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【発明の名称】 水中音響探査方法及び水中音響探査システム
【発明者】 【氏名】吉住 和洋
【住所又は居所】長崎県長崎市深堀町5丁目717番1号 三菱重工業株式会社長崎研究所内

【氏名】高木 茂
【住所又は居所】長崎県長崎市深堀町5丁目717番1号 三菱重工業株式会社長崎研究所内

【氏名】渡邉 知博
【住所又は居所】長崎県長崎市飽の浦町1番1号 三菱重工業株式会社長崎造船所内

【要約】 【課題】水中航走体に搭載する水中音響探査装置の姿勢変動の影響を除去して高精度の探査を行うことができる水中音響探査方法を提供する。

【解決手段】水中2を航走する水中航走体1に搭載された送受波器4から海底3に向けて音波を発射し、海底3のターゲット5で反射することにより戻ってきた音波を処理することにより、水中航走体1の航走に伴う各位置A乃至Cでターゲット5の情報を得るとともに、送受波器4に向けて特定の音波を間欠的に送波するレスポンダ6を海底3に配設しておき、水中航走体1の航走に伴う各位置A乃至Cでの送受波の際に、レスポンダ6からの音波も受波し、この音波に基づき前記各位置A乃至Cにおいて実測した前記送受波器4の各位置座標が重なるように、水中航走体1の速度、方向等で特定される理論的なセンサ部の位置を、各位置A乃至Cにおいて補正し、このようにして得る補正後の各受波情報に基づきターゲット5の画像情報を合成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水中を航走する水中航走体に搭載された送波器から音波を発射し、海底等の探査対象のターゲットで反射することにより戻ってきた音波を受波手段のセンサ手段で検出してターゲットの情報を得るとともに、水中航走体を航走させながら同様の送受波を繰り返し、各送受波位置で得られるターゲットの情報を合成して処理する水中音響探査方法において、前記センサ手段に向けて特定の音波を間欠的に送波又は反射する送波手段を前記探査対象に配設しておき、水中航走体の航走に伴う各位置での送受波の際に、前記送波手段からの音波も受波し、この音波に基づき前記各送受波位置において実測した前記送波手段の各位置が重なるように、水中航走体の速度、方向及び時間等で特定される理論的な水中航走体及び前記センサ手段の位置を、前記各送受波位置で補正し、このようにして得る補正後の各受波情報に基づき各送受波位置での各受波情報を合成して前記ターゲットを含む前記探査対象を再生することを特徴とする水中音響探査方法。
【請求項2】 〔請求項1〕に記載する水中音響探査方法において、送波手段はその複数個を探査対象に配設し、各送波手段からの音波を並列に処理して各送受波位置において実測した各送波手段の各位置がそれぞれ重なるように、水中航走体及びセンサ手段の位置を、各送受波位置でそれぞれ補正し、この補正後の各受波情報に基づき各送受波位置での各受波情報を合成して前記ターゲットを含む前記探査対象を再生することを特徴とする水中音響探査方法。
【請求項3】 〔請求項1〕又は〔請求項2〕に記載する水中音響探査方法において、送波手段として、送波器からの音波を受けて所定周波数の音波を発射するレスポンダを用いたことを特徴とする水中音響探査方法。
【請求項4】 〔請求項1〕又は〔請求項2〕に記載する水中音響探査方法において、送波手段として、送波器からの音波を反射するリフレクタを用いたことを特徴とする水中音響探査方法。
【請求項5】 〔請求項1〕又は〔請求項2〕に記載する水中音響探査方法において、送波手段として、自律的且つ間欠的に音波を送波する音波発生器を用いたことを特徴とする水中音響探査方法。
【請求項6】 水中を航走する水中航走体に搭載され、探査対象に向けて音波を発射するとともに、探査対象のターゲットで反射した音波をセンサ部で受波する送受波手段を具備する水中音響探査システムにおいて、前記探査対象に配設されて特定の音波を間欠的に送波又は反射する送波手段と、前記ターゲットで反射した音波とともに前記送波手段が送波又は反射した音波も受波するセンサ手段の出力信号であって、水中航走体の航走に伴い異なる位置での送波に基づき受波した音波に基づく出力信号を処理し、各送受波位置での送波手段の位置が一致するように水中航走体及びセンサ手段の位置座標の情報を補正し、この補正値に基づいて各送受波位置でターゲットを含む探査対象の情報を補正する補正手段と、前記補正手段で補正した探査対象の情報を合成する合成手段とを有することを特徴とする水中音響探査システム。
【請求項7】 〔請求項6〕に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、その複数個を探査対象に配設してなり、補正手段は、センサ手段で受波した各送波手段からの音波を並列に処理して各送受波位置において実測した各送波手段の各位置がそれぞれ重なるように、水中航走体及びセンサ手段の位置を、各送受波位置でそれぞれ補正するものであることを特徴とする水中音響探査システム。
【請求項8】 〔請求項6〕又は〔請求項7〕に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器からの音波を受けてこの送波器が発射する音波とは異なる周波数の音波を発射するレスポンダで構成するとともに、補正手段は、フィルタを具備することにより、センサ手段の出力信号を、ターゲットからの反射波とレスポンダから発射波とに分離する機能を有するものであることを特徴とする水中音響探査システム。
【請求項9】 〔請求項6〕又は〔請求項7〕に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器からの音波を受けてこの送波器が発射する音波とは同一周波数の音波を発射するレスポンダで構成するとともに、補正手段は、受波音波のレベルに基づくスレッショルド値を設けてそれ未満又はそれ以上の何れであるかを検出することにより、センサ手段の出力信号を、ターゲットからの反射波とレスポンダから発射波とに分離する機能を有するものであることを特徴とする水中音響探査システム。
【請求項10】 〔請求項6〕又は〔請求項7〕に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器からの音波を反射するリフレクタで構成するとともに、補正手段は、受波音波のレベルが最も大きい位置を送波手段の位置であると見なして、各送受波位置でこの送波手段の位置が重なるような補正処理を行うものであることを特徴とする水中音響探査システム。
【請求項11】 〔請求項6〕又は〔請求項7〕に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器から発射する音波とは異なる周波数の音波を、自律的且つ間欠的に送波する音波発生器で構成するとともに、補正手段は、送波手段の位置が各送受は位置位置で重なるように補正するものであることを特徴とする水中音響探査システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は水中音響探査方法及び水中音響探査システムに関し、特に水中航走体を航走させて海底の地形等を探査する場合等に適用して有用なものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、海底の地形を探査する場合、音響を利用したソナーが汎用されている。特に、最近では、探査対象をモニタ画像に再生して視覚化する合成開口探査装置が提案され、これの適用が検討されている。この合成開口探査装置とは、水中を航走する水中航走体に音波の送波器及び受波器を搭載し、水中航走体を航走させながら送波器で海底等の探査対象に向けて音波を送出するとともに、探査対象から反射して戻ってくる音波を受波器で受信し、その時間から距離を演算して探査対象の二次元的な画像をモニタ上に再生するものである。
【0003】図6は海底を探査対象とした場合における合成開口探査の原理を概念的に示す説明図である。同図に示すように、水中航走体1は、水中2を航走するものである。図6に示す場合は、海底3に平行に、図中の右方から左方に向かって航走している。ここで、水中航走体1は音響探査装置を搭載しており、その送受波器4が本体の腹部に取り付けてあり、海底3に向けて音波を発射するとともに、海底3で反射した音波を受波するようになっている。図6では、A、B、Cの各位置で音波を発射するとともに、各位置A乃至Cでの反射波を受波している。すなわち、当該音響探査装置は水中航走体1の水中航走に伴い海底3に向けて間欠的に音波を発射しながら反射波に含まれる情報を処理することにより海底3の様子を可視化してモニタ(図示せず。)上に再生する。
【0004】ここで、送波器からは所定周波数(通常、数十kHz)の音波をパルスで変調して間欠的に送波する。また、音響探査装置の受波器のセンサ部分は、多数(数十個乃至百数10個)のセンシング素子を、例えば格子状に配設して所定の平面若しくは曲面を形成し、この平面若しくは曲面の全体で反射波を受波するようになっている。合成開口探査方法では、各位置A乃至Cで検出した海底3の情報を、水中航走体1の航走速度、方向及び音波の発射間隔時間等を加味して処理することにより、各位置A乃至Cでの情報を合成するようになっている。すなわち、例えば位置Aにおける送受波器4を原点として基準座標を形成し、この基準座標の原点に位置B、Cの座標を合わせ込むことにより各位置B、Cで同定したターゲット5を基準座標における位置に変換して表すことができる。このように複数位置A乃至Cでの情報を合成することにより、前記センサを構成する平面若しくは曲面が水中航走体1の航走方向に実効的に拡張され、このように拡張された平面若しくは曲面に対応するセンシング素子を実効的に有するセンサ部とすることができる。ちなみに、センシング素子の数が多ければ、それだけ探査精度は向上する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図7は図6に示す合成開口探査による各位置A乃至Cでの再生画像及びこれらの合成画像を概念的に示す説明図である。同図に示すように、位置Aで発射した音波に基づくターゲット5は、探査エリアの前端部分にあり、これを可視化するとすれば、(a)に示すように、画面の左部に再生される。同様に、位置Bで発射した音波に基づくターゲット5は、探査エリアの中央部分にあり、(b)に示すように、画面の中央部に再生され、位置Cで発射した音波に基づくターゲット5は、探査エリアの後端部分にあり、(c)に示すように、画面の後端部に再生される。そして、所定の座標変換を行い、各位置A乃至Cでの画像を合成すると(d)に示す画像となる。同図(d)中、実線が位置Aに対応するターゲット5、一点鎖線が位置Bに対応するターゲット5、二点鎖線が位置Cに対応するターゲット5である。
【0006】上記合成画像におけるターゲット5は、所定の座標変換処理により合成画像では重なり合い、理想的には一本の輪郭線で表せるはずである。しかし、実際には、図7(d)に示すように、多少のズレを伴い、このため輪郭が不明瞭で精度が劣化して解像度が低下した再生画像となる。これは、水中航走体1が揺動等を伴うことなく規定の航路を高精度に航走することができれば、理想的な画像が得られるが、実際には潮流等の影響で水中航走体1の航路にズレを生起し、また揺動等により送受波器4のセンサ部分の座標(原点)が変動するため、この変動による誤差が各位置A乃至Cでの合成画像のズレとして顕在化するためである。
【0007】本発明は、上記現状に鑑み、水中航走体に搭載する水中音響探査装置の姿勢変動の影響を除去して高精度の探査を行うことができる水中音響探査方法及び水中音響探査システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明の構成は次の点を特徴とする。
【0009】1) 水中を航走する水中航走体に搭載された送波器から音波を発射し、海底等の探査対象のターゲットで反射することにより戻ってきた音波を受波手段のセンサ手段で検出してターゲットの情報を得るとともに、水中航走体を航走させながら同様の送受波を繰り返し、各送受波位置で得られるターゲットの情報を合成して処理する水中音響探査方法において、前記センサ手段に向けて特定の音波を間欠的に送波又は反射する送波手段を前記探査対象に配設しておき、水中航走体の航走に伴う各位置での送受波の際に、前記送波手段からの音波も受波し、この音波に基づき前記各送受波位置において実測した前記送波手段の各位置が重なるように、水中航走体の速度、方向及び時間等で特定される理論的な水中航走体及び前記センサ手段の位置を、前記各送受波位置で補正し、このようにして得る補正後の各受波情報に基づき各送受波位置での各受波情報を合成して前記ターゲットを含む前記探査対象を再生すること。
【0010】2) 上記1)に記載する水中音響探査方法において、送波手段はその複数個を探査対象に配設し、各送波手段からの音波を並列に処理して各送受波位置において実測した各送波手段の各位置がそれぞれ重なるように、水中航走体及びセンサ手段の位置を、各送受波位置でそれぞれ補正し、この補正後の各受波情報に基づき各送受波位置での各受波情報を合成して前記ターゲットを含む前記探査対象を再生すること。
【0011】3) 上記1)又は2)に記載する水中音響探査方法において、送波手段として、送波器からの音波を受けて所定周波数の音波を発射するレスポンダを用いたこと。
【0012】4) 上記1)又は2)に記載する水中音響探査方法において、送波手段として、送波器からの音波を反射するリフレクタを用いたこと。
【0013】5) 上記1)又は2)に記載する水中音響探査方法において、送波手段として、自律的且つ間欠的に音波を送波する音波発生器を用いたこと。
【0014】6) 水中を航走する水中航走体に搭載され、探査対象に向けて音波を発射するとともに、探査対象のターゲットで反射した音波をセンサ部で受波する送受波手段を具備する水中音響探査システムにおいて、前記探査対象に配設されて特定の音波を間欠的に送波又は反射する送波手段と、前記ターゲットで反射した音波とともに前記送波手段が送波又は反射した音波も受波するセンサ手段の出力信号であって、水中航走体の航走に伴い異なる位置での送波に基づき受波した音波に基づく出力信号を処理し、各送受波位置での送波手段の位置が一致するように水中航走体及びセンサ手段の位置座標の情報を補正し、この補正値に基づいて各送受波位置でターゲットを含む探査対象の情報を補正する補正手段と、前記補正手段で補正した探査対象の情報を合成する合成手段とを有すること。
【0015】7) 上記6)に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、その複数個を探査対象に配設してなり、補正手段は、センサ手段で受波した各送波手段からの音波を並列に処理して各送受波位置において実測した各送波手段の各位置がそれぞれ重なるように、水中航走体及びセンサ手段の位置を、各送受波位置でそれぞれ補正するものであること。
【0016】8) 上記6)又は7)に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器からの音波を受けてこの送波器が発射する音波とは異なる周波数の音波を発射するレスポンダで構成するとともに、補正手段は、フィルタを具備することにより、センサ手段の出力信号を、ターゲットからの反射波とレスポンダから発射波とに分離する機能を有するものであること。
【0017】9) 上記6)又は7)に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器からの音波を受けてこの送波器が発射する音波とは同一周波数の音波を発射するレスポンダで構成するとともに、補正手段は、受波音波のレベルに基づくスレッショルド値を設けてそれ未満又はそれ以上の何れであるかを検出することにより、センサ手段の出力信号を、ターゲットからの反射波とレスポンダから発射波とに分離する機能を有するものであること。
【0018】10) 上記6)又は7)に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器からの音波を反射するリフレクタで構成するとともに、補正手段は、受波音波のレベルが最も大きい位置を送波手段の位置であると見なして、各送受波位置でこの送波手段の位置が重なるような補正処理を行うものであること。
【0019】11) 上記6)又は7)に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器から発射する音波とは異なる周波数の音波を、自律的且つ間欠的に送波する音波発生器で構成するとともに、補正手段は、送波手段の位置が各送受は位置位置で重なるように補正するものであること。
【0020】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0021】図1は本発明の実施の形態に係る水中音響探査方法を概念的に示す説明図である。本形態は、図6に示す場合と同様に、海底を探査対象とするもので、合成開口探査により所定の探査を行うものである。図1に示す場合は、当該合成開口探査において、レスポンダ6を用いる点が異なるが、他は図6に示す場合と同様である。そこで、図6と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】図1に示すように本形態においてはレスポンダ6を用いている。このレスポンダ6は水中航走体1の送波器から発射された音波を受信することにより、パルスで変調した所定周波数の音波を間欠的に送波するものである。すなわち、このレスポンダ6は電池を内蔵しており、前記送波器からの音波をトリガとして動作し、所定周波数の音波を含むパルス状信号を水中航走体1の送受波器4に向けて発射する。またレスポンダ6が送波する音波の周波数は、送受波器4が送波する音波の周波数と違えておく。したがって、送受波器4の受波器は海底3からの反射波とともに、これとは周波数が異なるレスポンダ6からの音波も受波する。ここで、レスポンダ6は当該探査に先立ち、海底3に投下しておく。
【0023】本形態に係る合成開口探査方法において、水中航走体1は、図6に示す場合と同様に、水中2を航走する。この航走に伴い、送受波器4は海底3に向けて音波を発射するとともに、海底3で反射した音波を受波する。同時に、送受波器4から発射する音波でレスポンダ6がトリガされ、この結果所定周波数の音波を間欠的に発射するので、この音波も受波する。送受波器4が送波した音波と、レスポンダ6が送波した音波とはフィルタを介することにより分離することができるので、送受波器4が送波した反射波の情報と、レスポンダ6が送波した音波とで各位置での情報を合成する。具体的には次の通りである。
【0024】図2は図1に示す合成開口探査による各位置A乃至Cでの再生画像及びこれらの合成画像を概念的に示す説明図である。いま、図1に示す位置A、B、Cの各位置で送受波器4から音波を発射した場合を考える。各位置A乃至Cでは反射波を受波している。すなわち、当該音響探査装置は水中航走体1の水中航走に伴い海底3に向けて間欠的に音波を発射しながら反射波に含まれる情報を処理することにより海底3の様子を可視化してモニタ(図示せず。)上に再生する。
【0025】このとき、図2に示すように、位置Aで発射した音波に基づくターゲット5は、探査エリアの前端部分にあり、これを可視化するとすれば、(a)に示すように、画面の左部に再生される。同時に、レスポンダ6に基づく情報もターゲット5との相対位置を反映してその左側に存在するように再生される。同様に、位置Bで発射した音波に基づくターゲット5は、探査エリアの中央部分にあり、(b)に示すように、画面の中央部に再生され、また位置Cで発射した音波に基づくターゲット5は、探査エリアの後端部分にあり、(c)に示すように、画面の後端部に再生される。また、それぞれレスポンダ6に基づく情報もターゲット5との相対位置を反映してその左側に存在するように再生される。
【0026】次に、各位置A乃至Cにおける座標を基準座標(例えば位置Aを原点とする座標)に合わせ込むのであるが、このときレスポンダ6の位置を基準として各座標を補正する。すなわち、各位置A乃至Cでレスポンダ6の位置が重なるように合成する。かかる補正により、レスポンダ6との相対的な位置関係で規定されるターゲット5の位置も各位置A乃至Cで完全に一致させて重ねることができる。かくして、位置A乃至Cにおける情報を合成した画像は、(d)に示すように、レスポンダ6とともにターゲット5も正確に重畳され鮮明な画像として再生される。すなわち、ターゲット5の画像を高解像度で得ることができる。
【0027】上記実施の形態においては、レスポンダ6が一個の場合について説明したが、これは複数個でも勿論良い。2個のレスポンダ6a、6bを使用した場合の態様を図3に示す。同図の(a)乃至(d)は図2の(a)乃至(d)にそれぞれ対応している。すなわち、各位置A乃至Cでの画像及び合成した画像をそれぞれ示している。レスポンダ6の数が増えれば増えるほど、探査精度は向上する。2個の場合は特定の線を含む面上での補正を行うことができ、また3個以上の場合は面を一義的に特定し、この特定した面上での補正を行うことができる。
【0028】上記実施の形態では、送受波器4が送波する音波の周波数とレスポンダ6から送波する音波の周波数とは異なる周波数としたが、両者を同一周波数とすることもできる。この場合、ターゲット5からの反射波であるか、レスポンダ6からの送波であるかを峻別する必要がある。このためには、例えば送波レベルに対してスレッショルド値を設定しておき、このスレッショルド値以上の成分をレスポンダ6からの送波として処理するとともに、スレッショルド値未満の成分をターゲット5からの反射波として処理すれば良い。これは、一般に、反射波は比較的低レベルの音波で、しかも反射方向に大きく依存して強弱が変動する音波であるのに対し、レスポンダ6からの送波は安定した高レベルの音波であることを利用して両者を峻別するものである。また、各送受波の度に安定して受信できた成分をレスポンダ6からの音波と認定するとともに、音波が戻ってきたり、そうでなかったりする成分に着目してターゲット5からの反射波であると認定することもできる。レスポンダ6から送波した音波であれば常に安定した音波成分が検出されるのに対し、ターゲット5からの反射成分はこのターゲット5の形状に起因して反射成分の戻りが無いか、又は微弱である場合があることを利用するものである。
【0029】さらに、レスポンダ6の代わりにリフレクタを用いても良い。こごで、リフレクタとは、送受波器4から送波した音波を反射するものである。このリフレクタで反射される音波のレベルは、一般にターゲット5で反射される音波のレベルよりも大であるため、最も反射音波レベルの大きい位置をリフレクタの位置とすることにより、レスポンダ6と同様の機能を持たせることができる。。
【0030】上述の如き水中音響探査方法は図4及び図5に示すような水中音響探査システムで実現し得る。
【0031】図4は本発明の第2の実施の形態に係る水中音響探査システムの、特に反射信号等の受波処理系を示すブロック線図である。本実施の形態は、図1に示すようなレスポンダ6を海底3(図1参照。以下同じ。)に配設した場合の受波処理系であり、レスポンダ6が送波する音波の周波数が、送受波器4(図1参照。以下同じ。)が送波する音波の周波数よりも高い場合の受波処理系である。同図に示すように、センサ10は多数のセンシング素子を平面的に配設して構成したものであり、図6に示すものと変わるところはない。すなわち、各センシング素子が反射波等の音波を受波してそのレベルに応じた電気信号である音波信号を送出する。この音波信号には、周波数が低い反射波成分と、周波数が高いレスポンダ6の送波成分が混在している。
【0032】ローパスフィルタ11及びハイパスフィルタ12は、センサ10の出力信号である音波信号から周波数が低い反射波成分と、周波数が高いレスポンダ6の送波成分とに分離してそれぞれ出力する。音波信号分割部13は、反射波である音波を各送波時間毎に、それぞれ受波された時間tn (n=1,2,・・・;以下同じ。)の情報とともに画像再生部14に送出する。この結果、画像処理部14には各時間tn 毎の反射波の情報が取り込まれる。さらに、画像再生部14では、位置情報供給部15から供給される各時間tn における水中航走体1の位置座標の情報に基づき基準座標に対するターゲット5の合わせ込みを行う。この結果、各時間tn 毎の仮想画像上に基準座標に変換したターゲット5を再生することができる。このようにして得る情報をそのまま合成するのが、図6に示す合成開口探査であるが、本願発明では、さらに次の様な構成要素により、探査情報の解像度の向上等、高質化を達成している。
【0033】音波信号分割部16は、レスポンダ6からの音波を各送波時間毎に、それぞれ受波された時間tn (n=1,2,・・・;以下同じ。)の情報とともにレスポンダ位置検出部17に送出する。この結果、レスポンダ位置検出部17には各時間tn 毎のレスポンダ6からの送波に基づく情報が取り込まれる。ここで、レスポンダ位置検出部17では、各時間tn でのレスポンダ6の各位置が基準座標でそれぞれ一致するように補正し、このときの各補正量を画像補正部18に供給する。このとき、画像補正部18には、画像再生部14で得る画像情報も供給されている。そこで、前記画像情報をレスポンダ位置検出部17の出力信号である補正量を表す信号により補正する。この結果、各時間tn 毎の画像情報はレスポンダ6の位置を加味して補正した座標上の位置に再生され、レスポンダ6との関係でその相対的な位置が規定されるターゲット5の各時間tn 毎の位置情報を高精度に一致させることができる。画像合成部19は、画像補正部18で補正した情報に基づき各時間tn 毎の画像情報を合成してモニタ20に送出する。モニタ20ではその画像情報を再生して可視化する。この結果、モニタ20上には、輪郭が明確な、解像度の高いターゲット5の画像を再生することができる。
【0034】上記実施の形態においては、各時間tn 毎に再生画像情報を画像再生部14で再生し、その後画像補正部18で所定の補正を行う構成としたが、これに限るものではない。各時間tn でのレスポンダ6の理論的な位置座標(水中航走体1(図1参照。以下同じ。)の航行速度、その間の時間及び航行方向等の情報に基づき演算により求まる水中航走体1の位置座標)を、実測の位置座標に合わせ込んだ場合の、前記理論的な位置座標の各成分の補正値を演算するとともに、この補正値で位置情報供給部17における水中航走体1(送受波器4)の各位置座標を補正してやり、このようにして補正した後の位置情報を利用することにより、一気に所定の補正が終了した状態で画像合成部19における画像合成を行うことができる。この場合、水中航走体1の位置情報が実際の航行状態を反映して補正されているからである。
【0035】図5は本発明の第3の実施の形態に係る水中音響探査システムの、特に反射信号等の受波処理系を示すブロック線図である。本実施の形態は、図4に示す受波処理系において、図1に示すレスポンダ6が送波した音波の代わりにレフレクタが反射した音波を利用するものであり、レスポンダ6からの音波を処理する処理系の代わりに音波レベル検出部21を設けた点が異なる。そこで、図4と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0036】本形態は、前述の如く、リフレクタ部分で反射される音波のレベルはターゲット5で反射される音波のレベルよりも一般的に大きいことを利用したものである。本形態に係るリフレクタは、音波を反射する物体であれば、基本的に制限はないが、例えば球面形状をした音波の反射体で良好に構成することができる。球面の場合、どの方向から音波が送波されても必ず反射成分が存在するようにすることができるからである。かかるリフレクタをレスポンダ6の代わりに海底3に配設しておく。この状態で、前記第2の実施の形態の場合と同様に、各位置A乃至C(図1参照。以下同じ。)で送受波器4により音波を発射する。かくして、リフレクタ及びターゲット5で反射された音波が水中航走体1に向けて戻り、この成分がセンサ10で検知される。センサ10では、受波した音波に基づき、音波信号分割部13で所定の処理を行い、その後位置情報供給部15の位置情報に基づき各時間tn における画像を画像再生部14で再生する。本形態では、音波レベル検出部21で、画像処理部14で再生された各時間tn における画像情報から最も音波レベルが大きい位置の位置座標を演算するとともに、基準座標におけるリフレクタの各位置座標が一致するように補正値を決定する。このときの各補正値を、第2の実施の形態と同様の画像補正部18に供給することにより、画像再生部14で得る画像情報を補正する。その後、画像合成部19で、画像補正部18で補正した情報に基づき各時間tn 毎の画像情報を合成してモニタ20に送出する。
【0037】かくしてモニタ20上には、各位置A乃至Cにおけるリフレクタの位置を一致させることにより、このリフレクタの実測の位置座標で水中航走体1の前記理論的な位置座標を補正した鮮明なターゲット5の画像を再生することができる。
【0038】上記各実施の形態は、送受波器4からの送波をトリガとして音波を送受波器4側に返すもの(レスポンダ6)又は前記送波器から発射された音波を反射して送受波器4側に返すもの(リフレクタ)を用いて、水中航走体1(送受波器4)の航走にともなう理論的な位置座標からのズレを検出して補正するものであるが、これにらに限る必要はない。すなわち、送受波器4からの送波に基づき所定の補正を行う、いわばアクティブ方式に限る必要はない。例えば所定周波数の音波を自動的に間欠送波する音波発生源を海底に配設しておき、この音波発生源の情報に基づき水中航走体1(送受波器4)の位置を補正して各時間tn 毎の補正量を求めることにより、同様に各位置A乃至Cにおけるターゲット5の合わせ込みを行うことができる。すなわち、音波灯台の概念を利用したパッシブな探査方式としても実現し得る。
【0039】また、探査対象は海底3として説明したが、これは海面であっても良い。この場合には、送受波器4は水中航走体1の上面に固着して音波を上方に向けて発射する。さらに、水中航走体1は単独で水中を航走するものに限らず、船舶の船底に固着する等の方法により当該船舶と一体的に航走するものであっても良い。
【0040】
【発明の効果】以上実施の形態とともに具体的に説明した通り、〔請求項1〕に記載する発明は、水中を航走する水中航走体に搭載された送波器から音波を発射し、海底等の探査対象のターゲットで反射することにより戻ってきた音波を受波手段のセンサ手段で検出してターゲットの情報を得るとともに、水中航走体を航走させながら同様の送受波を繰り返し、各送受波位置で得られるターゲットの情報を合成して処理する水中音響探査方法において、前記センサ手段に向けて特定の音波を間欠的に送波又は反射する送波手段を前記探査対象に配設しておき、水中航走体の航走に伴う各位置での送受波の際に、前記送波手段からの音波も受波し、この音波に基づき前記各送受波位置において実測した前記送波手段の各位置が重なるように、水中航走体の速度、方向及び時間等で特定される理論的な水中航走体及び前記センサ手段の位置を、前記各送受波位置で補正し、このようにして得る補正後の各受波情報に基づき各送受波位置での各受波情報を合成して前記ターゲットを含む前記探査対象を再生することを特徴とするので、各送受波位置の受波情報における送波手段の位置が一致し、この送波手段との相対的な位置関係が一義的に定まるターゲットの位置も各送受波位置の受波情報において一致する。したがって、各送受波位置の受波情報を合成した場合、この合成情報においてターゲットの位置が完全に重複し、これを再生した画像において明瞭で高精度の画像として再生し得、その分高解像度の情報を得ることができる。
【0041】〔請求項2〕に記載する発明は、〔請求項1〕に記載する水中音響探査方法において、送波手段はその複数個を探査対象に配設し、各送波手段からの音波を並列に処理して各送受波位置において実測した各送波手段の各位置がそれぞれ重なるように、水中航走体及びセンサ手段の位置を、各送受波位置でそれぞれ補正し、この補正後の各受波情報に基づき各送受波位置での各受波情報を合成して前記ターゲットを含む前記探査対象を再生することを特徴とするので、2次元乃至3次元の位置座標の各成分を個別に補正することができる。この結果、〔請求項1〕に記載する発明の効果をより顕著に発揮させることができる。
【0042】〔請求項3〕に記載する発明は、〔請求項1〕又は〔請求項2〕に記載する水中音響探査方法において、送波手段として、送波器からの音波を受けて所定周波数の音波を発射するレスポンダを用いたことを特徴とするので、〔請求項1〕又は〔請求項2〕の効果をレスポンダを用いて実現し得る。
【0043】〔請求項4〕に記載する発明は、〔請求項1〕又は〔請求項2〕に記載する水中音響探査方法において、送波手段として、送波器からの音波を反射するリフレクタを用いたことを特徴とするので、〔請求項1〕又は〔請求項2〕の効果をリフレクタを用いて実現し得る。
【0044】〔請求項5〕に記載する発明は、〔請求項1〕又は〔請求項2〕に記載する水中音響探査方法において、送波手段として、自律的且つ間欠的に音波を送波する音波発生器を用いたことを特徴とするので、〔請求項1〕又は〔請求項2〕の効果を音波発生器を用いて実現し得る。
【0045】〔請求項6〕に記載する発明は、水中を航走する水中航走体に搭載され、探査対象に向けて音波を発射するとともに、探査対象のターゲットで反射した音波をセンサ部で受波する送受波手段を具備する水中音響探査システムにおいて、前記探査対象に配設されて特定の音波を間欠的に送波又は反射する送波手段と、前記ターゲットで反射した音波とともに前記送波手段が送波又は反射した音波も受波するセンサ手段の出力信号であって、水中航走体の航走に伴い異なる位置での送波に基づき受波した音波に基づく出力信号を処理し、各送受波位置での送波手段の位置が一致するように水中航走体及びセンサ手段の位置座標の情報を補正し、この補正値に基づいて各送受波位置でターゲットを含む探査対象の情報を補正する補正手段と、前記補正手段で補正した探査対象の情報を合成する合成手段とを有することを特徴とするので、各送受波位置の受波情報における送波手段の位置が一致し、この送波手段との相対的な位置関係が一義的に定まるターゲットの位置も各送受波位置の受波情報において一致する。したがって、各送受波位置の受波情報を合成した場合、この合成情報においてターゲットの位置が完全に重複し、これを再生した画像において明瞭で高精度の画像として再生し得、その分高解像度の情報を得ることができる。
【0046】〔請求項7〕に記載する発明は、〔請求項6〕に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、その複数個を探査対象に配設してなり、補正手段は、センサ手段で受波した各送波手段からの音波を並列に処理して各送受波位置において実測した各送波手段の各位置がそれぞれ重なるように、水中航走体及びセンサ手段の位置を、各送受波位置でそれぞれ補正するものであることを特徴とするので、2次元乃至3次元の位置座標の各成分を個別に補正することができる。この結果、〔請求項6〕に記載する発明の効果をより顕著に発揮させることができる。
【0047】〔請求項8〕に記載する発明は、〔請求項6〕又は〔請求項7〕に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器からの音波を受けてこの送波器が発射する音波とは異なる周波数の音波を発射するレスポンダで構成するとともに、補正手段は、フィルタを具備することにより、センサ手段の出力信号を、ターゲットからの反射波とレスポンダから発射波とに分離する機能を有するものであることを特徴とするので、受波音波から、ターゲットに基づく反射波とレスポンダの発射する音波とをフィルタでそれぞれ抽出し、レスポンダの発射する音波に基づき所定の位置座標の補正を行うことにより、〔請求項6〕又は〔請求項7〕の効果をレスポンダを用いて実現し得る。
【0048】〔請求項9〕に記載する発明は、〔請求項6〕又は〔請求項7〕に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器からの音波を受けてこの送波器が発射する音波とは同一周波数の音波を発射するレスポンダで構成するとともに、補正手段は、受波音波のレベルに基づくスレッショルド値を設けてそれ未満又はそれ以上の何れであるかを検出することにより、センサ手段の出力信号を、ターゲットからの反射波とレスポンダから発射波とに分離する機能を有するものであることを特徴とするので、受波音波から、ターゲットに基づく反射波とレスポンダの発射する音波とをスレッショヨルド値を利用してそれぞれ抽出し、レスポンダの発射する音波に基づき所定の位置座標の補正を行うことにより、〔請求項6〕又は〔請求項7〕の効果をレスポンダを用いて実現し得る。
【0049】〔請求項10〕に記載する発明は、〔請求項6〕又は〔請求項7〕に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器からの音波を反射するリフレクタで構成するとともに、補正手段は、受波音波のレベルが最も大きい位置を送波手段の位置であると見なして、各送受波位置でこの送波手段の位置が重なるような補正処理を行うものであることを特徴とするので、受波音波から、ターゲットに基づく反射波とリフレクタに基づく反射波とをそれぞれ抽出し、リフレクタが反射する音波に基づき所定の位置座標の補正を行うことにより、〔請求項6〕又は〔請求項7〕の効果をレスポンダを用いて実現し得る。
【0050】〔請求項11〕に記載する発明は、〔請求項6〕又は〔請求項7〕に記載する水中音響探査システムにおいて、送波手段は、送波器から発射する音波とは異なる周波数の音波を、自律的且つ間欠的に送波する音波発生器で構成するとともに、補正手段は、送波手段の位置が各送受は位置位置で重なるように補正するものであることを特徴とするので、音波発生手段が発射する音波で各送受波位置における水中航走体乃至センサ手段の位置を補正し、この補正値を用いて所定の各位置座標を補正することにより〔請求項1〕又は〔請求項2〕の効果を音波発生器を用いて実現し得る。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目5番1号
【出願日】 平成14年1月30日(2002.1.30)
【代理人】 【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎 (外2名)
【公開番号】 特開2003−222678(P2003−222678A)
【公開日】 平成15年8月8日(2003.8.8)
【出願番号】 特願2002−21424(P2002−21424)