネクタ抜けが検出された通信モジュールがリンクアクティブスケジューラ機器であった場合には待機側の通信モジュールがリンクアクティブスケジューラ機器に切り替えられることを特徴とする、請求項3記載の二重化通信モジュール装置。
【請求項5】コネクタ抜けにより上位装置との通信が停止した通信モジュールが正常に前記フィールドバスに復帰接続された場合には、この通信モジュールは未初期化リンクマスタ機器とみなされて、現在リンクアクティブスケジューラ機器となっている通信モジュール側より初期化されることを特徴とする、請求項3記載の二重化通信モジュール装置。
【請求項6】前記フィールドバスに重畳される直流電源電圧を監視することにより、前記通信モジュールと前記フィールドバスを接続するコネクタ抜けを検出することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の二重化通信モジュール装置。
【請求項7】前記上位装置が分散型制御装置におけるフィールドコントロールステーションであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の二重化通信モジュール装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分散型制御装置等におけるフィールドバスに接続される複数のフィールド機器の内、上位装置との通信を行う通信モジュールを二重化し、一方に前記フィールドバスのセグメント管理権を持たせた二重化通信モジュール装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3の機能ブロック図により、分散型制御装置の一般的な階層構成を説明する。1は上位装置であるヒューマンインターフェイスステーション(HIS)であり、上位の制御バス2に接続されている。3は制御バス2を介してHIS1と通信するフィールドコントロールステーション(FCS)、4はFCS3が制御を担当する機器と通信するI/Oバス、5はこのI/Oバスに複数接続されるノードである。
【0003】6はフィールドバス分岐端子台であり、一般機能を有するフィールド機器(プロセスのセンサ、操作端等)7及び二重化された通信モジュール81、82が接続されている。これら通信モジュールはノード5に実装されており、フィールド機器7とFCSとの通信を中継する。
【0004】81a及び81bは、通信モジュール81とフィールドバス分岐端子台6を結合するケーブル両端のコネクタ、82a及び82bは、通信モジュール82とフィールドバス分岐端子台6を結合するケーブル両端のコネクタである。
【0005】以下、フィールドバスとして、標準的な規格として普及しているFF(Foundation Fieldbus)H1を適用した場合について説明する。FF−H1フィールドバス仕様では、セグメント管理機能を有するリンクマスタ機器(Link Master:以下LM)間での調停により、その内の1台のみが唯一実際にセグメント管理動作を行う。この機器をリンクアクティブスケジューラ(Link Active Scheduler:以下LAS)と呼ぶ。一方、管理機能を持たない機器はLM機器に対してBasic機器と呼ぶ。
【0006】図4は、フィールド機器の機能分担を示す説明図であり、フィールド機器はLM機能を持たないBasic機器群と、LM機能を持つLM機器群に2分され、LM機器の中の唯一がLAS機器として機能している。通信モジュールを二重化するにあたり、同一セグメント上の2個の通信モジュール81、82の夫々には、LM機能が搭載されており、通信モジュール81がLASに選定されている場合は、通信モジュール82はLM機器として機能する。
【0007】LASが管理しているセグメントに新たな機器(LM機器、Basic機器とも)が接続された場合、新規接続機器は、既存のLASから初期化立ち上げ制御によりセグメントへの参加処理が行われる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】図5は、通信モジュールのコネクタ抜けが発生した場合の問題点を説明する遷移図である。(A)は、通常状態であり、FF−H1フィールドバスセグメント6に接続された通信モジュール81がLASとして機能し、通信モジュール82及びBasic機器群7のグループSを管理している。
【0009】ここで(B)に示すように、LASとして動作中の通信モジュール81側のコネクタが抜けると、セグメントとしては一時的にLASつまり管理者不在の状態になる。LAS不在を検出したLM機器であるもう一方の通信モジュール82は、(C)に示すように、FF−H1仕様に従い新たなLASとなり、セグメント管理を継承する。
【0010】コネクタを切り離された元LASである通信モジュール81は、上位のFCS3との通信機能は機能しており、フィールド機器が存在しないセグメント上でLASとして動作を継続している。従ってこの時点で、別々の独立したセグメント上に2台のLASが存在することと等価になる。
【0011】この状態から外れたコネクタが再接続されると、(D)に示すように、その瞬間に今度は逆に1つのセグメント上に2台のLASが共存することになる。FF−H1仕様では同一セグメント上に同時に2台のLASが存在する状態はバス制御を正常に行えない異常状態であり、以下の障害が発生する。
【0012】(1) 接続直後に不正フレーム検出によるバスリセットが発生してしまう(Live Listがリセット状態となる)。この結果、本来正常なセグメント上のフィールド機器が、停止したように見える。
(2) 競合によって機器なし側の元LASがLASとなった場合、セグメントの機器の存在を表すLive Listがリセットする。この結果、本来正常なセグメント上のフィールド機器が、停止したように見える。更にセグメント上の共通時刻情報(Data Link時刻)が急変し、機器内の制御動作が乱れる。
【0013】これらのバス上通信の乱れにより、フィールドバス通信制御はもとより、フィールド機器とのデータ入出力が一時的に行えなくなったり、入出力値が異常になるなど、アプリケーションとしてのプロセス制御への悪影響が発生する。
【0014】本発明の目的は、フィールドバス通信制御の冗長化を目的とした通信モジュールの二重化環境において、通信モジュールのフィールドバスへのコネクタ抜けで発生する、通信モジュール相互間の制御権競合による障害を防止した二重化通信モジュール装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載発明の特徴は、分散型制御装置におけるフィールドバスに接続される複数のフィールド機器の内、上位装置との通信を行う通信モジュールを二重化し、一方に前記フィールドバスのセグメント管理権を持たせた二重化通信モジュール装置において、前記通信モジュールと前記フィールドバスを接続するコネクタの接続状態を監視するコネクタ抜け検出手段と、コネクタ抜けが検出された場合に、自己の前記上位装置との通信機能を停止させる通信制御手段と、を具備する点にある。
【0015】請求項2記載発明の特徴は、前記フィールドバスが、FFH1規格である点にある。
【0016】請求項3記載発明の特徴は、前記二重化した通信モジュールは、セグメント管理機能を有するリンクマスタ機器であり、その一方が実際にセグメント管理動作を行うリンクアクティブスケジューラ機器として選定されていることを特徴とする点にある。
【0017】請求項4記載発明の特徴は、コネクタ抜けが検出された通信モジュールがリンクアクティブスケジューラ機器であった場合には待機側の通信モジュールがリンクアクティブスケジューラ機器に切り替えられる点にある。
【0018】請求項5記載発明の特徴は、コネクタ抜けにより上位装置との通信が停止した通信モジュールが正常に前記フィールドバスに復帰接続された場合には、この通信モジュールは未初期化リンクマスタ機器とみなされて、現在リンクアクティブスケジューラ機器となっている通信モジュール側より初期化される点にある。
【0019】請求項6記載発明の特徴は、前記フィールドバスに重畳される直流電源電圧を監視することにより、前記通信モジュールと前記フィールドバスを接続するコネクタ抜けを検出する点にある。
【0020】請求項7記載発明の特徴は、前記上位装置が分散型制御装置におけるフィールドコントロールステーションである点にある。
【0021】
【発明の実施の形態】図5で説明したLAS同士の競合は、一旦セグメントから抜けた元LASが「機器無し」と判断した状態のまま元のセグメントへ戻りフィールドバス制御を継続しようして、既に存在していた後継LASとぶつかる点が問題の根本である。
【0022】一方FF−H1仕様では、新規にセグメントに加入しようとする機器に対する初期化立ち上げ手順が規定されていて、一旦セグメントから抜けたLASが、未初期化のLM機器として正規の手順に則って再びセグメントに参加すれば、この問題は発生しない。
【0023】フィールドバス通信上は元LASから見た場合、コネクタ抜けは単に他機器が一斉にフェイルした(不在となった)状態と等価であり、再度フェイルした機器が立ち上がって来た時に備えてLAS動作を継続する必要がある。つまり、全ての機器が不在となっただけでは、LAS動作を停止させる条件とはならない。
【0024】この点に着目した本発明のポイントは、通信モジュール内に「コネクタ抜け検出用手段」を追加し、この検出情報に基づきフィールドバス上の状態によらないフィールドバス通信機能の停止制御を行うことで、LAS競合による障害を防ぐ点にある。
【0025】以下本発明実施態様を、図面を用いて説明する。図1は本発明を適用した二重化通信モジュール装置の一例を示す機能ブロック図であり、図3の従来装置で説明した要素と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0026】通信モジュール81において、9は通信制御部であり、データ入出力部9a及びLM機能制御部9bよりなる。81cはプロセス入出力インターフェイス部であり、通信制御部9と上位装置であるFCS3との入出力データ通信をインターフェイスする。
【0027】10はシステム電源装置であり、フィールド機器群7の電源とは独立してFCS3と通信モジュール81に給電している。11はフィールドバス6を形成する一対の導線6a、6b間に接続された直流電源であり、Eは電源電圧で通常DC20V程度に選定されている。
【0028】フィールド機器群7は導線6a、6b間に接続され、直流電源11より給電され、プロセス入出力データ信号e(通常は2Vp−p)が直流電圧Eに重畳する。W1はEに重畳するフィールドバス6上の入出力データ信号eの波形図である。
【0029】81dは、フィールドバス6と通信モジュールを結合するコネクタであり、図では抜けた状態を示している。このコネクタを介してフィールドバス信号は信号/電源分離装置18eに導かれ、波形図W2に示す信号成分eが信号デコード/エンコード装置81fに供給されると共に、波形図W3に示すDC電圧分Eが電源検出判定装置81gに供給される。
【0030】信号デコード/エンコード装置81fは、通信制御部9とプロセス入出力データにつき通信する。電源検出判定装置81gはW3に示す電源電圧Eを監視し、所定の閾値Esとの比較で電源状態のON/OFFを判定する。81hは入力フィルタであり、電源状態のON又はOFFが所定時間(例えば100m秒)継続したらON又はOFFを確定し、通信制御部9の機能を有効又は停止制御する。
【0031】定常状態では、電源状態はONであり、通信制御部9の機能は有効となり、通信モジュール81がLASの場合には正常なLAS機能を行う。コネクタ抜けが発生すれば、電源状態はOFFとなるので、通信制御部9の機能は停止し、通信モジュール81はLAS機能を停止する。
【0032】以後この通信モジュール81は未初期化のLM機器とみなされ、コネクタが接続復帰した際には、新規にセグメントに加入した機器とみなされ、現在LASとして機能している機器側より、FF−H1規定による初期化立ち上げ手順に基づいて初期化され、LM機器としてセグメントに参加する。
【0033】図2は、定常状態からLASのコネクタ抜き→挿し、復帰までの流れを説明する遷移図である。(A)は、図5(A)と同一の定常状態であり、FF−H1フィールドバスセグメント6に接続された通信モジュール81がLASとして機能し、通信モジュール82(LM機器でLAS待機状態)及びBasic機器群7のグループSを管理している。
【0034】(B)は、LAS側(通信モジュール81)のコネクタ抜け状態を示す。フィールドバス側コネクタが抜かれると、残ったフィールドバスセグメント6上では一瞬LASが不在となる。このLAS不在を検出したLM機器(LAS待機状態の通信モジュール82)が新たにLASとなる。一方、コネクタを抜かれた方の元LAS(通信モジュール81)は、機器が全て不在となったのと同じ状態でLAS動作を継続しようとする。
【0035】このとき、(B)´及び(C)に示すように、元LAS側の通信モジュール81では、コネクタ抜けの検出信号で通信制御部のフィールドバス通信機能が停止され、再度セグメントへコネクタが接続されるのを、コネクタ状態を監視しながら待つ待機状態となる。コネクタ接続の復帰確認が出来次第、フィールドバス通信機能の初期化が開始される。
【0036】同時に、元待機側の通信モジュール82がフィールドバスセグメント6上の新たなLASとしてフィールドバス通信管理機能を開始する、制御権交替が実行される。以後、他のフィールド機器向けの処理と同様に元LAS側機器(通信モジュール81)がコネクタ復帰で初期化処理待ちとなれば、通常のLAS機能の一環として初期化立ち上げ処理を実行する。
【0037】(D)は元LAS側(通信モジュール81)コネクタが復帰再接続された状態を示しており、この状態ではフィールドバス通信を停止している通信モジュール81側は応答していない。元LAS側がコネクタ抜けからの復帰(つまり再接続)を検出すれば、フィールドバス通信を再開する。この際、セグメント上の新LAS(通信モジュール82)によるBasicLM/共通の立ち上げ処理に従うため、LASの競合は発生しない。
【0038】通常のフィールド機器として立ち上がった元LAS側通信モジュール81は、フィールドバス仕様に従ってLASとしてのパラメータを新LAS(通信モジュール82)との間で等値化し、LM機器としての準備が完了する。ここで初めて、LASとして動作可能な待機状態となる。
【0039】以上説明した実施例では、コネクタ抜けの検出手段としてフィールドバス6に重畳する電源電圧を監視する例を示したが、コネクタの開放を直接検知するセンサ手段を用いることも可能である。
【0040】本発明の適用対象は、実施例で説明した分散型制御装置に限定されることなく、上位装置と通信する通信モジュールの二重化装置で、制御権の競合による障害が発生するおそれのあるフィールドバスに有効に適用可能である。
【0041】また、フィールドバスの規格として標準的なFF−H1を実施例として説明したが、この規格に限定されることなく、上位装置と通信する通信モジュールの二重化で唯一が制御権を許可され、制御権の競合による障害が発生するおそれのあるフィールドバスに有効に適用可能である。
【0042】
【発明の効果】以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、上位装置と通信する通信モジュールの二重化で唯一が制御権を許可され、制御権の競合による障害が発生するおそれのあるフィールドバスにLM機器である通信モジュールの二重化時に、コネクタ抜け後の通信モジュールのセグメントへの再接続によってフィールドバス通信が乱れるおそれがなく、プロセスへの悪影響も発生しない。
【出願人】 【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
【住所又は居所】東京都武蔵野市中町2丁目9番32号
【出願日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−195903(P2003−195903A)
【公開日】 平成15年7月11日(2003.7.11)
【出願番号】 特願2001−393215(P2001−393215)