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【発明の名称】 物体探査方法
【発明者】 【氏名】早川 秀樹
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内

【氏名】古川 泰成
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内

【要約】 【課題】交流発生器と長尺物体とを接続する際に配線を引き回す必要の無い物体探査方法を提供する。

【解決手段】長尺物体30の長手方向に離間した2つの部位に対して交流発生器20の2つの出力端子をそれぞれ接続して、2つの部位間に交流電流を通電させることにより長尺物体30の周囲に交流磁界を発生させ、探査装置10が備える、交流磁界を検出可能な受信用コイルに誘導される誘導電流の大きさに基づいて、長尺物体30の位置を探査する場合において、交流発生器20の一方の出力端子と長尺物体30とを既設の導電性の配線50または配管を介して接続し、交流発生器20の他方の出力端子と長尺物体30とを、直接或いは既設の導電性の配線または配管以外の導電性接続媒体を介して接続する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の媒質によって隠蔽された導電性の長尺物体の位置を、前記媒質の表面側に設けられた探査装置を用いて探査する物体探査方法であって、前記長尺物体の長手方向に離間した2つの部位に対して交流発生器の2つの出力端子をそれぞれ接続して、前記2つの部位間に交流電流を通電させることにより前記長尺物体の周囲に交流磁界を発生させ、前記探査装置が備える、前記交流磁界を検出可能な受信用コイルに誘導される誘導電流の大きさに基づいて、前記長尺物体の位置を探査する場合において、前記交流発生器の一方の出力端子と前記長尺物体とを既設の導電性の配線または配管を介して接続し、前記交流発生器の他方の出力端子と前記長尺物体とを、直接或いは前記既設の導電性の配線または配管以外の導電性接続媒体を介して接続することを特徴とする物体探査方法。
【請求項2】 前記既設の導電性の配線が電力線である請求項1に記載の物体探査方法。
【請求項3】 前記既設の導電性の配線が、電力線の中性線またはアース線である請求項1に記載の物体探査方法。
【請求項4】 前記交流発生器から出力される交流電流の周波数として、前記電力線を流れる電流の商用電源周波数とは異なる周波数を用い、前記探査装置によって前記受信用コイルに誘導される誘導電流に対し、前記誘導電流に含まれる、前記商用電源周波数と同じ周波数を有する第1電流成分を阻止し、前記交流電流の周波数と同じ周波数を有する第2電流成分を通過させる第1周波数フィルタを用いたフィルタリング、および、前記第1電流成分を通過させ、前記第2電流成分を阻止する第2周波数フィルタを用いたフィルタリングを施すことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の物体探査方法。
【請求項5】 前記交流発生器から出力される交流電流の周波数として、前記電力線を流れる電流の商用電源周波数とは異なる周波数を用い、前記受信用コイルが、第1キャパシタと接続され、前記交流電流の周波数に共振する第1共振回路を構成する第1受信用コイルと、第2キャパシタと接続され、前記商用電源周波数に共振する第2共振回路を構成する第2受信用コイルとを備えてなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の物体探査方法。
【請求項6】 前記交流発生器から出力される交流電流の周波数が、80Hzから10kHzの間の周波数である請求項4または請求項5に記載の物体探査方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、所定の媒質によって隠蔽された導電性の長尺物体の位置を、前記媒質の表面側に設けられた探査装置を用いて探査する物体探査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、地中や様々な建築物の壁の内部などに埋め込まれた物体の位置を探査するための探査装置が広く用いられている。例えば、特開平4−240585号公報に記載の「埋設物位置探査方法および埋設物位置探査装置」では、電磁誘導型探査装置と呼ばれ、交流発生器と受信用コイルを有する探査装置とを備えてなる装置を用いる方法がある。図6に示すのは電磁誘導型の探査装置15を用いたループ法を説明する図である。
【0003】まず、地中に埋設されているが、具体的な埋設位置が不明である金属製の長尺物体(配管)30の2つの部位に交流発生器20の2つの出力端子を導電性の配線を使用して直接接続する。その結果、交流発生器20の一方の出力端子から、上記配線、上記長尺物体30、および上記配線を通って、交流発生器20の他方の出力端子に至る閉ループが形成される。ここで、交流発生器20から所定の周波数(例えば、1kHz)の交流電流を出力した場合、長尺物体30の周囲に矢印で示す交流磁界が発生する。ここで、受信用コイルを有する探査装置15で地表面を走査すると、長尺物体30により形成される交流磁界によって上記受信用コイルに発生する誘導電流の大きさに変化が現れる。受信用コイルと長尺物体30との間の距離が短いほど、誘導電流が大きく測定される(長尺物体30の真上で測定した場合に最も大きな誘導電流が観測される)ことから、地表面を走査した場合に観測されるその誘導電流の大きさの分布を見ることで、長尺物体30の埋設位置を知ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の電磁誘導型の探査装置を用いる従来のループ法では、交流発生器の2つの出力端子が接続される長尺物体の2つの部位の離間距離が大きい場合には、それらの接続用に非常に長い配線を用意する必要があった。また、埋設物探査を行う度に、配線を引き回す作業を行わねばならないという問題があった。
【0005】更に、ビルなどの建築物の壁や床や天井などによって隠蔽された長尺物体の位置を探査する場合、地中に埋設された場合と異なり、他の階を跨いで長尺物体が配置されている場合もある。その場合には、階を隔てる天井や床が障害となって、交流発生器と長尺物体とを接続することがほぼ不可能である。また、長尺物体が他の階を跨いでいないとしても、交流発生器の2つの出力端子が接続される2つの部位が、別々の部屋に存在する場合には、部屋を隔てる壁が障害となる。以上のように、従来の電磁誘導型探査装置を用いるループ法を使用するためには、交流発生器と長尺物体とを配線を引き回して直接接続できることが要件であった。
【0006】本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、交流発生器と長尺物体とを接続する際に、配線を引き回す必要の無い物体探査方法を提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明に係る物体探査方法の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項1に記載の如く、所定の媒質によって隠蔽された導電性の長尺物体の位置を、前記媒質の表面側に設けられた探査装置を用いて探査する物体探査方法であって、前記長尺物体の長手方向に離間した2つの部位に対して交流発生器の2つの出力端子をそれぞれ接続して、前記2つの部位間に交流電流を通電させることにより前記長尺物体の周囲に交流磁界を発生させ、前記探査装置が備える、前記交流磁界を検出可能な受信用コイルに誘導される誘導電流の大きさに基づいて、前記長尺物体の位置を探査する場合において、前記交流発生器の一方の出力端子と前記長尺物体とを既設の導電性の配線または配管を介して接続し、前記交流発生器の他方の出力端子と前記長尺物体とを、直接或いは前記既設の導電性の配線または配管以外の導電性接続媒体を介して接続する点にある。
【0008】上記課題を解決するための本発明に係る物体探査方法の第二の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項2に記載の如く、上記第一の特徴構成に加えて、前記既設の導電性の配線が電力線である点にある。
【0009】上記課題を解決するための本発明に係る物体探査方法の第三の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項3に記載の如く、上記第一の特徴構成に加えて、前記既設の導電性の配線が、電力線の中性線またはアース線である点にある。
【0010】上記課題を解決するための本発明に係る物体探査方法の第四の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項4に記載の如く、上記第二または第三の特徴構成に加えて、前記交流発生器から出力される交流電流の周波数として、前記電力線を流れる電流の商用電源周波数とは異なる周波数を用い、前記探査装置によって前記受信用コイルに誘導される誘導電流に対し、前記誘導電流に含まれる、前記商用電源周波数と同じ周波数を有する第1電流成分を阻止し、前記交流電流の周波数と同じ周波数を有する第2電流成分を通過させる第1周波数フィルタを用いたフィルタリング、および、前記第1電流成分を通過させ、前記第2電流成分を阻止する第2周波数フィルタを用いたフィルタリングを施す点にある。
【0011】上記課題を解決するための本発明に係る物体探査方法の第五の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項5に記載の如く、上記第二または第三の特徴構成に加えて、前記交流発生器から出力される交流電流の周波数として、前記電力線を流れる電流の商用電源周波数とは異なる周波数を用い、前記受信用コイルが、第1キャパシタと接続され、前記交流電流の周波数に共振する第1共振回路を構成する第1受信用コイルと、第2キャパシタと接続され、前記商用電源周波数に共振する第2共振回路を構成する第2受信用コイルとを備えてなる点にある。
【0012】上記課題を解決するための本発明に係る物体探査方法の第六の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項6に記載の如く、上記第四または第五の特徴構成に加えて、前記交流発生器から出力される交流電流の周波数が、80Hzから10kHzの間の周波数である点にある。
【0013】以下に作用並びに効果を説明する。本発明に係る物体探査方法の第一の特徴構成によれば、交流発生器の一方の出力端子と長尺物体とを既設の導電性の配線または配管を介して接続し、交流発生器の他方の出力端子と長尺物体とを、直接或いは上記既設の導電性の配線または配管以外の導電性接続媒体を介して接続するので、交流電流を通電させる長尺物体の2つの部位間の距離が長くても、或いは2つの部位間に障害物が存在していても従来のように長い配線を引き回す必要が無く、探査を行う際の手間を非常に小さくすることができる。
【0014】本発明に係る物体探査方法の第二の特徴構成によれば、導通が確保されている既設の電力線を使用して、交流発生器の少なくとも一方の出力端子と長尺物体とが接続されるので、確実に導通のとれた閉ループを構成することができる。また、既設の電力線は、建築物の内部の至るところに張り巡らされていることから、長尺物体が階を跨いで設置されている場合や部屋を跨いで設置されている場合であっても、交流発生器と長尺物体とを含む閉ループを確実に構築することができる。
【0015】本発明に係る物体探査方法の第三の特徴構成によれば、電力線の中性線またはアース線を使用して、交流発生器の少なくとも一方の出力端子と長尺物体とが接続されるので、確実に導通のとれた閉ループを構成することができる。また、既設の電力線の中性線(電力線が単相2線式、単相3線式、三相4線式などの何れであっても中性線は含まれ、共通である)またはアース線は建築物の内部のコンセントや電気機器に普通に使用されていることから、長尺物体が階を跨いで設置されている場合や部屋を跨いで設置されている場合であっても、交流発生器と長尺物体とを含む閉ループを確実に構築することができる。
【0016】本発明に係る物体探査方法の第四の特徴構成によれば、交流発生器から出力される交流電流の周波数として、商用電源周波数とは異なる周波数が使用され、探査装置においては、上記受信用コイルに誘導される誘導電流に対し、上記誘導電流に含まれる上記第1電流成分を阻止し、上記第2電流成分を通過させる第1周波数フィルタを用いたフィルタリング、および誘導電流に含まれる上記第1電流成分を通過させ、上記第2電流成分を阻止する第2周波数フィルタを用いたフィルタリングを施すので、検出対象とする物体の位置と、検出対象としない物体の位置とを区別して検出することができる。
【0017】例えば、商用電源周波数の電流が電力線の内の電圧線に流れ、交流発生器から出力された交流電流が電力線の中性線(既設の配線)を介してガス管(長尺物体)に流される場合、第1周波数フィルタを用いたフィルタリングを行っただけでは、交流発生器から出力された交流電流と同じ周波数を有する誘導電流のピークが、検出対象とするガス管の上方と、検出対象としない電力線の中性線の上方の2つの位置で検出されるため、どちらのピークがガス管の位置を示すのかを判定することができない。しかし、第2周波数フィルタを用いたフィルタリングを行うことで、電力線の電圧線の位置(電力線の中性線の位置と同じ)を検出することができるため、両者の結果を比較することでガス管の位置を判定することができる。
【0018】本発明に係る物体探査方法の第五の特徴構成によれば、第1共振回路を構成する第1受信用コイルと、第2共振回路を構成する第2受信用コイルとによって、互いに異なる周波数を持つ交流磁界を検出することができるので、それぞれの交流磁界の起源の位置を区別して検出することができる。
【0019】本発明に係る物体探査方法の第六の特徴構成によれば、交流発生器から出力される交流電流の周波数が80Hzから10kHzの間の周波数であるので、探査装置によって検出される交流磁界の周波数が商用電源周波数(50Hzまたは60Hz)と重畳することを避けることができる。その結果、良好な感度で、長尺物体の位置の探査を行うことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に図面を参照して本発明に係る物体探査方法について説明する。図1に例示するように、電磁誘導型の探査装置10は、受信機1と探査装置本体部2とを備えて構成される。媒質40中に隠蔽された長尺物体30に対しては、交流発生器20から所定の周波数の交流電流が出力され、長尺物体30の長手方向に交流電流が流れることで、長尺物体の周囲に矢印で図示するような交流磁界が発生する。尚、図1中では交流発生器20と長尺物体30との間の配線を部分的に省略しており、その詳細については図2を参照して後述する。
【0021】長尺物体30により形成される交流磁界によって、受信機1が備える受信用コイル1aに誘導起電力が励磁され、誘導電流が発生する。この誘導電流に基づく信号は受信増幅部3において増幅された後、復調検波部4に送られる。そして、復調検波部4からの出力値を、制御部5を介してメモリ部7に格納すると共に、表示部6において表示することができる。従って、探査装置10の使用者は、表示部6の表示内容を見ながら長尺物体30の探査を行うことができる。
【0022】図2に例示するのは、交流発生器20から出力された交流電流が長尺物体30に至る配線経路を示す図である。本実施形態では、長尺物体30の2つの部位X、Yに対して交流発生器20の出力端子21、22が接続される。
【0023】このように、長尺物体30に対して交流電流を流し、その隠蔽されている位置を探査するためには、交流発生器20の出力端子21、22がそれぞれ接続される部位X、Yを確保しておく必要があるのだが、長尺部体30が、ビルなどの建築物内部に張り巡らされ、コンクリートなどの媒質40によって隠蔽されたガス管のような物体である場合には、別々の部屋にある部位Xと部位Yとを使用することや、別々の階にある部位Xと部位Yとを使用することを行わねばならないことがある。本実施形態では、交流発生器20の2つの出力端子21、22と長尺物体の2つの部位X、Yとを含む閉ループを、既設の配線を介して構築することで、従来の課題を解決しており、その詳細について以下に説明する。
【0024】まず、既存の配線について図2を参照して説明する。交流発生器20の2つの出力端子21、22と長尺物体の2つの部位X、Yとを含む閉ループを構築するために使用可能な既設の配線は、電力線やアース線などの配線がある。図2に示すような単相3線式配線の分電盤は、電圧線51と、中性線52と、電圧線53とを有している。本実施形態で言う電力線は、電圧線51、中性線52、および電圧線53を含む。
【0025】分電盤から各電気機器へ電力を供給する場合、200V用の電気機器には電圧線51と電圧線53と含む電力線を供給し、100V用の電気機器には電圧線51と中性線52とを含む電力線、或いは中性線52と電圧線53とを含む電力線を供給する。コンセントへ至る電力線についても同様である。このように、分電盤が共通であるならば、電気機器に至る電力線およびコンセントに至る電力線に関して導通が確保されている。詳細には、100V用の電気機器に至る電力線に含まれる中性線52は全ての電力線において共通であり、更に、その中性線52は、100V用のコンセントに至る電力線に含まれる中性線52とも共通である。
【0026】図2中に例示しているのは、長尺物体30の長手方向に離間した2つの部位Xと部位Yとを、それぞれの部位に近接する、100V用のコンセントに至る電力線50aに含まれる中性線52から引き出されるノードBと、同じく100V用のコンセントに至る電力線50bに含まれる中性線52から引き出されるノードCと接続することで、交流発生器20の2つの出力端子21、22と長尺物体の2つの部位X、Yとを含む閉ループを構成した場合の例である。つまり、交流発生器20の出力端子21を長尺物体30の部位Xに直接接続し、出力端子22を既設の配線である電力線を介して部位Yに接続している。尚、ノードBおよびノードCの代わりに、100V用の電気機器に至る電力線50cに含まれる中性線52から引き出されるノードEを使用することもできる。本実施形態において、「交流発生器の出力端子と直接接続する」とは、交流発生器の出力端子と長尺物体との間に、特定の用途で使用されることを目的にして既設されている導電性接続媒体が介在しないことを意味し、出力端子と長尺物体とを単なる延長ケーブルを介して接続しているような場合は、両者を直接接続していると見なす。
【0027】このように、長尺物体30の2つの部位Xおよび部位Yにそれぞれ近接して配置されるノードを選択して使用することができるため、部位Xおよび部位Yが別々の部屋にある場合や、別々の階にある場合であっても、従来法の場合における配線の取り回しの問題などが解消される。
【0028】尚、電力線50の中性線52の代わりに、通常、保安接地されているアース線54を使用することもできる。従って、交流発生器20の出力端子22をアース線54aに接続されたノードAと結合し、長尺物体30の部位Yを別のアース線54b(アース線54aと共通)に接続されたノードDと結合するような改変も行うことが出来る。更に、電圧線51および電圧線53に供給される電流を遮断している場合には、交流発生器20と長尺物体30とを接続するために電力線50の電圧線51または電圧線53を用いることもできる。
【0029】交流発生器20の出力端子21は、長尺物体30の所定の部位Xに接続され、更に、交流発生器20の出力端子22は、電力線50aの中性線52(ノードB)と、中性線52と、電力線50bの中性線52(ノードC)とを介して長尺物体30の所定の部位Yに接続されることで、閉ループが構築されている。
【0030】その後、交流発生器20から交流電流を出力して、長尺物体30の2つの部位Xおよび部位Yの間に交流電流を通電させることにより、長尺物体30の周囲に交流磁界を発生させる。その交流磁界は、上述したように媒質40の表面を走査可能に設けられた探査装置10の受信用コイル1aを使用することで検出される。探査装置10によって検出される交流磁界は、探査装置10と長尺物体30との間の距離が短いほど大きく観測されるため、交流磁界の分布を調べることで、長尺物体の埋設位置を知ることができる。
【0031】図3に示すのは、媒質40中に長尺物体30としてのガス管と、電力線50とが媒質表面に対して平行な方向に埋設された場合(図3(a))において、媒質40の表面の、長尺物体30および電力線50の長手方向に対して垂直な方向の磁界の強さの分布を示すグラフ(図3(b))である。尚、交流発生器20から出力される交流電流の周波数は1kHzであり、電力線50の電圧線に流れる電流の周波数(商用電源周波数)は60Hzである。但し、この電力線50に含まれる中性線を介して交流発生器20と長尺物体30とを接続しているため、電力線50には60Hzの交流電流(電圧線)と1kHzの交流電流(中性線)とが流されている。長尺物体30および電力線50により形成される交流磁界の大きさは、図1を参照して説明したように、受信用コイル1aに誘導された誘導電流の大きさとして検出されるのだが、図3では、媒質40表面における磁界の大きさとして図示する。
【0032】受信用コイル1aに誘導される誘導電流には、長尺物体30により形成される交流磁界を起源とする誘導電流(周波数は1kHz)と、電力線50により形成される交流磁界を起源とする誘導電流(周波数は60Hz)という2つの周波数成分の電流が含まれる。ここで、実際に検出したい誘導電流は、周波数が1kHzの誘導電流であることから、図1を参照して説明した復調検波部4は、受信用コイル1aに誘導される誘導電流に対し、その誘導電流に含まれる、商用電源周波数と同じ周波数を有する第1電流成分を阻止し、且つ交流発生器20から出力される交流電流の周波数と同じ周波数を有する第2電流成分を通過させる第1周波数フィルタを用いたフィルタリング、および、上記第1電流成分を通過させ、且つ上記第2電流成分を阻止する第2周波数フィルタを用いたフィルタリングを施す。その結果、第1周波数フィルタを用いたフィルタリングによって、長尺物体30および中性線(電力線50に含まれる)により形成される交流磁界を起源とする誘導電流(周波数は1kHz)が得られ、第2周波数フィルタを用いたフィルタリングによって、電圧線(電力線50に含まれる)により形成される交流磁界を起源とする誘導電流(周波数は60Hz)が得られる。
【0033】以上のように、交流発生器20から出力した交流電流は長尺物体30と電力線50の内の中性線に流れることから、第1周波数フィルタを用いたフィルタリングによって、誘導電流の大きさのピーク(図3中では交流磁界の大きさで表す)が、長尺物体30の上方と、中性線の上方(電力線50と同じ位置)との2つの位置に現れる波形Aが得られる。一方で、第2周波数フィルタを用いたフィルタリングによって、誘導電流の大きさのピークが(図3中では交流磁界の大きさで表す)電圧線の上方(電力線50と同じ位置)に現れる波形Bが得られる。
【0034】以上のように、第1周波数フィルタを用いたフィルタリングを行っただけでは、図3(b)の波形Aにおいて長尺物体30の上方と中性線の上方(電力線50の上方)との2つの位置にピークが現れるため、どちらのピークが検出対象とする長尺物体30によるものかが分からない。しかし、第2周波数フィルタを用いたフィルタリングを行うことで、図3(b)の波形Bにおいて電圧線の上方(電力線50の上方)にピークが現れ、それが波形Aの中性線によるピークと重なるため、波形Aの2つのピークの中から中性線によるピークがどちらであるかを判定することができる。
【0035】従って、受信用コイル1aに誘導される誘導電流に対して、第1周波数フィルタを用いたフィルタリングおよび第2周波数フィルタを用いたフィルタリングを行った結果(例えば、図3(b)に例示した波形Aおよび波形Bのデータなど)を制御部5に伝達して、表示部6に表示させることや、メモリ7に格納することができる。そして、探査装置10で媒質40表面にわたって走査した場合に得られる誘導電流の大きさの分布から、長尺物体30の埋設位置を知ることができる。
【0036】更に、長尺物体30に流す交流電流の周波数を1kHzとしたことから、長尺物体30、および電力線50またはアース線54の長さが数十mであっても、それらに大きな電流を流すことができる。具体的には、長尺物体30、および電力線50またはアース線54に対して出力される交流電流の周波数:fと、その長尺物体30、および電力線50またはアース線54におけるインピーダンス:Zとの関係は図4に示すようになる。つまり、周波数の増大に伴ってインピーダンスも大きくなる(損失が大きくなる)のだが、約1kHzの周波数ではインピーダンスは小さい。
【0037】図4(a)に示すのは、交流電流を流した場合のアース線54(長さ6m)のインピーダンスである。図中から明らかであるように、1kHz以下の周波数ではそのインピーダンスが約0.1オーム以下という小さい値になっている。また、図4(b)に示すのは、交流電流を流した場合のガス管(長さ1m)(長尺物体30)のインピーダンスである。この場合も、1kHz以下の周波数ではそのインピーダンスが約0.01Ω以下という小さい値になっている。
【0038】以上のように、交流発生器20から出力される交流電流の周波数が1kHzの場合には、6mの長さのアース線54と1mの長さの長尺物体30のインピーダンスは共に非常に小さいことから、上述の実施例において部位Xと部位Yとの間が数十mの長さであっても、小さい損失で長尺物体30、および電力線50またはアース線54に大きな電流を流すことができ、その結果、探査装置10が長尺物体30を検出し易くすることができる。
【0039】或いは、交流発生器20から出力される交流電流の周波数が他の電気機器が使用する周波数と重畳しないという条件の下で、交流発生器20から出力される交流電流の周波数を別の値に設定することもできる。例えば、電力線50をインターネットなどの通信目的で使用する場合には、10kHz〜450kHzの搬送波が使用される。また、商用電源周波数は50Hzまたは60Hzである。従って、交流発生器20から出力される交流電流の周波数が、商用電源周波数以上であり、且つ10kHz以下の周波数であれば、他の電気機器が使用する周波数と重畳することがない。より好ましくは、交流発生器20から出力される交流電流の周波数は、商用電源周波数と明確に区別できる80Hz以上であり、長尺物体30、および電力線50またはアース線54における損失が小さい10kHz以下である。なお、交流発生器20から出力される交流電流の周波数は、商用電源周波数の整数倍を避ける方が、商用電源周波数の高調波の影響を受けないので、より好ましい。
【0040】<別実施形態><1>以上の実施形態では、交流発生器20の一方の出力端子(図2では出力端子21)から長尺物体30への接続のためにのみ既設の配線(電力線やアース線)を使用した場合を説明したが、交流発生器20の2つの出力端子21、22から長尺物体30へ、共に既設の配線(但し、両者は共通でない)を介して長尺物体30に接続するような改変も可能である。例えば、所定の電力線を介して交流発生器20の出力端子21から長尺物体30への接続を行い、所定のアース線を介して交流発生器20の出力端子22から長尺物体30への接続を行うこともできる。
【0041】<2>電力線の中性線52やアース線54といった既設の導電性の配線を使用して、交流発生器20の出力端子と長尺物体30とを接続する場合について説明したが、必ずしも導電性の配線を使用しなくても構わない。例えば、ガス管などの導電性の配管などを使用しても構わない。つまり、導電性の物体であれば他の様々なものと置き換えることができる。
【0042】<3>以上の実施形態では、受信機が1つの受信用コイルを備えている場合を例に説明を行ったが、受信用コイルが複数個設けられていてもよく、その場合の探査装置11の構成を図5に例示する。探査装置11は、図1に例示した探査装置10の受信機1を、図5に例示する受信機1’に改変したものである。図5において、受信機1’は、第1受信用コイル1bと第1キャパシタ8bとを備えてなる共振回路と、第2受信用コイル1cと第2キャパシタ8cとを備えてなる共振回路とを有している。
【0043】ここで、第1キャパシタ8bと接続され、交流発生器20から出力される交流電流の周波数に共振する共振回路を構成する第1受信用コイル1bが、長尺物体30により形成され、交流発生器20から出力される交流電流の周波数と同じ周波数を有する交流磁界を検出するように設計し、第2キャパシタ8cと接続され、商用電源周波数に共振する共振回路を構成する第2受信用コイル1cが、他の電気機器または電力線50により形成され、商用電源周波数と同じ周波数を有する交流磁界を検出するように設計される。その結果、上述した復調検波部4におけるフィルタリングにより得られた図3(b)のようなグラフと同様の結果(例えば、第1受信用コイル1bにより波形Aが検出され、第2受信用コイル1cにより波形Bが検出される)を得ることができる。
【0044】尚、受信用コイルおよびキャパシタの特性を変えることで、検出する(共振する)周波数を調整することができることから、交流発生器20から出力される交流電流の周波数や商用電源の周波数が変更された場合であっても容易に対応することができる。また、そのような受信用コイルを2つ以上設けてもよく、具体的には、検出対象とする交流磁界の周波数の数に合せて設けることも可能である。
【出願人】 【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
【出願日】 平成14年2月5日(2002.2.5)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2003−227878(P2003−227878A)
【公開日】 平成15年8月15日(2003.8.15)
【出願番号】 特願2002−27705(P2002−27705)